(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048386
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】多自由度電磁機械
(51)【国際特許分類】
H02K 21/22 20060101AFI20220317BHJP
H02K 41/03 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
H02K21/22 M
H02K41/03 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022016246
(22)【出願日】2022-02-04
(62)【分割の表示】P 2017101457の分割
【原出願日】2017-05-23
(31)【優先権主張番号】15/165,587
(32)【優先日】2016-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】パブロ・バンデラ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス・ロス
(72)【発明者】
【氏名】マーク・エイ.・カーソン
(57)【要約】
【課題】モータ、発電機又はモータ-発電機として動作し得る多自由度電磁機械が、第1の構造と、第2の構造とを有する。
【解決手段】第1の構造が、第1の導体と、第2の導体と、第3の導体とを備え、これらの各々が異なる軌道に従う。第1、第2及び第3の導体が一体の表面の概略的な形状を形成する。第2の構造が第1の構造に隣接して配置され、磁界を発する磁石を有する。磁石は、その磁極のうちの少なくとも一方の磁極が表面の方を向く。少なくとも一方の磁極から生じる磁界が電気伝導体のうちの任意の電気伝導体内の電流と相互作用するとき、ローレンツ力が第1の構造と第2の構造との間の相対的運動に影響を与える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ、発電機又はモータ-発電機として動作し得る多自由度電磁機械であって、
第1の導体、第2の導体及び第3の導体を備える第1の構造であって、前記第1の導体が第1の概略的な軌道に従い、前記第2の導体が、前記第1の概略的な軌道とは異なる第2の概略的な軌道に従い、前記第3の導体が、前記第1及び第2の概略的な軌道とは異なる第3の概略的な軌道に従い、前記第1、第2及び第3の導体が共に表面の概略的な形状を形成する、第1の構造と、
前記第1の構造に隣接して配置され、磁界を発する磁石を有する第2の構造であって、前記磁石は、その磁極のうちの少なくとも一方の磁極が前記表面の方を向く、第2の構造と
を備え、
前記少なくとも一方の磁極から生じる磁界が前記電気伝導体のうちの任意の電気伝導体内の電流と相互作用するとき、ローレンツ力が前記第1の構造と前記第2の構造との間の相対運動に影響を与える、
多自由度電磁機械。
【請求項2】
前記第1の構造が、透磁性材料で形成されて外側表面を有する第1のボディを更に備え、前記外側表面の少なくとも一部分が前記表面の概略的な形状を有し、
前記第1、第2及び第3の導体が、少なくとも、前記第1の構造の前記外側表面の少なくとも一部分に隣接するように配置され、
前記第1、第2及び第3の概略的な軌道が、前記第1、第2及び第3の導体を互いを基準として所定の角度で配向されるようなものである、
請求項1に記載の機械。
【請求項3】
前記第1の構造と前記第2の構造との間の相対的運動を制御することを目的として、前記第1、第2及び第3の導体の各々の電流の大きさ及び方向を個別に制御するように構成される、前記第1、第2及び第3の導体に結合される制御部
を更に備える、請求項1に記載の機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2015年7月7日に出願された米国特許出願第14/792,799号の一部継続出願(CIP:continuation-in-part)である。
[0002]本発明は概して電磁機械に関し、より詳細には、モータ及び/又は発電機などの多自由度電磁機械に関する。
【背景技術】
【0002】
[0003]物体を2つ以上の自由度(DoF:degree of freedom)に移動させるように設計された現在使用可能な運動制御システムは、各DoFについて個別のモータ又はアクチュエータを含むことが一般に知られている。より具体的には、2DoF動作を実現するには少なくとも2つのモータ又はアクチュエータが必要とされ、3DoF動作を実現するには少なくとも3つのモータ又はアクチュエータが必要とされるなどということになる。したがって、2つ以上のDoFを伴う機構は、ある程度大きくなり、かさばって扱いにくく、したがって非効率的なものとなる傾向がある。
【0003】
[0004]電子装置及びセンサ技術が、近年著しく小型化される一方、機械的動作技術はこれに追いついていない。パン/チルト機構などの動作システムが、典型的には、ミニ又はマイクロUAV(無人飛行体(unmanned air vehicles))及びマイクロ衛星などのより小型のプラットフォームにおいて使用されないのは、これが理由である。多DoF運動制御に依存するロボットシステムは、現在のモーションオンモーション(motion-on-motion)システムに内在する非効率性に単に耐えなければならない。
【0004】
[0005]上述の問題への1つの解決策が、「Global Pointing Actuator」と題された米国特許第7,675,208号に開示されている。そこで開示されるアクチュエータは、「緯度コイル」及び「経度コイル」が巻回された球状ステータを含む。しかしながら、このアクチュエータは、特定の欠点も呈する。例えば、経度コイルは巻回するのが物理的に困難である。その理由は、巻き線が平行でなく、球状ステータの極に集束する又は「集まる(bunch up)」からである。これによって全体的なコスト及び大きさが増加し、コイルの効率性が低下する。別の欠点は、電動子のオープンループ位置制御を実現するために個別の中央寄せトルク(例えば、バネ、又は磁気的移動止め)が必要となることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006]したがって、既知の装置よりも比較的小型化され、より扱いやすく、より効率的であり、及び/又は巻回するのが困難なコイルを含まない、及び/又はオープンループ位置制御を実行するために個別の中央寄せトルクに依存しない、多自由度電気機械的機械が求められている。本発明は、少なくともこれらの要求に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007]本要約は、「発明を実施するための形態」において更に説明される選択的な概念を簡略化された形で記述するように提供される。本要約は、特許請求される主題の主要な
又は本質的な特徴を特定することを意図しておらず、また、特許請求される主題の範囲を決定する補助として使用されることも意図しない。
【0008】
[0008]実施形態では、モータ、発電機又はモータ-発電機として動作し得る多自由度電磁機械が、第1の構造と、第2の構造とを有する。第1の構造が、第1の導体と、第2の導体と、第3の導体とを備える。第1の導体が第1の概略的な軌道に従い、第2の導体が第1の概略的な軌道とは異なる第2の概略的な軌道に従い、第3の導体が第1及び第2の概略的な軌道とは異なる第3の概略的な軌道に従う。第1、第2及び第3の導体が表面の概略的な形状を共に形成する。第2の構造が第1の構造に隣接して配置され、磁界を発する磁石を有する。磁石は、その磁極のうちの少なくとも一方の磁極が表面の方を向く。少なくとも一方の磁極から生じる磁界が電気伝導体のうちの任意の電気伝導体内の電流と相互作用するとき、ローレンツ力が第1の構造と第2の構造との間の相対的運動に影響を与える。
【0009】
[0009]更に、多自由度電気機械的機械の他の望ましい特徴及び特性は、付随する図面及び前述の背景技術と併せて、後述の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0010】
[0010]以下において、本発明は下記の図面と併せて説明され、図面において類似の数字は類似の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】[0011]多自由度球面アクチュエータの1つの例示的な実施形態の平面図である。
【
図2】[0012]多自由度球面アクチュエータの一部の単純化された断面図である。
【
図3】[0013]多自由度球面アクチュエータの一部の単純化された断面図であり、トルクがどのように生成されるかを示す図である。
【
図4】[0014]
図4Aは、電動子がある電動子位置にある多自由度球面アクチュエータを示す図である。
図4Bは、電動子が異なる電動子位置にある多自由度球面アクチュエータを示す図である。
図4Cは、電動子が更に異なる電動子位置にある多自由度球面アクチュエータを示す図である。
【
図5】[0015]多自由度球面アクチュエータが、モータとして動作され得る方法について示す図である。
【
図6】[0016]電動子が回転するとともに、様々な電動子位置のうちの1つに位置される、多自由度球面アクチュエータを示す図である。
【
図7】電動子が回転するとともに、様々な電動子位置のうちの別の1つに位置される、多自由度球面アクチュエータを示す図である。
【
図8】電動子が回転するとともに、様々な電動子位置のうちの更に別の1つに位置される、多自由度球面アクチュエータを示す図である。
【
図9】[0017]多自由度作動制御システムの機能ブロック図である。
【
図10】[0018]球状ステータ内に電子装置が取り付けられた多自由度球面アクチュエータの平面図である。
【
図11】[0019]ジンバル方式で取り付けられた多自由度球面アクチュエータを示す図である。
【
図12】非ジンバル方式で取り付けられた多自由度球面アクチュエータを示す図である。
【
図13】[0020]
図13Aは、多自由度球面アクチュエータの別の実施形態を示す図である。
図13Bは、多自由度球面アクチュエータの別の実施形態を示す図である。
【
図14】[0021]多自由度電磁機械の別の実施形態の一部分を示す単純化された図である。
【
図15】[0022]
図14の機械を実装するのに使用され得る表面の種類のいくつかの非限定的な実施例を示す図である。
【
図16】
図14の機械を実装するのに使用され得る表面の種類のいくつかの非限定的な実施例を示す図である。
【
図17】
図14の機械を実装するのに使用され得る表面の種類のいくつかの非限定的な実施例を示す図である。
【
図18】[0023]多自由度制御システムを示す機能ブロック図である。
【
図19】[0024]第1の実施形態による、振動触覚フィードバックを発生させるように構成される本明細書で説明される機械の実施形態を示す図である。
【
図20】第1の実施形態による、振動触覚フィードバックを発生させるように構成される本明細書で説明される機械の実施形態を示す図である。
【
図21】第1の実施形態による、振動触覚フィードバックを発生させるように構成される本明細書で説明される機械の実施形態を示す図である。
【
図22】第1の実施形態による、振動触覚フィードバックを発生させるように構成される本明細書で説明される機械の実施形態を示す図である。
【
図23】[0025]第2の実施形態による振動触覚フィードバックを発生させるように構成される本明細書で説明される機械の実施形態を示す図である。
【
図24】[0026]協働的センサネットワーク(cooperative sensor network)の別の実施形態を実装するのに使用される本明細書で説明される機械の実施形態を示す図である。
【
図25】協働的センサネットワークの別の実施形態を実装するのに使用される本明細書で説明される機械の実施形態を示す図である。
【
図26】[0027]自動車ドライブトレイン内に実装される本明細書で説明される機械の実施形態を示す図である。
【
図27】[0028]自動車操向機能を実装するように構成される本明細書で説明される機械の実施形態を示す図である。
【
図28】[0029]自動車制動機能を実装するように構成される本明細書で説明される機械の実施形態を示す図である。
【
図29】[0030]車両ホイール内に直接に設置される本明細書で説明される機械の実施形態を示す図である。
【
図30】[0031]デュアルシャフトドライブを実装するように構成される本明細書で説明される機械の実施形態を示す図である。
【
図31】デュアルシャフトドライブを実装するように構成される本明細書で説明される機械の実施形態を示す図である。
【
図32】[0032]可変運動量の制御モーメントジャイロを実装するように構成される本明細書で説明される機械の実施形態を示す図である。
【
図33】可変運動量の制御モーメントジャイロを実装するように構成される本明細書で説明される機械の実施形態を示す図である。
【
図34】[0033]平面状のボイスコイルとして構成される機械の一実施形態の実施例を示す図である。
【
図35】[0034]非球形状の機械のための1つの有用な文脈の実施形態を示す図である。
【
図36】[0035]本明細書で説明される機械の一部分の代替の配置及び構成を示す図である。
【
図37】本明細書で説明される機械の一部分の代替の配置及び構成を示す図である。
【
図38】本明細書で説明される機械の一部分の代替の配置及び構成を示す図である。
【
図39】[0036]直交するように配置される開示される導体のセットをその上に備える球形構造の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0037]以下の詳細な説明は、本質的に単に例示的なものであり、本発明又は本発明の適用及び使用を限定することを意図しない。本明細書において使用されるとき、「例示的(exemplary)」という語は、「実例、事例、例証として働く(serving as an example, instance, or illustration)」ということを意味する。したがって、「例示的」として本明細書に説明される任意の実施形態は、必ずしも、他の実施形態よりも好ましい又は有利であると解釈されない。本明細書において説明される全ての実施形態は、当業者が本発明を実行又は使用することを可能にするために提供される例示的な実施形態であり、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものではない。更に、前記の技術分野、背景技術、発明の概要、又は下記の詳細な説明において提示される、明示的な又は暗示的な理論のいずれによっても拘束されることを意図してない。
【0013】
[0038]これに関し、本明細書において開示される多自由度球面アクチュエータは、説明及び解説を容易にするために、概してモータとして動作するものとして説明されることが留意される。しかし、開示されるアクチュエータが、外力により電動子を移動させて導体内に電流を誘導することにより発電機としても動作し得るか、あるいは、センサ(例えば、生じる逆起電力からの速度センサ)又は多くの他のデバイスとしても動作し得ることを当業者であれば認識するであろう。また、
図2~5が導体のうちのいくつかの導体を湾曲するものとして示すが、これは単に三次元(3D)球形状を伝えるために行われていることに留意されたい。加えて、以下の説明では、いくつかの実施形態において第1及び第2の構造がそれぞれ以下で説明されるステータ及び電動子であってよいことに留意されたい。しかし、これは常にそうであるというわけではない。例えば、いくつかの実施形態では、第1及び第2の構造がそれぞれ電動子及びステータであってもよい。加えて、球形構成で通常使用される軌道の有用な実施例として実施形態のうちいくつかの実施形態を説明するのに、コイル及び巻き線という用語が使用される。
【0014】
[0039]まず、
図1を参照すると、多自由度球面アクチュエータ100の一実施形態の平面図が図示され、平面図は、球状ステータ102と、電動子104と、複数の磁石106とを含む。球状ステータ102は、その名称が示すように、球状であり、したがって3つの直交して配置された対称軸108、すなわち第1の対称軸108-1と、第2の対称軸108-2と、第3の対称軸108-3とを有する。球状ステータ102は、好ましくは、鉄又は鉄合金などの透磁性の材料からなり、好ましくは、中空の球として実装される。好ましくは、球状ステータ102は、例えば取り付け構造112を介して、別の不図示の構造に固定して取り付けられる。不図示の構造は、二、三の例を挙げると、例えば、壁、天井、船舶又は航空機の隔壁、若しくは船舶又は航空機の外殻であり得る。
【0015】
[0040]電動子104は、球状ステータ102から離間され、球状ステータ102の少なくとも一部を包囲する。電動子104は、内側面114と外側面116とを有し、球状ステータ102に対して移動可能であるように取り付けられる。好ましくは、電動子104は、球状ステータ102に対して、2つ又は3つの対称軸108の周りを移動可能であるように取り付けられる。結果として、電動子104の外側面116に取り付けられ得るセンサ、レーザ又は他の適切な装置などの装置115は、所望の位置へと移動され得る。この移動がどのようにしてなされるかは、更に後述される。球状ステータ102と同様に、電動子104もまた、好ましくは、例えば鉄又は鉄合金などの透磁性の材料からなる。
【0016】
[0041]磁石106(
図1においては1つだけ見えている)は、電動子104の内側面116に結合され、電動子104の内側面116から内側に向かって延在し、球状ステータ102から離間されている。図示される実施形態において、
図2により明瞭に示されるよ
うに、球面アクチュエータ100は、複数の磁石106を含む。図示される実施形態において、球面アクチュエータ100は、一組の磁石、すなわち第1の磁石106-1と第2の磁石106-2とを含む。しかしながら、他の実施形態において、3つ以上又は2つ未満の磁石106が使用され得ることは理解されよう。加えて、磁石106が様々な形状及び寸法を有し得、多様に配置され得ることが認識されよう。例えば、示される実施形態では、磁石106が全体として弧形状を有するが、他の実施形態において、磁石106は、半球形状、あるいは、必要とされるか又は望まれる場合、他の多くの形状のうちの任意の1つ形状であり得る。加えて、磁石106の弧の長さが変更され得ること、及び、磁石106が、永久磁石、あるいは、必要とされるか又は望まれる場合、電気磁石であり得ることも認識されたい。更にステータ102の方を向く磁石106の部分は好適には効率のために電動子102と同様に外形を形成されるが、これらの部分はそのように外形を形成される必要はない。
図36に示される実施形態では、例えば、1つ又は複数の磁石106が、好適には(必ずというわけではない)少なくとも部分的にステータ102と同様に外形を形成される透磁性の構造(例えば、電動子104)上に配置又は設置され得る。また、
図37及び38に示されるように、1つ又は複数の磁石106が電動子104の一部分の一部として形成され得るか(
図37)、又は、別個に形成されるが電動子104の少なくとも一部分によって包囲され得る(
図38)。
図37及び38内の点線が例示の磁束通路を示すことに留意されたい。また、
図38に示される実施形態が、磁束を示される磁束通路となるように方向づけるための孔又はスロット3802(想像線で示される)を任意選択で有することができることに更に留意されたい。これらの孔又はスロット3802は任意選択でエポキシなどの適切な材料で充填され得る。
【0017】
[0042]しかしながら、形状及び寸法に関わらず、磁石106は、好ましくは、球状ステータ102に対する第1の磁石106-1の極性が、第2の磁石106-2の極性と反対向きになるように配置される。例えば、
図2に図示される実施形態において、第1の磁石106-1のN極(N)が、球状ステータ102のより近くに位置し、一方、第2の磁石106-2のS極(S)が、球状ステータ102のより近くに位置する。
【0018】
[0043]
図2が更に図示するように、球状ステータ102は、その上に巻回される複数のコイル202を有する。図示される実施形態において、これらのコイルは、第1のコイル202-1と、第2のコイル202-2と、第3のコイル202-3とを含む。しかしながら、いくつかの実施形態において、球面アクチュエータ102は、3つのコイルの代わりに、2つのコイルだけを有して実装されてもよいことは理解されよう。第1のコイル202-1は、球状ステータ102に第1の対称軸108-1を中心に巻回され、第2のコイル202-2は、球状ステータ102に第2の対称軸108-2を中心に巻回され、第3のコイル202-2は、含まれる場合、球状ステータ102に第3の対称軸202-3を中心に巻回される。球は無限の個数の対称軸を有することに留意されたい。したがって、第1、第2及び第3の対称軸108-1、108-2、108-3は、3つの対称軸の全てが互いに直交する限り、これらの対称軸のうちの任意のものでよい。
【0019】
[0044]説明を更に進める前に、コイル202は、手動でワイヤを巻回されてもよく、又は既知のプリント法を用いて柔軟な又は球状の面にプリントされてもよいことが留意される。更に、各コイル202は、異なる特性を有してもよい。例えば、2つ、3つの特性の例を挙げると、コイル202は、互いに、サイズ、巻き数及び抵抗が異なってよく、また、固体部片として機械加工又は形成され得る。このようにすることで、必要とされる又は望まれる場合、各軸が異なる性能特性を有するように、比較的容易に及び個別に各軸を調整することができる。
【0020】
[0045]磁石106及びコイル202は、磁束204が、一方の側において第1の磁石106-1から球状ステータ102内に進み、他方の側において第2の磁石106-2へと
戻るように構成される。磁束204はまた、球状ステータ102の両側においてコイル202内を進み、透磁性の電動子104が、磁束204のための帰還路を提供する。理解され得るように、コイル202のうちの1つ又は複数に電流が供給されると、通電されたコイル202と磁石106との間にローレンツ力が生成され、このローレンツ力は次いで対称軸108のうちの1つ又は複数の周りにトルクを生成する。これも理解され得るように、生成されるトルクの方向は、コイル202内を流れる電流の方向に基づく。
【0021】
[0046]次に
図3を参照し、コイル202のうちの1つが通電されたときに生成されるトルクの例を説明する。明確さのため、及び説明を容易にするために、1つのコイルだけ(例えば、第1のコイル202-1)が図示されている。
図3が図示するように、第1のコイル202-1が図示される方向の電流を供給されると、(
図3全体から分かるように)第3の対称軸108-3の周りに時計回り方向のトルクが生成される。電流の方向を変化させると、反対方向(すなわち、反時計回り方向)のトルクが生成されることは理解されよう。コイル202に供給される電流の大きさを変えることで、トルクの大きさを変え得ることも更に理解されよう。
【0022】
[0047]球状ステータ102はこの例では、固定して取り付けられるので、生成されるトルクは、電動子104を、球状ステータ102に対して、電動子位置へと移動させる。したがって、コイル202内の電流の大きさ及び方向を制御することで、電動子位置が制御され得る。電動子104と、したがってセンサ装置115とは、球状ステータ102に対して、所望の電動子位置に移動され保持され得る。この機能は、
図4A~
図4Cに図示される。
図4Aにおいて、全てのコイル202には、大きさ及び方向が同じ電流が通電されている。
図4Bにおいて、第1のコイル202-1及び第3のコイル202-3には、大きさ及び方向が同じ電流が通電され、第2のコイル202は通電されていない。
図4Cにおいて、第1のコイル202-1には、第1の大きさ及び第1の方向の電流が通電され、第2のコイル202は通電されず、第3のコイル202-3には、第2の大きさ及び第2の方向の電流が通電され、第2の大きさは第1の大きさの2倍であり、第2の方向は第1の方向と反対の方向である。
【0023】
[0048]更に(又はその代わりに)、電動子104は対称軸108のうちの1つの周りを継続的に回転するようにもされ得る。この機能は、
図5に図示される。図示される例において、第1のコイル202-1に第1の交流電流502を通電し、第2のコイル202-2に第2の交流電流504を通電し、第1及び第2の交流電流502、504は振幅が同じで、位相が90度ずれていることで、電動子104は、第3の対称軸108-3の周りを継続的に回転する。第2及び第3のコイル202-2、202-3、又は第1及び第3のコイル202-1、202-3へ、同じように、それぞれ制御しつつ通電することで、電動子104は、第1又は第2の対称軸108-1、108-2の周りを継続的に回転するようにされ得ることは理解されよう。更に、本明細書においては比較的単純な正弦波二相整流技術が図示され説明されるが、ブロック整流などの様々な他の種類の二相整流技術もまた使用され得る。
【0024】
[0049]球面アクチュエータ100は、電動子104が、対称軸108のうちの1つの周りを継続的に回転するようにされると同時に他の対称軸108のうちの1つ又は両方の周りを、電動子位置へ傾斜し得るようにも構成される。この機能は、
図6~
図8に示される。特には、
図6~
図8のそれぞれにおいて、第1及び第2のコイル202-1、202-2は、上述のように、電動子104を第3の対称軸108-3の周りを継続的に回転させるように通電される。しかしながら、
図6において、第3のコイル202-3には、第2の交流電流504と同相の第3の交流電流602が通電される。結果として、電動子104は、第1の対称軸108-1の周りを、電動子位置へ回転する。
図7において、第3のコイル202-3には、第1の交流電流502と同相の第3の交流電流702が通電され
る。結果として、電動子104は、第2の対称軸108-2の周りを第1の方向に向かって、電動子位置へ回転する。
図8において、第3のコイル202-3には、第2の交流電流504と位相のずれた第3の交流電流802が通電される。結果として、電動子104は、第2の対称軸108-2の周りを第2の方向に向かって、電動子位置へ回転する。理解され得るように、電動子104の傾斜角は、第3の交流電流602、702、802の大きさを介して制御され、傾斜軸は、第3の交流電流602、702、802の相対位相を介して制御される。
【0025】
[0050]次に
図9を参照すると、
図1の多自由度球面アクチュエータ100を含む多自由度作動制御システム900の機能ブロック図が図示される。
図9が図示するように、システム900は、第1、第2及び第3のコイル108のそれぞれに結合される制御部902を含む。制御部902は、各コイル108における電流の大きさ及び方向を制御し、それによって電動子位置を制御し、したがって(含まれる場合)センサ装置115の位置を制御するように構成される。制御部902は、この機能を、オープンループ制御又はクローズドループ制御のいずれかを用いて実行するように構成され得る。オープンループ制御は、比較的低い価格、より低い複雑性、比較的単純なDC操作、及び比較的小さい大きさと重量とをもたらす。クローズドループ制御は、より高い正確性と精度、より高い帯域及び自律的な制御をもたらす。様々な制御技術が、制御部902において実行され得る。適切な制御技術のいくつかの非限定的な例としては、PWM制御及び逆EMF制御がある。
【0026】
[0051]制御部902が、クローズドループ制御を実行するなら、制御システム900は、1つ又は複数の位置センサ904を更に含む。位置センサ904の数及び種類は変わり得る。例えば、システム900は、各対称軸に沿って電動子位置を独立に感知するために1つ又は複数のセンサ904を含み得る。このようなセンサは、光学センサ、トラックボール、回転センサなどを用いて実装され得る。他の実施形態において、センサ904は、球状ステータ102の表面に適用される光学マスクを用いて実装され得、光学マスクは、次いで、電動子104の内側面114に取り付けられた光学センサによって読み取られ得る。
【0027】
[0052]データ及び電力は、多くの技術のうちの任意のものを用いて、コイル108及び(含まれるなら)位置センサ904へ、又はそれらから伝送され得ることは理解されよう。例えば、データは、無線で、可撓性導体を介して、又は小型集電環を介して伝送され得、電力は、可撓性導体を介して又は小型集電環を介して伝送され得、又はバッテリを介して供給され得る。
【0028】
[0053]上述のように、球状ステータ102は、好ましくは中空の球であるので、制御システム900を備える様々な電子装置1002が、
図10に図示されるように、球状ステータ102内に取り付けられ得る。更に、多自由度球面アクチュエータ100は、電動子104の自由回転軸の所望の数に応じて、ジンバル構成又は非ジンバル構成で実装され得る。
図11にその実施形態が図示されるジンバル構成においては、第3の軸が固定されるため、電動子104は2つの自由回転軸を有する。
図12にその実施形態が図示される非ジンバル構成においては、電動子は、3つ全ての対称軸の周りを自由回転する。
【0029】
[0054]多自由度球面アクチュエータ100は、ステップモータのように、電力を印加されることなく保持トルクを提供するようにも構成され得る。このステップモータの機能を実行するように構成された多自由度球面アクチュエータ100の1つの例示的な実施形態の単純化された断面図が、
図13A及び
図13Bに示される。これらに図示されるように、多自由度球面アクチュエータ100は、前述の実施形態に著しく類似した構成を有し、したがって、球状ステータ102と、電動子104と、複数の磁石106と、複数のコイル202とを含む。しかしながら、1つ異なるのは、この球状ステータ102は、間隔を
空けて設けられた複数の突起1302(例えば、1302-1、1302-2、1302-3、...、1302-N)を含むことである。突起の数及び間隔は、変更してよく、
図13Aが図示するように、少なくとも部分的に球面アクチュエータ100の解像度を決定する。
図13Aにおいて、球状ステータ102と電動子104とは位置が揃っていないことに留意されたい。逆に、
図13Bにおいて、球状ステータ102と電動子104とは位置が揃っており、電力が印加されることなくその位置が保持され得る。本記述は外部のブレーキ又はクラッチを用いずに保持トルクを提供することに関連するが、ブレーキ又はクラッチが使用されてもよいことが認識されよう。いくつの非限定的な例には、種々の機械式ブレーキ(例えば、摩擦ブレーキ、空力ブレーキ、外部発電機などの機械的負荷の適用)、及び、種々の電気式ブレーキ(例えば、渦電流ブレーキ、回生ブレーキ、発電ブレーキ又はダイナミックブレーキ、プラギングブレーキ(plugging brake)又は逆電流ブレーキ)が含まれる。
【0030】
[0055]多自由度球面アクチュエータ100の熱管理は、様々な技術を用いて実行され得る。いくつかの非限定的な技術としては、球状ステータ102の厚さを必要に応じて変更して、熱をコイル202から装置取り付け構造に伝導すること、中空の球状ステータ102の内部にファンを配置して、一方の極から空気を引き入れ他方の極から排出すること、効率的な対流冷却を提供すること、又はアクチュエータ100を熱伝導性の流体で充填され封止された透明なシェルに封じ込めること、などがある。
【0031】
[0056]本明細書において開示される多自由度球面アクチュエータ100は、既知の装置よりも比較的小型化され、より扱いやすく、より効率的である。それは、巻回するのが困難な経度コイルを含まず、電動子104のオープンループ位置制御を実行するために個別の中央寄せトルクに依存しない。それは、多くのアクチュエータコンポーネントの機能を実行するために様々な装置及びシステムにおいて使用され得る。例えば、人工衛星の姿勢制御のための制御モーメントジャイロ(CMG:control moment gyro)において使用されるときには、球面アクチュエータ100は、2つのスピンモータ及び4つのトルクモータの機能を実現可能である。ヘリコプタのためのロータースウォシュプレート制御システムにおいて使用されるときは、球面アクチュエータ100は、1つのスピンモータ及び3つの直線アクチュエータの機能を実現可能である。
【0032】
[0057]上記に加えて、本明細書において開示される多自由度球面アクチュエータ100は、様々な科学技術装置及び環境において使用され得る。例えば、それは、パノラマ写真を撮影するためにスマートフォン又は他の画像撮影装置に結合され得る。それは、様々な車両において(例えば、自動車、船艇、航宙機、飛翔体、及び航空機)、二、三の例を挙げると、例えばセンサ位置調整、アダプティブヘッドライト、衛星アンテナ位置調整、ソナー/ライダ/レーダ方向制御を提供するために使用され得る。それは、太陽電池、望遠鏡、及びホームセキュリティカメラの位置調整に使用され得る。それは、様々な遊具及びゲームプラットフォームで使用され得る。それは、ロボット工学において、消費者装置(例えば、洗濯機、ドライヤ、食器洗浄機)において、及び車両変速システム(例えば、無段変速機(CVT:continuous variable transmission))において使用され得る。
【0033】
[0058]ここまで説明した実施形態は、球状ステータ(
図39を参照)上に直交して配置される導体及び複数の磁石を有する電磁デバイスを対象とする。しかし、本明細書で説明される技術的概念がこれらの説明される実施形態の範囲を超えてよいことが認識されよう。具体的には、これらの技術的概念は多種多様な電磁機械(例えば、モータ、発電機、及び/又は、モータ-発電機)内で具体化され得、導体は種々の非球形状として配置されてもよいか又は種々の非球形構造上に配置されてもよく、また、単一の磁石を有するように実装されてもよい。次に、このような追加の実施形態を説明する。
【0034】
[0059]ここで
図14を参照すると、多自由度電磁機械1400の別の実施形態の一部分の単純化された図が示されており、これが、第1の構造1402と、第2の構造1404とを有する。第1の構造1402が、第1の導体1406と、第2の導体1408と、第3の導体1410とを有する。第1の導体1406、第2の導体1408及び第3の導体1410の各々が、多数の種類及び形状の電気伝導性材料のうちの任意の電気伝導性材料で形成され、これらの電気伝導性材料のうちの1つ又は複数の電気伝導性材料を使用して実装され得ることが認識されよう。第1の導体1406、第2の導体1408及び第3の導体1410の各々は、個別の連続的な単一導体を使用するか又は複数の導体を使用して実装され得、例えば、付加的技術(additive technique)(例えば、印刷導体)又は減法的技術(subtractive technique)(例えば、PWBエッチング)を使用して形成され得、2つ、3つの非限定的な例を挙げると、導電性ワイヤ、導電性リボン又は導電性シートであってよい。
【0035】
[0060]使用される材料の数、構成、実装形態又は種類に関係なく、第1の導体1406、第2の導体1408及び第3の導体1410は、各々が異なる概略的な軌道に従うようになるように、配置される。具体的には、第1の導体1406が第1の概略的な軌道に従い、第2の導体1408が第1の概略的な軌道とは異なる第2の概略的な軌道に従い、第3の導体1410が第1及び第2の概略的な軌道とは異なる第3の概略的な軌道に従うことが分かる。示される実施形態では、これらの軌道は互いに直交せず、代わりに、互いを基準として不定の角度のところに配置される。しかし、いくつかの実施形態では、これらの軌道のうちの2つの軌道又は3つの全ての軌道が互いを基準として等しい角度のところに配置されても又は等しくない角度のところに配置されてもよいこと、及び、これらの軌道のうちの2つの軌道又は3つの全ての軌道が直交してもよいことが認識されよう。本明細書で使用される「軌道」という用語は、ローレンツ力に寄与するように設計される、所定の長さにわたって導体がなぞることになる幾何学的経路を意味する。例えば、いくつかの実施形態では、例えば電源まで軌道に従うことができるいくつかの導電性の長さ部分(conductive length)が存在してよい。しかし、これらの長さ部分はローレンツ力に寄与せず、高い可能性として、表面の概略的な形状にも寄与しない。
【0036】
[0061]これらの軌道は、第1の導体1406、第2の導体1408及び第3の導体1410が共に表面の概略的な形状を形成するような、ものである。表面は単純に導体を重ね合わせる(及び、例えば接着剤を介して、導体を固定する)ことによって形成され得るか、又は、2つ以上の導体を編むことによって形成され得る。編む場合、全体の効率に対する起伏の影響に対する注意を考察する必要がある可能性がある。その理由は、ワイヤ上で生じるローレンツ力が磁界と電流経路との間の角度の関数であるからである。したがって、磁界及び電流が互いに直交しない場合、力が低減される。
【0037】
[0062]表面の種類及び形状は変わり得、閉曲面、開曲面、閉曲面及び開曲面の組み合わせ、平坦表面、非平坦表面、又は、平坦表面及び非平坦表面の組み合わせであってよい。例えば、2つ、3つの例を挙げると、表面は、球形、半球形、トロイド、円筒形、立方体、平面、ハーフパイプ、又は、それらの種々の組み合わせであってよい。完全のために、これらの表面の種類のうちの一部のいくつかの非限定的な例が
図15~17に示されている。
図16及び17に示される表面の種類は異なる表面の種類の組み合わせの例を示している。具体的には、これらは対向する半球上にある半径の異なる異なる球形部分として示されており、これらの球形部分は切り取られていてよい。
【0038】
[0063]上で言及した
図15~17に示される形状などの非球形状が、単に2つ、3つの非限定的な例を挙げると、例えば、パッケージ移動装置(package mover)及び娯楽用乗り物を含めた種々の文脈で有利に使用され得ることに留意されたい。パッケ
ージ移動装置の場合、2つの導電性軌道がポイントAからポイントBまでパッケージを移動させることができ、第3の導電性軌道が軸を中心としてパッケージ移動装置を回転させるのに使用され得る。娯楽用乗り物の例として、トボガン/ボブスレー/リュージュの走行がある。この場合も、2つの導電性軌道が乗り手をポイントAからBまで移動させるのに使用され得、第3の導電性軌道が軸を中心として乗り手をスピンさせるのに使用され得る。別の例が
図35に示されており、これを後で更に説明する。
【0039】
[0064]
図14を再び参照すると、いくつかの実施形態では、第1の構造1402が、第1の導体1406と、第2の導体1408と、第3の導体1410とのみを備えることに留意されたい。しかし、別の実施形態では、第1の構造1402が第1のボディ1412を更に備える。含まれる場合の第1のボディ1412は、好適には、透磁性材料で形成され、外側表面を有する。よく知られるように、このような材料は、磁気回路を通して磁束を効率的に伝導するのに、及び、磁束を所望のポイント/ロケーションまで誘導するのに、使用される。多数の適切な材料が知られており、これには、例えば、磁性鋼、鉄、及び、鉄合金(例えば、シリコン鉄、鉄-コバルト、バナジウム)が含まれる。第1のボディ1412の外側表面の少なくとも一部分が、好適には、表面の概略的な形状を有し、第1の導体1406、第2の導体1408及び第3の導体1410が、少なくとも、第1の構造1412の外側の表面1414の少なくともその部分に隣接するように配置される。
【0040】
[0065]第2の構造1404が第1の構造1402に隣接するように配置され、磁界を発する磁石1412を有する。磁石1412は、その磁極の少なくとも一方の磁極が表面の方を向くことになるように、配置される。いくつかの実施形態では、磁石1412が、表面の方を向く磁極が所定の隙間だけそこから分離されるように、配置される。含まれる場合の隙間は、好適には、損失を最小にするのに十分な程度に小さく、それにより、磁気抵抗を低減することで磁気的効率が向上する。比較的大きい隙間の場合、機械公差を緩和することにより費用効率の高いデザインにすることが可能となる。他の実施形態では、磁石1412が、磁極が表面に接触することになるように、配置される。このような例では、接触表面の材料選択が、当技術分野で知られるように摩耗及び摩擦損失を考慮して行われる。磁石1412が多様に構成及び実装され得ることが認識されよう。例えば、磁石1412は永久磁石又は電磁石であってよい。磁石1412が永久磁石である場合、磁石1412はハルバッハアレイとして実装され得る。適切な永久磁石の供給元のいくつかの非限定的な例には、Electron Energy Corporation(ペンシルベニア州、ランディズビル)、Arnold Magnetic Technologies(ニューヨーク州、ロチェスター)、Dexter Magnetic Technologies(イリノイ州、エルクグローヴヴィレッジ)、及び、Dura Magnetics (オハイオ州、シルバニア)が含まれる。また、
図1~13Bに示される上述した実施形態と同様に、
図14に示される機械1400は複数の磁石1412(例えば、2つ以上)を備えるように実装され得る。
【0041】
[0066]使用される磁石の数及び種類に関係なく、機械は以下のように構成される:磁石1412から生じる磁界が導体1406、1408、1410のうちの任意の導体内の電流と相互作用するときにローレンツ力が第1の構造1402と第2の構造1404との間の相対的運動に影響を与える。相対的運動の方向(
図14で矢印を使用して示される)は、やはり認識され得るように、少なくとも、導体1406、1408、1410内の電流の流れの大きさ及び方向に基づく。後で更に説明するように、これは加えて周波数に基づいてもよい。
【0042】
[0067]第1の構造1402と第2の構造1404との間の相対的運動により、それに結合される1つ又は複数のデバイス1416を有することを受け入れることができるようなデバイス1400が作られる。具体的には、電動子104に結合される
図1に示されるデ
バイス115と同様に、第2の構造1404に結合される1つ又は複数のデバイスを有することが所望される可能性がある。単一のデバイス115及び1416が
図1及び
図14にそれぞれ示されるが、デバイス115、1416の数及び種類が多様であってよいことが認識されよう。例えば、デバイス115、1416は、単に2つ、3つの非限定的な例を挙げると、トランスデューサ、電子回路、記憶素子、ジャイロ質量(gyroscopic mass)、電磁リフレクタ、電磁波吸収体、レンズ、ガスノズル又は流体ノズル、作業工具、ロボットエフェクタ、生物又は非生物を移送するための運搬装置、及び、モータ、のうちの1つ又は複数を有することができる。
【0043】
[0068]
図9に示される上で説明した実施形態と同様に、
図14に示される電磁機械1400は、
図18に示されるように、制御システム1600内に実装されてもよい。
図9に示されるシステムと同様に、
図18に示されるシステム1600は、第1の導体1406、第2の導体1408及び第3の導体1410の各々に結合される制御部1602を有する。制御部1602は、第1の構造1402と第2の構造1404との間の相対的運動及びひいてはデバイス1416(含まれる場合)の相対位置を制御することを目的として、各々の導体1406、1408、1410内の電流の大きさ及び方向を制御するように構成される。上で説明した制御部902と同様に、
図18に示される制御部1602は、オープンループ制御又はクローズドループ制御のいずれかを使用してこの機能を実行するように構成され得る。オープンループ制御は、比較的低い価格、より低い複雑性、比較的単純なDC操作、及び、比較的小さい大きさと重量とをもたらす。クローズドループ制御は、より高い正確性と精度、より高い帯域、及び、自律的な制御をもたらす。様々な制御技術が、制御部1602において実行され得る。適切な制御技術のいくつかの非限定的な例には、PWM制御及び逆EMF制御が含まれる。
【0044】
[0069]
図14に示される機械1400、更には
図1~13に示される上で説明した機械100は、多数の多様な機能を実現するように構成及び制御され得る。これらの機能のうちのいくつかの機能を次に説明する。しかし、その前に、説明及び描写を容易にするために、
図1~13に示される電磁機械と同様に構成される電磁機械の場合において各々の機能を説明することに留意されたい。つまり、第1の構造1402が概して球形状であり、第2の構造1404が第1の構造の一部分を包囲するか又は少なくとも部分的に包囲する。
【0045】
[0070]説明される第1の機能は触覚フィードバック機能である。ここで
図19を参照すると、具体的には、この機能を実現するのに使用される一実施形態において、1つ又は複数のインバランスマス(imbalance mass)1702(示される実施形態では2つ)が第2の構造1404に結合され、制御部1602が、第2の構造1404の運動を制御することを目的として、第1の導体1406、第2の導体1408及び第3の導体1410の各々の電流の大きさ及び方向、更には、第1の導体1406、第2の導体1408及び第3の導体1410の各々に供給される電流の周波数を独立して制御するように構成されることが分かる。より具体的には、制御部1602が、第1の軸1704を中心として第2の構造1402を回転させること及び基準面1706を基準として第2の構造1402を選択的に傾斜させることを目的として、第1の導体1406、第2の導体1408及び第3の導体1410の各々に供給される電流の大きさ、方向及び周波数を制御する。基準面1706を基準とした第2の構造1404の傾斜が、第1の軸1704を中心とした第2の構造1404の回転半径である不均衡な半径(imbalance radius)(R
IMBALANCE)を変化させる。これが更に触覚フィードバックの振幅を変化させる。
【0046】
[0071]これをより明瞭に説明すると、第1の軸1704を中心とした第2の構造1404の所与の回転速度において、
図20に示されるように第2の構造1404が基準面17
06に直交する場合に触覚フィードバックの振幅がゼロになり、それにより不均衡な半径(R
IMBALANCE)がゼロになる。逆に、やはり第1の軸1704を中心とした第2の構造1404の所与の回転速度において、
図21に示されるように第2の構造1404が基準面1706に位置合わせされると触覚フィードバックの振幅が最大になり、それにより不均衡な半径(R
IMBALANCE)が最大になる。認識され得るであろうが、
図22に示されるように、直交する位置と位置合わせされる位置との間のある位置まで第2の構造1404を傾斜させることにより、第1の軸1704を中心とした第2の構造1404の所与の回転速度における触覚フィードバックの振幅がゼロと最大との間で変化することができる。第1の軸1704の所与の位置において、第1の軸1704を中心とした第2の構造1404の回転速度を変化させることによっても触覚フィードバックの振幅が変化され得ることに留意されたい。
【0047】
[0072]
図23に示される別の実施形態では、機械1400が2つの軸に沿わせて独立した振動触覚フィードバックを生じさせるように制御され得る。これを行うために、制御部1602が、直交して配置される第1の軸2102及び第2の軸2104を中心として第1の構造1402を基準として第2の構造1404を同時に振動させることを目的として、第1の導体1406、第2の導体1408及び第3の導体1410の各々の電流の大きさ及び方向、更には、第1の導体1406、第2の導体1408及び第3の導体1410の各々に供給される電流の周波数を独立して制御する。
図19~22に示される実施形態と同様に、1つ又は複数のインバランスマス1702が第2の構造1404に結合される。
【0048】
[0073]
図24及び25に示される他の実施形態では、複数の機械1400(例えば、1400-1、1400-2、...1400-N)が協働的センサネットワーク2200を実装するのに採用される。ネットワーク2200が複数のセンサシステム2202(例えば、2202-1、2202-2、...2202-N)を有し、これらの各々が複数の機械1400(例えば、1400-1、1400-2、...1400-N)のうちの異なる1つの機械の上に設置される。各センサシステム2202が、センサ2204と、送信機2206と、受信機2208とを有する。
図24に示される実施形態では、各センサシステム2202の送信機2206の各々が第1の構造1402又は第2の構造1404のいずれかに結合され、それらと共に移動可能となり、対して、各センサシステム2202の受信機2208が静止状態を維持する。
図25に示される実施形態では、各センサシステム2202の送信機2206及び受信機2208の両方が第1の構造1402又は第2の構造1404のいずれかに結合され、それらと共に移動可能となる。
【0049】
[0074]示される実施形態では、センサシステム2202の間の通信リンクが、1つのセンサシステム2202の送信機2206から別のセンサシステム2202の単一の受信機2208への向きである狭ビーム無線送信を介して完成する。1つのセンサシステム2202(例えば、第1のセンサシステム2202-1)がセンサネットワーク2202内の別のセンサシステム2202(例えば、第2のセンサシステム2202-2)と通信することを必要とする場合、第1のセンサシステム2202-1をその上に設置しているところの機械1400-1が、通信リンク送信(Tx)を第2のセンサシステム2202-2の方に向けるように第1のセンサシステム2202-1を移動させるように制御される。
【0050】
[0075]
図24に示される実施形態では、各センサシステム2202の受信機2208が静止状態を維持することから、各受信機2208が、好適には、複数の方向から送信を受信することができる広域受信機(wide-area receiver)を使用して実装される。更に、各受信機2208が別のセンサシステム2202の単一の送信機2206に位置合わせされる。各機械1400に付随する制御部1602が、付随する送信機2206を所望の方向に向けることを目的として、第1の導体1406、第2の導体140
8及び第3の導体1410の各々の少なくとも電流の大きさ及び方向を独立して制御するように構成される。例えば、
図24では、センサシステム2202-1の機械1400-1が、その付随する送信機2206を、センサシステム2202-Nに付随する受信機2208の方に向けるように制御され、センサシステム2202-Nの機械1400-Nが、その付随する送信機2206を、センサシステム2202-2に付随する受信機2208に向けるように制御される。
【0051】
[0076]
図25に示される実施形態では、広域受信機2208が使用され得るが、使用される必要はない。いずれにしても、各機械1400に付随する制御部1602が、付随する送信機2206及び受信機2208を所望の方向に向けることを目的として、第1の導体1406、第2の導体1408及び第3の導体1410の各々の少なくとも電流の大きさ及び方向を独立して制御するように構成される。例えば、
図25では、センサシステム2202-1の機械1400-1が、その付随する送信機2206を、センサシステム2202-2に付随する受信機2208の方に向けるように制御され、センサシステム2202-2の機械1400-2が、その付随する受信機2208を、センサシステム2202-1から送信されるデータを受信することを目的としてセンサシステム2202-1に付随する送信機2206の方に向けるように制御される。
【0052】
[0077]本明細書で説明される協働的センサネットワーク2200安全性により既知のネットワークに対しての有意な改善が実現され、優位性も得られる。具体的には、狭ビーム幅の通信リンクが、送信するセンサシステムと受信するセンサシステムとの間の見通し線内に物理的に位置するデバイスによってのみ中断され得る。互いに実際に通信するネットワークセンサシステム間にのみ通信リンクが存在する。結果として、ネットワークデータを伝達する物理的経路がネットワークの1つのパートから別のパートへと動的に切り換わり、信号を遮断しようとする人間がこの通信リンクがある場所を知ることがない。センサシステムがその受信した信号内に乱れを検出する場合、センサシステムがそれ自体の送信を対向するセンサシステムの方に向けることができ、送信を止めるか又はその送信を別のセンサシステムの方に向け直すように命令を出すことができる。
【0053】
[0078]本明細書で示され説明される機械100、1400は自動車などの種々の車両内にも実装され得る。具体的には、機械100、1400は、自動車ドライブトレイン、サスペンション、アンチスリップ/アンチスキッド、ステアリングリンケージ(例えば、ラック及びピニオン)、及び、制動システム内に実装され得る。まず、
図26を参照すると一実施形態が示されており、機械100、1400が自動車ドライブトレイン2400内に実装されている。示される実施形態では、分かり易いように単一のホイールのみが示されているが、ドライブトレインが、機械1400と、シャフト2402と、ホイール組付タイヤ2404とを有する。この実施形態では、シャフト2402が機械1400の第2の構造1404に結合され、所望の回転速度で回転するように第2の構造1404に対して付随の制御部1602から命令が出されるときに、駆動される。更に、ホイール組付タイヤ2404に結合されるシャフト2402がホイール組付タイヤ2404を所望の速度で回転させる。
【0054】
[0079]
図26にも示されるように、機械1400に付随する制御部1602が、サスペンションを制御することを目的として矢印2406で示されるように傾斜させるように第2の構造1404に更に命令を出すことができる。ホイール組付タイヤ2404の滑りを感知するように構成されるセンサ2408を有することにより、アンチスキップ/アンチスキッド機能が実現され得る。それに反応して、付随する制御部1602が、ホイール組付タイヤ2404を道路の方に更に「押圧」することを目的として傾斜するように第2の構造1404に命令を出す。
【0055】
[0080]
図27を参照すると、操向機能が示されている。示される実施形態では、第2の構造1404並びにひいてはシャフト2402及びホイール組付タイヤ2404に、示されるように回転するように命令を出す機械1400に付随する制御部1602により、各ホイール組付タイヤ2404が独立して操向される。認識され得るように、独立のホイール操向により差動装置の必要性が排除され、更に、車両旋回半径を最小にすることができる。このような手法は、例えば、平行駐車の操作及び他の狭い空間での駐車の操作を容易にすることができ、更には、緊急車両を通過させるために交通渋滞において邪魔にならないように移動することを容易にすることができる。
【0056】
[0081]次に
図28を参照すると、制動機能が示されている。第1の導体1406、第2の導体1408及び第3の導体1410の各々の電流の大きさ及び方向を制御することにより、アンチロック制動機能を含めた一般的な制動機能が実現され得る。また、例えば、ホイール組付タイヤ2404に、内側に回転させるようにつまり「スノープラウ」させるように命令を出す2つの前方機械1400の各々に付随する制御部1602により、非常制動機能が実現され得る。ホイール組付タイヤ2404を「スノープラウ」させることにより、ホイール組付タイヤ2404と地面との間に更に摩擦が生じる。
【0057】
[0082]次に進む前に、タイヤをその上に設置しているホイールの内部に機械1400を直接に設置することによっても上述した機能の各々が実現され得ることに留意されたい。したがって、
図29に示されるこの構成はシャフト2402の必要性を排除する。
【0058】
[0083]次に
図30及び31を参照すると、本明細書で説明される機械100、1400がデュアルシャフトドライブ組立体2800を実装するのにも使用され得ることが分かる。示される実施形態では、第2の構造1402が入力シャフト2802を介してピニオンギア2804に結合される。ピニオンギア2804がリンク機構2805を介してインナーシャフト2806に結合される、
図31により明瞭に示されるように、ピニオンギア2804が更に、アウターシャフト2808の内側表面上に形成される環状歯車2902に噛合する。
【0059】
[0084]機械1400が、インナーシャフト2806及びアウターシャフト2808の両方の回転速度及び方向を制御するのに使用される。具体的には、制御部1602が、ピニオンギア2804の回転速度及び方向を制御することを目的として、第1の導体1406、第2の導体1408及び第3の導体1410の各々の電流の大きさ及び方向、更には、第1の導体1406、第2の導体1408及び第3の導体1410の各々に供給される電流の周波数を独立して制御するように構成され、ピニオンギア2804、ひいては、ピニオンギア2804が環状歯車2902に噛合していることを理由として、アウターシャフト2808の回転速度及び方向が更に制御される。加えて、制御部1602が、ピニオンギア2804の軌道2904(
図31を参照)の速度及び方向を制御することを目的として、第1の導体1406、第2の導体1408及び第3の導体1410の各々の電流の大きさ及び方向、更には、第1の導体1406、第2の導体1408及び第3の導体1410の各々に供給される電流の周波数を独立して制御するように構成される。ピニオンギア2804が更にリンク機構2805を介してインナーシャフト2806に結合されることを理由として、アウターシャフト2808の速度及び方向から独立して、インナーシャフト2806の速度及び方向も制御される。
【0060】
[0085]
図1に示される実施形態を説明したときに既に述べたように、機械100は可変運動量の制御モーメントジャイロ(CMG:control moment gyroscope)を実装するのに使用され得る。しかし、
図14に示される機械1400も可変運動量のCMGを実装するのに使用され得ることに留意されたい。一般に知られるように、CMGは衛星などの宇宙船の姿勢を制御するのに使用される。現在知られているCMG
は、通常、スピンモータ、トルクモータ、モーメンタムホイール(又は、フライホイール)を有する。スピンモータがその中心線の軸を中心としていくらかの速度でホイールを回転させ、トルクモータが直交軸を中心とした制限される角度を通るようにホイールを回転させる。これらの2つの運動が第3の直交軸を中心としたジャイロスコープトルクを生じさせ、これがホイールのスピン速度及び傾斜角度に比例する。通常、スピンモータは比較的小さい。その理由は、スピン速度を維持するのに必要となるトルクが小さいこと(この速度に達した後で)、及び、トルクモータがホイールと共にスピンモータを移動させなければならないこと、である。
【0061】
[0086]CMGの根本的な制約は、CMGシステムの運動量のエンベロープ(momentum envelope)の範囲内に「特異点」が存在することである。これらは、運動量ベクトルが位置合わせされることを理由としてCMGシステムが運動量を生じさせることができない特定の位置である。認識され得るように、衛星が1つの位置で実際に動かなくなる防止することを目的として、これらの位置が回避される。この問題を軽減するための1つの手法は、2軸ジンバル内にCMGを設置して第2のトルクモータを追加することである。この場合、この第2のモータが特異点を回避するように運動量ベクトルの振幅を調整することができる。しかし、これにより、明らかに、システムの望ましくないサイズ、重量及び複雑さが増大し、これは特に、第2のトルクモータが、第1のトルクモータによって生じるジャイロスコープトルクに逆らって動作しなければならないことが理由である。別の手法は、傾斜中のホイールのスピン速度を変化させることであり、それにより「可変速度CMG」と呼ばれるものが得られる。しかし、実際にはこれが実装されることはほぼない。その理由は、スピン軸上で非常に大きいトルクが必要となり、それによりスピンモータが大型化し、トルクモータが大型化し、全体のサイズ及び重量が増大するからである。
【0062】
[0087]
図32に示されるように、本明細書で説明される機械100、1440を使用することにより、CMG3000が、別個のスピンモータ及びトルクモータではなく、ホイール3002の中心にある単一の2軸機械100、1400を使用して動作させらせて制御される。機械100、1400、またより具体的には第2の構造1404が、ホイール3002に結合される。第2の構造1404が、第1の軸3004を中心とした一定の回転速度で第1の構造1404を基準として回転するように、及び、第1の軸3004に直交する第2の軸3006を中心としてある回転位置まで第1の構造1402を基準として回転するように、構成される。
【0063】
[0088]上で説明したように(
図6~8及び関連する説明を参照されたい)、機械1400に付随する制御部1602が、第2の構造の回転速度及び回転位置を制御することを目的として、第1の導体1406、第2の導体1408及び第3の導体1410の各々の電流の大きさ及び方向、並びに、第1の導体1406、第2の導体1408及び第3の導体1410の各々に供給される電流の周波数を独立して制御するように構成される。これにより2つの手法で運動量の特異点が回避される。
図32により明瞭に示される第1の手法は、スピンの命令と傾斜の命令との間の相対位相を変化させてホイール3002の傾斜軸3006を変化させることによるものであり、それにより運動量ベクトル3008が修正される。これは上述した既知の2軸ジンバルの解決策に類似するが、追加のモータを用いない。
【0064】
[0089]
図33に最も明瞭に示される2つ目の手法は、ホイール3002のスピン速度を変化させることによるものであり、それによりやはり運動量ベクトル3008が修正される。これも上述した既知の2軸ジンバルの解決策に類似するが、サイズ又は重量を一切増大させない。スピン運動及び傾斜運動の両方が静止する導体1406、1408、1410によって駆動されることから、スピンを生じさせるのに使用される導体1406、14
08、1410が、傾斜を生じさせるのに使用される導体1406、1408、1410から独立して必要に応じてサイズ決定され得る。
【0065】
[0090]本明細書で説明される機械1400は平面状のボイスコイルを実装するのにも使用され得る。平面状のボイスコイルの一実施形態の実施例が
図34に示されており、これを説明する。しかし、その前に、本明細書で説明される手法が非平坦な用途にも拡大適用され得ることに留意されたい。示される機械1400が、第1の構造1402と、第2の構造1404と、3つのセットの導体1406、1408及び1410とを有する。示される実施形態では、第1の構造1402が、上で言及した材料などの適切な透磁性材料を備え、導体1406、1408、1410が好適にはその上に直交するように配置される。
図34に更に示されるように、第1の構造1402が取り付け構造3402上に配置される。
【0066】
[0091]第2の構造1404が、少なくとも示される実施形態では、磁石取り付け構造3406に結合される1つ又は複数の磁石3404(1つのみ示される)を有する。磁石3404は上で言及した永久磁石又は電磁石のうちの任意の1つ又は複数の磁石であってよい。
【0067】
[0092]好適には、機械1400が、導体のセット1406、1408、1410内の各導体に供給される電流を個別に制御するように構成される制御部1602(
図34には示されない)に結合され、その結果、導体のセット内の特定の導体が電流の流れを有さなくてよく、対して、他の導体が反対の方向に電流の流れを有することができる。例えば
図34に示される瞬間に、第1のセット1406内のいくつかの導体が電流の流れを有さず(「0」を使用して示される)、いくつの導体が正電流の流れを有し(「+」を使用して示される)、それに対して、他の導体が負電流の流れを有する(「-」を使用して示される)。負電流が磁界3408の変更された方向を補償するが、いくつかの実施形態では制御部1602内のドライブエレクトロニクスに付随する複雑さを最小にするのに一切使用され得ない。
【0068】
[0093]
図15~17に示される形状及びすぐ上で説明した形状(
図34)などのいくつかの非球形状がパッケージ移動装置及び娯楽用乗り物などの種々の文脈で使用され得ることを上で述べた。非限定的な1つの文脈が
図35に示されており、第1の構造1402のトポロジーが非平坦である。示される実施形態では、第1の導体1406及び第2の導体1408が互いに直交するように配置される。示される機械1400が、複数のセットの第3の導体1410(例えば、1410-1、1410-2、1410-3)を更に有し、各セットが、概して平行である隣接する導体を含む。示される実施形態が3つのセットの第3の導体1410を有するが、機械1400がこの数より多くするか又は少なくしても実装され得ることが認識されよう。また、各セットの第3の導体1410内の導体の数は変更されてもよい。例えば、示される実施形態では、1つのセット1410-1が2つの導体を有し、別のセット1410-2が3つの導体を有し、別の導体1410-3が4つの導体を有する。
【0069】
[0094]
図35に示される機械1400を用いる場合、第1の導体1406及び第2の導体1408内の電流が、各セットの第3の導体1410によって画定される領域の中で及び/又はそのような領域の間で第2の構造を移動させるように制御され得る。分かり易いように導体の一部分のみが示されていることに留意されたい。例えば、第3の導体1410のセット内の電流を制御することにより、第2の構造1404が、このセットの第3の導体1410によって画定される領域内で維持され得る、この領域は実際には、電子フェンス、囲い(holding pen)又は力場によって画定される。非限定的な実施例として、最初に、導体1406、1408、1410の全てがゼロの電流を有することを
想定する。第1の導体1406及び第2の導体1408によって形成される表面の方を向く極を有する1つ又は複数の磁石を有する第2の構造1404が重力によりシステム全体の最も低い高さのところに位置する。次いで、第1の導体1406及び第2の導体1408が励磁され、示されるように第2の構造1404を第3の導体1410-1の左下の部分のところに押圧する。次いで、電流が1410-1内に導入され、その結果、力が第2の構造1404を常に押圧し、その結果、第2の構造1404が第3の導体1410-1によって画定されるループ内で維持される。この時点で、第1の導体1406、1408内の電流がゼロに設定され得、第2の構造1404が1410-1内で「捕捉」された状態で維持される。導体ループ1410-3の中まで第2の構造1404を移動させることが所望される何らかの別の時点で、第1の導体1406及び第2の導体1408が励磁され、第2の構造1404を概略的に定位置で維持するために電流の極が不定の状態となる。次いで、1410-1内の電流がゼロに設定され、第1の導体1406及び第2の導体1408内の電流が、第2の構造1404を1410-3の中心まで移動させるのに使用される(破線と、その矢印の方向とによって示される)。上で同様に、第2の構造1404が1410-3の中に入ると、電流が1410-3に印加されて電気フェンスとして機能し、次いで、第1の導体1406及び第2の導体1408内の電流が再びゼロに設定される。この例示の手順が、1404をある場所から別の場所へ移動させるために他の破線によって示されるように継続され得る。
【0070】
[0095]当業者は、本明細書において開示される実施形態に関連して説明される様々な例示的な論理ブロック、モジュール、回路、及びアルゴリズムステップは、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア又はその両方の組み合わせとして実装され得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態及び実施態様は、上記において、機能及び/又は論理ブロックコンポーネント(又はモジュール)及び様々な処理ステップという観点から説明されている。しかしながら、このようなブロックコンポーネント(又はモジュール)は、特定の機能を実行するように構成された任意の数のハードウェア、ソフトウェア及び/又はファームウェアコンポーネントによって実現され得ることは、理解されるべきである。このハードウェアとソフトウェアの交換可能性を明瞭に示すために、様々な例示的なコンポーネント、ブロック、モジュール、回路、及びステップを、上記において、概してそれらの機能に関して説明した。そのような機能がハードウェア又はソフトウェアのどちらとして実施されるかは、全体的なシステムに課せられる特定の用途及び設計制約に依存する。当業者は、各特定の用途について様々な形で説明された機能を実施し得るが、そのような実施判断が、本発明の範囲からの逸脱を引き起こすと解釈されるべきではない。例えば、システム又はコンポーネントの実施形態は、様々な集積回路コンポーネント、例えば、メモリ要素、デジタル信号処理要素、論理要素、ルックアップテーブルなどを用いることができ、これらは、1つ又は複数のマイクロプロセッサ又は他の制御装置の制御下で様々な機能を実行し得る。更に、当業者は、本明細書において説明される実施形態は、単なる例示的な実施態様であることを理解するであろう。
【0071】
[0096]本明細書において開示される実施形態に関連して説明される様々な例示的な論理ブロック、モジュール、及び回路は、汎用処理装置、デジタル信号処理装置(DSP:digital signal processor)、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)若しくは他のプログラマブルロジックデバイス、ディスクリートゲート若しくはトランジスタ論理、ディスクリートハードウェアコンポーネント、又は本明細書において説明される機能を実行するように設計されたこれらの任意の組み合わせによって、実装又は実行され得る。汎用処理装置はマイクロプロセッサであってよいが、代替的に、当該処理装置は任意の従来の処理装置、コントローラ、マイクロコントローラ、又は状態機械であってもよい。処理装置はまた、コンピューティングデバイス
の組み合わせとして、例えば、DSPとマイクロプロセッサの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと連携した1つ又は複数のマイクロプロセッサ、又は任意の他のそのような構成として、実装されてもよい。
【0072】
[0097]本文書においては、例えば第1及び第2などの関係語は、単に1つの実体又は動作を別の実体又は動作から区別するためだけに使用され得、必ずしも何らかの実際上のそうした関係性や順序をそのような実体又は動作の間に必要とし、又は暗示するものではない。「第1」、「第2」、「第3」などの数値的序数は、単に複数の中の異なる1つを意味するだけであり、請求項の文言によって特に規定されない限り、いかなる順序又は順番も含意しない。請求項のいずれにおける文章の順番も、請求項の文言によって特に規定されない限り、そのような順番に従う時間的又は論理的な順序で処理のステップが実施されなければならない、ということを含意しない。処理のステップは、請求項の文言と矛盾しない限り、また論理的に無意味でない限り、本発明の範囲から逸脱することなく任意の順序で交換され得る。
【0073】
[0098]更に、文脈によって、異なる要素の間の関係を説明する際に使用される「接続する(connect)」又は「結合される(coupled to)」などの語は、これらの要素の間に直接的な物理的接続がなされなければならないことを含意しない。例えば、2つの要素は、1つ又は複数の追加的な要素を介して、互いに対して物理的に、電気的に、論理的に、又は他の任意の形で接続されてよい。
【0074】
[0099]少なくとも1つの例示的な実施形態を前述の本発明の詳細な説明に示したが、非常に多くの変形が存在することが理解されるべきである。1つ又は複数の例示的な実施形態は単なる例であって、いかなる形でも本発明の範囲、適用性又は構成を制限することを意図しないこともまた、理解されるべきである。むしろ、前述の詳細な説明は、本発明の例示的な実施形態を実現するための便利な手引きを当業者に提供するものである。添付の特許請求の範囲に述べられる本発明の範囲を逸脱することなく、例示的な実施形態において説明された要素の機能及び配置において様々な変更がなされ得るということが理解される。
【符号の説明】
【0075】
100 多自由度球面アクチュエータ
102 球状ステータ
104 電動子
106 磁石
106-1 第1の磁石
106-2 第2の磁石
108 対称軸
108-1 第1の対称軸
108-2 第2の対称軸
108-3 第3の対称軸
112 取り付け構造
114 内側面
115 装置
116 外側面
202 コイル
202-1 第1のコイル
202-2 第2のコイル
202-3 第3のコイル
204 磁束
502 第1の交流電流
504 第2の交流電流
602 第3の交流電流
702 第3の交流電流
802 第3の交流電流
900 多自由度作動制御システム
902 制御部
904 位置センサ
1002 電子装置
1302 突起
1302-1 突起
1302-2 突起
1302-3 突起
1302-N 突起
1400 多自由度電磁機械
1402 第1の構造
1404 第2の構造
1406 第1の導体
1408 第2の導体
1410 第3の導体
1412 第1のボディ
1414 外側表面
1416 デバイス
1600 制御システム
1602 制御部
1702 インバランスマス
1704 第1の軸
1706 基準面
2102 第1の軸
2104 第2の軸
2200 協働的センサネットワーク
2202 センサシステム
2204 センサ
2206 送信機
2208 受信機
2400 自動車ドライブトレイン
2402 シャフト
2404 ホイール組付タイヤ
2406 矢印
2408 センサ
2800 デュアルシャフトドライブ組立体
2802 入力シャフト
2804 ピニオンギア
2805 リンク機構
2806 インナーシャフト
2808 アウターシャフト
2902 環状歯車
2904 軌道
3000 制御モーメントジャイロ
3002 ホイール
3004 第1の軸
3006 第2の軸
3008 運動量ベクトル
3402 取り付け構造
3404 磁石
3406 磁石取り付け構造
3802 孔又はスロット
【手続補正書】
【提出日】2022-03-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ、発電機又はモータ-発電機として動作し得る多自由度電磁機械であって、
第1の導体、第2の導体及び第3の導体を備える第1の構造であって、前記第1の導体が第1の概略的な軌道に従い、前記第2の導体が、前記第1の概略的な軌道とは異なる第2の概略的な軌道に従い、前記第3の導体が、前記第1及び第2の概略的な軌道とは異なる第3の概略的な軌道に従い、前記第1、第2及び第3の導体が共に球状表面の概略的な形状を形成する、第1の構造と、
前記第1の構造に隣接して配置され、磁界を発する磁石を有する第2の構造であって、前記磁石は、その磁極のうちの少なくとも一方の磁極が前記表面の方を向く、第2の構造と
を備え、
前記少なくとも一方の磁極から生じる磁界が前記導体のうちの任意の導体内の電流と相互作用するとき、ローレンツ力が前記第1の構造と前記第2の構造との間の相対運動に影響を与え、
前記第1、第2及び第3の概略的な軌道は、前記第1、第2及び第3の導体が互いに直交するように配向されるようなものであり、
前記第1の構造は、透磁性材料で形成されて、外側表面と、前記外側表面から突出する複数の突起と、を有する第1のボディを更に備え、
前記外側表面の少なくとも一部分が、前記球状表面の概略的な形状を有し、
前記第1、第2及び第3の導体は、前記第1のボディの前記複数の突起に隣接するように配置される、
多自由度電磁機械。
【請求項2】
前記第1の構造と前記第2の構造との間の相対的運動を制御することを目的として、前記第1、第2及び第3の導体の各々の電流の大きさ及び方向を個別に制御するように構成される、前記第1、第2及び第3の導体に結合される制御部
を更に備える、
請求項1に記載の多自由度電磁機械。
【外国語明細書】