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特開2022-48764太陽電池モジュールの取付構造及びその取付方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048764
(43)【公開日】2022-03-28
(54)【発明の名称】太陽電池モジュールの取付構造及びその取付方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/18 20180101AFI20220318BHJP
   H02S 20/23 20140101ALI20220318BHJP
【FI】
E04D13/18 ETD
H02S20/23 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154765
(22)【出願日】2020-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】513240504
【氏名又は名称】株式会社エコスタイル
(71)【出願人】
【識別番号】394014087
【氏名又は名称】近藤化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100060368
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 迪夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】東良 真男
(72)【発明者】
【氏名】畑田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】木下 公貴
(72)【発明者】
【氏名】多山 洋文
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108KK01
2E108KS05
2E108LL01
2E108MM05
2E108NN07
(57)【要約】
【課題】ハゼ式折板屋根において補強等することなく正確に太陽電池モジュールを取り付けることができ、作業性も大幅に向上される太陽電池モジュールの取付構造及びその取付方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明によれば、接着剤を保持するための溝部と接着テープを取り付けるための仮止め部とを有するパネル支持部と、パネル支持部の両端部付近から下方に延びた第1及び第2の脚部を有し、第1及び第2の脚部の先端部が隙間を設けて対向するように配置された基台部を備えており、そして基台部は、ハゼ式折板屋根のハゼ部のネックを挟むように配置された第1及び第2の脚部によりハゼ部に保持されると共に、第1及び第2の脚部の下面に塗布された接着剤によりハゼ式折板屋根に固着されており、太陽電池モジュールは、パネル支持部の溝部に塗布された接着剤により基台部に固着されている太陽電池モジュールの取付構造などが提供される。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハゼ式折板屋根と、前記ハゼ式折板屋根に取り付けられる基台部と、そして前記基台部に取り付けられる太陽電池モジュールとを備えた太陽電池モジュールの取付構造であって、
前記基台部は、上面に接着剤を保持するための溝部と、前記溝部に沿って接着テープを取り付けるための平坦な仮止め部とが設けられているパネル支持部と、前記パネル支持部の一の端部付近から下方に延びている第1の脚部と、前記パネル支持部の他の端部付近から下方に延びている第2の脚部とを有し、前記第2の脚部の先端部は前記第1の脚部の先端部との間に隙間を設けて対向するように配置されており、そして
前記基台部は、ハゼ部のネックを挟むように配置された前記第1の脚部および前記第2の脚部により前記ハゼ部に保持されると共に、前記第1の脚部の下面および前記第2の脚部の下面に塗布された接着剤によりハゼ式折板屋根に固着されており、
太陽電池モジュールは、前記パネル支持部の前記溝部に塗布された接着剤により前記基台部に固着されていることを特徴とする太陽電池モジュールの取付構造。
【請求項2】
太陽電池モジュールは、前記パネル支持部の前記仮止め部に取り付けられた接着テープにより前記基台部に接着されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュールの取付構造。
【請求項3】
前記溝部の深さは1~5mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池モジュールの取付構造。
【請求項4】
前記第1の脚部および前記第2の脚部は、前記第1の脚部の先端部と前記第2の脚部の先端部との間の隙間が拡がるように弾性変形することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュールの取付構造。
【請求項5】
前記第1の脚部および前記第2の脚部は、前記基台部の断面においてそれぞれに下向きの略L字型の形状を有していることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュールの取付構造。
【請求項6】
前記基台部はプラスチック材料からできていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の太陽電池モジュールの取付構造。
【請求項7】
太陽電池モジュールを、基台部を用いてハゼ式折板屋根に取り付けるための太陽電池モジュールの取付方法であって、
前記基台部は、上面に接着剤を保持するための溝部と、前記溝部に沿って接着テープを取り付けるための平坦な仮止め部とが設けられているパネル支持部と、前記パネル支持部の一の端部付近から下方に延びている第1の脚部と、前記パネル支持部の他の端部付近から下方に延びている第2の脚部とを有しており、前記第2の脚部の先端部は前記第1の脚部の先端部との間に隙間を設けて対向するように配置されており、そして
前記基台部をハゼ部の上から押し込むことにより、前記第1の脚部および前記第2の脚部がハゼ部のネックを挟むように配置すると共に、前記第1の脚部の下面および前記第2の脚部の下面に塗布した接着剤により、前記基台部をハゼ式折板屋根に固着させる工程と、
前記パネル支持部の前記溝部に塗布された接着剤により、太陽電池モジュールを前記基台部に固着させる工程と
を含んでいることを特徴とする太陽電池モジュールの取付方法。
【請求項8】
前記太陽電池モジュールを基台部に固着させる工程は、前記パネル支持部の前記仮止め部に取り付けた接着テープによる接着工程をさらに含んでいることを特徴とする請求項7に記載の太陽電池モジュールの取付方法。
【請求項9】
前記溝部の深さは1~5mmであることを特徴とする請求項7又は8に記載の太陽電池モジュールの取付方法。
【請求項10】
前記第1の脚部の下面および前記第2の脚部の下面に塗布された接着剤の厚みは1~4mmであることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の太陽電池モジュールの取付方法。
【請求項11】
前記第1の脚部および前記第2の脚部は、前記第1の脚部の先端部と前記第2の脚部の先端部との間の隙間が拡がるように弾性変形することを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載の太陽電池モジュールの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハゼ式折板屋根に太陽電池モジュールを取り付けるための太陽電池モジュールの取付構造及びその取付方法に関し、特にハゼ部のネックを両側から挟み込むように配置される脚部を備えた基台部を介して、接着により、太陽電池モジュールをハゼ式折板屋根の目的の位置に正確に取り付け可能にした太陽電池モジュールの取付構造及びその取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、地球環境に優しいエネルギー活用の一つとして、太陽光や風力などを利用した再生エネルギーの活用が盛んに行われている。この中でも太陽光発電は、太陽電池モジュールを用いて実際の電力供給に役立てようとすると、相当数の太陽電池モジュール(「ソーラーパネル」ともいう。)を屋根などに取り付ける必要があり、それに伴い、数多くの固定部材が必要となる。さらに、固定部材の取り付けには、ボルトなどの固着具が大量に使用されることになり、それに伴い太陽電池モジュールの取り付け作業も増大する。
【0003】
ところで、工場などの建屋の屋根は面積が大きく、工場の空きスペースの有効活用にもなることから、太陽電池モジュールを取り付ける環境として適している。しかし、一般的に工場などの建屋の屋根はその上に重量物を設置することが予定されていないため、補強等をしなければ、屋根の上に固定部材を用いて太陽電池モジュールを設置することができないという問題があった。特に近年では、太陽電池モジュール自体の軽量化は図られているものの、固定部材やボルトなどの固着具は所定の強度を必要とするため、金属製の重量物が使用されているという実情があった。
【0004】
また、工場などの建屋の屋根は、例えば特開2001-214578号公報(特許文献1)に記載されているように、折板本体の接合部分に馳(ハゼ)と呼ばれる加工を施し、タイトフレームと折板本体を吊子と呼ばれる金具で固定した「ハゼ式折板屋根」と呼ばれる屋根構造が数多く採用されている。このため、ハゼ式折板屋根に太陽電池モジュールを取り付け可能にするためには、例えば特開2015-151776号公報(特許文献2)、特開2018-3352号公報(特許文献3)に記載されているように、さらに、ハゼ式折板屋根の凹凸に適合し、且つハゼ部のネックを両側からクランプできるようにした専用のハゼ式折板屋根用取付金具を製作し、準備しなければならないという問題もあった。
【0005】
さらに、太陽電池モジュールの工場などの建屋の屋根への取り付けは、軽量化を図る目的で、ボルト等を使用する代わりに接着剤を用いて取り付ける方法が考えられる。しかし、シーラント剤などの耐久性、耐熱性があり、強力な接着力を有する接着剤は、一般に硬化して所定の接着力を発揮する迄に相当の時間を要する。このため、例えば工場などの建屋の屋根が傾斜等している場合、接着剤が硬化する迄の間に太陽電池モジュールが自重によりズレてしまうため、太陽電池モジュールを所定の位置に取り付けることができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-214578号公報
【特許文献2】特開2015-151776号公報
【特許文献3】特開2018-3352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、勾配を有するハゼ式折板屋根においても、補強等を施すことなく太陽電池モジュールを目的の位置に正確に取り付けることができ、それでいて太陽電池モジュールを取り付けるための作業性も大幅に向上させることが可能な太陽電池モジュールの取付構造及びその取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、太陽電池モジュールの取付構造及びその取付方法の中で、特にハゼ式折板屋根に太陽電池モジュールを取り付けるための固定部材やボルトなどの固定具および固定方法について鋭意検討を重ねた結果、固定部材を、ハゼ部のネックを両側から挟み込む脚部を備えたチャンネル構造とし、該チャンネルの太陽電池モジュールを取り付ける部分には、硬化型の接着剤を塗布する部分と、即時接着力を発揮する接着テープを取り付ける部分とを設けることにより、ボルト等による締結でなく、接着により、前記チャンネル部材を介して太陽電池モジュールを容易にハゼ式折板屋根の目的の位置に取り付けられることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、ハゼ式折板屋根と、前記ハゼ式折板屋根に取り付けられる基台部と、そして前記基台部に取り付けられる太陽電池モジュールとを備えた太陽電池モジュールの取付構造であって、前記基台部は、上面に接着剤を保持するための溝部と、前記溝部に沿って接着テープを取り付けるための平坦な仮止め部とが設けられているパネル支持部と、前記パネル支持部の一の端部付近から下方に延びている第1の脚部と、前記パネル支持部の他の端部付近から下方に延びている第2の脚部とを有し、前記第2の脚部の先端部は前記第1の脚部の先端部との間に隙間を設けて対向するように配置されており、そして前記基台部は、ハゼ部のネックを挟むように配置された前記第1の脚部および前記第2の脚部により前記ハゼ部に保持されると共に、前記第1の脚部の下面および前記第2の脚部の下面に塗布された接着剤によりハゼ式折板屋根に固着されており、太陽電池モジュールは、前記パネル支持部の前記溝部に塗布された接着剤により前記基台部に固着されていることを特徴とする太陽電池モジュールの取付構造が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、上述の太陽電池モジュールの取付方法として、太陽電池モジュールを、基台部を用いてハゼ式折板屋根に取り付けるための太陽電池モジュールの取付方法において、前記基台部は、上面に接着剤を保持するための溝部と、前記溝部に沿って接着テープを取り付けるための平坦な仮止め部とが設けられているパネル支持部と、前記パネル支持部の一の端部付近から下方に延びている第1の脚部と、前記パネル支持部の他の端部付近から下方に延びている第2の脚部とを有しており、前記第2の脚部の先端部は前記第1の脚部の先端部との間に隙間を設けて対向するように配置されており、そして
前記基台部をハゼ部の上から押し込むことにより、前記第1の脚部および前記第2の脚部がハゼ部のネックを挟むように配置すると共に、前記第1の脚部の下面および前記第2の脚部の下面に塗布した接着剤により、前記基台部をハゼ式折板屋根に固着させる工程と、前記パネル支持部の前記溝部に塗布された接着剤により、太陽電池モジュールを前記基台部に固着させる工程とを含んでいることを特徴とする太陽電池モジュールの取付方法が提供される。
【0011】
本発明の太陽電池モジュールの取付構造及びその取付方法では、ハゼ式折板屋根への太陽電池モジュールの固定部材として、パネル支持部と、ハゼ部のネックを両側から挟み込むように配置される一対の脚部とを備えた基台部が用いられる。基台部はC型チャンネルに近似の形状を呈しているが、特にその長さに限定はなく、例えば1m以上の長尺物であっても10cm以下に短尺物であってもよい。
【0012】
太陽電池モジュールのハゼ式折板屋根への取り付けは、接着剤により基台部の一対の脚部をハゼ式折板屋根に固着させ、接着剤により太陽電池モジュールを基台部のパネル支持部に固着させることにより行われる。また、本発明の太陽電池モジュールの取付構造及びその取付方法では、基台部の一対の脚部はそれぞれの先端部がハゼ部のネックを挟むように又はクランプするように配置されるので、万が一脚部がハゼ式折板屋根から剥離しても、脚部の先端部がハゼ部に引っ掛かることにより、基台部がハゼ部から抜け落ちてしまうことが防止される。
【0013】
このため、本発明の太陽電池モジュールの取付構造及びその取付方法では、第1の脚部および第2の脚部は、ハゼ部の外周を囲むことができるように、基台部の断面においてそれぞれに垂直片と水平片とからなる、下向きの略L字型の形状を有していることが好ましい。
【0014】
本発明の太陽電池モジュールの取付構造及びその取付方法では、第1の脚部の先端部と第2の脚部の先端部との間の隙間は、屋根板をかしめたハゼ部の最大幅よりも狭くなるように設定される。このため、基台部をハゼ部の上から押し込むように取り付ける場合、第1の脚部と第2の脚部は、第1の脚部の先端部と第2の脚部の先端部との隙間が開いてハゼ部を通過することができるように弾性変形することが好ましい。
【0015】
一方、第1の脚部および第2の脚部が弾性変形しない又は弾性変形が十分でない材料からできている場合、基台部をハゼ部の端部からスライドさせて差し込むことにより、第1の脚部と第2の脚部がハゼ部のネックを挟むように又はクランプするようにハゼ部へ取り付けることもできる。
【0016】
基台部の材料としては、接着剤を用いて接着できるものであれば特に限定はなく、樹脂や軽金属などであってもよい。ただし、ハゼ式折板屋根の補強を不要とするためには、基台部は軽量であればあるほど有利であることから、ポリカーボネイト、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック材料からできていることが好ましい。
【0017】
本発明では、基台部のパネル支持部の上面には接着剤を保持するための溝部が形成されていることが好ましい。
【0018】
パネル支持部の上面に溝部を設けることにより、パネル支持部の上面と太陽電池モジュールの下面との間に、接着剤を保持するための隙間(溝部の深さ)が形成されるので、太陽電池モジュールを基台部へ接合した後も、所定の接着力を発揮させるのに必要な接着剤の塗布厚を保持することが可能になる。このため、本発明では、接着剤の塗布厚が2~5mm、より好ましくは2~4mm、最も好ましくは約3mmとなるように、溝部の深さも1~5mmであることが好ましく、2~4mmであることがより好ましい。好適な接着剤の塗布厚に対して溝部の深さが完全に一致しないのは、後述する接着テープの厚みを考慮する場合と考慮しない場合があるからである。
【0019】
また、本発明では、シリコーン系、エポキシ系、アクリル系などの接着剤を用いることができるが、強力な接着力、高い耐熱性、高い耐久性を有している点に鑑みてシリコーン系のシーラント剤が適している。
【0020】
このように、本発明の取付構造は、固定手段としてシリコーン系のシーラント剤や柔軟性を有するプラスチック製の基台部を用いているので、太陽電池モジュールの変形を吸収することが可能となり、太陽電池モジュールの中でも、特にフレキシブルモジュールの取り付けに適している。
【0021】
また、本発明では、パネル支持部の上面には、溝部に沿ってブチルゴム等からなる接着テープを取り付けるための平坦な仮止め部が形成されていることが好ましい。
【0022】
一般的なシーラント剤は長期の間高い接着力を維持するが、硬化して所定の接着力を発揮するようになる迄には、24時間またはそれ以上の時間を要する。このため、本発明では、シーラント剤が硬化して所定の接着力を発揮するようになる迄の時間、仮止め部に取り付けたブチルゴム等からなる接着テープが、硬化に時間を要する接着剤の接着力に代わって、太陽電池モジュールを基台部へ保持するための接着力を保証する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、固定部材を、ハゼ部のネックを両側から挟み込む脚部を備えた軽量のチャンネル構造としているので、ハゼ式折板屋根に太陽電池モジュールを取り付ける際、ハゼ式折板屋根に補強等を施すことなく太陽電池モジュールを簡単に取り付けることができ、そして太陽電池モジュールの取付作業の作業性も大幅に向上させることができる。
【0024】
また、本発明によれば、基台部の上面に接着剤を保持するための溝部と、該溝部に沿って接着テープを取り付けるための仮止め部とを設けているので、接着剤が硬化して所定の接着力を発揮するようになる迄の時間、仮止め部に取り付けた接着テープが、硬化に時間を要する接着剤の接着力に代わって、太陽電池モジュールを基台部へ保持するための接着力を保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールの取付構造において、基台部をハゼ式折板屋根に取り付けた状態を示す概要図である。
図2図2は、図1に示された太陽電池モジュールの取付構造において、基台部の一部に太陽電池モジュールを取り付けた状態を示す概要図である。
図3図3は、本発明で用いられる基台部の概要を示す斜視図である。
図4図4は、図3に示された基台部の断面図である。
図5図5は、本発明の太陽電池モジュールの取付構造において、基台部を用いて、ハゼ式折板屋根に太陽電池モジュールを取り付けるための取付方法を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールの取付構造1及びその取付方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【実施例0027】
図1には、本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールの取付構造1において、基台部2をハゼ式折板屋根3に取り付けた状態を表す概要図が示されている。図2には、図1に示された太陽電池モジュールの取付構造1において、基台部2の一部に太陽電池モジュールを取り付けた状態を表す概要図が示されている。
【0028】
本実施形態の太陽電池モジュールの取付構造1では、太陽電池モジュール4のハゼ式折板屋根3への固定部材として、上面に溝部200と平坦な仮止め部201とを備えたパネル支持部20と、ハゼ部30のネック31を両側から挟み込むように配置された一対の脚部21,22とを備えた基台部2が用いられる。
【0029】
より詳しくは、太陽電池モジュール4のハゼ式折板屋根3への取り付けは、図1、2に示されるように、基台部2をハゼ式折板屋根3に取り付け、太陽電池モジュール4を基台部2に取り付けることにより行われる。基台部2は、ハゼ式折板屋根3のハゼ部30に沿って取り付けられ、設置される太陽電池モジュール4の大きさや重量に応じて複数箇所取り付けられる(図1)。また、基台部2の長さに限定はなく、例えば1m以上の長尺物であっても10cm以下に短尺物であってもよい。
【0030】
図3には、本実施形態で用いられる基台部2の斜視図が示されており、図4には、図3に示された基台部2の断面図が示されている。
【0031】
図3、4を参照してよく理解されるように、本実施形態で用いられる基台部2は、上面に接着剤5を保持するための溝部200と、溝部200に沿って接着テープ6を取り付けるための平坦な仮止め部201とが設けられているパネル支持部20と、パネル支持部20の一の端部付近から下方に延びている第1の脚部21と、パネル支持部20の他の端部付近から下方に延びている第2の脚部22とを備えている。
【0032】
第1の脚部21および第2の脚部22は共に、基台部2のパネル支持部20の下面から、パネル支持部20と直交するように略鉛直方向に延びた垂直片211、221と、それぞれの垂直片211、221から、垂直片211、221と直交するように略水平方向に延びた水平片212、222とを有しており、その断面においてそれぞれに下向きの略L字型の形状を有している(図3、4)。また、第1の脚部21の水平片212の先端部210は、第2の脚部22の水平片222の先端部220との間に隙間dを設けて、互いに対向するように配置される。
【0033】
このように、基台部2は、その断面においてC型チャンネルに近似の形状を呈しており、第1の脚部21および第2の脚部22により、ハゼ部30の外周を取り囲むようにハゼ式折板屋根3へ取り付けられる(図4)。
【0034】
本実施形態の太陽電池モジュールの取付構造1では、基台部2の一対の脚部21、22はそれぞれの先端部210、220がハゼ部30のネック31を挟むように又はクランプするように配置されるので、万が一脚部21、22がハゼ式折板屋根3から剥離しても、脚部21、22の先端部210、220がハゼ部30に引っ掛かることにより、基台部2がハゼ部30から抜け落ちてしまうことが防止される(図4)。
【0035】
基台部2のパネル支持部20の上面には、シーラント剤等の接着剤5を保持するための溝部200が形成されている。また、溝部200の両側には、溝部200に沿ってブチルゴム等からなる接着テープ6を貼り付けるための平坦な仮止め部201が形成されている。
【0036】
パネル支持部20の上面に溝部200を設けることにより、パネル支持部20の上面と太陽電池モジュール4の下面との間に、接着剤5を保持するための隙間(溝部200の深さ)が形成されるので、太陽電池モジュール4を基台部2へ接合した後も、所定の接着力を発揮させるのに必要な接着剤5の塗布厚を保持することが可能になる。このため、接着剤5として一般的なシーラント剤を用いる場合、接着剤5の塗布厚が2~5mm、より好ましくは2~4mm、最も好ましくは約3mmとなるように、溝部200の深さも1~5mmであることが好ましく、2~4mmであることがより好ましい。好適な接着剤5の塗布厚に対して溝部200の深さが完全に一致しないのは、接着テープ6の厚みを考慮する場合と考慮しない場合があるからである。
【0037】
また、本実施形態では、シリコーン系、エポキシ系、アクリル系などの接着剤5を用いることができるが、強力な接着力、高い耐熱性、高い耐久性を有している点に鑑みてシリコーン系のシーラント剤が適している。
【0038】
なお、本願明細書において「~」、「から」を用いて示された数値(比率)範囲は、「から」、「~」の前後に記載される数値(比率)をそれぞれ最小値(比率)及び最大値(比率)として含む範囲を示している。
【0039】
一般的なシーラント剤は長期の間高い接着力を維持するが、硬化して所定の接着力を発揮するようになる迄には、24時間またはそれ以上の時間を要する。このため、本実施形態では、シーラント剤が硬化して所定の接着力を発揮するようになる迄の時間、仮止め部201に取り付けたブチルゴム等からなる接着テープ6が、硬化に時間を要する接着剤5の接着力に代わって、太陽電池モジュール4を基台部2へ保持するための接着力を保証する。
【0040】
このため、仮止め部201は、接着剤5が硬化して所定の接着力を発揮する迄の間、仮止め部201に取り付けた接着テープ6が太陽電池モジュール4を保持するための接着力を発揮できる面積があれば足りるので、必ずしも溝部200の両側に設けられている必要はなく、溝部200の片側にのみ設けられていてもよい。また、仮止め部201及び/または溝部200は、基台部2の全長に亘って形成されている必要はなく、基台部2の長手方向の一部に形成されていてもよい。
【0041】
次に、以上のように構成された本実施形態の太陽電池モジュールの取付構造1について、基台部2を用いて、太陽電池モジュール4をハゼ式折板屋根3のハゼ部30へ取り付ける方法を説明する。図5には、本実施形態の太陽電池モジュールの取付構造1において、基台部2を用いて、ハゼ式折板屋根3に太陽電池モジュール4を取り付けるための取付方法が模式的に示されている。
【0042】
本実施形態では、先ず、設置される太陽電池モジュール4の大きさや重量に応じて、ハゼ式折板屋根3のハゼ部30へ取り付ける基台部2の位置や個数を決定する。次に、図5(a)に示されるように、基台部2の第1の脚部21の水平片212の下面および第2の脚部22の水平片222の下面にシーラント剤等の接着剤5塗布し、第1の脚部21および第2の脚部22の内側にハゼ部30が収容されるように基台部5を該ハゼ部30の上から下方へ押し込むことにより、ハゼ式折板屋根3へ固着させる。
【0043】
この時、接着剤5は、第1および第2の脚部21、22の水平片212、222の下面ではなく、該水平片212、222と当接するハゼ式折板屋根3へ直接塗布してもよい。また、第1の脚部21および第2の脚部22とハゼ式折板屋根3との間の接着剤5は、その接着力が十分且つ長期に亘り発揮できるように、好ましくは1~4mmの厚み、より好ましくは2~3mmの厚みとなるように基台部5をハゼ式折板屋根3へ押し込むことが大切である。
【0044】
本実施形態の太陽電池モジュールの取付構造1では、第1の脚部21の先端部210と第2の脚部22の先端部220との間の隙間dは、屋根板をかしめたハゼ部30の最大幅wよりも狭くなるように設定されている。このため、基台部2をハゼ部30の上から押し込むように取り付ける時、第1の脚部21と第2の脚部22は、第1の脚部21の先端部210と第2の脚部22の先端部220との隙間dが開いてハゼ部30を通過することができるように弾性変形することが好ましい。
【0045】
基台部2の材料としては、シーラント剤等の接着剤5を用いて接着できるものであれば特に限定はなく、樹脂や軽金属などであってもよい。ただし、ハゼ式折板屋根3の補強を不要とするためには、基台部2は軽量であればあるほど有利であることから、本実施形態ではポリカーボネイト、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の軽量プラスチック材料からできていることが好ましい。
【0046】
一方、図示しないが、第1の脚部21および第2の脚部22が弾性変形しない又は弾性変形が十分でない材料からできている場合、基台部2はハゼ部30の端部からスライドさせて差し込むことにより、第1の脚部21と第2の脚部22がハゼ部30のネック31を挟むように又はクランプするように該ハゼ部30へ取り付けてもよい。
【0047】
図5(b)に示されているように、基台部5は、第1の脚部21および第2の脚部22とハゼ式折板屋根3との間の接着剤5が硬化することによりハゼ式折板屋根3に固着される。次に、基台部2の仮止め部201へブチルゴム等からなる両面接着テープ6を貼り付ける。そして、基台部2の溝部200にシーラント剤等の接着剤5塗布した後、ヘラやスクレーパー等を用いて、溝部200からはみ出した接着剤5を両面接着テープ6の上面と同じレベルとなるように掻き取る。そして、両面接着テープ6の剥離紙を剥ぎ取り、太陽電池モジュール4を基台部2のパネル支持部20の上に載置することにより、太陽電池モジュール4を基台部2へ固着させる。
【0048】
太陽電池モジュール4を基台部2へ接着した直後は、接着剤5は未硬化であるために十分な接着力を発揮することができない。しかし、本実施形態の太陽電池モジュールの取付構造1では、仮止め部201に貼り付けた両面接着テープ6が、接着剤5が硬化するまでの間、接着剤5の接着力に代わって太陽電池モジュール4を基台部2へ保持するための接着力を発揮するので、例えばハゼ式折板屋根3が傾斜等していても、ズレを生じさせることなく太陽電池モジュール4を容易にハゼ式折板屋根3へ固着させることができる。
【0049】
なお、本実施形態の太陽電池モジュールの取付構造1では、ハゼ式折板屋根3に取り付ける太陽電池モジュール4はその種類等において特に限定はないが、ハゼ式折板屋根の補強の必要性を排除し、取付作業の作業性を向上させる観点から、軽量で且つ柔軟性を有するものであることが好ましい。
【0050】
また、本実施形態の取付構造1は、固定手段としてシリコーン系のシーラント剤5や柔軟性を有するプラスチック製の基台部2を用いているので、太陽電池モジュール4の変形を吸収することが可能となり、太陽電池モジュール4の中でも、特にフレキシブルモジュールの取り付けに適している。
【0051】
このように、本実施形態の太陽電池モジュールの取付構造1では、太陽電池モジュール4のハゼ式折板屋根3への取り付けは、図5(c)に示されるように、接着剤5により基台部の一対の脚部21、22をハゼ式折板屋根3に固着させ、接着剤5により太陽電池モジュール4を基台部2のパネル支持部20に固着させることにより行われる。また、本実施形態の太陽電池モジュールの取付構造1では、基台部2の一対の脚部21、22はそれぞれの先端部210、220がハゼ部30のネック31を挟むように又はクランプするように配置されるので、万が一脚部21、22がハゼ式折板屋根3から剥離しても、脚部21、22の先端部210、220がハゼ部30に引っ掛かることにより、基台部2がハゼ部30から抜け落ちてしまうことが防止される。
【0052】
その結果、本実施形態の太陽電池モジュールの取付構造1によれば、ハゼ式折板屋根3に太陽電池モジュール4を取り付ける際、ハゼ式折板屋根4に補強等を施すことなく太陽電池モジュール4を簡単に取り付けることができ、そして太陽電池モジュール4の取付作業の作業性も大幅に向上させることができる。
【符号の説明】
【0053】
1・・・・・太陽電池モジュール取付け構造
2・・・・・基台部
20・・・・パネル支持部
200・・・溝部
201・・・仮止め部
21・・・・第1の脚部
210・・・先端部
211・・・垂直片
212・・・水平片
22・・・・第2の脚部
220・・・先端部
221・・・垂直片
222・・・水平片
3・・・・・ハゼ式折板屋根
30・・・・ハゼ部
31・・・・ネック
4・・・・・太陽電池モジュール
5・・・・・接着剤
6・・・・・接着テープ
d・・・・・隙間
w・・・・・ハゼ部の最大幅
図1
図2
図3
図4
図5