(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048747
(43)【公開日】2022-03-28
(54)【発明の名称】トルクコンバータ
(51)【国際特許分類】
F16H 41/24 20060101AFI20220318BHJP
【FI】
F16H41/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154745
(22)【出願日】2020-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小澤 隆児
(57)【要約】 (修正有)
【課題】トルクコンバータの外殻の変形を抑制する。
【解決手段】カバー2及びインペラシェル31から構成されるトルクコンバータ100の外殻は、膨出部23と、厚肉部24とを備えている。膨出部23はカバー2に設けられ、軸方向に膨らむ。厚肉部24は、膨出部23の頂点部を構成し、周方向に延びる。厚肉部24は、厚肉部24と隣り合う部分よりも厚い。厚肉部24よりも径方向外側に配置される外周部は、厚肉部24よりも径方向内側に配置される内周部よりも厚い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクコンバータの外殻であって、
軸方向に膨らむ膨出部と、
前記膨出部の頂点部を構成し、周方向に延びる厚肉部と、
を備え、
前記厚肉部は、前記厚肉部と隣り合う部分よりも厚い、
トルクコンバータの外殻。
【請求項2】
第1シェル部材と、
前記第1シェル部材の外周端部に固定され、前記カバーと一体的に回転するように構成される第2シェル部材と、
を備え、
前記第1シェル部材及び前記第2シェル部材の少なくとも一方は、前記膨出部及び前記厚肉部を有する、
請求項1に記載のトルクコンバータの外殻。
【請求項3】
前記第1シェル部材及び前記第2シェル部材の少なくとも一方は、
前記厚肉部よりも径方向内側に配置される内周部と、
前記厚肉部よりも径方向外側に配置される外周部と、
を有する、
請求項2に記載のトルクコンバータの外殻。
【請求項4】
前記外周部は、前記内周部よりも厚い、
請求項3に記載のトルクコンバータの外殻。
【請求項5】
前記外周部は、前記厚肉部から離れるにつれて薄くなる、
請求項3又は4に記載のトルクコンバータの外殻。
【請求項6】
前記内周部は、前記厚肉部から離れるにつれて薄くなる、
請求項3から5のいずれかに記載のトルクコンバータの外殻。
【請求項7】
前記厚肉部は、当該外殻の外周端部まで延びる、
請求項1から6のいずれかに記載のトルクコンバータの外殻。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクコンバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トルクコンバータは、カバー、インペラ、及びタービンを有している(特許文献1)。トルクコンバータの外殻は、一般的に、カバーとインペラシェルとによって構成されている。カバーは、内周側トーションスプリングを収容する部分において、軸方向に膨らんでいる。また、インペラシェルは、インペラブレードが取り付けられる部分において軸方向に膨らんでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、カバー又はインペラシェルの変形を抑制するために、カバー又はシェルの板厚を厚くしている。しかし、カバー又はシェルの板厚を厚くすることでトルクコンバータの外殻が重くなるという問題が生じる。
【0005】
本発明の課題は、トルクコンバータの外殻の変形を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、トルクコンバータの外殻において、軸方向に膨出する部分における剛性を向上させることによってトルクコンバータの外殻の変形を効果的に抑制できることを見出した。そこで、本発明に係るトルクコンバータの外殻は、以下のような構成とすることにより、変形を効果的に抑制する。
【0007】
本発明のある側面に係るトルクコンバータの外殻は、膨出部と、厚肉部とを備えている。膨出部は、軸方向に膨らむ。厚肉部は、膨出部の頂点部を構成し、周方向に延びる。厚肉部は、厚肉部と隣り合う部分よりも厚い。
【0008】
この構成によれば、トルクコンバータの外殻の膨出部の頂点部を厚肉部とすることによって膨出部の剛性が向上する。この結果、トルクコンバータの外殻全体を厚くすることなく、効果的にトルクコンバータの外殻の変形を抑制することができる。
【0009】
好ましくは、トルクコンバータの外殻は、第1シェル部材と、第2シェル部材とを備える。第2シェル部材は、第1シェル部材の外周端部に固定され、カバーと一体的に回転するように構成される。第1シェル部材及び第2シェル部材の少なくとも一方は、膨出部及び厚肉部を有する。
【0010】
好ましくは、第1シェル部材及び第2シェル部材の少なくとも一方は、内周部及び外周部を有する。内周部は、厚肉部よりも径方向内側に配置される。外周部は、厚肉部よりも径方向外側に配置される。
【0011】
好ましくは、外周部は、内周部よりも厚い。
【0012】
好ましくは、外周部は、厚肉部から離れるにつれて薄くなる。
【0013】
好ましくは、内周部は、厚肉部から離れるにつれて薄くなる。
【0014】
好ましくは、厚肉部は、当該外殻の外周端部まで延びる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、トルクコンバータの外殻の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施形態に係るトルクコンバータについて図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、軸方向とは、トルクコンバータの回転軸が延びる方向である。軸方向の第1側とは
図1の左側を意味し、軸方向の第2側とは
図1の右側を意味する。また、周方向とは、回転軸を中心とした円の周方向であり、径方向とは、回転軸を中心とした円の径方向である。
【0018】
[トルクコンバータ]
図1に示すように、トルクコンバータ100は、カバー2、インペラ3、タービン4、ステータ5、出力ハブ6、及びダンパ装置10を備えている。なお、図示していないが、
図1において、エンジンがトルクコンバータ100の左側に配置されており、トランスミッションがトルクコンバータ100の右側に配置されている。トルクコンバータ100内においてオイルが循環する。
【0019】
[カバー]
カバー2(第1シェル部材の一例)は、トルクコンバータの外殻の一部を構成する部材である。カバー2は、エンジンからの動力が入力される。詳細には、カバー2は、円板部21と、筒状部22とを有している。筒状部22は、円板部21の外周端部からトランスミッション側へと延びている。
【0020】
カバー2は、第1膨出部23(膨出部の一例)を有している。第1膨出部23は、円板部21に形成されている。第1膨出部23は、カバー2の外周端及び中心から間隔をあけて配置されている。
【0021】
第1膨出部23は、軸方向に膨らんでいる。詳細には、第1膨出部23は、軸方向の第1側に膨らんでいる。第1膨出部23の頂点部は、カバー2において、最も軸方向の第1側に配置されている。
【0022】
カバー2は、第1厚肉部24を有している。第1厚肉部24は、第1膨出部23の頂点部を構成している。すなわち、第1厚肉部24は、第1膨出部23の一部である。第1厚肉部24は、環状であって、周方向に延びている。
【0023】
図2に示すように、第1厚肉部24は所定の幅w1を有している。なお、特に限定されるものではないが、例えば、カバー2の外径r1に対する、第1厚肉部24の幅w1の割合(w1/r1)は、0.1~0.4程度とすることができる。
【0024】
第1厚肉部24は、第1厚肉部24と隣り合う部分よりも厚い。なお、第1厚肉部24は、カバー2の中で最も厚い。第1厚肉部24は、例えば、第1膨出部23の頂点部を増肉することによって形成することができる。第1厚肉部24と隣り合う部分の板厚t3に対する、第1厚肉部24の板厚t1の割合(t1/t3)は、例えば、1.1以上とすることができる。また、上記割合(t1/t3)は、2.0以下とすることができる。
【0025】
カバー2は、内周部26と、外周部27とを有している。内周部26は、カバー2のうち、第1厚肉部24よりも径方向内側に配置される部分である。外周部27は、カバー2のうち、第1厚肉部24よりも径方向外側に配置されている部分である。
【0026】
本実施形態では、カバー2の内周部26と外周部27とは略同じ板厚となっているが、このカバー2の外周部27の板厚を、内周部26の板厚よりも厚くすることができる。
【0027】
本実施形態では、カバー2の内周部26の板厚は実質的に一定であるが、内周部26の板厚は第1厚肉部24から離れるにつれて薄くなっていてもよい。また、本実施形態では、カバー2の外周部27の板厚は実質的に一定であるが、外周部27の板厚は、第1厚肉部24から離れるにつれて薄くなっていてもよい。
【0028】
[インペラ]
図1に示すように、インペラ3は、インペラシェル31(第2シェル部材の一例)と、複数のインペラブレード32とを有する。インペラブレード32は、インペラシェル31に取り付けられている。
【0029】
インペラシェル31は、カバー2に固定されている。詳細には、インペラシェル31は、カバー2の外周端部に固定されている。例えば、インペラシェル31は、カバー2に溶接されている。インペラシェル31は、カバー2と一体的に回転するように構成されている。インペラシェル31は、カバー2とともに、トルクコンバータ100の外殻を構成する。なお、インペラシェル31の内周端部は、インペラハブ33に溶接などによって固定されている。
【0030】
インペラシェル31は、第2膨出部34(膨出部の一例)を有している。第2膨出部34は、インペラシェル31の外周端及び中心から間隔をあけて配置されている。この第2膨出部34の内側面に、インペラブレード32が取り付けられている。
【0031】
第2膨出部34は、軸方向に膨らんでいる。詳細には、第2膨出部34は、軸方向の第2側に膨らんでいる。すなわち、第2膨出部34は、第1膨出部23と反対側に膨らんでいる。第2膨出部34の頂点部は、インペラシェル31において、最も軸方向の第2側に配置されている。
【0032】
インペラシェル31は、第2厚肉部35を有している。第2厚肉部35は、第2膨出部34の頂点部を構成している。すなわち、第2厚肉部35は、第2膨出部34の一部である。第2厚肉部35は、環状であって、周方向に延びている。第2厚肉部35は所定の幅w2を有している。
【0033】
図2に示すように、第2厚肉部35は所定の幅w2を有している。なお、特に限定されるものではないが、例えば、インペラシェル31の外径r2に対する、第2厚肉部35の幅w2の割合(w2/r2)は、0.1~0.4程度とすることができる。
【0034】
第2厚肉部35は、第2厚肉部35と隣り合う部分よりも厚い。なお、第2厚肉部35は、インペラシェル31の中で最も厚い。第2厚肉部35は、例えば、第2膨出部34の頂点部を増肉することによって形成することができる。第2厚肉部35と隣り合う部分の板厚t4に対する、第2厚肉部35の板厚t2の割合(t2/t4)は、例えば、1.1以上とすることができる。また、上記割合(t2/t4)は、2.0以下とすることができる。
【0035】
インペラシェル31は、内周部37及び外周部38を有している。内周部37は、インペラシェル31のうち、第2厚肉部35よりも径方向内側に配置される部分である。外周部38は、インペラシェル31のうち、第2厚肉部35よりも径方向外側に配置されている部分である。
【0036】
本実施形態では、インペラシェル31の内周部37と外周部38とは略同じ板厚となっているが、この外周部38の板厚を、内周部37の板厚よりも厚くすることができる。
【0037】
本実施形態では、インペラシェル31の内周部37の板厚は実質的に一定であるが、内周部37の板厚は第2厚肉部35から離れるにつれて薄くなっていてもよい。また、本実施形態では、インペラシェル31の外周部38の板厚は実質的に一定であるが、外周部38の板厚は、第2厚肉部35から離れるにつれて薄くなっていてもよい。
【0038】
[タービン]
図1に示すように、タービン4は、タービンシェル41、及び複数のタービンブレード42を有している。タービン4は、インペラ3に対向して配置されている。タービンブレード42は、タービンシェル41に取り付けられている。
【0039】
[ステータ]
ステータ5は、インペラ3とタービン4との間に配置され、タービン4からインペラ3へと戻る作動油を整流するための機構である。ステータ5は、ステータキャリア51と、ステータブレード52とを有している。ステータキャリア51は、ワンウエイクラッチ101を介して固定シャフトに支持されるように構成されている。ステータブレード52は、ステータキャリア51の外周面に取り付けられている。
【0040】
[出力ハブ]
出力ハブ6は、タービン4と一体的に回転する。詳細には、タービン4は、複数のリベット(図示省略)によって、出力ハブ6に固定されている。出力ハブ6は、孔部61を有している。この出力ハブ6の孔部61に、トランスミッションの入力シャフト(図示省略)が嵌合する。詳細には、入力シャフトは出力ハブ6の孔部61にスプライン嵌合する。
【0041】
[ダンパ装置]
ダンパ装置10は、エンジンからトランスミッションに動力を伝達するための動力伝達装置の一種である。ダンパ装置10は、回転可能に配置されている。ダンパ装置10は、カバー2とタービン4との間に配置されている。
【0042】
図3に示すように、ダンパ装置10は、ピストンプレート11、ドライブプレート12、複数の外周側トーションスプリング13、サポートプレート14、一対の中間プレート15、複数の内周側トーションスプリング16、及び出力プレート17を有している。
【0043】
ピストンプレート11は、出力ハブ6に相対回転可能且つ軸方向移動可能に支持されている。ピストンプレート11は、カバー2側に移動することによって、カバー2と摩擦係合して一体的に回転する。これによって、ダンパ装置10は、エンジンからの動力が入力される。
【0044】
ドライブプレート12は、ピストンプレート11に固定されており、ピストンプレート11と一体的に回転する。ドライブプレート12は、各外周側トーションスプリング13と係合するように構成されている。
【0045】
サポートプレート14は、ドライブプレート12に対して相対回転可能である。また、サポートプレート14は、各外周側トーションスプリング13に対して相対回転可能である。サポートプレート14は、外周側トーションスプリング13を支持するように構成されている。
【0046】
中間プレート15は、外周側トーションスプリング13と、各内周側トーションスプリング16とを直列に連結する。また、中間プレート15は、各内周側トーションスプリング16を保持する機能も有している。中間プレート15は、ドライブプレート12及び出力プレート17に対して相対回転可能である。
【0047】
出力プレート17は、各内周側トーションスプリング16からの動力を出力する。出力プレート17は、出力ハブ6に固定されている。詳細には、出力プレート17の内周端部が、タービンシェル41とともにリベット(図示省略)によって出力ハブ6に固定されている。
【0048】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0049】
変形例1
上記実施形態では、第1厚肉部24は一つの部材によって構成されているが、第1厚肉部24の構成はこれに限定されない。例えば
図4に示すように、第1厚肉部24は、複数の部材によって構成されていてもよい。詳細には、カバー2は、カバー本体部20と、第1補強部25とを有している。この第1補強部25が第1膨出部23の頂点部に固定されることによって、第1厚肉部24が構成されている。第1補強部25は、例えば、カバー本体部20と同じ材質とすることができる。
【0050】
同様に、第2厚肉部35も、複数の部材によって構成することができる。すなわち、インペラシェル31は、インペラシェル本体30と、第2補強部36とを有している。そして、第2補強部36が第2膨出部34の頂点部に固定されることによって、第2厚肉部35が構成されている。第2補強部36は、例えば、インペラシェル本体30と同じ材質とすることができる。
【0051】
変形例2
上記実施形態において、トルクコンバータの外殻(カバー2及びインペラシェル31)は、第1厚肉部24及び第2厚肉部35を有しているが、トルクコンバータの外殻は、第1厚肉部24及び第2厚肉部35の少なくとも一方を有していればよい。すなわち、トルクコンバータの外殻は、第1厚肉部24及び第2厚肉部35のどちらか一方を有していなくてもよい。
【0052】
変形例3
上記実施形態では、トルクコンバータの外殻は、カバー2とインペラシェル31とによって構成されているが、トルクコンバータの外殻の構成はこれに限定されない。例えば、カバー2とタービンシェル41とによってトルクコンバータの外殻を構成してもよい。この場合、インペラ3とタービン4との配置が上記実施形態と逆になる。すなわち、タービンシェル41がカバー2の外周端部に固定される。
【0053】
変形例4
第1厚肉部24は、トルクコンバータの外殻の外周端部まで延びていてもよい。すなわち、第1厚肉部24は、カバー2の外周端部まで延びていてもよい。また、第2厚肉部35は、トルクコンバータの外殻の外周端部、すなわち、インペラシェル31の外周端部まで延びていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
100 トルクコンバータ
2 カバー
23 第1膨出部
24 第1厚肉部
26 内周部
27 外周部
31 インペラシェル
34 第2膨出部
35 第2厚肉部
37 内周部
38 外周部