(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048778
(43)【公開日】2022-03-28
(54)【発明の名称】機械式駐車場の空セル設定方法及び制御装置
(51)【国際特許分類】
E04H 6/18 20060101AFI20220318BHJP
【FI】
E04H6/18 601A
E04H6/18 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154792
(22)【出願日】2020-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大塚 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 和弘
(57)【要約】
【課題】駐車装置内の任意のセルを空いた状態にでき、限られたセルで構成された機械式駐車場の有効活用を可能にする。
【解決手段】車両が格納される複数のセルから構成された機械式駐車場を制御する制御装置が実行する空きセルの設定方法であって、車両が載置されたパレットを指定された空きセルに格納する格納処理又は出庫指定されたセルから車両が載置されたパレットPa2を出庫させる出庫処理が終了した後、空きセル対象となるセル(d4番地のセル)を指定し、指定されたセル上のパレットPd4を移動させて当該指定されたセルを空きセルに移行させる空きセル設定処理を実行する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が格納される複数のセルから構成された機械式駐車場を制御する制御装置が実行する空きセルの設定方法であって、
車両が載置されたパレットを指定された空きセルに格納する格納処理又は出庫指定されたセルから車両が載置されたパレットを出庫させる出庫処理が終了後、空きセル対象となるセルを指定し、指定されたセル上のパレットを移動させて当該指定されたセルを空きセルに移行させる空きセル設定処理を実行する、空きセル設定方法。
【請求項2】
前記空きセル設定処理は、前記格納処理又は出庫処理が終了後、一定時間が経過した後に実行される、請求項1に記載の空きセル設定方法。
【請求項3】
前記空きセル設定動作では、前記指定されたセル上のパレットが最短時間又は最短距離で他のセルに移動できるよう移動経路を設定して、前記指定されたセルを空きセルに移行させる、請求項1又は2に記載の空きセル設定方法。
【請求項4】
前記空きセル設定動作の実行中に、他パレットの格納指示又は出庫指示が有った場合には、当該空きセル設定動作を中断し、前記他パレットの格納処理又は出庫処理の終了が確認された後、当該空きセル設定動作を再開する、請求項1又は2に記載の空きセル設定方法。
【請求項5】
車両が格納される複数のセルから構成された機械式駐車場を制御する制御装置であって、
車両が載置されたパレットを指定された空きセルに格納する格納処理又は指定されたセルから車両が載置されたパレットを出庫させる出庫処理を制御する入出庫制御手段と、
前記格納処理又は出庫処理が終了した後、所定時間経過後に、指定されたセル上のパレットを移動させて空きセルに移行させる空きセル設定処理を実行する空きセル設定手段と、
を備える制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車場の空セル設定方法及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械式駐車場では、入庫の際、入庫口で車両をパレットに載せてリフトにより格納エリアに運ぶ。格納エリアでは、運ばれたパレットを所定の空きセルまで搬送して入庫を完了させる。一方、出庫時には、出庫対象となる車両が載置されたパレットをリフトに載せて出庫口に運び出庫する。機械式駐車場では、以上の入庫処理及び出庫処理を繰り返している。車両が格納される格納エリアは、複数行、複数列のセル(駐車スペース)を有する。但し、セル(駐車スペース)の全てにパレットを配置できない。例えば、駐車場には、建屋を支える柱が有り、柱に隣接するセルは駐車に不向きであることが多い。例えば、上層階から落下物がある場合がある。このため、柱に隣接する部分は駐車スペースとはせずに、単に、移動中のパレットを通過させるだけの中継装置を置くように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、中継装置を設定する従来技術では、中継装置を設置した場所にはパレットを置くことが出来ず、その分だけ、駐車場の収容台数が減ってしまうという不具合がある。
【0005】
上述したように、駐車装置内の任意の場所を空いた状態にできる技術は無く、その開発が望まれている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、駐車装置内の任意のセルを空いた状態にでき、限られたセルで構成された機械式駐車場の有効活用を可能にする機械式駐車場の空セル設定方法及び制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の実施形態は、車両が格納される複数のセルから構成された機械式駐車場を制御する制御装置が実行する空きセルの設定方法であって、車両が載置されたパレットを指定された空きセルに格納する格納処理又は出庫指定されたセルから車両が載置されたパレットを出庫させる出庫処理が終了後、空きセル対象となるセルを指定し、指定されたセル上のパレットを移動させて当該指定されたセルを空きセルに移行させる空きセル設定処理を実行する、空きセル設定方法である。
【0008】
また、本発明の他の実施形態は、車両が格納される複数のセルから構成された機械式駐車場を制御する制御装置であって、車両が載置されたパレットを指定された空きセルに格納する格納処理又は指定されたセルから車両が載置されたパレットを出庫させる出庫処理を制御する入出庫制御手段と、前記格納処理又は出庫処理が終了した後、所定時間経過後に、指定された任意のセル上のパレットを移動させて空きセルに移行させる空きセル設定動作を実行する空きセル設定手段と、を備える制御装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の機械式駐車場の空セル設定方法及び制御装置によれば、駐車装置内の任意のセルを空いた状態にでき、限られたセルで構成された機械式駐車場を有効に活用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態による機械式駐車場の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態による機械式駐車場の制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態による機械式成語装置の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】一実施形態による空きセルの設定方法の説明図である。
【
図5】参考例による空きセルの設定方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〈一実施形態による機械式駐車場の構成〉
図1に示すように、実施形態の機械式駐車場10は、1フロアがa~d行1~5列のから成る4層(3フロア(1F~3F+屋上フロアRF)の駐車スペースを有する格納エリア20と、格納エリア20に車両を昇降させるリフト30と、機械式駐車場10を制御する制御装置40とを備えている。
【0012】
制御装置40は、コンピュータで構成され、
図2に示すように、入出庫判定部41と、リフト制御部42と、パレット制御部43と、空きセル判定部44と、経路判定部45と、セル制御部46とを備えている。
【0013】
入出庫判定部41は、入出庫指示を受け付ける。入庫指示が有ると、空きセル判定部44に対して空きセルを検索させ、検索された空きセルに入庫車両を格納するようリフト制御部42及びパレット制御部43に指示する。また、出庫指示が有ると、セル制御部46に対して出庫対象となる車両が格納されているセルを駆動させ、また、リフト制御部42、パレット制御部43を駆動させて対象車両を入出庫口50まで搬送するよう制御する。
【0014】
リフト制御部42は、入庫指示が有ると、入庫対象となる車両を入出庫判定部41の指示に基づき、指示されたフロアに搬送する。一方、出庫指示が有ると、出庫対象となる車両を格納フロアから入出庫口50まで搬送する。
【0015】
パレット制御部43は、入出庫対象となる車両を搭載するパレットを制御する。
【0016】
空きセル判定部44は、格納エリア20の空きセルを検索する。
【0017】
経路判定部45は、空きセル指示が有った場合には、該当するセルを空きセルに移行させるため、パレットを搬送する経路を求める。
【0018】
セル制御部46は、各セルの駆動制御を実行する。
【0019】
次に、以上のような構成を有する機械式駐車場において、制御装置40で実行される空きセル設定方法について
図3のフローチャートを用いて説明する。
【0020】
図3のフローチャートに示すように、制御装置40の入出庫判定部41は、入出庫指示が有るか否かを判定している。入庫指示が有る場合(ステップS1YES)、入出庫判定部41は、入庫指令をリフト制御部42とパレット制御部43に出力する。
【0021】
入出庫判定部41は、リフト制御部42に対してリフト制御指令を出力する。また、パレット制御部43に対してパレット制御指令を出力する(ステップS2)。リフト制御指令には、車両が格納される格納エリアの行先階を示す情報を有する。リフト制御部42によりリフト30が制御され、行先階でパレットが降ろされると、次に、パレット制御部43により、所定のセルにパレットが格納されたか否かが判定される(ステップS3)。
【0022】
所定のセルにパレットが格納されると、ステップS4以下に示す、空きセル設定処理が実行される。
【0023】
空きセル設定処理では、先ず、空きセル判定部44で、パレットが格納されてから一定時間経過したか否かが判定される(ステップS4)。一定時間とは、例えば、10~30秒であり、入庫又は出庫が確認されるのに十分な時間であり、機械式駐車場の構造に応じて適宜、設定することができる。一定時間が経過すると(ステップS4YES)、経路判定部45により求められた最短距離又は最短時間で指定セルを空きセルにする処理(空きセル設定動作)を実施する(ステップS5)。この空きセル設定処理の詳細は
図4を用いて後述する。
【0024】
空きセル設定処理中に、出庫又は入庫ための他パレット呼びが有ると(ステップS7YES)、空きセル設定処理を中断し、呼びに応答して出庫処理又は入庫処理を優先させる(ステップS8)。出庫処理又は入庫処理が実行された後は、空きセル設定処理が再開される。
【0025】
空きセル設定処理が終了すると(ステップS6YES)、処理は終了する。
【0026】
次に、
図4を用いて実施形態の動作を具体的に説明する。なお、
図4に示す例では、出庫対象のパレットを出庫後の空きセル設定処理について説明する。
【0027】
図4において、a,b,c,dは格納エリア20における縦列の番地を示し、1,2,3,4は駐車場における横列の番地を示している。従って、駐車場所は、a1,a2,・・・,d4,d5で特定できる。また、Pa1は、a1番地上のパレットを示している。
図4では、b2番地、b3番地、c2番地が空きセルになっている。d2番地はリフト30とのアクセス場所であり、パレットを置く場所ではない。また、図中、「×」で示すc4番地は、建屋の柱等の躯体が配置されたデッドスペースDSであり、車両を置くことができない。他の場所には全てパレットが置かれている。
【0028】
この状態で、今、パレットPa2に出庫指示が有ったと仮定する。パレットPa2の出庫が確認された後、d4番地を空きセルとすることを想定する。d4番地は、c4番地に隣接しており、c4番地の柱等の躯体から落下物等の影響を受けやすいので、出来るだけ、車両を置かずに空きセルにしておきたい場所である。今、d4番地にはパレットP4dが置かれている。
【0029】
また、
図4(1)に示すように、格納エリア20の中で、b2番地、c2番地、b3番地の3つのセルが空きセルとなっている。リフト30にはパレットが積まれている。
【0030】
先ず、リフト30内を空きセルにするために、
図4(2)に上向きの矢印で示すように、空きセルであるb3番地にc3番地のパレットを移動させ、空きセルとなったc3番地には、d3番地のパレットを移動させてd3番地を空きセルにする。次いで、
図4(3)に示すように、空きセルとなったd3番地にリフト30内のパレットを移動させてリフト30内を空きセルにする。そして、
図4(4)に矢印で示すように、出庫対象であるパレットPa2をリフト30まで移動させる。このとき、第2列には空きセルが3つ有り、第3列は全てパレットが存在することとなる。
【0031】
この状態で、パレットPd4を移動させてd4番地を空きセルにする方法について説明する。
【0032】
d4番地を空きセルにするには、隣接するd3番地か、d5番地を空きセルにする必要がある。経路判定部45は格納エリア20の空きセルを検索し、b2番地、c2番地、d2番地の3つのセルが空きセルであることを認識する。そして、経路判定部45は最短時間でd4番地を空きセルにするためには、d5番地を空きセルにするよりもd3番地を空きセルにしてパレットPd4を空きセルになったd3番地に移行させる方が効率的であると判断する。
【0033】
そこで、先ず、
図4(5)に矢印で示すように、c3番地のパレットを空きセルであるc2番地に移動させ、c3番地を空きセルにする。次いで、
図4(6)に矢印で示すように、d3番地のパレットをc3番地に移動させてd3番地を空きセルにする。
【0034】
最後に、
図4(7)に示すように、d4番地のパレットPd4をd3番地に移動させて、d4番地を空きセルにする。このようにして、制御装置40による空きセル設定処理が終了する。
【0035】
図5は、比較例としての機械式駐車場の格納エリア20を示している。比較例の格納エリア20では、構造上、デッドスペースDSに隣接するd4番地にはパレットを置くことはできない。d4番地は、搬送されてきたパレットを単に他のセル、この例ではd5番地のセルまで搬送する中継部(中継装置)としての役割しか与えられていない。
【0036】
図5(1)に示す状態で、パレットPa2の出庫指示が出されると、
図5(2)に矢印で示すように、d3番地を空きセルにし、
図5(3)に矢印で示すように、リフト内のパレットをd3番地に移動させる。そして、
図5(4)に矢印で示すように、出庫対象であるパレットPa2をリフト30まで移動させる。この状態では、d4番地は中継部であるから、パレットを置くことはできないので、
図4の格納エリアの構成と比較して1セル分だけ、駐車車両が減ることとなる。
【0037】
これに対して、実施形態の格納エリア20においては、d4番地にはパレットを置くことができるので、1セル分を駐車スペースを確保することができる。また、出庫対象であるパレットPa2をリフト30まで移動させた後、デッドスペースDSに隣接するセルであるd4番地を空きセルに移行させることができるので、デッドスペースDSが、例えば、上方からの落下物の可能性がある建屋の柱である場合等であっても、隣接セルを空きセルにすることで、駐車中の車両に対して損傷を与えることを未然に防止することができる。
【0038】
なお、以上の実施形態において、空きセル設定処理中に他パレットの呼びが有る場合には、空きセル設定処理を中断して呼びに応答するようにした。しかし、空きセル設定処理が終了間近であり、呼びに応答するよりも空きセル設定処理を最後まで実行した方が効率的である場合には、空きセル設定処理を優先させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10:機械式駐車場、20:格納エリア、30:リフト、40:制御装置、41:入出庫判定部(入出庫制御手段)、42:リフト制御部、43:パレット制御部、44:空きセル判定部(空きセル設定手段)、45:経路判定部(空きセル設定手段)、46:セル制御部、50:入出庫口