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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048632
(43)【公開日】2022-03-28
(54)【発明の名称】抗カビ成形品
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/02 20060101AFI20220318BHJP
【FI】
C08G64/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154549
(22)【出願日】2020-09-15
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】今里 健太
(72)【発明者】
【氏名】武田 強
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA09
4J029AB07
4J029AD01
4J029AD07
4J029AE01
4J029BD10
4J029BF25
4J029HA01
4J029HC05A
4J029JF161
4J029KE05
(57)【要約】
【課題】抗カビ性、透明性、耐熱性および成形性に優れたポリカーボネート樹脂からなる抗カビ成形品を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される構成単位を含み、ガラス転移温度が40℃以上、150℃以下であるポリカーボネート樹脂から成形されることを特徴とする抗カビ成形品。
【化1】
(式(1)において、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~4の脂肪族炭化水素を表す。mは1~4、nは2~150である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構成単位を含み、ガラス転移温度が40℃以上、150℃以下であるポリカーボネート樹脂から成形されることを特徴とする抗カビ成形品。
【化1】
(式(1)において、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~4の脂肪族炭化水素を表す。mは1~4、nは2~150である。)
【請求項2】
ポリカーボネート樹脂は、下記式(2)で表される構成単位を更に含むポリカーボネート樹脂である請求項1に記載の抗カビ成形品。
【化2】
【請求項3】
全構成単位100重量%に対して、前記式(1)で表される構成単位を1重量%以上、80重量%以下の割合で含む、請求項1または2に記載の抗カビ成形品。
【請求項4】
ポリカーボネート樹脂は、比粘度が0.15以上、1.5以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の抗カビ成形品。
【請求項5】
水接触角が60°以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の抗カビ成形品。
【請求項6】
前記式(1)で表される構成単位が、下記式(3)で表される構成単位である請求項1~5のいずれか1項に記載の抗カビ成形品。
【化3】
(式(3)において、Rは水素原子またはメチル基を表す。nは2~150である。)
【請求項7】
抗カビ成形品は、屋外照明用カバーやスマートメーターカバーなどの屋外設備用カバー、台所、風呂、トイレなどの水周りで使用される部材や住宅設備、冷蔵庫、エアコンなどの家電、ATM(現金自動預け払い機)、POS端末、携帯電話、スマートフォン、パソコン、タブレット、包装材、壁紙、フィルター、スイッチ、日用品・生活用資材、衛生材、衣料品、車両用の防カビ成形品である請求項1~6のいずれか1項に記載の抗カビ成形品。
【請求項8】
抗カビ成形品を構成する部材の形状が、多孔質体、繊維、不織布、粒子、フィルム、シート、チューブまたは粉末である請求項1~7のいずれか1項に記載の抗カビ成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗カビ成形品に関する。さらに詳しくは特定の構造を含有したポリカーボネート樹脂からなる抗カビ成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衛生面や清潔志向の観点より、屋外設備用カバー、台所、風呂、トイレなどの水周りで使用される部材や住宅設備、冷蔵庫、エアコンなどの家電、医療機器、コンビ二エンスストアなどに設置されているATM(現金自動預け払い機)、POS端末、携帯電話、スマートフォンなどの外装に抗カビ性能を付与した材料が要求されている。素材に抗カビ性を付与する処方は、従来、様々な手法を用いて行われてきた。例えば、製造工程中に活性のある抗カビ物質を混合練り込むことによって製造する方法が一例として挙げられる。その中で、ポリカーボネート樹脂は、優れた耐熱性や耐衝撃性を有することから、電子機器、事務機、機械、自動車などに幅広く使用されてきた。ポリカーボネート(PC)樹脂に抗カビ性を付与する方法としては、メチルスルホニルテトラクロルピリジンを添加する方法(特許文献1)などが提案されている。しかし、これらの方法では高価な抗カビ剤を使用するため、一定の抗カビ性能を示すもののコスト高になるといった問題や使用中にブリードアウトし、抗カビ効果が徐々に損なわれる場合があった。
【0003】
他方、近年、石油資源の枯渇の懸念や、地球温暖化を引き起こす空気中の二酸化炭素の増加の問題から、原料を石油に依存せず、また燃焼させても二酸化炭素を増加させないカーボンニュートラルが成り立つバイオマス資源が大きく注目を集めるようになり、ポリマーの分野においても、バイオマス資源から生産されるバイオマスプラスチックが盛んに開発されている。バイオマス資源を原料として使用し、かつ耐熱性が高い非晶性のポリカーボネート樹脂として、糖質から製造可能なエーテルジオール残基から得られる原料を用いたポリカーボネート樹脂が検討されている。特に、モノマーとしてイソソルビドを中心に用いてポリカーボネートに組み込むことが検討されてきた(特許文献2)。しかしながら、イソソルビドポリカーボネートにおける抗カビ性について、述べられた報告例はこれまで無かった。また、ポリエチレングリコールを原料としたPCも各種報告されているが、抗カビ性の改良を指向したものでなかった(特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-24886号公報
【特許文献2】国際公開第2004/111106号
【特許文献3】特開2011-241277号公報
【特許文献4】特表2002-522584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、抗カビ性、透明性、耐熱性および成形性に優れたポリカーボネート樹脂からなる抗カビ成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の構造を含有し、特定の範囲にTgを有するポリカーボネート樹脂が、抗カビ性、透明性、耐熱性および成形性に優れることを見出し、本発明を完成した。本発明によれば、上記課題は下記発明により解決される。
【0007】
1.下記式(1)で表される構成単位を含み、ガラス転移温度が40℃以上、150℃以下であるポリカーボネート樹脂から成形されることを特徴とする抗カビ成形品。
【0008】
【化1】
【0009】
(式(1)において、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~4の脂肪族炭化水素を表す。mは1~4、nは2~150である。)
【0010】
2.ポリカーボネート樹脂は、下記式(2)で表される構成単位を更に含むポリカーボネート樹脂である前項1に記載の抗カビ成形品。
【0011】
【化2】
【0012】
3.全構成単位100重量%に対して、前記式(1)で表される構成単位を1重量%以上、80重量%以下の割合で含む、前項1または2に記載の抗カビ成形品。
【0013】
4.ポリカーボネート樹脂は、比粘度が0.15以上、1.5以下である前項1~3のいずれか1項に記載の抗カビ成形品。
【0014】
5.水接触角が60°以下である前項1~4のいずれか1項に記載の抗カビ成形品。
【0015】
6.前記式(1)で表される構成単位が下記式(3)で表される構成単位である前項1~5のいずれか1項に記載の抗カビ成形品。
【0016】
【化3】
【0017】
(式(3)において、Rは水素原子またはメチル基を表す。nは2~150である。)
【0018】
7.抗カビ成形品は、屋外照明用カバーやスマートメーターカバーなどの屋外設備用カバー、台所、風呂、トイレなどの水周りで使用される部材や住宅設備、冷蔵庫、エアコンなどの家電、ATM(現金自動預け払い機)、POS端末、携帯電話、スマートフォン、パソコン、タブレット、包装材、壁紙、フィルター、スイッチ、日用品・生活用資材、衛生材、衣料品、車両用の抗カビ成形品である前項1~6のいずれか1項に記載の抗カビ成形品。
【0019】
8.抗カビ成形品を構成する部材の形状が、多孔質体、繊維、不織布、粒子、フィルム、シート、チューブまたは粉末である前項1~7のいずれか1項に記載の抗カビ成形品。
【発明の効果】
【0020】
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、抗カビ性、透明性、耐熱性および成形性に優れているため、屋外照明用カバーやスマートメーターカバーなどの屋外設備用カバー、台所、風呂、トイレなどの水周りで使用される部材や住宅設備、冷蔵庫、エアコンなどの家電、医療機器、コンビ二エンスストアなどに設置されているATM(現金自動預け払い機)、POS端末、携帯電話、スマートフォン、パソコン、タブレット、各種包装材、壁紙、各種フィルター、各種スイッチ、日用品・生活用資材、衛生材、衣料品、車両関連の各種プラスチック部品をはじめとする様々な用途に幅広く用いることができ、その奏する産業上の効果は格別である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明で使用されるポリカーボネート樹脂における各成分、それらの配合割合、調整方法等について、順次具体的に説明する。
【0022】
<ポリカーボネート樹脂>
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、下記式(1)で表される構成単位を含有する。
【0023】
【化4】
【0024】
式(1)中のmは1~4、nは2~150であり、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~4の脂肪族炭化水素を表す。中でも、mは2~4であるものが好ましく、特には2のものが好ましい。また、重合度nは好ましくは2~100であり、より好ましくは2~50であり、特に好ましくは2~35である。
【0025】
式(1)中の繰り返し単位は通常、ポリオキシアルキレングリコールから誘導される。用いるポリオキシアルキレングリコールの数平均分子量としては好ましくは100~20000、より好ましくは100~5000、特に好ましくは200~2000である。この範囲であると、柔軟性、耐熱性、抗カビ性のバランスに優れ、この範囲から外れた場合、透明性が得られない場合や水溶性となり成形品として使用ができない場合がある。
【0026】
ポリオキシアルキレングリコールとしてより具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどがあげられる。
【0027】
特に、下記式(3)で表されるポリオキシアルキレングリコール、すなわちポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールが好適に用いられる。
【0028】
【化5】
【0029】
式(3)中のnは2~150であり、Rは水素原子またはメチル基を表す。式(1)または(3)で表される構成単位の含有割合は、全構成単位100重量%に対して、好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは5重量%以上であり、さらに好ましくは10重量%以上であり、特に好ましくは15重量%以上である。含有割合の上限は好ましくは80重量%以下であり、より好ましくは70重量%以下であり、さらに好ましくは50重量%以下であり、特に好ましくは30重量%以下である。このような重量比とすることで、抗カビ性、耐熱性、成形性のバランスに優れ、好ましい。重量比は、日本電子社製JNM-AL400のプロトンNMRにて測定し算出することができる。
【0030】
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、式(2)で表される構成単位を更に含有することが好ましい。
【0031】
【化6】
【0032】
前記式(2)は、立体異性体の関係にある下記式で表される構成単位(2-1)、(2-2)および(2-3)が例示される。
【0033】
【化7】
【0034】
【化8】
【0035】
【化9】
【0036】
これらは、糖質由来のエーテルジオールであり、自然界のバイオマスからも得られる物質で、再生可能資源と呼ばれるものの1つである。構成単位(2-1)、(2-2)および(2-3)は、それぞれイソソルビド、イソマンニド、イソイディッドと呼ばれる。イソソルビドは、でんぷんから得られるDーグルコースに水添した後、脱水を受けさせることにより得られる。その他のエーテルジオールについても、出発物質を除いて同様の反応により得られる。
【0037】
イソソルビド、イソマンニド、イソイディッドのなかでも特に、イソソルビド(1,4;3,6ージアンヒドローDーソルビトール)から誘導される構成単位は、製造の容易さ、耐熱性に優れることから好ましい。
【0038】
前記式(2)で表される構成単位の含有割合は、全構成単位100重量%に対して、好ましくは20重量%以上であり、より好ましくは30重量%以上であり、さらに好ましくは40重量%以上であり、特に好ましくは50重量%以上であり、もっとも好ましくは70重量%以上である。含有割合の上限は好ましくは99重量%以下であり、より好ましくは95重量%以下であり、さらに好ましくは92重量%以下であり、特に好ましくは90重量%以下である。このような重量比とすることで、抗カビ性、耐熱性、成形性、バイオマス度のバランスに優れ、好ましい。重量比は、日本電子社製JNM-AL400のプロトンNMRにて測定し算出することができる。
【0039】
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、前記式(1)および前記式(2)で表される構成単位以外の各種ジオール化合物から誘導される他の構成単位を含有していてもよい。他の構成単位の含有割合は、全構成単位100重量%に対して、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは20重量%以下であり、さらに好ましくは10重量%以下であり、特に好ましくは5重量%以下である。かかるジオール化合物(ジオールモノマー)としては、脂肪族ジオール化合物、脂環式ジオール化合物、芳香族ジヒドロキシ化合物のいずれでも良く、国際公開第2004/111106号パンフレット、国際公開第2011/021720号パンフレットに記載のジオール化合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、または二種以上組み合わせて用いてもよい。以下にジオール成分の代表的具体例を示すが、それらによって限定されるものではない。
【0040】
前記脂肪族ジオール化合物としては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1.9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサングリコール、1,2-オクチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,3-ジイソブチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジイソアミル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられる。
【0041】
前記脂環式ジオール化合物としては、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2,2,4,4-テトラメチルシクロブタンジオール、1,1’-スピロビインダン-6,6’-ジオール、デカリン-2,6-ジメタノール、ノルボルナンジメタノール、シクロペンタン-1,3-ジメタノール、などが挙げられる。
【0042】
前記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン(ビスフェノールM)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド、ビスフェノールA、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(ビスフェノールAF)、ビフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-4,5-ジフェニルフルオレン、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-7,7’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ジメチル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジメチル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-7,7’-ジメチル-1,1’-ビナフチル、1,1’-ビ-2-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。
【0043】
(ポリカーボネート樹脂の製造方法)
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えばジオール成分に炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
【0044】
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合のジオール成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点などにより異なるが、通常120~300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また、必要に応じて末端停止剤、酸化防止剤等を加えてもよい。
【0045】
前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、置換されてもよい炭素数6~12のアリール基、アラルキル基等のエステルが挙げられる。具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネートおよびm-クレジルカーボネート等が例示される。なかでもジフェニルカーボネートが特に好ましい。ジフェニルカーボネートの使用量は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、好ましくは0.97~1.10モル、より好ましくは1.00~1.06モルである。
【0046】
また溶融重合法においては重合速度を速めるために、重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、含窒素化合物、金属化合物等が挙げられる。
【0047】
このような化合物としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の、有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物、アルコキシド、4級アンモニウムヒドロキシド等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0048】
アルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が例示される。
【0049】
アルカリ土類金属化合物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、二酢酸マグネシウム、二酢酸カルシウム、二酢酸ストロンチウム、二酢酸バリウム、ステアリン酸バリウム等が例示される。
【0050】
含窒素化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類が挙げられる。また、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類が挙げられる。また、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基あるいは塩基性塩等が例示される。
【0051】
金属化合物としては亜鉛アルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、有機スズ化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物等が例示される。これらの化合物は1種または2種以上併用してもよい。
【0052】
これらの重合触媒の使用量は、ジオール成分1モルに対し好ましくは1×10-9~1×10-2当量、好ましくは1×10-8~1×10-5当量、より好ましくは1×10-7~1×10-3当量の範囲で選ばれる。
【0053】
また、反応後期に触媒失活剤を添加することもできる。使用する触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤が有効に使用されるが、この中でもスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。更にドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸の塩類、パラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸の塩類が好ましい。
【0054】
またスルホン酸のエステルとして、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が好ましく用いられる。なかでも、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が最も好ましく使用される。
【0055】
これらの触媒失活剤の使用量はアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた少なくとも1種の重合触媒を用いた場合、その触媒1モル当たり好ましくは0.5~50モルの割合で、より好ましくは0.5~10モルの割合で、更に好ましくは0.8~5モルの割合で使用することができる。
【0056】
(比粘度:ηSP
ポリカーボネート樹脂の比粘度(ηSP)は、下限が好ましくは0.15以上であり、より好ましくは0.2以上であり、さらに好ましくは0.25以上であり、特に好ましくは0.3以上である。また、上限が好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1.0以下であり、さらに好ましくは0.8以下であり、特に好ましくは0.6以下であり、も
っとも好ましくは0.5以下である。比粘度が上記範囲では成形品の強度及び成形加工性が良好となる。
【0057】
本発明でいう比粘度は、20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求められる。
比粘度(ηSP)=(t-t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
なお、具体的な比粘度の測定としては、例えば次の要領で行うことができる。まず、ポリカーボネート樹脂をその20~30倍重量の塩化メチレンに溶解し、可溶分をセライト濾過により採取した後、溶液を除去して十分に乾燥し、塩化メチレン可溶分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から20℃における比粘度を、オストワルド粘度計を用いて求める。
【0058】
(ガラス転移温度:Tg)
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は、上限が150℃以下であり、好ましくは140℃以下であり、より好ましくは130℃以下であり、さらに好ましくは125℃以下であり、特に好ましくは120℃以下である。また、下限が40℃以上であり、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは60℃以上であり、さらに好ましくは65℃以上であり、特に好ましくは70℃以上である。Tgが上記範囲内であると、成形性が良好であり好ましく、また抗カビ材料を使用する環境においてより好適なものとなる。
【0059】
ガラス転移温度(Tg)はティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製2910型DSCを使用し、昇温速度20℃/minにて測定される。
【0060】
(5%重量減少温度:Td)
ポリカーボネート樹脂の5%重量減少温度の下限は、好ましくは280℃であり、より好ましくは300℃であり、さらに好ましくは330℃であり、特に好ましくは350℃である。また5%重量減少温度の上限は、好ましくは400℃であり、より好ましくは390℃であり、さらに好ましくは380℃である。従って、ポリカーボネート樹脂(A成分)の5%重量減少温度(Td)は好ましくは280~400℃である。5%重量減少温度が上記範囲内であると、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を用いて成形する際の樹脂の分解がほとんど無く好ましい。5%重量減少温度はTA Instruments社製 TGA (型式 TGA2950)により測定する。
【0061】
(水接触角)
本発明のポリカーボネート樹脂から成形される抗カビ成形品の水接触角は、好ましくは60°以下であり、より好ましくは58°以下であり、さらに好ましくは56°以下である。水接触角が60°以下であると表面が十分に親水化し、抗カビ性の発現に好ましい。
【0062】
(全光線透過率)
本発明のポリカーボネート樹脂から成形される抗カビ成形品は、その厚み2mm部における全光線透過率が好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは88%以上であり、特に好ましくは90%以上である。全光線透過率が上記範囲であると、透明性に優れるため、成形品内部の視認性に優れるため特に有用である。
【0063】
本発明に関連して用いる用語「全光線透過率」は、透明性のレベルを表示するもので、ASTM-D1003-61の方法E308による、入射光に対する透過光の比を意味する。
【0064】
(添加剤等)
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、抗カビ性を損なわない範囲で本発明のポリマー以外のポリマーや熱安定剤、可塑剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗カビ剤、紫外線吸収剤、離型剤等を配合することができる。
【0065】
<抗カビ成形品>
上記ポリカーボネート樹脂を成形することにより本発明の抗カビ成形品が得られる。ここで、「抗カビ成形品」とは、屋外照明用カバーやスマートメーターカバーなどの屋外設備用カバー、台所、風呂、トイレなどの水周りで使用される部材や住宅設備、冷蔵庫、エアコンなどの家電、コンビ二エンスストアなどに設置されているATM(現金自動預け払い機)、POS端末、携帯電話、スマートフォン、パソコン、タブレット、各種包装材、壁紙、各種フィルター、スイッチ、日用品・生活用資材、衛生材、衣料品、車両関連の各種プラスチック部品などに好適に用いることができる。
【0066】
(形状)
本発明において、抗カビ成形品を構成する部材の材質や形状は特に制限されることなく、例えば、多孔質体、繊維、不織布、粒子、フィルム、シート、チューブ、粉末等いずれでも良い。
【0067】
(成形方法)
本発明のポリカーボネート樹脂から成形される抗カビ成形品は、例えば射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、溶液キャスティング法、エレクトロスピニング法など任意の方法により成形される。本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、成形性、耐熱性および抗カビ性に優れているので種々の成形体として利用することができる。
【0068】
また、本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、およびフィルムなどにすることもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。さらに特定の延伸操作により熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明で使用されるポリカーボネート樹脂を回転成形やブロー成形などにより成形品とすることも可能である。
【0069】
(表面処理)
本発明の抗カビ成形品は、本発明で使用されるポリカーボネート樹脂を抗カビ成形品表面の少なくとも一部にコーティングされたものであってもよい。本発明で使用されるポリカーボネート樹脂を抗カビ成形品の表面に保持させる方法としては、塗布法、スプレー法、ディップ法等があるが、特に制限なくいずれも適用できる。その膜厚は、好ましくは、0.1μm~1mmである。
【実施例0070】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。但し、本発明はこれら実施例に何ら制限されるものではない。また、実施例中の部は重量部であり、%は重量%である。なお、評価は下記の方法によった。
【0071】
(ポリカーボネート樹脂の評価)
(1)ポリマー組成比(NMR)
日本電子社製JNM-AL400のプロトンNMRにて測定し、ポリマー組成比(モル比)を算出した。
(2)比粘度(ηsp
ペレットを塩化メチレンに溶解、濃度を約0.7g/dLとして、温度20℃にて、オストワルド粘度計(装置名:RIGO AUTO VISCOSIMETER TYPE
VMR-0525・PC)を使用して測定した。なお、比粘度ηspは下記式から求めた。
ηsp=t/t-1
t:試料溶液のフロータイム
:溶媒のみのフロータイム
(3)ガラス転移温度(Tg)
TA Instruments社製 DSC (型式 DSC2910)を用いて、ペレット約10mgを20℃/minの昇温速度で加熱して測定した。
(4)5%重量減少温度
TA Instruments社製 TGA (型式 TGA2950)を用いて、ペレット約10mgを20℃/minの昇温速度で加熱して測定した。
【0072】
(成形品の評価)
(1)成形性
成形品の目視による外観が良好なものを〇、乾燥不良が生じたものおよび外観不良が発生したものを×とした。
(2)全光線透過率
得られた成形品の2mm部を日立(株)製分光光度計U-3310を用いて測定した。(3)水接触角
得られた成形品表面の水接触角を協和界面科学製DM-501Hiを用いて測定した。(4)カビ抵抗性
JIS規格のJIS Z2911に準じて、下記の方法で得られた成形品の2mmt部を切削して用い、以下の条件にて試験を実施した。
[試験胞子液作製]
試験カビをポテトデキストロース寒天培地に接種し、25℃、14日間培養後、Tween80を0.05%添加した滅菌水を用いて胞子を収穫し、グルコースペプトン液体培地10%となるように調製した溶液を用いて胞子数が104~6/mlとなるように胞子液を作成し、各菌種同量混合したものを試験胞子液とした。
各試験試料へ試験胞子液を接種し、26℃±2℃、相対湿度95~99%で4週間培養した。
[試験カビ]
Aspergillus niger、Penicillium citrinum、Rhizopus oryzae、Cladosporium cladosporioides、Chaetomium globosum
[カビ抵抗性の判定基準]
〇:肉眼で菌糸の発育が認められない
×:菌糸の発現が認められる
【0073】
[実施例1]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
イソソルビド(以下ISSと略す)491.0部、ポリエチレングリコール(分子量1000、以下PEG1000と略す)140.0部、ジフェニルカーボネート(以下DPCと略す)757.3部、および触媒としてステアリン酸バリウム3.7×10-3部を窒素雰囲気下180℃に加熱し溶融させた。溶融したことを確認した後、EI反応工程を開始した。減圧開始後、40分かけて最終減圧度が8.0kPaになるように調整しながら減圧し、8.0kPa到達後はその減圧度を保持した。減圧開始と同時に、30℃/hrの速度で、最終樹脂温度が220℃になるまで昇温した。220℃到達後は、減圧度1.0kPa、樹脂温度220℃の状態で、フェノールが理論量の80%留去するまで10分間保持した。80%留去したことを確認した後、PA反応工程(前期工程)を開始した。最終樹脂温度が230℃になるように、0.5℃/minの速度で昇温させた。また、昇温と併行して、最終減圧度が1kPaとなるように60分かけて減圧させた。引き続いて、PA反応工程(後期工程)を開始した。後期工程では、最終樹脂温度が240℃になるように、1℃/minの速度で昇温させた。また、昇温と併行して、最終減圧度が134Paとなるまで20分かけて減圧させた。所定の攪拌電力値に到達したところで反応を終了し、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。得られた樹脂を用いて各種評価を行い、評価結果を表1に記載した。
【0074】
<ポリカーボネート樹脂の成形>
得られたペレットを50℃真空下で12時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所(株)製, JSW J-75EIII)を用いて、成形温度200℃、各金型温度40℃、成形サイクル50秒にて幅50mm、長さ90mm、厚みがゲート側から3.0mm(長さ20mm)、2.0mm(長さ45mm)、1.0mm(長さ25mm)であり、算術平均粗さ(Ra)が0.03μmである3段型プレートを成形し、評価結果を表2に記載した。
【0075】
[実施例2]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
ISS501.3部、PEG1000 70.0部、DPC757.3部、および触媒としてステアリン酸バリウム3.7×10-3部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作および評価を行った。
<ポリカーボネート樹脂の成形>
成形温度230℃、金型温度70℃で成形した他は実施例1と全く同様の操作および評価を行った。
【0076】
[実施例3]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
ISS460.3部、ポリエチレングリコール(分子量400、以下PEG400と略す)140.0部、DPC757.3部、および触媒としてステアリン酸バリウム3.7×10-3部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作および評価を行った。
<ポリカーボネート樹脂の成形>
成形温度190℃、金型温度40℃で成形した他は実施例1と全く同様の操作および評価を行った。
【0077】
[実施例4]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
ISS363.2部、トリエチレングリコール(以下TEGと略す)152.4部、DPC757.3部、および触媒としてステアリン酸バリウム3.7×10-3部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作および評価を行った。
<ポリカーボネート樹脂の成形>
成形温度190℃、金型温度40℃で成形した他は実施例1と全く同様の操作および評価を行った。
【0078】
[比較例1]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
ISS511.5部、DPC757.3部、および触媒としてステアリン酸バリウム3.7×10-3部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作および評価を行った。
<ポリカーボネート樹脂の成形>
乾燥温度100℃で8時間乾燥後、成形温度250℃、各金型温度90℃で成形した他は実施例1と全く同様の操作および評価を行った。
【0079】
[比較例2]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
ビスフェノールA799.0部、DPC757.3部、および触媒として水酸化ナトリウム2.0×10-4部を用い窒素雰囲気下200℃に加熱し溶融させた。溶融したことを確認した後、EI反応工程を開始した。減圧開始後、20分かけて最終減圧度が8.0kPaになるように調整しながら減圧し、8.0kPa到達後はその減圧度を保持した。減圧開始と同時に、30℃/hrの速度で、最終樹脂温度が240℃になるまで昇温した。240℃到達後は、減圧度1.0kPa、樹脂温度240℃の状態で、フェノールが理論量の80%留去するまで10分間保持した。80%留去したことを確認した後、PA反応工程(前期工程)を開始した。最終樹脂温度が280℃になるように、1.0℃/60分かけて減圧させた。引き続いて、PA反応工程(後期工程)を開始した。後期工程では、最終樹脂温度が300℃になるように、1℃/minの速度で昇温させた。また、昇温と併行して、最終減圧度が134Paとなるまで20分かけて減圧させた。所定の攪拌電力値に到達したところで反応を終了し、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。実施例1と全く同様の操作および評価を行った。
<ポリカーボネート樹脂の成形>
乾燥温度100℃で8時間乾燥後、成形温度280℃、各金型温度90℃で成形した他は実施例1と全く同様の操作および評価を行った。
【0080】
[比較例3]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
ISS429.7部、PEG1000 560.0部、DPC757.3部、および触媒としてステアリン酸バリウム3.7×10-3部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作および評価を行った。
<ポリカーボネート樹脂の成形>
乾燥温度23℃真空下で12時間乾燥したが、ペレットが融着し成形が不可であった。また、未乾燥で成形温度180℃、各金型温度40℃で成形するとシルバーが発生し、外観不良となった。
【0081】
[比較例4]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
ISS507.4部、ポリエチレングリコール(分子量6000、以下PEG6000と略す)168.0部、DPC757.3部、および触媒としてステアリン酸バリウム3.7×10-3部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行った。ポリマーは白濁しており、脆く、各種評価は不可であった。
【0082】
[比較例5]
ISS470.6部、PEG1000 280.0部、DPC757.3部、および触媒としてステアリン酸バリウム3.7×10-3部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作および評価を行った。
<ポリカーボネート樹脂の成形>
乾燥温度23℃真空下で12時間乾燥したが、ペレットが融着し成形が不可であった。また、未乾燥で成形温度180℃、各金型温度40℃で成形したところ、シルバーが発生し、外観不良となった。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
表2に示すように、ポリカーボネート樹脂中に特定の構造を含み、Tgが特定の範囲内にあることで、透明性を維持したまま、成形性と抗カビ性が両立できることが判明した。本発明の抗カビ成形品は、例えば、屋外照明用カバーやスマートメーターカバーなどの屋外設備用カバー、台所、風呂、トイレなどの水周りで使用される部材や住宅設備、冷蔵庫、エアコンなどの家電、コンビ二エンスストアなどに設置されているATM(現金自動預け払い機)、POS端末、携帯電話、スマートフォン、パソコン、タブレット、各種包装材、壁紙、各種フィルター、スイッチ、日用品・生活用資材、衛生材、衣料品、車両関連の各種プラスチック部品等の用途に特に適する。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、抗カビ性、透明性、耐熱性および成形性に優れているため、屋外照明用カバーやスマートメーターカバーなどの屋外設備用カバー、台所、風呂、トイレなどの水周りで使用される部材や住宅設備、冷蔵庫、エアコンなどの家電、コンビ二エンスストアなどに設置されているATM(現金自動預け払い機)、POS端末、携帯電話、スマートフォン、パソコン、タブレット、各種包装材、壁紙、各種フィルター、スイッチ、日用品・生活用資材、衛生材、衣料品、車両関連の各種プラスチック部品をはじめとする様々な用途に幅広く用いることができる。