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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048718
(43)【公開日】2022-03-28
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F25B 47/02 20060101AFI20220318BHJP
   F25B 13/00 20060101ALI20220318BHJP
   F24F 11/49 20180101ALI20220318BHJP
   F24F 11/86 20180101ALI20220318BHJP
   F24F 11/89 20180101ALI20220318BHJP
【FI】
F25B47/02 550A
F25B13/00 U
F24F11/49
F24F11/86
F24F11/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154700
(22)【出願日】2020-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊内 啓
(72)【発明者】
【氏名】モタニーヤシャット ナパット
【テーマコード(参考)】
3L092
3L260
【Fターム(参考)】
3L092AA08
3L092BA26
3L092DA04
3L092EA09
3L092FA03
3L092FA04
3L092FA22
3L092GA04
3L092HA01
3L092JA02
3L092KA08
3L092LA02
3L092YA12
3L260AB04
3L260BA54
3L260CB02
3L260FA02
(57)【要約】
【課題】複数の室外ユニットを備えた場合であっても、これら室外ユニット間での油量の均衡を適切に図ることが可能な空気調和機を提供する。
【解決手段】空気調和機は、圧縮機と、室外熱交換器とを有する複数台の室外ユニットと、室内熱交換器を有する少なくとも一台の室内ユニットと、室外ユニットおよび室内ユニットの動作を制御する制御部とを備える。制御部は、室内熱交換器を凝縮器として機能させるとともに室外熱交換器を蒸発器として機能させる暖房運転において、複数台の室外ユニットの圧縮機のうち、少なくとも一台の潤滑油量が所定量よりも不足している場合、潤滑油量が不足している圧縮機を有する室外ユニットの暖房運転を継続させ、それ以外の室外ユニットのうち少なくとも一台を、室外熱交換器を凝縮器として機能させる除霜運転に切り替えて運転させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、室外熱交換器とを有する複数台の室外ユニットと、
室内熱交換器を有する少なくとも一台の室内ユニットと、
前記室外ユニットおよび前記室内ユニットの動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記室内熱交換器を凝縮器として機能させるとともに前記室外熱交換器を蒸発器として機能させる暖房運転において、複数台の前記室外ユニットの前記圧縮機のうち、少なくとも一台の潤滑油量が所定量よりも不足している場合、潤滑油量が不足している前記圧縮機を有する前記室外ユニットの前記暖房運転を継続させ、それ以外の前記室外ユニットのうち少なくとも一台を、前記室外熱交換器を凝縮器として機能させる除霜運転に切り替えて運転させる
空気調和機。
【請求項2】
前記制御部は、複数台の前記室外ユニットを二つのグループに振り分け、一方のグループに振り分けられた前記室外ユニットのうち、少なくとも一台の潤滑油量が所定量よりも不足している場合、前記一方のグループに振り分けられた前記室外ユニットの前記暖房運転を継続させ、他方のグループに振り分けられた前記室外ユニットを前記除霜運転に切り替えて運転させる
請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記制御部は、前記一方のグループの前記室外ユニットのうち、潤滑油量が所定量よりも不足している前記圧縮機を有する前記室外ユニット以外の前記室外ユニットの前記圧縮機の回転数を、潤滑油量が所定量よりも不足している前記圧縮機の回転数以下に制限する
請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記制御部は、複数台の前記室外ユニットの中で最大の能力を有する前記室外ユニットを前記一方のグループに振り分け、以降は残りの前記室外ユニットの中で最大の能力を有する前記室外ユニットを、双方のグループに振り分けられた前記室外ユニットの能力の合計が振り分け時点で小さい方のグループに順次振り分ける
請求項3に記載の空気調和機。
【請求項5】
複数の前記室外ユニットは、前記室内ユニットとの間で冷媒を循環させる流路により並列に接続される
請求項1から4のいずれか一項に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数の室外ユニットを備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
室外ユニットおよび室内ユニットをそれぞれ複数台ずつ備えた空気調和機において、各室外ユニットおよび各室内ユニットは、共通の液管およびガス管にそれぞれ接続されている。かかる空気調和機の冷凍サイクルを安定させるためには、各室外ユニットの油量、具体的には圧縮機の潤滑油量が均等で所定量以上に保たれていることが好ましい。
【0003】
このための施策の一例として、複数の室外ユニットを均油管および均圧管で繋ぎ、室外ユニット間の油量のバランスを保つことが挙げられる。この場合、室外ユニット間の油量のバランスを保つことは可能となるが、均油管などを別途配管することで室外ユニットの据付性の悪化やコストの増大などを招くおそれがある。
【0004】
また、別の施策として、複数の室外ユニットの間の油量が不均衡であることが検出された場合、各室外ユニットの相対的な湯量に応じてそれぞれの圧縮機を駆動制御することが挙げられる。例えば、相対的に油量の少ない室外ユニットの冷媒循環量が油量の多い他の室外ユニットの冷媒循環量よりも増大するように、それぞれの圧縮機が駆動制御される。しかしながら、能力の異なる複数の室外ユニットが接続されている場合、あるいは接続される室外ユニットが多数ある場合などは、油量が不足している室外ユニットに油を確実に戻すことは必ずしも容易でなく、油量の不均衡を解消できないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-28215号公報
【特許文献2】特開2011-2160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、これを踏まえてなされたものであり、その目的は、複数の室外ユニットを備えた場合であっても、これら室外ユニット間での油量の均衡を適切に図ることが可能な空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、空気調和機は、圧縮機と、室外熱交換器とを有する複数台の室外ユニットと、室内熱交換器を有する少なくとも一台の室内ユニットと、前記室外ユニットおよび前記室内ユニットの動作を制御する制御部とを備える。前記制御部は、前記室内熱交換器を凝縮器として機能させるとともに前記室外熱交換器を蒸発器として機能させる暖房運転において、複数台の前記室外ユニットの前記圧縮機のうち、少なくとも一台の潤滑油量が所定量よりも不足している場合、潤滑油量が不足している前記圧縮機を有する前記室外ユニットの前記暖房運転を継続させ、それ以外の前記室外ユニットのうち少なくとも一台を、前記室外熱交換器を凝縮器として機能させる除霜運転に切り替えて運転させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る空気調和機の構成を概略的に示す回路図である。
図2】実施形態に係る空気調和機における油量制御処理時の制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る空気調和機1の構成を概略的に示す回路図である。
図1に示すように、空気調和機1は、室外ユニット2と、室内ユニット3と、これらの動作を制御する制御部4とを備えている。室外ユニット2と室内ユニット3とは、両ユニット2,3間で冷媒を循環させる流路5で接続されている。流路5は、液冷媒が流れる液管51と、ガス冷媒が流れるガス管52を含む。図1に示す例において、空気調和機1は、四台の室外ユニット21,22,23,24が並列に配置されるとともに、三台の室内ユニット31,32,33が並列に配置されて構成されている。ただし、室外ユニット2の台数は、複数台であればよく、図示例のような四台に限定されない。室内ユニット3の台数は、少なくとも一台であればよく、図示例のような三台に限定されない。
【0010】
室外ユニット21,22,23,24は、主たる要素として、圧縮機2a、吐出圧力センサ2b、オイルセパレータ2c、四方弁2d、室外熱交換器2e、室外送風機2f、室外膨張弁2g、吸込圧力センサ2h、アキュムレータ2iを備えている。なお、各室外ユニット21,22,23,24の上記した各要素は、図1に示すように、室外ユニット21,22,23,24に対応して上記の各添え字a~iを付して区別する。室外送風機2f以外の各要素は、順次配管接続され、室内ユニット3に繋がる流路5にそれぞれ配置されている。室外送風機2fは、室外熱交換器2eに隣接して配置されている。吐出圧力センサ2bは、圧縮機2aから吐出されたガス冷媒の吐出圧力を検出する。吸込圧力センサ2hは、アキュムレータ2iに吸い込まれるガス冷媒の吸込圧力を検出する。
【0011】
室内ユニット31,32,33は、主たる要素として、室内膨張弁3a、室内熱交換器3b、室内送風機3c、およびこれらを収容する筐体3dを備えている。なお、各室内ユニット31,32,33の上記した各要素は、図1に示すように、室内ユニット31,32,33に対応して上記の各添え字a~dを付して区別する。室内膨張弁3a、室内熱交換器3bは、筐体3d内で配管接続され、室外ユニット2に繋がる流路5にそれぞれ配置されている。室内送風機3cは、筐体3d内で室内熱交換器3bに隣接して配置されている。筐体3dは、室内ユニット31,32,33の外郭をそれぞれ規定する。
【0012】
制御部4は、CPU、メモリ、記憶装置(不揮発メモリ)、入出力回路、タイマなどを含み、室外ユニット2および室内ユニット3を制御するための所定の演算処理を実行する。制御部4は、室外ユニット2および室内ユニット3と有線もしくは無線で接続されている。なお、制御部4は、室外ユニット2および室内ユニット3とは別構成でなくともよく、その所在は特に限定されない。例えば、室外ユニット2の構成要素の一つとして制御部4が包含されていてもよい。
【0013】
制御部4は、空気調和機1の運転開始、運転停止、冷房運転と暖房運転のモード選択、外気温度、設定室内温度など、空気調和機1の運転制御に必要な各種情報(データ)を取得する。取得した情報に応じて、制御部4は、室外ユニット2および室内ユニット3の各要素の動作を制御し、冷凍サイクルの運転開始、運転停止、冷房運転および暖房運転の切り換えなどを行う。
【0014】
かかる空気調和機1における冷房モードおよび暖房モードでの運転時の動作について説明する。なお、四台の室外ユニット2および三台の室内ユニット3は、必ずしも全台が同時に稼働する必要はなく、状況に応じ、選択された一部のみが稼働する場合もある。
【0015】
例えば、空気調和機1が冷房モードで運転を行う場合、四方弁2dが切り替わり、圧縮機2aで圧縮された高温・高圧のガス冷媒が流路5に吐出される。吐出されたガス冷媒は、オイルセパレータ2cで潤滑油分が分離された後、四方弁2dを経由して凝縮器(放熱器)として機能する室外熱交換器2eに導かれる。オイルセパレータ2cで分離された潤滑油は、圧縮機2aに適宜戻される。
【0016】
室外熱交換器2eに導かれたガス冷媒は、空気との熱交換により凝縮し、高圧の液冷媒に変化する。高圧の液冷媒は、室内膨張弁3aを通過する過程で減圧されて低圧の液冷媒に変化する。該液冷媒は、蒸発器(吸熱器)として機能する室内熱交換器3bに導かれるとともに、室内熱交換器3bを通過する過程で空気と熱交換する。
【0017】
この結果、液冷媒は、空気から熱を奪って蒸発し、低温・低圧のガス冷媒に変化する。室内熱交換器3bを通過する空気は、液冷媒の蒸発潜熱により冷やされ、室内送風機3cによって空調(冷房)すべき場所に冷風として吹き出される。
【0018】
室内熱交換器3bを通過した低温・低圧のガス冷媒は、四方弁2dを経由してアキュムレータ2iに導かれる。蒸発し切れなかった液冷媒が冷媒中に混入している場合は、ここで液冷媒とガス冷媒とに分離される。液冷媒から分離された低温・低圧のガス冷媒は、アキュムレータ2iから圧縮機2aに吸い込まれるとともに、圧縮機2aで再び高温・高圧のガス冷媒に圧縮されて流路5に吐出される。
【0019】
一方、空気調和機1が暖房モードで運転を行う場合、四方弁2dが切り替わり、圧縮機2aから吐出された高温・高圧のガス冷媒は、四方弁2dを経由して室内熱交換器3bに導かれ、室内熱交換器3bを通過する空気と熱交換される。この場合、室内熱交換器3bは凝縮器として機能する。
【0020】
この結果、室内熱交換器3bを通過するガス冷媒は、空気と熱交換することにより凝縮し、高圧の液冷媒に変化する。室内熱交換器3bを通過する空気は、ガス冷媒との熱交換により加熱され、室内送風機3cによって空調(暖房)すべき場所に温風として吹き出される。
【0021】
室内熱交換器3bを通過した高温の液冷媒は、室外膨張弁2gに導かれるとともに、室外膨張弁2gを通過する過程で減圧されて低圧の液冷媒に変化する。該液冷媒は、蒸発器として機能する室外熱交換器2eに導かれるとともに、ここで空気と熱交換することにより蒸発し、低温・低圧のガス冷媒に変化する。室外熱交換器2eを通過した低温・低圧のガス冷媒は、四方弁2dおよびアキュムレータ2iを経由して圧縮機2aに吸い込まれるとともに、圧縮機2aで再び高温・高圧のガス冷媒に圧縮されて流路5に吐出される。
【0022】
このような暖房運転時、室外熱交換器2eが着霜すると、空気調和機1は、除霜運転(霜取運転)を行う。本実施形態において、四台の室外ユニット2は、除霜運転に関して二つのグループに予め振り分けられている。これら二つのグループにおいて、同一グループに属する室外ユニット2のいずれかが着霜した場合、該同一グループに属する室外ユニット2は、暖房運転から除霜運転に切り替わる。ただし、かかる同一グループに属する室外ユニット2のうち、少なくとも一台が暖房運転から除霜運転に切り替わればよく、該同一グループに属するすべての室外ユニット2が除霜運転に切り替わらなくともよい。一方、同一グループに属するいずれの室外ユニット2も着霜していない場合、該同一グループに属する室外ユニット2は、除霜運転に切り替わることなく暖房運転を継続する。
【0023】
同一グループにおいて除霜運転を行う室外ユニット2では、四方弁2dで流路5が切り替えられ、圧縮機2aから吐出される圧縮された高温のガス冷媒は四方弁2dから室外熱交換器2eに導かれる。この高温のガス冷媒が流れることで、室外熱交換器2eが除霜される。除霜運転では、冷凍サイクルが冷房モードとなるため、例えば冷たい外気を室外熱交換器2eに送らないように室外送風機2fが停止する。すなわち、除霜運転時、室外熱交換器2eは凝縮器として機能し、室内熱交換器3bは蒸発器として機能する。このように除霜運転に切り替わって運転されている間、他のグループに属するいずれの室外ユニットも着霜していなければ、該他のグループに属する室外ユニット2は、暖房運転を継続する。
【0024】
二つのグループ(以下、第1のグループ、第2のグループという)への振り分けは、双方のグループに属する室外ユニット2の能力の合計(以下、合計能力という)がほぼ同等となるように行われる。すなわち、霜が解け残らないように室外ユニット2の能力を考慮して、第1のグループもしくは第2のグループのいずれかに室外ユニット2が振り分けられる。室外ユニット2の能力は、例えば該室外ユニット2の圧縮機2aが最大の運転周波数で駆動した時の能力であり、室外ユニット2の最大の空調能力である。振り分けにあたっては、まず、すべての室外ユニット2の中で最大の能力を有する室外ユニット2が第1のグループに振り分けられる。以降、残りの室外ユニット2の中で最大の能力を有する室外ユニット2が、振り分け時点で合計能力の小さい方のグループ(第1のグループもしくは第2のグループ)に順次振り分けられる。
【0025】
例えば、図1に示す四台の室外ユニット21,22,23,24の能力が10馬力、16馬力、14馬力、12馬力である場合、まず、室外ユニット22が第1のグループに振り分けられる。次いで、室外ユニット23が第2のグループに振り分けられる。この時点で、第1のグループの合計能力は16馬力、第2のグループの合計能力は14馬力となる。したがって、室外ユニット24は、第2のグループに振り分けられる。この時点で、第1のグループの合計能力は16馬力、第2のグループの合計能力は26馬力となる。このため、室外ユニット21は、第1のグループに振り分けられる。すなわち、室外ユニット21,22は第1のグループに属し、室外ユニット23,24は第2のグループに属する。この場合、すべての室外ユニット21,22,23,24が振り分けられた後の合計能力は、第1のグループおよび第2のグループともに26馬力となる。
【0026】
ただし、双方のグループの合計能力は、ほぼ同等であればよく、必ずしも同等でなくともよい。また、双方のグループに属する室外ユニット2の数も一致している必要はない。例えば、能力が10,10,14,14,16馬力の五台の室外ユニットの場合、第1のグループは、それぞれの能力が16,10,10馬力、合計能力が36馬力の三台の室外ユニットで構成され、第2のグループは、それぞれの能力が14,14馬力、合計能力が28馬力の二台の室外ユニットで構成される。
【0027】
本実施形態において、空気調和機1は、冷凍サイクルを安定させるため、各室外ユニット21,22,23,24の油量のバランスを保つための運転制御(以下、油量制御処理という)を行う。油量制御処理においては、例えば所定の室外ユニット2の油量が不足している場合、それ以外の室外ユニット2が除霜運転を適宜行うことで油量が不足している室外ユニット2に油を戻し、室外ユニット2間での油量の不均衡を解消させる。室外ユニット2の油量は、具体的には圧縮機21a,22a,23a,24aの圧縮機構を潤滑する潤滑油量である。かかる潤滑油は、冷媒に混在して冷凍サイクルに従って循環し、室外ユニット2間で均等に保たれるようになっている。また、潤滑油は、オイルセパレータ2cでガス冷媒から分離されて圧縮機2aに適宜戻される。このような油量制御処理は、制御部4が行う。
【0028】
以下、油量制御処理の一例について、制御部4の制御フローに従って説明する。図2には、かかる油量制御処理時における制御部4の制御フローを示す。
図2に示すように、空気調和機1が運転開始されると、制御部4は、室外ユニット2を二つのグループに振り分ける(S101)。この場合、空気調和機1は、暖房モードで運転されている。これら二つのグループは、上述したように除霜運転のために区分される。上述したとおり、制御部4は、双方のグループに属する室外ユニット2の合計能力がほぼ同等となるように、二つのグループに室外ユニット2を振り分ける。例えば、制御部4は、図1に示す四台の室外ユニット21,22,23,24のうち、室外ユニット21,22を第1のグループに振り分け、室外ユニット23,24を第2のグループに振り分ける。
【0029】
なお、制御部4は、所定のテーブルなどに応じてこのような振り分けを行ってもよい。かかるテーブルは、例えば各室外ユニット2を識別するユニット番号などと、該室外ユニット2が属するグループを識別するグループ番号などとが紐付けられて制御部4の記憶装置に予め格納される。二つのグループへの室外ユニット2の振り分け時、制御部4は、かかるテーブルを記憶装置からメモリに読み出し、グループとの紐付けに応じて各室外ユニット2を振り分ける。
【0030】
次いで、制御部4は、油不足条件を判定する。油不足条件は、各グループに属する室外ユニット2の油量、具体的には圧縮機2aの潤滑油量が不足しているか否かの判定条件であり、同一グループに属する少なくとも一台の室外ユニット2の油量が不足していれば成立する。すなわち、油不足条件が成立する場合には、同一グループに属する室外ユニット2間の油量のバランスが保たれていない状態となっている。これに対し、油不足条件が成立しない場合には、同一グループに属する室外ユニット2間の油量のバランスが保たれている状態となっている。
【0031】
油不足条件の判定にあたって、制御部4は、例えば圧縮機2aに設けられたセンサ2j(21j,22j,23j,24j)で捕捉した潤滑油の油面位置を適正位置と比較する。比較の結果、制御部4は、同一グループに属する室外ユニット2の圧縮機2aのうち、少なくとも一台において油面位置が適正位置よりも低下している場合、当該圧縮機2aの潤滑油量が所定量よりも不足しており、油不足条件が成立すると判定する。これに対し、全台の油面位置が適正位置以上である場合、すべての圧縮機2aの潤滑油量が所定量以上であり、油不足条件が成立しないと判定する。所定量の値は、圧縮機2aの性能などに応じて予め規定されており、例えば制御部4の記憶装置に予め格納され、油不足条件の判定時にパラメータとしてメモリに読み出される。
【0032】
制御部4は、まず、第1のグループについて、油不足条件を判定する(S102)。
第1のグループについて油不足条件が成立する場合、つまり第1のグループの少なくとも一台の室外ユニット2の油量が不足している場合、制御部4は、第2のグループの室外ユニット2を暖房運転から除霜運転に切り替える。これにより、第2のグループの室外ユニット2、例えば室外ユニット23,24は、除霜運転を開始する(S103)。一方、第1のグループの室外ユニット2、例えば室外ユニット21,22は、暖房運転を継続する(S103)。
【0033】
続けて、制御部4は、第1のグループの室外ユニット2の圧縮機2aの回転数を制限する。具体的には、第1のグループの室外ユニット2のうち、油量が不足している室外ユニット2以外の室外ユニット2の圧縮機2aの回転数が、油量が不足している室外ユニット2の圧縮機2aの回転数以下に制限される(S104)。例えば、第1のグループの室外ユニット2のうち、室外ユニット21の油量が不足し、室外ユニット22の油量が不足していない場合、室外ユニット22の圧縮機22aの回転数が室外ユニット21の圧縮機21aの回転数以下に制限される。
【0034】
そして、制御部4は、油回収運転終了条件を判定する(S105)。油回収運転終了条件は、油量が不足している室外ユニット2の油不足が解消され、すべての室外ユニット2間の油量のバランスが保たれているか否かを判定するための条件である。例えば、第2のグループの室外ユニット2を暖房運転から除霜運転に切り替えた後(S103)、該除霜運転が所定時間(一例として、10分程度)に亘って継続し、油回収運転終了条件の判定対象のグループについて油不足条件が成立しない場合、制御部4は、油回収運転終了条件が成立すると判定する。一方、暖房運転から切り替えた後(S103)、除霜運転が所定時間(一例として、10分程度)に亘って継続されていない場合、あるいは油回収運転終了条件の判定対象のグループについて油不足条件が成立する場合、制御部4は、油回収運転終了条件が成立しないと判定する。制御部4は、油回収運転終了条件が成立するまで、第1のグループについての油回収運転終了条件の判定を繰り返す。
【0035】
油回収運転終了条件が成立する場合、端的には室外ユニット2の油量のバランスが回復した場合、制御部4は、第1のグループの室外ユニット2の圧縮機2aの回転数の制限を解除する。具体的には、第1のグループの室外ユニット2のうち、油量が不足していた室外ユニット2以外の室外ユニット2の圧縮機2aの回転数の制限を解除する(S106)。例えば、室外ユニット21の圧縮機21aの回転数以下に制限されていた室外ユニット22の圧縮機22aの回転数制限を解除する。
【0036】
次いで、制御部4は、第2のグループの室外ユニット2を除霜運転から暖房運転に復帰させる(S107)。これにより、第2のグループの室外ユニット2、例えば室外ユニット23,24は、暖房運転を再開する。すなわち、第1のグループの室外ユニット2、例えば室外ユニット21,22も含め、すべての室外ユニット21,22,23,24が暖房運転された状態となる。
【0037】
これに対し、S102において第1のグループについて油不足条件が成立しない場合、つまり第1のグループに属する室外ユニット2間の油量のバランスが保たれている状態である場合、制御部4は、第2のグループについての油不足条件を判定する(S108)。
【0038】
第2のグループについて油不足条件が成立する場合、つまり第2のグループの少なくとも一台の室外ユニット2の油量が不足している場合、制御部4は、第1のグループの室外ユニット2を暖房運転から除霜運転に切り替える。これにより、第1のグループの室外ユニット2、例えば室外ユニット21,22は、除霜運転を開始する(S109)。一方、第2のグループの室外ユニット2、例えば室外ユニット23,24は、暖房運転を継続する(S109)。
【0039】
続けて、制御部4は、第2のグループの室外ユニット2の圧縮機2aの回転数を制限する。具体的には、第2のグループの室外ユニット2のうち、油量が不足している室外ユニット2以外の室外ユニット2の圧縮機2aの回転数が、油量が不足している室外ユニット2の圧縮機2aの回転数以下に制限される(S110)。例えば、第2のグループの室外ユニット2のうち、室外ユニット23の油量が不足し、室外ユニット24の油量が不足していない場合、室外ユニット24の圧縮機24aの回転数が室外ユニット23の圧縮機23aの回転数以下に制限される。
【0040】
そして、制御部4は、油回収運転終了条件を判定する(S111)。制御部4は、油回収運転終了条件が成立するまで、油回収運転終了条件の判定を繰り返す。
【0041】
油回収運転終了条件が成立する場合、端的には第2のグループの室外ユニット2の油量のバランスが回復した場合、制御部4は、第2のグループの室外ユニット2の圧縮機2aの回転数の制限を解除する。具体的には、第2のグループの室外ユニット2のうち、油量が不足していた室外ユニット2以外の室外ユニット2の圧縮機2aの回転数の制限を解除する(S112)。例えば、室外ユニット23の圧縮機23aの回転数以下に制限されていた室外ユニット24の圧縮機24aの回転数制限を解除する。
【0042】
次いで、制御部4は、第1のグループの室外ユニット2を除霜運転から暖房運転に復帰させる(S113)。これにより、第1のグループの室外ユニット2、例えば室外ユニット21,23は、暖房運転を開始する。すなわち、第2のグループの室外ユニット2、例えば室外ユニット23,24も含め、すべての室外ユニット21,22,23,24が暖房運転された状態となる。
【0043】
S107あるいはS113において、すべての室外ユニット21,22,23,24が暖房運転された状態となると、制御部4は、空気調和機1の運転停止条件を判定する(S114)。また、S108において、第2のグループについて油不足条件が成立しない場合も、制御部4は、空気調和機1の運転停止条件を判定する(S114)。この場合は、第1のグループおよび第2のグループのいずれにおいても油不足条件が成立しない場合であり、すべての室外ユニット2間の油量のバランスが保たれている状態となっている。
【0044】
運転停止条件は、空気調和機1を運転停止させるか否かの判定条件であり、例えば、制御部4が空気調和機1の運転停止を示す信号を受信したか否かなどに応じて判定される。運転停止を示す信号は、例えば室外ユニット2や室内ユニット3の設定部(図示省略)から作業者やユーザが運転停止を選択することで発信される。設定部は、例えば操作用のパネル、スイッチ、ボタン、表示用のディスプレイなどで構成されている。
【0045】
運転停止条件が成立しない場合、制御部4は、第1のグループについての油不足条件を再び判定し、判定結果に応じて以降の処理(S103~S113)を選択的に繰り返す。
これに対し、運転停止条件が成立する場合、制御部4は、空気調和機1の運転を停止する(S115)。
すなわち、空気調和機1が運転されている間、一連の油量制御処理が繰り返される。そして、空気調和機1が運転停止されると、一連の油量制御処理も終了する。
【0046】
このように、本実施形態によれば、複数(一例として四台)の室外ユニット2は、第1のグループと第2のグループに振り分けて管理される。これら二つのグループのうち、一方のグループについて油不足条件が成立する場合、一方のグループは暖房運転を継続し、他方のグループは除霜運転に切り替えられる。これにより、除霜運転に切り替えられた他方のグループから、暖房運転を継続する一方のグループに油が戻される。すなわち、油量が不足している室外ユニット2にそれ以外の室外ユニット2から油が戻され、室外ユニット2間の油量の不均衡を解消し、室外ユニット2間での油量のバランスを保つことができる。
【0047】
その際、他方のグループの室外ユニット2のうち、油量が不足している室外ユニット2以外の室外ユニット2の圧縮機2aの回転数が、油量が不足している室外ユニット2の圧縮機2aの回転数以下に制限される。その結果、油量が不足している室外ユニット2の圧縮機2aの回転数は、同一グループのそれ以外の圧縮機2aの回転数以上に維持される。これにより、油量が不足している室外ユニット2を循環する冷媒量を、同一グループのそれ以外の室外ユニット2を循環する冷媒量よりも高めることができる。また、他方のグループは除霜運転に切り替えられている。したがって、油量が不足している室外ユニット2にそれ以外の室外ユニット2から効率よく油を戻し、室外ユニット2間の油量の不均衡を迅速に解消できる。
【0048】
すなわち、本実施形態に係る空気調和機1のように、複数の室外ユニット2が接続されている場合であっても、これら室外ユニット2間での油量の均衡を適切に保つことができる。特に、例えば能力の異なる複数の室外ユニット2が接続されているとともに、接続される室外ユニット2が多数ある場合であっても、これら室外ユニット2間での油量の均衡を適切に保ち、冷凍サイクルの安定を図ることが可能となる。
【0049】
以上、本発明の実施形態を説明したが、かかる実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1…空気調和機、2,21,22,23,24…室外ユニット、2a,21a,22a,23a,24a…圧縮機、2b,21b,22b,23b,24b…吐出圧力センサ、2c,21c,22c,23c,24c…オイルセパレータ、2d,21d,22d,23d,24d…四方弁、2e,21e,22e,23e,24e…室外熱交換器、2f,21f,22f,23f,24f…室外送風機、2g,21g,22g,23g,24g…室外膨張弁、2h,21h,22h,23h,24h…吸込圧力センサ、2i,21i,22i,23i,24i…アキュムレータ、2j,21j,22j,23j,24j…センサ、3,31,32,33…室内ユニット、3a,31a,32a,33a…室内膨張弁、3b,31b,32b,33b…室内熱交換器、3c,31c,32c,33c…室内送風機、3d,31d,32d,33d…筐体、4…制御部、5…流路、51…液管、52…ガス管。
図1
図2