(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048325
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】尿取りパッドを併用するテープ止めタイプおむつ
(51)【国際特許分類】
A61F 13/534 20060101AFI20220317BHJP
A61F 13/47 20060101ALI20220317BHJP
A61F 13/494 20060101ALI20220317BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20220317BHJP
A61F 13/51 20060101ALI20220317BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
A61F13/534 110
A61F13/47 100
A61F13/494 110
A61F13/535 200
A61F13/51
A61F13/56 100
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015193
(22)【出願日】2022-02-02
(62)【分割の表示】P 2017245992の分割
【原出願日】2017-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 秀憲
(72)【発明者】
【氏名】蓑田 哲宏
(57)【要約】
【課題】薄く軽量で介護者が装着しやすく、尿取りパッドから尿が漏れた際に充分に尿を吸収できる、尿取りパッドを併用するテープ止めタイプおむつを提供する。
【解決手段】液透過性のトップシート2と、液不透過性のバックシート4と、トップシート2及びバックシート4の間に配置された吸収体3と、を備える尿取りパッドと併用するテープ止めタイプおむつ1であって、吸収体3は、テープ止めタイプおむつ1の長手方向の中央よりも後側に配置されるとともに、一対の高吸収性シート31と、各高吸収性シート31の全体を包む一対の親水性シート32と、で構成され、高吸収性シート31は、片側表面が起毛した基体不織布311と、基体不織布311の起毛した部分の繊維間に固着担持された高吸収性ポリマー312と、を有し、一対の高吸収性シート31は、テープ止めタイプおむつ1の幅方向に沿って、所定の間隔Lを空けるように設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置された吸収体と、を備える、尿取りパッドを併用するテープ止めタイプおむつであって、
前記吸収体は、前記テープ止めタイプおむつの長手方向の中央よりも後側に配置されるとともに、一対の高吸収性シートと、各高吸収性シートの全体を包む一対の親水性シートと、で構成され、
前記高吸収性シートは、片側表面が起毛した基体不織布と、前記基体不織布の起毛した部分の繊維間に固着担持された高吸収性ポリマーと、を有し、
一対の前記高吸収性シートは、前記テープ止めタイプおむつの幅方向に沿って、所定の間隔を空けるように設けられている
ことを特徴とするテープ止めタイプおむつ。
【請求項2】
前記所定の間隔は、80mm以上100mm以下の範囲である
ことを特徴とする請求項1に記載のテープ止めタイプおむつ。
【請求項3】
前記高吸収性シートは、長手方向に沿って延在する長尺状のものである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のテープ止めタイプおむつ。
【請求項4】
長手方向に沿って、前記トップシート上に設けられた一対の立体ギャザーを備え、
前記尿取りパッドは、前記一対の立体ギャザーに挟まれるように保持された状態で、その幅方向における両端が、平面視で、前記高吸収性シートの領域内に位置する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のテープ止めタイプおむつ。
【請求項5】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置された吸収体と、を備える、尿取りパッドを併用するテープ止めタイプおむつであって、
前記吸収体は、前記テープ止めタイプおむつの長手方向の中央よりも後側に配置されるとともに、高吸収性シートと、前記高吸収性シートの両面側に配置される親水性シートと、で構成され、
前記高吸収性シートは、片側表面が起毛した基体不織布及び前記基体不織布の起毛した部分の繊維間に固着担持された高吸収性ポリマーを有する一対の高吸収性領域と、前記高吸収性ポリマーを有さず前記基体不織布を有する間欠領域と、からなり、
一対の前記高吸収性領域は、前記間欠領域を介して、前記テープ止めタイプおむつの幅方向に沿って設けられている
ことを特徴とするテープ止めタイプおむつ。
【請求項6】
前記間欠領域の幅方向における寸法は、80mm以上100mm以下の範囲である
ことを特徴とする請求項5に記載のテープ止めタイプおむつ。
【請求項7】
前記高吸収性領域及び前記間欠領域は、長手方向に沿って延在する長尺状のものである
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のテープ止めタイプおむつ。
【請求項8】
長手方向に沿って、前記トップシート上に設けられた一対の立体ギャザーを備え、
前記尿取りパッドは、前記一対の立体ギャザーに挟まれるように保持された状態で、その幅方向における両端が、平面視で、前記高吸収性領域内に位置する
ことを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載のテープ止めタイプおむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿取りパッドを併用するテープ止めタイプおむつに関し、特に尿取りパッドを併用する大人用のテープ止めタイプおむつに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に大人用のおむつには、テープ止めタイプおむつ、パンツタイプおむつ等の吸収性物品があり、これらのおむつは着用者の排泄における介護の必要度に応じて、適宜選択されて使用される。これらの吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、両シートの間に配置された吸収体と、で構成されている。このような構成を採用することにより、尿等の体液は、トップシートを透過して吸収体に吸収され、バックシートにより外部へ漏れないようになっている。これらの吸収性物品には、体液の吸収性の向上、着用者の装着感の向上、漏れ防止等を図るために、様々な工夫がなされている。
【0003】
ところで、海外では、テープ止めタイプおむつは、それ自体を単独で使用することが多いが、日本国内では、おむつの内側に尿取りパッド(軽失禁パッド、インナーパッドともいう。)を併用する場合も多い。これは、おむつ一枚あたりの価格が、尿取りパッド一枚あたりの価格に比して高い場合が多いため、安価な尿取りパッドで排泄物を吸収して保持した後、尿取りパッドのみを交換することで、コストの高いおむつを交換せずに済み、経済的に低いコストでおむつを使用できるためである。
【0004】
テープ止めタイプおむつを交換するタイミングは、尿取りパッドからテープ止めタイプおむつへの漏れが発生したときである。一方、目立たないごく少量の漏れであれば、尿取りパッドを交換するだけで、テープ止めタイプおむつをそのまま使用する。以上のことから、尿取りパッドと併用するテープ止めタイプおむつには、高い吸収性能、特に繰り返し吸収性能が必要なく、これによって、このようなテープ止めタイプおむつに用いられる吸収体は、テープ止めタイプおむつの全体ではなく、漏れが発生する部分のみに配置すればよい。
【0005】
さらに、現在の市販のテープ止めタイプおむつは、フラッフと高吸収性ポリマーとからなる吸収体を含んでおり、このようなテープ止めタイプおむつに高吸収性能を有する尿取りパッドを取り付けると、その分、厚みが増して折り曲げにくくなるため、介護者が着用者に装着しにくくなっている。
【0006】
尿取りパッドと併用するテープ止めタイプおむつに用いられる吸収体としては、例えば、高吸収性ポリマーが長手方向に沿うストライプ状に配置されるものが挙げられる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の吸収体は、テープ止めタイプおむつの長手方向の全体に亘り配置されているため、このような吸収体が用いられるテープ止めタイプおむつの全体の厚みが抑えられず、テープ止めタイプおむつの軽量化を十分に図ることができない。また、このようなテープ止めタイプおむつを尿取りパッドと併用すると、尿取りパッドが重ねられたテープ止めタイプおむつが折り曲げにくくなるため、介護者が着用者に装着しにくくなっている。
【0009】
そこで、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、薄く軽量で介護者が装着しやすく、尿取りパッドから尿が漏れた際に充分に尿を吸収できる、尿取りパッドを併用するテープ止めタイプおむつを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者は、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、2つの高吸収性シートを幅方向に沿って、所定の間隔を空けるように設けることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0011】
(1)本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置された吸収体と、を備える、尿取りパッドを併用するテープ止めタイプおむつであって、前記吸収体は、前記テープ止めタイプおむつの長手方向の中央よりも後側に配置されるとともに、一対の高吸収性シートと、各高吸収性シートの全体を包む一対の親水性シートと、で構成され、前記高吸収性シートは、片側表面が起毛した基体不織布と、前記基体不織布の起毛した部分の繊維間に固着担持された高吸収性ポリマーと、を有し、一対の前記高吸収性シートは、前記テープ止めタイプおむつの幅方向に沿って、所定の間隔を空けるように設けられているテープ止めタイプおむつである。
【0012】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のテープ止めタイプおむつであって、前記所定の間隔は、80mm以上100mm以下の範囲であることを特徴とするものである。
【0013】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載のテープ止めタイプおむつであって、前記高吸収性シートは、長手方向に沿って延在する長尺状のものであることを特徴とするものである。
【0014】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載のテープ止めタイプおむつであって、長手方向に沿って、前記トップシート上に設けられた一対の立体ギャザーを備え、前記尿取りパッドは、前記一対の立体ギャザーに挟まれるように保持された状態で、その幅方向における両端が、平面視で、前記高吸収性シートの領域内に位置することを特徴とするものである。
【0015】
(5)本発明の第5の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置された吸収体と、を備える、尿取りパッドを併用するテープ止めタイプおむつであって、前記吸収体は、前記テープ止めタイプおむつの長手方向の中央よりも後側に配置されるとともに、高吸収性シートと、前記高吸収性シートの両面側に配置される親水性シートと、で構成され、前記高吸収性シートは、片側表面が起毛した基体不織布及び前記基体不織布の起毛した部分の繊維間に固着担持された高吸収性ポリマーを有する一対の高吸収性領域と、前記高吸収性ポリマーを有さず前記基体不織布を有する間欠領域と、からなり、一対の前記高吸収性領域は、前記間欠領域を介して、前記テープ止めタイプおむつの幅方向に沿って設けられているテープ止めタイプおむつである。
【0016】
(6)本発明の第6の態様は、(5)に記載のテープ止めタイプおむつであって、前記間欠領域の幅方向における寸法は、80mm以上100mm以下の範囲であることを特徴とするものである。
【0017】
(7)本発明の第7の態様は、(5)又は(6)に記載のテープ止めタイプおむつであって、前記高吸収性領域及び前記間欠領域は、長手方向に沿って延在する長尺状のものであることを特徴とするものである。
【0018】
(8)本発明の第8の態様は、(5)から(7)のいずれかに記載のテープ止めタイプおむつであって、長手方向に沿って、前記トップシート上に設けられた一対の立体ギャザーを備え、前記尿取りパッドは、前記一対の立体ギャザーに挟まれるように保持された状態で、その幅方向における両端が、平面視で、前記高吸収性領域内に位置することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、薄く軽量で介護者が装着しやすく、尿取りパッドから尿が漏れた際に充分に尿を吸収できる、尿取りパッドを併用するテープ止めタイプおむつを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係るテープ止めタイプおむつを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明するが、これらは例示の目的で掲げたものでこれらにより本発明を限定するものではない。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ符号を付している。また、本明細書の説明において、テープ止めタイプおむつ1の装着時とは、テープ止めタイプおむつ1の装着時及び装着後の少なくとも一方をいう。テープ止めタイプおむつ1の長手方向とは、テープ止めタイプおむつ1が装着されたときに着用者の前後にわたる方向であり、図中、符号Yで示す方向である。また、テープ止めタイプおむつ1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Xで示す方向である。なお、テープ止めタイプおむつ1の厚み方向とは、長手方向及び幅方向に対して直交する方向であり、図中、符号Zで示している。さらに、本明細書において、身体側表面とは、装着時に着用者の肌に当接する表面を指し、衣類側表面とは、装着時に着用者の衣類に接触する表面を指す。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0022】
(実施形態)
以下に
図1及び
図2を参照しつつ本発明の実施形態に係るテープ止めタイプおむつ1の詳細について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るテープ止めタイプおむつ1を示す平面図である。
図2は、
図1のI-I線に沿う断面図である。
【0023】
[テープ止めタイプおむつ]
本発明の実施形態に係るテープ止めタイプおむつ1は、大人用のものであり、
図1及び
図2に示すように、身体側に配された液透過性のトップシート2と、トップシート2に対向して配置された液不透過性のバックシート4と、トップシート2とバックシート4との間に配置された吸収体3と、を備える。これにより、吸収体3は、トップシート2とバックシート4の間に挟まれた構造となり、尿等の体液は、トップシート2を透過して吸収体3に吸収される。また、本発明の実施形態に係るテープ止めタイプおむつ1は、立体ギャザー21を更に備える。
【0024】
(トップシート)
トップシート2は、吸収体3に向けて体液を速やかに通過させるものであり、吸収体3を挟んで、バックシート4に対向して配置される。トップシート2は、肌と当接するシートとなることから、トップシート2には、やわらかな感触で、肌に刺激を与えないような性質を有する、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いて、エアスルー法、サーマルボンド法、スパンレース法、スパンボンド法等の公知の加工法によって得られた親水性不織布又はこれらを積合した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等を用いることができる。また、トップシート2には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート2には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
【0025】
強度、加工性及び液戻り量の点から、トップシート2の坪量は、15g/m2以上200g/m2以下であることが好ましい。トップシート2の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体3へと誘導するために必要とされる、吸収体3を覆う形状であればよい。
【0026】
(立体ギャザー)
図1に示すように、テープ止めタイプおむつ1には、着用者の排泄した体液の横漏れを防止するため、テープ止めタイプおむつ1の長手方向に沿って、トップシート2上に、立体ギャザー用弾性部材と立体ギャザーシートを有する一対の立体ギャザー21を備えていてもよい。立体ギャザー21は、テープ止めタイプおむつ1の幅方向端部において、バックシート4に固定されており、自由端側は、端部にて二つ折りにされていることが好ましい。そして、立体ギャザー用弾性部材は、二つ折りにされた自由端側の立体ギャザーシートに挟持されていることが好ましい。これにより、立体ギャザー21が起立性を有し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとすることができる。立体ギャザー用弾性部材としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、合成ゴム、糸状又は帯状の天然ゴム等が使用され、立体ギャザーシートとしては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は不透液性の不織布、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布を積層した複合不織布等が使用される。立体ギャザー用弾性部材の太さは、940dtex以下であることが好ましい。
【0027】
(バックシート)
バックシート4は、吸収体3が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布を積層した複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0028】
強度及び加工性の点から、バックシート4の坪量は、15g/m2以上40g/m2以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシート4には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート4に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート4に穿孔のためにエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく実施することができる。
【0029】
(吸収体)
本発明の実施形態に係る吸収体3は、
図1及び
図2に示すように、テープ止めタイプおむつ1の長手方向の中央よりも前側に配置されず、テープ止めタイプおむつ1の長手方向の中央よりも後側に配置されるものであり、一対の高吸収性シート31と、各高吸収性シート31の全体を包む一対の親水性シート32と、で構成されている。本発明者らが、尿取りパッド5を併用したテープ止めタイプおむつ1を装着した仰臥状態のダミー人形を用い、生理食塩水150mlで繰り返し吸収テストを行った結果、尿取りパッドから体液が漏れ出すのは、ほぼ臀部と脚部の境目のあたりであり、すなわち、テープ止めタイプおむつ1の長手方向の中央よりも後側である。本実施形態では、吸収体3は、テープ止めタイプおむつ1の長手方向の中心よりも後側に配置されるため、尿取りパッド5と併用する場合、尿取りパッド5から体液が漏れたときに集中的に体液を吸収することができ、テープ止めタイプおむつ1からの体液の漏れを確実に抑制することができる。
【0030】
[高吸収性シート]
吸収体3に用いる一対の高吸収性シート31は、
図1及び
図2に示すように、テープ止めタイプおむつ1の長手方向に沿って延在する長尺状のものであり、テープ止めタイプおむつ1の幅方向に沿って、所定の間隔Lを空けるように設けられている。なお、テープ止めタイプおむつ1の折り曲げやすさと尿漏れ抑制とのバランスの観点から一対の高吸収性シート31間の所定の間隔Lは、80mm以上100mm以下の範囲であることが好ましい。そして、一対の高吸収性シート31間の所定の間隔Lは、80mmを下回ると、幅方向の折り曲げやすさが損なわれ、一方、100mmを超えると、一般的に販売されている尿取りパッド5の幅方向における両端と一対の高吸収性シート31とが重ならなくなり、尿取りパッド5から漏れた尿が高吸収性シート31によって吸収されず、尿漏れを十分に抑制することができない。
【0031】
また、高吸収性シート31は、
図2に示すように、身体側表面が起毛した基体不織布311と、基体不織布311の起毛した部分の繊維間に固着担持された高吸収性ポリマー312と、を有する。基体不織布311の起毛した部分の繊維間に高吸収性ポリマー312が分散して固着担持されることにより、高吸収性ポリマー312周辺の基体不織布311に尿が適度に拡散又は保持されることにより吸収性能が向上し、フラッフパルプを有さなくても十分な吸収性能を確保することができる。
【0032】
(基体不織布)
図2に示すように、基体不織布311の身体側表面は起毛した状態である。そのため、不織布本来の嵩高さに加えて、高吸収性シート31に適度な厚みとやわらかさが付与されることにより、適度なクッション性が発生し、装着時のフィット感を向上することができる。また、基体不織布311を上記のように起毛させることにより、基体不織布311の起毛した部分の繊維間に高吸収性ポリマー312を分散させて固着担持させることができる。基体不織布311の身体側表面を起毛させる方法としては、回転ノコ刃、ニードルパンチが挙げられ、インラインでの生産性やコストの観点から回転ノコ刃により毛羽立たせる方法を用いることが好ましい。
【0033】
なお、本実施形態では、基体不織布311は、身体側表面を起毛させたが、これに限定されるものではなく、例えば、衣類側表面を起毛させてもよい。すなわち、基体不織布311は、片側表面を起毛させればよい。
【0034】
基体不織布311としては、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の不織布や、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布を積層した複合不織布を挙げることができる。これらの不織布のうち、嵩高さの得やすいエアスルー不織布を用いることが好ましい。
【0035】
基体不織布311の厚みは、着用感及び吸収性能のバランスの観点から、0.3mm以上11.0mm以下であることが好ましく、2.0mm以上9.0mm以下であることがより好ましく、4.0mm以上9.0mm以下であることが更に好ましい。また、基体不織布311の坪量は、20g/m2以上200g/m2以下であることが好ましく、30g/m2以上160g/m2以下であることがより好ましい。
【0036】
さらに、基体不織布311を構成する繊維の太さは、1.6dtex以上14.0dtex以下であることが好ましく、1.8dtex以上9.0dtex以下であることがより好ましく、2.0dtex以上6.0dtex以下であることが更に好ましい。このように上記の範囲で基体不織布311を構成する繊維の太さを調整することにより、基体不織布311の起毛した部分の繊維間に高吸収性ポリマー312を分散させて固着担持しやすくすることができる。
【0037】
(高吸収性ポリマー)
高吸収性ポリマー312としては、尿等の体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量あたりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。また、高吸収性ポリマー312の坪量は、各種の吸収性物品に要求される吸収性能を確保するために、200g/m2以上1200g/m2以下とすることが好ましい。また、吸収性能、吸収後の肌触り及び着用者の動きやすさをより向上させる観点から、高吸収性ポリマー312の坪量は、300g/m2以上900g/m2以下とすることがより好ましい。
【0038】
また、粉体としての流動性が悪い微粉末を避けることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、高吸収性シート31が硬くなることにより発生するごつごつとした触感を低減する観点から、高吸収性ポリマー312の中位粒子径は、50μm以上600μm以下であることが好ましく、100μm以上500μm以下であることがより好ましい。
【0039】
高吸収性ポリマー312は、ホットメルト接着剤により、基体不織布311の起毛した部分の繊維間に固着担持されていることが好ましく、基体不織布311の坪量が比較的低い場合に、高吸収性ポリマー312の固着担持を補強するために、ホットメルト接着剤は特に有効に機能する。なお、高吸収性ポリマー312の吸収性を阻害せず、かつ、装着時の肌触りを損なわないように、ホットメルト接着剤の含有量は10g/m2以下であることが好ましい。ホットメルト接着剤としては、融点が100℃以上180℃以下の、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体やスチレン-イソプレン-スチレン系共重合体など合成ゴム系、又は、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系のホットメルト接着剤を用いることができる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法など公知の方法が利用できる。
【0040】
[親水性シート]
吸収体3は、
図2に示すように、各高吸収性シート31の全体を包む一対の親水性シート32を有する。高吸収性シート31の全体を親水性シート32で包むことにより、高吸収性ポリマー312が吸収体3の外へ漏れることを防止することができ、装着時の肌触りも向上させることができる。親水性シート32としては、ティシュ、吸収紙、スパンボンド不織布やエアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができ、入手性やコストの観点から親水性不織布又はティシュを用いることが好ましく、親水性シート32の坪量は、7g/m
2以上45g/m
2以下とすることが好ましく、8g/m
2以上16g/m
2以下とすることがより好ましい。なお、高吸収性シート31の全体を親水性シート32で包む際には、高吸収性シート31と親水性シート32とを、ホットメルト接着剤や熱エンボス加工により固定することが好ましい。
【0041】
そして、テープ止めタイプおむつ1と併用する尿取りパッド5は、
図2に示すように、一対の立体ギャザー21に挟まれるように保持された状態で、その幅方向における両端が、平面視で、一対の高吸収性シート31の領域内に位置している。これにより、尿取りパッド5の両端から漏れた尿が、一対の高吸収性シート31によって確実に吸収され、尿漏れを十分に抑制することができる。
【0042】
このように、本発明の吸収体3は、テープ止めタイプおむつ1の長手方向における全領域ではなく、テープ止めタイプおむつ1の長手方向の中央よりも後側に配置されるため、尿取りパッド5と併用する際に、尿漏れが発生する箇所等を確実にカバーでき、これによって、テープ止めタイプおむつ1の全体の軽量化を図ることができるとともに、長手方向の折り曲げやすさを確保することができる。また、高吸収性シート31は、片側表面が起毛した基体不織布311と、基体不織布311の起毛した部分の繊維間に固着担持された高吸収性ポリマー312と、を有するため、フラッフパルプを含有しなくても、薄くて吸収性及び着用感の良好な吸収体3を得ることができる。さらに、吸収体3を構成する一対の高吸収性シート31は、テープ止めタイプおむつ1の幅方向に沿って、所定の間隔Lを空けるように設けられているため、尿取りパッド5と併用する際に、尿取りパッド5からの尿漏れが発生する箇所のみを確実にカバーでき、これによって、テープ止めタイプおむつ1の全体の軽量化を更に図ることができるとともに、幅方向の折り曲げやすさも確保することができ、介護者が着用者に装着しやすくなる。
【0043】
<吸収体の製造方法>
吸収体3の製造方法としては、特に制限はないが、以下の方法が一例として挙げられる。基体不織布311の身体側表面を回転ノコ刃又はニードルパンチを用いて、起毛させる。その後、高吸収性ポリマー312をホットメルト接着剤等により、基体不織布311の起毛した部分の繊維間に固着担持させる。その後、高吸収性シート31の全体を親水性シート32で包む。その際には、高吸収性シート31と親水性シート32とを、ホットメルト接着剤で固定させる。
【0044】
<テープ止めタイプおむつの製造方法>
テープ止めタイプおむつ1の製造方法としては、上記のようにして得られた吸収体3をトップシート2とバックシート4との間に挟持し、トップシート2とバックシート4とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定することで製造することができる。また、立体ギャザー21の他に、レッグギャザー、ウエストギャザー等を必要に応じて設けることができる。
【0045】
(吸収体の変形例)
つぎに、
図3及び
図4を参照しつつ本発明の変形例に係る吸収体3の詳細について説明する。
図3は、変形例の吸収体3を示す平面図である。
図4は、
図3のII-II線に沿う断面図である。
【0046】
図3に示すように、本発明の変形例に係る吸収体3は、上記実施形態の吸収体3と同様に、テープ止めタイプおむつ1の長手方向の中央よりも後側に配置されるとともに、高吸収性シート31と、高吸収性シート31の両面側に配置される親水性シート32と、で構成されている。これにより、尿取りパッド5と併用する場合、尿取りパッド5からの漏れを抑制することができる。
【0047】
上記実施形態では、吸収体3を構成する高吸収性シート31は、テープ止めタイプおむつ1の幅方向に沿って、所定の間隔Lを空けるように設けられるとともに、片側表面が起毛した基体不織布311と、基体不織布311の起毛した部分の繊維間に固着担持された高吸収性ポリマー312と、を有する一対のものによって構成されるが、これに限定されるものではなく、例えば、
図3及び
図4に示すように、片側表面が起毛した基体不織布311及び基体不織布311の起毛した部分の繊維間に固着担持された高吸収性ポリマー312を有する一対の高吸収性領域31Aと、高吸収性ポリマー312を有さず基体不織布311を有する間欠領域31Bと、からなる一つのものによって構成されてもよい。
【0048】
図3に示すように、一対の高吸収性領域31Aは、テープ止めタイプおむつ1の幅方向に沿って、間欠領域31Bを介して設けられている。また、高吸収性領域31A及び間欠領域31Bは、長手方向に沿って延在する長尺状のものである。そして、間欠領域31Bの幅方向における寸法L´は、80mm以上100mm以下の範囲であることが好ましい。
【0049】
また、上記実施形態では、吸収体3を構成する親水性シート32は、高吸収性シート31の全体を包むものであるが、これに限定されるものではなく、例えば、高吸収性シート31の両面側に配置されるものであってもよい。
【0050】
そして、変形例の吸収体3が用いられるテープ止めタイプおむつ1と併用する尿取りパッド5は、
図4に示すように、一対の立体ギャザー21に挟まれるように保持された状態で、その幅方向における両端が、平面視で、一対の高吸収性領域31A内に位置している。これにより、尿取りパッド5の両端から漏れた尿が、高吸収性シート31の高吸収性領域31Aによって確実に吸収され、尿漏れを十分に抑制することができる。
【0051】
この変形例における一対の高吸収性領域31A及び間欠領域31Bの幅方向における寸法L´は、それぞれ、上記実施形態における一対の高吸収性シート31及び所定の間隔Lに相当するため、この変形例の吸収体3によれば、上記実施形態の吸収体3による効果と同様の効果が得られる。
【0052】
さらに、変形例の高吸収性シート31を構成する間欠領域31Bは、片側表面が起毛した基体不織布311のみからなるため、上記実施形態に比べて、吸収体3の厚みのムラが緩和されることになっている。
【0053】
<変形例の吸収体の製造方法>
本発明の変形例に係る吸収体3の製造方法としては、特に制限はないが、以下の方法が一例として挙げられる。基体不織布311の身体側表面を回転ノコ刃又はニードルパンチを用いて、起毛させる。その後、テープ止めタイプおむつ1の幅方向に沿って、間欠的に高吸収性ポリマー312をホットメルト接着剤等により、基体不織布311の起毛した部分の繊維間に固着担持させる。その後、高吸収性シート31の両面側に親水性シート32を、ホットメルト接着剤で固定させる。
【0054】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0055】
1 テープ止めタイプおむつ
2 トップシート
3 吸収体
4 バックシート
5 尿取りパッド
21 立体ギャザー
31 高吸収性シート
31A 高吸収性領域
31B 間欠領域
32 親水性シート
311 基体不織布
312 高吸収性ポリマー
L 所定の間隔
L´ 間欠領域の幅方向における寸法
【手続補正書】
【提出日】2022-02-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置された吸収体と、長手方向に沿って、前記トップシート上に設けられた一対の立体ギャザーと、を備える、尿取りパッドを併用するテープ止めタイプおむつであって、
前記吸収体は、前記テープ止めタイプおむつの長手方向の中央よりも後側にのみ配置されるとともに、一対の高吸収性シートと、各高吸収性シートの全体を包む一対の親水性シートと、で構成され、
前記高吸収性シートは、片側表面が起毛した基体不織布と、前記基体不織布の起毛した部分の繊維間に固着担持された高吸収性ポリマーと、を有し、
一対の前記高吸収性シートは、前記テープ止めタイプおむつの幅方向に沿って、80mm以上100mm以下の範囲である所定の間隔を空けるように設けられており、
前記尿取りパッドは、前記一対の立体ギャザーに挟まれるように保持された状態で、その幅方向における両端が、平面視で、前記高吸収性シートの領域内に位置する
ことを特徴とするテープ止めタイプおむつ。
【請求項2】
前記基体不織布は、衣類側表面のみを起毛させた
ことを特徴とする請求項1に記載のテープ止めタイプおむつ。
【請求項3】
前記高吸収性シートは、長手方向に沿って延在する長尺状のものである
ことを特徴とする請求項1または2に記載のテープ止めタイプおむつ。