(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048398
(43)【公開日】2022-03-25
(54)【発明の名称】オキシントモジュリン誘導体を含む糖尿病又は肥満性糖尿病の治療用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/26 20060101AFI20220317BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220317BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220317BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220317BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20220317BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220317BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220317BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220317BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220317BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220317BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20220317BHJP
C07K 14/76 20060101ALI20220317BHJP
C07K 14/78 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
A61K38/26
A61K39/395 A
A61K39/395 M
A61K39/395 Y
A61K45/00
A61K47/68
A61P3/04
A61P3/10
A61P43/00 121
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C07K19/00
C07K16/00
C07K14/76
C07K14/78
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016603
(22)【出願日】2022-02-04
(62)【分割の表示】P 2020028080の分割
【原出願日】2013-11-06
(31)【優先権主張番号】10-2012-0124724
(32)【優先日】2012-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】キム ジンスン
(72)【発明者】
【氏名】キム デジン
(72)【発明者】
【氏名】イ サンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョン ソンヨプ
(72)【発明者】
【氏名】クォン セチャン
(57)【要約】
【課題】糖尿病及びこれに関連する疾患の予防又は治療において有効に使用することができる治療用組成物を提供する。
【解決手段】オキシントモジュリン誘導体を有效成分として含む糖尿病、肥満性糖尿病若しくは糖尿合併症の予防又は治療用組成物に関する。また、本発明は、本発明のオキシントモジュリン誘導体を薬学的有效量で個体に投与する段階を含む、糖尿病、肥満性糖尿病の予防又は治療方法に関する。本発明のオキシントモジュリン誘導体は天然型オキシントモジュリンに比べてGLP-1受容体及びグルカゴン受容体に対して高い活性を有する。本発明のオキシントモジュリン誘導体はβ細胞の拡張を誘導し、インシュリン分泌量を増加させて高脂肪及び高脂肪の食餌によって増加した血糖を減少させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシントモジュリン誘導体を有効成分として含む糖尿病、肥満性糖尿病、若しくは糖尿病合併症の予防又は治療用組成物。
【請求項2】
前記オキシントモジュリン誘導体が、配列番号2~34からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記オキシントモジュリン誘導体が、免疫グロブリン断片、抗体、エラスチン、アルブミン、ピブロネクチンからなる群から選択されたものが連結された結合体の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記結合体が、配列番号2~34からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するオキシントモジュリン誘導体及び免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体によって連結されたものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記非ペプチド性重合体が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、ポリ乳酸(polylactic acid、PLA)、ポリ乳酸グリコール(polylactic-glycolic acid、PLGA)、脂質ポリマー、キチン類、ヒアルロン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたものである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記非ペプチド性重合体の両末端がそれぞれ免疫グロブリンFc領域及びオキシントモジュリンのアミン基又はチオール基に結合するものである、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記薬剤学的組成物が、糖尿病、肥満性糖尿病、若しくは糖尿病合併症の予防又は治療効果を奏する薬学的製剤がさらに含まれるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記糖尿病が、インスリン依存性1型糖尿病及びインスリン非依存性2型糖尿病である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記肥満性糖尿病が、肥満により発生するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
オキシントモジュリン誘導体を薬学的有効量で、個体に投与する段階を含む、糖尿病、肥満性糖尿病若しくは糖尿病合併症を治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシントモジュリン誘導体を有効成分として含む糖尿病、肥満性糖尿病若しくは糖尿病合併症の予防又は治療用組成物に関する。また、本発明は、本発明のオキシントモジュリン誘導体を薬学的有効量で、個体に投与する段階を含む、糖尿病、肥満性糖尿病若しくは糖尿病合併症の予防又は治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、韓国では、経済成長と食生活の西欧化により、食物から得る脂肪分の摂取が増加し、運動不足などによる肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧症、動脈硬化症及び脂肪肝のような代謝性疾患が増加する傾向にある。
【0003】
糖尿病は、インスリンの分泌量が不足したり、正常な機能が行われないなどの代謝性疾患の一種で(DeFronzo、1988)、血中のブドウ糖の濃度が高くなる高血糖を特徴とし、高血糖により様々な症状及び徴候が現れ、尿の中にブドウ糖が排出される疾患である。今日、肥満率、特に腹部肥満の増加により糖尿病の発生率が爆発的に増加する傾向にある。
【0004】
全世界の糖尿病患者数は2000年で1億7,000万人と報告されており、2030年には3億7,000万人に達すると予想されているが、最近の分析によると、2008年には既に全世界的に約3億5,000万人に達しており(Danaei et al.,2011)、予想以上にはるかに深刻な水準である。2型糖尿病患者の約80%以上が肥満であるの対し、肥満患者のわずか10%未満が糖尿病として報告されて(Harris et al ,. 1987)いる。このような糖尿病と肥満の関連性は、アディポカイン(adipokines)と遊離脂肪酸(free fatty acid)の不規則な分泌により脂肪酸がβ細胞や腎臓、肝臓、心臓などのインスリン感受性の組織内に蓄積され、脂肪毒性(lipotoxicity)を示すためである。
【0005】
慢性的な高血糖状態に対する適切な治療がなされないと、身体に様々な病的症状が現れるが、代表的なものとしては、網膜症、腎機能障害、神経障害、血管障害による脳卒中、腎臓、心臓疾患や糖尿病性足部潰瘍、及び心血管系疾患の危険性が高まる。このような合併症は生活の質を低下させ、最終的には、糖尿病患者の寿命を短縮させる。したがって、糖尿病に起因する合併症を予防するためには効果的な血糖の管理が不可欠である。
【0006】
現在、血糖を調節する方法としては、生活習慣の矯正(食餌療法、運動療法)及び薬物療法などが行われている。しかし、食餌療法や運動療法は、厳格な管理と実施が困難であり、その治療効果にも限界がある。したがって、大部分の糖尿病患者は、生活習慣の矯正と共にインスリン、インスリン分泌促進剤、インスリン感受性改善剤、及び血糖降下剤などの薬物による血糖の調節に依存している。
【0007】
組換え技術によって生産されているインスリンは、1型糖尿病患者及び血糖の調節がうまくできない2型糖尿病患者に必須の薬剤として血糖値の調節においては有利であるが、注射針に対する拒否感、投与方法の困難さ、低血糖のリスク及び体重増加などの欠点を有する。
【0008】
インスリン分泌促進剤の一種であるメグリチニド系は薬効が極めて速い製剤で、食前に服用するものとして、ノボノーム(レパグリニド)、ファステイック(ナテグリニド)、グルファスト(ミチグリニド)などがある。インスリン感受性改善剤は、単独での服用時には低血糖をほとんど起こさないのが特徴であり、ビグアニド(biguanide)系列の薬物であるメトホルミン(metformin)と、チアゾリジンジオン(thiazolidineDIOne)系列のアバンディア(ロシグリタゾン)、アクトス(ピオグリタゾン)などがある。
【0009】
最近開発されている薬物としては、インスリン分泌を促進させるホルモンであるグルカゴン様ペプチド-1(glucagon-like peptide-1)の作用を利用して開発されたGLP-1アゴニストがあり、エクセナチド(exenatide )とビクトーザ(リラグルチド)がこれに該当する。また、GLP-1を迅速に不活性化させる酵素であるDPP-4(dipeptidyl peptidase-4)の作用を抑制するDPP-4阻害剤も最近開発された新薬であり、ジャヌビア(一般名:シタグリPチン、sitagliptin)が代表的なものである。
【0010】
しかし、これらの薬剤は、肝毒性、胃腸障害、心血管系疾患及び発がん性などの副作用が報告されており、年間にかかる治療費も高額で、糖尿病治療における障害となっている。実際のところ、前糖尿病(pre-diabetes)及び糖尿病関連の費用は、2007年を基準として、米国だけでも約200兆ウォンに迫っており(Dall et al., 2010)、肥満関連の費用も2008年を基準として、アメリカだけで150兆ウォンに迫っている(Finkelstein et al., 2009)。
【0011】
したがって、体重を減少させて血糖を効果的に下げ、糖尿病及び肥満性糖尿病の治療に同時に使用できるとともに、副作用の少ない薬剤の開発が急務となっている。
【0012】
このような候補物質のひとつとして、最近ではオキシントモジュリンが脚光を浴びている。オキシントモジュリンは前駆体であるプレグルカゴン(pre-glucagon)から作られ、主な特徴として、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)とグルカゴン受容体のいずれにも結合して二重機能(dual function)を果たしうるペプチドであるため、肥満、糖尿病、高脂血症及び脂肪肝の治療など、様々な目的で研究されている。
【0013】
しかし、オキシントモジュリンは、生体内での半減期が短く、その活性が肥満、糖尿病、高脂血症及び脂肪肝の治療などに使用可能な程度には現れないため、高容量を投与しなければならないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際特許公開第WO97/34631号
【特許文献2】国際特許公開第WO96/32478号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】H. Neurath, R. L. Hill, The Proteins, Academic Press, New York, 1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者らは、天然型オキシントモジュリンよりも活性が増進されたオキシントモジュリン誘導体を開発し、該誘導体が高脂肪の食餌によって誘導された(HF DIO)マウスモデルとレプチン受容体の変異によって誘導された糖尿病マウス(db/db)モデルの血糖及び糖負荷能を改善し、糖化ヘモグロビン(HbA1c)の割合を改善させることによって、糖尿病、肥満性糖尿病若しくは糖尿病合併症の治療に有効に用いることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の目的は、オキシントモジュリン誘導体を有効成分として含む糖尿病、肥満性糖尿病若しくは糖尿病合併症の予防又は治療用組成物を提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、オキシントモジュリン誘導体を薬学的有効量で、個体に投与する段階を含む、糖尿病、肥満性糖尿病若しくは糖尿病合併症を予防又は治療する方法を提供することである。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、糖尿病、肥満性糖尿病若しくは糖尿病合併症の予防又は治療用医薬品を製造するに当たり、本発明のオキシントモジュリン誘導体の用途を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明のオキシントモジュリン誘導体は、天然型のオキシントモジュリンに比べGLP-1受容体及びグルカゴン受容体に対して高い活性を有する。本発明のオキシントモジュリン誘導体は、β細胞の拡大を誘導し、インスリン分泌量を増加させて高カロリー及び高脂肪の食餌により増加した血糖を減少させる。また、体重及び食餌摂取の減少を誘導してインスリン感受性を改善し、インスリン抵抗性のために調節されない血糖を正常レベルに維持させる。したがって、糖尿病及び糖尿病に関連する疾患の予防又は治療において有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】高脂肪の食餌により長期(26週間)誘導された肥満マウス(High fat diet-induced obesity mice)への持続型オキシントモジュリン誘導体の投与による体重変化を示すグラフである。最初の投与日に測定した体重を基準として体重の変化量をパーセント(%)で換算して示した。
【
図2】高脂肪の食餌で長期(26週間)誘導された肥満マウスに、持続型オキシントモジュリン誘導体を投与することによって起こる血中グルコース濃度の変化を曲線下面積(area under curve、AUC)で比較したグラフである。
【
図3】レプチン受容体における変異により糖尿病を誘発させたマウスモデルに、持続型オキシントモジュリン誘導体を4週間投与することによって起こる体重の変化を示すグラフである。
【
図4】レプチン受容体における変異により糖尿病を誘発させたマウスモデルに、持続型オキシントモジュリン誘導体を4週間投与することによって起こる血中グルコース濃度の変化を曲線下面積(AUC)で比較したグラフである。[発明を実施するための形態]
【0022】
前記課題を解決するための一態様として、本発明はオキシントモジュリン誘導体を有効成分として含む、糖尿病、肥満性糖尿病若しくは糖尿病合併症の予防又は治療用組成物を提供する。
【0023】
本発明における用語「オキシントモジュリン(oxyntomodulin)」とは、グルカゴンの前駆体であるプレグルカゴンから作られるペプチドを意味する。本発明のオキシントモジュリンは天然型オキシントモジュリン、その前駆物体(precursor)、誘導体(analog)、断片(fragments)及び変異体(variants)などを含む。好ましくは、配列番号1(HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNTKRNRNNIA)のアミノ酸配列を有する。
【0024】
本発明における用語「オキシントモジュリン変異体」とは、天然型オキシントモジュリンとアミノ酸配列が1個以上異なるペプチドであって、GLP-1とグルカゴン受容体活性化機能を有するペプチドを意味し、天然型オキシントモジュリンから一部のアミノ酸が置換、付加、欠失及び修飾のいずれかの方法、又はこれらの方法の組み合わせによって製造することができる。
【0025】
本発明における用語「オキシントモジュリン誘導体」とは、前記天然型オキシントモジュリンの一部のアミノ酸を付加、欠失又は置換の形態に改変し、GLP-1受容体とグルカゴン受容体をいずれも活性化させることができ、天然型オキシントモジュリンに比べ、前記各受容体を高レベルに活性化させることのできるペプチド、ペプチド誘導体又はペプチド模倣体などを含む。
【0026】
本発明における用語「オキシントモジュリン断片」とは、オキシントモジュリンのアミノ末端(N末端)又はカルボキシ末端(C末端)に1個又はそれ以上のアミノ酸が付加又は欠失した形態を意味し、付加されたアミノ酸は天然に存在しないアミノ酸(例えば、D型アミノ酸)であってもよい。これらのオキシントモジュリン断片は、体内における血糖調節の機能を有する。
【0027】
オキシントモジュリン変異体、誘導体及び断片の製造に用いられる各製造方法は単独で又は組み合わせて用いることができる。例えば、アミノ酸配列が1個以上異なり、N末端のアミノ酸残基に脱アミノ化(deamination)されたGLP-1受容体とグルカゴン受容体のいずれに対しても活性化機能を有するペプチドも含まれる。
【0028】
本明細書に記載されているアミノ酸は、IUPAC-IUB命名法に従い次のように略語で記載した。
アラニン A アルギニン R
アスパラギン N アスパラギン酸 D
システイン C グルタミン酸 E
グルタミン Q グリシン G
ヒスチジン H イソロイシン I
ロイシン L リジン K
メチオニン M フェニルアラニン F
プロリン P セリン S
トレオニン T トリプトファン W
チロシン Y バリン V
【0029】
本発明におけるオキシントモジュリン誘導体は、前記配列番号1のアミノ酸配列において、アミノ酸が置換、付加、欠失又は翻訳後修飾(例えば、メチル化、アシル化、ユビキチン化、分子内共有結合)されて、グルカゴンとGLP-1受容体を同時に活性化させることのできる任意のペプチドを包括する。前記アミノ酸が置換又は付加される際には、ヒトタンパク質に通常観察される20個のアミノ酸だけでなく、非定型又は非自然発生アミノ酸を使用することができる。非定型アミノ酸の商業的供給源としては、Sigma-Aldrich、ChemPepとGenzyme pharmaceuticalsが挙げられる。このようなアミノ酸を含むペプチドと定型的なペプチド配列は商業化されたペプチド合成メーカー、例えば、米国のAmerican peptide companyやBachem、又は韓国のAnygenによって合成及び購入が可能である。
【0030】
本発明の具体的な一態様において、オキシントモジュリン誘導体は、下記一般式1のアミノ酸を含む新規なペプチドである。
R1-X1-X2-GTFTSD-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20-X21-X22-X23-X24-R2(一般式1)
【0031】
前記式において、
R1は、ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジル(desamino-histidyl)、N-ジメチル-ヒスチジル(N-dimethyl-histidyl)、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニル(beta-hydroxyimidazopropionyl)、4-イミダゾアセチル(4-imidazoacetyl)、β-カルボキシイミダゾプロピオニル(beta-carboxy imidazopropionyl)又はチロシンであり、
X1は、アミノイソ酪酸(aminoisobutyric acid、Aib)、d-アラニン、グリシン、Sar(N-methylglycine)、セリン又はd-セリンであり、
X2は、グルタミン酸又はグルタミンであり、
X3は、ロイシン又はチロシンであり、
X4は、セリン又はアラニンであり、
X5は、リジン又はアルギニンであり、
X6は、グルタミン又はチロシンであり、
X7は、ロイシン又はメチオニンであり、
X8は、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、
X9は、グルタミン酸、セリン、α-メチル-グルタミン酸、又は欠失した配列であり、
X10は、グルタミン、グルタミン酸、リジン、アルギニン、セリン、又は欠失した配列であり、
X11は、アラニン、アルギニン、バリン、又は欠失した配列であり、
X12は、アラニン、アルギニン、セリン、バリン、又は欠失した配列であり、
X13は、リジン、グルタミン、アルギニン、α-メチル-グルタミン酸、又は欠失した配列であり、
X14は、アスパラギン酸、グルタミン酸、ロイシン、又は欠失した配列であり、
X15は、フェニルアラニン、又は欠失した配列であり、
X16は、イソロイシン、バリン、又は欠失した配列であり、
X17は、アラニン、システイン、グルタミン酸、リジン、グルタミン、α-メチル-グルタミン酸又は欠失した配列であり、
X18は、トリプトファン又は欠失した配列であり、
X19は、アラニン、イソロイシン、ロイシン、セリン、バリン、又は欠失した配列であり、
X20は、アラニン、リジン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、又は欠失した配列であり、
X21はアスパラギン、又は欠失した配列であり、
X22は、アラニン、グリシン、トレオニン、又は欠失した配列であり、
X23は、システイン、リジン、又は欠失した配列であり、
X24は、アラニン、グリシン、及びセリンの組み合わせからなる2~10個のアミノ酸を有するペプチド又は欠失した配列であり、及び
R2は、KRNRNNIA(配列番号35)、GPSSGAPPPS(配列番号36)、GPSSGAPPPSK(配列番号37)、HSQGTFTSDYSKYLD(配列番号38)、HSQGTFTSDYSRYLDK(配列番号39)、HGEGTFTSDLSKQMEEEAVK(配列番号40)又は欠失した配列である(ただし、前記一般式1のアミノ酸配列が、配列番号1と同一である場合は除く)。
【0032】
本発明のオキシントモジュリン誘導体は、天然型のオキシントモジュリンのグルカゴン受容体及びGLP-1受容体に対する活性を高めるために、配列番号1で表されるアミノ酸配列の1番目のアミノ酸であるヒスチジンのαカーボンを欠失させた4-イミダゾアセチル、N末端のアミノ基を欠失させたデスアミノ-ヒスチジル、N末端アミノ基を2つのメチル基で修飾したN-ジメチル-ヒスチジル、N末端アミノ基をヒドロキシル基に置換したβ-ヒドロキシイミダゾプロピオニル、又はN末端アミノ基をカルボキシル基に置換したβ-カルボキシイミダゾプロピオニルに置換することができる。また、GLP-1受容体と結合する部位を疎水性結合とイオン結合を強化させるアミノ酸に置換したり、又はそれらを組み合わせることもできる。また、オキシントモジュリン配列の一部配列をGLP-1のアミノ酸配列又はエキセンディン-4(Exendin-4)のアミノ酸配列に置換してGLP-1受容体の活性を高めることができる。
【0033】
また、オキシントモジュリン配列の一部配列をαヘリックスを強化させる配列に置換することができる。好ましくは、前記一般式1のアミノ酸配列の10、14、16、20、24、及び28番のアミノ酸がαヘリックスを強化させるのに役立つことで知られているTyr(4-Me)、Phe、Phe(4-Me)、Phe(4-Cl)、Phe(4-CN)、Phe(4-NO2)、Phe(4-NH2)、 Phg、Pal、Nal、Ala(2-チニエル)又は Ala(ベンゾチニエル)からなるアミノ酸又はアミノ酸誘導体に置換することができ、挿入可能なαヘリックスを強化させるのに役立つアミノ酸若しくはアミノ酸誘導体の種類及び数は限定されるものではない。また、好ましくは、10と14番、12と16番、16と20番、20と24番及び24と28番は各々の環を形成しうるグルタミン酸又はリジンに置換して環を形成することができ、挿入される環の数も限定されるものではない。最も好ましくは、下記一般式2~6から選択されるアミノ酸配列を有するオキシントモジュリン誘導体であってもよい。
【0034】
具体的な一態様において、本発明のオキシントモジュリン誘導体は、オキシントモジュリンのアミノ酸配列にエクセンディン若しくはGLP-1の配列に置換した下記一般式2のアミノ酸を含む新規なペプチドである。
R1-A-R3(一般式2)
【0035】
他の具体的な一態様において、本発明のオキシントモジュリン誘導体は、オキシントモジュリンのアミノ酸配列の一部とエクセンディン又はGLP-1の配列の一部を適当なアミノ酸リンカーに連結した下記一般式3のアミノ酸を含む新規なペプチドである。
R1-B-C-R4(一般式3)
【0036】
他の具体的な一態様において、本発明のオキシントモジュリン誘導体は、オキシントモジュリンのアミノ酸配列の一部とGLP-1受容体の結合力を高めるアミノ酸に置換、例えば、26番目のLeuがGLP-1受容体と疎水性結合するので、疎水性を増加させるアミノ酸であるIle又はValに置換された下記一般式4を含む新規なペプチドである。
【0037】
R1-SQGTFTSDYSKYLD-D1-D2-D3-D4-D5-LFVQW-D6-D7-N-D8-R3(一般式4)
【0038】
他の具体的な一態様において、本発明のオキシントモジュリン誘導体は、固有のオキシントモジュリンのGLP-1受容体とグルカゴン受容体の活性を高めるためにアミノ酸配列の一部を欠失させたり、アミノ酸の一部を挿入したり、アミノ酸の一部を他のアミノ酸に置換した下記一般式5を含む新規なペプチドである。
【0039】
R1-E1-QGTFTSDYSKYLD-E2-E3-RA-E4-E5-FV-E6-WLMNT-E7-R5(一般式5)
【0040】
前記一般式2~5において、
R1は、前記一般式1で説明した構成と同一であり、
Aは、SQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNT(配列番号41)、SQGTFTSDYSKYLDEEAVRLFIEWLMNT(配列番号42)、SQGTFTSDYSKYLDERRAQDFVAWLKNT(配列番号43)、GQGTFTSDYSRYLEEEAVRLFIEWLKNG(配列番号44)、GQGTFTSDYSRQMEEEAVRLFIEWLKNG(配列番号45)、GEGTFTSDLSRQMEEEAVRLFIEWAA(配列番号46)及びSQGTFTSDYSRQMEEEAVRLFIEWLMNG(配列番号47)からなる群から選択され、
Bは、SQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNT(配列番号41)、SQGTFTSDYSKYLDEEAVRLFIEWLMNT(配列番号42)、SQGTFTSDYSKYLDERRAQDFVAWLKNT(配列番号43)、GQGTFTSDYSRYLEEEAVRLFIEWLKNG(配列番号44)、GQGTFTSDYSRQMEEEAVRLFIEWLKNG(配列番号45)、GEGTFTSDLSRQMEEEAVRLFIEWAA(配列番号46)、SQGTFTSDYSRQMEEEAVRLFIEWLMNG(配列番号47)、GEGTFTSDLSRQMEEEAVRLFIEW(配列番号48)、及びSQGTFTSDYSRYLD(配列番号49)からなる群から選択され、
Cは、アラニン、グリシン、及びセリンの組み合わせで構成された2~10個のアミノ酸を有するペプチドであり、
D1は、セリン、グルタミン酸又はアルギニンであり、
D2は、アルギニン、グルタミン酸又はセリンであり、
D3は、アルギニン、アラニン又はバリンであり、
D4は、アルギニン、バリン又はセリンであり、
D5は、グルタミン、アルギニン又はリジンであり、
D6は、イソロイシン、バリン又はセリンであり、
D7は、メチオニン、アルギニン、又はグルタミンであり、
D8は、トレオニン、グリシン又はアラニンであり、
E1は、セリン、Aib、Sar、d-アラニン又はd-セリンであり、
E2は、セリン又はグルタミン酸であり、
E3は、アルギニン又はリジンであり、
E4は、グルタミン又はリジンであり、
E5は、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、
E6は、グルタミン、システイン又はリジンであり、
E7は、システイン、リジン又は欠失した配列であり、
R3は、KRNRNNIA(配列番号35)、GPSSGAPPPS(配列番号36)又はGPSSGAPPPSK(配列番号37)であり、
R4は、HSQGTFTSDYSKYLD(配列番号38)、HSQGTFTSDYSRYLDK(配列番号39)又はHGEGTFTSDLSKQMEEEAVK(配列番号40)であり、及び、
R5は、KRNRNNIA(配列番号35)、GPSSGAPPPS(配列番号36)、GPSSGAPPPSK(配列番号37)又は欠失した配列である(ただし、前記一般式2~5のアミノ酸配列が、配列番号1と同一である場合は除く)。
【0041】
好ましくは、本発明のオキシントモジュリン誘導体は、下記一般式6の新規なペプチドであってもよい。
【0042】
R1-X1-X2-GTFTSD-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20-X21-X22-X23-X24-R2(一般式6)
【0043】
前記一般式6において、
R1は、ヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジル、4-イミダゾアセチル又はチロシンであり、X1は、Aib(aminoisobutyric acid)、グリシン、セリン又はd-セリンであり、
X2は、グルタミン酸又はグルタミンであり、
X3は、ロイシン又はチロシンであり、
X4は、セリン又はアラニンであり、
X5は、リジン又はアルギニンであり、
X6は、グルタミン又はチロシンであり、
X7は、ロイシン又はメチオニンであり、
X8は、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、
X9は、グルタミン酸、α-メチル-グルタミン酸又は欠失した配列であり、
X10は、グルタミン、グルタミン酸、リジン、アルギニン、又は欠失した配列であり、
X11は、アラニン、アルギニン、又は欠失した配列であり、
X12は、アラニン、バリン、又は欠失した配列であり、
X13は、リジン、グルタミン、アルギニン、α-メチル-グルタミン酸又は欠失した配列であり、
X14は、アスパラギン酸、グルタミン酸、ロイシン又は欠失した配列であり、
X15は、フェニルアラニン又は欠失した配列であり、
X16は、イソロイシン、バリン、又は欠失した配列であり、
X17は、アラニン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、α-メチル-グルタミン酸又は欠失した配列であり、
X18は、トリプトファン又は欠失した配列であり、
X19は、アラニン、イソロイシン、ロイシン、バリン、又は欠失した配列であり、
X20は、アラニン、リジン、メチオニン、アルギニン、又は欠失した配列であり、
X21は、アスパラギン又は欠失した配列であり、
X22は、トレオニン又は欠失した配列であり、
X23は、システイン、リジン又は欠失した配列であり、
X24は、グリシンで構成された2~10個のアミノ酸を有するペプチド又は欠失した配列であり、及び
R2は、KRNRNNIA(配列番号35)、GPSSGAPPPS(配列番号36)、GPSSGAPPPSK(配列番号37)、HSQGTFTSDYSKYLD(配列番号38)、HSQGTFTSDYSRYLDK(配列番号39)、HGEGTFTSDLSKQMEEEAVK(配列番号40)、又は欠失した配列である(ただし、前記一般式6のアミノ酸配列が、配列番号1と同一である場合は除く)。
【0044】
より好ましくは、本発明のオキシントモジュリン誘導体は、配列番号2~34のペプチドからなる群から選択されたものであってもよい。より好ましくは、実施例2-1の表1に記載されたオキシントモジュリン誘導体であってもよい。
【0045】
本発明の一実施例では、それぞれの配列番号2~34のアミノ酸配列を有するオキシントモジュリン誘導体を製造し、前記オキシントモジュリン誘導体が、GLP-1受容体及びグルカゴン受容体の活性において、天然型オキシントモジュリンよりも優れていることを確認した(実施例2)。即ち、前記結果から、本発明のオキシントモジュリン誘導体は、GLP-1受容体及びグルカゴン受容体を活性化させることにより、糖尿病、肥満性糖尿病及び/又は糖尿病合併症の予防若しくは治療において、従来のオキシントモジュリンよりも優れた効果を奏することが分かる。
【0046】
本発明の前記オキシントモジュリン誘導体は、治療学的効能を向上させ、生体内半減期を延長させるために、様々な重合体の結合体を含んでいる。
【0047】
本発明において、結合体とは効力の持続性が天然型オキシントモジュリンよりも向上したものを意味し、前記持続型結合体は、天然型オキシントモジュリンのアミノ酸が修飾、置換、付加又は欠失した形態の結合体;ポリエチレングリコール(PEG)のような生分解性重合体がオキシントモジュリンに結合した結合体;若しくはアルブミン、抗体、エラスチン、フィブロネクチン、キチンなどの糖重合体(ポリサッカライド);免疫グロブリン断片のような持続性に優れたタンパク質がオキシントモジュリンに結合した結合体;若しくは非定型化したポリペプチドの結合体、生体内アルブミンとの結合力を有する脂肪酸が結合した結合体又は生分解性ナノ粒子に封入された形態のオキシントモジュリンを含むことができ、本発明では持続型結合体の種類が限定されるものではない。
【0048】
好ましくは、前記結合体は、配列番号2~34からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するオキシントモジュリン誘導体及び免疫グロブリンFc領域が非ペプチド性重合体によって連結されたものである。
【0049】
免疫グロブリンFc領域は、生体内で代謝される生分解性ポリペプチドであるため、薬物キャリアとして使用するのに安全である。また、免疫グロブリンFc領域は、免疫グロブリン分子全体に比べて相対的に分子量が少ないため、結合体の製造、精製、及び収率面において有利であるだけでなく、アミノ酸配列が抗体ごとに異なり、高い非均質性を示すFab部分が除去されるため、物質の同質性が大幅に高まり血中抗原性が誘発される可能性も低くなるという効果も期待できる。
【0050】
本発明における用語「免疫グロブリンFc領域」とは、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域、重鎖不変領域1(CH1)と軽鎖不変領域(CL1)を除いた重鎖不変領域2(CH2)及び重鎖不変領域3(CH3)部分を意味し、重鎖不変領域にヒンジ(hinge)部分を含むこともある。また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型と実質的に同等であるか又は向上した効果を有するものである限り、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域を除いた一部又は全ての重鎖不変領域1(CH1)及び/又は軽鎖不変領域1(CL1)を含む拡張されたFc領域であってもよい。また、CH2及び/又はCH3に該当する非常に長い一部アミノ酸配列が除去された領域であってもよい。即ち、本発明の免疫グロブリンFc領域は、1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン、2)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、3)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、4)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、5)1つ又は2つ以上のドメインと免疫グロブリンヒンジ領域(又はヒンジ領域の一部)との組み合わせ、6)重鎖不変領域の各ドメインと軽鎖不変領域の二量体であってもよい。
【0051】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型アミノ酸配列だけでなく、その配列誘導体(変異体)を含む。アミノ酸配列誘導体とは、天然アミノ酸配列のうち、1個以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的若しくは保存的置換、又はそれらの組み合わせによって異なる配列を有することを意味する。例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であると知られている214~238、297~299、318~322若しくは327~331番目のアミノ酸残基が改変するために適した部位として用いることができる。
【0052】
また、ジスルフィド結合が形成されうる部位が除去されたり、天然型FcからN末端の幾つかのアミノ酸が除去されたり、或いは天然型FcのN末端にメチオニン残基が付加されてもよいなど、様々な種類の誘導体が可能である。また、エフェクター機能を無くすために、補体結合部位、例えば、C1q結合部位が除去されてもよく、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(antibody dependent cell mediated cytotoxicity、ADCC)部位が除去されてもよい。このような免疫グロブリンFc領域の配列誘導体を製造する技術は特許文献1、特許文献2などに開示されている。
【0053】
分子の活性を一般的に変更しないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸交換は、当該分野において公知となっている(非特許文献1)。最も一般的に起こる交換は、アミノ酸残基のAla/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、 Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly 間の交換である。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫酸化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、グリコシル化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファシネル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)及びアミド化(amidation)などによって修飾することができる。
【0054】
前述のFc誘導体は、本発明のFc領域と同じ生物学的活性を示し、Fc領域の熱、pHなどに対する構造的安定性を向上させた誘導体である。
【0055】
また、これらのFc領域は、ヒト、牛、山羊、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット又はモルモットなどの動物の生体内で分離した天然型から得ることも可能であり、形質転換された動物細胞又は微生物から得た組換え型又はその誘導体であってもよい。ここで、天然型から得る方法は、免疫グロブリン全体をヒト又は動物の生体から分離した後、タンパク質分解酵素を処理して得る方法であってもよい。パパインを処理する場合には、Fab及びFcに切断され、ペプシンを処理する場合には、pF'c及びF(ab)2に切断される。これをサイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatograpHy)などを用いて、Fc又はpF'cを分離することができる。好ましくは、ヒト由来のFc領域を微生物から得た組換え型免疫グロブリンFc領域である。
【0056】
また、免疫グロブリンFc領域は、天然型糖鎖、天然型に比べて増加した糖鎖、天然型に比べて減少した糖鎖又は糖鎖が除去された形態であってもよい。このような免疫グロブリンFc糖鎖の増減又は除去には化学的手法、酵素学的手法及び微生物を利用した遺伝子工学的手法などの通常の方法を用いることができる。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc領域は、補体(c1q)との結合力が著しく低下し、抗体-依存性細胞毒性又は補体-依存性細胞毒性が減少するか又は除去されるため、生体内での不必要な免疫反応を誘発しない。このような点において、薬物のキャリアとしての本来の目的により適合する形態は、糖鎖が除去されるか、又は非糖鎖化された免疫グロブリンFc領域であると言えるであろう。
【0057】
本発明における用語「 糖鎖の除去 (Deglycosylation)」とは、酵素によって糖を除去したFc領域を意味し、非グリコシル化(Aglycosylation)は、原核生物、好ましくは大腸菌で生産し、糖鎖化していないFc領域を意味する。
【0058】
一方、免疫グロブリンFc領域は、ヒト又は牛、山羊、豚、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物由来であってもよく、好ましくは、ヒト起源である。
【0059】
また、免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来又はこれらの組み合わせ(combination)、若しくはこれらのハイブリッド(hybrid)によるFc領域であってもよい。好ましくは、ヒト血液に最も豊富なIgG又はIgM由来であり、最も好ましくは、リガンド結合タンパク質の半減期を向上させることが知られているIgG由来である。
【0060】
一方、本発明における用語「組み合わせ(combination)」とは、二量体又は多量体を形成する際に、同一起源の単鎖免疫グロブリンFc領域をコードするポリペプチドが、異なる起源の単鎖ポリペプチドとの結合を形成することを意味する。つまり、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD Fc及びIgEのFc断片からなる群から選択された2つ以上の断片から二量体又は多量体の製造が可能である。
【0061】
本発明における用語「ハイブリッド(hybrid)」とは、単鎖の免疫グロブリンFc領域内に2つ以上の異なる起源の免疫グロブリンFc断片に該当する配列が存在することを意味する用語である。本発明の場合、様々な形態のハイブリッドが可能である。即ち、IgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE Fc及びIgD FcのCH1、CH2、CH3及びCH4からなる群から1~4個のドメインで構成されたドメインのハイブリッドが可能であり、ヒンジを含むことができる。
【0062】
一方、IgGもまた、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブクラスに分けることができ、本発明ではこれらの組み合わせ又はこれらのハイブリッド化も可能である。好ましくは、IgG2及びIgG4のサブクラスであり、最も好ましくは、補体依存性細胞障害(Complement dependent cytotoxicity、CDC)などのエフェクター機能(effector function)をほとんど有さないIgG4のFc領域である。
【0063】
つまり、最も好ましい本発明の薬物のキャリア用免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4由来の非糖鎖化されたFc領域である。ヒト由来のFc領域は、ヒトの生体で抗原として作用し、これに対する新たな抗体を生成するなど好ましくない免疫反応を起こしうる非ヒト由来のFc領域に比べて好ましいものである。
【0064】
本発明における用語「非ペプチド性重合体」とは、繰り返し単位が2つ以上の結合された生体適合性重合体を意味し、前記繰り返し単位は、ペプチド結合ではなく、任意の共有結合により相互に連結される。本発明において、前記非ペプチド性重合体は、非ペプチド性リンカーと混用することができる。
【0065】
本発明で使用可能な非ペプチド性重合体は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、ポリ乳酸(polylactic acid、PLA)及びポリラクチク-グリコール酸(polylactic-glycolic acid、PLGA)のような生分解性高分子、脂質ポリマー、キチン類、ヒアルロン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができ、好ましくは、ポリエチレングリコールである。当該分野で既に知られているこれらの誘導体及び当該分野の技術水準で容易に製造することができる誘導体も本発明の範囲に含まれる。
【0066】
従来のインフレームフュージョン(inframe fusion)方法により製造された融合タンパク質において使用されたペプチド性リンカーの欠点は、生体内でタンパク質分解酵素によって容易に切断され、キャリアによる活性薬物の血中半減期の増加効果を期待したほど得られないということである。しかし、本発明では、タンパク質分解酵素に抵抗性のある重合体を使用することによって、キャリアと類似したペプチドの血中半減期を維持することができる。したがって、本発明で使用できる非ペプチド性重合体は、前記のような役割、即ち、生体内のタンパク質分解酵素に抵抗性のある重合体であれば制限なく使用することができる。非ペプチド性重合体の分子量は、1~100kDaの範囲、好ましくは1~20kDaの範囲である。また、前記免疫グロブリンFc領域と結合する本発明の非ペプチド性重合体は、一種類の重合体だけでなく、異なる種類の重合体と組み合わせて使用することができる。
【0067】
本発明に使用される非ペプチド性重合体は、免疫グロブリンFc領域及びタンパク質薬物と結合することのできる官能基を有し得る。前記非ペプチド性重合体の両末端の官能基は、反応性アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基、マレイミド(maleimide)基とスクシンイミド(succinimide)誘導体からなる群から選択することが好ましい。
【0068】
前記において、スクシンイミド誘導体としては、スクシンイミジルプロピオネート、ヒドロキシスクシンイミジル、スクシンイミジルカルボキシメチル又はスクシンイミジルカーボネートを使用することができる。特に、前記非ペプチド性重合体が両末端に反応性アルデヒド基である官能基を有する場合、非特異的反応を最低限に抑え、非ペプチド性重合体の両末端で生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンとそれぞれ結合するのに効果的である。アルデヒド結合による還元性アルキル化によって生成された最終産物は、アミド結合で連結されたものよりもはるかに安定的である。アルデヒド基は、低いpHでN末端に選択的に反応し、高いpH、例えば、Ph9.0の条件では、リジン残基と共有結合を形成することができる。
【0069】
前記非ペプチド性重合体であるリンカーの両末端の官能基は、相互に同じであるか又は異なってもよい。例えば、一方の末端にはマレイミド基を、他方の端にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基を有することができる。両端にヒドロキシ基を有するポリエチレングリコールを非ペプチド性重合体として用いる場合には、公知の化学反応によって、前記ヒドロキシ基を様々な前記官能基を用いて活性化させたり、商業的に入手可能な改変された官能基を有するポリエチレングリコールを用いて、本発明の持続型結合体を製造することができる。
【0070】
本発明の結合体は、非ペプチド性重合体の両末端がそれぞれ免疫グロブリンFc領域及びオキシントモジュリン誘導体のアミン基又はチオール基に結合することなどが可能である。
【0071】
一方、本発明において、前記非ペプチド性重合体は、両末端に免疫グロブリンFc領域及びタンパク質薬物と結合することができる官能基を含み、前記官能基は、特にこれらに限定されるものではないが、アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基、マレイミド基、スクシンイミド誘導体(スクシンイミジルプロピオネート、ヒドロキシスクシンイミジル、スクシンイミジルカルボキシ又はスクシンイミジルカーボネート)などが挙げられる。
【0072】
前記非ペプチド性重合体の両末端の官能基は、互いに同じであるか又は異なってもよい。例えば、前記非ペプチド性重合体の一方の末端には官能基としてマレイミド基を含み、他方の末端にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基などを含むことができる。例えば、前記非ペプチド性重合体の一方の末端がアルデヒド基の官能基を含み、他方の末端がマレイミド基の官能基を含む場合、非特異的反応を最小限に抑え、非ペプチド性重合体の両末端において生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンとそれぞれ結合するのに効果的である。本発明の実施例によれば、プロピオンアルデヒドを単独で含むか又はマレイミド基とアルデヒド基を同時に含む非ペプチド性重合体であるPEGを使用して、オキシントモジュリン又はその誘導体と免疫グロブリンFc領域を共有結合で連結することによって結合体を合成した。
【0073】
本発明の組成物は、糖尿病、肥満性糖尿病及び/又は糖尿病合併症の予防又は治療に使用することができる。
【0074】
本発明における用語「予防」とは、目的とする疾患の発病を抑制したり、遅延させる全ての行為を意味する。本発明における用語「予防」とは、本発明のオキシントモジュリン誘導体の投与により、血液内の糖の濃度が正常なレベルに好ましく調節されて、糖尿病、肥満性糖尿病若しくは糖尿病合併症への進行を抑制したり、遅延させることを意味する。
【0075】
本発明における用語「治療」とは、発生した病気の症状を軽減、改善又は緩和する全ての行為を意味し、本発明のオキシントモジュリン誘導体を投与することによって、血液内の糖の濃度が安定的に正常レベルを維持し、糖尿病、肥満性糖尿病若しくは糖尿病合併症の症状が軽減、改善又は緩和することを意味する。
【0076】
前記「糖尿病」とは、インスリンの分泌量が不足したり、正常な機能が行われないなどの代謝性疾患の一種であり、血液中のブドウ糖の濃度が高くなる高血糖を特徴としており、高血糖により様々な症状及び徴候を引き起こして、尿の中にブドウ糖が排出される病気を意味する。
【0077】
前記「肥満性糖尿病」とは、糖尿病の原因となる肥満の症状を伴う糖尿病、特に2型糖尿病や、一般的に2型糖尿病患者に伴う肥満症状を意味する。2型糖尿病患者の約80~90%は肥満の症状を伴い、このような患者は、インスリン抵抗性を有することを特徴とする。適切な運動、食餌療法、及び薬物療法により肥満性糖尿病の予防及び症状の軽減が可能である。本発明における前記肥満性糖尿病は、肥満から発生するものであってもよい。
【0078】
前記「糖尿病合併症」とは、長期間高血糖状態が維持されるとともに、身体に現れる様々な病的症状を意味するもので、例えば、網膜症、腎機能障害、神経障害、血管障害による脳卒中、腎臓、心臓疾患や糖尿病性足部潰瘍及び心血管系疾患が挙げられるが、これらに限定されるものではない。高血糖状態が長期間維持されると、前記網膜症、腎機能障害、神経障害、血管障害による脳卒中、腎臓、心臓疾患や糖尿病性足部潰瘍及び心血管系疾患のリスクが高くなるので、このような合併症を予防するためには、効果的な血糖の管理が不可欠である。
【0079】
したがって、本発明の薬剤学的組成物は、糖尿病、肥満性糖尿病若しくは糖尿病合併症の予防又は治療に使用することができる。
【0080】
本発明の一実施例では、ポリエチレングリコールを介して本発明によるオキシントモジュリン誘導体と免疫グロブリンFc領域が共有結合によって連結された、持続型オキシントモジュリン誘導体の結合体を製造した後、これを高脂肪の食餌の摂取により肥満を誘導したマウスモデルと、レプチン受容体を変異させることによって糖尿病を誘発させたマウスモデルに投与した。その結果、本発明による持続型オキシントモジュリン誘導体の結合体を投与した群では、肥満が誘導された動物モデルに比べて体重及び飼料摂取量が顕著に減少し(
図1)、血液内のグルコース濃度が有意に減少することを確認した(
図2)。また、本発明による持続型オキシントモジュリン誘導体の結合体は、商用化された持続型GLP-1類似体であるVICTOZA(登録商標)と比較しても同等以上の血糖の改善効果を示した(
図2)。
【0081】
本発明の一実施例では、ポリエチレングリコールを介して、本発明によるオキシントモジュリン誘導体と免疫グロブリンFc領域が共有結合によって連結された、持続型オキシントモジュリン誘導体の結合体を製造した後、これを、レプチン受容体を改変することによって糖尿病を誘発させたマウスモデルに投与した。その結果、本発明による持続型オキシントモジュリン誘導体の結合体を投与した群において、対照群に比べて体重増加が著しく抑制され(
図3)、血液内のグルコース濃度が有意に減少することが確認され(
図4)、商用化された持続型GLP-1類似体である VICTOZA(登録商標)と比較した場合においても優れた血糖改善効果が確認された(
図4)。
【0082】
すなわち、本発明によるオキシントモジュリン誘導体は、体内のβ細胞の拡張を誘導し、インスリン分泌量を増やして血液内の糖の調節能力を改善させる。また、本発明のオキシントモジュリン誘導体は、体重減量を誘導し、インスリン感受性の改善及びインスリン抵抗性によって起こる動脈硬化症、高脂血症、高血圧症などの心血管系疾患への移行を防止する。したがって、本発明のオキシントモジュリン誘導体は、糖尿病、肥満性糖尿病及び糖尿病合併症の治療薬として有効に使用することができる。また、本発明の結合体は、天然型オキシントモジュリンに比べてGLP-1受容体及びグルカゴン受容体に対して優れた活性を有し、Fc領域を結合させることによって、体内において血中半減期を延長させて、長時間生体内で活性を維持することができる。
【0083】
本発明の組成物は、薬剤学的組成物であってもよい。
【0084】
本発明の薬剤学的組成物には、糖尿病、肥満性糖尿病若しくは糖尿病合併症の予防又は治療効果を示す薬学的製剤がさらに含まれてもよい。糖尿病、肥満性糖尿病若しくは糖尿病合併症の治療薬として公知の薬学的製剤を併用投与するために、本発明の組成物にさらに含むことができる。
【0085】
したがって、本発明の組成物は、糖尿病、肥満性糖尿病若しくは糖尿病合併症の予防又は治療に用いるために、単独で使用したり、又は他の薬剤と併用投与することができる。
【0086】
本発明における用語「投与」とは、任意の適切な方法によって患者に所定の物質を導入することを意味し、前記誘導体の投与経路は、薬物が目的の組織に到達することができる限り、一般的な如何なる経路を通じて投与されてもよい。腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。しかし、経口投与時にはペプチドは消化されるため、経口用組成物は活性薬剤をコーティングしたり、胃の中での分解から保護されるように製剤化することが好ましく、注射剤の形で投与することが好ましい。また、薬剤学的組成物は、活性物質が標的細胞に移動することができる任意の装置によって投与することができる。
【0087】
本発明のオキシントモジュリン誘導体を含む薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容可能な担体を含むことができる。薬剤学的に許容可能は担体は、経口投与時には結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用することができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを混合して用いることができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用することができる。本発明の薬剤学的組成物の剤形は、上述のような薬剤学的に許容可能な担体と混合して多様に製造することができる。例えば、経口投与時には錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、サスペンション、シロップ、ウェーハなどの形態で製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬のアンプル又は多数回投薬の形態で製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性製剤などに製剤化することができる。
【0088】
一方、製剤化に適した担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシア、アルギン酸、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム又は鉱物油などが挙げられる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、防腐剤などをさらに含むことができる。
【0089】
本発明の薬剤学的組成物は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別及び体重並びに疾患の重症度などの幾つかの関連因子とともに、活性成分である薬物の種類に応じて決定される。本発明の薬剤学的組成物は、生体内での持続性及び力価が優れているので、本発明の薬剤学的製剤の投与回数及び頻度を大幅に減らすことができる。
【0090】
本発明の他の態様として、オキシントモジュリン誘導体を薬学的有効量で、個体に投与する段階を含む、糖尿病、肥満性糖尿病若しくは糖尿病合併症を予防又は治療する方法を提供する。
【0091】
前記オキシントモジュリン誘導体、糖尿病、肥満性糖尿病及び糖尿病合併症については、前述の通りである。
【0092】
前記個体は、糖尿病及び肥満性糖尿病又は糖尿病合併症の疑いのある個体であり、前記疾患が発症したり、又は発症しうるヒトをはじめとするラット、家畜などを含む哺乳動物を意味するが、本発明のオキシントモジュリン誘導体により治療可能な個体であれば、限定されることなく含まれる。
【0093】
本発明の治療方法は、結合体を含む薬剤学的組成物を薬学的有効量で投与することを含むことができる。適切な1日の総使用量は、正しい医学的判断の範囲内で医師によって決定され、1回又は数回に分けて投与できる。しかし、本発明の目的上、特定の患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によっては、他の製剤の使用有無、具体的組成物、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、具体的組成物とともに使用したり、同時使用される薬剤はじめとする様々な因子と、医薬分野において公知となっている類似因子に応じて異なった適用をすることが好ましい。
【0094】
また、他の態様として、本発明は、糖尿病、肥満性糖尿病若しくは糖尿病合併症の予防又は治療用医薬を製造するに当たり、本発明のオキシントモジュリン誘導体の用途を提供する。
【0095】
さらに、他の態様として、本発明は、オキシントモジュリン誘導体の結合体の製造方法を提供する。
【0096】
前記製造方法は、
(1)両末端にアルデヒド、マレイミド又はスクシンイミド誘導体である官能基を有する非ペプチド性重合体を用いてオキシントモジュリン誘導体ペプチドのアミン基又はチオール基に共有結合によって連結する段階と、
(2)前記(1)の反応混合物からアミノ末端以外の位置に非ペプチド性重合体が共有結合したオキシントモジュリン誘導体ペプチドを含む連結体を分離する段階、及び、
(3)分離された連結体の非ペプチド性重合体の他方の末端に免疫グロブリンFc領域を共有結合によって連結し、非ペプチド性重合体の両端がそれぞれ免疫グロブリンFc領域及びオキシントモジュリン誘導体ペプチドと結合したペプチド結合体を生成する段階を含むことができる。
【0097】
より具体的には、前記製造方法は、(1)各末端に反応性アルデヒド基と反応性マレイミド基を有する非ペプチド性重合体をオキシントモジュリン誘導体のシステイン残基に共有結合によって連結する段階と、(2)(1)の反応混合物からシステイン残基に非ペプチド性重合体が共有結合されたオキシントモジュリン誘導体を含む連結体を分離する段階、及び(3)分離された連結体の非ペプチド性重合体の他方の末端に免疫グロブリンFc領域を共有結合によって連結して、非ペプチド性重合体の両端がそれぞれ免疫グロブリンFc領域及びオキシントモジュリン誘導体と結合されたタンパク質結合体を生成する段階を含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0098】
以下、下記実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【実施例0099】
実施例1: インビトロ活性細胞株の生産
実施例1-1:GLP-1に対してcAMP反応を示す細胞株の生産
【0100】
ヒトGLP-1受容体遺伝子のcDNA(OriGene Technologies、Inc. USA)からORF(open reading frame)に該当する部分を鋳型とし、HindIII切断部位とEcoRI切断部位をそれぞれ含む正方向及び逆方向プライマーを用いてPCRを行い、PCR産物を得た。
【0101】
正方向プライマー:5'-CCCGGCCCCCGCGGCCGCTATTCGAAATAC-3 '(配列番号50)
逆方向プライマー:5'-GAACGGTCCGGAGGACGTCGACTCTTAAGATAG-3 '(配列番号51)
【0102】
前記PCR産物を公知の動物細胞の発現ベクターであるx0GC/dhfrにクローニングして、組み換えベクターx0GC/GLP-1Rを製造した。
【0103】
前記製造した組換えベクターx0GC/GLP-1RをDMEM/F12(10%FBS)培地で培養したCHO DG44細胞株にリポフェクタミン(Lipofectamine、Invitrogene、USA)を用いて導入することによって形質転換体を得、該形質転換体を1Mg/mLのG418及び10nMのメトトレキサート(methotraxate)を含む選別培地で選別培養した後、これより単一クローンの細胞株を選別し、GLP-1に対して優れた濃度依存的なcAMP反応を示す細胞株を最終的に選別した。
【0104】
実施例1-2:グルカゴンに対してcAMP反応を示す細胞株の生産
ヒトグルカゴン受容体遺伝子のcDNA(OriGene Technologies、Inc.USA)でORFに対応する部分を鋳型にして、EcoRI切断部位とXhoI切断部位をそれぞれ含む正方向及び逆方向プライマーを用いてPCRを行い、PCR産物を得た。
【0105】
HindIII切断部位とEcoRI切断部位をそれぞれ含む正方向及び逆方向プライマーを用いてPCRを行い、PCR産物を得た。
【0106】
正方向プライマー:5'-CAGCGACACCGACCGTCCCCCCGTACTTAAGGCC-3 '(配列番号52)
逆プライマー:5'-CTAACCGACTCTCGGGGAAGACTGAGCTCGCC-3 '(配列番号53)
【0107】
前記PCR産物を公知の動物細胞発現ベクターであるx0GC/dhfrにクローニングして、組み換えベクターx0GC/GCGRを製造した。
【0108】
前記製造した組換えベクターx0GC/GCGRをDMEM/F12(10%FBS)培地で培養したCHO DG44細胞株にリポフェクタミンを用いて導入することによって形質転換体を得、前記形質転換体を1mg/mLのG418及び10nMのメトトレキサートを含む選別培地で選別培養した後、これより単一クローンの細胞株を選別して、グルカゴンに対して優れた濃度依存的なcAMP反応を示す細胞株を最終的に選別した。
【0109】
実施例2.オキシントモジュリン誘導体のインビトロ活性
実施例2-1:オキシントモジュリン誘導体の合成
オキシントモジュリン誘導体のインビトロ活性を測定するために下記のアミノ酸配列を有するオキシントモジュリン誘導体を合成した(表1)。
【0110】
【0111】
前記表1において太字(下線)で示されたアミノ酸は環形成を意味し、Xで表記されたアミノ酸は非天然型アミノ酸であるα-メチル-グルタミン酸を意味する。また、CAは、4-イミダゾアセチルを、DAはデスアミノ-ヒスチジルを、(d)Sは、d-セリンを意味する。
【0112】
実施例2-2:オキシントモジュリン誘導体のインビトロ活性の測定
実施例2-1で製造したペプチドの効果を測定するために、実施例1-1と1-2で製造した形質転換体を用いてインビトロ細胞活性を測定した。
【0113】
前記各形質転換体は、CHO(chinese hamster ovary、チャイニーズハムスターの卵巣 )にヒトGLP-1受容体とグルカゴン受容体遺伝子がそれぞれ発現するように形質転換されたもので、GLP-1とグルカゴンの活性を測定するのに適しているので、それぞれの形質転換体を用いて各オキシントモジュリン誘導体の活性を測定した。
【0114】
具体的には、前記各形質転換体を週2回又は3回継代培養し、96ウェルプレートに各ウェル当り1×105個の継代培養された形質転換体を分注し、24時間培養した。
【0115】
前記培養された細胞をKRB緩衝液で洗浄し、1mMのIBMXを含むKRB緩衝液40mLに懸濁した後、5分間室温で静置した。オキシントモジュリン(配列番号1)又はオキシントモジュリン誘導体(配列番号2-6、8、10-13、17、18、23-25、27、28、及び32-34)を1000nMから5倍ずつ0.02nMまで連続的に希釈し、これを40mLずつ前記細胞に添加した後、CO2培養器で37℃の温度条件にて1時間培養した。次に、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)を20mLずつ加えて細胞を溶解し、該細胞溶解物をcAMP assay kit(Molecular Device、USA)を用いてcAMP濃度を測定し、これよりEC50値を算出した後、相互比較した(表2)。
【0116】
【0117】
前記表2に示すように、配列番号1の天然型オキシントモジュリンのインビトロ活性に比べてGLP-1受容体とグルカゴン受容体活性に対する活性が優れたオキシントモジュリン誘導体が確認された。
【0118】
オキシントモジュリンは、GLP-1受容体とグルカゴン受容体の活性化によって肥満、高脂血症、脂肪肝、動脈硬化症などの治療に効果があることが知られている。本発明によるオキシントモジュリン誘導体は、天然型オキシントモジュリンに比べてGLP-1受容体とグルカゴン受容体に対して高いインビトロ活性を有するので、従来のオキシントモジュリンに比べ、高い効果を有する糖尿病治療薬、肥満性糖尿病治療薬、又は糖尿病合併症の治療薬として使用できることが分かった。
【0119】
実施例3:オキシントモジュリン誘導体(配列番号23)と免疫グロブリンFcを含む結合体の製造(免疫グロブリンFc領域の結合オキシントモジュリン誘導体23)
先ず、MAL-10K-ALD PEG(NOF.,日本)をオキシントモジュリン誘導体(配列番号23)のアミノ酸配列24番システイン残基にペギル化させるために、オキシントモジュリン誘導体(配列番号23)とMAL-10K-ALD PEGのモル比を1:3、タンパク質の濃度を3mg/mLにして常温で3時間反応させた。この際、反応は50mM Tris緩衝液(pH8.0)にグアニジン1Mが添加された環境下で行われた。反応が終了した後、前記反応液をSOURCE Sを用いて、システインがモノペグ化されたオキシントモジュリン誘導体を精製した(カラム:SOURCE S、流速:2.0mL/分、勾配:A 0→100% 50分B(A:20mM クエン酸ナトリウム、pH3.0 + 45%エタノール、B:A + 1M KCl))。
【0120】
次に、前記精製されたモノペグ化されたオキシントモジュリン誘導体(配列番号23)と免疫グロブリンFcのモル比を1:5、タンパク質の濃度を20mg/mLにして、4℃で16時間反応させた。反応液は、100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に還元剤であるSCB20mMが添加された環境下で行われた。反応が終了した後、該反応液をSOURCE 15Q精製カラム(カラム:SOURCE 15Q、流速:2.0mL/分、勾配:A 0→4% 1分 B→20% 80分B(A:20mM Tris-HCl、pH7.5、B:A + 1M NaCl))とSOURCE ISO精製カラム(カラム:SOURCE ISO 、流速:2.0mL/分、勾配:B 0→100% 100分 A、(A:20mM Tris-HCl、pH7.5、B:A + 1.1M AS))を用いて、オキシントモジュリン誘導体(配列番号23)と免疫グロブリンFcを含む結合体を精製した。
【0121】
実施例4:オキシントモジュリン誘導体(配列番号25)と免疫グロブリンFcを含む結合体の製造(免疫グロブリンFc領域に結合するオキシントモジュリン誘導体25)
先ず、MAL-10K-ALD PEGをオキシントモジュリン誘導体(配列番号25)のアミノ酸配列30番システイン残基にペグ化するために、オキシントモジュリン誘導体(配列番号25)とMAL-10K-ALD PEGのモル比を1:3、タンパク質の濃度を3mg/mLにして常温で3時間反応させた。この際、反応は50mM Tris緩衝液(pH8.0)にグアニジン1Mが添加された環境下で行われた。反応が終了した後、前記反応液をSOURCE Sを用いて、システインにモノペギル化されたオキシントモジュリン誘導体を精製した(カラム:SOURCE S、流速:2.0mL/分、勾配:A 0→100% 50分 B(A:20m Mクエン酸ナトリウム、pH3.0 + 45%エタノール、B:A + 1M KCl))。
【0122】
次に、前記精製されたモノペグ化されたオキシントモジュリン誘導体(配列番号25)と免疫グロブリンFcのモル比を1:5、タンパク質の濃度を20mg/mLにして、4℃で16時間反応させた。反応液は、100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に還元剤であるSCB20mMが添加された環境下で行われた。反応が終了した後、該反応液をSOURCE 15Q精製カラム(カラム:SOURCE 15Q、流速:2.0mL/分、勾配:A 0→4% 1分 B→20% 80分 B(A:20mM Tris-HCl、pH7.5、B:A + 1M NaCl))とSOURCE ISO精製カラム(カラム:SOURCE ISO、流速:2.0mL/分、勾配:B 0→100% 100分 A、(A:20mM Tris-HCl、pH7.5、B:A + 1.1M AS))を用いて、オキシントモジュリン誘導体(配列番号25)と免疫グロブリンFcを含む結合体を精製した。
【0123】
実施例5:オキシントモジュリン誘導体(配列番号27)と免疫グロブリンFcを含む結合体の製造(免疫グロブリンFc領域の結合オキシントモジュリン誘導体27)
先ず、MAL-10K-ALD PEGをオキシントモジュリン誘導体(配列番号27)のアミノ酸配列30番システイン残基にペグ化させるために、オキシントモジュリン誘導体(配列番号27)とMAL-10K-ALD PEGのモル比を1:3、タンパク質の濃度を3mg/mLにして常温で3時間反応させた。この際、反応は50mM Tris緩衝液(pH8.0)にグアニジン1Mが添加された環境下で行われた。反応が終了した後、該反応液をSOURCE Sを用いて、システインにモノペギル化されたオキシントモジュリン誘導体を精製した(カラム:SOURCE S、流速:2.0mL/分、勾配:A 0→100% 50分 B(A:20mM クエン酸ナトリウム、pH3.0 + 45%エタノール、B:A + 1M KCl))。
【0124】
次に、前記精製されたモノペギル化されたオキシントモジュリン誘導体(配列番号27)と免疫グロブリンFcのモル比を1:5、タンパク質の濃度を20mg/mLにして、4℃で16時間反応させた。反応液は、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に還元剤であるSCB20mMが添加された環境下で行われた。反応が終了した後、該反応液をSOURCE 15Q精製カラム(カラム:SOURCE 15Q、流速:2.0mL/分、勾配:A 0→4% 1分 B→20% 80分 B(A:20mM Tris-HCl、pH7.5、B:A + 1M NaCl))とSOURCE ISO精製カラム(カラム:SOURCE ISO、流速:2.0mL/分、勾配:B 0→100% 100分 A、(A:20mM Tris-HCl、pH7.5、B:A + 1.1M AS))を用いて、オキシントモジュリン誘導体(配列番号27)と免疫グロブリンFcを含む結合体を精製した。
【0125】
実施例6:持続型オキシントモジュリン誘導体が肥満モデルである高脂肪の食餌誘導(HF DIO)マウスの体重及び血糖値の改善に及ぼす影響
実施例6-1:試験方法
6週齢のマウス(C57BL/6、120-130g)は(株)オリエントバイオ(Orientbio、Korea)より購入した。購入したC57BL/6は、高脂肪の食餌によって、比較的容易に肥満が誘導でき、肥満及び糖尿病の試験に広く使用される動物である。HF DIOマウスは、糖尿病の研究に多く使用されるげっ歯類の一種であり、レプチン受容体の変異によって糖尿病を誘発させたdb/dbマウスなどとは異なり、遺伝子操作によってではなく高脂肪飼料の長期食餌によって、自然にヒトと類似した肥満性糖尿病症状を発現するので、本研究でも肥満性糖尿病に対する、本製剤の体重減少及び血糖の降下における効果を確認するために、本試験系を用いた。
【0126】
飼料は、放射線照射で滅菌した実験動物用飼料、高脂肪の食餌(high-fat-diet、60% Kcal from fat diet、D12492; Research diets Inc.)の供給を受けて自由給餌させ、水は、ろ過後に紫外線殺菌した上水道の水を給水ボトルを使用して自由に摂取させた。GLP施設基準を基に飼育室で照明時間12時間(午前6時点灯-午後6時消灯)を維持しており、動物飼育標準ガイドラインに従って管理した。以後、26周間の肥満誘導期間の後に薬物投与を開始し、群の分類と投与は下記のように5つの群(n=6)に分けて行った(表3)。
【0127】
【0128】
具体的には、1群(HF DIO誘導群、対照群)は、高脂肪飼料を摂取させた群であって、薬物投与はダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DULBECCO'S PHOSPHATE BUFFERED SALINE、DPBS、Sigma)を週1回以上皮下投与し、投与液量は5ml/kgで注射した。また、血糖値の負荷能試験のために、24時間前にダルベッコリン酸緩衝生理食塩水を皮下投与し、16時間断食した。尾部から血液を採取して、空腹時の血糖値(fasting glucose)を測定し、1g/kg体重のブドウ糖を腹腔内投与して、15分、30分、60分、90分、120分後の血糖値を測定した。
【0129】
2群(HF DIO誘導群+VICTOZA(登録商標)100nmol/kg投与群)は、高脂肪飼料を摂取させ、肥満及び高血糖を誘導した後、市販されている VICTOZA(登録商標)(GSK)を日1回皮下投与し、投与液量は5ml/kgで注射した。また、血糖値の負荷能試験のために、試験前に16時間の間断食し、4時間前に VICTOZA(登録商標)100nmol/kgを皮下投与した。尾部から血液を採取して、空腹時の血糖値を測定し、1g/kg体重のブドウ糖を腹腔内投与した後、15分、30分、60分、90分、120分後の血糖値を測定した。
【0130】
3群(HF DIO誘導群+配列番号25-Fc結合体1nmol/kg投与群)は、高脂肪飼料を摂取させ、肥満及び高血糖を誘導した後、実施例4で製造した配列番号25-Fc結合体を1nmol/kgで週1回皮下投与し、投与液量は5ml/kgで注射した。また、血糖値の負荷能試験のために、24時間前に配列番号25-Fc結合体1nmol/kgを皮下投与し、16時間断食した。尾部から血液を採取して、空腹時の血糖値を測定し、1g/kg体重のブドウ糖を腹腔内投与した後、15分、30分、60分、90分、120分後の血糖値を測定した。
【0131】
4群(HF DIO誘導群+配列番号25-Fc結合体3nmol/kg投与群)は、高脂肪飼料を摂取させ、肥満及び高血糖を誘導した後、実施例4で製造した配列番号25-Fc結合体を3nmol/kgで週1回皮下投与し、投与液量は5ml/kgで注射した。また、血糖値の負荷能試験のために、24時間前に配列番号25-Fc結合体3nmol/kgを皮下投与し、16時間断食した。尾部から血液を採取して、空腹時の血糖値を測定し、1g/kg体重のブドウ糖を腹腔内投与した後、15分、30分、60分、90分、120分後の血糖値を測定した。
【0132】
5群(HF DIO誘導群+配列番号25-Fc結合体5nmol/kg投与群)は、高脂肪飼料を摂取させ、肥満及び高血糖を誘導した後、実施例4で製造した配列番号25-Fc結合体を5nmol/kgで週1回皮下投与し、投与液量は5ml/kgで注射した。また、血糖値の負荷能試験のために、24時間前に配列番号25-Fc結合体5nmol/kgを皮下投与し、16時間断食した。尾部から血液を採取して、空腹時の血糖値を測定し、1g/kg体重のブドウ糖を腹腔内投与した後、15分、30分、60分、90分、120分後の血糖値を測定した。
各群(n=6)の全てに2週間生理食塩水又は薬物を投与した後、体重及び血糖値の改善に及ぼす影響について分析した。
【0133】
実施例6-2:持続型オキシントモジュリン誘導体が安定した肥満モデルである高脂肪の食餌誘導(HF DIO)マウスの体重及び血糖値の改善に及ぼす影響
本発明による持続型オキシントモジュリン誘導体の結合体が安定した(stable)肥満モデルである26週間高脂肪の食餌誘導した(HF DIO)マウスの血糖値の改善に及ぼす影響を調べるために、実施例6-1で分類したDIOマウスに持続型オキシントモジュリン誘導体を週1回2週間皮下投与した。毎日体重及び飼料摂取量を測定し、DIOマウスの尾部から血液を0、3、7、10、14日に採取し、血液内の血糖値の変化量を分析した(HITACHI 7020を使用)。体重と血糖値の変化は、
図1~2に示した。
【0134】
体重の変化(
図1)、血糖値AUC(
図2)を示した。前記で得られた結果は、統計処理して平均値と平均値の標準誤差を計算した。各実験群間(n=6)の有意性検定は、一元配置分散分析(one-way ANOVA)のダネットの検定(Dunnett's test)を用いて統計処理した後、信頼区間(p-value)が0.05よりも小さい場合、統計的な意義があるものと判定した。
【0135】
具体的には、体重の変化を測定した結果、26週間高脂肪の食餌を誘導したマウスの場合、体重は減少していないが、持続型オキシントモジュリン誘導体(配列番号25-Fc結合体)投与時には容量依存的に体重が減少することを確認した(
図1)。
【0136】
血液内のグルコース濃度を測定した結果、持続型オキシントモジュリン誘導体(配列番号25-Fc結合体)投与時、用量依存的な血糖の減少を確認し、特に持続型オキシントモジュリン誘導体(配列番号25-Fc結合体)5nmol/kg投与時には、高脂肪の食餌を摂取したDIOマウスよりもグルコース濃度が有意に減少することを確認し、糖尿病治療剤として実用化され市販されている VICTOZA(登録商標)との比較時においても、同等以上の血糖降下効果が確認された(
図2)。
【0137】
実施例6-2の結果から、PEGによって免疫グロブリンFc領域とオキシントモジュリン誘導体が共有結合した、本発明の持続型オキシントモジュリン誘導体の結合体は、高脂肪の食餌誘導(HF DIO)マウスの体重を減少させ、血中グルコース濃度を改善させることによって、糖尿病又はこれに関連した肥満性糖尿病の治療に有効に使用できることを確認した。
【0138】
実施例7:持続型オキシントモジュリン誘導体が、レプチン受容体の変異により糖尿病を誘導したdb/dbマウスの体重及び血糖値の改善に及ぼす影響
実施例7-1:試験方法
オス7週齢BKS.Cg-+Leprdb/+Leprdb/OlaHsdmiceマウス(25±3g、Harlan U.S.A)は、Doo Yeol Biotech (Korea)より購入した。 BKS.Cg-+Leprdb/+ Leprdb/OlaHsdマウス(以下db/dbマウス)は、ob/obマウスとともに糖尿病の研究に最も多く使用されるげっ歯類であり、レプチン受容体の変異によってヒトと類似した糖尿病の症状を現すので、本研究でも糖尿病治療剤を開発するに当たり、本製剤の血糖降下効果を確認するために、本試験系を使用した。
【0139】
動物入手後、1週間の実験環境に順化及び適応させ、血糖値によってランダムに群を分類した。飼料は放射線照射で滅菌された実験動物用固形飼料(Picolab Rodent diet 5053)の供給を受けて自由給餌させ、水はろ過後、紫外線殺菌された上水道水の水を給水ボトルを使用して自由に摂取させた。GLP施設基準に適合する飼育室で照明時間12時間(午前6時点灯-午後6時消灯)を維持し、動物の繁殖標準ガイドラインに基づいて管理した。群分類と投与は下記のように4つの群(n= 7)に分けて行った(表4)。
【0140】
【0141】
具体的には、1群(vehicle)は、薬物対照群として、薬物投与はダルベッコリン酸緩衝生理食塩水を週1回皮下投与し、投与液量は5ml/kgで注射した。
【0142】
2群(VICTOZA(登録商標)60nmol/kg投与群)は薬物投与群として、市販の VICTOZA(登録商標)(GSK)60nmol/kg(糖尿病容量)を日1回皮下投与し、投与液量は5ml/kgで注射した。
【0143】
3群(VICTOZA(登録商標)100nmol/kg投与群)は、薬物投与群として、市販の VICTOZA(登録商標)(GSK)100nmol/kg(肥満容量)を日1回皮下投与し、投与液量は5ml/kgで注射した。
【0144】
4群(配列番号23-Fc結合体15nmol/kg)は、薬物投与群として、実施例4で製造した配列番号23-Fc結合体を15nmol/kgで週1回皮下投与し、投与液量は5ml/kgで注射した。
【0145】
5群(配列番号25-Fc結合体6nmol/kg)は、薬物投与群として、実施例4で製造した配列番号25-Fc結合体を6nmol/kgで週1回皮下投与し、投与液量は5ml/kgで注射した。
【0146】
各群(n=7)全てに4週間生理食塩水又は薬物を投与した後、体重増加抑制と血糖の改善に及ぼす影響について分析した。
【0147】
実施例7-2:持続型オキシントモジュリン誘導体が、レプチン受容体の変異によって糖尿病を誘導したdb/dbマウスの体重と血糖の改善に及ぼす影響の分析
本発明による持続型オキシントモジュリン誘導体の結合体が、レプチン受容体変異によって誘導された糖尿病モデルであるdb/dbマウスの血糖の改善に及ぼす影響を調べるために、実施例7-1で分類したdb/dbマウスに持続型オキシントモジュリン誘導体を週1回、4週間皮下投与した。週2回体重変化を測定し、db/dbマウスの尾部から血液を採取して(1、4週目-毎日、2、3週目-週2回)血糖変化量(HITACHI 7020を使用)を測定した。
【0148】
体重の変化(
図3)、血糖値AUC(
図4)を示した。前記で得られた結果は、統計処理して平均値と平均値の標準誤差を計算した。各実験群間(n=6)の有意性検定は、一元配置分散分析を用いて統計処理した後、信頼区間が0.05よりも小さい場合統計的な意義があるものと判定した。
【0149】
具体的には、体重の変化を測定した結果、db/dbマウス対照群の場合、体重が投与開始日に比べ持続的に増加したのに対し、持続型オキシントモジュリン誘導体(配列番号23-Fc結合体、配列番号25-Fc結合体)投与時には、投与開始日と比較してほとんど変化がなく、有意な体重増加抑制効果を示した(
図3)。
【0150】
血液内のグルコース濃度を測定した結果、持続型オキシントモジュリン誘導体(配列番号23-Fc結合体、配列番号25-Fc結合体)投与時には、対照群に比べ有意な血糖の低下が確認され、特に持続型オキシントモジュリン誘導体(配列番号25-Fc結合体)6nmol/kg投与時には、糖尿病治療薬として実用化され市販されている VICTOZA(登録商標)との比較時にも優れた血糖降下効果を示した(
図4)。
【0151】
実施例7の結果から、PEGによって免疫グロブリンFc領域とオキシントモジュリン誘導体が共有結合された、本発明の持続型オキシントモジュリン誘導体の結合体は、レプチン受容体の変異によって糖尿病を誘導したdb/dbマウスで糖尿病の治療の指標である血糖濃度を、糖尿病対照群と糖尿治療剤として使用されている VICTOZA(登録商標)に比べ有意に改善させることにより、糖尿病の治療に非常に有効に使用できるだけでなく、明確な体重増加抑制効果を示し、糖尿病に関連する心血管系合併症を減少させることができることを確認した。
【0152】
実施例6と7の結果から、本発明の持続型オキシントモジュリン誘導体の結合体は、血糖降下効果が公知となっている VICTOZA(登録商標)と比較して同等以上の優れた血糖降下効果及び優れた体重減少効果を示すため、血糖降下効果に関連する糖尿病治療薬、肥満性糖尿病治療薬、及び糖尿病合併症の治療薬として有効に使用できることを確認した。
【0153】
以上の説明から、本発明が属する技術分野における当業者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施可能であることを理解し得るであろう。これに関連し、以上で記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないことを理解しなければならない。本発明の範囲は前記詳細な説明よりは、後述の特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導出される全ての変更又は変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。