(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048510
(43)【公開日】2022-03-28
(54)【発明の名称】ガラスラン
(51)【国際特許分類】
B60J 10/32 20160101AFI20220318BHJP
B60J 10/88 20160101ALI20220318BHJP
【FI】
B60J10/32
B60J10/88
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154366
(22)【出願日】2020-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】菱田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 智弘
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA12
3D201BA01
3D201CA03
3D201CA19
3D201DA09
3D201DA31
(57)【要約】
【課題】自動車のドアの上辺の湾曲したドアフレームの形状に沿ってトリム部を容易に曲げることができるガラスランを提供する。
【課題を解決するための手段】ガラスラン10は、ドアフレーム3のフランジ部3aに取付けられるガラスラン部側側壁21と、ボディ側側壁22と、ガラスラン部側側壁21とボディ側側壁22を連結する底壁23から断面略コ字状に形成されるトリム部20と、トリム部20と一体的に形成され、ドアガラス5との間をシールするガラスラン部30から形成され、トリム部20内には、金属製であり、互いに略平行に配設された複数の短冊状の骨片部43と、骨片部43を連結する連結部44で構成されるインサート40が埋設され、インサート40の連結部44は、トリム部20のガラスラン部側側壁21若しくはボディ側側壁22のどちらか一方に埋設される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアのドアフレームに取付けられ、ドアフレームとドアガラスとの間をシールするガラスランであって、
前記ガラスランは、前記ドアフレームの先端に形成されるフランジ部に取付けられるトリム部と、
前記トリム部と一体的に形成され、ドアガラスとの間をシールするガラスラン部とから形成され、
前記トリム部は、ガラスラン部側側壁と、ボディ側側壁と、前記ガラスラン部側側壁と前記ボディ側側壁を連結するトリム部底壁から断面略コ字状に形成され、
前記トリム部内には、互いに略平行に配設された複数の短冊状の骨片部と、前記骨片部を連結する連結部で構成されるインサートが埋設され、
前記インサートの前記連結部は、前記トリム部の前記ガラスラン部側側壁若しくは前記ボディ側側壁のどちらか一方に埋設されていることを特徴とするガラスラン。
【請求項2】
前記インサートの前記連結部は、前記ガラスラン部側側壁に埋設されている請求項1に記載のガラスラン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアのドアフレームのフランジ部に取付けられるガラスランに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のドアのドアフレームのフランジ部に取付けられるガラスランに関し、例えば、特許文献1には、以下の技術が記載されている。
図1、
図7に示すように、特許文献1のガラスラン100は、ドア201のドアフレーム301のフランジ部301aに取付けられる断面が略U字状のトリム部200と、ドアガラス501との間をシールする非対称の車外側シールリップ330、車内側シールリップ340が形成されたガラスラン部300を備えている。
【0003】
トリム部200には、ドアフレーム301のフランジ部301aとの保持力を強化するための金属補強材であるインサート400(特許文献1ではキャリアと称せられている)が埋設されている。
【0004】
図8(a)に示すように、インサート400には、長方形の帯状の金属板を打抜いて形成された長い長スリット410と短い短スリット420が設けられている。各長スリット410は全て同じ長さであり、各短スリット420も全て同じ長さである。又、長スリット410と短スリット420は、長スリット410と短スリット420が設けられていない領域Bを中心線430からずらして残すように配置されている。
【0005】
図8(b)に示すように、インサート400は、チャネル形状に折り曲げられる。この時、長スリット410は、チャネル形状の基部440まで伸張しているが、基部440の途中まで(基部440の半分を越えない)しか伸びていない。一方、短スリット420は、チャネル形状の基部440には全く伸張していない。
図8(b)では、短スリット420は、それぞれ、チャネル形状のその側壁450のほぼ半分まで伸張している。
【0006】
特許文献1における効果には、インサート400は非対称構造であるので、インサート400を埋設したガラスラン100のトリム部200をドア201の上辺に当たる湾曲したドアフレーム301に合わせて長手方向に比較的簡単に曲げることができ、湾曲した形状を保持することができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の技術においては、インサート400は、長スリット410と短スリット420によって形成される骨片部460を連結する連結部470が、基部440から車両上方の側壁450に跨って形成されている(
図7)。その結果、特に基部440において、ドア201の上辺に当たる湾曲したドアフレーム301に沿った形状に曲げる時に、伸張と収縮の2つの軸が存在するので、依然として曲げにくい問題が残っている。
【0009】
そこで、本発明は、自動車のドアの上辺に当たる湾曲したドアフレームの形状にトリム部を容易に曲げることができるガラスランを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、自動車のドアのドアフレームに取付けられ、ドアフレームとドアガラスとの間をシールするガラスランであって、ガラスランは、ドアフレームの先端に形成されるフランジ部に取付けられるトリム部と、トリム部と一体的に形成され、ドアガラスとの間をシールするガラスラン部とから形成され、トリム部は、ガラスラン部側側壁と、ボディ側側壁と、ガラスラン部側側壁とボディ側側壁を連結するトリム部底壁から断面略コ字状に形成され、トリム部内には、互いに略平行に配設された複数の短冊状の骨片部と、骨片部を連結する連結部で構成されるインサートが埋設され、インサートの連結部は、トリム部のガラスラン部側側壁若しくはボディ側側壁のどちらか一方に埋設されていることを特徴とするガラスランである。
【0011】
請求項1の本発明では、ガラスランは、ドアフレームの先端に形成されるフランジ部に取付けられるトリム部と、トリム部と一体的に形成され、ドアガラスとの間をシールするガラスラン部とから形成され、トリム部は、ガラスラン部側側壁と、ボディ側側壁と、ガラスラン部側側壁とボディ側側壁を連結するトリム部底壁から断面略コ字状に形成され、トリム部内には、互いに略平行に配設された複数の短冊状の骨片部と、骨片部を連結する連結部で構成されるインサートが埋設され、インサートの連結部は、トリム部のガラスラン部側側壁若しくはボディ側側壁のどちらか一方に埋設されている、すなわち、インサートの連結部はトリム部底壁内には埋設されていない。
【0012】
その結果、連結部をガラスラン部側側壁内若しくはボディ側側壁内の片方に寄せることにより、連結部が中立軸となり、ドアフレームのフランジ部を挟んで反対側の連結部の形成されていないボディ側側壁若しくはガラスラン部側側壁が伸張若しくは収縮するので、トリム部に特別の曲げ加工を行うことなく、車両ドアルーフの形状に追従させることができる。
【0013】
請求項2の本発明は、請求項1に記載の発明において、インサートの連結部は、ガラスラン部側側壁に埋設されているガラスランである。請求項2の本発明では、インサートの連結部は、ガラスラン部側側壁に埋設されているので、ボディ側側壁に埋設したときに比較して湾曲させる連結部の長さが短くなる。その結果、ドアフレームのフランジ部を挟んで反対側の連結部の形成されていないボディ側側壁が伸張するので、車両ドアルーフの形状への追従性がより向上する。
【発明の効果】
【0014】
ガラスランは、ドアフレームの先端に形成されるフランジ部に取付けられるトリム部と、トリム部と一体的に形成され、ドアフレームの内周に取付け、ドアガラスとの間をシールするガラスラン部とから形成され、トリム部は、ガラスラン部側側壁と、ボディ側側壁と、ガラスラン部側側壁とボディ側側壁を連結するトリム部底壁から断面略U字状に形成され、トリム部内には、金属製であり、互いに略平行に配設された複数の短冊状の骨片部と、骨片部を連結する連結部で構成されるインサートが埋設され、インサートの連結部は、トリム部のガラスラン部側側壁若しくはボディ側側壁の片方に埋設されている、すなわち、インサートの連結部はトリム部底壁内に埋設されていない。
【0015】
その結果、連結部をガラスラン部側側壁内若しくはボディ側側壁内の片方に寄せることにより、連結部が中立軸となり、ドアフレームのフランジ部を挟んで反対側の連結部の形成されていないボディ側側壁若しくはガラスラン部側側壁が伸張若しくは収縮するので、トリム部に特別の曲げ加工を行うことなく、車両ドアルーフの形状に追従させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本発明の第1の実施形態におけるガラスランの断面図であり、
図1のA-A線に該当する断面図である。
【
図3】本発明の実施形態におけるインサートの曲げ加工前の拡大平面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態におけるインサートの曲げ加工後の断面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態におけるガラスランの断面図であり、
図1のA-A線に沿った断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態におけるインサートの曲げ加工後の断面図である。
【
図7】従来のガラスランの断面図である(特許文献1)。
【
図8】(a)は、
図7に埋設されるインサートの曲げ加工前の拡大平面図であり、(b)は
図7に埋設されるインサートの曲げ加工後の斜視図である(特許文献1)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1の実施形態を、
図1から
図4に基づいて説明する。
図1は、自動車1の側面図である。ドア2の上部には車体の車体開口部周縁6に対向する部分にドアフレーム3が設けられ、ドアガラス5が昇降自在に取付けられる。なお、以下に述べる寸法、形状、材料名、数等や配置方法等は例示であり、ガラスランの仕様等により適宜変更される。
【0018】
ガラスラン10は、ドア2の車両前後方向の前側縦辺部2b、後側縦辺部2cと、ドア2のルーフ形状に沿った上辺部2aが連結された形状に形成され、ドアフレーム3の内周に取付けられ、ドアガラス5の昇降を案内するとともに、ドアガラス5とドアフレーム3との間をシールしている。ガラスラン10において、ドア2の車両前後方向の前側縦辺部2b、後側縦辺部2cと、ドア2のルーフ形状に沿った上辺部2aに対応する部分は、押出成形によって製造され、所定のサイズに切断された後、上辺部2aと前側縦辺部2b、上辺部2aと後側縦辺部2cは、型成形によって連結される。
【0019】
なお、ガラスラン10のドア2のルーフ形状に沿った上辺部2aに対応する部分については、ドア2のルーフ形状に追従するように曲げられる。本発明は、ガラスラン10におけるドア2のルーフ形状に沿った上辺部2aに対応する
図1における領域Xに関するものである。
【0020】
図2は、本発明の第1の実施形態におけるガラスラン10の断面図であり、
図1のA-A線に該当する断面図である。
【0021】
ガラスラン10は、ドア2のドアフレーム3のフランジ部3aに取付けられるトリム部20と、ドアガラス5との間をシールするガラスラン部30から構成されている。
【0022】
トリム部20は、ガラスラン部側側壁22と、ボディ側側壁21と、ガラスラン部側側壁22とボディ側側壁21を連結するトリム部底壁23から断面略コ字状(アルファベットで表せばU字状)に形成されている。
【0023】
また、ボディ側側壁21のガラスラン部側側壁22側には、車外側に湾曲して突出し、ドアフレーム3のフランジ部3aに弾接する係止リップ24が3箇所形成されている。一方、ボディ側側壁21の上方には、ドア2の閉時に、車体開口部周縁6に弾接して、車体開口部周縁6とドアフレーム3の間をシールするトリム部シールリップ25が1箇所形成されている。
【0024】
トリム部20には、ドアフレーム3のフランジ部3aとの保持力を強化するための金属補強材であるインサート40が埋設されている。インサート40については、後に詳述する。
【0025】
一方、ガラスラン部30は、トリム部20のトリム部底壁23とガラスラン部側側壁22から下方に連続して形成される車外側に位置する車外側側壁31と、ガラスラン部側側壁22の車内側端部から下方に連続して形成される車内側に位置する車内側側壁32、車外側側壁31の先端部から車内側、且つ斜め上方に湾曲して形成される車外側シールリップ33と、車内側側壁32の先端部から車外側、且つ斜め上方に湾曲して形成される車内側シールリップ34を備えている。また、ガラスラン部30は、車外側より車内側が大きく形成され、ドアガラス5に対して非対称に形成されている。
【0026】
トリム部20のガラスラン部側側壁22の下方には、ガラスラン部30の車内側側壁32から車外側に延出する底壁リップ35が形成されている。底壁リップ35は、ドアガラス5が上昇した時に、ドアガラス5の上端が底壁リップ35に当接して、ガラスラン部側側壁22への衝撃を吸収することができる。
【0027】
また、ガラスラン部側側壁22の車内側側壁32の車内側には、ドアフレーム3に係止されるガラスラン部側係止リップ36が形成されている。
【0028】
次に、インサート40について、
図2から
図4に基づいて説明する。
図3は、インサート40の曲げ加工前の拡大平面図である。インサート40は、ステンレスやアルミニウムなどの金属製である。
図3に示すように、インサート40は、長方形の帯状の金属板を打抜いて形成された長い長スリット41、と短い短スリット42が形成され、長スリット41と短い短スリット42によって形成された互いに略平行に配設された複数の短冊状の骨片部43が連結部44によって繋がれた形状になっている。本第1の実施形態では、インサート40は、薄鋼板(SCP、ピッカース硬度が115から220)を使用した。
【0029】
図3において、インサート40の板厚は0.5mm、幅Wは35mm、骨片部43の幅wは2mm、連結部44の長さ、すなわち、スリット幅は2mmである。
【0030】
図4は、インサート40の曲げ加工後の断面図であり、
図2は、
図4のインサート40が埋設されたガラスラン10の断面図である。
図2から明らかなように、インサート40の連結部44は、ガラスラン10のトリム部20のボディ側側壁21に埋設されている。一方、連結部44は、トリム部底壁23とガラスラン部側側壁22内には存在しない。
【0031】
その結果、連結部44をボディ側側壁21内に寄せることにより、連結部44が中立軸となり、ドアフレーム3のフランジ部3aを挟んで反対側の連結部44の形成されていないガラスラン部側側壁22が収縮して、車両ドアルーフの形状に追従させることができるので、トリム部20に特別の曲げ加工を行う必要がない。
【0032】
ガラスラン10において、インサート40以外の材質は以下の通りである。
【0033】
トリム部20のボディ側側壁21とガラスラン部側側壁22は、ショアA硬度が65から85の動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)で形成した。また、トリム部底壁23は、ロックウェル硬度80から100の熱可塑性樹脂であるポリプロピレン(PP)とインサート40を挟んで車内側は、ショアA硬度が65から85のTPVで形成した。
【0034】
トリム部シールリップ25と係止リップ24は、ショアA硬度が60から80のTPVで形成した。なお、トリム部シールリップ25と係止リップ24の硬度は、ボディ側側壁21とガラスラン部側側壁22より小さい。
【0035】
ガラスラン部30の車外側側壁31は、トリム部20のトリム部底壁23と同じロックウェル硬度80から100のPPで形成し、車内側側壁32は、トリム部20のガラスラン部側側壁22と同じショアA硬度が65から85のTPVで形成した。
【0036】
また、車外側シールリップ33と車内側シールリップ34は、ショアA硬度が60から80のTPVで形成した。なお、車外側シールリップ33と車内側シールリップ34の硬度は、ガラスラン部側側壁22の硬度より小さい。
【0037】
次に、本発明の第2の実施形態について
図5と
図6に基づいて説明する。本発明の第2の実施形態における上記の第1の実施形態との相違点は、本発明の第2の実施形態では、インサート40の連結部44は、ガラスラン10のトリム部20のガラスラン部側側壁22に埋設されている点にある。
【0038】
その結果、連結部44をガラスラン部側側壁22に寄せることにより、連結部44が中立軸となり、ドアフレーム3のフランジ部3aを挟んで反対側の連結部44の形成されていないボディ側側壁21が伸張して、車両ドアルーフの形状に追従させることができるので、トリム部20に特別の曲げ加工を行う必要がない。更に、ボディ側側壁21内に埋設させたときに比較して湾曲させる連結部44の長さが短くなるので、車両ドアルーフの形状への追従性がより向上する。
【0039】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0040】
例えば、本実施形態では、ガラスラン10を構成する材料としては、PPやTPVを使用したが、ゴム材料のEPDMや軟質合成樹脂等で形成してもよい。
【0041】
例えば、インサート40は、金属である薄鋼板を使用したが、インサートを被覆する材料よりも硬質の樹脂材料で形成してもよい。
【符号の説明】
【0042】
2 ドア
2a 上辺部
3 ドアフレーム
3a フランジ部
5 ドアガラス
10 ガラスラン
20 トリム部
21 ボディ側側壁
22 ガラスラン部側側壁
23 トリム部底壁
30 ガラスラン部
40 インサート
43 骨片部
44 連結部