(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048637
(43)【公開日】2022-03-28
(54)【発明の名称】車両位置算出装置及び車両位置算出方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20220318BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
G08G1/09 D
H04N5/232
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154561
(22)【出願日】2020-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】甘利 治雄
(72)【発明者】
【氏名】花巻 安彦
(72)【発明者】
【氏名】田尾 健一
(72)【発明者】
【氏名】草田 寛昭
【テーマコード(参考)】
5C122
5H181
【Fターム(参考)】
5C122DA14
5C122FH11
5C122HB01
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB20
5H181CC04
5H181CC24
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF07
(57)【要約】
【課題】車両に搭載された撮像装置が撮像した撮像画像からマーカーを検出することを容易にすることにより、検出されたマーカーに基づく当該車両の位置算出処理を効率よく実行する。
【解決手段】車両に搭載された撮像装置が撮像した撮像画像を取得する撮像画像取得部と、撮像画像取得部が取得した撮像画像から対象設備を検出する対象設備検出部と、撮像画像取得部が取得した撮像画像から、対象設備検出部が検出した対象設備を探索範囲にして当該対象設備に設けられたマーカーを検出するマーカー検出部と、マーカー検出部が検出したマーカーに基づいて車両の位置算出処理を実行する位置算出部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された撮像装置が撮像した撮像画像を取得する撮像画像取得部と、
前記撮像画像取得部が取得した撮像画像から対象設備を検出する対象設備検出部と、
前記撮像画像取得部が取得した撮像画像から、前記対象設備検出部が検出した対象設備を探索範囲にして当該対象設備に設けられたマーカーを検出するマーカー検出部と、
前記マーカー検出部が検出したマーカーに基づいて前記車両の位置算出処理を実行する位置算出部と、
を備える車両位置算出装置。
【請求項2】
前記位置算出部は、
前記マーカー検出部が検出したマーカーに基づいてカメラ座標系の前記車両の位置である相対位置を算出する相対位置算出部と、
前記撮像画像取得部が取得した撮像画像から、前記マーカー検出部が検出したマーカーが設けられた対象設備に設けられた対象設備識別情報を取得する対象設備識別情報取得部と、
前記対象設備識別情報取得部が取得した対象設備識別情報に基づいて対象設備の位置を示す対象設備位置情報を取得する対象設備位置情報取得部と、
前記対象設備位置情報取得部が取得した対象設備位置情報と、前記相対位置算出部が算出した前記車両の相対位置と、前記カメラ座標系の情報とに基づいて前記車両の位置を算出する車両位置算出部と、を備える、
請求項1に記載の車両位置算出装置。
【請求項3】
前記相対位置算出部は、同じ対象設備に設けられたマーカーに関して、前記撮像画像取得部が取得した撮像画像から検出されたマーカーが当該撮像画像以降に前記撮像画像取得部が取得した撮像画像から再検出された場合に、前記車両の相対位置を再算出する、
請求項2に記載の車両位置算出装置。
【請求項4】
前記対象設備は電力設備である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両位置算出装置。
【請求項5】
車両位置算出装置が、車両に搭載された撮像装置が撮像した撮像画像を取得する撮像画像取得ステップと、
前記車両位置算出装置が、前記撮像画像取得ステップで取得した撮像画像から対象設備を検出する対象設備検出ステップと、
前記車両位置算出装置が、前記撮像画像取得ステップで取得した撮像画像から、前記対象設備検出ステップで検出した対象設備を探索範囲にして当該対象設備に設けられたマーカーを検出するマーカー検出ステップと、
前記車両位置算出装置が、前記マーカー検出ステップが検出したマーカーに基づいて前記車両の位置算出処理を実行する位置算出ステップと、
を含む車両位置算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両位置算出装置及び車両位置算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車等の車両に搭載されたカメラが撮像したAR(Augmented Reality)マーカーの撮像画像から当該ARマーカーに関連付けられた位置情報を取得することにより、当該車両の位置を特定する走行支援装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の走行支援装置では、ARマーカーの撮像画像からARマーカーを良好に認識することができる地点まで車両がARマーカーに近づかないと、ARマーカーの撮像画像から当該ARマーカーに関連付けられた位置情報を取得することができない。このため、車両の位置を特定するための処理がARマーカーの近傍でしか実行できないので、車両の位置を特定することができる範囲が狭く限定される。これにより、車両の走行時には、車両の位置を特定するための処理にかけられる時間が短くなるので、車両の走行速度を一定以上に上げられない。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、車両に搭載された撮像装置が撮像した撮像画像からマーカーを検出することを容易にすることにより、検出されたマーカーに基づく当該車両の位置算出処理を効率よく実行することができる車両位置算出装置及び車両位置算出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、車両に搭載された撮像装置が撮像した撮像画像を取得する撮像画像取得部と、前記撮像画像取得部が取得した撮像画像から対象設備を検出する対象設備検出部と、前記撮像画像取得部が取得した撮像画像から、前記対象設備検出部が検出した対象設備を探索範囲にして当該対象設備に設けられたマーカーを検出するマーカー検出部と、前記マーカー検出部が検出したマーカーに基づいて前記車両の位置算出処理を実行する位置算出部と、を備える車両位置算出装置である。
【0007】
(2)本発明の一態様は、前記位置算出部は、前記マーカー検出部が検出したマーカーに基づいてカメラ座標系の前記車両の位置である相対位置を算出する相対位置算出部と、前記撮像画像取得部が取得した撮像画像から、前記マーカー検出部が検出したマーカーが設けられた対象設備に設けられた対象設備識別情報を取得する対象設備識別情報取得部と、前記対象設備識別情報取得部が取得した対象設備識別情報に基づいて対象設備の位置を示す対象設備位置情報を取得する対象設備位置情報取得部と、前記対象設備位置情報取得部が取得した対象設備位置情報と、前記相対位置算出部が算出した前記車両の相対位置と、前記カメラ座標系の情報とに基づいて前記車両の位置を算出する車両位置算出部と、を備える、上記(1)の車両位置算出装置である。
【0008】
(3)本発明の一態様は、前記相対位置算出部は、同じ対象設備に設けられたマーカーに関して、前記撮像画像取得部が取得した撮像画像から検出されたマーカーが当該撮像画像以降に前記撮像画像取得部が取得した撮像画像から再検出された場合に、前記車両の相対位置を再算出する、上記(2)の車両位置算出装置である。
(4)本発明の一態様は、前記対象設備は電力設備である、上記(1)から(3)のいずれかの車両位置算出装置である。
【0009】
(5)本発明の一態様は、車両位置算出装置が、車両に搭載された撮像装置が撮像した撮像画像を取得する撮像画像取得ステップと、前記車両位置算出装置が、前記撮像画像取得ステップで取得した撮像画像から対象設備を検出する対象設備検出ステップと、前記車両位置算出装置が、前記撮像画像取得ステップで取得した撮像画像から、前記対象設備検出ステップで検出した対象設備を探索範囲にして当該対象設備に設けられたマーカーを検出するマーカー検出ステップと、前記車両位置算出装置が、前記マーカー検出ステップが検出したマーカーに基づいて前記車両の位置算出処理を実行する位置算出ステップと、を含む車両位置算出方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両に搭載された撮像装置が撮像した撮像画像からマーカーを検出することを容易にすることにより、検出されたマーカーに基づく当該車両の位置算出処理を効率よく実行することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る車両位置算出システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る車両位置算出装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る車両位置算出方法の手順の例を示すフローチャートである。
【
図4】一実施形態に係る車両位置算出方法を説明するための説明図である。
【
図5】一実施形態に係る車両位置算出方法を説明するための説明図である。
【
図6】一実施形態に係る車両位置算出方法を説明するための説明図である。
【
図7】一実施形態に係る車両位置算出方法を説明するための説明図である。
【
図8】一実施形態に係る自己位置推定方法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態において、対象設備とは、マーカーが設けられる対象の設備である。対象設備は、当該設備に特徴的な形状を有する。また対象設備は、道路を走行する車両から撮像可能な場所に設置され、ある程度の距離離れた位置からでも撮像可能な大きさを持つ。対象設備は、例えば、車両が走行する道路の脇に沿って設置され、ある程度の距離離れた位置からでも視認可能な大きさを持つものであってもよい。対象設備が設置されている位置はデータベースに登録されている。本実施形態では、対象設備の一例として電柱等の電力設備を挙げて説明する。また本実施形態では、車両の一例として、自動運転を行う自動運転車を挙げて説明する。
【0013】
図1は、一実施形態に係る車両位置算出システムの構成を示すブロック図である。
図1において、車両1は、撮像装置3と、車両位置算出装置10と、車両制御装置5と、通信装置7とを備える。撮像装置3は、車両1の進行方向を撮像するように、車両1に設けられている。撮像装置3は、撮像した撮像画像Aを出力する。
【0014】
車両位置算出装置10は、車両1の位置を算出するための位置算出処理を実行する。車両位置算出装置10は、車両1の位置算出処理に撮像画像Aを使用する。車両位置算出装置10は、位置算出処理により算出した車両1の位置を示す車両位置情報Bを出力する。
【0015】
車両制御装置5は、車両1の自動運転を制御する。車両制御装置5は、車両1の自動運転の制御に車両位置情報Bを使用する。
【0016】
通信装置7は、通信回線を介して電力設備データベース(電力設備DB)30と通信を行う。電力設備DB30は、電柱等の電力設備が設置されている位置(緯度、経度)を示す電力設備位置情報を蓄積する。車両位置算出装置10は、通信装置7により、電力設備DB30から電力設備位置情報を取得する。車両位置算出装置10は、位置算出処理に電力設備位置情報を使用する。
【0017】
図2は、本実施形態に係る車両位置算出装置の構成を示すブロック図である。
図2において、車両位置算出装置10は、撮像画像取得部11と、電力設備検出部12(対象設備検出部)と、マーカー検出部13と、相対位置算出部14と、電力設備識別情報取得部(電力設備ID取得部)15(対象設備識別情報取得部)と、電力設備位置情報取得部16(対象設備位置情報取得部)と、車両位置算出部17とを備える。
【0018】
車両位置算出装置10の各機能は、車両位置算出装置10がCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0019】
撮像画像取得部11は、車両1に搭載された撮像装置3が撮像した撮像画像Aを取得する。
【0020】
電力設備検出部12は、撮像画像取得部11が取得した撮像画像Aから電力設備を検出する。例えば、電力設備検出部12は、撮像画像Aに対して画像認識処理を実行して電力設備に特有の特徴を抽出することにより、電力設備を検出する。また、AI(Artificial Intelligence)技術を応用して電力設備の検出を行ってもよい。
【0021】
マーカー検出部13は、撮像画像取得部11が取得した撮像画像Aから、電力設備検出部12が検出した電力設備を探索範囲にして当該電力設備に設けられたマーカーを検出する。相対位置算出部14は、マーカー検出部13が検出したマーカーに基づいてカメラ座標系の車両1の位置である相対位置を算出する。カメラ座標系とは、撮像装置3の座標系である。
【0022】
電力設備ID取得部15は、撮像画像取得部11が取得した撮像画像Aから、マーカー検出部13が検出したマーカーが設けられた電力設備に設けられた電力設備識別情報(電力設備ID)を取得する。
【0023】
電力設備位置情報取得部16は、電力設備ID取得部15が取得した電力設備IDに基づいて、電力設備の位置を示す電力設備位置情報を取得する。具体的には、電力設備位置情報取得部16は、通信装置7により、電力設備IDを含む電力設備位置情報要求メッセージCを電力設備DB3へ送信する。電力設備DB30は、当該電力設備位置情報要求メッセージCに含まれる電力設備IDに関連付けられている電力設備位置情報を、当該電力設備位置情報要求メッセージCに対する応答メッセージDに含めて返信する。電力設備位置情報取得部16は、当該応答メッセージDに含まれる電力設備位置情報を取得する。当該電力設備位置情報は、当該応答メッセージDに対応する電力設備位置情報要求メッセージCに含まれる電力設備IDが設けられた電柱等の電力設備が設置されている位置(緯度、経度)を示す情報である。
【0024】
車両位置算出部17は、電力設備位置情報取得部16が取得した電力設備位置情報(緯度、経度)と、相対位置算出部14が算出した車両1の相対位置と、カメラ座標系の情報とに基づいて、車両1の位置(緯度、経度)を算出する。
【0025】
次に
図3-
図7を参照して、本実施形態に係る車両位置算出装置10の位置算出処理を説明する。
図3は、本実施形態に係る車両位置算出方法の手順の例を示すフローチャートである。
図4-
図7は、本実施形態に係る車両位置算出方法を説明するための説明図である。
【0026】
ここでは、電力設備として電柱を利用する場合を例に挙げて説明する。車両1が走行する道路の脇には電柱が間隔を置いて設置されている。
図4の例では、車両1が走行する道路の脇に間隔を置いて設置されている電柱G1,G2,G3が示される。以下、電柱G1,G2,G3を特に区別しないときは電柱Gと称する。
【0027】
電柱Gには、予め、マーカーと、電柱Gの電力設備IDである電柱識別情報(電柱ID)とが設けられている。
図5の例では、電柱Gに設けられている2個のマーカーMa,Mbと、電柱ID_Gcとが示される。電柱ID_Gc及び各マーカーMa,Mbは、電柱Gの所定の場所に設けられる。車両1の進行方向に存在する電柱Gにおいて、電柱ID_Gc及び各マーカーMa,Mbは、当該車両1から見える場所に設けられる。また、各マーカーMa,Mbは、所定の地上高に設けられる。例えば、マーカーMaが地上1メートルの高さに設けられ、マーカーMbが地上2メートルの高さに設けられる。
【0028】
なお、図中、電柱G1にのみ2個のマーカーMa,Mbと、電柱ID_Gcとを図示しているが、電柱G1以外の各電柱Gにも電柱G1と同様に2個のマーカーMa,Mbと、電柱ID_Gcとが設けられている。以下、マーカーMa,Mbを特に区別しないときはマーカーMと称する。
【0029】
図4に例示されるように、車両1は、道路を電柱G1,G2,G3の方向へ走行している。車両1の撮像装置3は、常時撮像し、撮像した撮像画像Aを出力する。
【0030】
(ステップS1) 撮像画像取得部11は、撮像装置3が撮像した撮像画像Aを取得する。
図5には、
図4に示される時刻t1の車両1の位置で撮像装置3が撮像した撮像画像Aが示される。
【0031】
(ステップS2) 電力設備検出部12は、撮像画像取得部11が取得した撮像画像Aから電柱Gを検出する。例えば、電力設備検出部12は、
図5の撮像画像Aから、撮像位置に最も近い電柱G1、次に近い電柱G2、最も遠い電柱G3をそれぞれ検出する。
【0032】
(ステップS3) マーカー検出部13は、撮像画像取得部11が取得した撮像画像Aから、電力設備検出部12が検出した電柱Gを探索範囲にして当該電柱Gに設けられたマーカーMを検出する。例えば、マーカー検出部13は、
図5の撮像画像Aから、各電柱G1,G2,G3を探索範囲にして各電柱G1,G2,G3に設けられたマーカーMの検出を試みる。ここでは、マーカー検出部13は、
図5の撮像画像Aから、電柱G1を探索範囲にして当該電柱G1に設けられた各マーカーMa,Mbを検出する。
【0033】
一方、マーカー検出部13は、
図5の撮像画像Aからは、探索範囲の各電柱G2,G3に設けられたマーカーMを検出することができない。これは、
図5の撮像画像A(
図4に示される時刻t1の車両1の位置での撮像画像)では、撮像位置から各電柱G2,G3までの距離が各電柱G2,G3に設けられたマーカーMを検出可能なほど近くはなく画質不十分なためである。
【0034】
(ステップS4) 相対位置算出部14は、マーカー検出部13が検出したマーカーMに基づいてカメラ座標系の車両1の位置である相対位置を算出する。例えば、相対位置算出部14は、マーカー検出部13が
図5の撮像画像Aから検出した電柱G1のマーカーMa,Mbに基づいてカメラ座標系の車両1の位置である相対位置を算出する。
【0035】
(ステップS5) 電力設備ID取得部15は、撮像画像取得部11が取得した撮像画像Aから、マーカー検出部13が検出したマーカーMが設けられた電柱Gに設けられた電柱ID_Gcの取得を試みる。この結果、電柱ID_Gcの取得が成功した場合にはステップS6に進む。
【0036】
一方、電柱ID_Gcの取得が失敗した場合にはステップS1に戻る。電柱ID_Gcの取得が失敗した場合、再度、ステップS1からS4までの処理が実行される。このとき、相対位置算出部14は、マーカー再検出ありか否かを判断する。マーカー再検出ありとは、同じ電力設備に設けられたマーカーに関して、撮像画像取得部11が取得した撮像画像Aから検出されたマーカーが当該撮像画像以降に撮像画像取得部11が取得した撮像画像Aから再検出されることを言う。例えば、
図4において、時刻t1の車両1の位置での撮像画像Aから検出された電柱G1のマーカーMが時刻t1以降の例えば時刻t2の車両1の位置での撮像画像Aから再検出された場合に、マーカー再検出ありと判断される。相対位置算出部14は、マーカー再検出ありの場合、当該マーカーMに基づいてカメラ座標系の車両1の位置である相対位置を再算出する。
【0037】
図6には、
図4に示される時刻t2の車両1の位置で撮像装置3が撮像した撮像画像Aが示される。
図6の撮像画像Aからは、
図5の撮像画像Aと同様に、電柱G1のマーカーMa,Mbが再検出される。これにより、相対位置算出部14は、マーカー検出部13が
図6の撮像画像Aから検出した電柱G1のマーカーMa,Mbに基づいてカメラ座標系の車両1の位置である相対位置を再算出する。
【0038】
(ステップS6) 電力設備位置情報取得部16は、電力設備ID取得部15が取得した電柱Gの電柱ID_Gcに基づいて、電柱Gの位置を示す電力設備位置情報を電力設備DB30から取得する。例えば、電力設備位置情報取得部16は、電力設備ID取得部15が取得した電柱G1の電柱ID_Gcに基づいて、電柱G1の位置を示す電力設備位置情報を電力設備DB30から取得する。
【0039】
図7には、
図4に示される時刻t3の車両1の位置で撮像装置3が撮像した撮像画像Aが示される。
図4に示される時刻t1の車両1の位置での撮像画像A(
図5)及び時刻t2の車両1の位置での撮像画像A(
図6)では、電柱G1のマーカーMは検出できたが、撮像位置から電柱G1までの距離が電柱G1の電柱ID_Gcを取得可能なほど近くはなく画質不十分なために、電柱G1の電柱ID_Gcまでは取得できない。
【0040】
一方、
図4に示される時刻t3の車両1の位置での撮像画像A(
図7)では、撮像位置から電柱G1までの距離が電柱G1の電柱ID_Gcを取得可能となる範囲であり十分な画質であるので、電柱G1の電柱ID_Gcを取得することができる。これにより、電力設備ID取得部15は、撮像画像取得部11が取得した
図7の撮像画像Aから、電柱G1に設けられた電柱ID_Gcを取得する。次いで、電力設備位置情報取得部16は、電力設備ID取得部15が取得した電柱G1の電柱ID_Gcを含む電力設備位置情報要求メッセージCを、通信装置7により電力設備DB3へ送信する。次いで、電力設備位置情報取得部16は、当該電力設備位置情報要求メッセージCの応答メッセージDを、通信装置7により電力設備DB3から受信する。電力設備位置情報取得部16は、当該応答メッセージDに含まれる電柱G1の電力設備位置情報を取得する。当該電柱G1の電力設備位置情報は、当該電柱G1が設置されている位置(緯度、経度)を示す情報である。
【0041】
(ステップS7) 車両位置算出部17は、電力設備位置情報取得部16が取得した電柱Gの電力設備位置情報(緯度、経度)と、相対位置算出部14が算出した当該電柱Gに関する車両1の相対位置と、カメラ座標系の情報とに基づいて、車両1の位置(緯度、経度)を算出する。例えば、車両位置算出部17は、電力設備位置情報取得部16が取得した電柱G1の電力設備位置情報(緯度、経度)と、相対位置算出部14が算出した電柱G1に関する車両1の相対位置と、カメラ座標系の情報とに基づいて、車両1の位置(緯度、経度)を算出する。
【0042】
車両位置算出装置10は、車両位置算出部17が算出した車両1の位置(緯度、経度)を示す車両位置情報Bを出力する。車両制御装置5は、当該車両位置情報Bを車両1の自動運転の制御に使用する。
【0043】
図8は、自己位置推定方法の一例を示す説明図である。
図8の例は、Visual SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)と呼ばれる自己位置推定方法である。この自己位置推定方法を本実施形態に適用することができる。
【0044】
図8において、車両1に搭載された撮像装置3(カメラ)は、時刻t1の車両1の位置(カメラ(3-1)の位置)から時刻t2の車両1の位置(カメラ(3-2)の位置)へと移動する。カメラ(3-1)が撮像した撮像画像Aにおけるカメラ(3-1)座標系において、相対位置算出部14は、撮像画像A内の特徴点(マーカーM)の投影位置(相対位置)を算出する。次いで、カメラ(3-2)が撮像した撮像画像Aにおけるカメラ(3-2)座標系において、相対位置算出部14は、撮像画像A内の特徴点(マーカーM)の投影位置(相対位置)を算出する。次いで、相対位置算出部14は、同じ特徴点(マーカーM)の投影位置(相対位置)の変化量を算出する。
【0045】
次いで、車両位置算出部17は、グローバル座標系(緯度、経度)における特徴点(マーカーM)の座標(該当の電柱Gの電力設備位置情報(緯度、経度))と、当該特徴点(マーカーM)の投影位置(相対位置)の変化量と、カメラ座標系の情報とに基づいて、グローバル座標系(緯度、経度)とカメラ座標系との間の変換行列を算出する。当該カメラ座標系の情報は、カメラ(3-1)座標系とカメラ(3-2)座標系との相対位置の変化を示す情報である。具体的には、当該カメラ座標系の情報は、時刻t1の車両1の位置(カメラ(3-1)の位置)から時刻t2の車両1の位置(カメラ(3-2)の位置)への変化量(車両1の移動距離、移動方向及び移動時間)を示す情報である。当該変化量(車両1の移動距離、移動方向及び移動時間)は、車両位置算出装置10が車両制御装置5から取得する。
【0046】
次いで、車両位置算出部17は、当該変換行列を使用して、グローバル座標系の車両1(カメラ)の位置(緯度、経度)を算出する。
【0047】
本実施形態によれば、車両に搭載された撮像装置が撮像した撮像画像から電柱等の電力設備に設けられたマーカーを検出する際に、当該撮像画像から電力設備を検出し、当該検出結果の電力設備にマーカーの探索範囲を限定することにより、マーカーの検出にかかる情報処理量を削減することができる。これにより、車両に搭載された撮像装置が撮像した撮像画像からマーカーを容易に検出することができるので、検出されたマーカーに基づく当該車両の位置算出処理を効率よく実行することができるという効果が得られる。
【0048】
また本実施形態によれば、いち早くマーカーを検出可能とすることにより、より早い時点から車両の位置算出処理を開始することができるので、車両の位置を特定するための処理にかけられる時間に余裕ができ、車両の走行速度の制限を緩和したり、車両の位置算出処理の処理量を増やして車両の位置算出結果の精度を向上させたりすることができるという効果が得られる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0050】
上述した実施形態では、対象設備の一例として電柱等の電力設備を挙げたが、対象設備は電力設備以外の設備であってもよい。また上述した実施形態では、車両の一例として自動運転を行う自動運転車を挙げたがこれに限定されず、自動運転車以外の車両、例えば人が運転する自動車や列車等にも適用可能である。
【0051】
また、上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0052】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…車両、3…撮像装置、5…車両制御装置、7…通信装置、10…車両位置算出装置、11…撮像画像取得部、12…電力設備検出部(対象設備検出部)、13…マーカー検出部、14…相対位置算出部、15…電力設備識別情報(電力設備ID)取得部(対象設備識別情報取得部)、16…電力設備位置情報取得部(対象設備位置情報取得部)、17…車両位置算出部