(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048565
(43)【公開日】2022-03-28
(54)【発明の名称】構造体用組成物、構造体、および構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20220318BHJP
【FI】
E04B1/94 U
E04B1/94 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154446
(22)【出願日】2020-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】510057475
【氏名又は名称】株式会社 ジャパンナノコート
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148219
【弁理士】
【氏名又は名称】渡會 祐介
(72)【発明者】
【氏名】島田 誠之
(72)【発明者】
【氏名】深津 志向
(72)【発明者】
【氏名】堀 伸輔
(72)【発明者】
【氏名】吉野 茂
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001EA09
2E001FA01
2E001FA02
2E001GA12
2E001GA63
2E001HA21
2E001HA34
2E001HC01
2E001JC01
2E001KA01
2E001LA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低価格で、人体に有害ではない安全な材料から、良加工成形性、粉砕後の安全性、防水性、耐火性、難燃性等を備える木造建築2時間耐火構造物を提供する。
【解決手段】(A)平均粒子径500μm以下の無機粉末又は平均粒径212μm以下の木粉と、(B)水ガラスおよび平均粒子径5nm以下のシリカ粉末を含む常温硬化型バインダーと、(C)溶媒と、を含むことを特徴とする、構造体用組成物およびこの構造体用組成物を成型し、硬化させる構造体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均粒子径500μm以下の無機粉末または平均粒子径212μm以下の木粉粉末と、
(B)水ガラスおよび平均粒子径10nm以下のシリカ粉末を含む常温硬化型バインダーと、
(C)溶媒と、
を含むことを特徴とする、構造体用組成物。
【請求項2】
請求項1記載の構造体用組成物の硬化体である、構造体。
【請求項3】
厚さが、3~300mmである、請求項2記載の構造体。
【請求項4】
請求項2または3記載の構造体を2種以上有する、2時間以上の耐火性能を有する構造体。
【請求項5】
請求項1記載の構造体用組成物を硬化させる、構造体の製造方法。
【請求項6】
硬化を0~40℃で行う、請求項5記載の構造体の製造方法。
【請求項7】
プラスチック製の型中に、請求項1記載の構造体用組成物を注入し、硬化させた後、プラスチック製の型から取り出す、2時間以上の耐火性能を有する構造体の製造方法。
【請求項8】
請求項4記載の2時間以上の耐火性能を有する構造体を、耐火接着剤で張り合わせる、2時間以上の耐火性能を有する構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体用組成物、構造体、および構造体の製造方法に関する。特に、リサイクル性に優れた木造建築物を形成可能な、構造体用組成物、構造体、および構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築物の柱や梁などの鉛直荷重を支持する部材では、耐火構造には、屋外に発生が予想される通常の火災と室内に発生が予想される通常の火災の両方に対して火災が終了するまでの間、建築物の延焼および倒壊を防止する性能が求められ、部材・階数に応じ30分、1時間、2時間、3時間の性能が設定されている。建築基準法における耐火構造の大臣認定を得るための試験では加熱終了後、再燃のおそれなく自然に燃え止まることが要求され、現状の評価では、試験終了まで構造用木材が炭化することを認めていない。
【0003】
木質系耐火構造の認定種別は、木部を強化石膏ボード等により耐火被覆する「被覆型」、荷重支持部の木材が燃えないように燃焼を途中で停止する燃え止まり層を設ける「燃え止まり型」、鉄骨を木材で耐火被覆して木材の燃焼を途中で停止させ、鉄骨温度の上昇を抑制する「鉄骨内蔵型」に、大きく分類される。ただし、「被覆型」は木が現しにならない、「燃え止まり型」は製造方法が複雑(例えば、燃え止まり層に難燃処理が必要)、「鉄骨内蔵型」は現時点では材種が限定される、といったデメリットがある。現在の、簡易な木造建築2時間耐火構造は、耐火石膏ボード3枚重ねの厚さ64mmの仕様が主となる。石膏ボードは、安価だが廃棄する際にリスクがある。具体的には、例えば産業廃棄物として処理して地中に埋めた物が、特定の条件下(硫酸塩還元菌が存在する、硫酸塩還元菌の炭素源となる有機物が存在する、硫酸塩還元菌が増殖するのに適当な水分が保持される、など)で硫化水素を発生させるリスクである。リサイクルするにしても、これらの問題は完全には解決していない。
【0004】
そこで大量の使用済み構造体の廃棄物を減少させるための一案として、廃棄するための処理方法を考えるのではなく、そもそもの入口である構造体自体を、環境にやさしいリサイクル可能なものに変えることにより、使用済み構造体の廃棄物自体の量を減らし、ごみ問題を解決する方法が、考えられる。
【0005】
ここで、リサイクル可能なものを利用する方法として、使用済み構造体を粉砕して、再度成形する方法が考えられる。この方法で使用するためには、構造体に、低価格、良加工成形性、粉砕後の安全性等が求められる。
【0006】
粉砕後の使用済み構造体を使用する方法として、有機無機複合組成物が考えられる。有機無機複合組成物として提案されている有機無機複合組成物(特許文献1)は、有機合成樹脂中にシリカ粒子が微細に、かつ、略均一に分散してなる有機無機複合組成物であって、前記有機合成樹脂の水性エマルションに水ガラスを混合して、更に、酸を加えることによって前記有機合成樹脂及びシリカゾルを凝集させて得られたことを特徴とするものである(特許文献1の請求項1等)。
【0007】
しかしながら、この有機無機複合組成物は、熱可塑性樹脂を始めとする有機合成樹脂の諸特性を向上させるためにシリカ微粒子を微細にかつ均一に分散させたものである(特許文献1の第0001段落)ため、常温または低温で成形できない、という欠点がある。又、樹脂を使用していることで耐火性能の面で使用に難がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、低価格で、人体に有害ではない安全な材料から、良加工成形性、粉砕後の安全性、さらには、軽量性、防水性、耐火性等を備える構造物を形成可能な構造体用組成物を提供し、リサイクルしやすく且つ加工容易性や耐火性能も備えた木造建築物用の構造体を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の構成を有することによって上記問題を解決した構造体用組成物、構造体、および構造体の製造方法に関する。
〔1〕(A)平均粒子径500μm以下の無機粉末及び212μm以下の木粉粉末と、
(B)水ガラスおよび平均粒子径10nm以下のシリカ粉末を含む常温硬化型バインダーと、
(C)溶媒と、
を含むことを特徴とする、2時間耐火構造体用組成物。
〔2〕上記〔1〕記載の構造体用組成物の硬化体である、構造体。
〔3〕厚さが、3~300mmである、上記〔2〕記載の構造体。
〔4〕上記〔2〕または〔3〕記載の構造体を2種以上有する、2時間以上の耐火性能を有する構造体。
〔5〕上記〔1〕記載の構造体用組成物を硬化させる、構造体の製造方法。
〔6〕硬化を0~40℃で行う、上記〔5〕記載の構造体の製造方法。
〔7〕プラスチック製の型中に、上記〔1〕記載の構造体用組成物を注入し、硬化させた後、プラスチック製の型から取り出す、2時間以上の耐火性能を有する構造体の製造方法。
〔8〕上記〔4〕記載の2時間以上の耐火性能を有する構造体を、耐火接着剤で張り合わせる、2時間以上の耐火性能を有する構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明〔1〕によれば、低価格で、人体に有害ではない安全な材料から、良加工成形性、粉砕後の安全性、さらには、軽量性、防水性、耐火性、難燃性を備える構造物を形成可能な構造体用組成物を提供することができる。
【0012】
本発明〔4〕によれば、良加工成形性、粉砕後の安全性、さらには、軽量性、防水性、耐火性、を備える2時間以上の耐火性能を有する構造物を提供することができる。
【0013】
本発明〔5〕によれば、低価格、良加工成形性、粉砕後の安全性、さらには、軽量性、防水性、所定の耐火性能を備える構造物を、安価で簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】2時間耐火性能を検討する為の簡易試験の説明図である。
【
図2】層間接着剤、目地接着剤の使用部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔構造体用組成物〕
本発明の構造体用組成物(以下、組成物という)は、
(A)平均粒子径500μm以下の無機粉末または212ミクロン以下の木粉粉末と、
(B)水ガラスおよび平均粒子径10nm以下のシリカ粉末を含む常温硬化型バインダーと
(C)溶媒と、
を含むことを特徴とする。この構成により、低価格で安全な材料から、良加工成形性、粉砕後の安全性、さらには、軽量性、防水性、耐火性、難燃性等を備える構造物を形成可能な構造体用組成物を提供することができる。ここで、耐火性能とは、通常の火災が終了するまでの間、当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために当該建築物の部分に必要とされる性能であり、2時間耐火構造では、耐火炉にて加熱曲線(ISO834)に従った2時間加熱終了後、耐火炉内に放置し24時間以内に部材の耐火被覆層が自ら燃焼を完全に停止し、かつ構造体部分(木構造支持部材)が損傷のないこと(非炭化)をいう。
【0016】
(A)成分である平均粒子径500μm以下の無機粉末の形状は、軽量化の観点から、中空ビーズ状の形状が望ましい。用いる材料は、耐火性の観点から陶器等のセラミックが望ましい。軽量化を求めない場合は、古くから使用されている陶器等の中空でない粉末を用いることができる。用いる無機粉末としては、陶器粉末、貝殻粉末、珊瑚粉末、稲殻(籾殻)粉末、金属粉末等が、挙げられる。また、木粉粉末としては、木粉が自己消火性を持つ212μ以下のサイズが好ましい、ここで、平均粒子径212μm以下の木粉粉末とは、公称目開き212μmの篩を通過した粉末である。(A)成分の無機粉末または木粉粉末の平均粒子径は、何れも100μm以下であると好ましく、50μm以下であると、より好ましく、10μm以下であると、さらに好ましい。セラミック中空ビーズ(例えば、昭和化学工業社製B-05、W-3等)を含むと、硬化時の収縮を抑えることができ、軽量化も可能になり、かつ構造体の熱伝導率を低くすることができるため、好ましい。また、組成物に入れると、セラミック中空ビーズを潰れにくくでき、耐圧縮強度を高くすることができる。
【0017】
(A)成分は、単独でも、2種以上を混合してもよい。
【0018】
(B)成分は、水ガラスおよび平均粒子径10nm以下のシリカ粉末を含む常温硬化型バインダーである。シリカ粉末の平均粒子径が10nm以上であると、常温環境下では硬化しづらくなるため、ここでは平均粒子径10nm以下のものを用いる。ここで、常温とは、0~40℃の範囲をいう。常温環境下で構造体を硬化できることで、耐火建材の加工容易性を向上させることが可能となる。水ガラスは、ケイ酸アルカリ塩の濃厚溶液であり、特に限定されず、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウム等が挙げられ、一例としては、Na2O:1molに対して、SiO2:2~4molを含む無色で粘性の高い水溶液である。この水ガラスには、市販品を使用することができる。この水ガラスには、例えば、ケイ酸リチウムとケイ酸ナトリウムの混合物を用いることができる。水ガラスは、単独でも、2種以上を混合してもよい。平均粒子径10nm以下のシリカ粉末としては、(株)トクヤマ製の乾式シリカ粉末(商品名:レオロシール(登録商標)QS-30、平均7nmの一次粒子径からなる粉体)が挙げられる。シリカ粉末は、単独でも、2種以上を混合してもよい。(B)成分の市販品としては、(株)ジャパンナノコート製常温硬化型防水難燃バインダーBW-35(シリカの平均粒径:7nm;純水:65~70wt%、ケイ酸ナトリウム+ケイ酸リチウム:Na2O:2~8wt%+Li2O:1~3%、SiO2:25~30%)が、挙げられる。ここで、平均粒子径は、マルバーン・パナリティカル(Malvern Panalytical)社製ゼータサイザーナノ(ZETASIZER(登録商標)-nano)を用い、動的光散乱法で測定した個数基準に基づく値とする。水ガラスは、(B)成分100質量部中、40~90質量部であると、好ましい。
【0019】
(A)平均粒子径500μm以下の無機粉末は、組成物100質量部に対して、10~60質量部であると好ましく、30~50質量部が、より好ましい。
(A)平均粒子径212μm以下の木粉粉末は、組成物100質量部に対して、10~30質量部であると好ましく、12~20質量部が、より好ましい。
【0020】
(B)成分が、(株)ジャパンナノコート製バインダーBW-35である場合には、組成物100質量部に対して、40~90質量部であると好ましく、40~50質量部であると、より好ましい。(B)成分が90質量部を超えると、組成物が低粘度で形成しにくくなり、40質量部より少ないと、組成物が、保持成型できない。
【0021】
(C)成分である溶媒は、組成物の粘度乾燥調整として0.1質量部~10質量部使用する。塗布後の乾燥速度の観点から、用いる溶媒としては水(純粋)であると、好ましい。任意に、グリコール系等の高沸点溶媒等を少量添加しても良い。
【0022】
組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、更に必要に応じ、難燃助剤等の添加剤等を配合することができる。
【0023】
組成物は、例えば、各種材料、溶媒、およびその他添加剤等を、同時にまたは別々に、必要により加熱処理を加えながら、撹拌、溶融、混合、分散させることにより得ることができる。これらの混合、撹拌、分散等の装置としては、特に限定されるものではないが、プロペラ攪拌機、ジェットミル、アンカータイプ攪拌機、ライカイ機、ボールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル等を使用することができる。また、これら装置を適宜組み合わせて使用してもよい。なお、中空ビーズを使用する場合には、ビーズを潰さない装置が好ましい。
【0024】
本発明の組成物は、プラスチック製の型に対する離型性が良好であるので、安価で簡便に作製可能なプラスチック製の型を使用して成型することが可能である。当然、粘土のように、手で成形することもできる。
【0025】
また、(A)成分については、無機粉末の場合は、天然由来の貝殻、灰等を使用しても良い。したがって、(A)成分の材料は、無機粉末および木粉粉末共に、世界中の至る所にあるため、材料の調達が非常に容易である。
【0026】
〔構造体〕
(A)平均粒子径500μm以下の無機粉末または212μm以下の木粉粉末と、
(B)水ガラスおよび平均粒子径10nm以下のシリカ粉末を含む常温硬化型バインダーと
(C)溶媒と
を含む構造体用組成物を、硬化させたものである。
【0027】
この構造体は、この構造体は、耐火部材として使用できるだけでなく、構造部材として、建材の内装材、外装材として使用することができる。
【0028】
この構造体は、特に、(A)成分として、平均粒子径500μm以下の無機粉末に、中空ビーズを使用するときに、非常に軽量であり、断熱吸音効果を有し、かつ、かさまし効果により安価に製造できる、という顕著な効果を発揮する。加えて、構造体を粉砕して、適切な大きさに粉末化し、使用することにより、リサイクルも可能であるので、循環型社会に適している。構造体1枚の好ましい厚さは、3~300mmであり、3mmより薄いと乾燥時に変形し易くなり、300mmより厚いと、成形するのに時間がかかりやすくなり、また崩れやすくなる。この構造体を用いて2時間以上の耐火性能を有する構造体を形成するには、この構造体を2層以上組み合わせることが好ましい。なお、2時間の簡易な耐火試験を行い所定の耐火性能を有すると考えられる構造体の厚さは、550~700mmである。具体的な構造は、後述する実施例1~4で説明する。
【0029】
〔構造体の製造方法〕
本発明の構造体の製造方法は、上述の構造体用組成物を硬化する方法であり、硬化を0~40℃で行うと、好ましい。より特徴的な本発明の構造体の製造方法は、プラスチック製の型中に、上述の構造体用組成物を注入し、硬化した後、プラスチック製の型から取り出す方法である。
【0030】
上述の構造体用組成物は、プラスチック製の型に対する離型性を有する。上述の構造体用組成物の硬化は、常温または100℃以下の低温乾燥で、行うことができるため、製造コストを安価にすることができる。また、2時間以上の耐火性能を有する構造体を、接着剤で張り合わせる、2時間以上の耐火性能を有する構造体の製造方法も、好ましい。
【0031】
プラスチック製の型は、三次元プリンター等で簡便に作成することが可能であるため、安価で作製可能である上に、上述の構造体用組成物の硬化温度が低いため、型の劣化も起きにくい、という利点がある。
【実施例0032】
本発明について、実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、部、%はことわりのない限り、質量部、質量%を示す。
【0033】
(A)平均粒子径500μm以下の無機粉末には、昭和化学工業(株)製B-05を用いた。昭和化学工業(株)製B-05は、セラミック製の中空ビーズである。
また、無機粉末に代えて、平均粒径212ミクロン以下の木粉粉末を用いた。
(B)バインダーに(株)ジャパンナノコート製BW-35を用いた。
(C)溶媒には、純水を用いた。
【0034】
《2時間簡易耐火試験》
以下では、2時間耐火構造体を耐火炉にて加熱曲線(ISO834に準拠)2時間加熱終了後、耐火炉内に放置し、24時間以内に部材の耐火被覆層が、自ら燃焼を完全に停止し、かつ構造体部分(木構造支持部材)が損傷のないこと(非炭化)を合格(但し、耐火構造としての認定試験に合格したわけではない)とした。
【0035】
〔実施例1〕
セラミック中空ビーズ(昭和化学工業社(株)製B-05):40質量部と、(株)ジャパンナノコート製BW-35:60質量部を混合し、組成物を作成した。組成物を、成型し、厚さ:300mmの構造体を用意した。
図1及び
図2に、2時間耐火試験の説明図を記載する。
図1の中心の図は、模型試験体の全体図を示す。
図1の右側は、図の中央図の上部のaの高さから見た上面図であり、
図1の左図は、図の中央図の太い点で示す杉集成材の高さ方向で半分の高さでの断面図である。
図2は、
図1のb.secに対応しており、層間接着剤、目地接着剤の使用部を示す。
図1からわかるように、杉集成材の柱の上下面は、ケイ酸カルシウム板で挟み込まれており、高さ方向の略中央で、温度測定をした。
図2からわかるように、杉集成材の柱の4側面を、8枚の構造体(杉集成材1側面に対して、構造体2枚)で、接着した。
図2の一点破線は、層間接着剤の使用部を、破線は、目地接着剤の使用部を示す。杉集成材-構造体の広い面間の接着には、層間接着剤を、構造体の端面間の接着には、目地接着剤を使用した。なお、上下に挟み込んだケイ酸カルシウム板からの熱が、杉集成材に届きにくいように固着するため、目地接着剤を使用した。なお、層間接着剤としては、例えばニチアス(株)製インシュレーションアドヘッシブ、目地接着剤としては、例えばASボンドを用いることができる。
【0036】
120mm×120mm×300mmの杉集成材の各側面に、構造体2枚を使用し、合計の厚さ:600mmで被覆した。実施例1は、2時間簡易耐火試験に合格した。
【0037】
〔実施例2〕
212μm以下の木粉粉体:13質量部と(株)ジャパンナノコート製BW-35:87質量部を混合し、組成物を作成した。組成物を成型し、厚さ:300mmの構造体を用意した。実施例1と同様に、120mm×120mm×300mmの杉集成材の各側面に、構造体2枚を使用し、合計の厚さ:600mmで被覆した。実施例2は、2時間簡易耐火試験に合格した。
【0038】
〔比較例1〕
構造体の代わりに、厚さ120mmの難燃処理木材を、120mm×120mm×300mmの杉集成材に、1側面当たり8枚使用し、合計の厚さ960mmで、杉集成材を被覆した。構造体以外については、実施例1と同様に試験を行ったが、2時間簡易耐火試験に合格しなかった。
【0039】
〔比較例2〕
実施例1の外側の構造体1枚の代わりに、厚さ120mm難燃処理木材の杉集成材に2枚使用し、実施例1の構造体300mmと組み合わせ、合計の厚さ:540mmで、杉集成材を被覆した。構造体以外については、実施例1と同様に試験を行ったが、2時間簡易耐火試験に合格しなかった。
【0040】
〔比較例3〕
実施例1の外側の構造体1枚の代わりに、厚さ250mmのオーク材を1枚使用し、実施例1の構造体300mmと組み合わせ、合計の厚さ550mmで、杉集成材を被覆した。構造体以外については、実施例1と同様に試験を行ったが、2時間簡易耐火試験に合格しなかった。
【0041】
〔実施例3〕
実施例1の外側の構造体1枚の代わりに、厚さ250mmのシリカ(SiO2)とアルミナ(Al2O3)を主成分としたセラミックウール製のボードを1枚使用し、実施例1の厚さ300mmの構造体と組み合わせ、合計の厚さ550mmで、杉集成材を被覆した。実施例3は、2時間簡易耐火試験に合格した。
【0042】
〔比較例4〕
実施例1の外側の構造体1枚の代わりに、厚さ250mmの玄武岩、珪石、高炉スラグなどの主原料を繊維化したボードを1枚使用し、実施例1の構造体300mmと組み合わせ、合計の厚さ550mmで、杉集成材を被覆した。2時間簡易耐火試験に合格しなかった。
【0043】
〔実施例4〕
実施例1の外側の構造体1枚の代わりに、厚さ150mmの実施例2の構造体1枚を使用し、さらにその外側に厚さ250mmの実施例3のセラミックウール製の構造体1枚を組み合わせ、合計の厚さ:700mmで、杉集成材を被覆した。実施例4は、2時間簡易耐火試験に合格した。
【0044】
〔比較例5〕
実施例1の(B)成分を、富士化学(株)製ケイ酸ナトリウム水溶液(ケイ酸ソーダ3号)に変えて他を同じ条件としたが、成型がうまくできなかった。
【0045】
〔比較例6〕
実施例1の(B)成分を、日産化学(株)製珪酸リチウム水溶液45に変えて他を同じ条件としたが、成型がうまくできなかった。
【0046】
〔比較例7〕
実施例1の(A)成分を、昭和化学工業(株)製B-03を500μmの篩にかけて、中空ビーズの大きさをすべて500μm以上の大きさにした組成物を作成し、他を実施例1と同じ条件にしたものを用意したところ、事前試験として1000℃の電気炉で成型物が溶融した為、今回の試験の条件を満たす組成物を実現することは出来なかった。
【0047】
〔比較例8〕
実施例1の(B)成分を、日産化学(株)製スノーテックス(登録商標)ST-C(平均粒子径12nm)に変えて、他を実施例1と同じ条件としたが、成型がうまくできなかった。
【0048】
〔比較例9〕
実施例2の(A)成分を、木粉粉体をすべて212μm以上の大きさで組成物を作成し、他の条件を実施例2と同じ条件にして検証したところ、事前試験により木粉自体が着火する為、今回の試験の条件を満たす組成物を実現することは出来なかった。
本発明の構造体用組成物は、木造建築物2時間以上の耐火性を有する構造体を形成することができるだけでなく、形成された構造体は、構造部材として、内装材、外装材としての建材等に使用可能である。