(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048467
(43)【公開日】2022-03-28
(54)【発明の名称】断熱窓パネル
(51)【国際特許分類】
E06B 3/58 20060101AFI20220318BHJP
【FI】
E06B3/58 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154296
(22)【出願日】2020-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓樹
【テーマコード(参考)】
2E016
【Fターム(参考)】
2E016AA04
2E016BA01
2E016BA06
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC01
2E016CC02
2E016CC03
2E016CC04
2E016DA04
2E016DB02
2E016DC01
(57)【要約】
【課題】断熱性の向上を図りつつも、透明性板材の脱落の防止に寄与することができる断熱窓パネルを提供する。
【解決手段】断熱窓パネル1は、光透過性を有する透光性部材10と、第1弾性体51を介して透光性部材10を室外側から支持する室外基材20と、室外基材20と接触することなく、第2弾性体52を介して透光性部材10を室内側から支持する室内基材30と、室外基材20と室内基材30との間に配置された断熱材40とを有したパネル部材Pと、を備え、室外基材20と室内基材30とは、一方に対して他方から離間する方向に力が作用して離間方向に移動した場合であっても、他方に引っ掛かる掛り代を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する透光性部材と、
第1弾性体を介して前記透光性部材を室外側から支持する室外基材と、前記室外基材と接触することなく、第2弾性体を介して前記透光性部材を室内側から支持する室内基材と、前記室外基材と前記室内基材との間に配置された断熱材とを有したパネル部材と、を備え、
前記室外基材と前記室内基材とは、一方に対して他方から離間する方向に力が作用して離間方向に移動した場合であっても、他方に引っ掛かる掛り代を有する
ことを特徴とする断熱窓パネル。
【請求項2】
前記パネル部材の厚み方向の断面において、前記室外基材及び前記室内基材は鉤型形状となると共に、前記室外基材と前記室内基材とは鉤型部分が当該厚み方向に噛み合った状態で両者間に前記断熱材を挟み込んでいる
ことを特徴とする請求項1に記載の断熱窓パネル。
【請求項3】
前記透光性部材は、平面視して、前記パネル部材の中央側に設けられ、
前記パネル部材を平面視して、前記透光性部材を挟む両側の前記室外基材同士、及び、前記透光性部材を挟む両側の前記室内基材同士は、それぞれが一体に連結されている
ことを特徴とする請求項2に記載の断熱窓パネル。
【請求項4】
前記パネル部材から前記断熱材を取り除いたときに、前記室外基材と前記室内基材との前記鉤型部分の噛み合いがより深くなる方向にスライドしたときの最大のスライド量は、前記室外基材と前記室内基材とが前記透明性部材を支持する掛り代未満とされている
ことを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載の断熱窓パネル。
【請求項5】
前記室外基材及び前記室内基材は、前記透光性部材を有することなく室外材、室内材、及びこれらに挟まれる断熱部材を有した断熱パネル、及び、他の前記断熱窓パネルの少なくとも一方の端部に対して嵌合可能に、端部側に嵌合部又は被嵌合部を有する
ことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の断熱窓パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱窓パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外側基材と、内側基材と、両基材との間に配置された断熱材とを備えた断熱パネルが提案されている(特許文献1参照)。また、断熱パネルの一部を刳り貫いてサッシを設置した断熱窓パネルについても提案されている(特許文献2参照)。また、内側金属型材と外側金属型材と、それら両金属型材間に介在させた断熱材とにより構成した複合サッシについても提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-48624号公報
【特許文献2】特開2017-106293号公報
【特許文献3】特開昭57-100280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献2に記載のような断熱窓パネルは、断熱パネルに窓を取り付けるために高熱伝導率のアルミ材等からなるサッシが設けられ、サッシを利用して窓ガラスが断熱パネルに保持されることとなる。しかし、このような構成であると、サッシが室内面から室外面まで連続するため、サッシを通じて熱が伝達してしまい断熱性が低くなってしまう。
【0005】
そこで、特許文献3に記載のように内側金属型材と外側金属型材とを接触させることなく、これらの間に断熱材を配置することで、サッシを通じた熱伝導を抑えた複合サッシを用いることが考えられる。しかし、この場合、断熱性について向上を図ることができるものの、内側金属型材と外側金属型材とが互いに別部材であることから、内側金属型材と外側金属型材とのいずれか一方に他方から離れる方向の力が加わった場合には、内側金属型材又は外側金属型材が脱落してしまうことがあり、金属部材の脱落時には複合サッシに支持される窓ガラス等の透明性板材についても脱落してしまう。また、内側金属型材と外側金属型材とを断熱材に強固に締結したとしても、内側金属型材と外側金属型材とのいずれか一方に他方から離れる方向の力が加わった場合には断熱材に強い引張力が加わることになるが、一般に断熱性が高い材料は引張強度が低いため、高い断熱性と脱落防止とを両立することはできない。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、断熱性の向上を図りつつも、透明性板材の脱落の防止に寄与することができる断熱窓パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る断熱窓パネルは、光透過性を有する透光性部材と、第1弾性体を介して前記透光性部材を室外側から支持する室外基材と、前記室外基材と接触することなく、第2弾性体を介して前記透光性部材を室内側から支持する室内基材と、前記室外基材と前記室内基材との間に配置された断熱材とを有したパネル部材と、を備え、前記室外基材と前記室内基材とは、一方に対して他方から離間する方向に力が作用して離間方向に移動した場合であっても、他方に引っ掛かる掛り代を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、断熱性の向上を図りつつも、透明性板材の脱落の防止に寄与することができる断熱窓パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る断熱窓パネルを示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る断熱窓パネルの分解断面図である。
【
図3】本実施形態に係る断熱窓パネルのスタッキングの様子を示す断面図である。
【
図4】本実施形態に係る断熱窓パネルを示す平面図である。
【
図5】室外基材と室内基材との他の例を示す断面図であり、(a)は第1の例を示し、(b)は第2の例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る断熱窓パネルを示す断面図であり、
図2は、本発明の実施形態に係る断熱窓パネルの分解断面図である。なお、
図1では、説明の関係上、断熱窓パネル1とスタッキングされる断熱パネル100についても図示するものとする。また、
図1及び
図2においては断熱窓パネル1が垂直面に用いられる例を図示するが、天窓用等に傾斜面や水平面に用いられてもよい。
【0012】
図1及び
図2に示す例に係る断熱窓パネル1は、概略的に透光性部材10と、パネル部材Pと、弾性体50とを備えて構成されている。パネル部材Pは、室外基材20と室内基材30と断熱材40とで構成されている。透光性部材10は、一般的な単層ガラス板である。なお、透光性部材10は、これに限らず、複層及び三層ガラス等によって構成されていてもよい。
【0013】
室外基材20は、室外空間に曝される外壁面となる板材であって、例えば塗装が施されたガルバリウム鋼板(登録商標)によって構成されている。この室外基材20は、先端部分(鉤型部分)21(
図2参照)が室内側となるように折り曲げ加工されて形成されており、パネル部材Pの厚み方向の断面(
図1及び
図2に示す断面)において概略鉤型形状となっている。
【0014】
この室外基材20は、折り曲げ加工によって、上部にフック部(嵌合部)22と、下部にフック受部(被嵌合部)23とが形成されている。さらに、室外基材20は、フック受部23が室外側から視認不可となるような下方に延出したフード部24を有している。
【0015】
室内基材30は、室外基材20と直に接触することなく対向配置されて室内側となる板材であって、例えば塗装が施されたガルバリウム鋼板によって構成されている。この室内基材30は、先端部分(鉤型部分)31(
図2参照)が室外側となるように折り曲げ加工されて形成されており、パネル部材Pの厚み方向の断面(
図1及び
図2に示す断面)において概略鉤型形状となっている。
【0016】
この室内基材30は、折り曲げ加工によって、上部に突出部(嵌合部)32と、下部に突出受部(被嵌合部)33とが形成されている。
【0017】
なお、室外基材20及び室内基材30は、60分遮炎に耐え得るものであれば、ガルバリウム鋼板に限らず、他の金属板等によって構成されていてもよい。
【0018】
断熱材40は、室外基材20と室内基材30との間に配置された熱伝導率が所定値以下(例えば0.25W/m・K以下、より好ましくは0.1W/m・K以下)のものであって、60分遮炎に耐え得るケイカル板や石膏板、パーライトボード、シリカボード等の硬質断熱コアによって構成されている。このような材料はいずれも、引張強度は高くないが圧縮強度は高い。また、断熱材40は、鉤型形状となる室外基材20と室内基材30との間に配置されるように、複数に分割されており、個々の断熱材40が基材20,30間に組み込まれて配置されている。
【0019】
ここで、本実施形態において室外基材20は、耐火グレージングビード等からなる第1弾性体51を介して透光性部材10を室外側から支持している。さらに、室内基材30は、耐火グレージングビード等からなる第2弾性体52を介して透光性部材10を室内側から支持している。すなわち、透光性部材10は、弾性体50を介して室外基材20と室内基材30とによって挟持されている。なお、第1弾性体51と第2弾性体52とは別部材となっているが、特にこれに限らず、グレージングチャンネル等からなる連結された一部材であってもよい。また、弾性体50についても60分遮炎に耐え得るものであることが好ましい。
【0020】
図3は、本実施形態に係る断熱窓パネル1のスタッキングの様子を示す断面図である。
図3に示すように、断熱窓パネル1は断熱パネル100とスタッキングされる。
図1に示すように、断熱パネル100は、透光性部材10を有することなく、室外材120と、室外材120に対して直に接触することなく対向配置される室内材130と、これらに挟まれる断熱部材140とを備えている。
【0021】
室外材120及び室内材130は、室外基材20及び室内基材30と同様にガルバリウム鋼板等の折り曲げ加工によって構成されている。断熱部材140は、断熱材40と同様にケイカル板や石膏板、パーライトボード等の硬質断熱コア、又はミネラルウールやPUR/PIR(Polyurethane Resin / Polyisocyanurate)等の断熱コアによって構成されている。
【0022】
このような断熱パネル100は、室外材120の上部側にフック部122を有しており、下部側にフック受部123と下方に延出したフード部124とを有している。さらに、断熱パネル100は、室内材130の上部側に突出部132を有しており、下部側に突出受部133を有している。
【0023】
ここで、本実施形態に係る断熱窓パネル1は、
図3に示すように、フック部22が断熱パネル100のフック受部123に嵌合すると共に、突出部32が断熱パネル100の突出受部133に嵌合する。さらに、断熱窓パネル1は、フック受部23が断熱パネル100のフック部122と嵌合すると共に、突出受部33が断熱パネル100の突出部132と嵌合する。
【0024】
このように、本実施形態に係る断熱窓パネル1は、窓を有しない断熱パネル100に対してスタッキングすることができ、従来の断熱パネル100のみをスタッキングして外壁を構成する工程と同様にして窓を有した外壁を形成することができる。
【0025】
なお、
図3に示すように、断熱窓パネル1はビスSを利用して柱等に固定される。ビスSは室外側から視認できないよう、フード部24,124の裏面側(室内側)に該当する位置から室内側に向けて取り付けられている。また、
図3に示す例において断熱窓パネル1は断熱パネル100にスタッキングされているが、他の断熱窓パネル1に対してスタッキングされてもよい。
【0026】
図4は、本実施形態に係る断熱窓パネル1を示す平面図である。
図4に示すように、透光性部材10は、平面視してパネル部材Pの中央部(中央側)に設けられている。すなわち、透光性部材10はパネル部材Pを構成する第1~第4パネル部材P1~P4によって、四方を囲まれている。ここで、第1~第4パネル部材P1~P4は、それぞれ分割して構成されている。第1及び第4パネル部材P1,P4を構成する室外基材20及び室内基材30は、
図1の上下断面に示すように概略鉤型形状が噛み合った断面構造となっている。第2及び第3パネル部材P2,P3についても
図1の上下断面と同様の水平断面となっており、室外基材20及び室内基材30について概略鉤型形状が噛み合った断面構造となっている。
【0027】
加えて、第1パネル部材P1は、第2及び第3パネル部材P2,P3と連結され、第2及び第3パネル部材P2,P3は、それぞれが第1及び第4パネル部材P1,P4と連結され、第4パネル部材P4は、第2及び第3パネル部材P2,P3と連結され、その結果、第1~第4パネル部材P1~P4が一体化している。
【0028】
なお、本実施形態においては断熱窓パネル1に対して1枚の透光性部材10を持つロの字型の例を示すが、複数の透光性部材10を横に並べた日の字型や目の字型であってもよく、その場合、複数の透光性部材10の間には中柱が立ち、その中柱についても同様に概略鉤型形状が噛み合った断面構造となっており、且つ、第1及び第4パネル部材P1,P4と連結された構造となる。
【0029】
さらに、本実施形態においてパネル部材Pから断熱材40を取り除いたときに、室外基材20と室内基材30との先端部位21,31(
図2参照)の噛み合いがより深くなる方向にスライドしたときの最大のスライド量は、室外基材20と室内基材30とが透明性部材10を支持する掛り代TO(
図1参照)未満とされている。ここで、最大のスライド量は、
図1に示した距離Sとなる。また、
図1において掛り代TOは、室内基材30側の方が短いため、距離Sは室内基材30側の掛り代TO未満とされる。
【0030】
さらに、本実施形態において基材20,30の先端部分21,31同士の距離(パネル部材Pの厚み方向への距離)も適切化されている。
【0031】
次に、本実施形態に係る断熱窓パネル1の作用について説明する。
【0032】
まず、
図1~
図3に示すように、断熱窓パネル1は、透光性部材10が弾性体50を介して室外基材20及び室内基材30によって挟持されている。よって、断熱窓パネル1は、アルミ材等のサッシを有することなく直に接触しない室外基材20と室内基材30とによって透光性部材10を支持しており、断熱性の低下が防止されている。加えて、本実施形態においては基材20,30及び断熱材40(更には弾性体50)を60分遮炎に耐え得る素材によって構成すれば耐火性を発揮することもできる。
【0033】
さらに、断熱窓パネル1は、現場にて断熱パネル100を刳り貫いて、アルミ材等のサッシと共に透光性部材10を嵌め込むものではなく、予め透光性部材10が弾性体50を介して室外基材20及び室内基材30によって挟持されている。しかも、断熱窓パネル1は、フック部22、フック受部23、突出部32、及び突出受部33を有していることから断熱パネル100や他の断熱窓パネル1とスタッキングでき、現場においては刳り貫き作業等を行うことなくスタッキングによって窓を有した外壁を形成することができる。
【0034】
また、
図4に示すように、透光性部材10はパネル部材Pの端部ではなく中央部に設けられており、しかも室外基材20と室内基材30とは透光性部材10を挟む両側において一体に連結されている(すなわち第1パネル部材P1と第4パネル部材P4、及び、第2パネル部材P2と第3パネル部材P3とは一体に連結されている)。このため、パネル部材Pを平面視した状態において、室外基材20や室内基材30のうち透光性部材10の一側に対して透光性部材10から離れる方向に力が作用したとしても、一体に連結する他側によって規制されて、一側が透光性部材10から離脱してしまうことを防止するようになっている。例えば、
図1に示すように、断熱材40を挟む鉤状噛み合わせから、第1パネル部材P1の室外基材20は、第1パネル部材P1の室内基材30に対し上にずれることができず、第4パネル部材P4の室外基材20は、第4パネル部材P4の室内基材30に対し下にずれることができず、従って一体に連結された第1~第4パネル部材P1~P4の室外基材20は、透光性部材10や室内基材30に対して上下にずれることができない。第2及び第3パネル部材P2,P3についても同様であり、一体に連結された第1~第4パネル部材P1~P4の室外基材20は、透光性部材10や室内基材30に対して左右にずれることはない。よって、上記の如く、一側が透光性部材10から離脱する方向(一側)に力が作用しても他側によって規制されて透明性部材10の脱落の防止に寄与することができる。
【0035】
さらに、
図1~
図3に示すように、室外基材20及び室内基材30は概略鉤型形状となっており先端部分21,31が噛み合っているため、一方に対して他方から離間する方向に力が作用して離間方向に移動した場合であっても、他方に引っ掛かる掛り代HA(
図2参照)を有することとなる。特に、室外基材20と室内基材30とは先端部分21,31が互いに噛み合った状態で断熱材40を挟み込んでいるため、例えば室外基材20に対して室外方向に力が加わったとしても、この力は室内基材30にも作用して室外基材20が室外方向に離脱することを防止する。すなわち、透光性部材10を挟持する室外基材20と室内基材30とのうち一方がパネル部材Pの法線方向に離脱することを防止するようにしている。
【0036】
上記のように室外基材20又は室内基材30を相対的に面内、面外方向にずらそうとする力が加わった際いずれの場合でも、室外基材20及び室内基材30が鉤型形状であるため、断熱材40には引張力ではなく圧縮力が作用している。断熱材40は引っ張りには強くないが圧縮には強いため、これに耐えることができる。特に、このような作用は、断熱材40である硬質断熱コアが外力により割れてしまっても発揮可能である。従来では、硬質断熱コアが割れた場合、室外基材20と室内基材30とが剥がれ落ちることがある。しかし、本実施形態においては例えば断熱材40が割れたとしても、室外基材20と室内基材30との間に断熱材40が存在していれば、互いの基材20,30が離間しようとする力は他方の基材20,30にも作用するため、基材20,30がずれたり剥がれ落ちたりすることを防止できる。
【0037】
さらに断熱材40が粉々になり、こぼれ落ちることがあったとしても、各パネル部材P1~P4間で連結された室外基材20と各パネル部材P1~P4間で連結された室内基材30とはその鉤状噛み合いにより上下左右及び互いに離間する方向いずれにも大きな変位ができない。その変位の大きさは透明性部材10の基材20,30に対する掛り代TO(
図1参照)の大きさから適切に設計されており、透明性部材10が外れることはない。
【0038】
この点について詳細に説明する。まず、本実施形態においてパネル部材Pから断熱材40を取り除いたときに、室外基材20と室内基材30との先端部位21,31(
図2参照)の噛み合いがより深くなる方向にスライドしたときの最大のスライド量(距離S)は掛り代TO(
図1参照)未満とされている。また、先端部位21,31の垂直距離は、最大のスライド量(距離S)より長くなるように設計されている。これにより、上下左右へのスライドによる透明性部材10の脱落を防止する。例えば、断熱材40が粉々になってこぼれ落ちて、室内基材30が上にスライドしたとする。しかし、最大にスライドしたとしてもスライド量は距離Sに留まり、室内基材30は掛り代TO以上にスライドしないこととなる。また、先端部位21,31についても鉤型形状同士の掛り代HAを失うことがない。よって、室内基材30の上スライドによる透明性部材10の外れを防止できることとなる。また、第4パネル部材P4の移動に限らず、第1~第3パネル部材P1~P3についても同様にすることで、断熱材40が粉々になってこぼれ落ちた場合に、上下左右方向のいずれの方向へのスライドがあっても透明性部材10の脱落を防止することができる。
【0039】
なお、断熱材40が粉々になってこぼれ落ちた場合、透明性部材10が傾くこととなる。このため、基材20,30間の上記距離S(最大のスライド量)が掛り代TOよりも僅かに短い程度の場合や先端部位21,31の垂直距離が最大のスライド量(距離S)より僅かに長い程度の場合には、透明性部材10の傾きに起因して、透明性部材10が脱落してしまうことがある。そこで、距離Sを掛り代TO未満とするだけでなく、透明性部材10の傾きを考慮し、距離Sを掛り代TO-α(αは最大の傾きに応じた所定値)未満とすることが好ましい。また、先端部位21,31の垂直距離は、最大のスライド量(距離S)+α(αは最大の傾きに応じた所定値)以上とすることが好ましい。これにより、断熱材40が粉々となった場合において、基材20,30同士の上下左右へのスライドのみならず、基材20,30が互いに離間した場合(すなわち先端部分21,31同士が接触するような場合)にも透明性部材10の脱落を防止することができる。
【0040】
このようにして、本実施形態に係る断熱窓パネル1によれば、室外基材20と室内基材30とは、第1及び第2弾性体51,52を介して透光性部材10を両側から支持するため、断熱窓パネル1は、サッシを有することなく直に接触しない室外基材20と室内基材30とによって透光性部材10を支持でき、断熱性の向上を図ることができる。加えて、室外基材20及び室内基材30は、一方に対して他方から離間する方向に力が作用して離間方向に移動した場合であっても、他方に引っ掛かる掛り代HAを有するため、仮に室外基材20と室内基材30とが互いに離間する方向に力が加わったとしても、掛り代HAによって両者が離れることを防止しようとする。よって、断熱性の向上を図りつつも、透明性板材10の脱落の防止に寄与することができる断熱窓パネル1を提供することができる。
【0041】
また、鉤型形状となる室外基材20と室内基材30とはパネル厚み方向に噛み合った状態で両者間に断熱材40を挟み込んでいるため、室外基材20と室内基材30とが互いに離間する方向に力が加わった場合には、先端部分21,31の噛み合いによって両者が離れることを防止するだけでなく、断熱材40に対して圧縮力が加わることとなる。断熱材40は圧縮に強く離間に弱いものが多いことから、圧縮力が加わる構造とすることで、断熱材40の破損を防止し易くすることができる。
【0042】
また、パネル部材Pを平面視して、透光性部材10を挟む両側の室外基材20同士、及び、透光性部材10を挟む両側の室内基材30同士は、それぞれが一体に連結されているこのため、平面視して透光性部材10から透光性部材10の一側の室外基材20又は室内基材30が透光性部材10から離れようとしても、室外基材20又は室内基材30の一側は他側によって移動が規制されて透光性部材10から離れることができず、透光性部材10の脱落を防止することができる。
【0043】
また、上記距離S(最大のスライド量)は、室外基材20と室内基材30とが透明性部材10を支持する掛り代TO未満とされているため、仮に断熱材40が粉々となりこぼれ落ちてしまい、室外基材20や室内基材30が最大にスライドしたとしても、そのスライド量は掛り代TO未満となる。また、先端部位21,31の垂直距離は、最大のスライド量(距離S)以上とされているため、仮に断熱材40が粉々となりこぼれ落ちてしまい、室外基材20や室内基材30が最大にスライドしたとしても、そのスライド量は鉤型形状の掛り代未満となる。よって、このようなスライドによる透明性部材10の脱落を防止することができる。
【0044】
特に、断熱材40が粉々となりこぼれ落ちてしまい、室外基材20と室内基材30とが離間する(先端部分21,31同士が近づく)ことを考慮して、距離S(最大のスライド量)を掛り代TO-α(αは最大の傾きに応じた所定値)未満とし、且つ先端部位21,31の垂直距離を最大のスライド量(距離S)+α(αは最大の傾きに応じた所定値)以上とすれば、室外基材20や室内基材30が最大にスライドし、且つ、最大に離間したとしても、透明性部材10の脱落を防止することができる。
【0045】
また、断熱パネル100の端部側に対して、嵌合可能にフック部22、フック受部23、突出部32、及び突出受部33を有するため、断熱パネル100や他の断熱窓パネル1に対して断熱窓パネル1をスタッキングすることができ、断熱パネル100をスタッキングして外壁を形成する工程と同様にして窓を有した外壁を形成できる。すなわち、断熱パネル100のみで外壁を形成した後に断熱パネル100に穴開け及び透光性部材10の設置を行うことなく、現場での作業負担を軽減することができる。
【0046】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で公知又は周知の技術を組み合わせてもよい。
【0047】
例えば、
図4に示す例において透光性部材10は断熱窓パネル1の中心に位置しているが、これに限らず、上下左右にやや隔たった位置に設けられていてもよい。また、室外基材20、室内基材30、断熱材40は、必ずしも60分遮炎に耐え得るものにしなくてもよく、グレージングビード、グレージングチャンネルも耐火性のものでなくてもよい。
【0048】
さらに、透明性部材10の取付を容易とするため、室外基材20又は室内基材30の開口部を透明性部材10よりも大きく作り、グレージングビードが取り付けられた脱着式の別の部材(室外基材20又は室内基材30の一部)を固定して透明性部材10よりも小さい開口になるようにして掛り代TOを設けるようにしてもよい。
【0049】
また、本実施形態において室外基材20と室内基材30とは、概略鉤型形状となって断熱材40を挟んで噛み合っており、先端部分21,31同士で掛り代HAを構成しているが、これに限らず、掛り代HAを構成するものであれば、上記した形状に限られるものではない。
図5は、室外基材20と室内基材30との他の例を示す断面図であり、(a)は第1の例を示し、(b)は第2の例を示している。
図5(a)に示すように、室外基材20と室内基材30とは断熱材40を挟むことなく掛り代HAを形成してもよい。また、
図5(b)に示す室内基材30のように掛り代HAを構成していれば鉤型形状でないものであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 :断熱窓パネル
10 :透光性部材
20 :室外基材
21 :先端部分(鉤型部分)
22 :フック部(嵌合部)
23 :フック受部(被嵌合部)
24 :フード部
30 :室内基材
31 :先端部分(鉤型部分)
32 :突出部(嵌合部)
33 :突出受部(被嵌合部)
40 :断熱材
50 :弾性体
51 :第1弾性体
52 :第2弾性体
100 :断熱パネル
120 :室外材
130 :室内材
140 :断熱部材
HA :掛り代
P :パネル部材
S :距離(最大のスライド量)
TO :掛り代