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特開2022-48656金属保持フィルム、加飾シート、加飾シートの製造方法、押出ラミネート体、加飾シート成形体、射出成形体、押出ラミネート体の製造方法、加飾シート成形体の製造方法、および、射出成形体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048656
(43)【公開日】2022-03-28
(54)【発明の名称】金属保持フィルム、加飾シート、加飾シートの製造方法、押出ラミネート体、加飾シート成形体、射出成形体、押出ラミネート体の製造方法、加飾シート成形体の製造方法、および、射出成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/08 20060101AFI20220318BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20220318BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220318BHJP
   C08L 75/06 20060101ALI20220318BHJP
   C08K 5/541 20060101ALI20220318BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20220318BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
B32B5/08
B32B27/40
B32B27/00 E
C08L75/06
C08K5/541
C08K5/29
B29C45/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154607
(22)【出願日】2020-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】510127882
【氏名又は名称】株式会社ウェーブロック・アドバンスト・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】星 健太
【テーマコード(参考)】
4F100
4F206
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AB01A
4F100AH02B
4F100AH02E
4F100AH03B
4F100AK01D
4F100AK25C
4F100AK25D
4F100AK45B
4F100AK45C
4F100AK45D
4F100AK51B
4F100AK51E
4F100AK52B
4F100AK74C
4F100AT00C
4F100BA02
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA18B
4F100CB00E
4F100EC18
4F100EH23
4F100EH46E
4F100EH66A
4F100EJ86E
4F100EJ91
4F100EJ94
4F100JK07B
4F100JK08B
4F100JK12D
4F100JL01
4F100JN01B
4F100YY00B
4F206AD03B
4F206AD05A
4F206AD08
4F206AD20
4F206AD27
4F206AH25
4F206AH42
4F206JA07
4F206JB13
4F206JF05
4F206JL02
4J002CK031
4J002ER007
4J002EX036
4J002FD147
4J002FD316
4J002GF00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】変性ポリエチレンテレフタレートを金属層保持層として用いた場合よりも成形性に優れた金属保持フィルム、加飾シート、押出ラミネート体、加飾シート成形体、射出成形体、及びこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】金属保持フィルム100であって、金属層110と、前記金属層を保持する金属層保持層120とを備え、前記金属層保持層120が、ポリカーボネート系ポリウレタン、および、シリコーン系界面活性剤を含有しており、前記ポリカーボネート系ポリウレタンが、イソシアネートと、シクロヘキサンを含まない直鎖炭化水素型ポリオールと、シクロヘキサンを含むポリオールとの反応物を含み、前記金属層保持層120の100℃における100%引張応力が3N以下であり、100℃における破断伸び率が210%以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属保持フィルムであって、
金属層と、
前記金属層を保持する金属層保持層と、を備え、
前記金属層保持層が、
ポリカーボネート系ポリウレタン、および、シリコーン系界面活性剤を含有しており、
前記ポリカーボネート系ポリウレタンと前記シリコーン系界面活性剤との質量比が、100:2.5~5.0であり、
前記ポリカーボネート系ポリウレタンが、イソシアネートと、シクロヘキサンを含まない直鎖炭化水素型ポリオールと、シクロヘキサンを含むポリオールと、の反応物を含み、かつ、それぞれのモル比、イソシアネート:シクロヘキサンを含まない前記直鎖炭化水素型ポリオール:シクロヘキサンを含む前記ポリオール=1.0:0.6:0.9~1.0:0.8:0.7であり、
前記金属層保持層の、100℃における100%引張応力が3N以下であり、
前記金属層保持層の100℃における破断伸び率が210%以上である、
金属保持フィルム。
【請求項2】
前記金属層保持層が、カルボジイミドをさらに含み、
前記ポリカーボネート系ポリウレタンと前記カルボジイミドとの質量比が、100:10~25である、請求項1に記載の金属保持フィルム。
【請求項3】
前記イソシアネートが、4,4’メチレンビス(シクロへキシルイソシアネート)であり、
前記シクロヘキサンを含まない直鎖炭化水素型ポリオールが、n-ヘキサンジメタノールカーボネートであり、
前記シクロヘキサンを含むポリオールが、シクロヘキサンジメタノールカーボネートである、請求項1または2に記載の金属保持フィルム。
【請求項4】
前記金属層保持層が、平均厚さが10μm~25μmであり、かつ、厚さが平均厚さ-0.5μm~平均厚さ+0.5μmの範囲内である、請求項1~3のいずれか1項に記載の金属保持フィルム。
【請求項5】
幅方向の寸法が、1000mm~2000mmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の金属保持フィルム。
【請求項6】
前記金属層保持層の、
光線透過率が90%以上であり、
ヘイズが1.3%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の金属保持フィルム。
【請求項7】
加飾シートであって、順に、基材層、第1接着層、請求項1~6のいずれか1項に記載の金属保持フィルム、第2接着層、および、保護層を含む加飾シート。
【請求項8】
請求項7に記載の加飾シートを製造する方法であって、
離型樹脂層の表面に、水性ポリカーボネート系ポリウレタンディスパージョンと、シリコーン系界面活性剤と、を含む混合物を、乾燥膜厚が平均10μm~25μmとなるように成膜して、前記離型樹脂層と前記金属層保持層とが積層した第1積層体を得る、第1積層体形成工程と、
前記第1積層体の巻取物を解反する解反工程と、
前記解反工程後に、前記金属層保持層に前記金属層を蒸着して、前記金属層保持層と前記金属層とを備える前記金属保持フィルムを含む第2積層体を得る蒸着工程と、を備える、
加飾シートの製造方法。
【請求項9】
前記蒸着工程の後に、前記第2積層体の前記金属層および/または前記基材層に第1接着剤を塗布して、前記第1接着剤を乾燥させた後、前記金属層と前記基材層とを貼り合わせることにより接着する、第1接着工程をさらに含み、
前記第1接着剤が、酢酸エチルを含むウレタン系接着剤である、請求項8に記載の加飾シートの製造方法。
【請求項10】
前記蒸着工程の後に、前記第2積層体から前記離型樹脂層を剥離して、前記金属層保持層および/または前記基材層に第1接着剤を塗布して、前記第1接着剤を乾燥させた後、前記金属層保持層と前記基材層とを貼り合わせることにより接着する、第2接着工程をさらに含み、
前記第1接着剤が、酢酸エチルを含むウレタン系接着剤である、請求項8に記載の加飾シートの製造方法。
【請求項11】
前記第1接着工程の後に、前記離型樹脂層を剥離して、前記金属層保持層および/または前記保護層に第2接着剤を塗布して、前記第2接着剤を乾燥させた後、前記金属層保持層と前記保護層とを貼り合わせることにより接着する、第3接着工程をさらに含み、
前記第2接着剤が、酢酸エチルを含むウレタン系接着剤である、請求項9に記載の加飾シートの製造方法。
【請求項12】
前記第2接着工程の後に、前記金属層および/または前記保護層に第2接着剤を塗布して、前記第2接着剤を乾燥させた後、前記金属層と前記保護層とを貼り合わせることにより接着する、第4接着工程をさらに含み、
前記第2接着剤が、酢酸エチルを含むウレタン系接着剤である、請求項10に記載の加飾シートの製造方法。
【請求項13】
前記混合物が、カルボジイミドをさらに含む、請求項8~12のいずれか1項に記載の加飾シートの製造方法。
【請求項14】
請求項7に記載の加飾シートの前記基材層および/または前記保護層に樹脂シートが積層した、押出ラミネート体。
【請求項15】
請求項7に記載の加飾シートの成形体を備える、加飾シート成形体。
【請求項16】
請求項15に記載の加飾シート成形体の前記基材層の表面および/または前記保護層の表面に射出成形された樹脂層を備える、射出成形体。
【請求項17】
請求項7に記載の加飾シートの前記基材層および/または前記保護層に溶融樹脂シートを積層する積層工程を含む、押出ラミネート体の製造方法。
【請求項18】
表面温度が150℃~230℃である請求項7に記載の加飾シートを、型に密着させて加飾シート成形体を得る成形工程を含む、加飾シート成形体の製造方法。
【請求項19】
真空および/または圧空により前記加飾シートを前記型に密着させる、請求項18に記載の加飾シート成形体の製造方法。
【請求項20】
前記成形工程の前に、
請求項7に記載の加飾シートをクランプするクランピング工程と、
前記クランピング工程後に前記加飾シートを加熱する加熱工程を含む、請求項18または19に記載の加飾シート成形体の製造方法。
【請求項21】
射出成形金型を用いて、請求項18~20のいずれか1項に記載の加飾シート成形体の製造方法により得た加飾シート成形体の前記基材層の表面および/または前記保護層の表面と、前記射出成形金型との間に樹脂を注入して樹脂層を形成し、前記加飾シート成形体と前記樹脂層とが一体化した射出成形体を得る射出成形工程を含む、射出成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属保持フィルム、加飾シート、加飾シートの製造方法、押出ラミネート体、加飾シート成形体、射出成形体、押出ラミネート体の製造方法、加飾シート成形体の製造方法、および、射出成形体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の内外装、家電、スマートフォン、アミューズメント製品等の樹脂部分の表面に金属調の外観を付与するために、加飾シートが用いられている。金属調の外観を付与する加飾シートとしては、例えば、透明あるいは半透明の表面フィルム層、接着剤層、少なくとも片面に金属層を有する金属保持用フィルム層、接着剤層及びベースフィルム層をこの順で有するものが知られている。
【0003】
金属調加飾シートを使用して金属調成形品を製造する方法としては、1.金属調加飾シートを予め真空または圧空成形により成形、トリミングした予備成形品を射出成形金型のキャビティーに装着し、型締め後に樹脂を金型内に射出して樹脂と金属調加飾シートを一体成形するシートインサート射出成形、2.金属調加飾シートを押出ラミネートにより厚さ数mmの樹脂板とラミネートして金属調加飾板にした後、真空または圧空成形により成形、トリミングする方法、および、3.樹脂成形品に成形温度まで加熱した金属調加飾シートを真空または圧空成形により貼り付けるTOM成形等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-001243号公報
【特許文献2】特開2019-123765号公報
【特許文献3】特開2014-124940号公報
【特許文献4】特開2018-94923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような金属調加飾シートの金属保持用フィルムとして、例えば、変性ポリエチレンテレフタレートフィルム(変性PETフィルム)を使用することが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
変性ポリエチレンテレフタレートの合成には、エチレングリコールとテレフタル酸を基本モノマーとし、1,3‐プロパンジオール、1,4‐ブタンジオール、1,4‐シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、イソフタル酸、2,6‐ナフタレンジカルボン酸等を変性用モノマーとして用いることが知られている。
【0007】
変性ポリエチレンテレフタレートフィルムは、他のフィルムに比べ、取扱い性、金属層との密着性、透明性、耐薬品性にバランス良く優れているため、これまで金属層保持フィルムに採用されてきた。
【0008】
しかしながら、変性ポリエチレンテレフタレートフィルムは元々、延伸処理が施されているため、金属調加飾シートの他の層(表面フィルム層、接着剤層、ベースフィルム層)と比較して、引張応力が高い。このことから、変性ポリエチレンテレフタレートフィルムを金属調加飾シートに用いる場合、金属調加飾シートの成形性に影響することがあった。
【0009】
さらに、同じ理由により、このような金属調加飾シートを用いて成形した成形体の耐熱性試験を行う場合、残留応力が働き、変性ポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離現象を起こすことがあった。
【0010】
また、特許文献3、特許文献4には、水性ポリウレタンディスパージョンと、カルボジイミドとを含む混合物をPETフィルム上に塗工して乾燥後、30μmや55μmの表面層として形成したのち、金属層を蒸着により形成して、表面層、蒸着膜、ポリウレタン接合層、ポリオレフィンフィルム接着層の4層からなる装飾積層シートが記載されている。
【0011】
しかしながら、成形性を向上させるためや,光線透過率を向上させて外観の透明性を高くするために、金属層を蒸着させる層(特許文献3、4においては表面層)を薄く(例えば、20μm程度など)形成する場合には、例えば、PETフィルム上に塗工するときにはじいてしまうなど、均一な膜が形成できない可能性があった。
【0012】
従って、本発明は、上記のような問題点に着目し、従来の変性ポリエチレンテレフタレートを金属層保持層として用いた加飾シートと同様に加飾シートとして求められる品質を満たし、かつ、変性ポリエチレンテレフタレートを用いた場合よりも成形性に優れた金属保持フィルム、加飾シート、加飾シートの製造方法、押出ラミネート体、加飾シート成形体、射出成形体、押出ラミネート体の製造方法、加飾シート成形体の製造方法、および、射出成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の金属保持フィルムは、金属保持フィルムであって、金属層と、前記金属層を保持する金属層保持層と、を備え、前記金属層保持層が、ポリカーボネート系ポリウレタン、および、シリコーン系界面活性剤を含有しており、前記ポリカーボネート系ポリウレタンと前記シリコーン系界面活性剤との質量比が、100:2.5~5.0であり、前記ポリカーボネート系ポリウレタンが、イソシアネートと、シクロヘキサンを含まない直鎖炭化水素型ポリオールと、シクロヘキサンを含むポリオールと、の反応物を含み、かつ、それぞれのモル比が、イソシアネート:シクロヘキサンを含まない前記直鎖炭化水素型ポリオール:シクロヘキサンを含む前記ポリオール=1.0:0.6:0.9~1.0:0.8:0.7であり、前記金属層保持層の、100℃における100%引張応力が3N以下であり、前記金属層保持層の100℃における破断伸び率が210%以上である。
【0014】
また、本発明の金属保持フィルムにおいて、前記金属層保持層が、カルボジイミドをさらに含み、前記ポリカーボネート系ポリウレタンと前記カルボジイミドとの質量比が、100:10~25であってもよい。
【0015】
また、本発明の金属保持フィルムにおいて、前記イソシアネートが、4,4’メチレンビス(シクロへキシルイソシアネート)であり、シクロヘキサンを含まない前記直鎖炭化水素型ポリオールが、n-ヘキサンジメタノールカーボネートであり、シクロヘキサンを含む前記ポリオールが、シクロヘキサンジメタノールカーボネートであってもよい。
【0016】
また、本発明の金属保持フィルムにおいて、前記金属層保持層が、平均厚さが10μm~25μmであり、かつ、厚さが平均厚さ-0.5μm~平均厚さ+0.5μmの範囲内であってもよい。
【0017】
また、本発明の金属保持フィルムにおいて、幅方向の寸法が、1000mm~2000mmであってもよい。
【0018】
また、本発明の金属保持フィルムにおいて、前記金属層保持層の、光線透過率が90%以上であり、ヘイズが1.3%以下であってもよい。
【0019】
本発明の加飾シートは、順に、基材層、第1接着層、請求項1~7のいずれか1項に記載の金属保持フィルム、第2接着層、および、保護層を含む。
【0020】
本発明の加飾シートの製造方法は、本発明の加飾シートを製造する方法であって、離型樹脂層の表面に、水性ポリカーボネート系ポリウレタンディスパージョンと、シリコーン系界面活性剤と、を含む混合物を、乾燥膜厚が平均10μm~25μmとなるように成膜して、前記離型樹脂層と前記金属層保持層とが積層した第1積層体を得る、第1積層体形成工程と、前記第1積層体の巻取物を解反する解反工程と、前記解反工程後に、前記金属層保持層に前記金属層を蒸着して、前記金属層保持層と前記金属層とを備える前記金属保持フィルムを含む第2積層体を得る蒸着工程と、を備える。
【0021】
本発明の加飾シートの製造方法において、前記蒸着工程の後に、前記第2積層体の前記金属層および/または前記基材層に第1接着剤を塗布して、前記第1接着剤を乾燥させた後、前記金属層と前記基材層とを貼り合わせることにより接着する、第1接着工程をさらに含み、前記第1接着剤が、酢酸エチルを含むウレタン系接着剤であってもよい。
【0022】
本発明の加飾シートの製造方法において、前記蒸着工程の後に、前記第2積層体から前記離型樹脂層を剥離して、前記金属層保持層および/または前記基材層に第1接着剤を塗布して、前記第1接着剤を乾燥させた後、前記金属層保持層と前記基材層とを貼り合わせることにより接着する、第2接着工程をさらに含み、前記第1接着剤が、酢酸エチルを含むウレタン系接着剤であってもよい。
【0023】
本発明の加飾シートの製造方法において、前記第1接着工程の後に、前記離型樹脂層を剥離して、前記金属層保持層および/または前記保護層に第2接着剤を塗布して、前記第2接着剤を乾燥させた後、前記金属層保持層と前記保護層とを貼り合わせることにより接着する、第3接着工程をさらに含み、前記第2接着剤が、酢酸エチルを含むウレタン系接着剤であってもよい。
【0024】
本発明の加飾シートの製造方法において、前記第2接着工程の後に、前記金属層および/または前記保護層に第2接着剤を塗布して、前記第2接着剤を乾燥させた後、前記金属層と前記保護層とを貼り合わせることにより接着する、第4接着工程をさらに含み、前記第2接着剤が、酢酸エチルを含むウレタン系接着剤であってもよい。
【0025】
本発明の加飾シートの製造方法において、前記混合物が、カルボジイミドをさらに含んでいてもよい。
【0026】
本発明の押出ラミネート体は、本発明の加飾シートの前記基材層および/または前記保護層に樹脂シートが積層したものである。
【0027】
本発明の加飾シート成形体は、本発明の加飾シートの成形体を備える。
【0028】
本発明の射出成形体は、本発明の加飾シート成形体の前記基材層の表面および/または前記保護層の表面に射出成形された樹脂層を備える。
【0029】
本発明の押出ラミネート体の製造方法は、本発明の加飾シートの前記基材層および/または前記保護層に溶融樹脂シートを積層する積層工程を含む。
【0030】
本発明の加飾シート成形体の製造方法は、表面温度が150℃~230℃である本発明の加飾シートを、型に密着させて加飾シート成形体を得る成形工程を含む。
【0031】
また、本発明の加飾シート成形体の製造方法は、真空および/または圧空により前記加飾シートを前記型に密着させてもよい。
【0032】
本発明の加飾シート成形体の製造方法において、前記成形工程の前に、本発明の加飾シートをクランプするクランピング工程と、前記クランピング工程後に前記加飾シートを加熱する加熱工程を含んでいてもよい。
【0033】
本発明の射出成形体の製造方法は、射出成形金型を用いて、本発明の加飾シート成形体の製造方法により得た加飾シート成形体の前記基材層の表面および/または前記保護層の表面と、前記射出成形金型との間に樹脂を注入して樹脂層を形成し、前記加飾シート成形体と前記樹脂層とが一体化した射出成形体を得る射出成形工程を含むものである。
【発明の効果】
【0034】
本発明の金属保持フィルムであれば、従来の変性ポリエチレンテレフタレートを金属層保持層として用いた加飾シートと同様に加飾シートとして求められる品質を満たし、かつ、変性ポリエチレンテレフタレートを用いた場合よりも成形性に優れた加飾シートを製造することができる。
【0035】
本発明の加飾シートであれば、従来の変性ポリエチレンテレフタレートを金属層保持層として用いた加飾シートと同様に加飾シートとして求められる品質を満たし、かつ、変性ポリエチレンテレフタレートを用いた場合よりも成形性に優れていることから、樹脂等の加飾対象物の加飾加工の際に、従来の加飾シートよりも加工しやすくなる。
【0036】
本発明の加飾シートの製造方法であれば、従来の変性ポリエチレンテレフタレートを金属層保持層として用いた加飾シートと同様に加飾シートとして求められる品質を満たし、かつ、変性ポリエチレンテレフタレートを用いた場合よりも成形性に優れた加飾シートを製造することができる。
【0037】
本発明の押出ラミネート体であれば、本発明の加飾シートが、従来の変性ポリエチレンテレフタレートを金属層保持層として用いた加飾シートと同様に加飾シートとして求められる品質を満たし、かつ、変性ポリエチレンテレフタレートを用いた場合よりも成形性に優れていることから、加飾シートの剥離等の品質低下を抑制することができる。
【0038】
本発明の加飾シート成形体であれば、本発明の加飾シートの成形体を備えており、本発明の加飾シートが、従来の変性ポリエチレンテレフタレートを金属層保持層として用いた加飾シートと同様に加飾シートとして求められる品質を満たし、かつ、変性ポリエチレンテレフタレートを用いた場合よりも成形性に優れていることから、樹脂等の加飾対象物の加飾加工の際に、従来の加飾シートよりも加工しやすくなる。
【0039】
本発明の射出成形体であれば、本発明の加飾シートの成形体である加飾シート成形体を備えており、本発明の加飾シートが、従来の変性ポリエチレンテレフタレートを金属層保持層として用いた加飾シートと同様に加飾シートとして求められる品質を満たし、かつ、変性ポリエチレンテレフタレートを用いた場合よりも成形性に優れていることから、加飾シートの剥離等の品質低下を抑制することができる。
【0040】
本発明の押出ラミネート体の製造方法であれば、本発明の加飾シートが、従来の変性ポリエチレンテレフタレートを金属層保持層として用いた加飾シートと同様に加飾シートとして求められる品質を満たし、かつ、変性ポリエチレンテレフタレートを用いた場合よりも成形性に優れていることから、加飾シートの剥離等の品質低下を抑制することができる押出ラミネート体を製造することができる。
【0041】
本発明の加飾シート成形体の製造方法であれば、本発明の加飾シートを用いていることから、得られた加飾シート成形体を用いて加飾した製品における加飾シートの剥離等の品質低下を抑制することができる。
【0042】
本発明の射出成形体の製造方法であれば、本発明の加飾シート成形体の製造方法により得た加飾シート成形体を用いることから、射出成形体における加飾シートの剥離等の品質低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の一実施形態にかかる金属保持フィルムを模式的に示す断面図である。
図2】(A)は、本発明の一実施形態にかかる加飾シートを模式的に示す断面図であり、(B)は加飾シートの変形例を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態にかかるTOM成形用加飾シートを示す断面図である。
図4図1図2に示した金属保持フィルム、加飾シートの製造方法における、各工程を模式的に説明する断面図である。
図5】本発明の一実施形態にかかる加飾シート成形体の製造方法における、各工程を模式的に説明する断面図である。
図6】従来の加飾シートを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
[金属保持フィルムおよび加飾シート]
本発明の一実施形態にかかる金属保持フィルムおよび加飾シートについて、図面を参照して説明する。
【0045】
本実施形態の金属保持フィルム100は、例えば、加飾シート300A,300BやTOM成形用加飾シート400A,400Bを製造する用途に用いることができる。また、本実施形態の加飾シート300A,300Bは、例えば、自動車の内外装、家電、スマートフォン、アミューズメント製品等の加飾対象物の樹脂部分の表面を加飾するために用いることができる。
【0046】
なお、本明細書において、厚さ方向とは、金属保持フィルムや加飾シートの積層方向を指すものとする。また、幅方向とは、金属保持フィルムや加飾シートの長手方向に対して直行する方向を指すものとする。
【0047】
〈金属保持フィルム〉
本実施形態の金属保持フィルム100は、金属層110と、金属層110を保持する金属層保持層120と、を備える。
【0048】
(金属層保持層)
金属層保持層120は、ポリカーボネート系ポリウレタン、および、シリコーン系界面活性剤を含有している。また、ポリカーボネート系ポリウレタンとシリコーン系界面活性剤との質量比が、100:2.5~5.0である。
【0049】
また、ポリカーボネート系ポリウレタンが、イソシアネートと、シクロヘキサンを含まない直鎖炭化水素型ポリオールと、シクロヘキサンを含むポリオールと、の反応物を含み、かつ、それぞれのモル比が、イソシアネート:シクロヘキサンを含まない前記直鎖炭化水素型ポリオール:シクロヘキサンを含む前記ポリオール=1.0:0.6:0.9~1.0:0.8:0.7である。
【0050】
金属層保持層120として、上記のようなポリカーボネート系ポリウレタンを用いることにより、タック性を低くすることができる。金属層を形成する前の中間体として金属層保持層120を巻き取りする場合があり、巻き取りする場合においても、タック性が低くなることにより、金属層保持層120を巻き取りやすくすることができる。
【0051】
また、加飾シートの製造方法の項目で後述するように、金属層保持層120は、ポリカーボネート系ポリウレタン、シリコーン系界面活性剤を含む混合物を離型樹脂層に塗布して乾燥することにより形成することができる。ポリカーボネート系ポリウレタンのイソシアネート、シクロヘキサンを含まない直鎖炭化水素型ポリオール、および、シクロヘキサンを含むポリオールの比率を適切な範囲にすることにより、金属層保持層を、乾燥膜厚が10μm~25μm程度の厚さとなるように離型樹脂層に薄く塗布しても、はじくことが抑制されて、厚さの均一な膜を形成することができる。
【0052】
また、ポリカーボネート系ポリウレタンのイソシアネート、シクロヘキサンを含まない直鎖炭化水素型ポリオール、および、シクロヘキサンを含むポリオールの比率を適切な範囲にすることにより、均一な金属層を形成することができる。すなわち、ポリカーボネート系ポリウレタンのイソシアネート、シクロヘキサンを含まない直鎖炭化水素型ポリオール、および、シクロヘキサンを含むポリオールの比率が上記範囲外である場合には、形成された金属層保持層において、ブロッキングが起こることがある。すなわち、金属層を蒸着する前に、金属層保持層を解反するときに、静電気が発生して、金属層保持層の帯電圧が高くなり、均一な金属層が形成されなかったり、金属層において、放電痕が形成されたりすることがある。
【0053】
また、金属層保持層120の、100℃における100%引張応力が3N以下であり、金属層保持層120の100℃における破断伸び率が210%以上である。
【0054】
ここで、引張応力と破断伸び率は、JIS K 7127に従って測定することができる。すなわち、引張応力は、以下のように測定することができる。まず、金属保持層120の幅10mm、長さ150mmのフィルムを測定用の試料とし、試料中央部に50mm離れて平行な2本の標線をつける。そして、この測定用試料を100%伸ばした(すなわち、標線間距離の長さを100mmまで伸ばした)ときの応力を測定して100%引張応力とする。また、破断伸び率とは、金属層保持層120のフィルムを破断するまで長手方向に伸ばして、伸ばす前の長さ寸法に対する破断したときの長さ寸法を示す値である。破断伸び率を測定するための試料としては、例えば、幅10mm、長さ150mmのフィルムを用いることができる。
【0055】
金属層保持層120の引張応力と破断伸び率が上記の範囲であることにより、このような金属保持フィルムを用いて製造した加飾シートの成形性が良好となり、成形後に金属保持フィルムが元の形状に戻ろうとして、剥離することを抑制することができる。
【0056】
また、金属層保持層120は、カルボジイミドをさらに含み、ポリカーボネート系ポリウレタンとカルボジイミドとの質量比が、100:10~25であってもよい。これにより、このような金属保持フィルムを用いて製造した加飾シートの耐水性、耐湿性を向上させて、白濁を抑制することができる。
【0057】
また、金属層保持層120において、イソシアネートとして、シクロヘイキシルイソシアネートを用いることができ、4,4’メチレンビス(シクロへキシルイソシアネート)を好適に用いることができる。また、シクロヘキサンを含まない直鎖炭化水素型ポリオールとして、n-ペンタンジメタノールカーボネート、n-ヘプタンジメタノールカーボネートを用いることができ、n-ヘキサンジメタノールカーボネートを好適に用いることができる。また、シクロヘキサンを含むポリオールとして、シクロヘキサンジエタノールカーボネートを用いることができ、シクロヘキサンジメタノールカーボネートを好適に用いることができる。
【0058】
また、金属層保持層120が、平均厚さが10μm~25μmであり、かつ、厚さが平均厚さ-0.5μm~平均厚さ+0.5μmの範囲内であってもよい。
【0059】
金属層保持層120の厚さを上記範囲とすることにより、金属保持層の巻取長を長くすることができ、1回の生産(1バッチ)量を大きくすることができる。また、金属層保持層120の厚さを上記範囲とすることにより、金属層保持層120を用いた後工程において、シワや破断等の不良が発生し難くなり、金属保持フィルム100の取扱性を向上させることができる。また、金属層保持層120の厚さを上記範囲とすることにより、金属層保持層120の引張応力を十分に小さくして、金属保持フィルム100を用いた加飾シートの成形性を良好にすることができる。
【0060】
また、金属層保持層120の厚さが平均厚さ-0.5μm~平均厚さ+0.5μmの範囲内である、すなわち、金属層保持層120が均一な厚さに形成されていることにより、金属保持フィルム100、また、金属保持フィルム100を用いて製造した加飾シートにおいて、安定した品質を得ることができる。
【0061】
また、金属層保持層120は、光線透過率が90%以上であり、ヘイズが1.3%以下とすることができる。光線透過率とヘイズを当該範囲に設定することにより、金属保持フィルム100を用いて製造した加飾シートの透明性がより高くなり、加飾シートに金属調の意匠性を十分に付与することができ、所望の意匠性を得ることができる。
【0062】
上記のような金属層保持層120は、例えば、ポリウレタン樹脂を水等の水系溶媒に分散したポリカーボネート系ポリウレタンディスパージョン(水性ポリカーボネート系ポリウレタンディスパージョン)を用いて形成することができる。ポリウレタンディスパージョンとしては、例えば、ポリウレタンディスパージョン UW5002,UW5502(宇部興産製)等を用いることができる。
【0063】
また、金属層保持層120には、単一のポリウレタン樹脂を用いてもよいし、異なる構造を有するポリウレタン樹脂を2種類以上混合して用いてもよい。例えば、金属層保持層120が前述の物性となるように、ポリウレタンディスパージョン UW5002,UW5502(宇部興産製)等を混合して用いることができる。
【0064】
また、金属層保持層120には、所望の意匠性を付与するために、マット加工、エッチング加工、ヘアライン加工等が施されていてもよい。また、金属層保持層120は、所望の色調を得るために、顔料や染料を含んでいてもよい。
【0065】
また、金属層保持層120は、前述の材料の他に、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加物を含んでもよい。
【0066】
(金属層)
金属層110は、金属層保持層120に保持されており、金属保持フィルム100を用いて後述の加飾シート300A,300B、TOM成形用加飾シート400A,400Bを製造することにより、これらに対して金属調の意匠性を付与することができる。
【0067】
また、金属層110の厚さは、特に限定されず、例えば、10nm~200nmとすることができる。金属層110の厚さが薄すぎると、均一な層を形成することが難しく、また、加飾シートを製造した場合に金属調の意匠性を得ることが難しいことがある。また、金属層110の厚さが厚すぎると、装飾性や意匠性への影響は飽和し、さらに金属調加飾シート中間体の製造コストの上昇を引き起こすおそれがある。
【0068】
また、金属調加飾シートとバックライトとの構成により、金属層を介して光を透過させることで、装飾性や意匠性を演出する場合がある。このような場合は、金属層の厚さが10nm~50nmの範囲であれば、装飾性や意匠性等を満足することができる。
【0069】
また、金属層110を構成する金属は、特に限定されず、所望の意匠性等により適宜選択することができる。金属層110を構成する金属としては、充分な金属光沢を金属調加飾シートに付与することができ、かつ、展性に優れた金属または合金を1種または2種以上組み合わせたものである。具体的には、アルミニウム、インジウム、クロム、亜鉛、ガリウム、ニッケル、錫、銀、金、ケイ素、クロム、チタン、白金、パラジウム、ニッケル、ステンレススチールおよびハステロイ等ならびにこれらの合金からなる群から選択される1種または2種以上を用いることができる。
【0070】
また、金属層110は、例えば、金属層保持層120に前述の金属を蒸着することにより形成することができる。また、金属層110は、例えば、スパッタリング法やイオンプレーティング法等により形成することができる。
することができる。
【0071】
また、本実施形態の金属保持フィルムの幅方向の寸法は特に限定されず、工業的に製造可能な幅であってもよく、例えば、1000mm~2000mmであってもよい。なお、金属層保持層120において、前述のようなポリカーボネート系ポリウレタンを用いることにより、安定して均一な膜厚の金属層保持層120を形成することができ、金属保持フィルム100を工業的に製造することができる。
【0072】
なお、例えば加飾シート等の中間体として、金属保持フィルムの状態で流通したり、保管されたりする場合には、金属層保持層120の金属層110とは反対側の面に、離型樹脂層130(図4(D))がさらに積層されていてもよい。また、金属層110に、汚れや傷がつくのを防止するために、保護フィルムがさらに積層されていてもよい。
【0073】
また、金属層保持層において、前述のようなポリカーボネート系ポリウレタンを用いることにより、均一な金属層保持層120を形成することができる。また、金属層保持層120における静電気の発生を抑制することで金属層保持層120のブロッキングを抑制することができる。このことにより、金属層110における放電痕等の形成不良が抑制され、また、金属層保持層120に金属層110を均一に形成することができる。また、このような金属保持フィルムを用いて加飾シートを製造することにより、従来の変性ポリエチレンテレフタレートを用いた加飾シートと同等の意匠性を有する加飾シートを得ることができる。
【0074】
本実施形態の金属保持フィルムであれば、従来の変性ポリエチレンテレフタレートを金属層保持層として用いた加飾シートと同様に、金属層の均一性や透明性等の点において加飾シートとして求められる品質を満たし、かつ、変性ポリエチレンテレフタレートを用いた場合よりも成形性に優れた加飾シートを製造することができる。
【0075】
〈加飾シート〉
本実施形態の加飾シート300A、300Bは、順に、基材層310、第1接着層320、前述した本発明の一実施形態にかかる金属保持フィルム100、第2接着層330、および、保護層340を含むものである。金属保持フィルム100は、図2(A)の加飾シート300Aのように、金属層110が基材層310側に積層されていてもよいし、図2(B)の加飾シート300Bのように、金属層保持層120が基材層310側に積層されていてもよい。なお、金属保持フィルムについては、前述した実施形態の金属保持フィルム100と同じであることから、説明を省略する。
【0076】
(基材層)
基材層310は、加飾シート300A、300Bの最下層に配される層であり、加飾シート300A、300Bを用いて加飾する際の温度に耐えられるものである。また、透明性が要求されない場合には、透明性等の色彩、透明度などに関しても通常特に要求されない。ただし、基材層310の色調が表面における金属光沢への色調に影響を与えるおそれがある。
【0077】
また、加飾シート300A、300B、加飾対象物、バックライトとの構成により、金属層110を介して光を透過させることで、装飾性や意匠性を演出する場合があり、この場合には、基材層310も透明性が要求される。透明性の目安としての光線透過率やヘイズについては、上記したとおりであるため、説明を省略する。
【0078】
このような色調への影響や透明性を考慮し、用途に応じてポリ塩化ビニル系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体系等の樹脂から、成形時の温度に対する耐熱性、インサート射出成形における射出成形樹脂、押出ラミネートにおける押出樹脂との相溶性等を考慮して、基材層310の材料を適宜選択することができる。
【0079】
例えば、高い透明性が要求されない場合には、基材層310としては、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体系の樹脂を原料とする基材層を用いることができる。
【0080】
また、高い透明性が要求される場合には、基材層310としては、透明性に優れ、射出密着性の高いポリカーボネート系やアクリル系の樹脂を原料とする基材層を用いることができる。
【0081】
基材層310の厚さとしては、加飾シートとして一般的な厚さとすることができ、例えば25μm~500μmとすることができる。基材層310の厚さが薄すぎる場合には、金属保持フィルム100との積層加工をする時に、しわ等の瑕疵が発生しやすく、また、成形加工時に加飾シート300A、300Bが破断しやすくなる場合がある。一方、基材層310の厚さが厚すぎると、加飾シート300A、300Bの成形性が低下するおそれがある。
【0082】
(第1接着層)
第1接着層320は、金属保持フィルム100と基材層310とを接着する層である。例えば、金属保持フィルム100および/または基材層310に第1接着剤を塗布することにより、第1接着層320を形成することができる。さらに、両面テープのような、両面が粘着性を有するシート等も、第1接着層320として用いることができる。
【0083】
第1接着層320を接着剤で構成する場合には、接着剤としては、ポリウレタン系、ポリ酢酸ビニル系、エチレン酢酸ビニル共重合体系、ポリビニルアルコール系、エポキシ系、シリコーン系等の各樹脂から選ばれた1種、あるいは2種以上の混合物が挙げられる。例えば、透明性や接着性、成形時の温度に耐えられる耐熱性等を考慮すると、ポリウレタン系の接着剤を用いることができる。
【0084】
接着剤で第1接着層320を形成する方法は、特に限定されない。例えば、使用に際しては適宜溶剤を用いて、あるいは、エマルジョンとして、グラビアコーター、リバースコーター、ナイフコーター、ロールコーター等の公知の手段により、適量を塗布し、必要に応じて乾燥して、第1接着層320を形成することができる。
【0085】
また、第1接着層320の厚さとしては、加飾シートとして一般的な厚さとすることができる。例えば、接着性や乾燥時間、コスト等を考慮すると、2μm~20μm程度の厚さとすることができる。
【0086】
(第2接着層)
第2接着層330は、保護層340と金属保持フィルム100とを接着する層である。例えば、金属保持フィルム100および/または保護層340に第2接着剤を塗布することにより、第2接着層330を形成することができる。さらに、両面テープのような、両面が粘着性を有するシート等も、第2接着層330として用いることができる。また、第2接着層は、着色されていてもよい。第2接着層の透明度や色調等を調整するべく、種々の色素、顔料および/または染料等を含んでもよく、金属粉末、金属箔粉末および/またはマイカ等が含まれてもよい。
【0087】
第2接着層330を接着剤で構成する場合には、金属層110を視認できる透明性を有する接着剤を用いることが好ましい。さらに、屋外で使用される用途の場合は、耐候性に優れる接着剤を用いることが好ましい。透明性の目安としては、例えば、光線透過率やヘイズを指標とすることができる。
【0088】
このような接着剤としては、ポリウレタン系、ポリ酢酸ビニル系、エチレン酢酸ビニル共重合体系、エポキシ系、シリコーン系等の各樹脂から選ばれた1種、あるいは2種以上の混合物が挙げられる。例えば、透明性や接着性、成形時の温度に耐えられる耐熱性、耐候性等を考慮すると、無黄変タイプのポリウレタン系接着剤を用いることができる。
【0089】
接着剤で第2接着層330を形成する方法は、特に限定されない。例えば、使用に際しては適宜溶剤を用いて、あるいは、エマルジョンとして、グラビアコーター、リバースコーター、ナイフコーター、ロールコーター等の公知の手段により、適量を塗布し、必要により乾燥して、第2接着層330を形成することができる。
【0090】
また、第2接着層330の厚さとしては、加飾シートとして一般的な厚さとすることができる。例えば、接着性や透明性、乾燥時間、コスト等を考慮すると、2μm~20μm程度の厚さとすることができる。
【0091】
(保護層)
保護層340は、加飾シート300A、300Bの最上層に配される層であり、金属層110が視認できるよう透明性を有し、加飾シート300A、300Bを加工する際の温度に耐えられるものである。
【0092】
保護層340は、透明度や色調等を調整するべく、各種の色素や顔料等を含んでもよく、また、染料によって染色されていても良い。さらに、保護層340には予め所望の印刷がされてあっても良い。この場合、保護層340が外部と接触する面に印刷することができるが、外部と接触する面とは反対側の面である、第2接着層330と接触する面に印刷されることで、印刷の耐久性を向上させることができる。
【0093】
保護層340の材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリカーボネート系等の樹脂が挙げられる。これらの樹脂から、加工性、透明性、成形時の温度に対する耐熱性、経済性等を考慮して、保護層340の材料を適宜選択することができる。
【0094】
例えば、加飾した際の表面として、表現性に優れた成形品が得られること、および、耐擦傷性の点で、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル系の樹脂フィルムを保護層340として用いることができる。この場合には、加飾シート300A、300Bを成形するにあたり、優れた成形性が得られる。また、成形後の加飾シート300A、300Bの表面にハードコート層等を設けることが不要となり、低コスト化が可能となる。さらに、絞りの大きい成形物に応用した場合であっても、成形した加飾シート300A,300Bの全表面において、高い耐擦傷性が得られる。
【0095】
なお、アクリル系樹脂フィルムを用いた場合の上記の効果に加えて、優れた耐候性をも同時に成形品に賦与したい場合には、フッ素系樹脂とアクリル系樹脂とのアロイフィルムや、フッ素系樹脂層とアクリル系樹脂層とからなる2層フィルム等を用いることで対応することができる。
【0096】
ただし、このようなアロイフィルムを用いた場合には、接着性に劣る場合があり、高い接着性を得たい場合には、フッ素樹脂成分の多いフッ素系樹脂とアクリル系樹脂とのアロイフィルム層と、フッ素樹脂成分の少ないフッ素系樹脂とアクリル系樹脂とのアロイフィルム層とからなる複合アロイフィルムを用いることができる。そして、この複合アロイフィルムにおいて、フッ素樹脂成分の少ないフッ素系樹脂とアクリル系樹脂とのアロイフィルム層側に第2接着層330を設けることにより、アクリル系樹脂の良好な密着性とフッ素系樹脂の優れた耐候性とを併せて得ることができる。また、アクリル系樹脂フィルムを保護層340として用いた場合、高い耐擦傷性が得られる。
【0097】
また、ポリカーボネート系の樹脂は、透明性、耐熱性、耐衝撃性、成形性に優れ、密着性が高いことから、保護層340の材料として用いることができる。
【0098】
保護層340の厚さは、通常は10μm以上とすることが好ましく、取り扱い性を考慮すると25μm以上であることがより好ましい。一方、成形性、可撓性および経済性を考慮すると、保護層340の厚さは200μm以下とすることが好ましい。一般的には、25μm~200μmの厚さの保護フィルムを用いることができる。
【0099】
ここで、従来の加飾シート900は、図6に示すように、例えば、順に、基材層910と、第1接着層920と、金属保持フィルム930と、第2接着層940と、保護層950と、が積層したものである。金属保持フィルム930は、変性ポリエチレンテレフタレートからなる金属保持層931と、金属層932と、を有している。
【0100】
従来の加飾シートでは、変性ポリエチレンテレフタレートフィルムが金属層保持層として、多く用いられていた。変性ポリエチレンテレフタレートフィルムは、フィルム形成時に2軸延伸されていることから、加飾シートの基材層や保護層として多く用いられる、無延伸のPMMAやABSシートよりも引張応力が高い。なお、140℃環境下における100%延伸時の引張応力は、厚さ75μmのPMMAの場合4.1N程度、厚さ250μmのABSの場合3.8~7.1N程度、厚さ25μmの変性ポリエチレンテレフタレートの場合26N程度である。このことから、このような変性ポリエチレンテレフタレートとPMMAやABSシートが積層された従来の加飾シートにおいては、変性ポリエチレンテレフタレートとPMMAやABSシートとの伸展性が異なることから、加飾した製品の継時変化により、特に高温、高湿度環境下に長期間暴露された場合に、変性ポリエチレンテレフタレート層から加飾シートが剥がれてしまうことがあった。
【0101】
本実施形態の加飾シートであれば、従来の変性ポリエチレンテレフタレートを金属層保持層として用いた加飾シートと同様に加飾シートとして求められる品質を満たし、かつ、変性ポリエチレンテレフタレートを用いた場合よりも成形性に優れていることから、樹脂等の加飾対象物の加飾加工の際に、従来の加飾シートよりも加工しやすくなる。
【0102】
すなわち、本実施形態の加飾シートにおける金属層保持層は、加飾シートの他の層と同程度の引張応力を有することから、伸展性が他の層と同程度となり、本実施形態の加飾シート300A、300Bにより加飾した加飾対象物(加飾成形体)における、加飾シート300A、300Bの剥離等の品質低下を抑制することができる。
【0103】
また、本実施形態の加飾シートであれば、従来の変性ポリエチレンテレフタレートの金属層保持層にかえて、ポリカーボネート系ポリウレタンを含み前述の物性を有する金属層保持層120としたことから、従来の変性PETフィルムを用いた加飾シートよりも低い温度で成形加工することができ、より取り扱いやすくすることができる。
【0104】
〈TOM成形用加飾シート〉
次に、本実施形態のTOM成形用加飾シートについて、図3を参照して説明する。本実施形態のTOM成形用加飾シート400A,400Bは、樹脂部材等の加飾対象物をTOM成形により加飾する用途に用いることができる。
【0105】
ここで、TOM成形とは、圧力差を利用した真空成形であり、3次元表面被覆成形のことを指す。TOM成形は、例えば、3次元表面被覆成形機(例えば、NGF成形機、布施真空株式会社製)により行うことができる。
【0106】
3次元表面被覆成形機によるTOM成形は、例えば、以下の手順で行われる。まず、加飾シートの設置箇所を境にして上下に分かれたボックス内の、下側に加飾対象物を設置して、ヒーターを備える上側に、接着層/粘着層が加飾対象物に向くように加飾シートを設置する。そして、上下のボックス内を真空状態とし、真空を維持したままヒーターにより加飾シートを加熱することで加飾シートを軟化させる。さらに、加飾対象物と加飾シートを接触させて、加飾シートが設置された上側のボックスを大気圧に戻すことにより、加飾対象物と加飾シートとを密着させる。以上により、TOM成形体が得られる。
【0107】
本実施形態のTOM成形用加飾シート400Aは、順に、粘着層420と、前述した本発明の一実施形態にかかる金属保持フィルム100と、第2接着層330と、保護層340と、を備える。金属保持フィルム100は、TOM成形用加飾シート400A(図3(A))のように金属層110を粘着層420側にして積層されていてもよいし、TOM成形用加飾シート400B(図3(B))のように金属層110を第2接着層330側にして積層されていてもよい。
【0108】
すなわち、本実施形態のTOM成形用加飾シート400A,400Bは、前述した加飾シート300A、300Bとは、基材層310がなく、第1接着層320が粘着層420に置き換わったものである。金属保持フィルム100、第2接着層330、保護層340については、前述した実施形態と同じであることから、説明を省略する。
【0109】
粘着層420は、ホットメルト接着剤や粘着剤を含み、厚さは例えば、2μm~25μm程度とすることができる。また、粘着層420に含まれるホットメルト接着剤や粘着剤は特に限定されず、例えば、アクリル酸エステル共重合体(例えば、G25 日栄化工株式会社製)を用いることができる。
【0110】
粘着層420の形成については、第1接着層320、第2接着層330と同様に、適宜溶剤を用いて、あるいは、エマルジョンとして、グラビアコーター、リバースコーター、ナイフコーター、ロールコーター等の公知の手段により、適量を塗布し、必要に応じて乾燥することにより形成することができる。
【0111】
また、TOM成形用加飾シート400A、400Bは、輸送や保管時に粘着層420を保護するための剥離シートを粘着層420側にさらに備えていてもよい。
【0112】
本実施形態のTOM成形体用加飾シートであれば、従来の変性ポリエチレンテレフタレートを金属層保持層として用いた加飾シートと同様に加飾シートとして求められる品質を満たし、かつ、変性ポリエチレンテレフタレートを用いた場合よりも成形性に優れており、加飾シートの剥離等の品質低下を抑制することができる。
【0113】
[加飾シートの製造方法]
本発明の一実施形態にかかる加飾シートの製造方法について、図4を参照して説明する。本発明の加飾シートの製造方法は、前述した本発明の一実施形態にかかる加飾シートを製造する方法である。
【0114】
〈加飾シート300Aの製造方法〉
本実施形態の加飾シートの製造方法として、図2(A)の加飾シートを製造する方法を例示して説明する。
【0115】
本実施形態の加飾シートの製造方法は、離型樹脂層130(図4(A))の表面に、水性ポリカーボネート系ポリウレタンディスパージョンと、シリコーン系界面活性剤と、を含む混合物を、乾燥膜厚が平均10μm~25μmとなるように成膜して、離型樹脂層130と金属層保持層120とが積層した第1積層体100A(図4(B))を得る、第1積層体形成工程と、第1積層体100Aの巻取物100B(図4(C))を解反する解反工程と、解反工程後に、金属層保持層120に金属層110を蒸着して、金属層保持層120と金属層110とを備える金属保持フィルム100を含む第2積層体100C(図4(D))を得る蒸着工程と、を備える。なお、前記解反工程と、前記蒸着工程とは、通常、連続的に行われる。
【0116】
以下、加飾シート300Aの製造方法について、第1積層体形成工程、解反工程、蒸着工程、第1接着工程、第3接着工程の順に説明する。
【0117】
(第1積層体形成工程)
第1積層体形成工程においては、水性ポリカーボネート系ポリウレタンディスパージョンと、シリコーン系界面活性剤と、を含む混合物を、乾燥膜厚が平均10μm~25μmとなるように成膜する。具体的には、前記混合物を、例えば、ダイコーターを用いて離型樹脂層130に塗布して乾燥させることにより、金属層保持層120を成膜する。これにより、延伸することなく金属層保持層120を形成して、第1積層体100Aが得られる。
【0118】
金属層保持層120の原料の混合物が、シリコーン系界面活性剤を含むことにより、金属層保持層120をキャスティングにより形成する場合に、ぬれ性を改善して、金属層保持層120を形成するときのはじきを抑制して、金属層保持層120を均一に形成することができる。
【0119】
また、前記混合物が、カルボジイミドを含んでいてもよい。金属層保持層120の耐溶剤性が十分ではない場合には、第1接着材または第2接着剤を塗布した際に金属層保持層120が白化して、加飾シートの光沢度が低下することがある。金属層保持層120の原料の混合物が、カルボジイミドを含むことにより、第1接着剤、第2接着剤に酢酸エチルが含まれる場合であっても、金属層保持層120の耐溶剤性を向上させて、白化を抑制することができる。
【0120】
金属層保持層120の原料の混合物は、さらに、水を含んでいてもよい。混合物が水を含んでいることにより、溶剤の揮発性が改善され、また、原料の混合物の粘度を低下させて、原料の混合物の泡立ちを抑制することができる。また、金属層保持層120のブロッキングを抑制することができる。
【0121】
なお、第1積層体形成工程において均一な金属層保持層120の膜を得るために、原料の混合物を調製するときに、各原料をあらかじめフィルター濾過に供してもよい。フィルター濾過に用いるフィルターとしては、例えば、ポアサイズが1μmのフィルターを用いることができ、フィルターの材質は各原料に合わせて種々選択することができる。
【0122】
また、原料の混合物を塗布したあとの乾燥処理は、原料の混合物に含まれる溶媒等が十分に除去されて金属層保持層120の膜が形成される程度の条件とすることができる。例えば、150℃程度の温度で、3分間程度とすることができる。
【0123】
離型樹脂層130の大きさは特に限定されず、例えば、工業的に製造することを考慮して、幅は1000mm~2000mm、長さは300m~500mとすることができる。このような離型樹脂層130は通常巻き取られた状態(巻取物)であり、この巻取物を解反しながら金属層保持層の原料の混合物を塗布したのち乾燥させることにより、第1積層体100Aが得られる。
【0124】
(解反工程)
第1積層体100Aは、通常、長尺状に連続して製造されることから、金属層保持層120の形成とともに巻き取りされ、金属層110の形成前に、一旦、巻き取られた巻取物100Bの状態で保管される。解反工程は、金属層110の形成に先立ち、このような、第1積層体100Aの巻取物100B(図4(C))を解反する工程である。
【0125】
(蒸着工程)
蒸着工程は、解反工程後に、金属層保持層120に金属層110を蒸着する工程である。蒸着工程により、金属層保持層120と金属層110とを備える金属保持フィルム100を含む第2積層体100C(図4(D))が得られる。
【0126】
なお、金属保持フィルム100を備える第2積層体100Cを、加飾シート300A、300Bの中間体として、流通させたり、保管したりしてもよい。
【0127】
(第1接着工程)
また、本実施形態の加飾シートの製造方法において、図2(A)の加飾シート300Aを製造する場合には、蒸着工程の後に、第2積層体100Cの金属層110および/または基材層310に第1接着剤を塗布して、第1接着剤を乾燥させた後、金属層110と基材層310とを貼り合わせることにより接着する、第1接着工程をさらに含んでもよい。
【0128】
すなわち、第1接着工程においては、第2積層体100Cの金属層110と、基材層310の少なくとも一方に第1接着剤を塗布すればよく、どちらか一方に塗布してもよいし、両方に塗布してもよい。また、第1接着剤が、第1接着剤が、ウレタン系接着剤であってもよい。第1接着剤が、ウレタン系接着剤であることにより、金属との密着性、耐熱性、成形性を良好にすることができる。
【0129】
また、第1接着工程において塗布されて乾燥した第1接着剤は、金属層110と基材層310とが貼り合わせれたのち、第1接着層320となる。第1接着工程により、第3積層体200A(図4(E))が得られる。
【0130】
(第3接着工程)
さらに、第1接着工程の後に、第3積層体200Aの離型樹脂層130を剥離して、金属層保持層120および/または保護層340に第2接着剤を塗布して、第2接着剤を乾燥させた後、金属層保持層120と保護層340とを貼り合わせることにより接着する、第3接着工程をさらに含んでもよい。すなわち、第3接着工程においては、金属層保持層120と、保護層340の少なくとも一方に第2接着剤を塗布すればよく、どちらか一方に塗布してもよいし、両方に塗布してもよい。また、第2接着剤が、ウレタン系接着剤であってもよい。第2接着剤がウレタン系接着剤であることにより、金属との密着性、耐熱性、成形性を良好にすることができる。
【0131】
また、第3接着工程において塗布されて乾燥した第2接着剤は、金属層保持層120と保護層340とが貼り合わせれたのち、第2接着層330となる。以上の第3接着工程により、加飾シート300A(図4(F))が得られる。
【0132】
〈加飾シート300Bの製造方法〉
(第2接着工程)
また、図2(B)の加飾シート300Bを製造する場合には、蒸着工程の後に、第2積層体100Cから離型樹脂層130を剥離して、金属層保持層120および/または基材層310に第1接着剤を塗布して、第1接着剤を乾燥させた後、金属層保持層120と基材層310とを貼り合わせることにより接着する、第2接着工程をさらに含んでもよい。
【0133】
すなわち、第2接着工程においては、第2積層体100Cの金属層保持層120と、基材層310の少なくとも一方に第1接着剤を塗布すればよく、どちらか一方に塗布してもよいし、両方に塗布してもよい。また、第1接着剤が、ウレタン系接着剤であってもよい。第1接着剤が、ウレタン系接着剤であることにより、金属との密着性、耐熱性、成形性を良好にすることができる。
【0134】
また、第2接着工程において塗布されて乾燥した第1接着剤は、金属層保持層120と基材層310とが貼り合わせれたのち、第1接着層320となる。第2接着工程により、第3積層体200B(図4(G))が得られる。
【0135】
(第4接着工程)
また、第2接着工程の後に、金属層110および/または保護層340に第2接着剤を塗布して、第2接着剤を乾燥させた後、金属層110と保護層340とを貼り合わせることにより接着する、第4接着工程をさらに含んでもよい。
【0136】
すなわち、第4接着工程においては、金属層110と、保護層340の少なくとも一方に第2接着剤を塗布すればよく、どちらか一方に塗布してもよいし、両方に塗布してもよい。また、第2接着剤が、ウレタン系接着剤であってもよい。第2接着剤が、ウレタン系接着剤であることにより、金属との密着性、耐熱性、成形性を良好にすることができる。
【0137】
また、第4接着工程において塗布されて乾燥した第2接着剤は、金属層110と保護層340とが貼り合わせれたのち、第2接着層330となる。以上の第4接着工程により、加飾シート300B(図4(H))が得られる。
【0138】
本実施形態の加飾シートの製造方法であれば、従来の変性ポリエチレンテレフタレートを金属層保持層として用いた加飾シートと同様に加飾シートとして求められる品質を満たし、かつ、変性ポリエチレンテレフタレートを用いた場合よりも成形性に優れた加飾シート300A、300Bを製造することができる。
【0139】
なお、本実施形態の加飾シートの製造方法においては、第1接着工程または第2接着工程において基材層を積層したのち、第3接着工程または第4接着工程において保護層を積層するものであった。基材層と保護層を積層する順序は本実施形態に限定されるものではなく、保護層を積層したのち、基材層を積層してもよい。
【0140】
また、本実施形態の加飾シートの製造方法においては、離型樹脂層130と金属層保持層120との積層体(第1積層体100A)の巻取物100Bを用いたが、第1積層体100Aを巻き取らずに金属層110を積層してもよい。
【0141】
〈TOM成形用加飾シートの製造方法〉
なお、前述したTOM成形用加飾シート400A、400Bは、例えば、本実施形態の加飾シートの製造方法において、第1接着工程または第2接着工程に代えて、粘着層420と、粘着層420を保護する剥離シートを積層したのち、第3接着工程または第4接着工程のように、金属保持フィルム100に第2接着層330、保護層340を積層することにより製造することができる。なお、TOM成形用加飾シート400A、400Bの製造においては、第2接着層330、保護層340を先に積層したのち、粘着層420を積層してもよい。TOM成形用加飾シートを用いてTOM成形により加飾成形品を製造する場合、成形温度は110℃~150℃程度とすることができる。
【0142】
[押出ラミネート体]
本発明の一実施形態にかかる押出ラミネート体について説明する。
【0143】
本発明の一実施形態にかかる押出ラミネート体は、前述した本発明の一実施形態にかかる加飾シート300A(または加飾シート300B)の基材層310および/または保護層340に樹脂シートが積層したものである。本実施形態の押出ラミネート体をさらに加工して、キャリーバックやスーツケース等を製造することができる。加飾シート、保護層および基材層については、前述した実施形態と同じであり、説明を省略する。
【0144】
樹脂シートは、例えば、厚さが1mm~5mmのものを使用することができる。また、フィルムの素材としては、熱可塑性樹脂を使用することができ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタアクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリイミド等を単独でまたはこれらを組み合わせて使用することができる。
【0145】
また、保護層340や基材層310と前記樹脂シートとの間には接着層を設けることができる。
【0146】
本実施形態の押出ラミネート体であれば、本発明の一実施形態にかかる加飾シートが、従来の変性ポリエチレンテレフタレートを金属層保持層として用いた加飾シートと同様に加飾シートとして求められる品質を満たし、かつ、変性ポリエチレンテレフタレートを用いた場合よりも成形性に優れていることから、加飾シートの剥離等の品質低下を抑制することができる。
【0147】
[押出ラミネート体の製造方法]
本発明の一実施形態にかかる押出ラミネート体の製造方法について説明する。
【0148】
本発明の一実施形態にかかる押出ラミネート体の製造方法は、前述した本発明の一実施形態にかかる加飾シート300A(または加飾シート300B)の基材層310および/または保護層340に溶融樹脂シートを積層する積層工程を含む。加飾シート300A、300B、保護層340および基材層310については、前述した実施形態と同じであり、説明を省略する。
【0149】
前記積層工程は、押出ラミネート法により、押出ラミネート機を用いて行うことができる。例えば、上記した熱可塑性樹脂を押出機に投入して溶融させ、溶融した樹脂をTダイへ押出し、Tダイにて溶融樹脂シートとし、この溶融樹脂シートをラミネート部にて基材層310および/または保護層340に積層して積層物を得ることができる。積層工程後は、積層物を冷却し、所定の寸法に裁断して板にすることができる。
【0150】
本実施形態の押出ラミネート体の製造方法であれば、本発明の一実施形態にかかる加飾シートが、従来の変性ポリエチレンテレフタレートを金属層保持層として用いた加飾シートと同様に加飾シートとして求められる品質を満たし、かつ、変性ポリエチレンテレフタレートを用いた場合よりも成形性に優れていることから、加飾シートの剥離等の品質低下を抑制することができる押出ラミネート体を製造することができる。
【0151】
[加飾シート成形体および射出成形体]
本発明の一実施形態にかかる加飾シート成形体および射出成形体について説明する。
【0152】
〈加飾シート成形体〉
本発明の一実施形態にかかる加飾シート成形体は、本発明の一実施形態にかかる加飾シート300A(または加飾シート300B)の成形体を備える。加飾シート300A,300Bについては、前述のとおりであり、説明を省略する。
【0153】
加飾シート成形体は、例えば後述の製造方法により加飾シートから製造されたものであり、目的に応じて所望の形状に成形されたものである。例えば、スマートフォン、携帯電話の筐体、自動車用ドアミラーハウジング、フロントグリル、ドアハンドル、センターホイールキャップ、エンブレム、オーナメント、ガーニッシュ、ランプリフレクター、センターコンソール、インストールパネル等、パソコンやTV、家電の筐体や装飾部分、パチンコ、パチスロ、ゲーム機等の筐体や装飾部分、あるいは一般用途としてキャリーバックやスーツケース等に用いられ、メッキや金属材料に代えて金属調の装飾性や意匠性を付与することができる。
【0154】
加飾シート成形体は、上記の構成に加え、他の構成を備えてもよい。例えば、加飾シート成形体を使用するまでの間、保護層や基材層の表面を清浄な状態に維持し、汚れが付くのを防止するため、離型紙や保護フィルム等を保護層や基材層の表面に備えることができる。
【0155】
加飾シート成形体は、バックライトとの構成により、金属層を介して光を透過させることで、装飾性や意匠性を演出する場合がある。このような場合には、加飾シート成形体は透明であることが要求される。透明性の目安としての光線透過率やヘイズについては、上記したとおりであるため、説明を省略する。
【0156】
本実施形態の加飾シート成形体であれば、本発明の一実施形態にかかる加飾シートの成形体を備えており、本発明の一実施形態にかかる加飾シートが、従来の変性ポリエチレンテレフタレートを金属層保持層として用いた加飾シートと同様に加飾シートとして求められる品質を満たし、かつ、変性ポリエチレンテレフタレートを用いた場合よりも成形性に優れていることから、樹脂等の加飾対象物の加飾加工の際に、従来の加飾シートよりも加工しやすくなる。
【0157】
〈射出成形体〉
本発明の一実施形態にかかる射出成形体は、本発明の一実施形態にかかる加飾シート成形体の前記基材層の表面および/または前記保護層の表面に射出成形された樹脂層を備える。射出成形体をさらに加工して、スマートフォン、携帯電話の筐体、自動車用ドアミラーハウジング、フロントグリル、ドアハンドル、センターホイールキャップ、エンブレム、オーナメント、ガーニッシュ、ランプリフレクター、センターコンソール、インストールパネル等、パソコンやTV、家電の筐体や装飾部分に用いることができる。加飾シート成形体および基材層については、上記したとおりであり、説明を省略する。
【0158】
樹脂層の厚さは、特に限定されないが、例えば100μm~20mmの厚さとすることができる。また、樹脂層としては、熱可塑性樹脂を含む樹脂層を使用することができ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタアクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリイミド等を単独でまたはこれらを組み合わせて使用することができる。
【0159】
本実施形態の射出成形体であれば、本発明の一実施形態にかかる加飾シートの成形体である加飾シート成形体を備えており、本発明の一実施形態にかかる加飾シートが、従来の変性ポリエチレンテレフタレートを金属層保持層として用いた加飾シートと同様に加飾シートとして求められる品質を満たし、かつ、変性ポリエチレンテレフタレートを用いた場合よりも成形性に優れていることから、加飾シートの剥離等の品質低下を抑制することができる。
【0160】
[加飾シート成形体および射出成形体の製造方法]
本発明の一実施形態にかかる加飾シート成形体および射出成形体の製造方法について説明する。
【0161】
〈加飾シート成形体の製造方法〉
本発明の一実施形態にかかる加飾シート成形体の製造方法は、表面温度が150℃~230℃である本発明の一実施形態にかかる加飾シートを、型に密着させて成形体を得る成形工程を含む。
【0162】
(成形工程)
加飾シートを熱成形するべく、加飾シートの表面温度が140℃~190℃であることにより、成形中に加飾シートがドローダウンせず、白化現象等も発生しないため、良好な成形性を満足することができる。かかる表面温度が140℃未満の場合、加飾シートが十分に軟化しないことや、ドローダウン現象により加飾シートが垂れて変形することで、加工や成形が困難となる場合がある。また、かかる表面温度が190℃を超える場合には、加飾シートが溶融状態となり、軟化しすぎて成形が困難となる場合や、白化現象等が発生しやすくなる場合がある。
【0163】
加飾シートを密着させる型の形状は、加飾シート成形体を所望の形状に成形することができるよう、任意の形状とすることができる。例えば、真鍮の表面をクロムメッキした雄型や雌型等の金型を用いることができる。また、型の温度は、加飾シートの表面温度の制御や、成形工程後の加飾シート成形体の冷却条件の制御を考慮して、任意の温度に設定することができる。
【0164】
加飾シートを型に密着させる方法としては、雌型を用いるストレート成形や、雄型を用いるドレープ成形、プラグ(補助型)を用いるプラグアシスト成形等、成形の容易性やコスト等を考慮して任意の方法を採用することができる。また、加飾シートを型へ吸引する真空成形法や、圧縮空気圧力で加飾シートを型へ密着させる圧空成形法を採用することができる。例えば、真空および/または圧空により加飾シートを型に密着させることにより、加飾シートと型との密着性が向上するため、より精密な形状に加工することができる。
【0165】
前述したように、本発明の一実施形態にかかる加飾シート300A、300Bは、従来の変性ポリエチレンテレフタレートの金属層保持層にかえて、ポリカーボネート系ポリウレタンを含む金属層保持層120としている。金属層保持層として変性ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた従来の加飾シートにおいては、より高い温度範囲で成形する必要があったが、本発明の一実施形態にかかる加飾シート300A、300Bを用いることにより、従来の変性PETフィルムを用いた加飾シートよりも低い温度で成形加工できる。このことから、本発明の一実施形態にかかる加飾シートを用いて成形するときの温度を低くすることができ、より取り扱いやすくすることができる。
【0166】
(クランピング工程)
本発明の一実施形態にかかる加飾シート成形体の製造方法は、前記成形工程の前に、加飾シートをクランプするクランピング工程を含むことができる。この工程により、成形する際に加飾シートが弛まないように調整し固定することができる。クランプは、例えば加飾シートの両面を把持することの出来る把持手段を複数用いて、例えば当該シートの両端を把持することにより行うことができる。当該シートの把持は、当該シートの両端に限定されず、当該シートの任意の部分を把持することができる。通常は、加飾シート成形体を連続生産する場合は、加飾シートの幅方向の両端部を把持することができる。また、加飾シートを所定の長さに切断した四角形状ものを用いて加飾シート成形体をバッチ生産する場合には、4辺の端部を上下の枠で把持することができる。
【0167】
(加熱工程)
また、本発明の一実施形態にかかる加飾シート成形体の製造方法は、前記クランピング工程後に前記加飾シートを加熱する加熱工程を含むことができる。例えば室温の加飾シートをクランプして弛まないように調整した後、加熱手段として複数のヒーター等を用いて、これらのヒーター等を当該シートの上下に配置し、当該シートの両面を同時に均一に加熱することができる。この加熱工程により、加飾シートの表面温度を150℃~230℃に制御することができる。
【0168】
(その他の工程)
加飾シート成形体の製造方法は、上記の工程に加え、さらに他の工程を含んでもよい。例えば、加飾シート成形体を次工程で加工するまでの間、保護層や基材層の表面を清浄な状態に維持し、汚れが付くのを防止するため、保護フィルム等を保護層や基材層の表面に貼り付ける貼り付け工程を含むことができる。さらに、加飾シート成形体を射出成形金型に挿入後、樹脂を射出するインサート射出成形を行い、射出成形物の表面に加飾を施すことができる。
【0169】
以下、本発明の一実施形態にかかる加飾シート成形体の製造方法について、図5(A)~図5(E)を参照しつつ、説明する。図5は、加飾シート成形体の製造装置と加飾シートを模式的に示す断面図である。なお、加飾シートとしては、加飾シート300Aを例示する。
【0170】
まず、クランピング工程では、加飾シート300Aの第1端部350および第2端部360を、第1クランプ部510と第2クランプ部520を備える複数のクランプ500を用いて、第1クランプ部510と第2クランプ部520で加飾シート300Aを挟むことによりクランプする(図2A)。
【0171】
次に、加熱工程では、クランプされた加飾シート300Aの上下に、第1発熱体610Aを備える第1ヒーター600Aと、第2発熱体610Bを備える第2ヒーター600Bを配置し、これらのヒーターを制御して、加飾シート300Aを均等な温度となるように加熱する(図2B)。
【0172】
成形工程では、加熱された加飾シート300Aの下部から金型710を上昇させて密着させた後、吸引孔711から空気を吸引して加飾シート300Aを金型710へ吸引する真空成形や、加飾シート300Aの上部から圧空ボックス720を下降させて接触させた後、外部から圧空孔721を介して圧縮空気を送り込み、圧縮空気圧力で加飾シート300Aを金型710へ密着させる圧空成形、またはその両方(真空圧空成形)を行う(図2C)。この場合において、上部からプラグを加飾シート300Aへ押しつけて、真空成形をアシストすることにより、シートのムラを抑制し、細部にわたって精密に成形することができる。加飾シート300Aが金型710へ密着することにより、加飾シート成形体800が形成される(図2D)。
【0173】
加飾シート成形体800を成形後、加飾シート成形体800を自然放冷または冷却空気を利用して冷却して、形状を安定化させる。そして、離型工程において、金型710を下降させることで、金型710から加飾シート成形体800を取り出す(図2E)。以上により加飾シート成形体800が得られる。
【0174】
本実施形態の加飾シート成形体の製造方法であれば、前出した実施形態の加飾シートを用いていることから、得られた加飾シート成形体を用いて加飾した製品における加飾シートの剥離等の品質低下を抑制することができる。
【0175】
〈射出成形体の製造方法〉
本発明の一実施形態にかかる射出成形体の製造方法は、本発明の一実施形態にかかる加飾シート成形体の製造方法により得た加飾シート成形体の前記基材層の表面および/または前記保護層の表面と、前記射出成形金型との間に樹脂を注入して樹脂層を形成し、前記加飾シート成形体と前記樹脂層とが一体化した射出成形体を得る射出成形工程を含む。加飾シート成形体および基材層については、上記したとおりであり、説明を省略する。
【0176】
射出成形工程は、一般的な射出成型機を用いて行うことができる。使用する樹脂としては、熱可塑性樹脂を使用することができ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタアクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリイミド等を単独でまたはこれらを組み合わせて使用することができる。このような樹脂を溶融させて、前記基材層の表面と前記射出成形金型との間に注入して樹脂層を形成することができる。
【0177】
また、射出成形体の製造方法としては、射出成形工程の前に前記加飾シート成形体を任意の形状となるようにトリミングするトリミング工程や、射出成形工程後に前記成形品を冷却する冷却工程、冷却工程後に前記成形品を前記射出成形金型より取り出す取り出し工程等を、さらに含むことができる。
【0178】
本実施形態の射出成形体の製造方法であれば、本発明の一実施形態にかかる加飾シート成形体の製造方法により得た加飾シート成形体を用いることから、射出成形体における加飾シートの剥離等の品質低下を抑制することができる。
【0179】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【実施例0180】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。なお、以下の説明において、「部」の記載は質量部を示すものとする。
【0181】
[カルボジイミド添加濃度の検討]
加飾シートの製造に先立ち、金属層保持層にカルボジイミドを添加する場合における、添加濃度の検討を行った。離型樹脂層としてPETフィルムLH216(南亜プラスチック製)を用いて、離型樹脂層に金属層保持層を形成した。
【0182】
原料は、水性ポリウレタンディスパージョン UW5002(宇部興産製)を21部、水性ポリウレタンディスパージョン UW5502(宇部興産製)を9部、シリコーン系界面活性剤 BYK-345(BYK製)を0.3部として、カルボジイミドV-02(日清紡製)と水を表1に記載の割合で用いた。なお、表1において、カルボジイミドの割合は、ポリカーボネート系ポリウレタン質量を100としたときの質量を示した。UW5002の固形分(ポリカーボネート系ポリウレタン)は30質量%、UW5502の固形分(ポリカーボネート系ポリウレタン)は30質量%、V-02の固形分(カルボジイミド)は40質量%であった。それぞれの条件に対して、離型樹脂層の幅は1500mm、長さは350mとした。
【0183】
これらの原料を混合して、離型樹脂層に乾燥膜厚が22μmとなるように塗布して、150℃で3分間乾燥させることにより金属層保持層を形成した。さらに、金属層保持層から離型樹脂層を剥離して、形成された金属層保持層の評価を行った。
【0184】
金属層保持層の評価項目は、目視による金属層保持層の均一性の確認、光線透過率(T)およびヘイズ(H)を測定した。透過率およびヘイズについては、条件1(処理なし)、条件2(耐湿性の評価:50℃、相対湿度95%(95%RH)下に240時間保管)、条件3(耐水性の評価:40℃の温水に240時間浸漬して保管)の3条件において処理した後に測定した。
【0185】
均一性について、目視観察により金属層保持層が均一に形成されているかを評価し、均一である場合には均一性の評価「○」として、均一でない場合には均一性の評価「×」とした。光線透過率、ヘイズの測定はHaze Meter NDH 7000SPII(日本電色工業製)を用いて、JIS K 7105に従って行った。評価結果を表1に示した。
【0186】
【表1】
【0187】
以上の結果から、試験4~試験6において、条件2、条件3の処理を行った金属層保持層においても処理を行わない条件1の金属層保持層と同等の光線透過率、ヘイズを維持することができることが示された。また、試験2~6のようにカルボジイミドを添加してもカルボジイミドを添加しない条件(試験1)と同等の均一性が得られることが示された。以上の結果から、カルボジイミドを適切な割合で用いることにより、金属層保持層に耐湿性、耐水性を付与することができることが示された。
【0188】
[実施例1~7、比較例1~3、従来例]
〈加飾シートの製造〉
まず、加飾シートの製造を行った。本実施例においては、加飾シートとして、順に、基材層、第1接着層、金属層、金属層保持層、第2接着層、保護層が積層した加飾シートを製造した。
【0189】
まず、第1積層体形成工程として、離型樹脂層の表面に金属層保持層を形成し、離型樹脂層、金属層保持層、金属層が積層した第1積層体を得た。離型樹脂層として、厚さ25μmのPETフィルム(LH216、南亜プラスチック製)を用いた。
【0190】
また、金属層保持層の原料は、水性ポリウレタンディスパージョン UW5002およびUW5502(宇部興産製)、シリコーン系界面活性剤 BYK-345(BYK製)、水とした。また、これらの原料の混合比率は表3に示した通りである。なお、実施例5においては、カルボジイミドとしてV-02(日清紡製)をさらに使用した。
【0191】
また、水性ポリカーボネート系ポリウレタンディスパージョンUW5002およびUW5502における、ポリウレタンの含有量は、それぞれ30質量%、30質量%であった。
【0192】
また、水性ポリカーボネート系ポリウレタンディスパージョンにおける、水性イソシアネート、シクロヘキサンを含まない直鎖炭化水素型ポリオール、シクロヘキサンを含むポリオールの比率は以下のように測定した。測定結果からモル比を算出して、表2に示した。
【0193】
ポリカーボネート系ポリウレタンディスパージョン(UW5002、UW5502、宇部興産製)をガスクロマトグラフ質量分析、核磁気共鳴分光分析に供した。分析装置として、ガスクロマトグラフ質量分析計7890A/5975C(アジレントテクノロジー製)、核磁気共鳴分析装置JNM-ECA600(日本電子株式会社製)を用いた。また、測定条件は以下の通りとした。
【0194】
(ガスクロマトグラフ条件)
カラム圧力:82.37kPa(定圧)
カラム:ZB-XLB-HT Inferno(内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm)
試料分解温度:600℃
ガスクロマトグラフ注入口温度:330℃
スプリット:1:50
カラム槽温度:40℃(1min)-12℃/min-320℃(5min)
【0195】
(質量分析条件)
イオン化法:電子イオン化法
質量分析計インターフェース温度:280℃
スキャン範囲:m/z29-600
【0196】
(核磁気共鳴分光分析)
試料を乾固させた後、DMSO-d6にて40mg/600μLで調製し、核磁気共鳴分析装置を用いてH核NMR測定を行った。装置および測定条件は以下の通りである。
装置:JNM-ECA600(日本電子株式会社製)
測定核種:
測定条件:シングルパルス法
遅延時間:5秒
積算回数:256回
基準化学シフト:テトラメチルシラン(0ppm)
測定温度:100℃
【0197】
以上の分析の結果、水性ポリカーボネート系ポリウレタンディスパージョン(UW5002、UW5502、宇部興産製)はイソシアネート、シクロヘキサンを含まない直鎖炭化水素型ポリオール、シクロヘキサンを含むポリオールを以下のモル比で含んでいた。
【0198】
【表2】
【0199】
原料の混合物を、乾燥膜厚が平均22μmとなるように、ダイコーターを用いて離型樹脂層に塗布して乾燥させた。乾燥条件は、150℃、3分間とした。乾燥膜厚を測定したところ、膜厚平均21μm~23μmの均一な層が形成されたことが確認された。このようにして得られた第1積層体を巻取り、巻取物を解反した(解反工程)のち、後述のように、金属層の蒸着工程に供した。
【0200】
また、得られた金属層保持層について、光線透過率、ヘイズ、ブロッキング、引張応力(100%)、破断伸び率の評価を行った。評価結果は表3に示した。
【0201】
光線透過率およびヘイズの測定は、Haze Meter NDH 7000SPII(日本電色工業製)を用いて、JIS K 7105に従って行った。光線透過率が90%以上であり、ヘイズが1.3%以下である場合に、金属層保持層が十分な透明性を有すると判断した。
【0202】
また、引張応力の測定は、JIS K 7127に従って行った。
【0203】
また、破断伸び率の測定は、JIS K 7127に従って行った。100℃における100%引張応力、破断伸び率を従来例と比較した。
【0204】
上記の評価結果から、実施例の金属層保持層は、光線透過率が91.9%~92.3%であり、ヘイズが1.3%以下であり、実施例の金属層保持層は十分な透明性を有していた。
【0205】
引張応力、破断伸び率について、実施例と従来例の金属層保持層を比較した。実施例の金属層保持層は100℃における引張応力が3N以下、破断伸び率が210%以上であった。従来例の金属層保持層は100%引張応力が19N、破断伸び率が250%であった。これにより、実施例の金属層保持層は、比較例の金属層保持層よりも伸展性が高いことが示された。
【0206】
なお、従来例においては、金属層保持層として厚さ25μmの変性PETフィルム(FT3、帝人製)を用いて、第1積層体形成工程を行わずに、後述の蒸着工程に供した。
【0207】
次に、蒸着工程を行い、金属層保持層に厚さ50nmインジウムの金属層を蒸着して形成した。これにより、離型樹脂層、金属層保持層、金属層が積層した第2積層体を得た。
【0208】
ここで、金属層の評価を行った。評価は、金属層保持層に金属層が均一に蒸着されたかを、目視判定することにより評価した。評価指標は全体の輝度感、黒いムラの有無、点状のカスレの有無とした。全体の輝度感、黒いムラの有無、点状のカスレの有無がいずれも無く、均一な金属層が形成されたものを「○」として、全体の輝度感、黒いムラの有無、点状のカスレの有無のいずれかがあり、均一な金属層が形成されなかったものを「×」として、表3の「評価」欄に記載した。その結果、実施例1~実施例5、従来例においては金属層が均一に形成され、比較例1~3においては、金属層が均一に形成されなかった。
【0209】
また、金属層において目視観察により、均一性以外の不良の有無を確認した。目視確認の結果、実施例および従来例では不良は確認されなかったが、比較例1~3の金属層において放電痕が確認された。
【0210】
以上の評価結果により、実施例の金属保持フィルムは、従来例と同様に金属層が均一に形成され、十分な透明性を有しており、従来例と同様に加飾シートとして求められる品質を満たしていることが示された。また、実施例の金属層保持層は、比較例の金属層保持層よりも伸展性が高いことが示され、このような金属保持フィルムを用いて製造した加飾シートは、変性ポリエチレンテレフタレートを用いた場合よりも成形性に優れることが示唆された。
【0211】
【表3】
【0212】
さらに、実施例、従来例においては、第1接着工程、第3接着工程を行い、加飾シートを製造した。第1接着剤、第2接着剤としては、UR1700(東洋紡製)、デュラネートTPA-100(旭化成製)を、UR1700:デュラネートTPA-100=10:1の質量比で混合して用いた。また基材層として、厚さ250μmのABSシート(OJK製)を用いて、保護層として、厚さ75μmのPMMAシート S001G(住友化学製)を用いた。
【0213】
第1接着工程として、第2積層体の金属層、および、基材層に、貼り合わせたときの乾燥膜厚が20μmとなるように第1接着剤を塗布して乾燥させた後、金属層と基材層とを貼り合わせて接着した。さらに、第3接着工程として、第3積層体の金属層保持層、および、保護層に第2接着剤に、貼り合わせたときの乾燥膜厚が20μmとなるように塗布して乾燥させた後、金属層保持層と保護層とを貼り合わせて接着した。なお、実施例においては、第3接着工程のときに離型樹脂層を剥離してから第2接着剤を塗布した。以上により、加飾シートを得た。
【0214】
〈加飾成形品の評価〉
得られた加飾シートを用いて加飾対象物の樹脂部材を加飾した、加飾成形品の評価を行った。評価項目は、加飾成形品の外観評価、耐候性、耐湿性、耐熱性、耐ヒートサイクル性、耐水性とした。
【0215】
実施例、比較例、従来例の加飾シートと樹脂材料としてPC/ABS(サイコロイ C6600-J7001 ブラック、SABIC製)を用いて、インサートインジェクション成形により、成形温度150℃で、寸法104mm×78.5mm×9.3mm(肉厚3mm)の加飾成形品を得た。上記の評価項目について、以下の条件で試験を行った。
【0216】
加飾成形品の外観評価:加飾成形品において、輝度感、ムラ、カスレ等の外観の不具合の有無を目視確認した。外観の不具合がないものを「○」、外観の不具合があるものを「×」とした。
【0217】
耐候性:キセノンウェザーメーターSX75 7.5kW(スガ試験機製)を用いた。処理条件は、ブラックパネル温度63±2℃、湿度50%RH、降雨周期(非降雨時間/降雨時間)102min/18min、照度180W/m、槽内温度25~35℃、500MJ/mとした。処理前と処理後の試料表面の色差を、色彩色差計CM-3600A(コニカミノルタ製)を用いて測定して、△E*=3.0以下である場合に耐候性がとてもある(評価「◎」)、△E*が3.0より大きく5.0以下である場合に耐候性がある(評価「○」)、△E*が5.0より大きい場合に耐候性がない(評価「×」)と評価とした。
【0218】
付着性:付着性試験はJIS K 5600の碁盤目試験に基づいて行なった。ニチバンテープに2mm間隔で100升目にカットしたものを用いた。評価基準は、どの格子の目も剥がれていない(0/100)場合に剥離耐性が高い(評価「○」)として、1つ以上の格子の目が剥がれている(1/100~100/100)場合に剥離耐性が低い(評価「×」)とした。
【0219】
耐湿性:50℃、95%RHの条件下で試料を240時間おいて処理した。処理後2時間以内に付着性を確認した。付着性は、上述の付着性試験と同様にして行った。評価基準は、格子の目の剥離がなく(0/100)、目視評価において、白濁等の表面変化の有無を確認し、表面変化がない場合に耐湿性がとてもある(評価「◎」)、格子の目の剥離がなく(0/100)、表面変化がわずかに確認された場合に耐湿性がある(評価「○」)、格子の目の剥離があるか、大きな表面変化が確認された場合に耐湿性がない(評価「×」)と評価した。
【0220】
耐熱性:90℃の環境下で400時間おき、処理前と処理後の試料表面の色差を、色彩色差計CM-3600A(コニカミノルタ製)を用いて測定して、△b*=1.0以下であり、また、加飾シートの剥離等の不具合がない場合に耐熱性がとてもある(評価「◎」)、△b*が1.0より大きく、3.0以下であり、また、加飾シートの剥離等の不具合がわずかである場合に耐熱性がある(評価「○」)、△b*が5.0より大きく、また、加飾シートの剥離等の大きな不具合が確認された場合に耐熱性がない(評価「×」)と評価とした。
【0221】
耐ヒートサイクル性:以下のサイクルで温度を変化させた環境下に試料をおいてサイクル試験を行い、サイクル試験後に上述の方法と同様の付着性試験を行った。き、外観に変化がないことやシートの剥離等の不具合がないことを確認した。評価基準は、格子の目の剥離がなく(0/100)、目視評価において、白濁等の表面変化の有無を確認し、表面変化がない場合に耐ヒートサイクル性がとてもある(評価「◎」)、格子の目の剥離がなく(0/100)、表面変化がわずかに確認された場合に耐ヒートサイクル性がある(評価「○」)、格子の目の剥離があるか、大きな表面変化が確認された場合に耐ヒートサイクル性がない(評価「×」)と評価した。サイクルは、-30℃(7.5時間)→25℃(0.5時間)→80℃(15.5時間)→25℃(0.5時間)→-30℃(7.5時間)→25℃(0.5時間)→50℃・95%RH(15.5時間)→25℃(0.5時間)として、以上のサイクルを8サイクル行った。
【0222】
耐水性:40℃の温水に試料を240時間浸漬して処理した。処理後2時間以内に付着性を確認した。付着性は、上述の付着性試験と同様にして行った。格子の目の剥離がなく(0/100)、目視評価において、白濁等の表面変化の有無を確認し、表面変化がない場合に耐湿性がとてもある(評価「◎」)、格子の目の剥離がなく(0/100)、表面変化がわずかに確認された場合に耐湿性がある(評価「○」)、格子の目の剥離があるか、大きな表面変化が確認された場合に耐湿性がない(評価「×」)と評価した。
【0223】
以上の方法により評価した結果を表4に示した。
【0224】
【表4】
【0225】
本実施例の加飾シートを用いて加飾した加飾成形品においては、加飾シートの剥離等がみられなかった。一方、従来例の加飾シートを用いて加飾した加飾成形品においては、90℃×400時間の環境試験において、変性ポリエチレンテレフタレート層とABS層間で剥離が観察され、高温環境下においては加飾成形品から加飾シートが剥離し得ることがわかった。
【0226】
また、実施例、比較例、従来例の加飾シートの第1接着剤および基材層を粘着剤(G25 日栄化工株式会社製)に替えて、厚さ25μmの粘着層を有するTOM成形用加飾シートを製造した。さらに、これらのTOM成形用加飾シートを用いて、TOM成形により、PC/ABS(サイコロイ C6600-J7001 ブラック、SABIC製)製の樹脂製加飾対象部材(寸法104mm×78.5mm×9.3mm(肉厚3mm))に、成形温度130℃で加飾し、加飾成形品を得た。インサートインジェクションにより加飾した加飾成形品と同様にして、TOM成形により得られた加飾成形品の評価を行ったところ、外観評価、耐候性、耐湿性、耐熱性、耐ヒートサイクル性、耐水性において、インサートインジェクションにより加飾した加飾成形品と同様の結果が得られた。
【0227】
以上の結果から、変性ポリエチレンテレフタレートを用いた従来例よりも実施例の加飾シートは加飾成形品における加飾シートの剥離等の品質低下を抑制することができることが示された。
【0228】
〈まとめ〉
以上の評価結果から、本発明の例示的態様である実施例の加飾シート、加飾シートの製造方法においては、従来の変性ポリエチレンテレフタレートを金属層保持層として用いた加飾シートと同様に加飾シートとして求められる品質を満たし、かつ、変性ポリエチレンテレフタレートを用いた場合よりも成形性に優れており、加飾成形品における加飾シートの剥離等の品質低下を抑制することができることが示された。
【符号の説明】
【0229】
100 金属保持フィルム
110 金属層
120 金属層保持層
130 離型樹脂層
200 第1積層体
300A、300B 加飾シート
310 基材層
320 第1接着層
330 第2接着層
340 保護層
400A、400B TOM成形用加飾シート
420 粘着層
800 加飾シート成形体
900 従来の加飾シート
910 基材層
920 第1接着層
930 金属保持フィルム
940 第2接着層
950 保護層
931 金属保持層
932 金属層
図1
図2
図3
図4
図5
図6