(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048559
(43)【公開日】2022-03-28
(54)【発明の名称】ゴム成形品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20220318BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20220318BHJP
C08J 3/24 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K5/14
C08J3/24 Z CFH
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154439
(22)【出願日】2020-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】浜村 武広
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA60
4F070AB10
4F070AB11
4F070AB16
4F070AB24
4F070AC56
4F070AE08
4F070GA05
4F070GB07
4F070GC03
4J002CP03W
4J002CP03X
4J002EK036
4J002EK046
4J002FD146
4J002GC00
(57)【要約】
【課題】真円度が優れる円盤状部分を有するゴム成形品を提供する。
【解決手段】ゴム成形品10は、円盤状部分11を有する。円盤状部分11は、未架橋のミラブル型シリコーンゴムを有する第1材及び未架橋の液状シリコーンゴムを有する第2材を含む未架橋ゴム材料と架橋剤とを含有する未架橋ゴム組成物が架橋した架橋ゴム組成物で形成されている。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状部分を有するゴム成形品であって、
前記円盤状部分は、未架橋のミラブル型シリコーンゴムを有する第1材及び未架橋の液状シリコーンゴムを有する第2材を含む未架橋ゴム材料と、架橋剤と、を含有する未架橋ゴム組成物が架橋した架橋ゴム組成物で形成されているゴム成形品。
【請求項2】
請求項1に記載されたゴム成形品において、
前記第2材の25℃における粘度が350Pa・s以上1500Pa・s以下であるゴム成形品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたゴム成形品において、
前記未架橋ゴム材料における前記第1材と前記第2材との混合割合の第2材/第1材が10/90以上70/30以下であるゴム成形品。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載されたゴム成形品において、
前記未架橋ゴム組成物の165℃での90%加硫時間tc(90)が2分以上4分以下であるゴム成形品。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載されたゴム成形品において、
前記未架橋ゴム組成物の165℃での最小トルク値MLが0.005N・m以上0.04N・m以下であるゴム成形品。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載されたゴム成形品において、
前記架橋剤が有機過酸化物を含むゴム成形品。
【請求項7】
円盤状部分を有するゴム成形品の製造方法であって、
前記円盤状部分を、圧縮成形により、未架橋のミラブル型シリコーンゴムを有する第1材及び未架橋の液状シリコーンゴムを有する第2材を含む未架橋ゴム材料と、架橋剤と、を含有する未架橋ゴム組成物を架橋させて形成するゴム成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種ゴム製品として、シリコーンゴムのゴム成形品が用いられている。例えば、特許文献1には、ミラブル型シリコーンゴムと液状シリコーンゴムとを含有する未架橋ゴム組成物が架橋して形成された哺乳瓶用乳首及び赤ちゃん用おしゃぶりが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、真円度が優れる円盤状部分を有するゴム成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、円盤状部分を有するゴム成形品であって、前記円盤状部分は、未架橋のミラブル型シリコーンゴムを有する第1材及び未架橋の液状シリコーンゴムを有する第2材を含む未架橋ゴム材料と架橋剤とを含有する未架橋ゴム組成物が架橋した架橋ゴム組成物で形成されている。
【0006】
本発明は、円盤状部分を有するゴム成形品の製造方法であって、前記円盤状部分を、圧縮成形により、未架橋のミラブル型シリコーンゴムを有する第1材及び未架橋の液状シリコーンゴムを有する第2材を含む未架橋ゴム材料と架橋剤とを含有する未架橋ゴム組成物を架橋させて形成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、円盤状部分が、未架橋のミラブル型シリコーンゴムを有する第1材及び未架橋の液状シリコーンゴムを有する第2材を含む未架橋ゴム材料と架橋剤とを含有する未架橋ゴム組成物が架橋した架橋ゴム組成物で形成されていることにより、その優れた真円度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】実施形態に係るゴム成形品の一例の斜視図である
【
図1B】実施形態に係るゴム成形品の別の一例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0010】
実施形態に係るゴム成形品10は、円盤状部分11を有する。実施形態に係るゴム成形品10は、
図1Aに示すように、その一部分が円盤状部分11であっても、
図1Bに示すように、その全部が円盤状部分11であっても、どちらでもよい。円盤状部分11の直径は、例えば200mm以上400mm以下である。円盤状部分11の厚さは、例え0.5mm以上3.0mm以下である。
【0011】
円盤状部分11は、未架橋ゴム組成物が架橋した架橋ゴム組成物で形成されている。未架橋ゴム組成物は、未架橋ゴム材料と、架橋剤とを含有する。未架橋ゴム材料は、第1材及び第2材を含む。
【0012】
第1材は、未架橋のミラブル型シリコーンゴムを有する。第1材は、市販の固体状のシリコーンゴムコンパウンド材料であってもよい。この場合、第1材は、ミラブル型シリコーンゴム以外に、シリカを有していてもよい。
【0013】
第2材は、未架橋の液状シリコーンゴムを有する。第2材は、A液及びB液の2液キットで構成される市販の液状シリコーンゴム材料であってもよい。この場合、第2材は、2液のうちのB液であることが好ましく、液状シリコーンゴム以外に、S-H基シリコーンポリマー及び硬化抑止剤を有していてもよい。
【0014】
第2材の25℃における粘度は、後述するように円盤状部分11の優れた真円度を得る観点から、好ましくは350Pa・s以上1500Pa・s以下、より好ましくは1250Pa・s以上1350Pa・s以下である。この粘度は、JIS K6249:2003に基づいて、回転粘度による方法により測定されるものである。
【0015】
未架橋ゴム材料において、第1材と第2材との混合割合の第2材/第1材は、円盤状部分11の優れた真円度を得る観点から、好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上、更に好ましくは40/60以上であり、ボイドの生成を抑制する観点から、好ましくは70/30以下、より好ましくは60/40以下である。
【0016】
架橋剤は、有機過酸化物を含むことが好ましい。有機過酸化物としては、例えば、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゼン等が挙げられる。有機過酸化物は、これらのうちの1種又は2種以上を有することが好ましく、円盤状部分11の優れた真円度を得る観点から、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンを有することがより好ましい。未架橋ゴム組成物における架橋剤の有機過酸化物の含有量は、円盤状部分11の優れた真円度を得る観点から、未架橋ゴム材料100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上3質量部以下、より好ましくは1質量部以上2質量部以下である。
【0017】
未架橋ゴム組成物の165℃での90%加硫時間tc(90)は、好ましくは2分以上4分以下、より好ましくは2.5分以上3.5分以下である。未架橋ゴム組成物の165℃での最小トルク値MLは、好ましくは0.005N・m以上であり、円盤状部分11の優れた真円度を得る観点から、好ましくは0.04N・m以下、より好ましくは0.03N・m以下、更に好ましくは0.02N・m以下である。これらの90%加硫時間tc(90)及び最小トルク値MLは、JIS K6300-2:2001に基づいて、ダイ加硫試験機(キュラストメーター(登録商標))を用いて測定されるものである。
【0018】
架橋ゴム組成物のタイプAデュロメータで測定される硬さは、好ましくはA35以上A55以下、より好ましくはA40以上A50以下である。架橋ゴム組成物の引張強さは、好ましくは6MPa以上、より好ましくは8MPa以上である。架橋ゴム組成物の切断時伸びは、好ましくは500%以上、より好ましくは600%以上である。架橋ゴム組成物の引裂強さは、好ましくは25kN/m以上、より好ましくは30kN/m以上である。これらの硬さ、引張強さ、切断時伸び、及び引裂強さは、JIS K6249:2003に基づいて測定されるものである。
【0019】
以上の構成の実施形態に係るゴム成形品10によれば、円盤状部分11が、未架橋のミラブル型シリコーンゴムを有する第1材及び未架橋の液状シリコーンゴムを有する第2材を含む未架橋ゴム材料と架橋剤とを含有する未架橋ゴム組成物が架橋した架橋ゴム組成物で形成されていることにより、その優れた真円度を得ることができる。これは、未架橋ゴム材料がミラブル型シリコーンゴムに加えて液状シリコーンゴムを含有することにより、成形時における流動性が高められて精密成形がなされるためであると考えられる。
【0020】
円盤状部分11の真円度は、円盤状部分11の直径が例えば200mm以上400mm以下の場合、好ましくは0.4mm以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2mm以下である。この真円度は、JIS B0621-1984に基づいて測定されるものである。
【0021】
次に、実施形態に係るゴム成形品10の製造方法について説明する。
【0022】
まず、未架橋のミラブル型シリコーンゴムを有する第1材及び未架橋の液状シリコーンゴムを有する第2材を含む未架橋ゴム材料を素練りし、そこに架橋剤を投入して更に混練して未架橋ゴム組成物を調製する。この未架橋ゴム組成物の混練には、オープンロールやバンバリーミキサー等のゴム混練機を用いることができる。
【0023】
次いで、調製した未架橋ゴム組成物を適量とり、それをプレス金型のキャビティにセットして型締めする。
【0024】
続いて、型締めしたプレス金型をプレス成形機の熱盤間に挟んで圧縮成形を行う。成形温度は、例えば150℃以上170℃以下である。成形圧力は、例えば200MPa以上400MPa以下である。成形時間は、例えば3分以上15分以下である。このときの未架橋ゴム組成物が架橋して架橋ゴム組成物となる。このようにして、圧縮成形により、未架橋のミラブル型シリコーンゴムを有する第1材及び未架橋の液状シリコーンゴムを有する第2材を含む未架橋ゴム材料と架橋剤とを含有する未架橋ゴム組成物を架橋させて円盤状部分11を形成することができる。
【0025】
そして、プレス成形機からプレス金型を取り出して型開きするとともに、成形されたゴム成形品10を回収した後、それを予熱したオーブンに入れて二次架橋させることにより、実施形態に係るゴム成形品10を製造することができる。二次架橋温度は、例えば150℃以上250℃以下である。二次架橋の時間は、例えば0.5時間以上5時間以下である。
【実施例0026】
(ゴム成形品)
実施例1及び2並びに比較例のゴム成形品を作製した。それぞれの構成は表1にも示す。
【0027】
<実施例1>
第1材として、未架橋のミラブル型シリコーンゴムを有する市販の固体状のシリコーンゴムコンパウンド材料を準備した。第2材として、A液及びB液の2液キットで構成される市販の液状シリコーンゴム材料のうちのB液(25℃における粘度:1300Pa・s)を準備した。架橋剤として、有機過酸化物の2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンを準備した。
【0028】
第1材及び第2材を、それらの混合割合の第2材/第1材が20/80となるように含んだ未架橋ゴム材料を素練りし、そこに架橋剤を投入して更に混練して未架橋ゴム組成物を調製した。有機過酸化物の配合量は、第1材及び第2材で構成された未架橋ゴム材料100質量部に対して1.5質量部とした。
【0029】
この調製した未架橋ゴム組成物を用い、直径298mm及び厚さ2mmに設計された円盤状のゴム成形品を圧縮成形した。このとき、成形温度を165℃、成形圧力を300MPa、及び成形時間を10分とした。
【0030】
そして、圧縮成形したゴム成形品を、予熱したオーブンに入れて二次架橋させた。このとき、二次架橋の温度を200℃、二次架橋の時間を4時間とした。得られたゴム成形品を実施例1とした。
【0031】
<実施例2>
第1材及び第2材の混合割合を第2材/第1材が50/50としたことを除いて実施例1と同様にして円盤状のゴム成形品を作製した。それを実施例2とした。
【0032】
<比較例>
第1材のみを未架橋ゴム材料として用いたことを除いて実施例1と同様にして円盤状のゴム成形品を作製した。それを比較例とした。
【0033】
【0034】
(試験方法及び結果)
実施例1及び2並びに比較例のそれぞれの円盤状のゴム成形品について、JIS B0621-1984に基づいて真円度を測定した。その結果を表1に示す。それによれば、未架橋ゴム材料がシリコーンゴムとしてミラブル型シリコーンゴム及び液状シリコーンゴムを含む実施例1及び2は、未架橋ゴム材料がシリコーンゴムとしてミラブル型シリコーンゴムのみを含む比較例よりも、真円度が優れることが分かる。