(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048348
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】改良された粒子蒸着システムと方法
(51)【国際特許分類】
C03B 8/04 20060101AFI20220317BHJP
C03B 37/018 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
C03B8/04 C
C03B37/018 C
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015573
(22)【出願日】2022-02-03
(62)【分割の表示】P 2020079942の分割
【原出願日】2016-01-13
(31)【優先権主張番号】14/595,871
(32)【優先日】2015-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517247125
【氏名又は名称】エイエスアイ/シリカ・マシナリー・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】ASI/SILICA MACHINERY, LLC
【住所又は居所原語表記】515 LORING AVENUE, LOS ANGELES, CA 90024, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】スターリング,デイヴィッド,マクドナルド
(57)【要約】
【課題】ワークピースに化学気相蒸着法を行なうための複数の構成要素を有する蒸着室を含む、ワークピースに化学物質の蒸気を蒸着するための蒸着システムが開示される。
【解決手段】第一のバーナーと第二のバーナーを有する第一の化学蒸着バーナーセットと、第三のバーナーと第四のバーナーを有する第二の化学蒸着バーナーセットと、第一および第二のバーナーセットに対してワークピースを回転させるための旋盤と、を含み、ワークピースの第一および第二の部分はオーバーラップ部分において互いにオーバーラップし、オーバーラップ部分上に、各セットに属する一個のバーナーが、実質的に、シリカ粒子を蒸着し、同一のセットに属する隣接するいずれの蒸着バーナー間の最長距離も、異なるセットに属するバーナー間の最短距離より短い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースの第一の部分にシリカ粒子を蒸着するための、第一のバーナーと第二のバーナーを有する第一の化学蒸着バーナーセットと、
ワークピースの第二の部分にシリカ粒子を蒸着するための、第三のバーナーと第四のバーナーを有する第二の化学蒸着バーナーセットと、
ワークピースを保持し、第一および第二のバーナーセットに対してワークピースを回転させるための旋盤と、を含み、
ワークピースの第一および第二の部分はオーバーラップ部分において互いにオーバーラップし、
オーバーラップ部分上に、各セットに属する一個のバーナーが、実質的に、シリカ粒子を蒸着し、
同一のセットに属する隣接するいずれの蒸着バーナー間の最長距離も、異なるセットに属するバーナー間の最短距離より短い、ワークピース上にシリカ粒子を蒸着するための蒸着システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、ワークピース上に化学物質を蒸着するシステムと方法、および、それらによる製品に関する。特に、光ファイバ母材、溶融シリカロッド、および、他の光学部品を製造するための原料ロッド、に、シリカスートを蒸着するためのシステムと方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
今日の通信グレードの溶融シリカ(SiO2)光ファイバは、三つの基本的ステップにしたがって製造される:1)コア母材、すなわち「原料ロッド」の製造、2)クラッド付きコア母材の製造、および、3)ファイバ線引、である。母材のコアとクラッドは、母材から線引された最終的なガラス繊維のコアとクラッドと、比率および幾何学的配置が一致する。
【0003】
第一ステップは、原料ロッドを作り上げ、これを最終的にはファイバのコアになるガラスとすること、また場合によってはファイバのクラッド層の一部にもすることである。原料ロッドはシリカ(SiO2)からなるガラスロッドであり、原料ロッドの一部には、少量のドーパント、典型的にはゲルマニア(GeO2)、がドープされているコアが含まれる。コアにドーパントが存在することで、周囲の外層(クラッド)と比較して、ガラス材料の屈折率が高くなる。
第二ステップにおいて、原料ロッドにクラッドが積層される。このステップの結果、コアとクラッドとを有する母材が得られる。慣習的にこの母材は、直径約160mm、長さ約1メートル、である。
第三ステップはファイバ線引で、母材が加熱延伸され、典型的には長さ約400kmの光ファイバが製造される。
【0004】
ガラス母材を製造する主な原料は四塩化ケイ素(SiCl4)であり、通常液状で供給される。しかし、上述のように、SiO2は、典型的にはガラススートの形態で原料ロッドに蒸着される。ガラススートの形成に関する化学変化は、SiCl4、酸素、O2、および、燃料ガス燃焼生成物、が関与する複合反応である。一連の処理方法のすべてにおいて、一般に、下記化学式(I)に示す反応の通り、シリカ(SiO2)は、母材のクラッドを構成する:
SiCl4+O2=SiO2+2Cl2 (I)
【0005】
一般に、コア母材の製造には四つの異なる方法がある。これらの方法は、内付化学気相蒸着法(MCVD)、外付気相蒸着法(OVD)、気相軸付蒸着法(VAD)、および、プラズマ化学気相蒸着法(PCVD)、である。これらのいずれの方法を用いても、結果として生じる製品は一般的に同一である:「原料ロッド」は、通常、長さ約1メートル、直径約20mm、である。コアは一般に直径約5mmである。
【0006】
同様に、一般に、クラッドを追加するステップを行なうには四つの方法がある。これらの方法は、スリーブ管法(MCVDと概念的に並列)、OVDスートオーバークラッド法(OVDと概念的に並列)、VADスートオーバークラッド法(VADと概念的に並列)、および、プラズマ法(PCVDと概念的に並列)、である。このステップにおいて、ファイバ線引工程に供することができる最終母材を製造するために、純粋、または、実質的に純粋、な溶融シリカの追加クラッド層が原料ロッドに蒸着される。
【0007】
MCVDにおいて、原料ロッドを製造するステップは管内部で行なわれる。同様に、クラッドステップが行なわれる際、原料ロッドに、より大きい管がスリーブされ、融合される。現在、Heraeus社は、原料ロッドを製造するのに使用される管、および、原料ロッドにスリーブおよび融合されて母材を製造するための管、を製造している。
【0008】
OVDでは、原料ロッドの製造において、「スート」蒸着工程にて回転するマンドレル上にガラスが蒸着される。原料ロッドは、まずゲルマニウムドープしたコアを蒸着させ、次いで、純粋なシリカ層を蒸着することにより、徐々に作り上げられる。コア蒸着が完了すると、典型的にはマンドレルは除去され、続けて、残る本体は焼結され、ガラスの原料ロッドとなる。
【0009】
OVDスートオーバークラッド工程では、製造された原料ロッド上にクラッドが蒸着されるとき、原料ロッドは、多くのスート薄層が蒸着させられるように、化学蒸着バーナーからの原料流の中で、ある一定の時間にわたって旋盤上を回転およびトラバースしている。SiO2は蒸気としてではなくSiO2粒子状物質として原料ロッド上に蒸着させられるが、バーナーと原料ロッドとの間の原料流において反応してSiO2となるSiCl4が蒸気としてバーナーに供給されるので、この工程は「化学気相蒸着」工程として当該技術分野において知られている。続いて、典型的には、OVDスートオーバークラッド工程で得られた多孔質母材は、約1500℃のヘリウム雰囲気下において焼結され、泡を含まない中実原料ガラスになる。Sarkarによる米国特許第4,599,098号明細書(あたかも完全にここに述べられるかのように、参照によりその全体が本明細書に援用される)が、OVDとOVDスートオーバークラッドのシステムと方法におけるさらなる背景情報を提供する。
【0010】
上記の方法について、典型的には、ファイバ線引工程に供することができる母材を製造するために、コア製造方法のいずれの方法も、クラッド製造方法のいずれの一つの方法とも組み合わせうる。
【0011】
OVDスートオーバークラッド工程において、他の利用可能な方法と比較して、経済的に実行可能性を評価する重要な基準の一つは、ワークピースへのSiO2の蒸着率である。たとえば、光ファイバ製造に関与するいくつかの会社は、ファイバ製造工程において、原料ロッドにオーバークラッドするステップを行なう方法として、最も費用対効果の大きい方法を選ぶ。製造工程のこのステップに関して、クラッドを加えるための選択肢は、クラッド管を購入するか、または、蒸着工程を行なうか、のどちらかである。
【0012】
異なるアプローチを検討する際、経済面から、多くの場合、会社が検討している特定の蒸着システムが、蒸着の費用対効果を最大限にするかどうか、という問題に至る。蒸着率は、たとえば、完成する(すなわち焼結工程に供することができる光ファイバ母材になる)まで、原料ロッドに蒸着することができるシリカスートの毎分重量の平均値、により特徴付けられうる。平均蒸着率がある一定の水準を超える場合は、スートオーバークラッド工程を行なうことが、クラッド管を購入することよりも、会社にとって経済的により魅力的な手段になるであろう。スートオーバークラッドするためのシステムを製造する会社は、ファイバ線引工程に供するために製造される母材の品質を落とすことなく、コスト効率良く、できる限り高い蒸着率を達成できる、ことを強調する。
【0013】
蒸着システムの蒸着率を決定づける要素は、化学蒸気送出率およびワークピース上への化学気相蒸着の効率、である。蒸気送出に関して、主要問題は、一般に長時間(たとえば2時間超)にわたって高い(たとえば200グラム/分超)送出率を維持することの連続性と効率と、を中心に展開する。キャリヤーガスに同伴する実質的に一定流量の気化原料物質を加水分解用バーナーに供給するためのいくつかの方法が、先行技術文献に記述されている。たとえば、Blankenshipによる米国特許第4,314,837号明細書(「引例Blankenship」)には、反応生成物成分用の液体を各々含有する別々に密封された貯蔵器を含むシステムが記載されている。これらの液体は、各貯蔵器内の所定の蒸気圧を維持するのに十分な温度に加熱される。制御された流速で液体の蒸気を分配するために、計測装置が各貯蔵器に連結される。続いて、各貯蔵器からのそれぞれの蒸気は、バーナーに分配される前に混合される。
【0014】
ワークピース上へのSiO2蒸着効率を高め、有効蒸着率をより改善することに関して、反応室内におけるバーナーからのワークピース表面への化学的な蒸気流の特徴を調べる研究が行なわれた。この問題に関する一つの引用文献は、Tingye Li編、「Optical Fiber Communications, Volume1:Fiber Fabrication」、Academic Press,Inc.、1985年、第75―77ページ、である。上記の文献において説明されるように、形成されるガラス微粒子のサイズが小さいために、推進力はワークピース表面上への粒子状物質の嵌入を引き起こさない。ガラス微粒子は、そのサイズが小さいと、母材表面に留まるよりも、周辺のガス流に追随しやすい傾向がある。むしろ、熱泳動現象が、母材表面上の蒸着のための支配的なメカニズムである。熱ガス流とガラス微粒子がワークピース周辺で動くと、母材表面近傍に温度勾配が形成される。好ましくは、温度勾配は急勾配であり、母材に対する熱泳動力によって、ガラス微粒子を効果的に引き寄せる。
【0015】
熱泳動力の形成と維持に基づいて蒸着効率を高めるために、様々な方法が提案された。一つの方法は、バーナーとワークピースとの間の距離を変更することである。H.C.Tsai、R.Greif、S.Joh、「A study of thermophoretic transport in a reacting flow with application to external chemical vapor deposition processes」、International Journal of Heat and Mass Transfer、Elsevier Ltd.、1995年、第38巻、第10号、第1901―1910ページ、を参照されたい。Dabbyらによる米国特許第6,789,401号明細書、米国特許第7,451,623号明細書、および、米国特許第7,451,624号明細書、において開示された別の一連の方法は、あたかも完全にここに述べられるかのように参照によりその全体が本明細書に援用されるが、様々な臨界速度より高い速度、たとえば分速1.4メートル超で、ワークピースに対してバーナーを選択的に並進移動させることを含む。より高速とは、より少ない熱がワークピースの所与の場所に加えられることを意味する。そのため、ワークピースはより低温に保たれ、温度勾配を大きくする傾向がある。しかし、これらの方法を使用しても、さらに高い蒸着率への要求は満たされなくなった。
【0016】
さらに蒸着率を上げるために、スートを蒸着する多数のバーナー一式を備えることが提案された。これら追加のバーナーは、たとえば旋盤の縦軸に沿ったバーナータイルに配置され、各バーナーがワークピースに化学スートを蒸着するよう提案されている。具体的には、Schaperらによる米国特許第6,047,564号明細書は、あたかも完全にここに述べられるかのように参照によりその全体が本明細書に援用されるが、バーナータイルに、一列に十二個の等間隔に配置された化学的バーナーが取り付けられ、そのようなバーナーの各々がスートを蒸着する蒸着システムを開示している。バーナータイルはワークピースの縦軸に沿って前後に動く。バーナータイルの移動幅は、一般にバーナー間の距離に相当し、各バーナーがワークピース全体の指定された部分にスートを蒸着する。
【0017】
同様にAbbottらによる米国特許第5,116,400号明細書および米国特許第5,211,732号明細書は、あたかも完全にここに述べられるかのように参照によりその全体が本明細書に援用されるが、化学的バーナー一式を含む蒸着システムを開示する。Schaperらの特許におけるように、Abbottらの特許は、化学的バーナー一式の各バーナーが、母材の使用可能な長さの一部のみにスートを蒸着する蒸着工程を開示している。Abbottらの特許は、好ましくは、互いに約4インチの一定間隔を置いて配置される十一個のバーナー一式を開示している。バーナー一式は、バーナー一式の中心位置から各方向に距離Jを隔てた、全長2Jの距離を往復する。Abbottらの特許は、蒸着の均一性を担保するために、その振幅が、好ましくは、バーナー間隔dと等しいか、または、わずかに大きい、ことを開示している。したがって、各バーナーは、母材の長さのおよそ20%をトラバースする。バーナーの数とそれらの間隔を変更し蒸着効率を改善する説明において、Abbottらの特許は、その構造ゆえにバーナーの数が増えるに連れて、蒸着効率が改善するはずであること開示している。
【0018】
Schaperらの特許およびAbbottらの特許において開示されたような多重バーナー構造は、蒸着効率において期待される改善が実現されていないので、商業的にいくぶん魅力に欠ける。化学的バーナーが互いに近接すると熱泳動効果を損なうので、蒸着効率が著しく減少する。ワークピースの全長にわたって配置された化学的バーナーどうしが近接することは、ワークピースのある領域に、別のバーナーがその領域にスートを分配する前に冷却されるに足る時間を確保するのを妨げる。さらに、スート蒸着用に多くのバーナーを有することにより生じる、反応室内で発生した多くの化学物質流の熱量は、ワークピース周辺で所望の層流を損ない、これによって熱泳動が起こるために必要とされる温度勾配を減じる。バーナーとワークピースとの間の最適温度勾配を伴わないと、熱泳動効率は弱められ、その結果蒸着効率が低下し、これによって、全体的な蒸着効率が低下する。
【0019】
また、そのような多重バーナー構造に関連するコストは法外に高い。これらのコストは、追加の化学的バーナーに関連したコストだけでなく、それらをサポートするために必要とされる蒸発器、予熱器、および、他の機器、のコストも含み、同様に、バーナーが生成する余分な蒸着材料廃棄物および熱を処理するために必要とされるスクラバーその他の機器をも含む。さらに、これらのバーナー構造が満足できる蒸着率を達成するのに莫大な量の化学物質を必要とするので、各母材を製造するために必要とされる化学物質のコストが増加する。そのため、これらの多重バーナー構造は、材料をかなり過度に浪費しており、不必要に高価な「暴力的」アプローチであると見なすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第4,599,098号明細書
【特許文献2】米国特許第4,314,837号明細書
【特許文献3】米国特許第6,789,401号明細書
【特許文献4】米国特許第7,451,623号明細書
【特許文献5】米国特許第7,451,624号明細書
【特許文献6】米国特許第6,047,564号明細書
【特許文献7】米国特許第5,116,400号明細書
【特許文献8】米国特許第5,211,732号明細書
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Tingye Li編、「Optical Fiber Communications, Volume1:Fiber Fabrication」、Academic Press,Inc.、1985年、第75―77ページ
【非特許文献2】H.C.Tsai、R.Greif、S.Joh、「A study of thermophoretic transport in a reacting flow with application to external chemical vapor deposition processes」、International Journal of Heat and Mass Transfer、Elsevier Ltd.、1995年、第38巻、第10号、第1901―1910ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
結果として、蒸着効率、化学送出、および、化学蒸気の全体的な蒸着率、に対してさらに改善をもたらすシステムと方法の必要性がある。さらに、費用効率の高い光ファイバ母材の製造を可能にするシステムと方法の必要性があり、これは、同じ蒸着スペースでより大きい母材を、したがって高い費用効率で光ファイバを製造することを含む。さらに、より高い蒸着率と効率を提供するのに必要な熱泳動を維持する化学気相蒸着システムと工程における複数のバーナー構造の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
以下の開示は、一般に、一つの態様において、光ファイバの線引工程に供することができる母材の製造におけるSiCl4蒸気由来のSiO2の原料ロッド上への蒸着、などの、化学物質のワークピース上への有効蒸着率を改善するためのシステムと方法を提供する。
【0024】
本明細書に記述される第二の別の態様において、溶融シリカロッドを含む、純粋な溶融シリカ、光ファイバ母材、シリカ管、光ファイバ、および、シリカロッド、を製造するためのシステムと方法が開示される。
【0025】
本明細書に記述される第三の別の態様において、ワークピース上にシリカ粒子を蒸着するための蒸着システムは、ワークピースの第一の部分にシリカ粒子を蒸着するための第一のバーナーセットと、ワークピースの第二の部分にシリカ粒子を蒸着するための第二のバーナーセットと、ワークピースを保持し、第一および第二のバーナーセットに対してワークピースを回転させるための旋盤と、を含む。ワークピースの第一および第二の部分は、互いにオーバーラップしてオーバーラップ部分を形成する。好ましくは、同一のセットに属する隣接するいずれの蒸着バーナー間の最長距離も、異なるセットに属するバーナー間の最短距離より短い。
【0026】
本明細書に記述される第四の別の態様において、光ファイバを製造する方法は、原料ロッドを得るステップと、原料ロッドに溶融シリカを蒸着して光ファイバ母材を製造するステップと、を含む。蒸着するステップは、約dの距離で互いから隔てられた第一のバーナー対を使用して、原料ロッドの第一の部分にシリカを蒸着するステップと、約dの距離で互いから隔てられた第二のバーナー対を使用して、原料ロッドの第二の部分にシリカを蒸着するステップとを含む。第一および第二の部分は互いにオーバーラップし、オーバーラップ部分は、好ましくは、約dの幅を有する。さらに、第一のバーナー対と第二のバーナー対は、好ましくは距離Tで隔てられ、Tは、好ましくは、dの三倍超である。
【0027】
本明細書に記述される第五の別の態様において、ワークピース上にシリカ粒子を蒸着するための蒸着システムは、ワークピースの第一の部分にシリカ粒子を蒸着するための第一のバーナーセットと、ワークピースの第二の部分にシリカ粒子を蒸着するための第二のバーナーセットと、ワークピースの第三の部分にシリカ粒子を蒸着するための第三のバーナーセットと、ワークピースを保持し、第一、第二、および、第三、のバーナーセットに対してワークピースを回転させるための旋盤と、を含む。ワークピースの第一および第二の部分は、好ましくは、互いにオーバーラップして、第一のオーバーラップ部分を形成するが、第一のオーバーラップ部分に、第一のバーナーセットに属する一つ目のバーナーと、第二のバーナーセットに属する二つ目のバーナーが、実質的にシリカ粒子を蒸着する。同様に、ワークピースの第二および第三の部分は、好ましくは、互いにオーバーラップして、第二のオーバーラップ部分を形成するが、第二のオーバーラップ部分に、第二および第三のバーナーセットの各々からのバーナーが、実質的にシリカ粒子を蒸着する。この構造において、同一のセットに属する隣接するいずれの蒸着バーナー間の最長距離も、異なるセットに属するバーナー間の最短距離より短い。
【0028】
本明細書に記述される、第六の別の態様において、光ファイバを製造する方法は、原料ロッドを得るステップと、光ファイバ母材を製造するために原料ロッドに溶融シリカを蒸着するステップと、を含む。蒸着するステップは、好ましくは、それぞれ、第一、第二、および、第三、のバーナー対を使用することによって、原料ロッドの、第一、第二、および、第三、の部分にシリカを蒸着するステップを含む。各バーナー対に含まれるバーナーは、好ましくは、互いに約dの距離を隔てて配置されるが、dは、好ましくは、約80mm超である。原料ロッドの第一および第二の部分は互いにオーバーラップし、オーバーラップ部分は約dの幅を有し、第二および第三の部分は互いにオーバーラップし、オーバーラップ部分は約dの幅を有する。この構造において、第一のバーナー対に含まれる一個のバーナーと第二のバーナー対に含まれる一個のバーナーとの間の最短距離はdより大きく、第二のバーナー対に含まれる一個のバーナーと第三のバーナー対に含まれる一個のバーナーとの間の最短距離はdより大きい。
【0029】
さらなる実施形態、ならびに、改良、変形および強化が、本明細書に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】化学気相蒸着システムの好ましい実施形態の斜視図概略図。
【
図2】化学気相蒸着システムの好ましい実施形態の機能に着目した図解。
【
図4】
図1および
図2で表される化学気相蒸着システムにおいて、
図2で表されるようなワークピースを保持し移動させる旋盤の好ましい実施形態を斜視図として提供する概略図。
【
図5】ワークピースに対する化学的バーナーの従来構造500。
【
図6A】化学気相蒸着工程の多重バーナー構造600の好ましい実施形態。
【
図6B】化学気相蒸着工程の多重バーナー構造600の別の好ましい実施形態。
【
図7】
図1で示された化学気相蒸着システムにより行なわれうる、化学気相蒸着を行なう工程の好ましい実施形態を図示する工程系統図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、光ファイバ母材、光ファイバ、純粋な溶融シリカ、溶融シリカ管、コア母材、シリカウェーハ、シリカ基板、および、シリカインゴットの製造、に使用可能な化学気相蒸着システム100の好ましい実施形態を表す。化学気相蒸着システム100は、好ましくは、反応または蒸着室102、蒸着室102の囲い104、コンピューター106とその他電子部品、コンピューター106とその他電子部品の囲い108、配電サブシステム110、配電サブシステム110の囲い112、ガスパネル114、ガスパネルの囲い116、主排気口118と副排気口122、123とを含む吸排気サブシステム、を含む。
【0032】
蒸着室102は、ワークピースまたは原料ロッド上に粒子状物質(たとえばシリカスートの粒子状物質)を蒸着する工程を収容するように構成される。蒸着室102と蒸着システム100は、一般に、次工程の線引工程において光ファイバを製造するために使用されうる光ファイバ母材を生成するために使用されてもよい。蒸着システム100はまた、純粋な溶融シリカロッドを含む溶融シリカロッドを製造するために使用されてもよい。本用途に関して、蒸着システム100は、一般に、実質的に純粋な溶融シリカの初期の原料ロッドに、シリカスートを蒸着する。次いで、この蒸着工程の製品、すなわち純粋な溶融シリカ母材、を焼結し、純粋な溶融シリカロッドを形成し、(たとえば線引、スライス、あるいは他の方法で、純粋な溶融シリカロッドを加工することにより)シリカウェーハまたは基盤、マルチモード光ファイバ、および、様々な用途の他の光学部品、を製造するのに使用されてもよい。
【0033】
蒸着室102の他のサブシステムと構成部品は、一般に、蒸着工程をサポートするために備えられる。一実施形態において、四塩化ケイ素(SiCl4)および酸素(O2)の蒸気を一般に含む蒸着材料が、光ファイバ母材を製造する工程において、化学的バーナーから蒸着室102の蒸着領域146に放出される。蒸着領域146には、化学的バーナーと、このバーナーからの化学物質流と、ワークピースと、があり、この化学物質流はバーナーからワークピースに向かって送られる。バーナーはまた、好ましくは、水素および酸素のガス流を放出し点火する。生じる火炎は、一般に、約1000℃超の温度まで化学成分を加熱する。水素、酸素、および、SiCl4、の化学反応が化学物質流において起こり、化学物質流中のSiCl4は酸化され、二酸化ケイ素の粒子状物質(これは、次いで、ワークピースに蒸着される)と副産物の塩化水素(HCl)を生成する。任意選択的に、蒸着室102において必要な熱を発生させるのにメタンが使用されてもよく、二酸化ケイ素を生成するためのケイ素源としてオクタメチルシリカおよびシラン(オクタメチルシクロテトラシロキサン)が使用されてもよい。
【0034】
蒸着室102は、好ましくは、ワークピース周辺の蒸着領域における空気の層流を供給する。供給される層流は、好ましくは、ワークピースに向かうバーナーからの熱と化学蒸気とが集束されたガス流を維持するのを支援する。細い気密な火炎流は、SiO2粒子状物質をより熱く加熱する一方、ワークピースの表面を比較的より冷たいまま維持するので、SiO2粒子状物質をワークピースに引きつける熱泳動効果を高める。
【0035】
大量の酸素(O2)と燃料ガスは、典型的に、水素(H2)または天然ガスの形で、蒸着室102の中を通され、SiCl4をワークピース上に層状に蒸着されるSiO2スートに変換する蒸着工程を可能にする。
【0036】
図2は、
図1において一般に示される化学気相蒸着システム100の機能面に着目した図解である。
図2において表されるように、化学気相蒸着システム200は、好ましくは、蒸着システム200に供される原料として、SiCl
4源202、窒素(N
2)源204、酸素(O
2)源206、および、H
2源208、を有する。代替として、N
2源、O
2源、H
2源、204、206、208は、外部領域から配管により接続されてもよい。さらに、好ましくは、蒸着システム200は、蒸着工程に使用される材料のガス流を制御するためのコンピューター210、ガスパネル212、予熱器214、および、蒸発器216、を有する。
【0037】
蒸着システム200は、好ましくは、蒸着室または蒸着箱218を含み、これは、好ましくは、四つ以上の化学蒸着バーナー220と、ワークピース224を保持しワークピース224を回転移動させるための旋盤222と、を格納するが、この旋盤222は、任意選択的に四つ以上の化学的バーナー220に対して並進的に移動する。蒸着室218は、好ましくは、ワークピース224の端部近くに位置する一つまたは複数の末端トーチ(図示せず)を格納し、好ましくは、ワークピース224とともに移動する(または静止したままである)。末端トーチは、好ましくは、ワークピース224の端部に熱を送り、ワークピース224が、割れること、および/または、ひび割れすること、を防ぐ。好ましくは、化学的バーナー220周囲の排気が比較的一定に維持されるように、ワークピース224と末端トーチは移動する。代替として、化学的バーナー220が移動し、ワークピース224と端部トーチが静止している(但し、ワークピース224の回転を除く)。蒸着システム200は、好ましくは、スクラバー(図示せず)を含む、空気の吸排気サブシステム226をさらに含む。
【0038】
コンピューター210は、好ましくは、各構成部品の機能を自動的に制御するために、蒸発器216、ガスパネル212、および、蒸着箱218、との電子接続を含む。コンピューター106、210は、好ましくは、ユーザーに蒸着システム200の動作を制御する手段を提供するための、キーボード、タッチスクリーン、ノブ、ボタン、スイッチ、マウス、および/または、音声起動による指令入力のためのマイクロホン、などのユーザー入力装置との接続をさらに含む。さらに、コンピューター210は、好ましくは、システムの状態を示すための表示モニターまたはスピーカーなどのユーザー出力装置を含む。
【0039】
蒸着材料の原料源202、204、206、208は、好ましくは貯蔵器であり、各構成材料を収容するための市販の加圧式タンクでもよい。SiCl4は、好ましくは室温において液状で、好ましくは貯蔵器に収容されている。SiCl4源202は、好ましくは、パイプまたはラインにより予熱器214に連結され、SiCl4が予熱器214に液体として供給されうる。好ましくは、SiCl4源202からSiCl4が漏洩した場合、汚染防止システム(図示せず)へとSiCl4を移送するために、排気口203がSiCl4源202より上に配置される。予熱器214は、予熱器214からの加熱された液体SiCl4を蒸発器216に移送するために、蒸発器216に連結される。
【0040】
蒸発器216は相当量のSiCl4を収容するための容器と、容器においてSiCl4を加熱するための発熱体と、蒸発器216から出入りする材料の流量を調節する多数のバルブ(図示せず)と、を含む。蒸発器216は、好ましくは、コンピューター210と電子的に接続される。この電子接続によって、好ましくは、蒸発器216におけるSiCl4の量は調節され、所定の最低レベルと最高レベルとの間に維持される。コンピューター210は、好ましくは、SiCl4源202から蒸発器216への液体SiCl4の流量を電磁弁217で制御する。蒸発器216はまた、好ましくは、ラインによりN2源204へと計装空気で接続される。SiCl4源202、予熱器214、および、蒸発器216は、好ましくは、コンピューター210からの制御によって、蒸発器216から気化SiCl4の一定の、自動の、非常に長いガス流を、蒸着箱218中のバーナー220へと供給する。
【0041】
気体源204、206、208は、好ましくは、計装空気でガスパネル212へと接続される。ガスパネル212は、気体源204、206、208からのガス流を調節するための、バルブおよびマスフローコントローラを含む。ガスパネル212におけるバルブの制御は、ガスパネル212と電子的に接続された、コンピューター210により実施される。O2とH2のためのラインが、好ましくは、ガスパネル212と蒸着箱218中のバーナー220を計装空気で接続するために提供される。さらに、別のラインが、好ましくは、気化SiCl4を供給するラインに、O2をバーナー220へと供給するために提供される。したがって、「T」字取付具219において、気化SiCl4とO2が混合され、バーナー220へ混合物として供給される。
【0042】
したがって、好ましくは、四個の別々のラインがバーナー220へ接続される:気化したSiCl4とO2の混合物を供給するライン、H2または別の適切な燃料ガスを供給するライン、水素の燃焼のためのO2を供給するライン、および、SiCl4とO2の混合物をシールドするO2を供給するラインである。この構造は、好ましくは、適時にいずれの所与の地点においても、四個の化学的バーナー220各々からのSiO2粒子状物質の量が少なくとも近接することを保証する。
【0043】
図3は、蒸着システムで使用されるバーナー300の好ましい実施形態を表す。バーナー300は、好ましくは、四つのガス流(各供給ラインの一つ)を受け取り、バーナー表面302から四つのガス流を好ましくは放出し、各ガス流は排出孔の少なくとも四つの同心円304、306、308、310の一つから放出される。
【0044】
各成分がバーナー300から放出されると、燃料ガスと酸素とが点火される。SiCl4粒子状物質は、バーナー300の表面から離れた、制御された距離で火炎中で反応する。火炎を通過するSiCl4粒子状物質は酸化してシリカスートを形成し、当初は原料ロッドの形式でありうるワークピース224に向かって送られた原料流に続く。シリカスートがワークピース224に接近するとき、シリカスートは約1100℃の温度である。塩素は、好ましくは、他の材料から分離され、水素と結合され、最終的には塩化水素ガス(HCl)を形成する。これらの反応は、一般に光ファイバ母材上のクラッドのための蒸着工程に利用される。他の成分が、本明細書に記述された化学気相蒸着システムとは異なる実施形態と態様を適用する他の用途用の化学気相蒸着に使用されてもよい。
【0045】
再び
図2を参照すると、シリカスートは継続的に移動しているワークピース224に層状に蒸着される。ワークピース224は旋盤222に載せられ、旋盤222は、好ましくは、バーナー220に対してワークピース224を回転させて並進移動させる。
図4に示されるように、旋盤400は、好ましくは、ワークピース224(たとえば原料ロッド)の両端部が挿入される端部ホルダー402を有する。さらに、旋盤400は、少なくとも一個の、任意選択的に二個の、モータ404と406を含み、バーナー220に対してワークピース224を回転式に、および、任意選択的には並進的にも、移動させる。モータ404、406は、好ましくは、ワークピース224上の蒸着工程の順路の全域におけるワークピース224の回転速度と並進移動との制御のために、
図2に表されたようなコンピューター210により制御される。
【0046】
蒸着工程において、バーナーに対するワークピース224の並進移動速度は、低速(たとえば分速1メートル)と高速(たとえば分速5メートル超)との間で交互(たとえば、右への速度対左への速度)でもよい。速い通過が実行され、遅い通過の最後の(たとえばワークピースの左側端部の)蒸着が、ワークピースの右側端部で始まる遅い通過で、効果的に再開される。そのような動作プロファイルは有利でありうる。なぜなら、左方向への遅い通過の最後で、ワークピースが最も低温なところで、熱泳動力が最も強くなるからである。この例においては右側端部だが、ここが冷却のために最多の時間を費やされたところである。非常に速い通過(たとえば分速20メートル超)は、主としてワークピース上の最も低温の地点から始まる、別の回の遅い通過のためのバーナーの位置を迅速に決める目的で使用されてもよい。このアプローチはまた、参考文献として本明細書に記載されたDabbyらの特許で説明された「フットボール」効果を最小限にするのに役立つ。
【0047】
図5は、シリカスートが蒸着されるワークピースに対する化学的バーナーの従来の構造500を表す。二個のバーナー502が距離dで隔てられ、ワークピース504の長手方向の経路をトラバースする。本構造はまた、好ましくは、ワークピースの湾曲および割れを防ぐためにワークピースの両端部を加熱し固結するトーチ(図示せず)を含む。トーチは、トーチが典型的にはワークピースにスートを蒸着させないという点でバーナーと区別される。蒸着工程において、ワークピースが旋盤を中心に回転している間に、バーナー502の対はワークピース504の長手方向の長さに沿った距離Tをトラバースする。バーナー502の対は、一方向のトラバースの終了点503に達する。次いで、バーナー502の対は、実質的に同じ長手方向の経路に沿って反対方向に戻る。蒸着工程の間に、終了点503が通過する毎にわずかに変化し、母材の表面が波状になるのを防いでもよい。トラバースの終了点503において、ほぼd(dは化学的バーナー502間の距離)の幅を有するワークピースの一部は、対になった二個のバーナー502の内の一個からの蒸着を受けるが、両方のバーナー502からではない。ワークピースの両端部上へスートを蒸着するのが、一個のバーナーのみであることの結果として、テーパー領域506により表されるように、ワークピースのその終了点においていかなるテーパーも拡張されうる。
【0048】
二個のバーナーが、典型的には、ワークピースの同じ領域に蒸着させないように構成されているので、熱泳動の観点から考えると、比較的至近距離にある二個のバーナーの構造が適切である。蒸着工程中、ワークピースが継続的に回転しているので、一対の内の第二のバーナーは、一対の内の第一のバーナーが蒸着させた側と反対側の半径方向のワークピースに典型的には蒸着させるだろう。一旦、第三の近接バーナーがバーナー構造に加えられると、第一のバーナーがスートを蒸着させたのと同じ領域に、第三のバーナーが典型的には一般に蒸着させるので、熱泳動が影響を受ける。第三のバーナーが他の二個のバーナーに近接しているために、母材のその領域は、熱泳動が適切に起こるよう冷えるためには十分な時間を有さなかった。
【0049】
図6Aは、追加のバーナーの使用により改良された蒸着率を提供するとともに、互いに近接した三つ以上のバーナーを使用するために熱泳動力が弱くなるとの従来技術の欠点を克服した、化学気相蒸着法の多重バーナー構造600を表す。新たな多重バーナー構造において、熱泳動は実質的に損なわれないので、蒸着効率が向上し、蒸着率が非常に向上し、また、蒸着材料の有効利用率が向上する。
図6Aは、第一セットの化学的バーナー602、604、および、第二セットの化学的バーナー606、608、を表す。各セットにおけるバーナーは、好ましくは、距離d
1(たとえば80~150mm)で互いから間隔を置いて配置され、d
1は、好ましくは、どちらのセットの化学的バーナー間でも同じである。バーナーのセット間の平均距離はTであり、Tは、好ましくは、熱泳動が起こるのに十分な距離(たとえば40cm)で、一対のバーナーが母材の領域に蒸着させると、残る一対のバーナーによるその領域への蒸着が続く。安定した熱泳動力を確保するために、異なる対のバーナーによる蒸着の間に十分な時間が経過するように、異なる対のバーナー間の距離は一定の閾値より長くなければならない。好ましくは、異なる対のバーナー間の距離(T)は一般に、d
1より大きい(たとえば三倍)。この構造において、距離Tは、また、バーナー602、604、606、608が各方向で長手方向にトラバースする距離とほぼ等しい。二セットのバーナーの各々がワークピース610のほぼ半分への蒸着を担うように、Tの値はワークピース610の長さ(L)の一部のみに相当する。ワークピース610の半ばにおいて、両方のセットのバーナーが、
図6Aに図示される三角形に合わせて、一般に蒸着に寄与する各セットのバーナーとともに、オーバーラップ部分612を担う。この多重バーナー構造において、Lは一般に、約2T+dに等しい。
図6Aにおいて、1セットのバーナーが担うワークピース610の各部分は、単に説明を明瞭にするために、別々に示される。当然、実際上、二つの部分は一つの連続的なワークピース610を形成する。
【0050】
蒸着工程において、一般に、ワークピース610をトラバースする間、化学的バーナー間の距離は一定のままである。たとえば、化学的バーナー602、604が、ワークピース610の左側に沿って右へトラバースし、一方、化学的バーナー606、608が、ワークピース610の右側半分に沿って右へトラバースする。同様に、化学的バーナー602、604が、ワークピース610の左側に沿って左へトラバースし、化学的バーナー606、608が、ワークピース610の右側半分に沿って左へトラバースする。このようにして、バーナーのセット各々が担うワークピース610の部分にスートを蒸着するとき、一方のセットは他方のセットに干渉しない。
【0051】
図6Aに表されたバーナー構造において、四個の化学的バーナー602、604、606、608の各々は、好ましくは、適時にいずれの所与の地点においてもほぼ同じ量のシリカスートを放出する。実際、任意の所与の時点においてどちらのセットのバーナーも同量のシリカスートを確実に放出するのを助けるために、どちらのセットのバーナーも、好ましくは、同じ供給源から化学物質を受け取る。ワークピース610上の任意の所与の地点において、一般に、二個のバーナーがワークピース610にシリカスートを蒸着することができるが、但し、最左端のバーナー602のみがシリカスートを蒸着する左側端部、および、最右端のバーナー608のみがスートを蒸着する右側端部、の、ワークピース610の両端部を除く。しかし、両端部の間では、二個のバーナーがワークピース610にシリカスートを蒸着する。二組のバーナーセットの蒸着領域の境界においては、左側のバーナーセットのバーナー604と右側のバーナーセットのバーナー606が、シリカスートを蒸着するので、境界においても、二個のバーナーがワークピースにシリカスートを蒸着する。そのような蒸着は、一般に、それぞれのセットの各化学的バーナーからの蒸着により形成された母材の部分間のシームレスな移動によって、母材の生成を可能にする。この工程の結果として、
図6Aに表されるように、ワークピース610の両端部の間に、その全域に使用可能な部分Aを備えた母材を形成することができる。
【0052】
図6Bは、多重バーナーを使用するために熱泳動力が弱くなるとの従来技術の欠点を克服した多重バーナー構造640の別例を表す。この別例の多重バーナー構造において、熱泳動は損なわれず、したがって改良された蒸着効率を実現する。
図6Bは一セットの化学的バーナー642、644と、第二のセットの化学的バーナー646、648と、第三のセットの化学的バーナー650、652と、を表す。各セットにおけるバーナーは、好ましくは、距離d
1(たとえば80~150mm)で互いから間隔を置いて配置され、d
1は、好ましくは、各セットの化学的バーナーについて同じである。第一のバーナーセットと第二のバーナーセットとの間の平均距離T
1は、第二のバーナーセットと第三のバーナーセットとの間の平均距離T
2とは、好ましくは同じ(T
1=T
2)である。また、異なるセットにおけるバーナー間の最短距離は、同じセットにおける蒸着バーナー間の最長距離より長い。パラメーターT
1とT
2は、一般に、d
1より非常に大きい(たとえば三倍の)距離(たとえば30cm)であり、T
1とT
2は、ワークピース654の、長さLの一部のみに相当し、好ましくは、Lはおよそ3T
1+d
1(または3T
2+d
1)に等しい。先の構造のように、ワークピースに対して各方向にバーナーが移動する長手方向の距離は、最も近いセットのバーナー間のほぼ平均距離に等しい。
【0053】
蒸着工程において、一般に、バーナーがワークピース654をトラバースする間、化学的バーナー間の距離は一定のままである。たとえば、化学的バーナー642、644はワークピース654の最左端の部分に沿って右へトラバースする間、化学的バーナー646、648はワークピース654の中間部分に沿って右へトラバースし、化学的バーナー650、652はワークピース654の最右端の部分に沿って右へトラバースする。同様に、化学的バーナー642、644がワークピース654の左側に沿って左へトラバースする間、化学的バーナー646、648がワークピース654の中間部分に沿って左へトラバースし、化学的バーナー650、652がワークピース654の最右端の部分に沿って左へトラバースする。このようにして、三個のセットのバーナーは、各セットが担うべきワークピース654の一部分に蒸着する間、互いに干渉しない。
【0054】
本構造において、六個の化学的バーナーの各々は、好ましくは、任意の所与の時点において、同量のシリカスートを放出する。再び、先の実施形態のように、三個のセットのバーナーは、好ましくは、同じ供給源から化学物質を受け取る。ワークピース654上の任意の特定の地点において、一般に、二個のバーナーがワークピース654にシリカスートを蒸着するが、但し、最左端のバーナー642のみがシリカスートを蒸着する左端部656と、最右端のバーナー652が単独でワークピース654のその部分に蒸着する右端部658との、ワークピース654の両端部を除く。しかし、両端部の間では、二個のバーナーがワークピースにシリカスートを蒸着する。各セットのバーナーの蒸着領域の境界660、662においては、二個のバーナーが一般にスートを蒸着する。境界660においては、左のバーナーセットのバーナー644と中央のバーナーセットのバーナー646がシリカスートを蒸着するので、境界において、二個のバーナーがワークピース654にシリカスートを蒸着する。同様に、中央のバーナーセットのバーナー648と右側のバーナーセットのバーナー650が、シリカスートを蒸着するので、この境界662において、二個のバーナーがワークピース654にシリカスートを蒸着する。そのような蒸着は、一般に、それぞれのセットの各化学的バーナーからの蒸着により形成された母材の部分間のシームレスな移動によって、母材の生成を可能にする。この工程の結果として、
図6Bに表されるように、ワークピースの両端部の間に、その全域に使用可能な部分Aを備えた母材を形成することができる。
【0055】
代替構造において、
図6Aのバーナー602、604、606、および、606、のような四個のバーナーが長さLの母材を製造するために使用されてもよく、
図6Bに表されるように、Lはおよそ3T+d
1に等しい。この構造において、四個のバーナーはワークピース対して好ましくは約2Tの距離を移動する。
【0056】
蒸着システムの設計において、静止している(または、ほぼ静止している)バーナーの前を通過するためにワークピースが物理的に並進移動されるか、または、静止している(または、ほぼ静止している)ワークピースに沿って通過するためにバーナーが並進移動されるか、の選択に関連した別の問題と制約がある。物理的に移動するバーナーの場合に、重大な(一般に克服しうるが費用のかかる)問題は、熱と蒸着材料の蒸着室からの安定した排気を維持することに関連し、熱と蒸着材料の源が蒸着室内で移動しているという事実に起因する。一方、静止しているバーナーに対してワークピースが物理的に並進移動すると、予測されるワークピースの大きさと、蒸着室内のその並進移動の距離と、により、蒸着室そのものの最小の長さが決定される問題が生じる。より長くより大きな蒸着室は大きい設置面積を占めるのみならず、製造するのに費用がかかる。両方の選択肢には相反関係があり、製造者は典型的には、排気の問題と、移動する蒸着バーナーを有することに関連した他の設計の問題と、を、最小限度に抑えるように、ワークピースにある程度の並進移動を提供する蒸着室を設計する。本明細書に開示されたバーナー構造を使用することにより、ワークピースに必要な並進移動距離が、
図5に表された構造のような従来の構造と比較して著しく短縮されるので、蒸着室の最小限度の長さが短縮されうる。たとえば、
図5の構造を使用すると、2メートルのワークピースは、一対のバーナー502からワークピース全体に蒸着することを可能にするような各方向に、2メートル並進移動させなければならないだろう。その結果、ワークピースの長さおよび並進移動距離から、長さが4メートルもある蒸着室を事実上必要とするだろう。
【0057】
対照的に、二対の蒸着バーナーがある
図6Aの構造を採用すると、2メートルのワークピースは、単に各方向に1メートル移動するだけでよい。ワークピースの長さおよび並進移動距離は、蒸着室の最小限度の長さを事実上3メートルへと縮小するだろう。三対の蒸着バーナーを有する
図6Bの構造に関しては、2メートルのワークピースは、各方向にほぼ1.5メートルの並進移動を必要とするだろう。ワークピースの長さおよび並進移動距離とは、蒸着室の最小限度の長さを事実上2.5メートルへと縮小するだろう。逆に、蒸着室に所定の長さが与えられると、その中で製造することができる母材の最大の長さは、本明細書に開示された新しいバーナー構造を実装することにより増加される。
【0058】
図7は、化学気相蒸着を行なう工程700の好ましい実施形態を表し、たとえば、
図1で示された化学気相蒸着システム100により行なわれてもよい。任意選択的に、第一ステップ702で、原料ロッドが得られる。蒸着工程において、原料ロッドの長さが設定される。蒸着システムの種々の運転において、様々な長さ、好ましくは約0.8メートルと約4メートルとの間の長さの原料ロッドが、使用されうる。好ましくは、原料ロッドの長さはオペレーター端末において入力され、コンピューターへ送信される。次いで、コンピューターは、原料ロッドの長さに依存する機能を有する蒸着システムの構成部品と通信する。具体的には、旋盤は、蒸着工程700の特別な運転に使用される原料ロッドの長さに応じてプログラムされうる。旋盤がコンピューターから長さの値を受け取ると、好ましくは、旋盤の一端におけるトーチの位置は、ロッドの一端を加熱するために自動的に調整される。もう一方のトーチは、好ましくは、静止している。さらに、ロッドの並進移動を制御するモータは、投入された原料ロッドの長さを反映するトラバースプロファイルを実行する。
【0059】
次のステップ704で、(ワークピースの可能な最大の長さに応じて)バーナーの二個、三個、または、それ以上、のセットの各々が、ワークピースに沿って通過することによりシリカスートが蒸着され、オーバーラップ部分を含めてワークピースのそれぞれの部分にスートを蒸着する。シリカスートを蒸着する最初の通過は、好ましくは、SiCl4のガス流に対して、化学的バーナーからの燃料ガスと酸素の高速のガス流で行なわれる。さらに、この最初の通過においては、移動速度は比較的遅い(たとえば分速1メートル)。この最初の通過のスートのガス流とワークピースの生じる高熱は、原料ロッドと、次いで蒸着されるクラッド層と、の間の最初の境界面にある層を硬化し、好ましくは、原料ロッドを覆うスートの境界における欠損とずれを防ぐ。
【0060】
蒸着工程700の最初の通過中および運行全体にわたって、一定のパラメーターが、好ましくは、運行全体にわたって固定される。具体的には、原料ロッドの各末端における末端トーチは、好ましくは、熱源となる火炎を供給する。末端トーチはワークピースの端部に熱を供給し、両端部をより高密度に保ち、ハンドルガラスへしっかりと保持させることにより、スートのひび割れを防ぎ、焼結中、原料ロッドを覆うスートのずれを防止する。原料ロッド上の特別の地点にスートの両端部を付けるのに十分なほど、ロッドは熱くなければならない。しかし、一般に、端部バーナーが過度の熱を供給すると、原料ロッドは湾曲する。さらに、有効蒸着率を向上するために、バーナー/トーチとワークピースとの間の距離は、運行全体にわたって、ワークピースの直径が増加するのに連動して、好ましくは接近することが許される。ワークピースの直径における自然増加に連動して、バーナー/トーチとワークピースとの間の距離が接近すれば、典型的には、その連続的に増加する大きさと質量とにより、ワークピースに与えられる熱量を増加する必要性が、効果的に満たされる。したがって、ワークピースの直径が増大するに連れ、化学的バーナーは、好ましくは、静止したままである。
【0061】
蒸着工程において、本明細書で説明した実施形態にしたがって、一セットのバーナーがワークピースの一つの部分にスートを蒸着し、同時に、別のセットバーナーがワークピースの別の部分に蒸着する。蒸着工程の全体にわたって、バーナーのセットは互いから一般に等距離のままであり、実際は、ワークピースに対してバーナーの並進移動を行ないうる、同じバーナータイルに付けられてもよい。各セットのバーナーが互いから比較的離れているような構造によって、一個のバーナーがオーバーラップ部分に蒸着すると、その同じ部分に他のセットのバーナーが蒸着する前に、十分な時間が経過する。その時間の経過により、オーバーラップ部分が十分に冷えることが可能になり、蒸着がその部分に行なわれる毎に強い熱泳動力を促進する。
【0062】
一旦蒸着工程が完了され、光ファイバ母材が形成されると、次のステップ706において、母材は炉において焼結され、次いで、次のステップ708において線引され、光ファイバとなる。次のステップ710において、好ましくは、アクリル酸エステルで構成された保護コーティングが線引された光ファイバに形成され、次いで、好ましくは、UV硬化されコーティングは硬化する。最終ステップにおいて、保護された光ファイバは、一般に、百またはそれ以上の光ファイバを保持しうる管に配置され、テレコミュニケーション用途において使用可能な光ファイバケーブルが形成される。
【0063】
発明の好ましい実施形態が本明細書において記述され、さらに付属書類において説明されるが、本発明の概念の範囲内にとどまる多くの変形が可能である。そのような変形は、明細書と図面を精査すれば、当該技術における当業者には明らかであろう。そのため、本発明は、添付されたいずれかの特許請求の範囲の技術思想と範囲内にある場合以外は、限定することができない。
【0064】
〔その他の実施形態〕
本発明に係るワークピース上にシリカ粒子を蒸着するための第一の蒸着システムは、ワークピースの第一の部分にシリカ粒子を蒸着するための、第一のバーナーと第二のバーナーを有する第一の化学蒸着バーナーセットと、ワークピースの第二の部分にシリカ粒子を蒸着するための、第三のバーナーと第四のバーナーを有する第二の化学蒸着バーナーセットと、ワークピースを保持し、第一および第二のバーナーセットに対してワークピースを回転させるための旋盤と、を含み、ワークピースの第一および第二の部分はオーバーラップ部分において互いにオーバーラップし、オーバーラップ部分上に、各セットに属する一個のバーナーが、実質的に、シリカ粒子を蒸着し、同一のセットに属する隣接するいずれの蒸着バーナー間の最長距離も、異なるセットに属するバーナー間の最短距離より短い、ワークピース上にシリカ粒子を蒸着するための蒸着システムでありうる。
【0065】
本発明に係る第一の蒸着システムは、一態様として、第一および第二のバーナーが、互いにほぼ距離dを隔てて配置され、第三および第四のバーナーが、互いにほぼ距離dを隔てて配置され、第一のバーナーセットと第二のバーナーセットとの間の平均距離Tが3×dを超え、オーバーラップ部分が約dの幅を有しうる。
【0066】
本発明に係る第一の蒸着システムは、一態様として、ワークピースLの長さが約80cm超であり、dが約80mmと約150mmとの間でありうる。
【0067】
本発明に係る第一の蒸着システムは、一態様として、Lが2×Tを超えるものでありうる。
【0068】
本発明に係る第一の蒸着システムは、一態様として、蒸着のあいだ、第一、第二、第三、および、第四、のバーナーが、共通の原料源から化学物質を受け取り、ほぼ同じ率でスートを放出するものでありうる。
【0069】
本発明に係る第一の蒸着システムは、一態様として、化学蒸着バーナーの総数が四個でありうる。
【0070】
本発明に係る光ファイバを製造する第一の方法は、原料ロッドを得るステップと、光ファイバ母材を製造するために原料ロッドに溶融シリカを蒸着するステップと、を含み、蒸着するステップが、互いに約dの距離を隔てた第一のバーナー対を使用して原料ロッドの第一の部分にシリカを蒸着するステップと、互いに約dの距離を隔てた第二のバーナー対を使用して原料ロッドの第二の部分にシリカを蒸着するステップと、を含み、第一および第二の部分は互いにオーバーラップし、当該オーバーラップ部分は約dの幅を有し、第一のバーナー対と第二のバーナー対とが距離Tで隔てられ、Tがdの三倍を超える光ファイバを製造する方法でありうる。
【0071】
本発明に係る第一の方法は、一態様として、光ファイバ母材を焼結するステップと、光ファイバ母材を光ファイバへと線引するステップと、をさらに含みうる。
【0072】
本発明に係る第一の方法は、一態様として、光ファイバに保護コーティングを形成し、保護された光ファイバを形成するステップをさらに含みうる。
【0073】
本発明に係る第一の方法は、一態様として、保護された光ファイバを管に配置し、光ファイバケーブルを形成するステップをさらに含みうる。
【0074】
本発明に係る第一の方法は、一態様として、前記dが約80mmを超えるものでありうる。
【0075】
本発明に係るワークピース上にシリカ粒子を蒸着するための第二の蒸着システムは、ワークピースの第一の部分にシリカ粒子を蒸着するための第一のバーナーセットと、ワークピースの第二の部分にシリカ粒子を蒸着するための第二のバーナーセットと、ワークピースの第三の部分にシリカ粒子を蒸着するための第三のバーナーセットと、ワークピースを保持し、第一、第二、および、第三、のバーナーセットに対してワークピースを回転させるための旋盤と、を含み、ワークピースの第一および第二の部分は、互いにオーバーラップして、第一のオーバーラップ部分を形成するが、第一のオーバーラップ部分に、第一のバーナーセットと第二のバーナーセットから一個のバーナーが、実質的にシリカ粒子を蒸着し、ワークピースの第二および第三の部分は、互いにオーバーラップして、第二のオーバーラップ部分を形成するが、第二のオーバーラップ部分に、第二および第三のバーナーセットの各々からのバーナーが、実質的にシリカ粒子を蒸着し、同一のセットに属する隣接するいずれの蒸着バーナー間の最長距離も、異なるセットに属するバーナー間の最短距離より短い、ワークピース上にシリカ粒子を蒸着するための蒸着システムでありうる。
【0076】
本発明に係る第二の蒸着システムは、一態様として、第一のバーナーセットが第一と第二のバーナーを含み、第二のバーナーセットが第三と第四のバーナーを含み、および、第三のバーナーセットが第五と第六のバーナーを含み、各セットのバーナー間の間隔がほぼ距離dであり、第一のバーナーセットと第二のバーナーセットとの間の平均距離T、および、第二のバーナーセットと第三のバーナーセットとの間の平均距離T、が3×dを超え、オーバーラップ部分が約dの幅を有するものでありうる。
【0077】
本発明に係る第二の蒸着システムは、一態様として、ワークピースLの長さが約80cm超であり、dが約80mmと約150mmとの間でありうる。
【0078】
本発明に係る第二の蒸着システムは、一態様として、Lが3Tを超えるものでありうる。
【0079】
本発明に係る第二の蒸着システムは、一態様として、蒸着のあいだ、第一、第二、第三、第四、第五、および、第六、のバーナーが共通の原料源から化学物質を受け取り、ほぼ同じ率でスートをワークピースに放出するものでありうる。
【0080】
本発明に係る光ファイバを製造する第二の方法は、原料ロッドを得るステップと、光ファイバ母材を製造するために原料ロッドに溶融シリカを蒸着するステップと、を含み、蒸着するステップが、互いに約dの距離を隔てた第一のバーナー対を使用して原料ロッドの第一の部分にシリカを蒸着するステップと、互いに約dの距離を隔てた第二のバーナー対を使用して原料ロッドの第二の部分にシリカを蒸着するステップと、を含み、互いに約dの距離を隔てた第三のバーナー対を使用して原料ロッドの第三の部分にシリカを蒸着するステップと、を含み、第一および第二の部分は互いにオーバーラップし、当該オーバーラップ部分は約dの幅を有し、第二および第三の部分は互いにオーバーラップし、当該オーバーラップ部分は約dの幅を有し、第一のバーナー対の一個のバーナーと第二のバーナー対の一個のバーナーとの間の最短距離はdより大きく、第二のバーナー対の一個のバーナーと第三のバーナー対の一個のバーナーとの間の最短距離はdより大きい光ファイバを製造する方法でありうる。
【0081】
本発明に係る第二の方法は、一態様として、光ファイバ母材を焼結するステップと、光ファイバ母材を光ファイバへと線引するステップと、をさらに含みうる。
【0082】
本発明に係る第二の方法は、一態様として、光ファイバに保護コーティングを形成し、保護された光ファイバを形成するステップをさらに含みうる。
【0083】
本発明に係る第二の方法は、一態様として、保護された光ファイバを管に配置し、光ファイバケーブルを形成するステップをさらに含みうる。
【0084】
本発明に係る第二の方法は、一態様として、前記dが約80mmを超えるものでありうる。
【0085】
本発明に係るワークピース上にシリカ粒子を蒸着するための第三の蒸着システムは、ワークピースの第一の部分にシリカ粒子を蒸着するための、第一の化学蒸着バーナーと第二の化学蒸着バーナーを有する第一のバーナーセットと、前記第一のバーナーセットから距離Tを隔てて設けられた、前記ワークピースの第二の部分にシリカ粒子を蒸着するための、第三の化学蒸着バーナーと第四の化学蒸着バーナーを有する第二のバーナーセットと、第一、第二、第三、および第四の前記化学蒸着バーナーが前記ワークピースに面するように、第一および第二の前記バーナーセットに対して前記ワークピースを保持および回転させるように構成された旋盤と、前記旋盤に接続され、前記バーナーセットに対する前記ワークピースの位置を制御するコンピューターと、を含み、それぞれの前記バーナーセットに含まれる二つの前記化学蒸着バーナーの間の長手方向の最長距離は、異なる前記バーナーセットに含まれる二つの前記化学蒸着バーナーの間の最短距離より短く、前記コンピューターは、前記旋盤を駆動して、前記ワークピースの長さに基づいて、前記ワークピースと前記バーナーセットとの間の長手方向の相対往復運動を生じさせるあいだ、前記ワークピースを回転させるように構成され、前記相対往復運動は、各方向の長手方向の経路に沿って、前記第一のバーナーセットの前記化学蒸着バーナーのうちの一つのみが、第一端部分にトラバースし、前記第一のバーナーセットの前記化学蒸着バーナーのうちの一つが、前記第一の部分と前記第二の部分とがオーバーラップするオーバーラップ部分にトラバースし、前記第二のバーナーセットの前記化学蒸着バーナーのうちの一つが、前記オーバーラップ部分にトラバースし、前記第一のバーナーセットの前記化学蒸着バーナーの両方が、前記第一端部分から前記オーバーラップ部分まで延びる前記第一の部分の第一中間部分にトラバースし、前記第二のバーナーセットの前記化学蒸着バーナーの両方が、前記オーバーラップ部分から前記ワークピースの第二端部分に向けて延びる前記第二の部分の第二中間部分にトラバースする、ように構成されるワークピース上にシリカ粒子を蒸着するための蒸着システムでありうる。
【0086】
本発明に係る第三の蒸着システムは、一態様として、第一および第二の前記化学蒸着バーナー間の距離が、およそ距離dであり、第三および第四の前記化学蒸着バーナー間の距離が、およそ距離dであり、第一および第二の前記バーナーセット間の前記距離Tが、前記距離dの三倍より大きく、前記オーバーラップ部分が、前記距離dとおよそ等しい幅を有するものでありうる。
【0087】
本発明に係る第三の蒸着システムは、一態様として、前記ワークピースの長さLが、約80cmより大きく、前記距離dが、約80~約150mmでありうる。
【0088】
本発明に係る第三の蒸着システムは、一態様として、前記長さLは、第一および第二の前記バーナーセット間の前記距離Tの二倍より大きいものでありうる。
【0089】
本発明に係る第三の蒸着システムは、一態様として、蒸着のあいだの一部分で、第一、第二、第三、および、第四の前記化学蒸着バーナーが、共通の原料源から化学物質を受け取り、ほぼ同じ率でスートを放出するものでありうる。
【0090】
本発明に係る第三の蒸着システムは、一態様として、前記化学蒸着バーナーの総数が四つでありうる。
【0091】
本発明に係る第三の蒸着システムは、一態様として、前記ワークピースと前記バーナーセットとの間の長手方向の前記相対往復運動が、各方向の長手方向の経路に沿って、前記第二のバーナーセットの前記化学蒸着バーナーのうちの一つのみが、前記第二端部分にトラバースする、ように構成されうる。
【0092】
本発明に係る第三の蒸着システムは、一態様として、前記第二のバーナーセットから距離Tを隔てて設けられた、前記ワークピースの第三の部分にシリカ粒子を蒸着するための、第五の化学蒸着バーナーと第六の化学蒸着バーナーを有する第三のバーナーセットをさらに含み、前記旋盤は、さらに、第五および第六の前記化学蒸着バーナーが前記ワークピースに面するように、第五および第六の前記化学蒸着バーナーに対して前記ワークピースを回転させるように構成され、前記ワークピースと前記バーナーセットとの間の長手方向の前記相対往復運動は、各方向の長手方向の経路に沿って、前記第二のバーナーセットの前記化学蒸着バーナーのうちの一つが、前記第二の部分と前記第三の部分とがオーバーラップする第二オーバーラップ部分にトラバースし、前記第三のバーナーセットの前記化学蒸着バーナーのうちの一つが、前記第二オーバーラップ部分にトラバースし、前記第三のバーナーセットの前記化学蒸着バーナーの両方が、前記第二オーバーラップ部分から前記ワークピースの第二端部分に向けて延びる前記第三の部分の第三中間部分にトラバースする、ように構成されうる。
【0093】
本発明に係る第三の蒸着システムは、一態様として、前記ワークピースと前記バーナーセットとの間の長手方向の前記相対往復運動が、各方向の長手方向の経路に沿って、前記第三のバーナーセットの前記化学蒸着バーナーのうちの一つのみが、前記第二端部分にトラバースする、ように構成されうる。
【0094】
本発明に係る第三の蒸着システムは、一態様として、第一、第二、および第三の前記バーナーセットのそれぞれにおける前記化学蒸着バーナー間の距離が、およそ距離dであり、前記距離Tが、前記距離dの三倍より大きく、前記オーバーラップ部分および前記第二オーバーラップ部分が、前記距離dとおよそ等しい幅を有しいものでありうる。
【0095】
本発明に係る第三の蒸着システムは、一態様として、前記ワークピースの長さLが、第一および第二の前記バーナーセット間の前記距離Tの三倍より大きいものでありうる。
【0096】
本発明に係る第三の蒸着システムは、一態様として、長手方向の前記相対往復運動のあいだの少なくとも一部分で、第一、第二、第三、第四、第五、および、第六、の前記化学蒸着バーナーが、共通の原料源から化学物質を受け取り、ほぼ同じ率でスートを前記ワークピースに放出するものでありうる。
【0097】
本発明に係る光ファイバを製造する第三の方法は、ワークピースと、第一および第二のバーナーセットとの間の長手方向の相対往復運動を生じさせることによって、回転する前記ワークピース上にシリカ粒子を蒸着して、光ファイバ母材を製造するステップを有する、光ファイバを製造する方法であって、前記相対往復運動は、各方向の長手方向の経路に沿って、第一の前記バーナーセットが、前記ワークピースの第一の部分にシリカ粒子を蒸着し、ここで、第一の前記バーナーセットは、第一の化学蒸着バーナーと、前記第一の化学蒸着バーナーからおよそ距離dを隔てて設けられた第二の化学蒸着バーナーと、を有し、第二の前記バーナーセットが、前記ワークピースの第二の部分にシリカ粒子を蒸着し、ここで、第二の前記バーナーセットは、第三の化学蒸着バーナーと、前記第三の化学蒸着バーナーからおよそ距離dを隔てて設けられた第四の化学蒸着バーナーと、を有し、第二および第三の前記化学蒸着バーナーが、前記第一の部分と前記第二の部分とがオーバーラップするオーバーラップ部分にシリカ粒子を蒸着し、前記第二のバーナーセットは、前記第一のバーナーセットから距離Tを隔てて設けられており、ここで、前記距離Tは前記距離dの三倍より大きいように構成される、光ファイバを製造する方法でありうる。
【0098】
本発明に係る光ファイバを製造する第三の方法は、一態様として、前記ワークピースと、第三のバーナーセットとの間の長手方向の相対往復運動が、各方向の長手方向の経路に沿って、前記第三のバーナーセットが、前記ワークピースの第三の部分にシリカ粒子を蒸着し、ここで、前記第三のバーナーセットは、第五の化学蒸着バーナーと、前記第五の化学蒸着バーナーからおよそ距離dを隔てて設けられた第六の化学蒸着バーナーと、を有し、第四および第五の前記化学蒸着バーナーが、前記第二の部分と前記第三の部分とがオーバーラップする第二オーバーラップ部分にシリカ粒子を蒸着する、ように構成され、前記第三のバーナーセットが、前記第二のバーナーセットから距離Tを隔てて設けられ
ており、ここで、前記距離Tは前記距離dの三倍より大きいものでありうる。
【0099】
本発明に係る光ファイバを製造する第三の方法は、一態様として、前記光ファイバ母材を焼結するステップと、前記光ファイバ母材を線引して光ファイバにするステップと、をさらに有しうる。
【0100】
本発明に係る光ファイバを製造する第三の方法は、一態様として、光ファイバに保護コーティングを施して保護された光ファイバを形成するステップをさらに有しうる。
【0101】
本発明に係る光ファイバを製造する第三の方法は、一態様として、前記保護された光ファイバを管に入れて光ファイバケーブルを形成するステップをさらに有しうる。
【0102】
本発明に係る光ファイバを製造する第三の方法は、一態様として、前記距離dが、約80mmより大きいものでありうる。