(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048834
(43)【公開日】2022-03-28
(54)【発明の名称】クラッチ機構並びに該クラッチ機構を備えたブラインド、鉗子及びラックアンドピニオン装置
(51)【国際特許分類】
F16D 41/08 20060101AFI20220318BHJP
F16D 41/06 20060101ALI20220318BHJP
F16D 41/066 20060101ALI20220318BHJP
F16H 19/04 20060101ALI20220318BHJP
E06B 9/322 20060101ALI20220318BHJP
A61B 17/28 20060101ALN20220318BHJP
【FI】
F16D41/08
F16D41/06 E
F16D41/066
F16H19/04 Z
E06B9/322
A61B17/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154876
(22)【出願日】2020-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000110206
【氏名又は名称】株式会社TOK
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大輔
【テーマコード(参考)】
2E043
3J062
4C160
【Fターム(参考)】
2E043AA01
2E043AA04
2E043BB02
2E043BC01
3J062AA45
3J062AB05
3J062AC07
3J062BA11
3J062BA40
3J062CA15
3J062CA35
4C160GG08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低コストで円滑に動作可能なクラッチ機構並びにクラッチ機構を備えたブラインド、鉗子及びラックアンドピニオン装置を提供する。
【解決手段】クラッチ機構は、入力部材と、出力部材と、出力部材の回転許容方向Dに沿って漸次縮幅するように形成された楔領域Wに配置されたニードルローラ5と、を備えている。出力部材を回転許容方向Dに沿って正回転させる回転力が第2の基部31に入力された場合及び入力部材に回転力が入力された場合には、ニードルローラ5が楔領域Wに噛み込まず、入力部材及び出力部材が一体で回転し、出力部材を回転許容方向Dに対して逆回転させる回転力が第2の基部31に入力された場合、ニードルローラ5が楔領域Wに噛み込んで、入力部材及び出力部材が回転不能にロックされる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1、第2の軸の一方から入力された回転力を他方に伝達する又は回転不能にロックするクラッチ機構であって、
前記第1の軸に接続可能な略板状の第1の基部と、前記第1の基部の側面に周方向に沿って互いに隙間を空けて立設された複数の回動子と、を備えている入力部材と、
前記第2の軸に接続可能な略筒状の第2の基部と、前記第2の基部の外周に周方向に沿って互いに隙間を空けて立設された複数の爪部と、隣り合う前記爪部の間に形成された拡径面と、を備えている出力部材と、
前記回動子及び前記爪部を周方向にずらした状態で、前記入力部材及び前記出力部材を重ねて収容するハウジングと、
前記回動子、前記爪部、前記拡径面及び前記ハウジングの内周面で囲繞されて前記出力部材の回転許容方向に沿って漸次縮幅するように形成された楔領域内に配置された転動体と、
前記爪部と前記転動体との間に介装されて、前記転動体を前記回転許容方向に向けて付勢する付勢手段と、
を備え、
前記出力部材を前記回転許容方向に沿って正回転させる回転力が前記第2の基部に入力された場合及び前記第1の基部に回転力が入力された場合には、前記転動体が前記楔領域に噛み込まず、前記入力部材及び前記出力部材が一体で回転し、
前記出力部材を前記回転許容方向に対して逆回転させる回転力が前記第2の基部に入力された場合、前記転動体が前記楔領域に噛み込んで、前記入力部材及び前記出力部材が回転不能にロックされることを特徴とするクラッチ機構。
【請求項2】
前記ハウジングは、
前記入力部材及び前記出力部材を収容するスリーブと、
前記スリーブを回転不能に保持するケーシングと、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載のクラッチ機構。
【請求項3】
前記拡径面は、前記第2の基部の回転中心に対する曲率半径が前記回転許容方向に向かって徐々に大きくなるように湾曲して形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクラッチ機構。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のクラッチ機構を備えていることを特徴とするブラインド。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のクラッチ機構を備えていることを特徴とする鉗子。
【請求項6】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のクラッチ機構を備えていることを特徴とするラックアンドピニオン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ機構、並びにこのクラッチ機構を備えたブラインド、鉗子及びラックアンドピニオン機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、入力側回転部材からの回転力は出力側回転部材に伝達され、出力側回転部材からの回転力は一方向のみ入力側回転部材に伝達可能なクラッチ機構が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようなクラッチ機構は、スムーズに動作しにくい上に、部品点数が多く且つ各部品の加工難易度が高いため製品コストが高くつくという問題があった。
【0005】
そこで、低コストで円滑に動作可能なクラッチ機構並びにこのクラッチ機構を備えたブラインド、鉗子及びラックアンドピニオン装置を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、本発明に係るクラッチ機構は、第1、第2の軸の一方から入力された回転力を他方に伝達する又は回転不能にロックするクラッチ機構であって、前記第1の軸に接続可能な略板状の第1の基部と、前記第1の基部の側面に周方向に沿って互いに隙間を空けて立設された複数の回動子と、を備えている入力部材と、前記第2の軸に接続可能な略筒状の第2の基部と、前記第2の基部の外周に周方向に沿って互いに隙間を空けて立設された複数の爪部と、隣り合う前記爪部の間に形成された拡径面と、を備えている出力部材と、前記回動子及び前記爪部を周方向にずらした状態で、前記入力部材及び前記出力部材を重ねて収容するハウジングと、前記回動子、前記爪部、前記拡径面及び前記ハウジングの内周面で囲繞されて前記出力部材の回転許容方向に沿って漸次縮幅するように形成された楔領域内に配置された転動体と、前記爪部と前記転動体との間に介装されて、前記転動体を前記回転許容方向に向けて付勢する付勢手段と、を備え、前記出力部材を前記回転許容方向に沿って正回転させる回転力が前記第2の基部に入力された場合及び前記第1の基部に回転力が入力された場合には、前記転動体が前記楔領域に噛み込まず、前記入力部材及び前記出力部材が一体で回転し、前記出力部材を前記回転許容方向に対して逆回転させる回転力が前記第2の基部に入力された場合、前記転動体が前記楔領域に噛み込んで、前記入力部材及び前記出力部材が回転不能にロックされるように構成されている。
【0007】
この構成によれば、入力部材が回転する場合及び出力部材が回転許容方向に沿って正回転する場合には、転動体が楔領域に噛み込まず、入力部材及び出力部材を一体となって回転させることができ、出力部材が回転許容方向に対して逆回転する場合には、転動体が楔領域に噛み込んで、入力部材及び出力部材を回転不能にロックさせることができる。
【0008】
また、本発明に係るクラッチ機構は、前記ハウジングは、前記入力部材及び前記出力部材を収容するスリーブと、前記スリーブを回転不能に保持するケーシングと、を備えていることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るクラッチ機構は、前記拡径面は、前記第2の基部の回転中心に対する曲率半径が前記回転許容方向に向かって徐々に大きくなるように湾曲して形成されていることが好ましい。
【0010】
また、上記課題を達成するために、本発明に係るブラインドは、上述したクラッチ機構を備えている。
【0011】
また、上記課題を達成するために、本発明に係る鉗子は、上述したクラッチ機構を備えている。
【0012】
また、上記課題を達成するために、本発明に係るラックアンドピニオン装置は、上述したクラッチ機構を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡便な構造でスムーズに動作可能なクラッチ機構並びにクラッチ機構を備えたブラインド、鉗子及びラックアンドピニオン装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るクラッチ機構を示す図であり、(a)はキャップを外した状態を示す正面図、(b)はI-I線断面図、(c)は背面図。
【
図3】入力部材を示す斜視図であり、(a)は一方側面側から視た斜視図、(b)は他方側面側から視た斜視図。
【
図9】ニードルローラのロック位置のばらつきに応じて楔角が変動する様子を示す図。
【
図10】クラッチ機構の動作を説明する図であり、(a)はロック状態を示す図、(b)、(c)はロック解除状態を示す図。
【
図11】本発明の一実施形態に係るブラインドを示す図であり、(a)は側面図、(b)はII-II線断面図。
【
図13】本発明の一実施形態に係る鉗子を示す図であり、(a)は正面図、(b)は一部切欠側面図。
【
図14】本発明の一実施形態に係るラックアンドピニオン装置を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0016】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0017】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0018】
なお、本実施形態において、上下や左右等の方向を示す表現は、絶対的なものではなく、各構成要素が図面に描かれている姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0019】
〈クラッチ機構〉
図1は、クラッチ機構1のキャップ7を外した状態を示す正面図、I-I線断面図及び背面図である。
図2は、クラッチ機構1の組立分解図である。クラッチ機構1は、入力部材2と、出力部材3と、ハウジング4と、を備えている。
【0020】
図3(a)、(b)に示すように、入力部材2は、第1の基部21と、回動子22と、を備えている。入力部材2は、自己潤滑性を有する樹脂や焼結金属等で形成されている。
【0021】
第1の基部21は、略円板状に形成されており、一方側面21aに4つの回動子22が形成され、他方側面21bに駆動部23が形成されている。
【0022】
回動子22は、第1の基部21の周方向Cに沿って互いに隙間を空けて一方側面21aに立設されている。回動子22は、正面から視て略扇台形状に形成されている。回動子22の設置数は、4つに限定されず、2つ以上であればクラッチ機構1を安定して動作させることができる。
【0023】
駆動部23は、第1の基部21より小径の略円筒状に形成されており、端面には、周方向Cに沿って等間隔に接続凹部24が形成されている。接続凹部24は、外部の入力軸に係合して接続される。
【0024】
図4に示すように、出力部材3は、第2の基部31と、爪部32と、を備えている。出力部材3は、自己潤滑性を有する高硬度の焼結金属等で形成されている。
【0025】
第2の基部31は、略円筒状に形成されている。第2の基部31の中央には、外部の出力軸が係合する出力孔33が形成されている。
【0026】
4つの爪部32が、第2の基部31の周方向Cに沿って互いに隙間を空けて外周面31aに立設されている。爪部32は、正面から視て略L字状に形成されている。爪部32には、後述するバネ6が収容されるバネ設置凹部34が形成されている。爪部32の設置数は、回動子22の設置数に対応して設定される。
【0027】
隣り合う爪部32の間には、拡径面35が形成されている。拡径面35の詳細については後述する。
【0028】
ハウジング4は、アウタースリーブ41と、ケーシング42と、を備えている。
【0029】
アウタースリーブ41の内部には、回動子22及び爪部32が周方向Cにずれた状態で、入力部材2及び出力部材3が重ねて収容されている。
図5に示すように、アウタースリーブ41の内周面41aは、回動子22の外周面及び爪部32の外周面と摺動可能である。アウタースリーブ41は、自己潤滑性を有する焼結金属等で形成されている。アウタースリーブ41の外周には、全周に亘って形成された凹凸から成る被固定部43が設けられている。
【0030】
図6に示すように、ケーシング42は、アウタースリーブ41を円筒部44内に収容可能である。円筒部44の内部には、凹凸から成り被固定部43を嵌合固定する固定部45が形成されている。
【0031】
ケーシング42の中央に形成された貫通孔46の内周面は、駆動部23の外周面を支持する第1の軸受部47として機能する。また、第1の軸受部47より大径の第2の軸受部48は、第1の基部21の外周面及び回動子22の外周面を支持する。さらに、第1の軸受部47と第2の軸受部48とを接続する支持面49は、第1の基部21の他方側面21bを支持する。ケーシング42は、自己潤滑性を有する樹脂等で形成されている。
【0032】
なお、アウタースリーブ41及びケーシング42は、それぞれ別体で形成されているものに限定されず、アウタースリーブ41及びケーシング42をプレス加工等により一体で形成しても構わない。なお、アウタースリーブ41及びケーシング42を別体で形成した場合には、アウタースリーブ41及びケーシング42を個別に高精度に製造可能である。
【0033】
回動子22と爪部32との間には、転動体としてのニードルローラ5が設けられている。ニードルローラ5の一方端面が、第1の基部21の一方側面21aに摺接し、他方端面が、後述するキャップ7に摺接することにより、ニードルローラ5の両端が支持されてスムーズに転動するようになっている。
【0034】
バネ設置凹部34に収容されたバネ6は、ニードルローラ5を後述する回転許容方向Dに向けて付勢する。
図7に示すように、バネ6は、側面から視て略Z字状に形成された金属製の板バネである。バネ6の端部には、返し61が形成されている。返し61を入力部材2の一方側面21aに向けた状態でバネ6がバネ設置凹部34に挿入されることにより、返し61がニードルローラ5に当接してバネ6の挿入をガイドするため、バネ6をスムーズに組み込むことができる。
【0035】
円筒部44の一方端は、キャップ7により塞がれている。キャップ7は、円筒部44の内周にスナップフィット又は溶着により固定されている。キャップ7は、自己潤滑性を有する樹脂等で形成されている。
【0036】
次に、ニードルローラ5が収容される楔領域Wについて、図面に基づいて説明する。なお、
図8は、クラッチ機構1の要部を示す正面図である。
【0037】
楔領域Wは、回動子22、爪部32、拡径面35及びアウタースリーブ41の内周面41aとで囲繞されている。拡径面35は、正面から視て回転許容方向Dに沿って第2の基部31の回転中心からの曲率半径が徐々に大きくなるように湾曲して形成されている。これにより、楔領域Wの径方向の幅は、回転許容方向Dに沿って漸次狭くなるように設定されている。
【0038】
また、楔領域Wの径方向の幅は、回転許容方向Dの後方側は、ニードルローラ5の幅より広く設定されているのに対して、回転許容方向Dの前方側では、ニードルローラ5の幅より狭く設定されている。これにより、楔領域W内に配置されたニードルローラ5が、回転許容方向Dの後方側では、拡径面35とアウタースリーブ41の内周面41aとに噛み込まず、回転許容方向Dの前方側では、拡径面35とアウタースリーブ41の内周面41aとに噛み込むように構成されている。
【0039】
なお、構成部品の寸法誤差を考慮すると、ニードルローラ5が、拡径面35とアウタースリーブ41の内周面41aとの間に噛み込む位置(ロック位置)は一定ではない。
【0040】
例えば、
図9(a)に示すように、ロック位置が奥過ぎる場合には、楔角(ニードルローラ5及び拡径面35の接線とニードルローラ5及び内周面41aの接線とが成す角度)が、ロック位置が手前過ぎる場合の楔角と比べて大きくなる(鈍角になる)ため、ニードルローラ5が十分に噛み込まず、ロック性能が低下する虞がある。
【0041】
一方、
図9(b)に示すように、ロック位置が手前過ぎる場合には、楔角がロック位置が奥過ぎる場合の楔角と比べて小さくなる(鋭角になる)ため、ニードルローラ5が噛み込み過ぎて、ロックを解除しにくくなる虞がある。
【0042】
しかしながら、拡径面35が上述したような円弧状に形成されていることにより、ニードルローラ5のロック位置のばらつきに伴って楔角が変動しても、安定したロック及びスムーズなロック解除を実現することができる。
【0043】
次に、クラッチ機構1の動作について、図面に基づいて説明する。
図10(a)は、ロック状態を示す模式図である。
図10(b)、(c)は、ロック解除状態を示す模式図である。
【0044】
出力部材3が、回転許容方向Dに対して逆回転する場合には、
図10(a)に示すように、ニードルローラ5が、楔領域W内を相対的に回転許容方向Dの前方側に移動して、拡径面35と内周面41aとの間に噛み込む。このようにして、出力部材3が、アウタースリーブ41に対して回転不能なロック状態になる。
【0045】
入力部材2が、回転許容方向Dに沿って正回転する場合には、
図10(b)に示すように、ニードルローラ5が、楔領域W内を相対的に回転許容方向Dの後方側に移動して、拡径面35と内周面41aとの間には噛み込まず、回動子22が隣接する爪部32に当接した状態で、入力部材2と出力部材3とが一体となって回転する。
【0046】
また、入力部材2が、回転許容方向Dに対して逆回転する場合には、
図10(c)に示すように、回動子22が、ニードルローラ5を回転許容方向Dと逆向きに爪部32に当接するまで移動させるため、ニードルローラ5が拡径面35と内周面41aとの間には噛み込まず、回動子22がニードルローラ5を介して爪部32を押すようにして、入力部材2と出力部材3とが一体となって回転する。なお、ニードルローラ5が出力部材3に接触することにより、バネ6が過度に撓むことを抑制し、バネ6のへたり(塑性変形)を抑制することができる。
【0047】
また、出力部材3が、回転許容方向Dに沿って正回転する場合も、
図10(c)と同様に、爪部32が、ニードルローラ5を回転許容方向Dに沿って回動子22に当接するまで移動させるため、ニードルローラ5が拡径面35とアウタースリーブ41の内周面41aとの間には噛み込まず、爪部32がニードルローラ5を介して回動子22を押すようにして、入力部材2と出力部材3とが一体となって回転する。
【0048】
このようして、本実施形態に係るクラッチ機構1は、入力部材2が回転する場合及び出力部材3が回転許容方向Dに沿って正回転する場合には、ニードルローラ5が楔領域Wに噛み込まず、入力部材2及び出力部材3を一体となって回転させることができ、出力部材3が回転許容方向Dに対して逆回転する場合には、ニードルローラ5が楔領域Wに噛み込んで、入力部材2及び出力部材3を回転不能にロックさせることができる。
【0049】
次に、クラッチ機構1を適用した各種装置について説明する。
【0050】
〈ブラインド〉
図11は、クラッチ機構1を適用したブラインド100の側面図及び断面図である。
図12は、ブラインド100の一部拡大図である。
【0051】
ブラインド100は、駆動部23に接続された操作プーリ101と、出力孔33に接続されたシャフト102と、クラッチ機構1及びシャフト102を所定の位置で支持するヘッドボックス103と、を備えている。
【0052】
操作プーリ101には、操作コード104が掛け回されている。また、シャフト102には、昇降コード105を巻き取り可能な2つのスプール106が装着されている。昇降コード105は、複数のスラット107を支持し、その下端にはボトムレール108が取り付けられている。
【0053】
ユーザが操作コード104を引っ張って操作プーリ101を回転させる場合には、駆動部23を介して入力部材2に回転力が入力されて、入力部材2及び出力部材3が一体となって回転するため、操作プーリ101の回転方向に応じて、昇降コード105が巻き取られてスラット107が上がったり、昇降コード105が繰出されてスラット107が降りたりする。
【0054】
また、スラット107を降ろす向きの外力がシャフト102に作用した場合には、
図10(c)に示すように、出力部材3が回転許容方向Dに沿って正回転し、入力部材2及び出力部材3が一体となって回転するため、シャフト102は回転して、スラット107が降りる。
【0055】
しかしながら、スラット107を上げる向きの外力がシャフト102に作用した場合には、
図10(a)に示すように、出力部材3が回転許容方向Dに対して逆回転し、入力部材2及び出力部材3が回転不能にロックされるため、シャフト102は回転せず、スラット107は上昇しない。
【0056】
〈鉗子〉
図13は、クラッチ機構1を適用した鉗子200の正面図及び断面図である。鉗子200は、操作部201と、挿入部202と、鉗子部203と、を備えている。
【0057】
操作部201は、フレーム204と一体化された固定ハンドル205と、駆動部23に接続された可動ハンドル206と、を備えている。
【0058】
挿入部202は、中空に形成されており、先端が鉗子部203に連結されるとともに基端がリンク207を介して出力孔33に接続されたロッド208を内部に挿通している。
【0059】
鉗子部203は、ロッド208の進退移動に応じて開閉するように構成されている。
【0060】
ユーザが可動ハンドル206を固定ハンドル205から離れるように鉗子200を操作する場合には、入力部材2及び出力部材3が一体となって回転するため、リンク207を介してロッド208が
図13中の紙面左方向に移動して、鉗子部203が開く。
【0061】
また、ユーザが可動ハンドル206を固定ハンドル205に近づくように鉗子200を操作する場合には、入力部材2及び出力部材3が一体となって回転するため、リンク207を介してロッド208が
図13中の紙面右方向に移動して、鉗子部203が閉じる。
【0062】
また、鉗子部203を開く向きの外力がロッド208に作用した場合には、
図10(c)に示すように、出力部材3が回転許容方向Dに沿って正回転し、入力部材2及び出力部材3が一体となって回転するため、ロッド208が移動し、鉗子部203が開くとともに、可動ハンドル206が固定ハンドル205から離れるように動く。
【0063】
しかしながら、鉗子部203を閉じる向きの外力がロッド208に作用した場合であっても、
図10(a)に示すように、出力部材3が回転許容方向Dに対して逆回転し、入力部材2及び出力部材3が回転不能にロックされるため、ロッド208は移動せず、鉗子部203は閉じた状態を維持する。
【0064】
〈ラックアンドピニオン装置〉
図14は、クラッチ機構1を適用したラックアンドピニオン装置300の側面図及び正面図である。ラックアンドピニオン装置300は、駆動部23に接続された操作プーリ301と、操作プーリ301に掛け回された操作コード302と、出力孔33に接続されたピニオン303と、ピニオン303に係合可能なラック304と、を備えている。
【0065】
ユーザが操作コード302を引っ張って操作プーリ301を回転させることにより、駆動部23を介して入力部材2に回転力が入力されて、入力部材2及び出力部材3が一体となって回転するため、操作プーリ301の回転方向に応じて、ピニオン303がラック304を上下させる。
【0066】
また、ラック304を下げる向きの外力がピニオン303に作用した場合には、
図10(c)に示すように、出力部材3が回転許容方向Dに沿って正回転し、入力部材2及び出力部材3が一体となって回転するため、ピニオン303の回転が許容されて、ラック304が下降する。
【0067】
しかしながら、ラック304を上げる向きの外力がピニオン303に作用した場合には、
図10(a)に示すように、出力部材3が回転許容方向Dに対して逆回転し、入力部材2及び出力部材3が回転不能にロックされるため、ピニオン303の回転が許容されず、ラック304は移動しない。
【0068】
さらに、本発明は、上記以外にも本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を成すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0069】
1 :クラッチ機構
2 :入力部材
21 :第1の基部
21a:一方側面
21b:他方側面
22 :回動子
23 :駆動部
24 :接続凹部
3 :出力部材
31 :第2の基部
31a:外周面
32 :爪部
33 :出力孔
34 :バネ設置凹部
35 :拡径面
4 :ハウジング
41 :アウタースリーブ
41a:内周面
42 :ケーシング
43 :被固定部
44 :円筒部
45 :固定部
46 :貫通孔
47 :第1の軸受部
48 :第2の軸受部
49 :支持面
5 :ニードルローラ(転動体)
6 :バネ(付勢手段)
61 :返し
7 :キャップ
D :回転許容方向
W :楔領域