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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048609
(43)【公開日】2022-03-28
(54)【発明の名称】量子カスケードレーザモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/024 20060101AFI20220318BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20220318BHJP
   F21V 29/503 20150101ALI20220318BHJP
   F21V 29/80 20150101ALI20220318BHJP
   F21V 29/67 20150101ALI20220318BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20220318BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20220318BHJP
【FI】
H01S5/024
H01S5/022
F21V29/503
F21V29/80
F21V29/67
F21S2/00 377
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154510
(22)【出願日】2020-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100183081
【弁理士】
【氏名又は名称】岡▲崎▼ 大志
(72)【発明者】
【氏名】秋草 直大
(72)【発明者】
【氏名】道垣内 龍男
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173ME01
5F173ME22
5F173ME52
5F173ME55
5F173MF39
(57)【要約】
【課題】冷却ファンを備えた構成において、光学条件の時間的な変動に起因する光学ノイズを低減することができる量子カスケードレーザモジュールを提供する。
【解決手段】一実施形態のQCLモジュール1は、QCL素子を収容し、QCL素子から出射されたレーザ光を外部に取り出す窓材23が設けられたパッケージ2と、窓材23から出射されるレーザ光が入射するレンズ3を保持するレンズ保持部材4と、パッケージ2を冷却する冷却ファン5と、パッケージ2、レンズ保持部材4、及び冷却ファン5を保持するベース6と、を備える。パッケージ2及びレンズ保持部材4は、共通のネジ部材11によって、ベース6に対して共締めされている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子カスケードレーザ素子を収容し、前記量子カスケードレーザ素子から出射されたレーザ光を外部に取り出す窓材が設けられたパッケージと、
前記窓材から出射される前記レーザ光が入射するレンズを保持するレンズ保持部材と、
前記パッケージを冷却する冷却ファンと、
前記パッケージ、前記レンズ保持部材、及び前記冷却ファンを保持するベースと、
を備え、
前記パッケージ及び前記レンズ保持部材は、共通の軸部材によって、前記ベースに対して共締めされている、量子カスケードレーザモジュール。
【請求項2】
前記パッケージは、前記窓材が前記レンズに対向するように、前記ベースと前記レンズ保持部材との間に配置され、
前記パッケージ及び前記レンズ保持部材は、前記レンズ保持部材が前記ベースに対して締結されることにより、前記ベースに対して共締めされている、請求項1に記載の量子カスケードレーザモジュール。
【請求項3】
前記レンズ保持部材と前記ベースとの間に配置されるスペーサを更に備え、
前記パッケージは、前記ベースに当接すると共に前記ベースに沿って延在するフランジを有し、
前記スペーサが前記レンズ保持部材の前記ベース側の面と前記フランジの前記レンズ保持部材側の面との間に配置されることにより、前記レンズ保持部材と前記窓材との間に隙間が形成されている、請求項2に記載の量子カスケードレーザモジュール。
【請求項4】
前記フランジは、前記窓材を挟んだ両側に形成された第1フランジ及び第2フランジを有し、
前記スペーサは、前記レンズ保持部材の前記ベース側の面と前記第1フランジの前記レンズ保持部材側の面との間に配置された第1スペーサと、前記レンズ保持部材の前記ベース側の面と前記第2フランジの前記レンズ保持部材側の面との間に配置された第2スペーサと、を有する、請求項3に記載の量子カスケードレーザモジュール。
【請求項5】
前記レンズ保持部材、前記スペーサ、前記フランジ、及び前記ベースの各々には、前記軸部材が挿通される挿通孔が形成されており、
前記レンズ保持部材、前記スペーサ、前記フランジ、及び前記ベースの各々の前記挿通孔に挿通された前記軸部材によって前記レンズ保持部材が前記ベースに対して締結されることにより、前記レンズ保持部材、前記スペーサ、及び前記フランジが、前記ベースに対して共締めされている、請求項3又は4に記載の量子カスケードレーザモジュール。
【請求項6】
前記レンズ保持部材及び前記ベースの各々には、前記軸部材が挿通される挿通孔が形成されており、
前記レンズ保持部材と前記ベースとの間に前記スペーサ及び前記フランジが配置された状態で、前記レンズ保持部材及び前記ベースの各々の前記挿通孔に挿通された前記軸部材によって前記レンズ保持部材が前記ベースに対して締結されることにより、前記レンズ保持部材、前記スペーサ、及び前記フランジが、前記ベースに対して共締めされている、請求項3又は4に記載の量子カスケードレーザモジュール。
【請求項7】
前記スペーサは、前記ベースよりも熱伝導率の低い材料によって形成されている、請求項3~6のいずれか一項に記載の量子カスケードレーザモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、量子カスケードレーザモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源素子と、レンズホルダと、光源素子を冷却するための冷却ファンと、が一体化されたモジュールが知られている(例えば特許文献1,2参照)。特許文献1には、LEDユニット(LED基板及びLEDパッケージ)、照光部(レンズ群)、及び冷却ファンを備える構成が開示されている。特許文献1に記載の構成では、照光部が装着された据付部材とLED基板とが、基台に対して別々に固定されている。特許文献2には、光源モジュール、レンズホルダ、及び冷却ファンを光源ホルダに固定した構成が開示されている。特許文献2に記載の構成では、光源モジュールとレンズホルダとは、光源ホルダに対して別々に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-188256号公報
【特許文献2】特開2019-096637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなモジュールの光源として量子カスケードレーザ(以下「QCL」という。)が用いられる場合がある。QCLを備えたモジュールは、例えばガスの濃度計測等に用いられる。例えば、上記モジュールと光検出器との間に計測対象のガスが封入されたガスセルを配置し、上記モジュールから出射されたレーザ光をガスセル内を通過させ、ガスセル内を通過した後のレーザ光を光検出器で検出することで、ガスセル内のガスの濃度(レーザ光の吸光度)を計測することができる。QCLは、優れた単色性(すなわち、優れた波長分解能)を有するため、上記のようなガスの濃度計測に好適に用いることができる。一方で、上記のような優れた単色性を有することに起因して光学ノイズが原理的に発生する。より具体的には、QCLの放射端面とモジュールが備えるレンズの界面との間の干渉成分によってフリンジノイズ(干渉ノイズ)が発生する。
【0005】
仮に、QCLとレンズとの間の光学条件(例えば、ファブリペロ共振器長)が時間的に変動しなければ、上記光学ノイズを不変量として扱うことが可能になるため、上記光学ノイズをバックグラウンド演算によって除去することが可能である。しかし、上記のようにモジュールが冷却ファンを備える場合、冷却ファンの振動に起因するQCLの振動とレンズの振動との間にずれが生じるおそれがある。特に、上記特許文献1,2に記載の構成のように、光源とレンズとが別個にベース部材(すなわち、特許文献1における基台、及び特許文献2における光源ホルダ)に固定される場合、QCLの振動とレンズの振動とが同位相とならず、QCLとレンズとの位置関係(すなわち、光路長)が時間的に変動し易い。この場合、上記光学条件が時間的に変動するため、上記光学ノイズを不変量として扱うことができなくなる。すなわち、光学ノイズをバックグラウンド演算によって除去することができなくなる。このため、上述したような計測における感度(検出限界)が制限されてしまう。
【0006】
そこで、上記光学条件の時間的な変動の要因となる振動の発生を抑えるために、冷却ファンの代わりに振動を発生させない水冷ジャケット等を用いることも考えられる。しかし、この場合、冷却水を循環させるための装置が必要となるため、モジュール全体が大型化及び複雑化すると共に、保守点検コストも増大する。
【0007】
そこで、本開示の一側面は、冷却ファンを備えた構成において、光学条件の時間的な変動に起因する光学ノイズを低減することができる量子カスケードレーザモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面に係る量子カスケードレーザモジュールは、量子カスケードレーザ素子を収容し、量子カスケードレーザ素子から出射されたレーザ光を外部に取り出す窓材が設けられたパッケージと、窓材から出射されるレーザ光が入射するレンズを保持するレンズ保持部材と、パッケージを冷却する冷却ファンと、パッケージ、レンズ保持部材、及び冷却ファンを保持するベースと、を備え、パッケージ及びレンズ保持部材は、共通の軸部材によって、ベースに対して共締めされている。
【0009】
上記量子カスケードレーザモジュールは、パッケージを冷却するために冷却ファンを備えている。このような構成によれば、他の方式(例えば水冷方式)の冷却機構を設ける場合と比較して、モジュールの小型化及び簡素化を図ることができる。また、上記量子カスケードレーザモジュールでは、光源であるパッケージとレンズ保持部材とが、共通の軸部材によって、ベースに対して共締めされている。すなわち、パッケージ及びレンズ保持部材が、共通の軸部材によって、一体的に固定されている。これにより、冷却ファンの振動に起因する振動パターンが、パッケージとレンズ保持部材に保持されたレンズとの間で共通化される。その結果、パッケージとレンズとの相対的な位置関係の変動が抑制され、パッケージとレンズとの間の光学条件(例えば、ファブリペロ共振器長)の時間的な変動が抑制される。これにより、光学条件の時間的な変動に起因する光学ノイズを低減することができる。
【0010】
パッケージは、窓材がレンズに対向するように、ベースとレンズ保持部材との間に配置されてもよく、パッケージ及びレンズ保持部材は、レンズ保持部材がベースに対して締結されることにより、ベースに対して共締めされていてもよい。これにより、レンズ保持部材とベースとでパッケージを挟み込むようにして、レンズ保持部材及びパッケージをベースに対して一体的に固定することができる。
【0011】
レンズ保持部材とベースとの間に配置されるスペーサを更に備えてもよく、パッケージは、ベースに当接すると共にベースに沿って延在するフランジを有してもよく、スペーサがレンズ保持部材のベース側の面とフランジのレンズ保持部材側の面との間に配置されることにより、レンズ保持部材と窓材との間に隙間が形成されていてもよい。これにより、レンズ保持部材と窓材とが接触することで窓材に歪み(変形)が生じることを防止することができる。その結果、当該歪みに起因するレーザ光の劣化を抑制することができる。
【0012】
フランジは、窓材を挟んだ両側に形成された第1フランジ及び第2フランジを有してもよく、スペーサは、レンズ保持部材のベース側の面と第1フランジのレンズ保持部材側の面との間に配置された第1スペーサと、レンズ保持部材のベース側の面と第2フランジのレンズ保持部材側の面との間に配置された第2スペーサと、を有してもよい。このように、パッケージとレンズ保持部材との間に、一対のスペーサ(第1スペーサ及び第2スペーサ)をバランス良く配置することにより、パッケージ及びレンズ保持部材の物理的安定性を高めることができ、パッケージとレンズ保持部材との間の相対的な位置関係の変動を効果的に抑制することができる。
【0013】
レンズ保持部材、スペーサ、フランジ、及びベースの各々には、軸部材が挿通される挿通孔が形成されていてもよく、レンズ保持部材、スペーサ、フランジ、及びベースの各々の挿通孔に挿通された軸部材によってレンズ保持部材がベースに対して締結されることにより、レンズ保持部材、スペーサ、及びフランジが、ベースに対して共締めされていてもよい。この場合、軸部材をレンズ保持部材、スペーサ、及びフランジに貫通させてベースの挿通孔に挿通させることで、レンズ保持部材、スペーサ、及びフランジを、ベースに対して、一体的且つ強固に固定することができる。これにより、パッケージとレンズ保持部材との間の相対的な位置関係の変動を効果的に抑制することができる。
【0014】
レンズ保持部材及びベースの各々には、軸部材が挿通される挿通孔が形成されていてもよく、レンズ保持部材とベースとの間にスペーサ及びフランジが配置された状態で、レンズ保持部材及びベースの各々の挿通孔に挿通された軸部材によってレンズ保持部材がベースに対して締結されることにより、レンズ保持部材、スペーサ、及びフランジが、ベースに対して共締めされていてもよい。この場合、軸部材をレンズ保持部材に貫通させてベースの挿通孔に挿通させ、レンズ保持部材とベースとでこれらの間に配置されるスペーサ及びフランジを挟み込むことにより、レンズ保持部材、スペーサ、及びフランジを、ベースに対して、一体的且つ強固に固定することができる。これにより、パッケージとレンズ保持部材との間の相対的な位置関係の変動を効果的に抑制することができる。
【0015】
スペーサは、ベースよりも熱伝導率の低い材料によって形成されていてもよい。これにより、パッケージにおいて発生した熱をスペーサ側ではなくベース側に効率良く逃がすことができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の一側面によれば、冷却ファンを備えた構成において、光学条件の時間的な変動に起因する光学ノイズを低減することができる量子カスケードレーザモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係る量子カスケードレーザモジュールの斜視図である。
図2図1の量子カスケードレーザモジュールの分解斜視図である。
図3図1の量子カスケードレーザモジュールの上面図である。
図4図1の量子カスケードレーザモジュールの側面図である。
図5】変形例に係る量子カスケードレーザモジュールの一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0019】
[量子カスケードレーザモジュールの構成]
図1図4に示されるように、量子カスケードレーザモジュール1(以下、「QCLモジュール1」という。)は、主な構成要素として、光源であるパッケージ2と、パッケージ2から出射されるレーザ光が入射するレンズ3を保持するレンズ保持部材4と、パッケージ2を冷却する冷却ファン5と、パッケージ2、レンズ保持部材4、及び冷却ファン5を保持するベース6と、を有する。以降の説明において、パッケージ2から出射されるレーザ光の光軸方向をZ軸方向と表し、それぞれZ軸方向に直交し、互いに直交する2方向をX軸方向及びY軸方向と表す。
【0020】
パッケージ2は、高熱負荷(HHL:High Heat Load)パッケージ型の量子カスケードレーザ(QCL:Quantum Cascade Laser)である。パッケージ2は、例えば中赤外の波長領域(例えば5~30μmの波長)の光を発生させる量子カスケードレーザ素子(以下、「QCL素子」という。)を収容している。一例として、パッケージ2は、略直方体状に形成されている。パッケージ2は、Z軸方向における一方側の第1面21と、第1面21とは反対側の第2面22と、を有する。
【0021】
第1面21は、レンズ保持部材4に対向する面である。第1面21の略中央部には、QCL素子から出射されるレーザ光を外部に取り出すための窓材23が設けられている。窓材23の材料は、例えば、ジンクセレン(ZnSe)、ゲルマニウム(Ge)等である。第2面22は、ベース6に対向する面であり、ベース6に当接している。第2面22は、後述するフランジ24A,24Bの分だけ、第1面21よりも大きくされている。パッケージ2は、窓材23がレンズ3に対向するように、ベース6とレンズ保持部材4との間に配置されている。
【0022】
パッケージ2の第2面22側の縁部には、一対のフランジ24(フランジ24A,24B)が設けられている。フランジ24A(第1フランジ)及びフランジ24B(第2フランジ)は、パッケージ2のX軸方向における両端部に設けられている。より具体的には、X軸方向において、フランジ24A及びフランジ24Bは、互いに反対側に位置している。すなわち、フランジ24A及びフランジ24Bは、X軸方向において、窓材23を挟んだ両側に形成されている。フランジ24A及びフランジ24Bは、Y軸方向に沿って延在する矩形板状に形成されており、X軸方向に交差するパッケージ2の側面25からX軸方向に突出している。フランジ24A及びフランジ24Bの第2面22は、フランジ24A,24B以外の部分の第2面22と連続しており、ベース6(具体的には後述する底壁61)に当接すると共にベース6に沿って延在している。
【0023】
Y軸方向に交差するパッケージ2の一方の側面26には、パッケージ2内に収容されるQCL素子等の部品に外部から電力を供給するための複数(本実施形態では9本)のリードピン27が挿通されている。
【0024】
レンズ保持部材4は、パッケージ2の第1面21に対向する位置に配置されている。レンズ保持部材4は、複数の部品によって構成され得る。本実施形態では、レンズ保持部材4は、主に、サブベース41と、レンズホルダ42と、レンズシリンダ43と、レンズ押さえリング44と、レンズ保護リング45と、を有する。
【0025】
レンズホルダ42は、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに可動な十字動ホルダである。レンズホルダ42の中央部には、Z軸方向に貫通する開口部42aが設けられている。当該開口部42aにレンズシリンダ43が挿入されている。
【0026】
レンズシリンダ43は、レンズ3を収容する円筒状部材である。レンズシリンダ43の外周面には雄ネジが形成されている。一方、レンズホルダ42の開口部42aの内面には、上記雄ネジに対応する(すなわち、上記雄ネジに螺合される)雌ネジが形成されている。これにより、レンズシリンダ43を回しながらレンズホルダ42の開口部42aに挿入することが可能となっている。また、レンズホルダ42に対するレンズシリンダ43の回転量を調整することにより、Z軸方向におけるレンズホルダ42に対するレンズシリンダ43の位置(すなわち、挿入量)を調節することが可能となっている。これにより、Z軸方向におけるレンズ3の位置調整(すなわち、レンズ3を透過した後のレーザ光(ビーム)のフォーカス調整)を行うことが可能となっている。なお、レンズシリンダ43をレンズホルダ42に対して摺動させる際に抵抗がかかるように(すなわち、緩まないように)、レンズシリンダ43の勘合部にはOリングが配置されてもよい。
【0027】
レンズ3、レンズ押さえリング44、及びレンズ保護リング45は、この順にレンズシリンダ43内に格納されている。レンズ押さえリング44は、レンズ保護リング45を介して、レンズ3をレンズシリンダ43内の奥側に固定するための部材である。レンズ保護リング45は、レンズ3の表面にレンズ押さえリング44が接触することに起因するレンズ3の表面の損傷を防止するために、レンズ3とレンズ押さえリング44との間に配置される部材である。レンズ保護リング45は、例えば、テフロン(登録商標)等の樹脂材料によって形成されている。
【0028】
サブベース41は、レンズホルダ42とパッケージ2との間に配置される板状部材である。サブベース41は、レンズホルダ42に対向する第1面411と、第1面411とは反対側の面であってパッケージ2に対向する第2面412と、を有する。サブベース41の材料は、例えばアルミニウム等である。
【0029】
サブベース41の第1面411には、上述したレンズホルダ42が取り付けられている。より具体的には、Z軸方向から見たレンズホルダ42の四隅には、レンズホルダ42をサブベース41に対して固定するための支持ロッド46が挿通される挿通孔42bが設けられている。各挿通孔42bは、Z軸方向に延在している。各挿通孔42bを形成する壁部の一部には、挿通孔42bと連通する孔部が形成されており、レンズホルダ42に対して支持ロッド46を固定するための留めネジ47が当該孔部に挿入されている。支持ロッド46の先端部(サブベース41側の端部)は、サブベース41の第1面411に固定されている。一例として、各支持ロッド46の先端部にはネジ溝が形成されており、サブベース41の第1面411には、各支持ロッド46に対応する各位置に4つのネジ孔411aが形成されている。支持ロッド46の先端部がネジ孔411aに螺合されることにより、レンズホルダ42は、支持ロッド46を介してサブベース41に固定されている。このようにサブベース41とレンズホルダ42とが一体的に結合されることによって、レンズ保持部材4が構成されている。
【0030】
Z軸方向から見たサブベース41の中央部には、第1面411から第2面412にかけて貫通する円状の貫通孔413が形成されている。レンズシリンダ43の先端部は、貫通孔413内に挿通されており、第2面412よりもパッケージ2側に突出している(図3参照)。
【0031】
ベース6は、L字状に形成された板状部材である。ベース6は、パッケージ2の第2面22に対向する底壁61と、底壁61のY軸方向における一方側の端部からZ軸方向に沿って立設された側壁62と、を有する。ベース6の材料は、例えば、アルミニウム、銅等である。
【0032】
底壁61は、XY平面に平行に延在する矩形板状の部分である。底壁61は、パッケージ2に対向する第1面611と、第1面611とは反対側の面であって冷却ファン5に対向する第2面612と、を有する。すなわち、パッケージ2及びレンズ保持部材4は、底壁61の第1面611側に配置されており、冷却ファン5は、底壁61の第2面612側に配置されている。
【0033】
側壁62は、XZ平面に平行に延在する矩形板状の部分である。側壁62は、底壁61に対してパッケージ2が配置される側とは反対側に延びており、後述するヒートシンク7の側方を覆っている。本実施形態では一例として、側壁62には、QCLモジュール1を実験台等に固定するためのロッド部材が挿通される挿通孔621(QCLモジュールを固定対象物に固定するための固定部)と、挿通孔621と連通するザグリ孔622と、が形成されている。
【0034】
冷却ファン5は、パッケージ2において発生した熱(主にパッケージ2内のQCL素子から発生した熱)を強制空冷する機構である。冷却ファン5は、ヒートシンク7を介して、底壁61の第2面612に固定されている。ヒートシンク7は、第2面612に当接する平板部71と、平板部71の底壁61とは反対側の面に形成された複数の放熱フィン72(本実施形態では、格子状に配列された複数の棒状の部材)と、を有する。冷却ファン5を挟んでヒートシンク7とは反対側には、安全のため(すなわち、冷却ファン5内に人の指等が侵入することを防ぐため)のフィンガーガード8が配置されている。すなわち、底壁61の第2面612に近い側から、ヒートシンク7、冷却ファン5、及びフィンガーガード8がこの順に配置されている。
【0035】
ヒートシンク7、冷却ファン5、及びフィンガーガード8は、複数(本実施形態では4本)のネジ9によって、底壁61に対して共締めされている。より具体的には、Z軸方向から見たヒートシンク7(平板部71)、冷却ファン5、及びフィンガーガード8の各々の四隅には、ネジ9を挿通させるための挿通孔71a,5a,及び8aが設けられており、底壁61の第2面612には、ネジ孔612a(図3及び図4参照)が形成されている。各ネジ9が、ヒートシンク7の挿通孔71a、冷却ファン5の挿通孔5a、及びフィンガーガード8の挿通孔8aに挿通され、底壁61のネジ孔612aに螺合されることにより、ヒートシンク7、冷却ファン5、及びフィンガーガード8が、底壁61に対して一体的に固定されている。なお、パッケージ2から底壁61へと伝わった熱を効率良く放熱するために、パッケージ2の第2面22と底壁61の第1面611との間に、放熱グリスが塗布されてもよい。同様に、底壁61の第2面612とヒートシンク7の平板部71との間に、放熱グリスが塗布されてもよい。
【0036】
パッケージ2及びサブベース41(レンズ保持部材4)は、ベース6に対して共締めされている。本実施形態では、サブベース41とベース6との間にスペーサ10が配置されている。スペーサ10は、サブベース41の第2面412(ベース6側の面)とフランジ24の上面24a(サブベース41側の面)との間に配置される。より具体的には、スペーサ10は、フランジ24Aに対応するスペーサ10A(第1スペーサ)と、フランジ24Bに対応するスペーサ10B(第2スペーサ)と、を有する。すなわち、スペーサ10Aは、サブベース41の第2面412とフランジ24Aの上面24aとの間に配置されており、スペーサ10Bは、サブベース41の第2面412とフランジ24Bの上面24aとの間に配置されている。つまり、スペーサ10A及びスペーサ10Bは、X軸方向において、窓材23を挟んだ両側に配置されている。スペーサ10A,10Bの各々は、矩形板状に形成されている。より具体的には、各スペーサ10A,10Bは、Y軸方向(すなわち、窓材23を挟んでスペーサ10A,10Bが対向する方向(X軸方向)及びZ軸方向と交差する方向)に延在する長尺状の部材(すなわち、Y軸方向に沿って一定の幅を有する部材)である。このようにスペーサ10A,10Bが長尺状に形成されていることにより、スペーサ10A,10Bを介して、レンズ保持部材4とパッケージ2とをベース6に対してより安定的に共締めすることができる。スペーサ10は、ベース6よりも熱伝導率の低い材料によって形成されている。スペーサ10の材料は、例えば、ステンレス、ニッケル等である。これにより、パッケージ2において発生した熱をスペーサ10側ではなく底壁61側に効率良く逃がすことができる。
【0037】
スペーサ10の高さ(Z軸方向における長さ)は、パッケージ2の高さ(Z軸方向における長さ)とフランジ24の高さ(Z軸方向における長さ)との差よりも大きくされている。すなわち、スペーサ10がフランジ24の上面24aに当接した状態において、スペーサ10のサブベース41側の端部10aは、パッケージ2の第1面21よりもサブベース41側に突出している。このようにスペーサ10の高さが設定されていることにより、サブベース41とパッケージ2の第1面21及び窓材23との間に隙間S(図3参照)が形成されている。これにより、レンズ保持部材4と窓材23とが接触すること(すなわち、レンズ保持部材4が窓材23に押し付けられること)によって窓材23に歪み(変形)が生じることを防止することができ、その結果、当該歪みに起因するレーザ光(窓材23から出射されるレーザ光)の劣化を抑制することができる。また、本実施形態のように、レンズシリンダ43の先端部が貫通孔413(図2参照)を貫通してパッケージ2側に多少突出する場合であっても、スペーサ10の高さを調整して隙間Sの大きさを調整することで、レンズシリンダ43の先端部が窓材23に接触することを防止することができる。
【0038】
サブベース41、スペーサ10、及びフランジ24は、複数(本実施形態では4本)のネジ部材11(軸部材)によって、底壁61に対して共締めされている。ネジ部材11は、例えば六角ボルト等である。より具体的には、Z軸方向から見たサブベース41、スペーサ10、フランジ24、及び底壁61の各々の四隅には、ネジ部材11が挿通される挿通孔41a,10b,24b,61aが形成されている。スペーサ10A,10Bの各々のY軸方向における両側縁部に、2つの挿通孔10bが設けられている。フランジ24A,24Bの各々のY軸方向における両側縁部に、2つの挿通孔24bが設けられている。底壁61の挿通孔61aは、第1面611に開口しており、ネジ溝が形成されたネジ孔である。また、サブベース41の第1面411には、ネジ部材11の頭部11aを収容するためのザグリ溝41bが、挿通孔41aと連通するように設けられている。そして、各ネジ部材11が、サブベース41の第1面411側から、サブベース41の挿通孔41a、スペーサ10の挿通孔10b、及びフランジ24の挿通孔24bに挿通され、底壁61の挿通孔61aに螺合されている。これにより、レンズ保持部材4(サブベース41)が、スペーサ10及びフランジ24を介して、ベース6(底壁61)に対して締結されている。
【0039】
[作用及び効果]
以上説明したQCLモジュール1は、パッケージ2を冷却するために冷却ファン5を備えている。このような構成によれば、他の方式(例えば水冷方式)の冷却機構を設ける場合と比較して、モジュールの小型化及び簡素化を図ることができる。また、QCLモジュール1では、光源であるパッケージ2とレンズ保持部材4(サブベース41)とが、共通のネジ部材11(本実施形態では、4本のネジ部材11)によって、ベース6(底壁61)に対して共締めされている。すなわち、パッケージ2及びレンズ保持部材4が、共通のネジ部材11によって、一体的に固定されている。これにより、冷却ファン5の振動に起因する振動パターンが、パッケージ2とレンズ保持部材4に保持されたレンズ3との間で共通化される。その結果、パッケージ2とレンズ3との相対的な位置関係の変動が抑制され、パッケージ2とレンズ3との間の光学条件(例えば、ファブリペロ共振器長)の時間的な変動が抑制される。これにより、光学条件の時間的な変動に起因する光学ノイズを低減することができる。
【0040】
上記効果について、QCLモジュール1を用いたガス濃度計測を行う場合を例に挙げて具体的に説明する。このようなガス濃度計測においては、例えば、QCLモジュール1とフォトディテクタ等の光検出器とが用意され、QCLモジュール1と光検出器との間に計測対象のガスが封入されたガスセルが配置される。そして、QCLモジュール1から出射されたレーザ光(すなわち、パッケージ2の窓材23から出射され、レンズ3を通過したレーザ光)がガスセル内を通過し、ガスセル内を通過した後のレーザ光が光検出器で検出される。これにより、ガスセル内のガスの濃度(レーザ光の吸光度)を計測することができる。QCLは、優れた単色性(すなわち、優れた波長分解能)を有するため、上述したガス濃度計測等に好適に用いられる。しかし、QCLが優れた単色性を有するが故に、エタロン効果によるフリンジノイズが原理的に発生する。このフリンジノイズは、パッケージ2内のQCL素子と光検出器との間に配置されるレンズ3及び窓材23等の光学素子が有限の反射率を持つこと、すなわちレーザ光の光路中に光学的な反射界面が存在することに起因する。このような反射界面とQCL素子の放射端面とによってファブリペロ共振器が形成され、光の干渉によってフリンジノイズが発生する。このフリンジノイズ(すなわち、ファブリペロ干渉条件)は、ファブリペロ共振器長が変化しなければ一定となるため、上記フリンジノイズを不変量として扱うことができる。すなわち、上記フリンジノイズは、バックグラウンド演算(差分演算)によって除去され得る。一方、ファブリペロ共振器長が時間的に変動すると、ファブリペロ干渉条件も時間的に変動してしまうため、上記フリンジノイズを不変量として扱うことができなくなる。その結果、上述したバックグラウンド演算によってフリンジノイズを除去することができなくなる。また、QCLモジュール1を用いたガス濃度計測においては、レーザの発振波長を時間的に変化させる波長可変半導体レーザ吸収分光法(TDLAS:Tunable diode laser absorption spectroscopy)が広く用いられている。このような計測手法を用いる場合には、レーザの発振波長の変化に起因するファブリペロ干渉条件の変動成分も上記フリンジノイズに重畳されてしまうため、極めて複雑な光学ノイズが発生してしまう。このような光学ノイズは、上述したようなガス濃度計測の検出限界を制限する要因となる。
【0041】
ここで、レンズ保持部材がパッケージと共にベースに共締めされておらず、パッケージとは別個にベースに固定される構成を有する比較例について考える。例えば、ベースの底壁にレンズ保持部材側に延びる板状部を設け、レンズ保持部材を当該板状部に対してパッケージとは独立して固定する構成が考えられる。このような構成を有する比較例では、冷却ファンからの振動の伝わり方が、パッケージとレンズ保持部材との間で異なってしまう。より具体的には、上記比較例では、パッケージが、冷却ファンが固定されたベースの底壁に対して固定されるのに対して、レンズ保持部材は、底壁とは異なる板状部に固定される。このため、レンズ保持部材に保持されたレンズの振動周波数は、板状部の機械的な振動共振の影響を受けるため、QCL(すなわち、パッケージ)の振動と同位相とならない。その結果、QCLとレンズとの間の距離(光路長)が時間的に変動することになり、QCLとレンズとの間のファブリペロ共振条件(すなわち、ファブリペロ共振器長)が時間的に変動することになる。その結果、上述したように、上記フリンジノイズを不変量として扱うことができなくなるため、上記フリンジノイズは、光検出器において、複雑な光学ノイズ構造として検出されることになる。
【0042】
また、QCLの振動とレンズの振動とが同位相にならず、QCLとレンズとの位置関係(光路長)が時間的に変動する場合、レンズを透過した後のレーザ光のXY平面(光軸方向であるZ軸方向に直交する平面)における偏向量が増幅されてしまう。このため、光検出器(受光部)において、レーザ光が照射されるスポット位置が時間的に変動することになる。このため、上記比較例においては、このようなスポット位置の変動に起因する光検出器の出力値の変動成分も光学ノイズとして発生し得る。
【0043】
一方、上記実施形態で説明したQCLモジュール1では、レンズ保持部材4は、パッケージ2と一体的に、ベース6(底壁61)に対して強固に固定(共締め)されている。このため、QCL(パッケージ2)の振動とレンズ保持部材4に保持されたレンズ3の振動とは同位相となるため、上述したファブリペロ共振条件は時間的に変動しない。その結果、上記フリンジノイズを不変量として扱い、バックグラウンド演算等によって除去することが可能となるため、光学ノイズを低減することが可能となる。また、QCL(パッケージ2)とレンズ3との位置関係(光路長)が時間的に変動しない(一定となる)ため、レンズ3を透過した後のレーザ光のXY平面における偏向量は増幅されない。これにより、上記比較例において発生し得る光検出器のスポット位置の変動に起因する光学ノイズの発生を抑制することもできる。
【0044】
また、パッケージ2は、窓材23がレンズ3に対向するように、ベース6(底壁61)とレンズ保持部材4(サブベース41)との間に配置されている。そして、パッケージ2及びレンズ保持部材4は、レンズ保持部材4がベース6に対して締結されることにより、ベース6に対して共締めされている。これにより、レンズ保持部材4とベース6とでパッケージ2を挟み込むようにして、レンズ保持部材4及びパッケージ2をベース6に対して一体的に固定することができる。
【0045】
また、QCLモジュール1は、レンズ保持部材4とベース6との間に配置されるスペーサ10を備えている。パッケージ2は、ベース6に当接すると共にベース6に沿って延在するフランジ24を有する。そして、スペーサ10がレンズ保持部材4のベース6側の面(本実施形態では、サブベース41の第2面412)とフランジ24のレンズ保持部材4側の上面24aとの間に配置されることにより、レンズ保持部材4と窓材23との間に隙間Sが形成されている。これにより、レンズ保持部材4と窓材23とが接触することで窓材23に歪み(変形)が生じることを防止することができる。その結果、当該歪みに起因するレーザ光の劣化を抑制することができる。
【0046】
また、フランジ24は、窓材23を挟んだ両側に形成されたフランジ24A及びフランジ24Bを有する。スペーサ10は、サブベース41の第2面412とフランジ24Aの上面24aとの間に配置されたスペーサ10Aと、サブベース41の第2面412とフランジ24Bの上面24aとの間に配置されたスペーサ10Bと、を有する。このように、パッケージ2とレンズ保持部材4との間に、一対のスペーサ10A,10Bをバランス良く配置することにより、パッケージ2及びレンズ保持部材4の物理的安定性を高めることができ、パッケージ2とレンズ保持部材4との間の相対的な位置関係(すなわち、QCLとレンズ3との位置関係)の変動を効果的に抑制することができる。また、本実施形態では、1つのスペーサ10(スペーサ10A又はスペーサ10B)に対して、複数(本実施形態では2本)のネジ部材11が挿通される。このように、複数のネジ部材11が共通のスペーサ10に挿通されることにより、レンズ保持部材4とパッケージ2とを、スペーサ10を介してベース6に対してより安定的に共締めすることができる。
【0047】
また、レンズ保持部材4(本実施形態では、サブベース41)、スペーサ10、フランジ24、及びベース6(本実施形態では、底壁61)の各々には、ネジ部材11が挿通される挿通孔41a,10b,24b,61aが形成されている。そして、レンズ保持部材4、スペーサ10、フランジ24、及びベース6の各々の挿通孔41a,10b,24b,61aに挿通されたネジ部材11によってレンズ保持部材4がベース6に対して締結されることにより、レンズ保持部材4、スペーサ10、及びフランジ24が、ベース6に対して共締めされている。この場合、共通のネジ部材11をレンズ保持部材4、スペーサ10、及びフランジ24に貫通させてベース6の挿通孔61aに挿通させることで、レンズ保持部材4、スペーサ10、及びフランジ24を、ベース6に対して、一体的且つ強固に固定することができる。これにより、パッケージ2とレンズ保持部材4との間の相対的な位置関係の変動を効果的に抑制することができる。
【0048】
[変形例]
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限られない。各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。例えば、上記実施形態では、共締めの形態として、ネジ部材11がベース6の底壁61に設けられた挿通孔61a(ネジ孔)にネジ留めされる形態を例示したが、ネジ部材11は、ナットと勘合されてもよい。例えば、底壁61に第1面611から第2面612にかけて貫通する貫通孔を設け、ネジ部材11(ボルト)を当該貫通孔に挿通させ、第2面612側に配置したナットを当該ネジ部材11の先端部と勘合させることで、パッケージ2及びレンズ保持部材4をベース6に対して共締めしてもよい。これは、冷却ファン5を底壁61に対して固定するネジ9についても同様である。
【0049】
また、上記実施形態では、レンズ保持部材4は、サブベース41とレンズホルダ42とを組み合わせることで形成されたが、サブベース41は省略されてもよい。例えば、レンズホルダ42自体にネジ部材11を挿通させる挿通孔を設け、レンズホルダ42、スペーサ10、及びフランジ24が、ベース6に対して共締めされてもよい。
【0050】
また、ベース6は、側壁62を有さなくてもよい。この場合、QCLモジュールを固定対象物に固定するための固定部(例えば、上述したロッド部材が挿通される挿通孔)は、底壁61に設けられてもよい。さらに、この場合、固定部を設けるための領域を確保するために、ベース6は、上記実施形態で示した底壁61よりも大きい底壁(例えば、上述した底壁61よりも幅広とされた底壁)を備えてもよい。
【0051】
また、図5に示される変形例に係るQCLモジュール1Aのように、共通のネジ部材11は、スペーサ及びフランジを貫通していなくてもよい。QCLモジュール1Aは、パッケージ2の代わりにパッケージ2Aを有し、レンズ保持部材4の代わりにレンズ保持部材4Aを有し、ベース6の代わりにベース6Aを有し、スペーサ10の代わりにスペーサ110を有する点において、QCLモジュール1と相違している。図5においては、冷却ファン5及びヒートシンク7を簡略的に示すと共に、レンズ保持部材4Aのサブベース141(サブベース41に対応する要素)以外の要素(すなわち、レンズホルダ42、レンズシリンダ43等)の図示を省略している。
【0052】
パッケージ2Aは、フランジ24(フランジ24A,24B)の代わりにフランジ124(フランジ124A,124B)を有する点において、パッケージ2と相違している。フランジ124は、挿通孔24bを有していない点において、フランジ24と相違している。
【0053】
レンズ保持部材4Aは、サブベース41の代わりにサブベース141を有する点において、レンズ保持部材4と相違している。サブベース141は、サブベース41と同様に、ネジ部材11を挿通させるための挿通孔141a及びザグリ溝141bを有している。一方、サブベース141は、X軸方向における幅がサブベース41よりも若干大きくされている点において、サブベース41と相違している。また、挿通孔141a及びザグリ溝141bのX軸方向における位置は、サブベース41における挿通孔41a及びザグリ溝41bのX軸方向における位置よりも外側にある。
【0054】
ベース6Aは、底壁61の代わりに底壁161を有する点において、ベース6と相違している。底壁161は、底壁61と同様に、第1面161a、第2面161b、及び挿通孔161cを有している。一方、底壁161は、X軸方向における幅が底壁61よりも若干大きくされている点において、底壁61と相違している。また、挿通孔161cのX軸方向における位置は、底壁61における挿通孔61aのX軸方向における位置よりも外側にある。具体的には、挿通孔161cは、X軸方向において、スペーサ110及びフランジ124よりも外側に位置している。
【0055】
スペーサ110(スペーサ110A,110B)は、挿通孔10bを有していない点において、スペーサ10(スペーサ10A,10B)と相違している。
【0056】
QCLモジュール1Aでは、サブベース141(レンズ保持部材4A)及び底壁161(ベース6A)の各々には、ネジ部材11が挿通される挿通孔141a,161cが形成されている。そして、サブベース141と底壁161との間にスペーサ110及びフランジ124が配置された状態で、サブベース141及び底壁161の各々の挿通孔141a,161cに挿通されたネジ部材11によってサブベース141が底壁161に対して締結されることにより、レンズ保持部材4A、スペーサ110、及びフランジ124が、ベース6Aに対して共締めされている。この場合、ネジ部材11をレンズ保持部材4Aに貫通させてベース6Aの挿通孔161cに挿通させ、レンズ保持部材4Aとベース6Aとでこれらの間に配置されるスペーサ110及びフランジ124を挟み込むことにより(言い換えれば、万力のようにスペーサ110及びフランジ124をZ軸方向における両側から押圧することにより)、レンズ保持部材4A、スペーサ110、及びフランジ124を、ベース6Aに対して、一体的且つ強固に固定することができる。これにより、パッケージ2Aとレンズ保持部材4Aとの間の相対的な位置関係の変動を効果的に抑制することができる。また、QCLモジュール1Aによれば、スペーサ110及びフランジ124に挿通孔を設ける必要がない。一方で、QCLモジュール1Aでは、ネジ部材11のX軸方向における位置がQCLモジュール1よりも外側となるため、モジュールのX軸方向における幅寸法を小型化する観点からは、QCLモジュール1AよりもQCLモジュール1の方が有利である。
【符号の説明】
【0057】
1,1A…量子カスケードレーザモジュール、2,2A…パッケージ、3…レンズ、4,4A…レンズ保持部材、5…冷却ファン、6,6A…ベース、10,110A…スペーサ、10A,110A…スペーサ(第1スペーサ)、10B,110B…スペーサ(第2スペーサ)、11…ネジ部材(軸部材)、23…窓材、24,124…フランジ、24A,124A…フランジ(第1フランジ)、24B,124B…フランジ(第2フランジ)、S…隙間。
図1
図2
図3
図4
図5