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特開2022-48798基幹プラットフォーム、及びトークン発行・償却用プラットフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048798
(43)【公開日】2022-03-28
(54)【発明の名称】基幹プラットフォーム、及びトークン発行・償却用プラットフォーム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/04 20120101AFI20220318BHJP
【FI】
G06Q40/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154821
(22)【出願日】2020-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】519249262
【氏名又は名称】株式会社デジタルアセットマーケッツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001405
【氏名又は名称】特許業務法人篠原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100065824
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100104983
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 雅之
(74)【代理人】
【識別番号】100166394
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和弘
(71)【出願人】
【識別番号】313004816
【氏名又は名称】西本 一也
(74)【代理人】
【識別番号】110001405
【氏名又は名称】特許業務法人篠原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西本 一也
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055BB51
(57)【要約】      (修正有)
【課題】外部からの攻撃や不正行為による資産流出の危険性を極力排除し、かつ、リアルタイムの資産移動処理を行い迅速な決済業務を実現することの可能な基幹プラットフォーム及びトークン発行・償却用プラットフォームを提供する。
【解決手段】基幹プラットフォームは、一時的処理データ管理手段11により管理されているトークンに対応する一時的処理データの第1価値構成要素と、第2価値構成要素設定データ管理手段12により管理されている当該トークンに対応するデータの第2価値構成要素と、を用いて、価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量が揃った当該トークンを所定数量分発行するとともに、一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する一時的処理データの数量を当該トークンの発行数量分削減すると同時に、所定アドレスに当該トークンを移動するトランザクションを作成するトークン発行手段13を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データベースを用いた業務システムとブロックチェーンとにより構成され、ブロックチェーン上で作成され管理されるデータ類であるトークンについて、トークン発行体の発行によるトークンの先行販売を取引所において行うとともに、取引者に購入されたトークンを用いた取引・決済を取引所において行うための基幹プラットフォームであって、
トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち、少なくとも数量を含み価格を含まない第1価値構成要素が設定された一時的処理データを、ブロックチェーンを介して管理する一時的処理データ管理手段と、
当該トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち、少なくとも価格を含み数量を含まない第2価値構成要素が設定されたデータを管理する第2価値構成要素設定データ管理手段と、
前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記一時的処理データの第1価値構成要素と、前記第2価値構成要素設定データ管理手段により管理されている当該トークンに対応するデータの第2価値構成要素と、を用いて、価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量が揃った当該トークンを所定数量分発行するとともに、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記一時的処理データの数量を当該トークンの発行数量分削減すると同時に、所定アドレスに当該トークンを移動する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成するトークン発行手段と、
を有することを特徴とする基幹プラットフォーム。
【請求項2】
更に、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記一時的処理データの数量を所定数量分増加させるとともに、当該トークンを前記一時的処理データの増加数量分削減する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成するトークン償却手段を有することを特徴とする請求項1に記載の基幹プラットフォーム。
【請求項3】
前記第2価値構成要素設定データ管理手段は、前記第2価値構成要素が設定されたデータを、業務システムのデータベースを介して管理することを特徴とする請求項1又は2に記載の基幹プラットフォーム。
【請求項4】
前記一時的処理データ管理手段は、当該トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち、少なくとも数量を含み価格を含まない第1価値構成要素が設定された数量型一時的処理データを、第1のブロックチェーンを介して管理し、
前記第2価値構成要素設定データ管理手段は、当該トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち、少なくとも価格を含み数量を含まない前記第2価値構成要素が設定された価格型一時的処理データを、第2のブロックチェーンを介して管理し、
前記トークン発行手段は、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記数量型一時的処理データの第1価値構成要素と、前記第2価値構成要素設定データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記価格型一時的処理データの第2価値構成要素と、を用いて、価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量が揃った当該トークンを所定数量分発行するとともに、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記数量型一時的処理データの数量を当該トークンの発行数量分削減すると同時に、所定アドレスに当該トークンを移動する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の基幹プラットフォーム。
【請求項5】
前記第2価値構成要素設定データ管理手段は、前記第2価値構成要素が設定されたデータを、当該トークンを発行・自動処理する機能を備えたスマートコントラクトや、当該トークンの発行・自動処理の参照先であるブロックチェーンの記録部であるメモ欄などのデータ管理のフリーエリアにおいて暗号化した状態で記録・管理することを特徴とする請求項1又は2に記載の基幹プラットフォーム。
【請求項6】
前記トークン発行手段は、発行した当該トークンを、インターネット接続された状態で当該トークンにアクセスするための秘密鍵を管理する第1のウォレットに対応する、取引所における、ブロックチェーンの管理下にある資産データの管理単位とした自己口等のアドレスに移動し、即座に、取引者の指定する所定アドレスに移動する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成することを特徴とする請求項1又は2に記載の基幹プラットフォーム。
【請求項7】
前記トークン発行手段は、発行した当該トークンを、インターネット接続されていない状態で当該トークンにアクセスするための秘密鍵を管理する第2のウォレットに対応する、取引所における、ブロックチェーンの管理下にある資産データの管理単位とした取引者用委託口等のアドレスに移動する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成することを特徴とする請求項1又は2に記載の基幹プラットフォーム。
【請求項8】
データベースを用いた業務システムとブロックチェーンとにより構成され、ブロックチェーン上で作成され管理されるデータ類であるトークンについて、トークンの先行販売を行うとともに、取引者に購入されたトークンを用いた取引・決済を行う取引所との間で、トークン発行体が前記トークンの発行及び償却を行うためのトークン発行・償却用プラットフォームであって、
トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち少なくとも数量を含み価格を含まない第1の価値構成要素が設定された一時的処理データを、ブロックチェーンを介して管理する一時的処理データ管理手段と、
当該トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち、少なくとも価格を含み数量を含まない第2価値構成要素が設定されたデータを管理する第2価値構成要素設定データ管理手段と、
前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記一時的処理データの第1価値構成要素と、前記第2価値構成要素設定データ管理手段により管理されている当該トークンに対応するデータの第2価値構成要素と、を用いて、価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量が揃った当該トークンを所定数量分発行するとともに、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記一時的処理データの数量を当該トークンの発行数量分削減すると同時に、所定アドレスに当該トークンを移動する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成するトークン発行手段と、
を有することを特徴とするトークン発行・償却用プラットフォーム。
【請求項9】
更に、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記一時的処理データの数量を所定数量分増加させるとともに、当該トークンを前記一時的処理データの増加数量分削減する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成するトークン償却手段を有することを特徴とする請求項8に記載のトークン発行・償却用プラットフォーム。
【請求項10】
前記第2価値構成要素設定データ管理手段は、前記第2価値構成要素が設定されたデータを、業務システムのデータベースを介して管理することを特徴とする請求項8又は9に記載のトークン発行・償却用プラットフォーム。
【請求項11】
前記一時的処理データ管理手段は、当該トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち、少なくとも数量を含み価格を含まない第1価値構成要素が設定された数量型一時的処理データを、第1のブロックチェーンを介して管理し、
前記第2価値構成要素設定データ管理手段は、当該トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち、少なくとも価格を含み数量を含まない前記第2価値構成要素が設定された価格型一時的処理データを、第2のブロックチェーンを介して管理し、
前記トークン発行手段は、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記数量型一時的処理データの第1価値構成要素と、前記第2価値構成要素設定データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記価格型一時的処理データの第2価値構成要素と、を用いて、価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量が揃った当該トークンを所定数量分発行するとともに、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記数量型一時的処理データの数量を当該トークンの発行数量分削減すると同時に、所定アドレスに当該トークンを移動する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成する
ことを特徴とする請求項8又は9に記載のトークン発行・償却用プラットフォーム。
【請求項12】
前記第2価値構成要素設定データ管理手段は、前記第2価値構成要素が設定されたデータを、トークンを発行・自動処理する機能を備えたスマートコントラクトや、当該トークンの発行・自動処理の参照先であるブロックチェーンの記録部であるメモ欄などのデータ管理のフリーエリアにおいて暗号化した状態で記録・管理することを特徴とする請求項8又は9に記載のトークン発行・償却用プラットフォーム。
【請求項13】
前記トークン発行手段は、発行した当該トークンを、インターネット接続された状態で当該トークンにアクセスするための秘密鍵を管理する第1のウォレットに対応する、取引所における、ブロックチェーンの管理下にある資産データの管理単位としたトークン発行体用委託口等のアドレスに移動し、即座に、取引者の指定する所定アドレスに移動する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成することを特徴とする請求項8又は9に記載のトークン発行・償却用プラットフォーム。
【請求項14】
前記トークン発行手段は、発行した当該トークンを、インターネット接続されていない状態で当該トークンにアクセスするための秘密鍵を管理する第2のウォレットに対応する、取引所における、ブロックチェーンの管理下にある資産データの管理単位とした取引者用委託口等のアドレスに移動する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成することを特徴とする請求項8又は9に記載のトークン発行・償却用プラットフォーム。
【請求項15】
データベースを用いた業務システムとブロックチェーンとにより構成され、ブロックチェーン上で作成され管理されるデータ類であるトークンについて、トークン発行体の発行によるトークンの先行販売を取引所において行うとともに、取引者に購入されたトークンを用いた取引・決済を取引所において行うための基幹プラットフォームであって、
トークンの価値を構成する要素をなす銘柄及び数量のうち、少なくとも数量を含み銘柄を含まない第1価値構成要素が設定された一時的処理データを、ブロックチェーンを介して管理する一時的処理データ管理手段と、
当該トークンの価値を構成する要素をなす銘柄及び数量のうち、少なくとも銘柄を含み数量を含まない第2価値構成要素が設定されたデータを管理する第2価値構成要素設定データ管理手段と、
前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記一時的処理データの第1価値構成要素と、前記第2価値構成要素設定データ管理手段により管理されている当該トークンに対応するデータの第2価値構成要素と、を用いて、価値を構成する要素をなす銘柄及び数量が揃った当該トークンを所定数量分発行するとともに、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記一時的処理データの数量を当該トークンの発行数量分削減すると同時に、所定アドレスに当該トークンを移動する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成するトークン発行手段と、
を有することを特徴とする基幹プラットフォーム。
【請求項16】
更に、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記一時的処理データの数量を所定数量分増加させるとともに、当該トークンを前記一時的処理データの増加数量分削減する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成するトークン償却手段を有することを特徴とする請求項13に記載の基幹プラットフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トークン発行体の発行する発行量可変型のトークンを暗号資産取引所が先行販売するサービスや、購入済みのトークンを用いた取引での決済サービスを提供するための基幹プラットフォーム、及びトークン発行体が暗号資産取引所との間でトークンの発行や償却を行うためのトークン発行・償却用プラットフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トークン発行体の発行するトークン(既存のブロックチェーン技術を利用して発行された暗号資産)を暗号資産取引所が先行販売する基幹サービスが、海外の当該取引所等で行われるようになってきている。
基幹サービスとなるトークン処理の目的には、「資金調達」の他にトークンを用いた「決済(金銭等によって支払を行い、取引を終了させること)業務」がある。
通貨や証券(通貨建資産)の類ではない、企業が製造する製品や素材そのもの(価値を有するもの)を決済の手段に活用できると考えるとき、特に、素材をトークン化して決済業務に活用することにより、トークンエコノミー(トークンというデジタル的に表現した価値を通貨の代替として用いた新しい概念の経済圏)の実現可能性が出てくる。
【0003】
ところで、素材系の価値を有するものは、既に主要マーケットが国際的に存在している場合が多い。このため、素材系のトークンには、既存市場との価格連動性が問われることになる。素材系のトークンと実市場との価格連動を実現するためには、価格と量の関係から、価格側を決めた数値にする必要があり、そのためにはトークンの発行量側を可変にする必要がある。
【0004】
また、従来の国内素材系の主要市場では、基本的に大口顧客を対象とした取引が行われてきたが、トークンを用いた基幹サービスは、小口顧客へも公平にサービス提供を実現でき、また金融業界においても金利以外の新しい収益基盤として有望なものであり、経済と金融の双方の活性化のために必須であると考えられる。
【0005】
そこで、本件出願人は、発行量可変タイプのトークンの基幹プラットフォームを構築すべく、検討、考察を重ねた。そして、その過程において、次のような問題があることを確認した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
素材系のトークンは、素材の価値に、「決済の付加的」価値も加わり、通常の価値よりも高く評価されるため、外部からの攻撃や不正行為の対象になり易いと考えられる。
その事前対策としては、(ブロックチェーン等の分散台帳に記録されたトランザクション処理の結果として示される取引および履歴における取引対象の資産等をなす)トークンにアクセスするための秘密鍵を、インターネット接続されていない状態で管理するタイプのウォレット(いわゆる「コールドウォレット」。本願では、便宜上「第2のウォレット」と称する。)での管理が比較的安全と考えられる。
しかし、決済業務という特性を考慮すると、リアルタイムの資金情報などのデータ移動処理が必須となってくる。しかし、第2のウォレットによる秘密鍵の管理では、インターネット接続されていない状態において人を介在した操作を行う必要があり、これらの処理を自動的に行うことができず、結果的にブロックチェーン等が得意とするリアルタイムの資金移動処理を行うことができない。
【0007】
リアルタイムの資金移動処理を行うためには、処理の自動化を含め、(ブロックチェーン等の分散台帳に記録されたトランザクション処理の結果として示される取引および履歴における取引対象の資産等をなす)トークンにアクセスするための秘密鍵を、インターネット接続された状態で管理するタイプのウォレット(いわゆる「ホットウォレット」。本願では、便宜上「第1のウォレット」と称する。)での管理が必要となると考えられる。
しかし、第1のウォレットによる秘密鍵の管理には、秘密鍵(公開鍵暗号で使用される一対の暗号鍵の組のうち、相手方に渡したり一般に公開したりせず、所有者が管理下に置いて秘匿する必要がある鍵)について外部からハッキングを受けて盗まれるリスクから逃れることが難しいといった課題が残る。
【0008】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、外部からの攻撃や不正行為による資産流出の危険性を極力排除し、かつ、リアルタイムの資産移動処理を自動的に行い迅速な決済業務を実現することの可能な基幹プラットフォーム、及びトークン発行・償却用プラットフォームを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本第1の発明による基幹プラットフォームは、データベースを用いた業務システムとブロックチェーンとにより構成され、ブロックチェーン上で作成され管理されるデータ類であるトークンについて、トークン発行体の発行によるトークンの先行販売を取引所において行うとともに、取引者に購入されたトークンを用いた取引・決済を取引所において行うための基幹プラットフォームであって、トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち、少なくとも数量を含み価格を含まない第1価値構成要素が設定された一時的処理データを、ブロックチェーンを介して管理する一時的処理データ管理手段と、当該トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち、少なくとも価格を含み数量を含まない第2価値構成要素が設定されたデータを管理する第2価値構成要素設定データ管理手段と、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記一時的処理データの第1価値構成要素と、前記第2価値構成要素設定データ管理手段により管理されている当該トークンに対応するデータの第2価値構成要素と、を用いて、価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量が揃った当該トークンを所定数量分発行するとともに、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記一時的処理データの数量を当該トークンの発行数量分削減すると同時に、所定アドレスに当該トークンを移動する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成するトークン発行手段と、を有することを特徴としている。
なお、本願明細書における「データベース」とは、「従来一般的に用いられてきた集中型の台帳管理システム」の他、「ブロックチェーン等の分散技術による台帳管理システム」を含む。
【0010】
また、本第1の発明の基幹プラットフォームにおいては、更に、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記一時的処理データの数量を所定数量分増加させるとともに、当該トークンを前記一時的処理データの増加数量分削減するトランザクション、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成するトークン償却手段を有するのが好ましい。
【0011】
また、本第1の発明の基幹プラットフォームにおいては、前記第2価値構成要素設定データ管理手段は、前記第2価値構成要素が設定されたデータを、業務システムのデータベースを介して管理するのが好ましい。
【0012】
また、本第1の発明の基幹プラットフォームにおいては、前記一時的処理データ管理手段は、当該トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち、少なくとも数量を含み価格を含まない第1価値構成要素が設定された数量型一時的処理データを、第1のブロックチェーンを介して管理し、前記第2価値構成要素設定データ管理手段は、当該トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち、少なくとも価格を含み数量を含まない前記第2価値構成要素が設定された価格型一時的処理データを、第2のブロックチェーンを介して管理し、前記トークン発行手段は、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記数量型一時的処理データの第1価値構成要素と、前記第2価値構成要素設定データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記価格型一時的処理データの第2価値構成要素と、を用いて、価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量が揃った当該トークンを所定数量分発行するとともに、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記数量型一時的処理データの数量を当該トークンの発行数量分削減すると同時に、所定アドレスに当該トークンを移動する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成するのが好ましい。
【0013】
また、本第1の発明の基幹プラットフォームにおいては、前記第2価値構成要素設定データ管理手段は、前記第2価値構成要素が設定されたデータを、当該トークンを発行・自動処理する機能を備えたスマートコントラクトや、当該トークンの発行・自動処理の参照先であるブロックチェーンの記録部であるメモ欄などのデータ管理のフリーエリアにおいて暗号化した状態で記録・管理するのが好ましい。
【0014】
また、本第1の発明の基幹プラットフォームにおいては、前記トークン発行手段は、発行した当該トークンを、インターネット接続された状態で当該トークンにアクセスするための秘密鍵を管理する第1のウォレットに対応する、取引所における、ブロックチェーンの管理下にある資産データの管理単位とした自己口等のアドレスに移動し、即座に、取引者の指定する所定アドレスに移動する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成するのが好ましい。
【0015】
また、本第1の発明の基幹プラットフォームにおいては、前記トークン発行手段は、発行した当該トークンを、インターネット接続されていない状態で当該トークンにアクセスするための秘密鍵を管理する第2のウォレットに対応する、取引所における、ブロックチェーンの管理下にある資産データの管理単位とした取引者用委託口等のアドレスに移動する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成するのが好ましい。
【0016】
また、本第2の発明によるトークン発行・償却用プラットフォームは、データベースを用いた業務システムとブロックチェーンとにより構成され、ブロックチェーン上で作成され管理されるデータ類であるトークンについて、トークンの先行販売を行うとともに、取引者に購入されたトークンを用いた取引・決済を行う取引所との間で、トークン発行体が前記トークンの発行及び償却を行うためのトークン発行・償却用プラットフォームであって、トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち少なくとも数量を含み価格を含まない第1の価値構成要素が設定された一時的処理データを、ブロックチェーンを介して管理する一時的処理データ管理手段と、当該トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち、少なくとも価格を含み数量を含まない第2価値構成要素が設定されたデータを管理する第2価値構成要素設定データ管理手段と、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記一時的処理データの第1価値構成要素と、前記第2価値構成要素設定データ管理手段により管理されている当該トークンに対応するデータの第2価値構成要素と、を用いて、価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量が揃った当該トークンを所定数量分発行するとともに、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記一時的処理データの数量を当該トークンの発行数量分削減すると同時に、所定アドレスに当該トークンを移動する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成するトークン発行手段と、を有することを特徴としている。
【0017】
また、本第2の発明のトークン発行・償却用プラットフォームにおいては、更に、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記一時的処理データの数量を所定数量分増加させるとともに、当該トークンを前記一時的処理データの増加数量分削減する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成するトークン償却手段を有するのが好ましい。
【0018】
また、本第2の発明のトークン発行・償却用プラットフォームにおいては、前記第2価値構成要素設定データ管理手段は、前記第2価値構成要素が設定されたデータを、業務システムのデータベースを介して管理するのが好ましい。
【0019】
また、本第2の発明のトークン発行・償却用プラットフォームにおいては、前記一時的処理データ管理手段は、トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち、少なくとも数量を含み価格を含まない第1価値構成要素が設定された数量型一時的処理データを、第1のブロックチェーンを介して管理し、前記第2価値構成要素設定データ管理手段は、当該トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち、少なくとも価格を含み数量を含まない前記第2価値構成要素が設定された価格型一時的処理データを、第2のブロックチェーンを介して管理し、前記トークン発行手段は、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記数量型一時的処理データの第1価値構成要素と、前記第2価値構成要素設定データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記価格型一時的処理データの第2価値構成要素と、を用いて、価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量が揃った当該トークンを所定数量分発行するとともに、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記数量型一時的処理データの数量を当該トークンの発行数量分削減すると同時に、所定アドレスに当該トークンを移動する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成するのが好ましい。
【0020】
また、本第2の発明のトークン発行・償却用プラットフォームにおいては、前記第2価値構成要素設定データ管理手段は、前記第2価値構成要素が設定されたデータを、トークンを発行・自動処理する機能を備えたスマートコントラクトや、当該トークンの発行・自動処理の参照先であるブロックチェーンの記録部であるメモ欄などのデータ管理のフリーエリアにおいて暗号化した状態で記録・管理するのが好ましい。
【0021】
また、本第2の発明のトークン発行・償却用プラットフォームにおいては、前記トークン発行手段は、発行した当該トークンを、インターネット接続された状態で当該トークンにアクセスするための秘密鍵を管理する第1のウォレットに対応する、取引所における、ブロックチェーンの管理下にある資産データの管理単位とした発行体委託口等のアドレスに移動し、即座に、取引者の指定する所定アドレスに移動する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成するのが好ましい。
【0022】
また、本第2の発明のトークン発行・償却用プラットフォームにおいては、前記トークン発行手段は、インターネット接続されていない状態で当該トークンにアクセスするための秘密鍵を管理する第2のウォレットに対応する、取引所における、ブロックチェーンの管理下にある資産データの管理単位とした取引者用委託口等のアドレスに移動する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成するのが好ましい。
【0023】
また、本第3の発明による基幹プラットフォームは、データベースを用いた業務システムとブロックチェーンとにより構成され、ブロックチェーン上で作成され管理されるデータ類であるトークンについて、トークン発行体の発行によるトークンの先行販売を取引所において行うとともに、取引者に購入されたトークンを用いた取引・決済を取引所において行うための基幹プラットフォームであって、トークンの価値を構成する要素をなす銘柄及び数量のうち、少なくとも数量を含み銘柄を含まない第1価値構成要素が設定された一時的処理データを、ブロックチェーンを介して管理する一時的処理データ管理手段と、当該トークンの価値を構成する要素をなす銘柄及び数量のうち、少なくとも銘柄を含み数量を含まない第2価値構成要素が設定されたデータを管理する第2価値構成要素設定データ管理手段と、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記一時的処理データの第1価値構成要素と、前記第2価値構成要素設定データ管理手段により管理されている当該トークンに対応するデータの第2価値構成要素と、を用いて、価値を構成する要素をなす銘柄及び数量が揃った当該トークンを所定数量分発行するとともに、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記一時的処理データの数量を当該トークンの発行数量分削減すると同時に、所定アドレスに当該トークンを移動する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成するトークン発行手段と、を有することを特徴としている。
【0024】
また、本第3の発明の基幹プラットフォームにおいては、更に、前記一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する前記一時的処理データの数量を所定数量分増加させるとともに、当該トークンを前記一時的処理データの増加数量分削減する、トランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成するトークン償却手段を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、外部からの攻撃や不正行為による資産流出の危険性を極力排除し、かつ、リアルタイムの資産移動処理を自動的に行い迅速な決済業務を実現することの可能な基幹プラットフォーム、及びトークン発行・償却用プラットフォームが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の基幹プラットフォームの全体構成を概念的に示すブロック図である。
図2】本発明の基幹プラットフォームに備わる特徴的な処理手段を概念的に示すブロック図である。
図3】本発明の基幹プラットフォームにおいて用いられる一時的処理データ、第2価値構成要素設定データ、トークンの夫々における価値構成要素を概念的に示す図である。
図4】本発明の実施形態の基幹プラットフォームにおける日中決済及び日次決済でのトークンの発行の流れの一例を示す説明図である。
図5】本発明の実施形態の基幹プラットフォームにおけるトークン発行処理(日中出庫)の一例を示す説明図である。
図6】本発明の実施形態の基幹プラットフォームにおける日次処理でのトークン発行処理の流れの一例を示す説明図である。
図7】本発明の実施形態の基幹プラットフォームにおける日次処理でのトークン償却処理の流れの一例を示す説明図である。
図8】本発明の実施形態の基幹プラットフォームにおける日中処理での取引者からのトークンの出庫要求の数量が、トークン買戻し時にトークンを償却しないで保管管理していた数量を超えた場合のトークン発行処理の流れの一例を示す説明図である。
図9】本発明の実施形態にかかる基幹プラットフォームの全体構成を模式的に示すブロック図である。
図10】本発明の実施形態の基幹プラットフォームにおける取引者からのトークンの購入、及び引出し(出庫)要求があった場合の日中処理でのトークンの流れの一例を示す説明図である。
図11】本発明の実施形態の基幹プラットフォームにおける取引者からのトークンの購入要求はあるが、引出し(出庫)要求がなく、取引所の委託管理口座等で管理する場合の日次処理でのトークンの流れの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
1.本発明の基幹プラットフォームの全体構成及び特徴的な処理手段
本発明の基幹プラットフォームは、図1に示すように、トークン発行体と、外部の取引者(例えば、トークン等の暗号資産交換所)との間で、取引所がトークン発行体の発行する発行量可変型のトークンの先行販売サービスや、購入済みのトークンを用いた取引での決済サービスを提供するための、業務アプリケーションとブロックチェーンとにより構成され、図2に示すように、一時的処理データ管理手段11と、第2価値構成要素設定データ管理手段12と、トークン発行手段13と、トークン償却手段14を有している。
【0028】
一時的処理データ管理手段11は、例えば、図3(a)に示すような、トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち、少なくとも数量を含み価格を含まない第1価値構成要素が設定された一時的処理データを、ブロックチェーンを介して管理する。図3(a)の例では、一時的処理データ管理手段11は、数量(数量“n”)が設定された数量型一時的処理データを、ブロックチェーンを介して管理している。
【0029】
第2価値構成要素設定データ管理手段12は、例えば、図3(b)に示すような、当該トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち、少なくとも価格を含み数量を含まない第2価値構成要素が設定されたデータを、業務システムのデータベースを介して管理する。図3(b)の例では、第2価値構成要素設定データ管理手段12は、価格(価格“m”)が設定された価格型一時的処理データを、業務システムのデータベースを介して管理している。
【0030】
トークン発行手段13は、一時的処理データ管理手段11により管理されている当該トークンに対応する、例えば、図3(a)に示す一時的処理データの第1価値構成要素と、第2価値構成要素設定データ管理手段12により管理されている当該トークンに対応する、例えば、図3(b)に示すデータの第2価値構成要素と、を用いて、例えば、図3(c)に示す価値を構成する要素をなす銘柄(銘柄“A”)、価格(価格“m”)及び数量(数量“n”)が揃った当該トークンを所定数量分発行するとともに、一時的処理データ管理手段11により管理されている当該トークンに対応する一時的処理データの数量を当該トークンの発行数量分削減すると同時に、所定アドレスに当該トークンを移動するトランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成する。
【0031】
トークン償却手段14は、一時的処理データ管理手段11により管理されている当該トークンに対応する一時的処理データの数量を所定数量分増加させるとともに、当該トークンを一時的処理データの増加数量分削減するトランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成する。
【0032】
なお、第2価値構成要素設定データ管理手段12は、当該トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち、少なくとも価格を含み数量を含まない第2価値構成要素が設定された価格型一時的処理データを、第2のブロックチェーンを介して管理するようにしてもよい。
その場合、一時的処理データ管理手段11は、当該トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち、少なくとも数量を含み価格を含まない第1価値構成要素が設定された数量型一時的処理データを、第1のブロックチェーンを介して管理するようにする。
また、トークン発行手段13は、一時的処理データ管理手段11により管理されている当該トークンに対応する数量型一時的処理データの第1価値構成要素と、第2価値構成要素設定データ管理手段12により管理されている当該トークンに対応する価格型一時的処理データの第2価値構成要素と、を用いて、価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量が揃った当該トークンを所定数量分発行するとともに、一時的処理データ管理手段11により管理されている当該トークンに対応する数量型一時的処理データの数量を当該トークンの発行数量分削減すると同時に、所定アドレスに当該トークンを移動するトランザクションおよびスマートコントラクトによる自動処理を作成するようにする。
【0033】
あるいは、第2価値構成要素設定データ管理手段12は、第2価値構成要素が設定されたデータを、当該トークンを発行・自動処理する機能を備えたスマートコントラクトや、当該トークンの発行・自動処理の参照先であるブロックチェーンの記録部であるメモ欄などのデータ管理のフリーエリアにおいて暗号化した状態で記録・管理するようにしてもよい。
【0034】
2.本発明の基幹プラットフォームにおけるトークンの発行・償却処理
ここで、本発明の基幹プラットフォームにおけるトークンの発行・償却処理について詳しく説明する。
【0035】
2-1.鍵について
それに先立ち、本発明の基幹プラットフォームに備わる鍵について説明する。
鍵は、公開鍵(トランザクションの内容が正しいか否かを確認するために用いる第三者に公開されている鍵)と秘密鍵(アドレスの所有者がデータ変更するときに承認するために用いる、所有者が管理下で秘匿する必要がある鍵)が対で存在する。公開鍵は、データを暗号化、暗号化された署名の複号化を行うために用いる鍵である。秘密鍵は、暗号化されたデータの複号化、署名の暗号化を行うために用いる鍵である。本発明の基幹プラットフォームにおいては、トークンの暗号化を公開鍵、複号化を秘密鍵で行い、トランザクションの署名(暗号化)を秘密鍵、暗号化された署名の複号化を公開鍵で行う。そして、公開鍵からアドレスを生成し、そのアドレスに入っているトークンなどのデータを移動するためにトランザクションを生成し、それを秘密鍵で署名する。なお、メモ欄などのデータ管理のフリーエリアでのデータの暗号化は、鍵では行わず、別の方法でシステム的に暗号化する。
本発明の基幹プラットフォームでは、トークンの発行・償却処理に際して用いる鍵として、発行・償却鍵、移動鍵を備えている。
発行・償却鍵は、トークンや一時的処理データを発行・償却する処理についてのトランザクションを承認する機能を有し、移動処理についてのトランザクションを承認する機能を有さない鍵である。
発行・償却鍵には、一時的処理データ発行・償却鍵、トークン発行・償却鍵がある。
一時的処理データ発行・償却鍵は、同一アドレスにおける一時的処理データの発行・削減を行うために用いる鍵である。
トークン発行・償却鍵は、一時的処理データからトークンを発行するときにそのトランザクション(「いくらでどれだけ増やすか」)を承認し、かつ、トークンを償却するときに、そのトランザクション(「指定アドレスのデータをどれだけ消す、または一時的処理データに戻すか」)を承認するために用いるスマートコントラクト等を起動する鍵、もしくは類似する処理のトランザクションを承認する鍵である。
スマートコントラクト(以下、場合によりトランザクションで処理を行う場合もありうる)は、発行量と価格を指定し、発行時間等を記録でき、ブロックチェーンのメモ欄に暗号化(当該鍵を使用しない別の方法による)した任意の内容を記録できるように構成されている。
本発明の基幹プラットフォームは、スマートコントラクトとして、トークン発行用スマートコントラクトと、トークン移動用スマートコントラクトを備えている。
発行用スマートコントラクトのアドレスにトークンが一時的に発行されると、トークンの発行をトリガーとして移動用スマートコントラクトが起動する。また、移動用スマートコントラクトには、トークンの移動先アドレス(これはプラットフォーム管理者の特殊IDにより登録される)が記載されており(その記録されたアドレスを指定することで)、トークン発行後に移動用スマートコントラクト内に記録されたアドレスにのみトークンの移動が制限されるようになっている。
また、これらのスマートコントラクトは、特殊IDでのみ更新可能であり、特殊IDは複数企業等、複数者にて管理されるマルチシグ方式等にて、インターネット接続されていない状態にあり、当該スマートコントラクトを管理(設定内容の変更など)するための秘密鍵として管理されている。なお、特殊IDは、移動用スマートコントラクト内に記録した移動先アドレスを削除することもできる。
なお、トークンの移動先情報はスマートコントラクトの設定の他にも、例えば、ブロックチェーン上の、トークンの発行を管理する発行管理テーブルに特定の移動アドレス情報を記載することによって行うことができるようにしてもよい。
また、トークンの移動は移動鍵を用いたトランザクション等の処理で行うこともできる。
移動鍵は、そのトランザクション(誰(どのアドレス)に(いくらで)どれだけ移動するか)を承認するために用いる鍵である。
【0036】
2-2.一時的処理データとトークンとの関係
本発明の基幹プラットフォームでは、トークンの発行をしないで保管するときは、価値構成要素が揃っていない一時的処理データに分解して管理し、トークンの発行を行うときには、必要量の一時的処理データをトークンに戻し、当該量の一時的処理データを削減するように構成されている。この処理専用の鍵が、トークン発行・償却鍵である。
また、本発明の基幹プラットフォームでは、一時的処理データが一時的処理データを管理する登録されたアドレス間で移動できるように、一時的処理データの移動処理専用の移動鍵が設定されている。
【0037】
2-3.トークンの保管、発行、償却
本発明の基幹プラットフォームでは、トークンの発行処理時には、どのアドレスに発行するかが、ブロックチェーン上の発行管理テーブルまたはスマートコントラクト内で指示されている。
例えば、ブロックチェーン上の発行管理テーブルまたはスマートコントラクト内の処理プログラムに、次の表1のようにアドレスが記録されている場合、スマートコントラクトは、表1に示す条件のとおりに処理する。
【表1】
トークンの発行処理は、アドレスX1の発行秘密鍵にて承認・実行する。
発行秘密鍵は、発行しかできないが、スマートコントラクト内で発行(移動)先が指定されている。または、ブロックチェーン上の発行管理テーブルにおいて発行(移動)先が指定されている。
以下の(例1)に、トークンを一時的処理データに分解して、分解した一時的処理データを保管管理する場合、及び分解して保管管理している一時的処理データをトークンに戻してトークンを発行する場合の一例、(例2)に、保管管理している一時的処理データから所定量のトークンを発行する場合、及び所定量のトークンを償却して一時的処理データに戻す場合の一例を、夫々示す。
【0038】
(例1)-1 トークンを一時的処理データに分解して保管管理する場合
例えば、下記(a1)に示す、銘柄“A”、価格“100”、数量“500”のトークンがあるとする。なお、メモ欄の番号は保管管理対象となるトークンと分解した一時的処理データとを関連づけるための識別番号である。
(a1)トークン
上記(a1)に示す所定量(ここでは全数量“500”)のトークンに対し、下記(a2)に示すように、価値構成要素が分解され(ここでは、銘柄が未設定、価格が“0”又は未設定で、数量のみが“500”と設定され)、メモ欄に銘柄及び価格を暗号化して記録された一時的処理データのトランザクションを暗号鍵(償却鍵)で承認する。このとき、下記(a3)に示すように、トークンは償却する。
(a2)一時的処理データ
(a3)一時的データ作成後のトークン
なお、上記(a2)の一時的処理データにおけるメモ欄に暗号化して記録したデータ(ここでは銘柄“A”、価格“100”)は、メモ欄の代わりに、業務システム上のデータベース(管理テーブル)に、例えば、“11234-A-100”のように記録してもよい。
【0039】
(例1)-2 分解して保管管理している一時的処理データをトークンに戻す場合
下記(b1)に示す、銘柄が未設定、価格が“0”又は未設定で、数量のみが“500”と設定され、メモ欄に銘柄及び価格を暗号化して記録された一時的処理データに対し、数量“500”を用いるとともに、メモ欄を複号化して、あるいは管理テーブルから銘柄“A”及び価格“100”を得ることで、下記(b2)に示す価値構成要素の全てが揃ったトークンの発行トランザクションを暗号鍵(発行鍵)で承認する。このとき、下記(b3)に示すように、一時的処理データは償却する。また、業務システム上のデータベース(管理テーブル)に、一時的処理データの価格や銘柄が記録されている場合は、当該データを削除する。
(b1)一時的処理データ
(b2)トークン
(b3)トークンに戻した後の一時的処理データ
【0040】
(例2)-1 所定量保管管理している一時的処理データの一部を用いてトークンを発行する場合
例えば、下記(c1)に示すように、銘柄が未設定、価格が“0”又は未設定で、数量のみが“5000”と設定された一時的処理データがあるとする。なお、銘柄は当該一時的処理データの保管管理アドレスX1自体に設定されているものとする。
(c1)一時的処理データ
上記(c1)に示す一時的処理データに対し、数量“5000”のうちの数量“500”、当該一次処理データの保管管理アドレスX1に設定されている銘柄“A”を用いるとともに、そのときに例えば指定された価格(ここでは“100”)を設定することで、下記(c2)に示す価値構成要素の全てが揃ったトークンの発行トランザクションを暗号鍵(発行鍵)で承認する。このとき、下記(c3)に示すように、一時的処理データの数量“5000”からトークン発行分の数量“500”を削減する。
(c2)トークン
(c3)トークン発行後の一時的処理データ
【0041】
(例2)-2 トークンを償却し、一時的処理データに戻す場合
下記(d1)に示す、銘柄“A”、価格“100”、数量“500”のトークンに対し、下記(d2)に示すように、価値構成要素が分解され(ここでは、銘柄が未設定、価格が“0”又は未設定で、数量のみが“500”加算されて“5000”と設定され)た、一時的処理データのトランザクションを暗号鍵(償却鍵)で承認する。このとき、下記(d3)に示すように、トークンは償却する。
(d1)トークン
(d2)一時的処理データ
(d3)一時的処理データに戻した後のトークン
【0042】
2-4.発行され、または戻されたトークンの移動
次に、本発明の基幹プラットフォームにおける、発行され、または戻されたトークンの、別のアドレスへの移動処理の例について説明する。
例えば、ブロックチェーン上の発行管理テーブルまたはスマートコントラクト内の処理プログラムに、次の表2のように移動先が制限されたアドレスが記録されている場合、スマートコントラクトは、表2に示す条件のとおりに処理する。
【表2】
【0043】
(例3)トークン発行後の移動
(e1)トークンの保管管理アドレス、及び秘密鍵を管理するインターネット環境
アドレスY1の鍵(移動鍵)で移動トランザクションを承認する。なお、処理の自動化のためアドレスY1はスマートコントラクト内処理プログラムに記録されているのが好ましい。
(e2)トークンの移動先アドレス、及び秘密鍵を管理するインターネット環境
アドレスY1の鍵(移動鍵)を用いて移動トランザクションを承認した場合、トークンを移動できるアドレスはアドレスY2に制限される。
【0044】
(例4)トークン移動後の未確定アドレスへのデータ移動
本例は、取引所が取引者からトークンの引出し(出庫)依頼を受けたとき、取引者の指定したアドレスにトークンを送る場合の例である。
本例では、上記アドレスY2にアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されている環境(第1のウォレット)であるとする。なお、アドレスY2のトークンは、その前段階として、一時的処理データが別のアドレスに保管管理されており、その一時的処理データから所定量の必要分(ここでは数量“500”)のトークンが発行され、アドレスY2に移動されているものとする。
(f1)トークンの保管管理アドレス、及び秘密鍵を管理するインターネット環境、トークンの保管管理数量
例えば、ブロックチェーン上の移動管理テーブルまたはスマートコントラクト内の処理プログラムに、次の表3のように移動先の制限されたアドレスが記録されている場合、スマートコントラクトは、表3に示す条件のとおりに処理する。
【表3】
このような条件下で、例えば、アドレスY2から、取引者の指定した移動先アドレスY4に数量“100”のトークンを移動する場合、アドレスY2にアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境がインターネット接続されている環境(第1のウォレット)下において、移動トランザクションを作成し、秘密鍵で承認し、承認したトランザクションをブロックチェーンのネットワークに送信することによって行う。
詳しくは、スマートコントラクトにより、数量“100”のトークンの移動先アドレスY3への移動を指示するトランザクションを作成し、秘密鍵で承認する。
本例においては、トークン保管管理アドレスY2にアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されている環境(第1のウォレット)であるが、この秘密鍵を外部から盗まれても移動先アドレスがアドレスY3に制限されているため、トークンが他のアドレスに移動されることによって流出する虞は生じない。
(f2)トークンの移動先アドレス、及び秘密鍵を管理するインターネット環境、トークンの移動数量
移動先アドレスY3への移動処理が実行されると、処理を引き継いだスマートコントラクトは、アドレスY3に対し、移動先アドレスY4へ数量“100”のトークンを移動するトランザクションを作成し、即座に秘密鍵で承認する。
あるいは、スマートコントラクトは、アドレスY3内を定期的に(例えば1分のインターバル等をおいて)、参照・確認し、アドレスY3に数量“100”のトークンが移動してきたことが確認できたときに、トランザクションを作成し、即座に秘密鍵で承認する。
(f3)トークンの移動先アドレス、及び秘密鍵を管理するインターネット環境、トークンの移動数量
本例においては、移動先アドレスY3にアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されている環境(第1のウォレット)であるが、常に、必要分のトークンのみが、保管管理アドレスY2から送られ、送られたとき即座にこの秘密鍵を用いて移動先アドレスY4への移動処理が行われるため、トークンを他のアドレスに移動されるリスクは低減されている。また、本例において、トークンを移動先アドレスY4に移動するまでのアドレスY2、Y3にアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されている環境(第1のウォレット)であるため、取引者のアドレスへのトークンの移動を、人手を介することなく自動的に処理できる。
【0045】
(例5)トークンを一時的処理データに戻さずにそのまま保管管理する場合
上記(例1)-1、(例2)-2では、トークンを償却し、一時的処理データに戻す場合の例を示したが、本発明の基幹プラットフォームにおいては、トークンを償却しないで、スマートコントラクトを用いて保管管理することも可能である。本例では、そのようにスマートコントラクトを用いてトークンを保管管理する例を説明する。
詳しくは、トークンを買い戻した場合、取引所は、買戻し先であるトークン発行体にトークンを移動するときの移動先アドレスを、トークン発行体が所有するスマートコントラクトのトークン保管管理アドレスにし、買い戻したトークンが、このスマートコントラクトに記録されたトークン保管管理アドレスにおいて管理されるようにする。そして、トークン発行体が、その後にトークンを売却し、売却したトークンの出庫要求を受けた場合に、このスマートコントラクトに対してトークンの移動処理を指示することで、このスマートコントラクトが管理している所定の移動先アドレスへ、出庫要求に相応する数量のトークンが移動するようにする。
本例では、一時的処理データを用いてトークンを発行することなく、スマートコントラクトに記録された保管管理アドレスで保管管理しているトークンをスマートコントラクトに記録された移動先アドレスに移動することができる。
なお、本例のトークン移動処理において、スマートコントラクトに記録された保管管理アドレスで保管管理しているトークンの数量では不足する場合、その不足分のトークンは、上記(例1)-2、(例2)-1で説明した一時的処理データを用いたトークンの発行を介して、(例3)、(例4)で説明したように、移動先アドレスに移動するようにする。
【0046】
3.日中処理及び日次処理でのトークン発行・償却の流れの例
次に、本発明の基幹プラットフォームにおける、日中処理及び日次処理でのトークンの発行・償却の流れの例について説明する。
取引者(例えば、トークン等の暗号資産交換所)は、顧客とのトークンの取引を行うために、事前に一定量のトークンを、取引所を経由して、トークン発行体から購入する。
取引者はトークンを顧客に販売する。その後、取引者は顧客に販売するトークンが不足してきたときに、トークン発行体からトークンを、取引所を経由して、追加で購入する。
そのために、取引者は、事前に、トークン購入用の現金を取引所の取引者用委託現金管理口座に預入するとともに、顧客への販売用のトークンの一部を取引所の取引者用委託トークン管理口座に預入する。
一方、トークン発行体は、現金もトークンも取引所の発行体用委託管理口座等には預入しない。
なお、取引所の委託管理口座等には、後述のとおり、総合口座の配下に取引口座があるものとする。また、便宜上、ここでの例からは除外するが、取引所の委託管理口座等には、取引口座のみが存在する場合もあり得る。
【0047】
本例では、図4(a)に示すように、取引者は前日の時点で、取引所の取引者用委託現金管理口座のうちの現物取引口座に金額“1000”の現金を預入しているとともに、取引所の取引者用委託トークン管理口座のうちの現物取引口座に数量“400”のトークンを預入しているものとする。
また、ブロックチェーン上では、取引者が取引所に預入している数量“400”のトークンは、前日の日次処理(バッチ処理)において、インターネット接続されていない状態で当該トークンにアクセスするための秘密鍵を管理する第2のウォレットに対応する、取引所の取引者用委託口等トークン管理用の固定アドレスに送られているものとする。
【0048】
3-1.日中処理でのトークン発行・償却の流れの例
日中処理では基本的にリアルタイムで処理を行う。
ここで、当日に、取引者が数量“100”のトークンを購入し、金額“100”の現金を支払ったとする。このとき、図4(a)に示すように、取引所の取引者用委託現金管理口座のうちの現物取引口座での現金は金額“900”、取引者用委託トークン管理口座のうちの現物取引口座でのトークンは数量“500”となる。また、トークンを売った分が、取引所の発行体用委託トークン管理口座のうちの現物取引口座においてマイナス(数量“-100”)となるとともに、取引所の発行体用委託現金管理口座のうちの現物取引口座においてプラス(金額“100”)となる。
【0049】
次に、取引者が、数量“300”のトークンの引出し(出庫)の要求をしたとする。
それに先立ち、図4(b)に示すように、取引者用委託トークン管理口座のうちの現物取引口座の数量“500”のトークンのうち数量“300”のトークンを取引者用委託トークン管理口座のうちの総合口座に振り替える。
次に、数量“300”のトークンを取引者用委託トークン管理口座のうちの総合口座から引き出す。
このとき、インターネット接続されていない状態で当該トークンにアクセスするための秘密鍵を管理する第2のウォレットに対応する、取引所の取引者用委託口等トークン管理用の固定アドレスに送られている数量“400”のトークンを用いるには、人為的な操作が必要となり自動的な処理は行うことができない。
そこで、本発明の基幹プラットフォームでは、取引所が、トークン発行体に対し、トークンの発行依頼を行い、一時的にトークン発行体からトークンを貸してもらい、借りたトークンを取引者のアドレスに送付し、その後の日次処理で、トークンの発行が過剰となっている場合には、トークンをトークン発行体に返却するようにしている。
【0050】
詳しくは、本例では、取引所が、トークン発行体に対し数量“300”のトークンの発行依頼をする。トークン発行体は、数量“300”の一時的処理データの第1価値構成要素と、第2価値構成要素設定データ管理手段により管理されている当該トークンに対応するデータの第2価値構成要素と、を用いて、価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量が揃った数量“300”の当該トークンを発行するとともに、一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する一時的処理データの数量(数量“300”)を当該トークンの発行数量(数量“300”)分削減し、同時に、所定アドレス(取引所経由の場合は取引所、直接送付の場合は取引者)に当該トークンを移動するトランザクションを作成する。なお、ここでは、第2価値構成要素設定データ管理手段により管理されている当該トークンに対応するデータの第2価値構成要素である価格は、特定のロジックに従った所定値が設定されているものとする。また、トークンの具体的な発行処理については上述のとおりである。
このとき、取引所の発行体用委託トークン管理口座のうちの総合口座には、図4(c)に示すように、トークン発行による取引所への入庫分として数量“300”のトークンが加算される。また、取引所の取引者用委託トークン管理口座のうちの総合口座から出庫分として数量“300”のトークンが減算される。
【0051】
ブロックチェーン上では、トークン発行体の所定アドレスに対する、数量“300”の当該トークンの発行、数量“300”の当該トークンの移動(“-300”)が記録されたトランザクションが作成、承認されるとともに、取引者の移動先アドレスへの数量“300”の当該トークンが記録されたトランザクションが作成、承認される。また、取引者の移動先アドレスへの数量“300”の当該トークンの移動に伴い、取引所の取引者用委託口等アドレスにおいて、前日までに預かっていた取引者のトークンの数量“400”が“100”に減算されるとともに、取引所の発行者用委託口等アドレスにおいて、トークン発行体のトークンの数量が、取引者の移動先アドレスへの数量“300”の当該トークンの移動のために、貸してもらうことによって発行したトークンの数量“300”が加算される。
取引者の移動先アドレスへの数量“300”の当該トークンの移動は、トークン発行体による数量“300”の当該トークンの発行後、移動先アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されている環境(第1のウォレット)にある取引所の所定アドレス(取引所の自己アドレス)を経由して、取引者のアドレスに移動することによって、または当該トークンの発行後、取引者のアドレスへ直接送付することによって行う。
なお、図4(c)に示す取引所の委託口等トークン管理アドレスは、移動先アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されていない環境(第2のウォレット)にある。
【0052】
3-2.日次処理でのトークン発行・償却の流れの例
日次処理(バッチ処理)は、日中処理を行わなかった残りの処理分について、1日の終わりに行う処理(ただし、日中処理が完全に個別単位でリアルタイム処理となる場合は、不要になるロジックとなる)である。日次処理では、所定時刻(例えば、深夜0時)に前日分の売買を集計、清算し、取引所とトークン発行体との間で、相互に、過不足分の現金とトークンの移動を行う。そして、取引所においてトークン発行体のトークンが売り超過の場合は、トークン発行体からトークンを自動的に発行・送付してもらうようにし、取引所においてトークン発行体のトークンが買い超過の場合は、トークン発行体に対し、トークンを自動的に償却またはトークンを一時的処理データに分解して返却を行う。
上記の日中処理により、取引所の発行体用委託現金管理口座には、図4(d)に示すように、現物取引口座に金額“100”の現金が預入されている。また、取引所の発行体用委託トークン管理口座には、現物取引口座に数量“-100”、総合口座に“300”のトークンが預入されている。これら現物取引口座、総合口座に預入されている現金、トークンを相殺、清算すると、取引所の発行体用委託現金管理口座には、合計で金額“100”の現金、取引所の発行体用委託トークン管理口座には、合計で数量“200”のトークンが預入されている。即ち、本例では、取引所においてトークン発行体のトークンが数量“200”買い超過となっている。
そこで、日次決済処理では、金額“100”の現金を取引所の発行体用委託現金管理口座から発行体の銀行口座に送金するとともに、例えば、上記(例1)-1、(例2)-2で説明したのと同様に、数量“200”のトークンを一時的処理データに分解する。あるいは、上記(例5)で説明したように、トークン発行体が所有するスマートコントラクトのトークン管理用アドレスにおいて数量“200”のトークンが管理されるように、トークンを移動する。
【0053】
さらに、本発明の基幹プラットフォームにおける日中処理、日次処理でのトークン発行・償却の流れの例を説明する。
3-3.トークン発行処理(日中出庫)の例
図5は、本発明の基幹プラットフォームにおける日中処理での取引者からのトークンの出庫要求があった場合のトークン発行処理の流れの一例を示す説明図である。
なお、当該処理はリアルタイムで行えるが、その場合は、出庫要求はなく、常に処理が発生する都度に出庫分が自動的に処理されることになる。
本例では、トークン発行体は、発行・償却鍵を用いてトークン発行体の一時的処理データ保管管理アドレスに一時的処理データを事前発行してある。ここで、取引者が取引所の業務(取引)システムを介してトークンを購入し、所定数量のトークンの出庫を指示しているものとする。
取引所の業務(取引)システムは、例えば、残高参照アプリケーションインターフェース(API)を介してデータベース(本例では、残高約定管理出庫依頼テーブル及び清算用テーブル)に記録された清算データ(トークン)を確認するとともに、資金の移動を確認し、トークンを自動で発行し、取引者アドレスに自動で送付する。
詳しくは、取引所の業務(取引)システムは、トークン残高及び現金の状況を確認の後、トークン発行体に対し、トークンの発行依頼を行う。トークン発行体は、発行・償却鍵を用いてトークンの発行契約を執行し、一時的処理データを保管管理するトークン発行体の一時的処理データ保管管理アドレスにアクセスし、ブロックチェーン上において一時的処理データの第1価値構成要素と、第2価値構成要素設定データ管理手段により管理されている当該トークンに対応するデータの第2価値構成要素(ここでは、移動平均価格を例としているが、特定の決められたロジックに従った価格、当然ながらリアルタイム処理の場合は、取引価格がそのまま記録対象になる。)と、を用いて、価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量が揃ったトークンをトークン発行体の所定の移動先アドレスに発行するとともに、一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する一時的処理データの数量を当該トークンの発行数量分削減する。トークン発行体の所定の移動先アドレスに発行されたトークンは、移動スマートコントラクトにより、即座に取引所の取引者用委託口等アドレスまたは取引者のアドレスへ移動される。
なお、本例では、一時的処理データを保管管理するトークン発行体の一時的処理データ保管管理アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されていない環境(第2のウォレット)にあり、トークンの発行後、移動先アドレスが、トークン発行体が所有するスマートコントラクトのトークン保管管理アドレスであり、トークン保管管理アドレスからのトークンの移動先アドレスである取引所の取引者用委託口等トークン管理アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されていない環境(第2のウォレット)にある。
【0054】
3-4.トークン発行処理(日次清算)の例
図6は、本発明の基幹プラットフォームにおける日次処理でのトークン発行処理の流れの一例を示す説明図である。
本例では、取引所の業務(取引)システムは、業務(取引)システムでの約定結果と決済データとを突き合わせ、取引所におけるトークン発行体のトークンが売り超過の場合に、トークン発行体からトークンを自動的に発行・送付してもらう。トークン発行体は、発行・償却鍵を用いて、一時的処理データを保管管理するトークン発行体の一時的処理データ保管管理アドレスにアクセスし、ブロックチェーン上において一時的処理データの第1価値構成要素と、第2価値構成要素設定データ管理手段により管理されている当該トークンに対応するデータの第2価値構成要素と、を用いて、価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量が揃ったトークンをトークン発行体のトークン保管管理アドレスに発行し、発行したトークンを即座に取引所の取引者用委託口等アドレスへ移動するとともに、一時的処理データ管理手段により管理されている当該トークンに対応する一時的処理データの数量を当該トークンの発行数量分削減する。取引所は、移動鍵を用いて取引所の取引者用委託口等アドレスから取引者のアドレスへトークンを移動する。
なお、本例では、一時的処理データを保管管理するトークン発行体の一時的処理データ保管管理アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されている環境(第1のウォレット)にあり、トークンを保管管理するトークン発行体のトークン保管管理アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されている環境(第1のウォレット)にあり、トークン発行体アドレスからのトークンの移動先アドレスである取引所の取引者用委託口等トークン管理アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されていない環境(第2のウォレット)にある。
【0055】
3-5.トークン償却処理(日次清算)の例
図7は、本発明の基幹プラットフォームにおける日次処理でのトークン償却処理の流れの一例を示す説明図である。
本例では、取引所の業務(取引)システムは、業務(取引)システムでの約定結果と決済データとを突き合わせ、取引所におけるトークン発行体のトークンが買い超過の場合に、移動鍵を用いて取引所の発行体用委託口等アドレスからトークンをトークン発行体アドレスへトークンを移動する。ここでは、取引所からトークン発行体アドレスへトークンが移動された場合、発行体は、必ず現金でトークンを買い戻し、トークンを自動で償却する契約となっているものとする。トークン発行体は、発行・償却鍵を用いて、トークン発行体アドレスに移動されたトークンを自動で一時的処理データに分解する。
詳しくは、取引所は、移動鍵を用いて、トークンが保管管理されている取引所の発行体用委託アドレスにアクセスし、数量“300”のトークンを、トークン発行体のトークン保管管理アドレスに移動する。トークン発行体のトークン保管管理アドレスに移動した数量“300”のトークンは、自動償却スマートコントラクトにより、即座に数量“300”の一時的処理データに分解されて償却される。分解された一時的処理データは、トークン発行体の一次的処理データ保管管理アドレスにて管理される。
なお、本例では、一時的処理データを保管管理するトークン発行体の一時的処理データ保管管理アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されている環境(第1のウォレット)にあり、トークンを保管管理するトークン発行体のトークン保管管理アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されている環境(第1のウォレット)にあり、取引所の取引者用委託口等トークン管理アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されていない環境(第2のウォレット)にある。
【0056】
3-6.トークンを償却しないで管理する場合(日中出庫)の例
図8は、本発明の基幹プラットフォームにおける日中処理での取引者からのトークンの出庫要求の数量が、トークン買戻し時にトークンを償却しないで保管管理していた数量を超えた場合のトークン発行処理の流れの一例を示す説明図である。
本例では、トークン発行体が所有するスマートコントラクトのトークン管理用アドレスにトークンの残高が“300”、トークン発行体のアドレスに一時的処理データの残高が“1000”であるときに、日次処理において、取引所から数量“500”のトークンの出庫要請があるものとする。
取引所の業務(取引)システムは、例えば、残高参照アプリケーションインターフェースを介してデータベース(本例では、残高約定管理出庫依頼テーブル及び清算用テーブル)に記録された清算データ(トークンの数量)を確認するとともに、資金の移動を確認の後、トークン発行体に対し、取引所へのトークンの出庫指示を行う。トークン発行体は、発行・償却鍵を用いて、トークンの発行契約を執行し、トークンの発行を管理するスマートコントラクトにおけるトークンの残高“300”を確認し、移動スマートコントラクトにより、数量“300”のトークンを取引所の取引者用委託口等アドレスに移動するとともに、不足分である数量“200”のトークンの発行を発行スマートコントラクトに指示する。発行スマートコントラクトは、トークン発行体のアドレスに保管管理されている数量“1000”の一時的処理データのうち、数量“200”の一時的処理データを削減するとともに、ブロックチェーン上において一時的処理データの第1価値構成要素と、第2価値構成要素設定データ管理手段により管理されている当該トークンに対応するデータの第2価値構成要素と、を用いて、価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量が揃った数量“200”のトークンをトークン発行体のトークン保管管理アドレスに発行し、発行した数量“200”のトークンを即座に取引所の取引者用委託口等アドレスに移動し、次いで、取引所の取引者用委託口等アドレスに移動した数量“500”のトークンを即座に取引者のアドレスに移動する。
なお、本例では、一時的処理データを保管管理するトークン発行体の一時的処理データ保管管理アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されている環境(第1のウォレット)にあり、トークンの発行後、移動先アドレスが、トークン発行体が所有するスマートコントラクトのトークン保管管理アドレスであり、トークンを保管管理するトークン発行体のトークン保管管理アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されている環境(第1のウォレット)にあり、トークン発行体アドレスからのトークンの移動先アドレスである取引所の取引者用委託口等トークン管理アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されている環境(第1のウォレット)にある。
【0057】
4.本発明の基幹プラットフォームの特徴的な構成を適用した実施形態の一例
次に、本発明の基幹プラットフォームの特徴的な構成を適用した実施形態について図面を用いて説明する。
図9は本発明の実施形態にかかる基幹プラットフォームの全体構成を模式的に示すブロック図である。
【0058】
本実施形態の基幹プラットフォームは、トークン発行体50と取引所60と外部取引者70の夫々に備わる業務アプリケーションと、夫々の業務アプリケーションに接続するブロックチェーンプラットフォーム80を備えて構築されている。
【0059】
トークン発行体50は、業務アプリケーションとしてトークン発行システム51を備えている。図9中、52はトークン発行システムにおいて一時的処理データの発行量を管理するデータベースである。53はHSM(Hardware Security Module:秘密鍵を保管し、外部からの攻撃から防御するとともに、インターネット接続されていない環境で所定アドレスにアクセスする秘密鍵を管理する第2のウォレットからトークンを取り出す際に、秘密鍵を取り出すことなく秘密鍵にて電子署名を行うハードウェア)である。
【0060】
取引所60は、業務アプリケーションとして、取引システム61、トークン発行・償却依頼システム62、トークン入出庫システム63、精算システム64、インターネット接続されていない環境(第2のウォレット)で所定アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するウォレットシステム65を備えている。
【0061】
取引システム61は、クロッシング取引、在庫調達、アカウント登録、本人確認、買い/売り、入出金管理等の処理手段を備えている。
図9中、66は取引所60の業務アプリケーションにおいて自己及び委託先のトークン及び預り金を管理するデータベースである。67はHSMである。
【0062】
ブロックチェーンプラットフォーム80は、ノード(機器)とソフトウェアとで構成される。
【0063】
ノードとしては、合意形成を行うための複数のコアノード81、残高や履歴を検索するためのインデックスノード82、バックアップ用途のアプリケーションノード(図示省略)を有している。
【0064】
ソフトウェアとしては、コンセンサスアルゴリズム(図示省略)、ウォレットツール(図示省略)、インデクサ(図示省略)、スマートコントラクト83、管理テーブル84を有している。
ウォレットツールは、トランザクションを生成し、ブロックチェーンネットワークに対して送信する機能、秘密鍵を管理する機能、及び残高を参照する機能を備えている。
【0065】
スマートコントラクト83は、トークンの発行・償却や、トークンの移動制御を行う機能を備えるように夫々構成されている。
【0066】
管理テーブル84としては、資産の状態、状況を管理する資産管理テーブル84aと、アクセスコントロールの機能を持ったエンティティテーブルとして、アドレス管理テーブル84bを有している。
資産管理テーブル84aは、一時的処理データ管理テーブル(図示省略)とトークン管理テーブル(図示省略)を有している。
一時的処理データ管理テーブルは、一時的処理データの所有者を表す公開鍵をキーとして一時的処理データの残高を管理する。
トークン管理テーブルは、トークンの所有者を表す公開鍵をキーとしてトークンの残高を管理する。
アドレス管理テーブル84bは、公開鍵をキーとして例えば、トークン発行体、取引所(自己)、委託、取引者などのアドレスを管理する。
【0067】
各管理テーブル84a、84bは、任意のトランザクション、任意のスマートコントラクト83により、レコード単位で作成、更新されるように構成されている。
【0068】
そして、本実施形態の基幹プラットフォームにおける業務アプリケーションにおける所定の構成とブロックチェーンプラットフォームにおける所定の構成とが相俟って、図2に示した本発明の一時的処理データ管理手段11と、第2価値構成要素設定データ管理手段12と、トークン発行手段13と、トークン償却手段14を構成し、上記2.~3.で説明した、トークンの発行・償却、移動を行う機能を備えている。
【0069】
次に、本実施形態の基幹プラットフォームにおけるトークン発行手段13、トークン償却手段14の処理を説明する。
【0070】
まず、トークン発行体50が、トークン発行システム51を介して、一時的処理データの発行を要求したとする。
このとき、ブロックチェーン上では、資産管理テーブル84aに、トークン発行体50の一時的処理データ保管管理アドレスをキーとし、発行する一時的処理データの数量を加算した、一時的処理データの残高をバリューとする一時的処理データ管理テーブルのデータを作成する。
【0071】
次に、トークン発行体50が、トークン発行システム51を介して、一時的処理データの移動を要求したとする。
このとき、ブロックチェーン上では、資産管理テーブル84aに作成されている、トークン発行体50の一時的処理データ保管管理アドレスをキーとした一時的処理データ管理テーブルのデータにおける一時的処理データの残高から、移動する一時的処理データの数量を減算する。
【0072】
次に、取引所60が、トークン発行体50により移動を要求された一時的処理データを受け付けたとする。
このとき、ブロックチェーン上では、資産管理テーブル84aに、取引所60の一時的処理データ保管管理アドレスをキーとし、トークン発行体50により移動を要求された一時的処理データの数量を加算した、一時的処理データの残高をバリューとする一時的処理データ管理テーブルのデータを作成する。
【0073】
次に、取引者70がトークンの購入要求をしたとする。
このとき、取引所60の取引システム61におけるトークンの購入要求をした取引者70による代金の支払い完了をトリガーとして、当該取引分に相応する数量の一時的処理データを、価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量が揃ったトークンに変換し、変換したトークンを発行する。
また、ブロックチェーン上の資産管理テーブル84aに作成されている、取引所60の一時的処理データ保管管理アドレスをキーとした一時的処理データ管理テーブルのデータにおける一時的処理データの残高から、当該取引分に相応する一時的処理データの数量を減算する。
また、ブロックチェーン上の資産管理テーブル84aに作成されている、取引所60のトークン保管管理アドレスをキーとし、一時的処理データの減算分に相応するトークンの数量を加算した、トークンの残高をバリューとするトークン管理テーブルのデータを作成する。
【0074】
次に、発行したトークンを、即座に当該取引者70の送金先アドレスに移動する。
このとき、ブロックチェーン上の資産管理テーブル84aに作成されている、取引所60のトークン保管管理アドレスをキーとしたトークン管理テーブルのデータにおけるトークンの残高から、当該残高に相応するトークンの量を減算する。
また、ブロックチェーン上の資産管理テーブル84aに作成されている当該取引者70のトークン保管管理アドレスをキーとし、取引所60のトークン保管管理アドレスをキーとしたトークン管理テーブルのデータにおける、トークンの減算分に相応するトークンの量を加算した、トークンの残高をバリューとするトークンのデータを作成する。
【0075】
なお、このトークンの移動は、トークンの購入要求をした取引者70によるトークンの引出し(出庫)要求の有無に応じて、2つのルートを経由して行う。
第1のルートは、当該取引者70によるトークンの引出し(出庫)要求があった場合の移動ルートである。第1のルートでは、変換したトークンを、取引所60における、移動先アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されている環境(第1のウォレット)に対応する自己口座等の固定アドレスに移動し、該自己口座等の固定アドレスに移動したトークンを、即座に当該取引者70における、移動先アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されていない環境(第2のウォレット)に対応する送金先固定アドレスに移動する。
第2のルートは、当該取引者70によるトークンの引出し(出庫)要求がなく、取引所60の委託先口座で管理する場合の移動ルートである。第2のルートでは、変換したトークンを、取引所60における、移動先アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されていない環境(第2のウォレット)に対応する当該取引者委託口座等の固定アドレスに移動する。
【0076】
これらの一時的処理データの発行からトークンの変換、移動に至るまでのトークンの流れの例を、図10図11を用いてさらに詳しく説明する。
【0077】
(1)トークンの購入要求をした取引者によるトークンの引出しの要求があった場合のトークンの流れ(第1のルート)の例
図10は本実施形態の基幹プラットフォームにおける取引者70によるトークンの購入、及び引出し(出庫)要求があった場合の日中の随時精算処理でのトークンの流れの一例を示す説明図である。
【0078】
予め、取引所60は、トークン発行・償却依頼システム62を介して、トークン発行体50に対し、取引者70との間のトークンの需給バランスを取りうる所定量の一時的処理データの発行依頼を行う。すると、図10に示すように、トークン発行体50が、トークン発行システム51を介して、一時的処理データの発行を要求する。なお、ここでは、便宜上、発行する一時的処理データの数量を“100”とした場合について説明することとする。
このとき、ブロックチェーン上では、資産管理テーブル84aにトークン発行体50の一時的処理データ保管管理アドレスをキーとし、発行する一時的処理データの数量“100”を加算した、一時的処理データの残高をバリューとする一時的処理データ管理テーブルのデータを作成する。このときのブロックチェーン上のトークン発行体50の一時的処理データ保管管理アドレスをキーとした一時的処理データ管理テーブルのデータにおける一時的処理データの残高は、“100”である。
【0079】
次に、トークン発行体50は、トークン発行システム51を介して、一時的処理データの移動を要求する。
このとき、ブロックチェーン上では、資産管理テーブル84aに作成されている、トークン発行体50の一時的処理データ保管管理アドレスをキーとした一時的処理データ管理テーブルのデータにおける一時的処理データの残高“100”から、移動する一時的処理データの数量“100”を減算する。
【0080】
次に、取引所60は、トークン発行・償却依頼システム62を介して、トークン発行体50により移動を要求された一時的処理データを受け付ける。
このとき、ブロックチェーン上では、資産管理テーブル84aに、取引所60の一時的処理データ保管管理アドレスをキーとし、トークン発行体50により移動を要求された一時的処理データの数量“100”を加算した、一時的処理データの残高をバリューとする一時的処理データ管理テーブルのデータを作成する。
【0081】
次に、取引所60は、取引システム61を介して、取引者70(の図示しない業務システム)による数量“50”のトークンの購入要求を受け付ける。
このとき、取引所60の取引システム61側では、データベース66における当該取引者70の委託預り金管理口座のデータにおいて、数量“50”のトークンに相当する代金を減算するとともに、取引所60の自己管理口座のデータを経由して、トークン発行体50の委託預り金管理口座のデータに、数量“50”のトークンに相当する代金を加算する。これにより、取引所60の取引システム61における当該取引者70による代金の支払いが完了する。
【0082】
取引所60の取引システム61における当該取引者70による代金の支払い完了をトリガーとして、当該取引分に相応する数量“50”の一時的処理データを、価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量が揃ったトークンに変換し、変換したトークンを発行する。
このとき、ブロックチェーン上では、資産管理テーブル84aに作成されている、取引所60の一時的処理データ保管管理アドレスをキーとした一時的処理データ管理テーブルのデータにおける一時的処理データの残高“100”から、移動する一時的処理データの数量“50”を減算し、次に、資産管理テーブル84aに作成されている、取引所60の、移動先アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されている環境(第1のウォレット)に対応する自己口座等で固定のトークン保管管理アドレスをキーとして、一時的処理データの減算分に相応するトークンの数量“50”を加算した、トークンの残高をバリューとするトークン管理テーブルのデータを作成する。
【0083】
次に、自己口座等で固定のトークン管理アドレスに移動したトークンを、即座に当該取引者70における、移動先アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されていない環境(第2のウォレット)に対応する送金先固定アドレスに移動する。なお、当該取引者70は、図示しないHSMを用いて上記第2のウォレットに対応する送金先固定アドレスの秘密鍵を保管する。また、トークンの引出しのために、上記第2のウォレットからトークンを移動させる必要がある場合、ウォレットシステム65を介して、未署名トランザクションを作成し、作成した未署名トランザクションを図示しないHSMに入れ、秘密鍵を取り出すことなくHSM内で秘密鍵にて電子署名を行った後に、署名済みトランザクションを取り出し、ブロックチェーンネットワークに送信する。
【0084】
次に、当該取引者70(の図示しない業務システム)による数量“50”のトークンの引出し(出庫)の要求があったときに、取引所60は、トークン出入庫システム63を介して、データベース66における、トークン発行体50用の委託トークン管理口座、自己(取引所60)トークン管理口座、当該取引者70用の委託トークン管理口座のデータに対し、引出し(出庫)分である数量“50”のトークンの増減処理を行った後、取引所60から当該取引者70に数量“50”のトークンを送付する。
これにより、当該取引者70によるトークンの購入からトークンの引出し(出庫)までの処理が完了する。
【0085】
(2)トークンの購入要求をした取引者のトークンを口座保管する場合(日次精算業務)のトークンの流れ(第2のルート)の例
図11は本実施形態の基幹プラットフォームにおける取引者70によるトークンの購入要求はあるが、引出し(出庫)要求がなく、取引所60の委託先口座で管理する場合の日次精算処理でのトークンの流れの一例を示す説明図である。
【0086】
予め、取引所60は、トークン発行・償却依頼システム62を介して、トークン発行体50に対し、取引者70との間のトークンの需給バランスを取りうる所定量の一時的処理データの発行依頼を行う。すると、図11に示すように、トークン発行体50が、トークン発行システム51において、一時的処理データの発行を要求する。なお、ここでは、便宜上、発行する一時的処理データの数量を“100”とした場合について説明することとする。一時的処理データの発行要求における具体的な処理は、図10を用いて説明した処理と略同じである。
【0087】
次に、トークン発行体50は、トークン発行システム51を介して、一時的処理データの移動を要求する。一時的処理データの移動要求における具体的な処理は、図10を用いて説明した処理と略同じである。
【0088】
次に、取引所60は、トークン発行・償却依頼システム62を介して、トークン発行体50により移動を要求された一時的処理データを受け付ける。一時的処理データの受付における具体的な処理は、図10を用いて説明した処理と略同じである。
【0089】
次に、取引所60は、取引システム61を介して、顧客からの購入要求を受けた取引者70(の図示しない業務システム)による数量“50”のトークンの購入要求を受け付ける。
【0090】
次に、日次精算処理を行う。日次精算処理では、取引所60は、精算システム64を介して、当該取引者70との間での売り注文と買い注文を清算し、当該取引者70の差分(売り越し又は買い越し)の金額又はトークンの数量を、データベース66における当該取引者70の委託預り金管理口座、取引所60の自己資金管理口座、当該取引者70の委託トークン管理口座、取引所60の自己トークン管理口座に加算又は減算する。なお、ここでは、便宜上、日次精算処理における精算後の差分が、当該取引者70による数量“50”のトークンの購入要求分であるものとする。
【0091】
このとき、取引所60の取引システム61では、データベース66における当該取引者70の委託預り金管理口座において、数量“50”のトークンに相当する代金を減算するとともに、取引所60の自己管理口座を経由して、トークン発行体50の委託預り金管理口座に、数量“50”のトークンに相当する代金を加算する。これにより、取引所60の取引システム61における当該取引者70による代金の支払いが完了する。
【0092】
取引所60の取引システム61における当該取引者70による代金の支払い完了をトリガーとして、当該取引分に相応する数量“50”の一時的処理データを、トークンに変換する。
このとき、ブロックチェーン上では、資産管理テーブル84aに作成されている、取引所60の一時的処理データ保管管理アドレスをキーとした一時的処理データ管理テーブルのデータにおける一時的処理データの残高“100”から、移動する一時的処理データの数量“50”を減算し、次に、資産管理テーブル84aに作成されている、取引所60の、移動先アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されていない環境(第2のウォレット)に対応する委託口座等で固定のトークン保管管理アドレスをキーとし、一時的処理データの減算分に相応するトークンの数量“50”を加算した、トークンの残高をバリューとするトークン管理テーブルのデータを作成する。なお、取引所60は、HSM67を用いて上記第2のウォレットに対応する委託口座等の固定アドレスの秘密鍵を保管する。(また、トークンの引出しのために、上記第2のウォレットからトークンを移動させる必要がある場合、ウォレットシステム65を介して、未署名トランザクションを作成し、作成した未署名トランザクションをHSM67に入れ、秘密鍵を取り出すことなくHSM67内で秘密鍵にて電子署名を行った後に、署名済みトランザクションを取り出し、ブロックチェーンネットワークに送信する。)
【0093】
次に、取引所60のデータベース66における、トークン発行体50の委託トークン管理口座、取引所60の自己トークン管理口座に対し、精算後のトークンの購入要求分のトークンの増減処理を経由した後、取引所60における当該取引者70の委託トークン管理口座において、精算後の差分であるトークンの購入要求分である数量“50”のトークンを増加させる。
その後、当該取引者70にトークンの管理口座への送付を通知する。
これにより、当該取引者70によるトークンの購入からトークンの口座保管までの処理が完了する。
【0094】
本実施形態の基幹プラットフォームによれば、トークン発行体50により発行された、トークンのベースとなる所定量の一時的処理データの預け入れを取引所において受け付け、トークン先行販売における、トークンの購入要求をした取引者70による代金の支払い完了をトリガーとして、所定量の一時的処理データのうち、当該取引分に相応する量の一時的処理データを、トークンに変換し、当該取引者70からの引出し(出庫)要求を受けたときには、変換したトークンを、取引所60における、移動先アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されている環境(第1のウォレット)に対応する自己口座等の固定アドレスに移動し、自己口座等の固定アドレスに移動したトークンを、即座に当該取引者70における、移動先アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されていない環境(第2のウォレット)に対応する送金先固定アドレスに移動する第1のルートでの移動を行うようにしたことにより、取引所60におけるトークンの発行と移動を短時間に処理することができ、トークンが大量に発行され流通していく過程における、外部からの攻撃による資産流出のリスクを排除し、安全性を確保することができる。
【0095】
詳しくは、本実施形態の基幹プラットフォームによれば、トークンの発行が必要でないときには、トークンが分解された状態の一時的処理データまたは新規の一時的処理データを保管管理し、トークンの発行が必要なときに、一時的処理データから必要な分の数量のトークンを発行することができる。
ここで、一時的処理データは、トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち、少なくとも数量を含み価格を含まない第1価値構成要素が設定された構成であり、価値がないため、一時的処理データ保管管理アドレスにアクセスする秘密鍵が盗まれて、一時的処理データが外部に移動しても、外部で使用されることがなく、被害を生じない。
また、トークンの発行が必要なときに、一時的処理データから必要な分の数量のトークンを発行することにより、発行したトークンを保管管理する又は発行後に移動する途中のアドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境を、インターネット接続されている環境(第1のウォレット)にしても、発行したトークンを即座に取引者の移動先アドレスに移動することができ、秘密鍵が盗難される危険性をきわめて少なくすることができる。
【0096】
また、当該取引者70からの引出し(出庫)要求を受けたときに、変換したトークンを、取引所60における、移動先アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されている環境(第1のウォレット)に対応する自己口座等の固定アドレスに移動し、自己口座等の固定アドレスに移動したトークンを、即座に当該取引者70における、移動先アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されていない環境(第2のウォレット)に対応する送金先固定アドレスに移動する第1のルートでの移動を行うようにしたことにより、トークンの発行業務が、当該スマートコントラクトにて自動処理され、発行処理時の人為的なミスの防止を含めて、発行業務自体を大幅に効率化することができる。
即ち、発行したトークンを保管管理する又は発行後に移動する途中のアドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境を、インターネット接続されている環境(第1のウォレット)にすることで、人手を介することなく自動的に取引者の移動先アドレスに移動することができ、発行処理を迅速化できる。
【0097】
なお、本実施形態の基幹プラットフォームにおいて、トークンが、スマートコントラクトに記録されたトークン保管管理アドレスにおいて管理されるようにすれば、一時的処理データを用いてトークンを発行することなく、スマートコントラクトに記録された保管管理アドレスで保管管理しているトークンをスマートコントラクトに記録された移動先アドレスに移動することができる。スマートコントラクトに記録された移動先アドレスは限定されており、当該移動先アドレスにしか移動しない。このため、スマートコントラクトのアドレスにアクセスする秘密鍵が盗まれ、盗んだ者がスマートコントラクトを起動しても、外部のアドレスにトークンが移動されてしまう虞がない。
【0098】
従って、本実施形態によれば、外部からの攻撃や不正行為による資産流出の危険性を極力排除し、かつ、リアルタイムの資産移動処理を行い迅速な決済業務を実現することの可能な基幹プラットフォームが得られる。
【0099】
以上、本発明の基幹プラットフォームについて例や実施形態を用いて説明したが、本発明の基幹プラットフォームにおいては、一時的処理データ管理手段が管理する一時的処理データを、トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち少なくとも数量を含み価格を含まない構成とするとともに、第2価値構成要素設定データ管理手段が管理する第2価値構成要素設定データを、当該トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち、少なくとも価格を含み数量を含まない第2価値構成要素が設定された構成としてもよい。
【0100】
また、本発明の基幹プラットフォームにおいては、使用できるトークンの特性として、トークンの価値が例えば、金等の物自体にあり、価格とは無関係に価値を担保できるものを対象としてもよい。その場合は、一時的処理データ管理手段が管理する一時的処理データを、トークンの価値を構成する要素をなす銘柄及び数量のうち、少なくとも数量を含み銘柄を含まない構成とするとともに、第2価値構成要素設定データ管理手段が管理する第2価値構成要素設定データを、当該トークンの価値を構成する要素をなす銘柄及び数量のうち、少なくとも銘柄を含み数量を含まない第2価値構成要素が設定された構成としてもよい。
【0101】
また、上述した本実施形態の基幹プラットフォームでは、日次処理において、取引者の購入要求により、発行されたトークンを保管管理する、取引所の取引者用委託口等トークン保管管理アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境を、インターネット接続されていない環境(第2のウォレット)にしているが、日次処理を行う所定時刻が経過後に、取引者からトークンの引出し要求があった場合において、上記第2のウォレットを用いて、取引所の取引者用委託口等トークン保管管理アドレスに保管管理されているトークンを取引者に送付する代わりに、トークン発行体から取引所の移動先アドレスにアクセスする秘密鍵を管理するインターネット環境が、インターネット接続されていない環境(第2のウォレット)へトークンを自動発行してもらい、即座に発行されたトークンを取引者へ送付するようにしてもよい。
このようにすれば、取引所における営業時間外に取引者からトークンの引出し要求があった場合に、次の営業時間まで待たせることなく、かつ、人手をかけずに、迅速にトークンを取引者へ引き渡すことができる。
【0102】
また、本実施形態の基幹プラットフォームにおいて、所定のアドレスにアクセスする秘密鍵の管理のために、インターネット接続されていない環境(第2のウォレット)となっている、特定の場所に配設された機器を用いる代わりに、例えば、携帯電話等の閉域網を用いるのが好ましい。
このようにすれば、上記第2のウォレットとして秘密鍵を管理する場所を特定の場所にすることなく、どの場所でも秘密鍵を使って対処することが可能となる。
【0103】
また、上述した本実施形態の基幹プラットフォームにおいて、トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量の夫々を、別のブロックチェーンで管理し、トークン発行時には、夫々のブロックチェーンで管理した価値構成要素を合成することによってトークンを発行し、トークン償却時には、トークンを夫々の価値構成要素に分解して、それぞれ別のブロックチェーンで管理するようにしてもよい。
【0104】
また、本発明の基幹プラットフォームにおける特徴的な構成は、トークン発行体がトークンの発行及び償却を行うためのトークン発行・償却用プラットフォームに適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の基幹プラットフォームは、取引所においてトークンの先行販売やトークンを用いた取引を行うことが必要とされる分野に有用である。
【符号の説明】
【0106】
11 一時的処理データ管理手段
12 第2価値構成要素設定データ管理手段
13 トークン発行手段
14 トークン償却手段
50 トークン発行体
51 トークン発行システム
52 データベース
53 HSM
60 取引所
61 取引システム
62 トークン発行・償却依頼システム
63 トークン入出庫システム
64 精算システム
65 ウォレットシステム
66 データベース
67 HSM
70 取引者
80 ブロックチェーンプラットフォーム
81 コアノード
82 インデックスノード
83 スマートコントラクト
84 管理テーブル
84a 資産管理テーブル
84b エンティティテーブル(アドレス管理テーブル)
図1
図2
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図10
図11