(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048705
(43)【公開日】2022-03-28
(54)【発明の名称】潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 171/02 20060101AFI20220318BHJP
C10M 105/02 20060101ALI20220318BHJP
C10M 107/02 20060101ALI20220318BHJP
C10M 133/04 20060101ALI20220318BHJP
C10M 133/54 20060101ALI20220318BHJP
C10M 133/16 20060101ALI20220318BHJP
C10M 133/56 20060101ALI20220318BHJP
C10M 129/68 20060101ALI20220318BHJP
C10M 129/16 20060101ALI20220318BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20220318BHJP
C10N 10/12 20060101ALN20220318BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20220318BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20220318BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20220318BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20220318BHJP
【FI】
C10M171/02
C10M105/02
C10M107/02
C10M133/04
C10M133/54
C10M133/16
C10M133/56
C10M129/68
C10M129/16
C10N20:02
C10N10:12
C10N40:25
C10N30:02
C10N30:00 Z
C10N30:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154678
(22)【出願日】2020-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】517157134
【氏名又は名称】EMGルブリカンツ合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】末光 正典
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寛之
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB08C
4H104BB31C
4H104BB32A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BE01C
4H104BE11C
4H104BF01C
4H104BF03C
4H104CA04A
4H104EA02A
4H104EB08
4H104FA06
4H104LA01
4H104LA03
4H104LA20
4H104PA41
(57)【要約】
【課題】
本発明は、低粘度化しても、省燃費性を維持しつつ、低温粘度特性に優れた潤滑油組成物、好適な態様としては内燃機関用の潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
(A)潤滑油基油、(B)有機摩擦調整剤及び(C)金属摩擦調整剤を含む潤滑油組成物において、
前記(A)潤滑油基油が、100℃における動粘度2.5mm2/s以上かつ6.5mm2/s未満を有し、(A1-a)粘度指数125以上を有するGTL基油及び(A1-b)ポリα-オレフィン基油から選ばれる少なくとも1種である潤滑油基油(A1)を、潤滑油組成物の全質量に対して40質量%以上及び97質量%以下で含むことを特徴とし、且つ、
100℃における動粘度9.3mm2/s以上かつ12.5mm2/s未満を有し、及び-35℃でのCCS粘度6200mPa・s以下を有することを特徴とする、前記潤滑油組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)潤滑油基油、(B)有機摩擦調整剤及び(C)金属摩擦調整剤を含む潤滑油組成物において、
前記(A)潤滑油基油が、100℃における動粘度2.5mm2/s以上かつ6.5mm2/s未満を有し、(A1-a)粘度指数125以上を有するGTL基油及び(A1-b)ポリα-オレフィン基油から選ばれる少なくとも1種である潤滑油基油(A1)を、潤滑油組成物の全質量に対して40質量%以上及び97質量%以下で含むことを特徴とし、且つ、
100℃における動粘度9.3mm2/s以上かつ12.5mm2/s未満を有し、及び-35℃でのCCS粘度6200mPa・s以下を有することを特徴とする、前記潤滑油組成物。
【請求項2】
100℃における動粘度6.5mm2/s以上かつ50mm2/s以下を有する潤滑油基油(A2)を、潤滑油組成物の全質量に対して2質量%以上及び20質量%以下でさらに含有する、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記潤滑油基油(A2)が、(A2-a)粘度指数125以上を有するGTL基油及び(A2-b)ポリα-オレフィン基油から選ばれる少なくとも1種である、請求項2記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記潤滑油組成物が150℃での高温高せん断粘度(HTHS粘度)2.9mPa・s以上かつ3.7mPa・s未満を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記(B)成分が、アミン摩擦調整剤、アミド摩擦調整剤、エステル摩擦調整剤、エーテル摩擦調整剤、及びイミド摩擦調整剤から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記(B)成分の量が潤滑油組成物の全質量に対して0.1~2質量%である、請求項1~5のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記(C)金属摩擦調整剤の量が、潤滑油組成物の全質量に対する金属元素としての濃度が200~1200質量ppmとなる量である、請求項1~6のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記(C)成分がモリブデン系摩擦調整剤である、請求項1~7記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
内燃機関用である、請求項1~8のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑油組成物に関する。より詳細には、内燃機関用の潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油組成物は、内燃機関用、自動変速機用、ギヤ油用など自動車分野で幅広く使用されている。近年、燃費を向上させるために低粘度化が求められているが、省燃費性を維持しながら優れた低温粘度特性も求められている。上記目的を達成するため、基油の選定や特定の添加剤を組み合わせた潤滑油組成物が知られている。例えば、特許文献1には、特定の星形ポリマー構造を有する粘度指数向上剤を有する高い粘度指数を示す潤滑油組成物が開示されている。また、特許文献2には特定の尿素アダクト値を有する基油と特定の添加剤とからなる潤滑油組成物が開示されている。さらに、特許文献3には、異なる塩基価を有する金属清浄剤を用いた潤滑油組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-051572号公報
【特許文献2】特開2015-180762号公報
【特許文献3】特開2017-043734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記特許文献に記載のような潤滑油組成物は、省燃費性と低温粘度特性との両立という点で未だ改善の余地がある。そこで本発明は、低粘度化しても、省燃費性を維持しつつ、低温粘度特性に優れた潤滑油組成物、好適な態様としては内燃機関用の潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討した結果、100℃における動粘度2.5~6.5mm2/s未満を有する特定の基油を組成物中に40質量%以上で高配合し、且つ、有機摩擦調整剤及び金属摩擦調整剤を配合することにより、さらに好ましくは該低粘度基油と高粘度基油とを組み合わせることにより、上記目的が達成されることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は(A)潤滑油基油、(B)有機摩擦調整剤及び(C)金属摩擦調整剤を含む潤滑油組成物において、前記(A)潤滑油基油が、100℃における動粘度2.5mm2/s以上かつ6.5mm2/s未満を有し、(A1-a)粘度指数125以上を有するGTL基油及び(A1-b)ポリα-オレフィン基油から選ばれる少なくとも1種である潤滑油基油(A1)を、潤滑油組成物の全質量に対して40質量%以上及び97質量%以下で含むことを特徴とし、且つ、
100℃における動粘度9.3mm2/s以上かつ12.5mm2/s未満を有し、及び-35℃でのCCS粘度6200mPa・s以下を有することを特徴とする、前記潤滑油組成物を提供する。
【0007】
本発明の好ましい実施態様としては、下記(1)から(8)から選ばれる少なくとも1の要件を満たす。
(1)100℃における動粘度6.5mm2/s以上かつ50mm2/s以下を有する潤滑油基油(A2)を、潤滑油組成物の全質量に対して2質量%以上及び20質量%以下でさらに含有する。
(2)前記潤滑油基油(A2)が、(A2-a)粘度指数125以上を有するGTL基油及び(A2-b)ポリα-オレフィン基油から選ばれる少なくとも1種である。
(3)前記潤滑油組成物が150℃での高温高せん断粘度(HTHS粘度)2.9mPa・s以上かつ3.7mPa・s未満を有する。
(4)前記(B)成分が、アミン摩擦調整剤、アミド摩擦調整剤、エステル摩擦調整剤、エーテル摩擦調整剤、及びイミド摩擦調整剤から選ばれる。
(5)前記(B)成分の量が潤滑油組成物の全質量に対して0.1~2質量%である。
(6)前記(C)金属摩擦調整剤の量が、潤滑油組成物の全質量に対する金属元素としての濃度が200~1200質量ppmとなる量である。
(7)前記(C)成分がモリブデン系摩擦調整剤である。
(8)内燃機関用潤滑油組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の潤滑油組成物は低粘度化しても、NOACK蒸発量を低減して省燃費性を維持することができ、低温粘度特性に優れ、且つ、初期から後期において摩擦低減作用を持続することができる。したがって、本発明の潤滑油組成物は特に内燃機関用潤滑油組成物として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(A)潤滑油基油
本発明における潤滑油基油は、(A1)100℃における動粘度2.5~6.5mm2/s未満を有し、かつ(A1-a)粘度指数125以上であるGTL基油及び(A1-b)ポリα-オレフィン基油から選ばれる少なくとも1種である潤滑油基油を必須に含み、該(A1)成分を潤滑油組成物の全質量に対して40質量%以上で含むことを特徴とする。該(A1)潤滑油基油の含有量は、潤滑油組成物の全質量に対して40質量%以上97質量%以下であり、好ましくは40~85質量%であり、より好ましくは45~80質量%であり、さらに好ましくは50~80質量%であるのがよい。上記(A1)潤滑油基油を40質量%以上で含むことにより、省燃費性が確保され、かつ低温粘度特性が改善される。該(A1)成分は、上述した動粘度を有すること、かつ、上記(A1-a)及び(A1-b)から選ばれる少なくとも一つであることを必須要件とする。100℃における動粘度2.5~6.5mm2/s未満を有する潤滑油基油を含んでいても、上記(A1-a)及び(A1-b)のいずれも含まない場合は、低温粘度特性を改善することが困難となる。
【0010】
(A1-a)成分は粘度指数125以上であるGTL基油であり、粘度指数は好ましくは125~160、より好ましくは127~150であるのがよい。(A1-b)成分はポリα-オレフィン基油であり、例えば1-オクテンオリゴマー、1-デセンオリゴマーなどがあげられる。(A1)成分は当該(A1-a)成分及び(A1-b)成分のいずれか一方でもよいし、併用であってもよい。併用である場合、その比率は特に制限されず上述した含有量を満たせばよい。(A1)成分の100℃における動粘度は、好ましくは2.7~6.5mm2/sであり、より好ましくは2.9~5.1mm2/sである。
【0011】
本発明の潤滑油組成物は、本発明の要旨を損なわない範囲であれば、100℃における動粘度が2.5~6.5mm2/s未満であり、上述した(A1-a)以外の鉱油及び(A1-b)以外の合成油を(A)潤滑油基油として含有することができる。該潤滑油基油としては鉱油及び合成油のいずれであってもよく、これらを単独で、または混合して使用することができる。これらの含有量は、潤滑油組成物の全量に対して10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。下限値は特に制限されないが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であればよい。
【0012】
(A1-a)以外の鉱油としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、および水素化精製等の処理の1つ以上に付して精製したもの、或いは、ワックス異性化鉱油、上記(A1-a)以外のGTL(Gas to Liquid)基油、ATL(Asphalt to Liquid)基油、植物油系基油またはこれらの混合基油を挙げることができる。
【0013】
(A1-b)以外の合成油としては、例えば、ポリブテン又はその水素化物;ラウリン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-エチルヘキシル等のモノエステル;ジトリデシルグルタレート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート等のジエステル;ネオペンチルグリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ネオペンチルグリコールジ-n-オクタノエート、ネオペンチルグリコールジ-n-デカノエート、トリメチロールプロパントリ-n-オクタノエート、トリメチロールプロパントリ-n-デカノエート、ペンタエリスリトールテトラ-n-ペンタノエート、ペンタエリスリトールテトラ-n-ヘキサノエート、ペンタエリスリトールテトラ-2-エチルヘキサノエート等のポリオールエステル;アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、芳香族エステル等の芳香族系合成油又はこれらの混合物等が例示できる。
【0014】
本発明の潤滑油組成物は、(A2)100℃における動粘度6.5~50mm2/s以下を有する潤滑油基油を上記(A1)成分と組み合わせてさらに含むことが好ましい。これにより、省燃費性がより確保されることとなる。(A2)成分の100℃における動粘度は、好ましくは7~45mm2/sであり、より好ましくは7.5~42mm2/sである。(A2)成分としては、上記動粘度を有するものであれば特に制限されるものでなく、従来公知の鉱油及び合成油から適宜選択されるものであればよい。
【0015】
鉱油としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、および水素化精製等の処理の1つ以上に付して精製したもの、或いは、ワックス異性化鉱油、GTL(Gas to Liquid)基油、ATL(Asphalt to Liquid)基油、植物油系基油またはこれらの混合基油を挙げることができる。合成油としては、例えば、ポリブテン又はその水素化物;1-オクテンオリゴマー、1-デセンオリゴマー等のポリ-α-オレフィン又はその水素化物;ラウリン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-エチルヘキシル等のモノエステル;ジトリデシルグルタレート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート等のジエステル;ネオペンチルグリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ネオペンチルグリコールジ-n-オクタノエート、ネオペンチルグリコールジ-n-デカノエート、トリメチロールプロパントリ-n-オクタノエート、トリメチロールプロパントリ-n-デカノエート、ペンタエリスリトールテトラ-n-ペンタノエート、ペンタエリスリトールテトラ-n-ヘキサノエート、ペンタエリスリトールテトラ-2-エチルヘキサノエート等のポリオールエステル;アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、芳香族エステル等の芳香族系合成油又はこれらの混合物等が例示できる。これらは1種単独であっても、2種以上の併用であってもよい。該(A2)成分の潤滑油組成物中の含有量は、限定的ではないが、2~20質量%であることが好ましく、3~18質量%であることがより好ましく、3~15質量%であることがさらに好ましい。
【0016】
(A2)成分は、好ましくは(A2-a)粘度指数125以上であるGTL基油及び(A2-b)ポリα-オレフィン基油から選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらを上記(A1)と併用することにより、省燃費性がより確保され、かつ低温粘度特性が改善される。(A2-a)GTL基油の粘度指数は好ましくは125~160、より好ましくは128~150であるのがよい。(A2-b)成分はポリα-オレフィン基油であり、例えば1-オクテンオリゴマー、1-デセンオリゴマーなどがあげられる。これらは(A2-a)及び(A2-b)のいずれか一方でもよいし、併用であってもよい。併用である場合、その比率は特に制限されず上述した含有量を満たせばよい。
【0017】
本発明における潤滑油基油は、好ましくは上記(A1)成分40~97質量%と、(A2)成分2~20質量%との組み合わせであるのがよい。より好ましくは(A1-a)GTL基油と(A2-a)GTL基油との組み合わせ、(A1-a)GTL基油と(A2-b)PAOとの組み合わせ、(A1-b)PAOと(A2-a)GTL基油との組み合わせ、及び(A1-b)PAOと(A2-b)PAOとの組み合わせから選択されることが好ましい。
【0018】
なお、(A1)成分及び(A2)成分との組み合わせに加えて、上述した、100℃における動粘度が2.5~6.5mm2/s未満を有する(A1-a)又は(A1-b)以外の潤滑油基油を含んでいてもよい。含有量は上述した通りであり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。この含有量の範囲内であれば、本発明の要旨を損なうことなく、本発明の所定の効果を奏することができる。
【0019】
(B)有機摩擦調整剤
本発明においては、有機摩擦調整剤を含有する。本願潤滑油組成物は、該有機摩擦調整剤と、後述する金属摩擦調整剤とを併用することで、初期から後期において摩擦低減作用を持続することができる。
有機摩擦調整剤とは、金属を有しない摩擦調整剤のことを意味する。例えば、アミン摩擦調整剤、アミド摩擦調整剤、エステル摩擦調整剤、エーテル摩擦調整剤及びイミド摩擦調整剤など、有機化合物により構成されるものである。特に好ましくは、アミン摩擦調整剤、エステル摩擦調整剤、又はイミド摩擦調整剤であり、リン捕捉剤として好適に機能する。有機摩擦調整剤を含むことにより、優れた耐摩耗性及び耐焼付き性を確保することができる。潤滑油組成物中の有機摩擦調整剤の含有量は好ましくは0.1~2質量%であり、より好ましくは0.2~1.5質量%であり、さらに好ましくは0.2~1質量%である。有機摩擦調整剤は、1種単独であってもよいし、2種以上の併用であってもよい。
【0020】
アミン摩擦調整剤としては、脂肪族アミン化合物が好ましい。該脂肪族アミン化合物としては、例えば、炭素数1~30のアルキル基を有するアルキルアミン、炭素数2~30のアルケニル基を有するアルケニルアミン、炭素数1~30のアルキレン基を有するアルキレンジアミン、炭素数1~30のアルキル基を有するポリアミン、及び脂環式アミンを挙げることができる。
【0021】
炭素数1~30のアルキル基を有するアルキルアミンにおいて、アルキル基は直鎖であってもよいし、分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素数は、好ましくは炭素数4~28であり、より好ましくは炭素数6~25である。例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン(ラウリルアミン)、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン(ステアリルアミン)、ドコシルアミン(ベヘニルアミン)、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジヘプタデシルアミン、ジオクタデシルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、及びプロピルブチルアミンを挙げることができる。
【0022】
炭素数2~30のアルケニル基を有するアルケニルアミンにおいて、アルケニル基は直鎖であっても分岐を有していてもよい。アルケニル基の炭素数は、好ましくは炭素数4~28であり、より好ましくは炭素数6~25である。例えば、エテニルアミン、プロペニルアミン、ブテニルアミン、オクテニルアミン、及びオレイルアミンが挙げられる。
【0023】
炭素数1~30のアルキレン基を有するアルキレンジアミンにおいて、アルキレン基は直鎖であっても分岐を有していてもよい。例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、及びブチレンジアミンが挙げられる。
【0024】
炭素数1~30のアルキル基を有するポリアミンにおいてアルキル基は、直鎖であっても分岐を有していてもよい。例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及び、ペンタエチレンヘキサミンが挙げられる。
【0025】
脂環式アミンとしては、シクロヘキシルアミン等を挙げることができる。
【0026】
アミド摩擦調整剤としては、限定されることはないが、炭素数1~30のアルキル基を有する飽和脂肪酸アミド、炭素数2~30のアルケニル基を有する不飽和脂肪酸アミドを使用することが好ましい。これらは単独で使用してもよいし、混合して使用することもできる。
【0027】
炭素数1~30のアルキル基を有する飽和脂肪酸アミドとしては、エタン酸アミド、プロパン酸アミド、ブタン酸アミド、オクタン酸アミド、デカン酸アミド、ドデカン酸アミド、ヘキサデカン酸アミド、オクタデカン酸アミド、ドコサン酸アミドを挙げることができる。炭素数1~30のアルキル基の炭素数として好ましくは炭素数4~28であり、より好ましくは炭素数6~25である。
【0028】
炭素数2~30のアルケニル基を有する不飽和脂肪酸アミドとしては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドを挙げることができる。炭素数2~30のアルケニル基の炭素数として好ましくは炭素数4~28であり、より好ましくは炭素数6~25である。
【0029】
エステル摩擦調整剤としては、脂肪酸エステル系摩擦調整剤が好ましい。脂肪酸としては、炭素数1~30のアルキル基又は炭素数2~30のアルケニル基を有する脂肪酸が好ましい。アルケニル基は、直鎖であっても分岐を有していてもよいが、直鎖が好ましい。また、該脂肪酸エステルを調製するにあたり脂肪酸と反応させるアルコールは、1価アルコールでもよいし、多価アルコールでも良いが、多価アルコールであることが好ましい。例えば、2~10価の多価アルコールであり、より詳細には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3~15量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3~15量体)、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2~8量体、例えばジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等)、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)およびこれらの2~8量体、ペンタエリスリトールおよびこれらの2~4量体、1,2,4-ブタントリオール、1,3,5-ペンタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,3,4-ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、スクロース等の糖類、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0030】
上記多価アルコールの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3~10量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3~10量体)、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)およびこれらの2~4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,3,5-ペンタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,3,4-ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の2~6価の多価アルコールおよびこれらの混合物等が好ましい。さらに、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、およびこれらの混合物等がより好ましい。これらの中でもグリセリンが特に好ましい。
【0031】
エステル摩擦調整剤として、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸から選択される脂肪酸もしくはその混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンから選択されるアルコールもしくはその混合物を反応させて得られるエステルを挙げることができる。エステルの構造としては、多価アルコール中の水酸基全てがエステル化された完全エステルでもよく、水酸基の一部がエステル化されず水酸基のまま残存する部分エステルでもよい。中でも、炭素数16~20の脂肪酸とグリセリンの部分エステルが好ましい。
【0032】
エステル摩擦調整剤として、より好ましくは、グリセリンモノオレート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、エチレングリコールモノオレート、エチレングリコールモノステアレート、エチレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールモノオレート、プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノラウレート等を挙げることができる。中でも、グリセリンモノオレート、グリセリンモノステアレート、及びグリセリンモノラウレートが特に好ましい。
【0033】
更には、エーテル摩擦調整剤としては分子内に水酸基を2つ以上有するエーテル化合物が挙げられ、好ましくは(ポリ)グリセリンエーテル化合物である。例えば下記式(8)にて表される。
R11-O-(CH2-CH(OH)-CH2-O)P-H (8)
上記式(8)において、R11は炭素数1~30の一価炭化水素基であり、例えば炭素数1~30のアルキル基、炭素数3~30のアルケニル基、炭素数6~30のアリール基、及び炭素数7~30のアラルキル基が挙げられる。該アルキル基及びアルケニル基は、直鎖、分岐、及び環状のいずれであってもよい。Pは1~10の整数である。特に好ましくはR11は、(ポリ)グリセリンエーテル化合物の性能及び入手の容易さなどの観点から、炭素数8~20のアルキル基及びアルケニル基が好ましい。
【0034】
炭素数1~30、好ましくは炭素数8~20のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、TERT-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、TERT-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イコシル、ドコシル、テトラコシル、トリアコンチル、2-オクチルドデシル、2-ドデシルヘキサデシル、2-テトラデシルオクタデシル、16-メチルヘプタデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、及びシクロオクチル等の基が挙げられる。
【0035】
炭素数3~30、好ましくは炭素数8~20のアルケニル基としては、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、オクタデセニル基、オレイル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、メチルシクロペンテニル基、及びメチルシクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0036】
炭素数6~30のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、及びノニルフェニル基等が挙げられる。
【0037】
炭素数7~30のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、メチルベンジル基、及びメチルフェネチル基等が挙げられる。
【0038】
上記(ポリ)グリセリンエーテル化合物としては、例えば、グリセリンモノドデシルエーテル、グリセリンモノテトラデシルエーテル、グリセリンモノヘキサデシルエーテル(「キミルアルコール」と同じ。)、グリセリンモノオクタデシルエーテル(「バチルアルコール」と同じ。)、グリセリンモノオレイルエーテル(「セラキルアルコール」と同じ。)、ジグリセリンモノドデシルエーテル、ジグリセリンモノテトラデシルエーテル、ジグリセリンモノヘキサデシルエーテル、ジグリセリンモノオクタデシルエーテル、ジグリセリンモノオレイルエーテル、トリグリセリンモノドデシルエーテル、トリグリセリンモノテトラデシルエーテル、トリグリセリンモノヘキサデシルエーテル、トリグリセリンモノオクタデシルエーテル、及びトリグリセリンモノオレイルエーテルが挙げられる。
【0039】
更に、イミド摩擦調整剤としては、直鎖状、若しくは分枝状、好ましくは分枝状の炭化水素基を1つ又は2つ有するモノ及び/又はビスコハク酸イミド、当該コハク酸イミドにホウ酸やリン酸、炭素数1~20のカルボン酸あるいは硫黄含有化合物から選ばれる1種又は2種以上を反応させた、コハク酸イミド変性化合物等を挙げることがでる。より詳細には、下記式(1)及び式(2)の化合物を挙げることができる。
【化1】
【化2】
【0040】
上記一般式(1)及び(2)において、R1及びR2は、互いに独立に、炭素数8~30、好ましくは炭素数12~24のアルキル基又はアルケニル基である。R3及びR4は、互いに独立に、炭素数1~4、好ましくは炭素数2~3のアルキレン基である。R5は水素原子又は炭素数1~30、好ましくは炭素数8~30のアルキル基又はアルケニル基である。nは1~7の整数であり、好ましくは1~3の整数である。中でも上記一般式(1)で表されるビスイミド化合物が好ましい。なお、R1及びR2の炭素数が40以上になると、後記の無灰分散剤に相当することとなるため、除外される。
【0041】
一般式(1)のビスイミド化合物の中でも、以下の一般式(3)で表されるコハク酸イミド化合物が好ましい。
【化3】
上記式(3)において、X及びYは、X+Yが8~15となる整数であり、Zは0~5の整数である。好ましくはX及びYは、X+Yが10~14となる整数であり、Zは0~3の整数であるのがよい。本摩擦調整剤は、ポリエチレンポリアミン由来のイミド系摩擦調整剤であり、その製法は、US5,840,663に記載されている。
【0042】
なお、イミド摩擦調整剤は、単独で使用してもよいが、好適には前述したアミン系摩擦調整剤とイミド系摩擦調整剤とを併用することが好ましい。上記の有機摩擦調整剤のうち、特に好ましくは、グリセリンモノオレート、グリセリンモノステアレート、オレイルアミン、オレイン酸アミド、ステアリルアミン、及びステアリン酸アミドであり、これらは単独でも、混合して使用してもよい。
【0043】
(C)金属摩擦調整剤
本発明の潤滑油組成物は、金属摩擦調整剤を含有する。特にモリブデンを有する摩擦調整剤(以下、モリブデン系摩擦調整剤という)を含有するのが好ましい。モリブデン系摩擦調整剤は特に制限されず、従来公知のものを使用することができる。モリブデン系摩擦調整剤とはモリブデンを有する化合物であり、例えば、モリブデンジチオホスフェート(MoDTP)およびモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)等の硫黄を含有する有機モリブデン化合物、モリブデン化合物と硫黄含有有機化合物又はその他の有機化合物との錯体、ならびに硫化モリブデンおよび硫化モリブデン酸等の硫黄含有モリブデン化合物とアルケニルコハク酸イミドとの錯体等を挙げることができる。上記モリブデン化合物としては、例えば、二酸化モリブデンおよび三酸化モリブデン等の酸化モリブデン、オルトモリブデン酸、パラモリブデン酸および(ポリ)硫化モリブデン酸等のモリブデン酸、これらモリブデン酸の金属塩およびアンモニウム塩等のモリブデン酸塩、二硫化モリブデン、三硫化モリブデン、五硫化モリブデンおよびポリ硫化モリブデン等の硫化モリブデン、硫化モリブデン酸、硫化モリブデン酸の金属塩又はアミン塩、塩化モリブデン等のハロゲン化モリブデン等が挙げられる。上記硫黄含有有機化合物としては、例えば、アルキル(チオ)キサンテート、チアジアゾール、メルカプトチアジアゾール、チオカーボネート、テトラハイドロカルビルチウラムジスルフィド、ビス(ジ(チオ)ハイドロカルビルジチオホスホネート)ジスルフィド、有機(ポリ)サルファイドおよび硫化エステル等が挙げられる。特に、モリブデンジチオホスフェート(MoDTP)およびモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)等の有機モリブデン化合物が好ましい。
【0044】
モリブデンジチオカーバメート(MoDTC)は下記式[I]で表される化合物であり、モリブデンジチオホスフェート(MoDTP)は下記[II]で表される化合物である。
【0045】
【0046】
上記一般式[I]および[II]において、R1~R8は、互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1~30の一価炭化水素基である。炭化水素基は直鎖状でも分岐状でもよい。該一価炭化水素基としては、炭素数1~30の直鎖状または分岐状アルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数4~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基等を挙げることができる。アリールアルキル基において、アルキル基の結合位置は任意である。より詳細には、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基およびオクタデシル基等、およびこれらの分岐状アルキル基を挙げることができ、特に炭素数3~8のアルキル基が好ましい。また、X1およびX2は酸素原子または硫黄原子であり、Y1およびY2は酸素原子または硫黄原子である。
【0047】
摩擦調整剤として、硫黄を含まない有機モリブデン化合物も使用できる。このような化合物としては、例えば、モリブデン-アミン錯体、モリブデン-コハク酸イミド錯体、有機酸のモリブデン塩、およびアルコールのモリブデン塩等が挙げられる。
【0048】
さらに本発明における摩擦調整剤として、米国特許第5,906,968号に記載されている三核モリブデン化合物を用いることもできる。
【0049】
摩擦調整剤は、潤滑油組成物の質量に対する金属(特に、モリブデン)の質量ppmとしての濃度[Mo]が200~1200質量ppm、好ましくは250~1000質量ppm、より好ましくは300~950質量ppmの範囲となるような量で添加される。摩擦調整剤の量が上記上限を超えると、清浄性が悪化する場合があり、上記下限未満であると、摩擦を十分に低減することができなかったり、清浄性が悪化したりする場合がある。
【0050】
(D)粘度指数向上剤
本発明においては、粘度指数向上剤を使用することができる。粘度指数向上剤として、例えば、ポリメタアクリレート、分散型ポリメタアクリレート、オレフィンコポリマー(ポリイソブチレン、エチレン-プロピレン共重合体)、分散型オレフィンコポリマー、ポリアルキルスチレン、スチレン-ブタジエン水添共重合体、スチレン-無水マレイン酸エステル共重合体、星状イソプレン等を含むものが挙げられる。さらに、少なくともポリオレフィンマクロマーに基づく繰返し単位と炭素数1~30のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに基づく繰返し単位とを主鎖に含む櫛形ポリマーを用いることもできるが、限定的ではない。
【0051】
粘度指数向上剤の重量平均分子量は、特に限定されることはないが、10,000~2,000,000が好ましく、20,000~1,500,000がより好ましく、30,000~1,000,000がさらに好ましい。
【0052】
なお、本発明において粘度指数向上剤の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより以下の条件で測定することができる。
<ポリメタクリレートのMwの測定条件>
装置 :「HLC-8320」[東ソー(株)製]
カラム :「TSK gel SuperMultiporeHZ-M」3本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.2(w/v)%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量 :30μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :ポリスチレン(PS t Quick MP-M)
【0053】
粘度指数向上剤の含有量は、限定されることはないが、潤滑油組成物全体の質量に対して、0.5~10.0質量%以下であり、好ましくは0.8~8.0質量%、より好ましくは1.0~6.0質量%、更に好ましくは1.2~6.0質量%であるのがよい。
【0054】
(E)金属清浄剤
本発明の潤滑油組成物は、金属清浄剤を使用することができる。金属清浄剤としては、限定的ではないが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を有する清浄剤であることが好ましい。
金属清浄剤としては、カルシウムサリシレート、カルシウムスルホネート、カルシウムフェネート、マグネシウムサリシレート、マグネシウムスルホネート、マグネシウムフェネート等が挙げられる。
【0055】
金属清浄剤として、マグネシウムを有する清浄剤(以下、マグネシウム系清浄剤という)を有することが好ましく、上述のマグネシウムスルホネート、マグネシウムフェネートおよびマグネシウムサリシレート等を使用することができ、これらの中で、特にマグネシウムサリシレート若しくはマグネシウムスルホネートが好ましい。マグネシウム系清浄剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0056】
マグネシウム系清浄剤を含有することにより、潤滑油として必要な高温清浄性および防錆性を確保することができる。また、摩擦を低減し、したがって、トルクを低減させることができる。これは、特に燃費特性の点で有利である。
【0057】
マグネシウム系清浄剤は、限定的ではないが、該潤滑油組成物の質量に対するマグネシウムの濃度が好ましくは200~1200質量ppm、より好ましくは300~1100質量ppm、さらに好ましくは400~1000質量ppmの範囲となるような量で添加される。マグネシウム系清浄剤の量が上記上限を超えると摩耗が大きくなり過ぎ、上記下限を下回ると摩擦の低減効果が低い。
【0058】
マグネシウム系清浄剤は、特に、過塩基性であるのが好ましい。これにより、潤滑油に必要な酸中和性を確保できる。過塩基性のマグネシウム系清浄剤を使用した場合には、中性のマグネシウムまたはカルシウム系清浄剤を混合してもよい。
【0059】
マグネシウム系清浄剤の全塩基価は、限定的ではないが、好ましくは20~600mgKOH/g、より好ましくは50~500mgKOH/g、最も好ましくは100~450mgKOH/gである。これにより、潤滑油に必要な酸中和性、高温清浄性および防錆性を確保できる。なお、2種以上の金属清浄剤を混合して使用する場合は、混合して得られた塩基価が、前記の範囲となることが好ましい。
【0060】
マグネシウム系清浄剤中のマグネシウム含有量は、好ましくは0.5~20質量%であり、より好ましくは1~16質量%、最も好ましくは2~14質量%であるが、潤滑油組成物中に上記範囲の量のマグネシウムが含まれるように添加されれば良い。
【0061】
金属清浄剤としては、カルシウムを有する清浄剤(以下、カルシウム系清浄剤という)を使用することができる。潤滑油組成物がカルシウム系清浄剤をさらに含むことにより、潤滑油として必要な高温清浄性、及び防錆性を更に確保することができる。
さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の金属系清浄剤として、ナトリウム系清浄剤を含んでいてもよい。ナトリウム系清浄剤とは、ナトリウムを有する化合物であり、例えば、ナトリウムスルホネート、ナトリウムフェネートおよびナトリウムサリシレートが好ましい。これらのナトリウム系清浄剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。ナトリウム系清浄剤を含むことにより、潤滑油として必要な高温清浄性および防錆性を確保することができる。ナトリウム系清浄剤は、上述したマグネシウム系清浄剤および任意的なカルシウム系清浄剤と併用することができる。
【0062】
カルシウム系清浄剤としては、上述のカルシウムスルホネート、カルシウムフェネートおよびカルシウムサリシレートが挙げられ、これらのカルシウム系清浄剤は、1種を使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0063】
カルシウム系清浄剤は、過塩基性であるのが好ましい。これにより、潤滑油に必要な酸中和性を確保できる。過塩基性のカルシウム含有清浄剤を使用する場合には、中性のカルシウム系清浄剤を併用してもよい。
【0064】
カルシウム系清浄剤の全塩基価は、限定的ではないが、好ましくは20~500mgKOH/g、より好ましくは50~400mgKOH/g、最も好ましくは100~350mgKOH/gである。これにより、潤滑油に必要な酸中和性、高温清浄性および防錆性を確保できる。なお、2種以上の金属清浄剤を混合して使用する場合は、混合して得られた塩基価が前記範囲内となることが好ましい。
【0065】
カルシウム系清浄剤中のカルシウム含有量は、好ましくは0.5~20質量%であり、より好ましくは1~16質量%、最も好ましくは2~14質量%である。
カルシウム系清浄剤は、限定的ではないが、該潤滑油組成物の質量に対するカルシウムの濃度が好ましくは200~1500質量ppm、より好ましくは300~1300質量ppm、さらに好ましくは400~1100質量ppmの範囲となるような量で添加される。
【0066】
(F)ジアルキルジチオリン酸亜鉛
本発明の潤滑油組成物はジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP(ZDDPともいう))を含むことができる。該化合物は摩耗防止剤として機能するものであり、下記式(ii)で表される。
【0067】
【化6】
上記式(ii)において、R
2及びR
3は、各々、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子または炭素数1~26の一価炭化水素基である。一価炭化水素基としては、炭素数1~26の第1級(プライマリー)または第2級(セカンダリー)アルキル基;炭素数2~26のアルケニル基;炭素数6~26のシクロアルキル基;炭素数6~26のアリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基;またはエステル結合、エーテル結合、アルコール基またはカルボキシル基を含む炭化水素基である。ここで、1級アルキル基とは、置換基R
2及びR
3において、ジアルキルジチオリン酸亜鉛中の酸素原子に直接結合する炭素原子が1級炭素原子であるという意味である。同様に2級アルキル基とは、置換基R
2、R
3において、ジアルキルジチオリン酸亜鉛中の酸素原子に直接結合する炭素原子が2級炭素原子であるという意味である。R
2及びR
3は、好ましくは、互いに独立に、炭素数3~12の、第1級または第2級アルキル基、炭素数8~18のシクロアルキル基、又は炭素数8~18のアルキルアリール基である。ただし、本発明において、R
2及びR
3の少なくとも1は第1級または第2級アルキル基である。第1級アルキル基は、炭素数3~12を有することが好ましく、より好ましくは炭素数4~10を有する。例えば、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、2-エチル-ヘキシル基、及び2,5-ジメチルヘキシル基等が挙げられる。第2級アルキル基は、炭素数3~12を有することが好ましく、より好ましくは炭素数3~10を有する。例えば、イソプロピル基、セカンダリーブチル基、イソペンチル基、及びイソヘキシル基等が挙げられる。
【0068】
潤滑油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛の含有量は、潤滑油組成物の全質量に対し、ジアルキルジチオリン酸亜鉛が有するリンの質量ppmによる濃度[P]として、300~1000質量ppmとなる量であり、好ましくは400~1,000質量ppmであり、より好ましくは500~1,000質量ppmであり、特に好ましくは600~900質量ppmである。
【0069】
本発明の潤滑油組成物は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛以外の摩耗防止剤をさらに含んでもよい。例えば、上記式で表され、R2及びR3が、互いに独立に、水素原子、または炭素数1~26の、アルキル基でない一価炭化水素基である化合物が挙げられる。該一価炭化水素基としては、炭素数2~26のアルケニル基;炭素数6~26のシクロアルキル基;炭素数6~26のアリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基;またはエステル結合、エーテル結合、アルコール基またはカルボキシル基を含む炭化水素基である。R2及びR3は、好ましくは炭素数8~18のシクロアルキル基、炭素数8~18のアルキルアリール基であり、各々、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、ジチオカルバミン酸亜鉛(ZnDTC)を組合せて使用してもよい。
【0070】
また、下記式(iii)及び(iv)で示されるホスフェート、ホスファイト系のリン化合物、並びにそれらの金属塩及びアミン塩から選ばれる少なくとも1種の化合物を併用することもできる。
【0071】
【化7】
上記一般式(iii)中、R
6は炭素数1~30の一価炭化水素基であり、R
4及びR
5は互いに独立に、水素原子又は炭素数1~30の一価炭化水素基であり、kは0又は1である。
【化8】
上記一般式(iv)中、R
9は炭素数1~30の一価炭化水素基であり、R
7及びR
8は互いに独立に水素原子又は炭素数1~30の一価炭化水素基であり、tは0又は1である。
【0072】
上記一般式(iii)及び(iv)中、R4~R9で表される炭素数1~30の一価炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキル置換シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができる。特には、炭素数1~30のアルキル基、又は炭素数6~24のアリール基であることが好ましく、より好ましくは炭素数3~18のアルキル基、最も好ましくは炭素数4~15のアルキル基である。
【0073】
上記一般式(iii)及び(iv)で表されるリン化合物としては、例えば、上記炭素数1~30の炭化水素基を1つ有する亜リン酸モノエステル及び(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸、ホスホン酸モノエステル、酸性リン酸モノエステル;上記炭素数1~30の炭化水素基を2つ有する亜リン酸ジエステル、モノチオ亜リン酸ジエステル、ホスホン酸ジエステル、酸性リン酸ジエステル及び(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸モノエステル;上記炭素数1~30の炭化水素基を3つ有する亜リン酸トリエステル、及び(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸ジエステル;及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0074】
上記一般式(iii)及び(iv)で表されるリン化合物の金属塩又はアミン塩は、一般式(iii)又は(iv)で表されるリン化合物に、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属塩化物等の金属塩基、アンモニア、炭素数1~30の炭化水素基又はヒドロキシル基含有炭化水素基のみを分子中に有するアミン化合物等の窒素化合物等を作用させて、残存する酸性水素の一部又は全部を中和することにより得ることができる。上記金属塩基における金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、マンガン等の重金属(但し、モリブデンは除く)等が挙げられる。これらの中でも、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属及び亜鉛が好ましく、亜鉛が特に好ましい。
【0075】
(G)無灰分散剤
本発明の潤滑油組成物は、無灰分散剤を有することが好ましい。無灰分散剤は、特に制限されるものでなく、従来公知のものを使用すればよい。例えば、炭素数40~400の、直鎖構造又は分枝構造を有するアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物又はその誘導体、あるいはアルケニルコハク酸イミドの変性品等が挙げられる。無灰分散剤は1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。また、ホウ素化無灰分散剤を使用する場合は、上記したような無灰分散剤をホウ素化したものであればよい。ホウ素化は一般に、含窒素化合物にホウ酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和することにより行われる。
【0076】
上記アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、好ましくは40~400であり、より好ましくは60~350である。アルキル基及びアルケニル基の炭素数が前記下限値未満であると、化合物の潤滑油基油に対する溶解性が低下する傾向にある。また、アルキル基及びアルケニル基の炭素数が上記上限値を超えると、潤滑油組成物の低温流動性が悪化する傾向にある。上記アルキル基及びアルケニル基は、直鎖構造を有していても分枝構造を有していてもよい。好ましい態様としては、例えば、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマー、エチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基又は分枝状アルケニル基等が挙げられる。
【0077】
コハク酸イミドには、ポリアミンの一端に無水コハク酸が付加した、いわゆるモノタイプのコハク酸イミドと、ポリアミンの両端に無水コハク酸が付加した、いわゆるビスタイプのコハク酸イミドとがある。本発明の潤滑油組成物は、モノタイプ及びビスタイプのうちいずれか一方を含有してもよいし、あるいは双方を含有してもよい。
【0078】
モノタイプのコハク酸イミド誘導体は例えば下記式(a)で表すことができる。ビスタイプのコハク酸イミド誘導体は例えば下記式(b)で表すことができる。
【化9】
【化10】
【0079】
上記式において、R1は互いに独立に炭素数40~400のアルキル基またはアルケニル基であり、mは1~20の整数であり、nは0~20の整数である。特にはビスタイプのコハク酸イミド化合物が好ましい。コハク酸イミド誘導体は、モノタイプ及びビスタイプの併用、2種以上のモノタイプの併用、2種以上のビスタイプの併用であってもよい。
上記コハク酸イミド誘導体とホウ素化合物とを反応させることにより、ホウ素化されたコハク酸イミド誘導体が得られる。ホウ素化合物とは、ホウ酸、ホウ酸無水物、ホウ酸エステル、酸化ホウ素、及びハロゲン化ホウ素などである。ホウ素化コハク酸イミド誘導体は1種単独であっても、2種以上の組合せであってもよい。
【0080】
例えば、ホウ素化コハク酸イミドの製造方法としては、特公昭42-8013号公報及び同42-8014号公報、特開昭51-52381号公報、及び特開昭51-130408号公報等に開示されている方法等が挙げられる。より詳細には、アルコール類やヘキサン、キシレン等の有機溶媒、軽質潤滑油基油等にポリアミンとポリアルケニルコハク酸(無水物)にホウ酸、ホウ酸エステル、又はホウ酸塩等のホウ素化合物を混合し、適当な条件で加熱処理することにより得ることができる。この様にして得られるホウ素化コハク酸イミドに含まれるホウ素含有量は通常0.1~4質量%とすることができる。特に、アルケニルコハク酸イミド化合物のホウ素変性化合物(ホウ素化コハク酸イミド)は耐熱性、酸化防止性及び摩耗防止性に優れるため好ましい。
【0081】
無灰分散剤の数平均分子量(Mn)は、限定的ではないが2000以上であることが好ましく、より好ましくは2500以上、より一層好ましくは3000以上、最も好ましくは5000以上であり、また、15000以下であることが好ましい。無灰分散剤の数平均分子量が上記下限値未満では、分散性が十分でない可能性がある。一方、無灰分散剤の数平均分子量が上記上限値を超えると、粘度が高すぎ、流動性が不十分となり、デポジット増加の原因となるおそれがある。
【0082】
無灰分散剤がホウ素を有する場合、無灰分散剤中のホウ素含有量は限定されることはないが、0.3質量%~5質量%以下有する無灰分散剤であることが好ましく、0.5質量%~3質量%以下有する無灰分散剤であることがより好ましい。無灰分散剤はホウ素を含有する無灰分散剤とホウ素を含有しない無灰分散剤のいずれも使用することができ、併用することもできる。
無灰分散剤の窒素含有量は、限定されることはないが、0.3質量%~5質量%以下有する無灰分散剤であることが好ましく、0.5質量%~3質量%以下有する無灰分散剤であることがより好ましく、0.8質量%~2質量%以下有する無灰分散剤であることがさらに好ましい。
無灰分散剤の潤滑油組成物中の含有量は、ホウ素含有無灰分散剤中のホウ素含有量にもよるが、特にはホウ素含有無灰分散剤の配合量が、組成物全量基準で0~1.5質量%、好ましくは0.001~1.0質量%、より好ましくは0.01~0.75質量%、特に好ましくは0.1~0.5質量%であるのがよい。
【0083】
潤滑油組成物中に、ホウ素を有する無灰分散剤を含有する場合、潤滑油組成物中のホウ素含有量は限定されることはないが、50~500質量ppmが好ましく、100~400質量ppmがさらに好ましい。潤滑油組成物中の無灰分散剤由来の窒素含有量は、限定的ではないが、50~3000質量ppmが好ましく、100~2000質量ppmがさらに好ましい。
【0084】
その他の添加剤
本発明の潤滑油組成物は、その性能を向上させるために、目的に応じてその他の添加剤をさらに含有することができる。その他の添加剤としては一般的に潤滑油組成物に使用されているものを使用できるが、例えば、酸化防止剤、腐食防止剤、防錆剤、流動点降下剤、抗乳化剤、金属不活性化剤および消泡剤等の添加剤等を挙げることができる。
【0085】
上記酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。例えば、フェノール系無灰酸化防止剤としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が、アミン系無灰酸化防止剤としては、フェニル-α-ナフチルアミン、アルキルフェニル-α-ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン等が挙げられる。酸化防止剤は、通常、潤滑油組成物中に0.1~5質量%で配合される。
【0086】
上記腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系化合物等が挙げられる。上記防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等が挙げられる。腐食防止剤及び防錆剤は、通常、潤滑油組成物中にそれぞれ0.01~5質量%で配合される。
【0087】
上記流動点降下剤としては、例えば、使用する潤滑油基油に適合するポリメタクリレート系のポリマー等が使用できる。流動点降下剤は、通常、潤滑油組成物中に0.01~3質量%で配合される。
【0088】
上記金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4-チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4-チアジアゾリル-2,5-ビスジアルキルジチオカーバメート、2-(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、β-(o-カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。金属不活性化剤は、通常、潤滑油組成物中に0.01~3質量%で配合される。
【0089】
上記消泡剤としては、例えば、25℃における動粘度が1000~10万mm2/sのシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸のエステル、メチルサリチレートとo-ヒドロキシベンジルアルコール等が挙げられる。消泡剤は、通常、潤滑油組成物中に0.001~1質量%で配合される。
【0090】
潤滑油組成物
本発明の潤滑油組成物は、100℃での動粘度が9.3~12.5mm2/s未満であり、好ましくは9.5~12.0mm2/sである。
本発明の潤滑油組成物は、150℃での高温高せん断粘度(HTHS粘度)が好ましくは2.9mPa・s~3.7mPa・s未満であり、より好ましくは3.0mPa・s~3.5mPa・s未満である。
本発明の潤滑油組成物は、-35℃でのCCS粘度が6200mPa・s以下、好ましくは6000mPa・s以下である。
こうした物性値を満たすことにより、SAE規格の0W-30の要件を満たすことができる。
なお、潤滑油組成物のNOACK蒸発量は、限定的ではないが、13.0質量%未満が好ましく、12.0質量%以下がより好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、SAE規格の0W-30に適合しつつ、省燃費性に優れ、かつ低温粘度特性にも優れるので、特に内燃機関用潤滑油として好適に使用することができる。
【実施例0091】
以下、本発明を実施例及び比較例によってより詳細に示すが、本発明は下記実施例に限定されない。
【0092】
なお、実施例及び比較例に記載の潤滑油組成物につき、以下の方法により測定した。
(1)100℃での動粘度(KV100)
ASTM D445に準拠し、100℃で測定した。
(2)粘度指数(VI)
ASTM D 2270に準拠する方法にて計算した。
(3)-35℃でのCCS粘度(CCS粘度(@-35℃))
ASTM D5293に準拠して測定した。
(4)150℃での高温高せん断粘度(HTHS粘度(@150℃))
ASTM D4683に準拠して測定した。
(5)NOACK蒸発量
NOACK蒸発量はASTM D 5800に準拠して250℃1時間で測定された。
【0093】
(6)摩擦係数
摩擦係数は以下の方法に従い測定された。
プレート試験片(材質:AISI 52100 steel)からなるPCS Instruments社製標準試験片と、相手となる直径0.75インチのボール試験片(材質:AISI 52100 steel)からなるPCS Instruments社製標準試験片を用いて、各潤滑油組成物についてボールオンディスク摩擦試験を行った。試験荷重37N、すべり率50%、油温60℃(一定)として、2時間のボールオンディスク摩擦試験を行い、試験開始直後の摩擦係数(初期)と、2時間経過時点の摩擦係数(後期)を測定し、本試験における摩擦係数とした。
【0094】
実施例および比較例で使用した材料は以下の通りである。
(A)潤滑油基油
(A1-a-1)低粘度鉱油1(GTL由来基油(GTL4)、100℃での動粘度=4.1mm2/s、VI=129)
(A1-b-1)低粘度合成油1(ポリα-オレフィン基油(PAO4)、100℃での動粘度=4.1mm2/s)
(A1-a’-2)低粘度鉱油2(高度精製分解基油、100℃での動粘度=4.1mm2/s、VI=134)
(A1-a’-3)低粘度鉱油3(高度精製分解基油、100℃での動粘度=4.2mm2/s、VI=122)
(A1-a’-4)低粘度鉱油4(高度精製基油、100℃での動粘度=4.5mm2/s、VI=116)
(A2-a-1)高粘度鉱油1(GTL由来基油(GTL8)、100℃での動粘度=7.6mm2/s、VI=140)
(A2-b-1)高粘度合成油1(ポリα-オレフィン基油(PAO10)、100℃での動粘度=10.1mm2/s、VI=136)
(A2-b-2)高粘度合成油2(ポリα-オレフィン基油(PAO40)、100℃での動粘度=41.0mm2/s、VI=152)
【0095】
(B)有機摩擦調整剤
(B1)グリセリンモノオレート
(B2)グリセリンモノステアレート
(B3)オレイルアミン
【0096】
(C)金属摩擦調整剤
(C1)モリブデンジチオカーバメート(MoDTC、モリブデン含有量10質量%)
【0097】
その他の添加剤
粘度指数向上剤(ポリメタクリレート、重量平均分子量200,000)、金属清浄剤(カルシウム含有)、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、無灰分散剤、酸化防止剤、流動点降下剤とからなる添加剤パッケージ
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
上記表5及び6に示す通り、100℃における動粘度2.5~6.5mm2/s未満を有する高度精製分解基油を含んでいても上記(A1-a)及び(A1-b)のいずれも含まない潤滑油組成物(比較例2~4、6及び7)、特には100℃における動粘度2.5mm2/s以上かつ6.5mm2/s未満を有し、且つ粘度指数125以上を有する高度精製分解基油(A1-a’-2)を、(A1-a)GTL基油に替えて含有する潤滑油組成物(比較例2~4)では、NOACK蒸発量は低減されるが、-35℃でのCCS粘度が高く低温粘度特性に劣る。また、(A1)基油の量が潤滑油組成物の全質量に対して40質量%未満である潤滑油組成物(比較例1及び5)では、NOACK蒸発量が多く、省燃費性に劣る。さらに、(C)金属摩擦調整剤を含まない比較例8の組成では、初期又は後期のいずれかにおいて摩擦係数が大きくなり摩擦低減効果を維持することができない。
これに対し表1~4に示す通り、100℃における動粘度2.5~6.5mm2/s未満を有する(A1-a)及び(A1-b)の少なくとも1を潤滑油組成物の全質量に対して40質量%以上で含み、且つ、(B)有機摩擦調整剤及び(C)金属摩擦調整剤を含む本発明の潤滑油組成物は、NOACK蒸発量を低減し、且つ、かつ低温粘度特性にも優れ、さらには初期から後期にかけて摩擦低減効果を維持することができる。
【0105】
本発明の潤滑油組成物は低粘度化しても、NOACK蒸発量を低減して省燃費性を維持することができ、かつ低温粘度特性に優れる。したがって、本発明の潤滑油組成物は特に内燃機関用潤滑油組成物として好適である。