(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048470
(43)【公開日】2022-03-28
(54)【発明の名称】点検装置
(51)【国際特許分類】
G01J 1/42 20060101AFI20220318BHJP
F41G 3/26 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
G01J1/42 D
F41G3/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154303
(22)【出願日】2020-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】牧野 晋也
(72)【発明者】
【氏名】関 太樹
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 一茂
(72)【発明者】
【氏名】大川 竜也
(72)【発明者】
【氏名】桐田 茂次
【テーマコード(参考)】
2C014
2G065
【Fターム(参考)】
2C014CA01
2C014CA06
2G065AA04
2G065AB09
2G065AB14
2G065BC14
2G065BD01
2G065CA05
2G065DA05
(57)【要約】
【課題】レーザ射撃訓練システムにおけるレーザ発光装置の出力低下を判別可能な点検装置を提供することにある。
【解決手段】点検装置は、レーザ発光装置から照射されたレーザ光線を受光する受光部を有する光パルスメータと、前記光パルスメータに接続され入出力処理装置と、を含む。前記入出力処理装置は、前記受光部によって受光された前記レーザ光線の測定値を表示する表示部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発光装置から照射されたレーザ光線を受光する受光部を有する光パルスメータと、
前記光パルスメータに接続され入出力処理装置と、を含み、
前記入出力処理装置は、前記受光部によって受光された前記レーザ光線の測定値を表示する表示部を有する、点検装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記光パルスメータと前記レーザ発光装置との間に設けられたアダプタを含み、
前記アダプタは、前記レーザ発光装置の種類に対応して変更される、点検装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記入出力処理装置は、前記測定値を経年劣化閾値を用いて判別する、点検装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記入出力処理装置は、前記レーザ光線の光出力が経年劣化により低下した際に、前記レーザ発光装置の前記レーザ光線の出力を規格値の範囲内で増加させるための外部制御信号を前記レーザ発光装置へ出力する、点検装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記入出力処理装置は、鋸波パルス、三角波パルスおよび矩形パルスに対応するように検出方法を変更する、点検装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点検装置に関し、特に、自衛官や警察官のレーザ射撃訓練システムに用いられるレーザ送信装置の点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自衛官や警察官のレーザ射撃訓練システムにおいて、レーザ光線を発射するレーザ送信装置(プロジェクタ)を備えるものが知られている。このようなレーザ射撃訓練システムの提案として、たとえば、特開2010-78212号公報、特開2018-54182号公報、特開平10-232100号公報等が有る。
【0003】
また、レーザ光出力装置の劣化検出装置として、特開平4-250325号公報がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-78212号公報
【特許文献2】特開2018-54182号公報
【特許文献3】特開平10-232100号公報
【特許文献4】特開平4-250325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーザ射撃訓練システムに用いられるレーザ送信装置の点検装置は以下の3つの点検のみが可能であった。
【0006】
1)プロジェクタから送信されるレーザは、正常な照射が出来ているか。
2)プロジェクタからのレーザ光量は、受光側にて必要な光量の閾値を超えているか。
3)プロジェクタから送信されるレーザの点滅データは、正常にデータとして送信出来ているか。
【0007】
レーザ送信装置内のレーザ光源は、レンズの曇り・使用時間・使用環境(温度・湿度等)によるレーザ光自体が減衰する事で、レーザ光出力が低下する。この点検装置は、どの程度、レーザ光源の光出力が低下したか判別が出来なかった。また、この点検装置は、レーザ発光装置の経年劣化判別とレーザ出力補正とに対応することも出来なかった。
【0008】
本開示の課題は、レーザ射撃訓練システムにおけるレーザ発光装置の出力低下を判別可能な点検装置を提供することにある。
【0009】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0011】
一実施の形態に係る点検装置は、レーザ発光装置から照射されたレーザ光線を受光する受光部を有する光パルスメータと、前記光パルスメータに接続され入出力処理装置と、を含む。前記入出力処理装置は、前記受光部によって受光された前記レーザ光線の測定値を表示する表示部を有する。
【発明の効果】
【0012】
上記一実施の形態に係る点検装置によれば、レーザ発光装置の出力低下を判別することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施例に係る点検装置の全体構成を説明する図である。
【
図2】
図2は、光パルスメータを説明する図である。
【
図3】
図3は、入出力処理装置を説明する図である。
【
図4】
図4は、点検装置の構成例を説明する概念図である。
【
図5】
図5は、鋸波パルスの検出方法を説明する図である。
【
図6】
図6は、矩形パルスの検出方法を説明する図である。
【
図7】
図7は、三角波パルスの検出方法を説明する図である。
【
図8】
図8は、レーザーダイオードの経年劣化の例を示すグラフである。
【
図9】
図9は、レーザーダイオードの異常温度上昇によるレーザ出力低下例を示すグラフである。
【
図10】
図10は、レーザ送信装置のハードウェア上にレーザ出力調節用のダイヤルを設ける回路構成例を示す図である。
【
図11】
図11は、入出力処理装置にて外部制御を与えることにより、光出力の調整を行う回路構成例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施例の点検装置の機能を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態および実施例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0015】
(実施の形態)
本発明において、点検装置は、光パルスメータ1、入出力処理装置2、プロジェクタ用アダプタ3を含み、レーザ送信装置(プロジェクタとも言う)4の発光するレーザ光の出力を測定する。
【0016】
外的環境によりレーザ光源の光出力が減衰した値が判別可能とするため、光パルスメータ1にて光出力値を測定し、入出力処理装置2において測定値を表示させる。
【0017】
入出力処理装置2において、パルス発光検出処理方法を更新する事で種々のパルス発光に対応可能として、入出力処理装置2の拡張性を広げる。
【0018】
経年劣化によりレーザ光源の光出力が低下した値なのか判別可能とするため、光パルスメータ1にて光出力値を測定し、測定値を表示させる。また、測定結果と一緒に出荷時のレーザ光源の出力値も表示させることで、どの程度低下しているか比較可能とする。
【0019】
レーザ光源の光出力が外的要因(振動、衝撃、異物混入等)の劣化か経年劣化かを判別可能とするため、入出力処理装置2において、測定結果を経年劣化閾値(出荷時の光出力値×経年劣化係数)にて判別する。
【0020】
レーザ光源の光出力が、劣化した際、補正としてのレーザ出力の増加を可能とするためが、レーザ送信装置4の出力を規格値内での増加を行う事で対応可能とする。
【0021】
専用のレーザ光源に対するレンズ径での焦点において対応しているが、拡張対応を可能とするため、アダプタ3を対応するレーザ送信装置4のレンズ径並びに焦点距離に合わせることで、対応する。
【0022】
太陽光によるノイズ増加する屋外での運用を可能とするため、光パルスメータ1に太陽光を阻害するフィルタ並びにカバーを設ける。
【0023】
実施例について、図面を用いて説明する。
【実施例0024】
図1は、実施例に係る点検装置の全体構成を説明する図である。点検装置10は、光パルスメータ1、入出力処理装置2、および、プロジェクタ用のアダプタ3を含み、レーザ射撃訓練システムに用いられるレーザ送信装置(プロジェクタとも言う)4を点検する。レーザ送信装置4は、レーザ発光装置と言うこともできる。レーザ送信装置4は、筐体41と、筐体41に取り付けられた光学レンズ42と、筐体41内に設けられ、光学レンズ42からレーザ光線を発光するレーザーダイオード(不図示)を含む。プロジェクタ4用のアダプタ3は第1端部31と第2端部32とを含み、第1端部31が光学レンズ42に取り付け可能にされ、第2端部32が光パルスメータ1に取り付け可能にされている、これにより、レーザ送信装置4内のレーザーダイオードから発生したレーザ光線が、アダプタ3を介して、光パルスメータ1へ入力可能にされている。光パルスメータ1は、入出力処理装置2に、ケーブル配線によって電気的に接続されており、光パルスメータ1の検出信号が入出力処理装置2へ入力可能にされている。以下、光パルスメータ1、入出力処理装置2、および、アダプタ3について、説明する。
【0025】
図2は、光パルスメータ1を説明する図である。光パルスメータ1は、入出力処理装置2と接続可能な接続ケーブル11と、レーザ光線を受光するための円形状の受光部12と、アダプタ3の第2端部32への取り付けるための円形状の取り付け部分13と、を含む。光パルスメータ1の取り付け部分13は、太陽光を除外する光学フィルタ14を取り付けることができるように構成されている。
【0026】
レーザ光線を受光部12で受光する事で、レーザ光線の照射発光量が測定可能にされている。光パルスメータ1は、接続ケーブル11を用いて入出力処理装置2に接続する。光パルスメータ1とアダプタ3とを組みあわせる事で、レーザ送信装置4が取り付け可能になっている。レーザ送信装置4から照射されたレーザ光線は、アダプタ3により、光パルスメータ1の受光部12にレーザ光線の焦点が絞られる。これにより、レーザ送信装置4から出力されるレーザ光線の光出力が受光部12により測定可能になっている。
【0027】
図3は、入出力処理装置2を説明する図である。入出力処理装置2は、コネクタ21と、表示部22と、半導体装置(不図示)と、を含む。コネクタ21には、接続ケーブル11が接続可能とされている。表示部22には、接続ケーブル11から受信した光出力の測定結果を表示することができる。入出力処理装置2は、光パルスメータ1からレーザ光線の受光値を取得し、ソフトウエア上で受光処理を行うことにより、レーザ光線の照射の発光量を測定可能である。光パルスメータ1と入出力処理装置2とは接続ケーブル11で接続される。光パルスメータ1が取得したレーザ光線の光測定値は、接続ケーブル11を経由して、入出力処理装置2に入力され、光出力測定結果を表示部22に表示する。
【0028】
半導体装置は、受光処理用のソフトウエアを格納する記憶部と、受光処理用のソフトウエアを実行する中央処理装置(CPU)の様な制御部と、受光処理用のソフトウエアを実行する制御部から光出力の測定結果を示す表示データを受信し、表示部22へ表示データを供給する表示制御部と、を含む。これにより、光出力測定結果を表示部22に表示することができる。
【0029】
表示部22の表示例は、たとえば、「光出力測定結果: ピーク出力1.00W」と言う様なテキストによる表示や、
図3に拡大して示す様に、光出力測定結果を示す画像(グラフ)による表示を行うことができる。
図3に拡大して示す表示例では、レーザ光線の照射の発光量のピーク値PPと、レーザ光線の閾値PVと、光パルスメータ1が取得したレーザ光線の光測定値POとが表示されている。この例は、レーザ送信装置4からパルス波形のレーザ光線を発光させた場合のレーザ光線の光測定値の例である。
【0030】
図1に示すアダプタ3は、レーザ送信装置4のレンズ42のサイズ径並びに焦点距離に対応するように構成されている。レーザ送信装置4のレーザ光線の照射の発光量は、アダプタ3を経由する事で、光パルスメータ1が測定出来る。レーザ送信装置4の照射するレーザ光線は、アダプタ3により、光パルスメータ1の受光部12にレーザ光線の焦点が絞られ、これにより、光パルスメータ1はレーザ光線の光出力値を測定出来る。アダプタ3の第1端部31は、アダプタ3の入光部を構成しており、光パルスメータ1の受光部12に向けて、レーザ照射を集光レンズ(33:
図4参照)によって絞る。アダプタ3の第2端部32は、アダプタ3の光パルスメータ1への取付け部を構成しており、光パルスメータ1へ取付けて、入光部31で絞ったレーザ光線を受光部12に受光させる。
【0031】
レーザ送信装置4は、レーザ出力の補正機能を含むものとする。レーザ送信装置4がレーザ光線を照射する事で、光パルスメータ1は光出力値が測定でき、入出力処理装置2は測定結果を表示できる。レーザ送信装置4において、送信されるレーザ光線を一定周期毎の間欠的な照射によるデータを付与するようにレーザ光線の発光設定を行う。この発光設定で、レーザ送信装置4からレーザ光線を発光させる。データが付与されたレーザ光線は、アダプタ3を経由して、光パルスメータ1へ照射されることになる。レーザ送信装置4は、レーザ出力、レンズ径、焦点等にて種類が分かれるが、プロジェクタ用のアダプタ3を変更する事で対応することができる。光パルスメータ1は、レーザ送信装置4の種類が変更されても、同じ光パルスメータを利用する。つまり、光パルスメータ1は、レーザ送信装置4の種類が変更されても、共通に利用することができる。
【0032】
【0033】
レーザ送信装置4は、レーザーダイオードの様な光源43と、レーザ照射部44と、を有し、レーザ照射部44には、拡散レンズの様な光学レンズ42が取り付けられている。
【0034】
アダプタ3の入光部である第1端部31には、集光レンズ33が取り付けられており、第1端部31にはレーザ照射部44が取り付けられている。アダプタ3の第2端部32には、光パルスメータ1が取り付けられている。
図4に示す様に、アダプタ3は、第1端部31と第2端部32との間に、第1端部31と第2端部32とを覆う様に、または、第1端部31と第2端部32とを連結する様に設けられたカバー部34を有する。つまり、アダプタ3は、この例では、第1端部31と第2端部32とカバー部34とで構成された円錐台の様な形状とされている。第1端部31と第2端部32のおのおのは円形形状とされ、第1端部31の直径は、第2端部32の直径より長くされている。
【0035】
レーザ送信装置4内のレーザーダイオードの様な光源43から、レーザ照射部44に設けられた光学レンズ42にて照射されたレーザ光線は、通常運用では拡散するが、アダプタ3の入光部(第1端部31)に設けられた集光レンズ33を介することにより、光パルスメータ1の受光部12へ到達するように構成されている。
【0036】
(点検装置の操作)
以下、点検装置10の操作について説明する。
【0037】
(点検装置10の準備)
(1)測定するレーザ送信装置4に対応したアダプタ3を用意する。
(2)光パルスメータ1、入出力処理装置2、アダプタ3、レーザ送信装置4を全て取り付ける。
(3)入出力処理装置2に電源を供給し、入出力処理装置2の受光処理用のソフトウエアを起動させる。
(4)入出力処理装置2から光パルスメータ1へ電源を供給し、入出力処理装置2と光パルスメータ1の間の通信を確立する。
【0038】
(レーザ光線の測定)
(5)レーザ送信装置4からレーザ光線を照射させる。
(6)アダプタ3を経由し、集光したレーザ照射を光パルスメータ1の受光部12により受光する。
(7)光パルスメータ1は受光したレーザ照射を測定し、通信ケーブル11を経由し、入出力処理装置2へ測定データを送信する。
【0039】
(8)測定データを入出力処理装置2のソフトウエアにて光出力におけるピーク出力値の検出処理並びに光出力の換算を行い、表示部22に測定結果を表示する。また、測定結果と一緒に、レーザ送信装置4の出荷時のレーザ照射の出力値(ピーク出力値)も表示させる。これにより、出荷時の出力値から、現時点(測定時点)において、どの程度光出力のピーク出力値が低下しているかを容易に比較することが可能となる。
【0040】
(9)入出力処理装置2のソフトウエアにて、測定結果と経年劣化閾値(出荷時の光出力値×経年劣化係数)を比較する事で、以下のA)又はB)の結果が表示される。
A)測定結果が経年劣化閾値内の場合、入出力処理装置2は経年劣化と判定し、入出力処理装置2からレーザ送信装置4へレーザ出力調整指示を出力し、レーザ送信装置4の光出力が調整ないし補正される。
B)測定結果が経年劣化閾値外の場合、入出力処理装置2は、メーカ修理対応と判定し、修理依頼の対応方法を表示部22に表示する。
【0041】
(10)測定結果において、光出力が低下している場合、以下C)又はD)の対応指示が入出力処理装置2の表示部22に表示される。
C)補正範囲内の場合、レーザ送信装置4にて補正を行う。
D)補正範囲外の場合、メーカへの修理手続きの方法が表示される。
【0042】
(光出力におけるピーク出力の検出処理について)
ピーク出力の検出処理、または、パルス発光検出処理方法はソフトウエアを用いたソフト処理とすることで、検出処理の方法を更新することが可能に構成する。
【0043】
レーザ出力のパルスエネルギー(単位:J)は、1つのパルスについての光強度[W]と時間[s]の積分、即ち、パルスの面積(パルスエネルギー)[J]になる。レーザデータは一定周期をおいて出力される為、パルスの面積の全出力データを取得してしまうと、膨大な量のデータ蓄積により、処理に膨大な時間を要する為、ピーク出力のみ検出する処理が必要となる。
【0044】
以下にパルス波形の種類およびピーク出力の処理方法について記載する。
【0045】
図5は、鋸波パルスの検出方法を説明する図である。
図5(a)に示す様に、レーザ光線LDは、複数の鋸波パルスが間欠的に発生されている。
図5(b)は、
図5(a)の間欠的に発生されたレーザ光線LDの部分LDGを拡大して示している。
図5(b)に示す様に、鋸波パルスのレーザ光線の検出では、閾値PVをノイズレベルより上に持ち上げる事で、ピーク出力PPを取得する。ここで、ノイズレベルとは、レーザ光線の光測定値POの最低値の部分である。
【0046】
図6は、矩形パルスの検出方法を説明する図である。レーザ光線LDは複数の矩形波パルスが間欠的に発生されている。 矩形波パルスは、ピーク出力PPが一定の為、信号の立ち上がりエッジREと立ち下がりエッジFEの両方を検出する事で、ピーク出力PPを取得する。
【0047】
図7は、三角波パルスの検出方法を説明する図である。三角波パルスは、パルスの面積[J]が大きい為、検出の閾値PVをノイズレベルに近くする事で、ピーク出力PPを取得する。
【0048】
(光出力の換算方法について)
光パルスメータ1の種類にも依存するが、測定エネルギー密度がJ表示の為、パルスエネルギーであるJを光強度[W]に変換することで、測定結果の変換が可能となる。Wは、次式の様に、エネルギー密度Jを時間(パルス幅)で割ることにより、算出する。
W = J ÷ s
(測定結果と経年劣化閾値(出荷時の光出力値×経年劣化係数)との比較について)
図8は、レーザーダイオードの経年劣化の例を示すグラフである。縦軸はレーザ光量%を示しており、出荷時の光出力値を100%としている。横軸は、保管時間(H)を示している。点線L1がレーザーダイオードの経年劣化を例示的に示している。一例として、出荷時の光出力値を1Wとした際、5年間がレーザ送信装置4の製品使用期限の場合、経年劣化係数が0.01(1年間に0.99Wへ出力低下)×5年にて0.05Wより、0.95Wが閾値PVとなる。
【0049】
ここで、測定出力結果POが0.95W以下の場合、経年劣化閾値外と判定し、メーカ修理対応となる((9)のB))。一方、測定出力結果POが1W~0.95Wの範囲内の場合、経年劣化と判定される((9)のA))。
【0050】
図9は、レーザーダイオードの異常温度上昇によるレーザ出力低下例を示すグラフである。縦軸はレーザ光量%を示しており、出荷時の光出力値を100%としている。横軸は、レーザーダイオードの素子温度を示している。点線L2がレーザーダイオードの異常温度上昇によるレーザ出力低下を例示的に示している。このようなレーザーダイオードのレーザ出力低下の例は、振動、衝撃、異常温度上昇、異物混入等の外的要因の場合が考えられる。
【0051】
(補正範囲内の場合、レーザ送信装置4での補正((10)のC))
レーザーダイオード43の光出力を上げる手段としては、レーザ光源への印可電圧並びに電流を増加させる必要が有る。実現方法は以下に示す2種の方法が有る為、組み合わせて使用する。
【0052】
方法1):レーザ送信装置4のハードウェア上にレーザ出力調節用ダイヤルを設ける。
【0053】
方法2):入出力処理装置2にてレーザ送信装置4に外部制御信号を与えることにより、光出力の調整を行う。
【0054】
(方法1)の説明)
レーザ送信装置4の回路上に、光出力の電圧印可部へ可変制御機能を付加する事で、実現が可能となる。例として、レーザ出力調整規格値が0.9W~1Wの範囲の為、0.95Wの中間値にて調整する。それにより、経年劣化時は0.05Wを調節出来るダイヤルを回し出力を上げる事で、レーザ送信装置4の出力を補正することが可能となる。
【0055】
図10は、レーザ送信装置のハードウェア上にレーザ出力調節用のダイヤルを設ける回路構成例を示す図である。
図10に示す様に、電源電位が供給される電源端子VCCと接地電位が供給される接地端子GNDとの間に、分圧抵抗100と、照射制御回路101と、ダイヤル式分圧抵抗102と、分圧抵抗103と、レーザ光源43とが設けられる。照射制御回路101には、照射制御機能104が接続されている。ダイヤル式分圧抵抗102の抵抗値を調整することにより、レーザ光源43は0.95W~1Wの範囲で出力することができる。ダイヤル式分圧抵抗102のダイヤルをレーザ送信装置4の筐体41に設けられる。
【0056】
(方法2)の説明)
レーザ送信装置4の回路上で、ソフト処理により、抵抗値を増減する制御を追加することにより、光出力の電圧印可部へ可変制御機能を付加する事で、実現が可能となる。例として、レーザ出力調整規格値が0.9W~1Wの範囲、0.95Wの中間値にて調整する。それにより、経年劣化時は抵抗値を切り替える事により、レーザ光源43の電流を増やすことで、0.05Wの出力が上がり、レーザ送信装置4の出力を補正することが可能となる。
【0057】
図11は、入出力処理装置にて外部制御を与えることにより、光出力の調整を行う回路構成例を示す図である。
図11に示す様に、電源電位が供給される電源端子VCCと接地電位が供給される接地端子GNDとの間に、分圧抵抗100と、照射制御回路101と、可変抵抗回路105と、分圧抵抗103と、レーザ光源43とが設けられる。照射制御回路101には照射制御機能104が接続され、可変抵抗回路105には抵抗値可変機能106が接続されている。抵抗値可変機能106を用いて可変抵抗回路105の抵抗値を調整することにより、レーザ光源43は0.95W~1Wの範囲で出力することができる。入出力処理装置2のソフトウエアから出力された外部制御信号が抵抗値可変機能106に与えられ、抵抗値可変機能106は外部制御信号に基づいて、可変抵抗回路105を制御し、レーザ光源43からのレーザ出力値が調整される。
【0058】
図12は、実施例の点検装置の機能を説明する図である。光パルスメータ1は、照射発光量の測定機能と、屋外測定機能と、を有する。入出力処理装置2は、レーザ受光エネルギーの発光量の変換機能と、経年劣化の判別機能と、故障劣化の判別機能および通知機能と、レーザ出力調整制御機能と、修理通知機能と、を有する。アダプタ3は、各レンズ径のレーザ射撃訓練装置対応機能を有する。レーザ送信装置4は、レーザ出力調整機能を有する。
【0059】
実施例によれば、以下の効果を得ることができる。
【0060】
1)レーザ射撃訓練装置のレーザ送信装置内のレーザ光源はレンズの曇り・使用時間・使用環境(温度・湿度等)によるレーザ自体が減衰する事で光出力が低下する。現行の点検装置は、どの程度、レーザ光源の光出力が低下したか判別が出来ず、正常に照射出来ているか、出力出来ていない場合の異常状態(出力が低下したか、出力していないか)の判別しか出来ない。実施例によれば、光パルスメータ1にて光出力値を測定し、入出力処理装置2にて測定値を表示させる。それにより、正常照射あるいは出力低下、出力無しの判別が可能となる。又、出力低下についてはレーザ出力の測定値により、外的要因(振動、衝撃、レンズの曇り等)で大幅な劣化と、レーザ光源の使用年数が経過する事による経年劣化が判別可能である。
【0061】
2)レーザ送信装置内のレーザ光源は、専用波形のパルス出力であるが、点検装置は専用波形のみ対応しており、他のレーザ射撃訓練装置等のパルス発光(鋸波パルス、三角波パルス並びに矩形パルス等)に対応していない。実施例によれば、光パルスメータ1にて光出力値が測定され、入出力処理装置2に測定データが入力される際、測定データに応じ、処理方法を変更することにより、他のレーザ射撃訓練装置等のパルス発光(鋸波パルス、三角波パルス並びに矩形パルス等)に対応することができる。
【0062】
3)レーザ送信装置内のレーザ光源は、年数が経過する事で経年劣化する。そのレーザ光源の光出力の低下値が、どの程度か判別出来ない。実施例によれば、光パルスメータ1にて光出力値を測定し、入出力処理装置2にて測定値を表示させることで、出荷時の出力値も表示させ、劣化値の判別が可能である。
【0063】
4)レーザ送信装置内のレーザ光源において、外的要因(振動、衝撃、レンズの曇り等)による大幅な劣化と、レーザ光源の使用年数が経過する事による経年劣化との判別が不可能であった。実施例によれば、出力低下についてはレーザ出力の測定値に対し、入出力処理装置2のソフトウエアにて、測定結果と経年劣化閾値(出荷時の光出力値×経年劣化係数)を比較する事で、外的要因(振動、衝撃、レンズの曇り等)での大幅な劣化と、レーザ光源の使用年数が経過する事による経年劣化とが判別可能である。
【0064】
5)レーザ送信装置内のレーザ光源が、劣化した際、補正としてのレーザ出力が増加出来ない。実施例によれば、レーザ送信装置4の出力を規格値内で増加を行う事で補正可能である。
【0065】
6)レーザ送信装置の点検装置は専用のレーザ光源に対するレンズ径での焦点において対応しているが、他のレーザ射撃訓練装置等のレンズ径に対応していない。実施例によれば、アダプタ3を対応するプロジェクタ4のレンズ径並びに焦点距離に合わせることで、様々なレーザ射撃訓練装置のレーザ送信装置の点検に適用可能である。
【0066】
7)レーザ送信装置の点検装置は屋内運用を想定されており、レーザ出力時、太陽光が入ってしまうことにより、正常なデータが取得出来ない問題があった。実施例によれば、光パルスメータ1に太陽光を阻害するフィルタ並びにカバーを設ける事で、点検装置10の屋外運用可能にできる。
【0067】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。