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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048736
(43)【公開日】2022-03-28
(54)【発明の名称】スライダーと滑り免震装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20220318BHJP
   F16F 15/06 20060101ALI20220318BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
F16F15/02 L
F16F15/06 D
E04H9/02 331E
E04H9/02 331Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154725
(22)【出願日】2020-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 伸介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 厚
(72)【発明者】
【氏名】小西 克尚
(72)【発明者】
【氏名】西本 晃治
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AA05
2E139AA17
2E139AC03
2E139AC06
2E139AC20
2E139AC26
2E139AC27
2E139AC33
2E139CA22
2E139CA24
2E139CB04
2E139CC02
2E139CC11
3J048AA07
3J048BC02
3J048BG01
3J048BG04
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】地震時に上揚力が作用した際のスライダーの空走と、滑り免震装置の構成部材の分離を、可及的にシンプルな構成により解消することのできる、スライダーとこのスライダーを備えた滑り免震装置を提供すること。
【解決手段】滑り免震装置70を構成するスライダー40であり、せん断キー14を備える第一分割スライダー10と、せん断キー14が収容されるキー溝24を備える第二分割スライダー20とを有し、第一分割スライダー10と第二分割スライダー20の間に付勢部材30が配設されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
滑り免震装置を構成するスライダーであって、
せん断キーを備える第一分割スライダーと、該せん断キーが収容されるキー溝を備える第二分割スライダーとを有し、
前記第一分割スライダーと前記第二分割スライダーの間に付勢部材が配設されていることを特徴とする、スライダー。
【請求項2】
前記せん断キーは、切頭円錐体、切頭角錐体、球体のいずれか一種であること特徴とする、請求項1に記載のスライダー。
【請求項3】
前記キー溝の内部に、前記付勢部材と前記せん断キーが収容されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスライダー。
【請求項4】
前記第一分割スライダーにおける前記せん断キーの周囲、及び/または、前記第二分割スライダーにおける前記キー溝の周囲に、複数の収容溝が設けられ、それぞれの該収容溝に前記付勢部材が収容されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスライダー。
【請求項5】
前記付勢部材が前記第一分割スライダーと前記第二分割スライダーに対して付勢力を付与しない状態において、前記せん断キーの一部が前記キー溝に収容されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のスライダー。
【請求項6】
前記付勢部材が、圧縮コイルバネ、圧縮皿バネ、高反発性ゴムのいずれか一種により形成されていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のスライダー。
【請求項7】
上部構造体と下部構造体のそれぞれに固定される、上沓及び下沓と、
前記上沓と前記下沓の間において摺動する請求項1乃至6のいずれか一項に記載のスライダーと、を有し、
前記付勢部材により、前記第一分割スライダーと前記第二分割スライダーの一方が前記上部構造体に付勢され、他方が前記下部構造体に付勢されるようになっていることを特徴とする、滑り免震装置。
【請求項8】
上部構造体と下部構造体のいずれか一方に固定される沓、及び、他方に固定される受け台と、
前記沓と前記受け台の間において摺動する請求項1乃至6のいずれか一項に記載のスライダーと、を有し、
前記付勢部材により、前記第一分割スライダーと前記第二分割スライダーの一方が前記上部構造体に付勢され、他方が前記下部構造体に付勢されるようになっていることを特徴とする、滑り免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライダーと滑り免震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震国であるわが国においては、ビルや橋梁、高架道路、戸建の住宅といった様々な構造物に対して、地震力に抗する技術、構造物に入る地震力を低減する技術など、様々な耐震技術、免震技術、制震技術が開発され、各種構造物に適用されている。中でも免震技術は、構造物に入る地震力そのものを低減する技術であることから、地震時の構造物の振動は効果的に低減される。この免震技術を概説すると、下部構造物である基礎と上部構造物との間に免震装置を介在させ、地震による基礎の振動の上部構造物への伝達を低減し、上部構造物の振動を低減して構造安定性を保証するものである。尚、この免震装置は、地震時のみならず、構造物に対して常時作用する交通振動の上部構造物への影響低減にも効果を発揮する。
【0003】
免震装置には、鉛プラグ入り積層ゴム支承装置や高減衰積層ゴム支承装置、積層ゴム支承とダンパーを組み合わせた装置、滑り免震装置など、様々な形態の装置が存在している。その中で、滑り免震装置には平面滑り免震支承と球面滑り免震支承があり、平面滑り免震支承は復元力を有しないが、球面滑り免震支承は復元力を有し、地震時のセルフセンタリング機能を有する。球面滑り免震装置を取り上げてその構成の一例を説明すると、曲率を有する摺動面を備えた上沓及び下沓(沓はコンケイブと称される)と、上沓と下沓の間に配設されてそれぞれの沓の摺動面と接し、曲率のある上面及び下面を備えたスライダーと、を有する。この種の滑り免震装置は、球面滑り免震装置や球面滑り支承などと称されることもある。
【0004】
ところで、上部構造体と下部構造体の間に滑り免震装置が介在する免震建物(橋梁を含む)において、地震時に免震建物に対して上揚力が作用して滑り免震装置を構成する上沓と下沓が上下に分離しようとした際に、例えば上沓がスライダーから浮き上がって双方の間に隙間が生じ、スライダーが空走する恐れがある。スライダーが空走すると、上沓及び下沓の有するストッパーリングをスライダーが乗り越えて脱落する危険性がある。また、スライダーが空走して下沓のストッパーリングの一方側に片当たりすると、局所的な力がスライダーに作用し、スライダーの一部に過大な面圧が生じ、スライダー本体が傷付いたり、スライダーの上下面に取付けられている摩擦材が損傷するといった恐れもある。
【0005】
そこで、地震時におけるスライダーからの上沓の浮き上がりを解消して、スライダーの空走を抑止することのできる滑り免震支承構造が提案されている。具体的には、上沓及び下沓と、上沓と下沓の間で摺動するスライダーと、を有する滑り免震装置において、上沓もしくは下沓は水平移動規制手段により水平方向への移動を規制された状態で上部構造体もしくは下部構造体に係止され、上部構造体と上沓の間、もしくは下沓と下部構造体の間に、圧縮された状態の圧縮バネからなる押し付け手段が配設され、押し付け手段により上沓もしくは下沓とスライダーが押し付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6580285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の滑り免震支承構造によれば、上部構造体と上沓の間、もしくは下沓と下部構造体の間に押し付け手段が配設され、この押し付け手段により、スライダーと上下の沓が押し付けられていることにより、地震時に上揚力が作用した場合であっても、スライダーから例えば上沓が浮き上がることを解消することができ、スライダーの空走を抑止することができる。特許文献1に記載の滑り免震支承構造は、上沓と上部構造体の間、もしくは下沓と下部構造体の間に押し付け手段を配設すること、すなわち、二つの部材間に押し付け手段を配設することにより形成される滑り免震支承構造であることから、より一層シンプルな構成で、スライダーの空走を解消でき、さらには、滑り免震装置を構成する上下の沓とスライダーの分離(上下の分離)、もしくは沓及び受け台とスライダーの分離、すなわち滑り免震装置の構成部材の分離を解消できる滑り免震装置が望まれる。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、地震時に上揚力が作用した際のスライダーの空走と、滑り免震装置の構成部材の分離を、可及的にシンプルな構成により解消することのできる、スライダーとこのスライダーを備えた滑り免震装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明によるスライダーの一態様は、
滑り免震装置を構成するスライダーであって、
せん断キーを備える第一分割スライダーと、該せん断キーが収容されるキー溝を備える第二分割スライダーとを有し、
前記第一分割スライダーと前記第二分割スライダーの間に付勢部材が配設されていることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、スライダーが第一分割スライダーと第二分割スライダーにより構成され、第二分割スライダーの備えるキー溝に第一分割スライダーの備えるせん断キーが収容されるとともに、第一分割スライダーと第二分割スライダーの間に付勢部材が配設されていることから、このスライダーを備えた滑り免震装置に対して地震時の上揚力と水平力が作用した際に、第一分割スライダーと第二分割スライダーが付勢部材から付勢力を受けることにより、双方の分割スライダーと上沓及び下沓が分離することが解消される。そのため、スライダーと上沓及び下沓の少なくとも一方が分離することにより、スライダーが空走して上沓及び下沓の有するストッパーリングを乗り越えて脱落するといった危険性は解消される。また、新規の構成を有するスライダーのみによって、上下の沓とスライダーの分離(上下の分離)、もしくは沓及び受け台とスライダーの分離を解消できることから、シンプルな構成でスライダーと滑り免震装置の構成部材との分離を解消することができる。
【0011】
また、本発明によるスライダーの他の態様において、前記せん断キーは、切頭円錐体、切頭角錐体、球体のいずれか一種であること特徴とする。
【0012】
本態様によれば、キー溝に遊嵌されるせん断キーが、切頭円錐体、切頭角錐体、球体のいずれか一種であることにより、第一分割スライダーの有するせん断キーを中心とした第二分割スライダーのスムーズな回動が許容される。そのため、上下の沓の変位や受け台に対する沓の変位に応じて双方の分割スライダーが回動することにより、沓の変位に追随することができ、また、沓の備える曲率を有する摺動面に沿ってスライダーが摺動した際に、当該曲率に応じて第二分割スライダーを回動させることができる。尚、仮にせん断キーが柱状の形態(切頭錐体でない形態)の場合は、せん断キーにより第二分割スライダーの回動が抑制される可能性がある。
【0013】
また、本発明によるスライダーの他の態様は、前記キー溝の内部に、前記付勢部材と前記せん断キーが収容されていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、キー溝の内部に、付勢部材とせん断キーの双方が収容されていることにより、可及的にシンプルな構成のスライダーを形成することができる。ここで、付勢部材は、せん断キーの例えば先端に接着や係合等にて固定されていることにより、付勢部材がキー溝から係脱し難くなることから好ましい。また、せん断キーが切頭円錐体の場合は、その先端の円形断面の直径に対して付勢部材の直径が同程度かそれよりも小さいこと、せん断キーが切頭角錐体の場合は、その先端の多角形断面の中心を通る最短長さに対してせん断キーの先端の直径が同程度かそれよりも小さいことにより、付勢部材が第二分割スライダーの回動を妨げないことから好ましい。
【0015】
また、本発明によるスライダーの他の態様は、前記第一分割スライダーにおける前記せん断キーの周囲、及び/または、前記第二分割スライダーにおける前記キー溝の周囲に、複数の収容溝が設けられ、それぞれの該収容溝に前記付勢部材が収容されていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、第一分割スライダーにおけるせん断キーの周囲、及び/または、第二分割スライダーにおけるキー溝の周囲に複数の収容溝が設けられ、それぞれの収容溝に付勢部材が収容されていることにより、複数の付勢部材にてそれぞれの分割スライダーを安定的に付勢することができる。ここで、複数の収容溝の配設態様としては、せん断キー及び/またはキー溝の周囲において、三つの収容溝が120度間隔で配設される形態、四つの収容溝が90度間隔で配設される形態、五つの収容溝が72度間隔で配設される形態などが挙げられる。尚、せん断キーとキー溝の双方に複数の収容溝が設けられる形態では、相互に対応する位置に収容溝が設けられ、相互に位置合わせされた収容溝に付勢部材が収容される。
【0017】
また、本発明によるスライダーの他の態様は、前記付勢部材が前記第一分割スライダーと前記第二分割スライダーに対して付勢力を付与しない状態において、前記せん断キーの一部が前記キー溝に収容されていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、付勢部材が付勢力を付与しない状態、すなわち、スライダーに上揚力が作用して付勢部材が何らの負荷も受けていない自然長の状態において、せん断キーの一部(例えばせん断キーの先端の一部)がキー溝に収容されていることにより、スライダーに上揚力が作用した際の第一分割スライダーと第二分割スライダーの上下方向の分離を、せん断キーとキー溝の係合により抑止することができる。また、さらに地震時の水平力が作用している場合には、せん断キーの一部がキー溝に収容されていることにより、第一分割スライダーと第二分割スライダーの水平方向の分離を抑止することができる。
【0019】
また、本発明によるスライダーの他の態様は、前記付勢部材が、圧縮コイルバネ、圧縮皿バネ、高反発性ゴムのいずれか一種により形成されていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、付勢部材が圧縮コイルバネや圧縮皿バネ等によって形成されていることにより、第一分割スライダーと第二分割スライダーを、上下の沓や受け台と沓に対して効果的に付勢することができる。
【0021】
また、本発明による滑り免震装置の一態様は、
上部構造体と下部構造体のそれぞれに固定される、上沓及び下沓と、
前記上沓と前記下沓の間において摺動する前記スライダーと、を有し、
前記付勢部材により、前記第一分割スライダーと前記第二分割スライダーの一方が前記上部構造体に付勢され、他方が前記下部構造体に付勢されるようになっていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、上沓及び下沓の間でスライダーが摺動する両面滑り免震装置において、第一分割スライダーと第二分割スライダーの一方が付勢部材により上沓に付勢され、他方が付勢部材により下沓に付勢されることから、地震時に上揚力が作用した際のスライダーの空走と、滑り免震装置の構成部材の分離を、可及的にシンプルな構成により解消することのできる両面滑り免震装置となる。尚、本態様の滑り免震装置は、上沓を上部構造体にボルト接合し、下沓を下部構造体にボルト接合することにより、上下の構造体に安定的に固定された両面滑り免震支承が形成される。
【0023】
また、本発明による滑り免震装置の他の態様は、
上部構造体と下部構造体のいずれか一方に固定される沓、及び、他方に固定される受け台と、
前記沓と前記受け台の間において摺動する請求項1乃至6のいずれか一項に記載のスライダーと、を有し、
前記付勢部材により、前記第一分割スライダーと前記第二分割スライダーの一方が前記上部構造体に付勢され、他方が前記下部構造体に付勢されるようになっていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、沓と受け台の間でスライダーが摺動する片面滑り免震装置において、第一分割スライダーと第二分割スライダーの一方が付勢部材により沓と受け台の一方に付勢され、他方が付勢部材により沓と受け台の他方に付勢されることから、地震時に上揚力が作用した際のスライダーの空走と、滑り免震装置の構成部材の分離を、可及的にシンプルな構成により解消することのできる片面滑り免震装置となる。尚、本態様の滑り免震装置は、沓を上部構造体と下部構造体の一方にボルト接合し、受け台を上部構造体と下部構造体の他方にボルト接合することにより、上下の構造体に安定的に固定された片面滑り免震支承が形成される。
【発明の効果】
【0025】
以上の説明から理解できるように、本発明のスライダーと滑り免震装置によれば、地震時に上揚力が作用した際のスライダーの空走と、滑り免震装置の構成部材の分離を、可及的にシンプルな構成により解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1の実施形態に係るスライダーの一例の分解斜視図である。
図2】(a)、(b)はそれぞれ、図1のIIa矢視図とIIb矢視図である。
図3】(a)は、スライダーに圧縮力が作用している状態を示す図であり、(b)は、スライダーに圧縮力と水平力が作用している状態を示す図であり、(c)は、スライダーに上揚力が作用している状態を示す図である。
図4】実施形態に係る滑り免震装置の一例に圧縮力が作用している状態を示す図である。
図5】実施形態に係る滑り免震装置の一例に上揚力が作用している状態を示す図である。
図6】(a)は、実施形態に係る滑り免震装置の一例に圧縮力と水平力が作用している状態を示す図であり、(b)は、図6(a)のb部拡大図である。
図7】第2の実施形態に係るスライダーの一例を示す図であって、(a)は、スライダーに圧縮力が作用している状態を示す図であり、(b)は、スライダーに上揚力が作用している状態を示す図である。
図8】第3の実施形態に係るスライダーの一例を示す図であって、(a)は、スライダーに圧縮力が作用している状態を示す図であり、(b)は、図8(a)のb-b矢視図であり、(c)は、スライダーに上揚力が作用している状態を示す図である。
図9】第4の実施形態に係るスライダーの一例を示す図であって、(a)は、スライダーに圧縮力が作用している状態を示す図であり、(b)は、図9(a)のb-b矢視図であり、(c)は、スライダーに上揚力が作用している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、各実施形態に係るスライダーと滑り免震装置の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0028】
[第1の実施形態に係るスライダー]
はじめに、図1乃至図3を参照して、第1の実施形態に係るスライダーの一例について説明する。ここで、図1は、第1の実施形態に係るスライダーの一例の分解斜視図であり、図2(a)と図2(b)はそれぞれ、図1のIIa矢視図とIIb矢視図である。また、図3(a)は、スライダーに圧縮力が作用している状態を示す図であり、図3(b)は、スライダーに圧縮力と水平力が作用している状態を示す図であり、図3(c)は、スライダーに上揚力が作用している状態を示す図である。
【0029】
図示するスライダー40は、滑り免震装置を構成するスライダーであり、せん断キー14を備える第一分割スライダー10と、せん断キー14が収容されるキー溝24を備える第二分割スライダー20と、第一分割スライダー10と第二分割スライダー20の間に配設されて双方の沓を付勢する付勢部材30とを有する。
【0030】
第一分割スライダー10は、曲率を有する第一凸球面12を下方に備え、曲率を有する第二凸球面13を上方に備える分割スライダー本体11を有し、第二凸球面13の中心には上方に突出するせん断キー14が設けられている。第一凸球面12の曲率は、滑り免震装置を構成する下沓の備える摺動面の曲率と同一である。
【0031】
せん断キー14は切頭円錐体であり、テーパー側面15と先端面16を有する。尚、せん断キー14はその他、切頭角錐体等であってもよい。
【0032】
付勢部材30は圧縮コイルバネにより形成され、付勢部材30の直径の長さt2は、せん断キー14の有する平面視円形の先端面16の直径の長さt1以下に設定されている。付勢部材30の下端は、せん断キー14の先端面16に載置されるのみであってもよいが、接着固定もしくは係合固定されるのが好ましい。尚、付勢部材30には、圧縮コイルバネ以外にも、圧縮皿バネや高反発性ゴム等が適用できる。
【0033】
第二分割スライダー20は、曲率を有する第一凹球面23を下方に備え、曲率を有する第三凸球面22を上方に備える分割スライダー本体21を有し、第一凹球面23の中心には上方に陥没する円柱溝であるキー溝24が設けられている。第三凸球面22の曲率は、滑り免震装置を構成する上沓の備える摺動面の曲率と同一であり、第一凹球面23の曲率は、第一分割スライダー10の第二凸球面13の曲率と同一である。
【0034】
例えば、せん断キー14の先端面16に付勢部材30の下端が固定された状態で、せん断キー14と付勢部材30がキー溝24に収容されることにより、スライダー40が形成される。
【0035】
ここで、分割スライダー本体11,21はいずれも、溶接鋼材用圧延鋼材(SM490A、B、C、もしくはSN490B、C、もしくはS45C)、あるいはステンレス材(SUS材)や鋳鋼材、鋳鉄等から形成され、面圧60N/mm(60MPa)程度の耐荷強度を有している。
【0036】
スライダー40が上沓50及び下沓60の間に配設されて滑り免震装置70(図4参照)を構成し、この滑り免震装置70が上部構造体と下部構造体(いずれも図示せず)の間に取り付けられることにより滑り免震支承が形成される。ここで、下部構造体としては、ビルやマンション等の基礎や橋脚、橋台等が挙げられ、上部構造体としては、ビルやマンション等の建物や橋梁の橋桁等が挙げられる。この滑り免震支承において、スライダー40には、上部構造体の荷重と上沓50の荷重が図3(a)に示す圧縮力P1として作用する。また、上部構造体と下部構造体に地震時(や強風時)の水平力が作用した際に、スライダー40には、図3(b)に示すように例えば水平力H1が作用する。また、上部構造体と下部構造体に地震時の上揚力が作用した際に、スライダー40には、図3(c)に示すように上揚力P2が作用する。尚、図3(b)では、圧縮力P1と水平力H1が同時に作用している状態を示しているが、例えば上揚力P2と水平力H1が同時に作用する場合もある。
【0037】
図3(a)に示すように、スライダー40に圧縮力P1が作用している場合には、付勢部材30はキー溝24の天端面24aとせん断キー14の先端面16により上下から押圧されてX1方向に縮み、第一分割スライダー10の第二凸球面13と第二分割スライダー20の第一凹球面23が面接触した状態となる。図3(a)に示すように、付勢部材30が圧縮された状態のスライダー40は、その上下面が凸球面である、略円柱状を呈している。
【0038】
一方、図3(b)に示すように、スライダー40にさらに左方向の水平力H1が作用している場合には、せん断キー14を中心に第二分割スライダー20が反時計回りのX2方向へ回動する。この際、第一分割スライダー10の左側領域における第二凸球面13に対して、第二分割スライダー20の左側領域における第一凹球面23が滑りながら第二分割スライダー20がスムーズに回動する。尚、作用する水平力が右方向の場合は、図示例と逆方向である時計回りに第二分割スライダー20が回動する。
【0039】
図3(b)に示す第二分割スライダー20の回動に当たり、キー溝24に遊嵌されるせん断キー14が切頭円錐体であることにより、第一分割スライダー10の有するせん断キー14を中心とした第二分割スライダー20のスムーズな回動が許容される。このように、上下の沓の変位に応じて第一分割スライダー10と第二分割スライダー20が相対的にスムーズに回動することにより、上下の沓の変位に追随することができる。
【0040】
さらに、せん断キー14の先端面16の直径の長さt1に対して、付勢部材30の直径の長さt2が同程度かそれよりも小さいことにより、付勢部材30が第二分割スライダー20の回動の妨げになることもない。
【0041】
図3(c)に示すように、スライダー40に上揚力P2が作用している場合には、例えば付勢部材30が圧縮されていない自然長(もしくは若干圧縮した長さ)へX3方向に伸び、第一分割スライダー10に対して第二分割スライダー20が上方へ浮き上がる。この際、付勢部材30の上端は第二分割スライダー20のキー溝24の天端面24aに当接していることから、上揚力P2が作用した場合であっても、第一分割スライダー10と第二分割スライダー20は付勢部材30を介して上下方向に繋がっており、双方の分割スライダーの上下方向の分離が抑止される。
【0042】
さらに、図3(c)に示すように、上揚力P2が作用した際に、せん断キー14の先端の一部はキー溝24内に留まっているように構成されており、従って、上揚力P2と水平力H1が同時に作用した場合であっても、第一分割スライダー10と第二分割スライダー20はせん断キー14とキー溝24の係合により、双方の分割スライダーが水平方向に分離することも抑止される。
【0043】
尚、図示を省略するが、第一分割スライダー10の第一凸球面12と、第二分割スライダー20の第三凸球面22にはいずれも、摩擦材が取り付けられる。摩擦材は、例えば、少なくともPTFEを素材とする摩擦材である。摩擦材は二重織物により形成され、二重織物は、PTFE繊維と、PTFE繊維よりも引張強度の高い繊維(高強度繊維)とにより形成される。ここで、「PTFE繊維よりも引張強度の高い繊維」としては、ナイロン6・6、ナイロン6、ナイロン4・6などのポリアミドやポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルやパラアラミドなどの繊維を挙げることができる。また、メタアラミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ガラス、カーボン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、LCP、ポリイミド、PEEKなどの繊維を挙げることができる。また、さらに、熱融着繊維や綿、ウールなどの繊維を適用してもよい。その中でも、耐薬品性、耐加水分解性に優れ、引張強度の極めて高いPPS繊維が望ましい。ここで、少なくともPTFEを素材とする摩擦材としては、二重織物以外のPTFE繊維を含む織物でもよく、また、PTFEのみを素材とする摩擦材、PTFEと他の樹脂の複合素材からなる摩擦材、PTFEを素材とする摩擦材と他の樹脂を素材とする摩擦材との積層構造の摩擦材などであってもよい。
【0044】
[実施形態に係る滑り免震装置]
次に、図4乃至図6を参照して、実施形態に係る滑り免震装置の一例について説明する。ここで、図4図5はそれぞれ、実施形態に係る滑り免震装置の一例に圧縮力と上揚力が作用している状態を示す図である。また、図6(a)は、実施形態に係る滑り免震装置の一例に圧縮力と水平力が作用している状態を示す図であり、図6(b)は、図6(a)のb部拡大図である。
【0045】
図示する滑り免震装置70は、上沓50と、下沓60と、これら上下の沓の間に摺動自在に配設されているスライダー40とを有する、両面滑り免震装置である。尚、図示を省略するが、滑り免震装置はその他、受け台の球座にスライダー40が回動自在に収容され、スライダー40の例えば第二分割スライダー20の第三凸球面22が沓の備える摺動面(凹球面)に摺動自在に配設されている、片面滑り免震装置であってもよい。
【0046】
上沓50は、不図示の上部構造体にボルト接合される平坦な上面52を備え、下方にスライダー40が摺動する摺動面53(第三凹球面)を備える沓本体51と、沓本体51の下面の周囲に取り付けられているストッパーリング54とを有する。上面52の平面視形状は例えば正方形であり、摺動面53の平面視形状は円形である。
【0047】
下沓60は、不図示の下部構造体にボルト接合される平坦な下面62を備え、上方にスライダー40が摺動する摺動面63(第四凹球面)を備える沓本体61と、沓本体61の上面の周囲に取り付けられているストッパーリング64とを有する。下面62の平面視形状は例えば上面52と同様に正方形であり、摺動面63の平面視形状は円形である。
【0048】
上沓50と下沓60はいずれも、分割スライダー本体11,21と同様に、溶接鋼材用圧延鋼材(SM490A、B、C、もしくはSN490B、C、もしくはS45C)、あるいはステンレス材(SUS材)や鋳鋼材、鋳鉄等から形成されている。上沓50の摺動面53と下沓60の摺動面63には、ステンレス製の滑り板(図示せず)が固定されている。
【0049】
図4において、不図示の上部構造体(鉄筋コンクリート製、鉄骨製、鉄骨鉄筋コンクリート製等の柱や梁、床スラブ等を含む構造躯体、橋梁の橋桁等)の下面にあるトッププレートに対して、上沓50の上面52がボルト接合される。一方、不図示の下部構造体(鉄筋コンクリート製等の基礎、橋脚や橋台等)に対して下沓60の下面62ボルト接合されることにより、上部構造体と下部構造体の間に滑り免震装置70が介在する、滑り免震支承が形成される。図4に示すように、例えば常時においては、滑り免震装置70には、上部構造体の重量に起因する圧縮力P1が作用する。
【0050】
一方、図5に示すように、地震時(例えば大地震時)において、滑り免震装置70には、上揚力P2が作用し得る。この上揚力P2により、上沓50が上方に変位し得るが、スライダー40を構成する第二分割スライダー20が付勢部材30にて上方に付勢されていることから、付勢部材30の伸長に応じて第二分割スライダー20も上方に変位し、第二分割スライダー20と上沓50の当接状態(もしくは押圧状態)が維持される。この結果、滑り免震装置70に地震時の上揚力P2が作用した場合において、上沓50と下沓60は上下に伸びるスライダー40に当接することとなり、スライダーが上下の沓の少なくとも一方と上下方向に分離することが抑止される。
【0051】
一方、図6(a)と図6(b)に示すように、地震時(例えば大地震時)において、滑り免震装置70には、圧縮力P1と水平力H2が同時に作用し得る。この水平力H2により、例えば、下部構造体に対して上部構造体が水平方向に相対変位し、上部構造体に固定されている上沓50も同様に水平変位する。この上沓50の水平変位に応じて、スライダー40は下沓60の摺動面63上を、水平力H2の作用方向であるY1方向に摺動する。また、下沓60の摺動面63上における摺動の際に、上沓50はスライダー40の第三凸球面22上を摺動する。この上沓50の摺動の際に、スライダー40においては、第一分割スライダー10に対して第二分割スライダー20がせん断キー14を中心にX2方向に回動することにより、スライダー40は上沓50と下沓60の相対変位に追従しながら回動と摺動を行う。図6(b)に明りょうに示すように、キー溝24の内部にせん断キー14が収容されていることにより、第一分割スライダー10と第二分割スライダー20の水平方向への分離が抑止されながら、スライダー40は回動しながら上沓50と下沓60の間で摺動する。
【0052】
スライダー40を備える滑り免震装置70によれば、スライダー40が第一分割スライダー10と第二分割スライダー20により構成され、第二分割スライダー20の備えるキー溝24に第一分割スライダー10の備えるせん断キー14が収容されるとともに、第一分割スライダー10と第二分割スライダー20の間に付勢部材30が配設されていることから、滑り免震装置70に対して地震時の上揚力P2と水平力H1が作用した際に、第一分割スライダー10と第二分割スライダー20が付勢部材30から付勢力を受けることにより、双方の分割スライダー10,20と上沓50及び下沓60が分離することが解消される。そのため、スライダー40と上沓50及び下沓60の少なくとも一方が分離することにより、スライダー40が空走して上沓50及び下沓60の有するストッパーリング54,64を乗り越えて脱落するといった危険性はない。また、上下に分割された新規の構成を有するスライダー40のみによって、上沓50及び下沓60とスライダー40との分離(上下方向の分離と水平方向の分離)を解消できることから、シンプルな構成でスライダー40と上沓50及び下沓60との分離を解消することができる。
【0053】
[第2の実施形態に係るスライダー]
次に、図7を参照して、第2の実施形態に係るスライダーの一例について説明する。ここで、図7は、第2の実施形態に係るスライダーの一例を示す図であって、図7(a)は、スライダーに圧縮力が作用している状態を示す図であり、図7(b)は、スライダーに上揚力が作用している状態を示す図である。
【0054】
図7に示すスライダー40Aは、第一分割スライダー10Aと、第二分割スライダー20Aと、付勢部材30とを有する。第一分割スライダー10Aは、上方に第一平坦面13Aを有する分割スライダー本体11Aを備え、第一平坦面13Aの中心に円柱体であるせん断キー14Aを備えている。
【0055】
一方、第二分割スライダー20Aは、下方に第二平坦面23Aを有する分割スライダー本体21Aを備え、第二平坦面23Aの中心に円柱溝であるキー溝24を備えている。図7(a)に示すように、キー溝24には例えば遊びの無い状態でせん断キー14Aが挿通されることから、スライダー40のようにせん断キーを中心とした第二分割スライダーの回動機能は無い。その一方で、キー溝24に対してせん断キー14Aが上下に安定的に昇降することから、分割スライダー10,20のガタの無い相対的な上下変位が保証される。
【0056】
[第3の実施形態に係るスライダー]
次に、図8を参照して、第3の実施形態に係るスライダーの一例について説明する。ここで、図8は、第3の実施形態に係るスライダーの一例を示す図であって、図8(a)は、スライダーに圧縮力が作用している状態を示す図であり、図8(b)は、図8(a)のb-b矢視図であり、図8(c)は、スライダーに上揚力が作用している状態を示す図である。
【0057】
図8に示すスライダー40Bは、第一分割スライダー10Bと、第二分割スライダー20Aと、複数(図示例は四つ)の付勢部材30とを有する。第二分割スライダー20Aは、スライダー40Aの有する第二分割スライダー20Aと同様の構成を有する。
【0058】
一方、第一分割スライダー10Bは、上方にすり鉢状の第一テーパー面13Bを有する分割スライダー本体11Bを備え、第一テーパー面13Bの中心にあるせん断キー14Aの周囲に、周方向に90度の間隔を置いて設けられている四つの収容溝17を備えている。また、円柱状のせん断キー14Aの周囲には、ゴムシート等により形成される弾性材18が設けられている。
【0059】
各収容溝17に付勢部材30が収容され、図8(a)に示すように、スライダー40Bに圧縮力P1が作用している場合には、各付勢部材30が第二分割スライダー20Aから押圧されてX1方向に縮む。
【0060】
例えば、図8(a)の状態でさらに地震時の水平力(例えば左方向への水平力)が作用した場合、せん断キー14Aを中心として第二分割スライダー20Aは弾性材18の潰れ分だけ反時計回りに回動することができ、図示する左側の付勢部材30は縮んだまま、右側の付勢部材30が伸長する。
【0061】
一方、図8(c)に示すように、上揚力P2が作用して第二分割スライダー20Aが上方に変位した際に、せん断キー14Aの上方の一部がキー溝24に収容されていることにより、第一分割スライダー10Bと第二分割スライダー20Aの上下方向及び水平方向への分離が抑止される。
【0062】
スライダー40Bによれば、せん断キー14Aの周囲にある複数の付勢部材30によって各分割スライダー10B,20Aが繋がっていることから、例えば第一分割スライダー10Bにより第二分割スライダー20Aを安定的に付勢することができる。
【0063】
尚、図示例の他にも、例えば、第二分割スライダーのキー溝24の周囲に複数の収容溝が設けられ、各収容溝に付勢部材が収容され、各付勢部材が第一分割スライダーの第一テーパー面を押圧する形態であってもよい。さらに、せん断キー14Aの周囲にある収容溝17とそこに収容される付勢部材30は90度間隔の四つ(四組)以外にも、120度間隔の三組、72度間隔の五組、60度間隔の六組等、多様な形態がある。
【0064】
また、図示を省略するが、第一分割スライダーが上方に第一平坦面(図7参照)を有し、第二分割スライダーの下方の第二平坦面とともに面接触する形態において、双方の界面に相互に対応する収容溝が設けられ、各収容溝に付勢部材が収容される形態であってもよい。この形態では、せん断キーの周囲とキー溝の周囲の相互に対応する位置(例えば90度間隔)に収容溝が設けられ、相互に位置合わせされた収容溝に対して付勢部材が収容されることになる。
【0065】
[第4の実施形態に係るスライダー]
次に、図9を参照して、第4の実施形態に係るスライダーの一例について説明する。ここで、図9は、第4の実施形態に係るスライダーの一例を示す図であって、図9(a)は、スライダーに圧縮力が作用している状態を示す図であり、図9(b)は、図9(a)のb-b矢視図であり、図9(c)は、スライダーに上揚力が作用している状態を示す図である。
【0066】
図9に示すスライダー40Cは、第一分割スライダー10Cと、第二分割スライダー20Bと、複数(図示例は四つ)の付勢部材30とを有する。第一分割スライダー10Cは、上方にすり鉢状の第一テーパー面13Bを有する分割スライダー本体11Cを備え、第一テーパー面13Bの中心には半球状の第二凹球面19が設けられ、第二凹球面19に球体であるせん断キー14Bが回転自在に収容されている。また、せん断キー14Bが収容される第二凹球面19の周囲には、周方向に90度の間隔を置いて設けられている四つの収容溝17を備えている。
【0067】
一方、第二分割スライダー20Bは、下方に第二平坦面23Aを有する分割スライダー本体21Bを備え、第二平坦面23Aの中心には、球状のせん断キー14Bが嵌まり込む半球状のキー溝24Aを備えている。
【0068】
例えば、図9(a)の状態でさらに地震時の水平力(例えば左方向への水平力)が作用した場合、球状のせん断キー14Bを中心として第二分割スライダー20Bは反時計回りに回動することができ、図示する左側の付勢部材30は縮んだまま、右側の付勢部材30が伸長する。
【0069】
一方、図9(c)に示すように、上揚力P2が作用して第二分割スライダー20Bが上方に変位した際に、せん断キー14Bの上方の一部がキー溝24Aに収容されていることにより、第一分割スライダー10Cと第二分割スライダー20Bの上下方向及び水平方向への分離が抑止される。
【0070】
スライダー40Cによれば、第二凹球面19内で回転する球状のせん断キー14Bを中心に第二分割スライダー20Bが回動することから、より一層スムーズな第二分割スライダー20Bの回動が保証される。また、スライダー40Bと同様にせん断キー14Bの周囲にある複数の付勢部材30により各分割スライダー10C,20Bが繋がっていることから、例えば第一分割スライダー10Cにより第二分割スライダー20Bを安定的に付勢することができる。
【0071】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0072】
10,10A,10B,10C:第一分割スライダー(分割スライダー)
11,11A,11B,11C:分割スライダー本体
12:第一凸球面
13:第二凸球面
13A:第一平坦面
13B:第一テーパー面
14,14A,14B:せん断キー
15:テーパー側面
16:先端面
17:収容溝
18:弾性材
19:第二凹球面
20,20A,20B:第二分割スライダー(分割スライダー)
21,21A:分割スライダー本体
22:第三凸球面
23:第一凹球面
23A:第二平坦面
24,24A:キー溝
30:付勢部材(圧縮コイルバネ)
40,40A,40B,40C:スライダー
50:上沓
51:沓本体
52:上面
53:第三凹球面
54:ストッパーリング
60:下沓
61:沓本体
62:下面
63:第四凹球面
70:滑り免震装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9