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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048861
(43)【公開日】2022-03-28
(54)【発明の名称】マスクおよびマスク補助具
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220318BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20220318BHJP
   A62B 18/08 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
A41D13/11 H
A62B18/02 C
A62B18/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154907
(22)【出願日】2020-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】520358874
【氏名又は名称】大山 雅充
(74)【代理人】
【識別番号】100142114
【弁理士】
【氏名又は名称】小石川 由紀乃
(72)【発明者】
【氏名】宮本 裕司
(72)【発明者】
【氏名】大山 雅充
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185CC36
(57)【要約】
【課題】マスク本体と顔面との間に通気のための隙間が生じる状態と隙間のない状態とを容易に切り替えることができるようにする。
【解決手段】マスク本体1の上端および下端の各端縁部の両端位置に紐部材2を通すための孔部12が設けられると共に、これらの孔部12の間に、紐部材2をマスク本体1に寄せた状態で保持するための押さえ片11が重ねられる。紐部材2はマスク本体の内面側の上端縁部および下端縁部に位置するように各孔部12に通されて支持される。押さえ片11は、孔部2の間の紐部材2の上に重なって当該紐部材2をマスク本体1との間に保持する状態とその保持が解除された状態とを切り替えられるように、マスク本体に対して変位可能に連結される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の顔面の口および鼻孔を含む所定範囲に被さる大きさの布または柔軟性を有するシートをマスク本体とし、
前記マスク本体の上端および下端の少なくとも一方の端縁部の両端位置に、それぞれ当該マスク本体の横幅より長い紐部材を通すための孔部が設けられると共に、これらの孔部に挿通される紐部材をマスク本体に寄せた状態で保持するための押さえ部材がマスク本体の内面側に重ねられ、
前記紐部材は、前記孔部が設けられた端縁部の内面側に位置するように各孔部に通されることによって、当該マスク本体に対しその横幅方向に沿って相対的に移動可能に支持されると共に、当該紐部材のマスク本体の左右に延び出た部分によって耳掛け部の全体または一部分が形成され、
前記押さえ部材は、各孔部の間の前記紐部材の支持範囲の少なくとも一部分の上に重なって当該紐部材を前記マスク本体との間に保持する状態とその保持が解除された状態とを切り替えられるように、前記マスク本体に対して変位可能に連結される、
ことを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記マスク本体の内面の左右の端縁部の前記紐部材が通過する位置に対し、それぞれその位置にまたがるように所定長さの支持片が設けられ、この支持片の上端縁部および下端縁部がそれぞれ前記マスク本体に連結され、それらの連結箇所の間の隙間が前記紐部材を通す孔部となる、請求項1に記載されたマスク。
【請求項3】
前記マスク本体の内面の左右の端縁部に沿って、それぞれその端縁部に対応する長さの短冊状の支持片が設けられ、
前記支持片は、前記マスク本体の上端縁部および下端縁部に対しそれぞれ所定の距離を隔てて上下に並ぶ2箇所で連結され、それらの連結箇所の間の隙間を前記紐部材を通す孔部として、前記マスク本体の上端および下端の双方の端縁部に前記紐部材が支持されると共に、前記押さえ部材も上端および下端の双方の端縁部に設けられる、
請求項1に記載されたマスク。
【請求項4】
前記マスク本体の内面の左右の端縁部に沿って、それぞれその端縁部に対応する長さの短冊状の支持片が設けられ、
前記支持片は、前記マスク本体の上端縁部および下端縁部にそれぞれ固定されると共に、各固定位置からそれぞれ所定距離だけ離れた位置で前記マスク本体に着脱可能に連結され、その連結位置と前記所定距離離れた固定位置との間の隙間を前記紐部材を通す孔部として、前記マスク本体の上端および下端の双方の端縁部に前記紐部材が支持されると共に、前記押さえ部材も上端および下端の双方の端縁部に設けられ、
前記支持片の各孔部の間の範囲に相当する部分は前記マスク本体に着脱可能に連結または連結されずにマスク本体に重ねられる、
請求項1に記載されたマスク。
【請求項5】
前記押さえ部材または前記マスク本体の押さえ部材が重ねられる端縁部に可撓性を有する線状体が設けられる,請求項1~3のいずれかに記載されたマスク。
【請求項6】
布または柔軟性を有するシートをマスク本体とするマスクの当該マスク本体に装着される補助具であって、
可撓性または柔軟性を有する基部と、この基部の両端位置にそれぞれ形成される一対の孔部と、これらの孔部に挿通された状態で支持される帯状または紐状の連結部材と、当該連結部材を前記基部の一面に寄せた状態で保持するための押さえ部材とを備え、
前記基部は、前記連結部材が保持される面とは反対側の面をマスク本体の内面に重ねた状態として当該マスク本体の上端縁部または下端縁部に装着され、
前記連結部材は、各孔部に通されることによって、当該基部に対しその横幅方向に沿って相対的に移動可能に支持されると共に、両端部がそれぞれ前記マスクの耳掛け部の前記マスク本体から離された端部に連結され、
前記押さえ部材は、各孔部の間の前記連結部材の支持範囲の少なくとも一部分の上に重なって当該連結部材を前記基部との間に保持する状態とその保持が解除された状態とを切り替えられるように、前記基部に対して変位可能に連結される、
ことを特徴とするマスク補助具。
【請求項7】
前記押さえ部材は、前記基部に対して上端および下端の各端縁位置で連結されると共に、少なくともいずれか一方の連結箇所が基部から離反可能となっている、
請求項6に記載されたマスク補助具。
【請求項8】
前記押さえ部材は前記基部の前記連結部材が支持される側の面に上下動可能に連結される請求項6に記載されたマスク補助具。
【請求項9】
前記連結部材の両端部には、それぞれ装着対象のマスクの本来の耳掛け部に代わる所定長さの紐部材による耳掛け部が連結される、
請求項6に記載されたマスク補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として飛沫を防ぐために着用されるマスクおよびマスク補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、装着したときの呼吸を楽にするために下端部から呼気を排出できるように構成されたマスクが知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、マスク本体の下部を屈曲させて、呼気を排出させるための通路となる複数の空気排出エンボスを形成したマスクが開示されている。また特許文献2には、水分を含む含水体が収容される収容部を有し、その収容部の着用時に着用者の口に対応する領域に通気孔が設けられたマスクが開示されている。
【0004】
これら特殊な形態のマスクに加えて、一般的なマスクのマスク本体の内面に取り付けることによって、利用者の鼻や口に対して所定の距離をとってマスク本体を支持できるようにした補助具(「マスクスペーサー」と呼ばれている。)も知られている(特許文献3を参照。)
【0005】
さらに、新型コロナウイルスへの感染対策のために、国民の大半が夏場でもマスクを着用せざるを得なくなった最近では、マスク本体の下端縁部や側縁部と顔面との間に通気のための隙間を形成可能なマスクスペーサーも商品化されている(非特許文献1,2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-90157号公報
【特許文献2】特開2020-105677号公報
【特許文献3】特開2015-19920号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「マスクスペーサー MS-2PC」(ジェコル株式会社運営のウェブサイト内記事)、https://jecol.co.jp/maskspacer/ms-2pc/
【非特許文献2】「待望[マスクスペーサー]登場!顔涼しく!息苦しさ改善軽減!既存マスクに付けるだけ」(株式会社マクアケ運営のウェブサイト内記事)、https://www.makuake.com/project/mask-spacer/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1,2に開示されているマスクスペーサーは、夏場のマスクの着用や、マスクを着用しての運動や作業等の辛さや熱中症のリスクを軽減することを目的とするもので、特許文献1,2に記載されているような特殊な構造のない一般的なマスクでも、マスク本体と顔面との間に簡単に通気のための隙間を形成することができるという利点がある。
【0009】
しかし、通気のための隙間を形成して良いのは、あくまでも他人との距離を十分に確保できる場所であり、通勤ラッシュ時の電車の車内などの人が密集する場所では、ウイルスの侵入を防ぐためにマスク本体と顔面との密着度をできるだけ高める必要がある。
【0010】
特許文献3に記載された発明は、利用者の顔面とマスク本体との間に空間を形成することしか想定していないが、この特許文献3には、マスクスペーサーをマスク本体から着脱可能にすることが記載されている(特許文献3の段落0042を参照。)。非特許文献1,2に記載されたマスクも、マスク本体から着脱可能にすることによって、通気のための隙間を設ける状態と隙間をなくす状態とを切り替えることができると考えられる。
【0011】
しかし、周囲の状況に応じてマスクスペーサーを付けたり外したりすることは利用者に煩雑な思いをさせてしまう。また、取り外したマスクスペーサーを紛失したり、どこに保管したかわからなくなって、マスクスペーサーを使いたいのに使えない、といった問題が生じる可能性もある。マスクスペーサーが取り外されている間にウイルスが付着し、消毒せずに再びマスクに取り付けた結果、利用者が感染してしまうおそれもある。
【0012】
マスク本体と顔面との間に小さな隙間を設けた程度では、十分な通気を確保できない場合もある。特に、建設業や運送業など屋外で働く人々には、飛沫の拡散を防ぐ機能を損なわずに通気性が大幅に高められたマスクが必要である。
【0013】
新型コロナウイルスへの感染対策としては、食事をするときの飛沫の拡散を防ぐ方法を講じる必要もある。食事のときにはどうしてもマスクを外さざるを得ないが、その際の会話等で飛沫が周囲に飛んでしまうおそれがあり、商談や交流を目的とする会食が非常に難しくなっている。介護の現場からも、食事補助の際に介護者が要介護者からの飛沫をあびて感染するおそれがある、という懸念の声があがっている。
【0014】
本発明は上記の諸問題に着目してなされたもので、一般的な構成のマスク本体に簡単な変更を加えることで、マスク本体と顔面との間に通気のための隙間が生じる状態と当該隙間がない状態とを容易に切り替えることが可能なマスクを提供することを、第1の課題とする。
【0015】
さらに本発明は、必要に応じて通気の機能を高められるように変形可能なマスクを提供することを、第2の課題とする。
【0016】
さらに本発明は、一般的なマスクのマスク本体に装着することによって、上記本発明によるマスクと同等の機能を一般的なマスクに付加することが可能なマスク補助具を提供することを、第3の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のマスクは、利用者の顔面の口および鼻孔を含む所定範囲に被さる大きさの布(不織布を含む。)または柔軟性を有するシート(紙や樹脂によるもの)をマスク本体とする。なお、以下では、マスク本体の利用者の顔面に接触する面(裏面)を「内面」と言う。
【0018】
本発明の基本形態のマスクでは、マスク本体の上端および下端の少なくとも一方の端縁部の両端位置に、それぞれ当該マスク本体の横幅より長い紐部材を通すための孔部が設けられると共に、これらの孔部に挿通される紐部材をマスク本体に寄せた状態で保持するための押さえ部材がマスク本体の内面側に重なるように連結される。
【0019】
紐部材は、上記の孔部が設けられた端縁部の内面側に位置するように各孔部に通されることによって、当該マスク本体に対しその横幅方向に沿って相対的に移動可能に支持される。さらに、この紐部材のマスク本体の左右に延び出た部分によって耳掛け部の全体または一部分が形成される。
【0020】
押さえ部材は、各孔部の間の紐部材の支持範囲の少なくとも一部分の上に重なって当該紐部材をマスク本体との間に保持する状態とその保持が解除された状態とを切り替えられるように、マスク本体に対して変位可能に連結される。
たとえば、押さえ部材の上端および下端の一方の端縁部がマスク本体に固定され、他方の端縁部がマスク本体に着脱可能に連結されることによって、後者とマスク本体との連結を外してその端縁の側を持ち上げ、紐部材を出し入れすることができる。
【0021】
上記の構成によれば、押さえ部材とマスク本体との連結を一時的に解除して、押さえ部材と紐部材との係わり状態を変更することによって、紐部材が押さえ部材とマスク本体との間に保持された状態と、その保持が解除されて紐部材が押さえ部材の表側(マスク本体に重なっていない側)の上に配置される状態とを切り替えることができる。
【0022】
紐部材が押さえ部材の表側に配置される状態になったときは、この紐部材が支持されている一対の孔部の位置が互いに近づくように紐部材またはマスク本体を動かすことによって、これらの孔部が設けられたマスク本体の端縁部を紐部材から離れる方向に撓ませることができる。
【0023】
上記のマスク状態の変形を維持したまま、左右の耳掛け部を利用者の耳にかけ、各耳掛け部が適度な力でマスク本体から離れる方向に引っ張られるようにすると、上記の撓みが生じた端縁部の主要部分が顔面から離れた位置で保持されて、その部分と顔面との間に通気のための隙間(以下「通気スペース」という。)が生じる。このとき、紐部材のマスク本体の内面側に配置されている部分(マスク本体から離れた部分)が利用者の顎または鼻梁に当たり、その当接部分に耳掛け部の引張り力が伝搬することによって、マスク本体の姿勢や開口状態を維持することができる。
【0024】
一方,紐部材が押さえ部材とマスク本体との間に保持されているときは、その保持位置の紐部材をマスク本体から離すことはできなくなる。よって、マスク本体の紐部材が配置されている側の端縁部も利用者の顔面に接触させて、顔面に対するマスク本体の密着度合いを高めることができる。
【0025】
紐部材を挿通させるための孔部は、マスク本体の厚み方向を貫くように形成してもよいが、これに限らず、マスク本体の面方向に沿う方向に孔部を形成することもできる。後者のタイプについては、たとえば、マスク本体の内面の左右の端縁部の紐部材が通過する位置に対し、それぞれその位置にまたがるように所定長さの支持片を設けることとして、この支持片の上端縁部または下端縁部をそれぞれマスク本体に連結し、それらの連結箇所の間の隙間を、紐部材を通す孔部とすることができる。
【0026】
マスク本体の上端および下端の双方の端縁部に紐部材を支持する場合には、支持片を上下に分けずに一体にしてもよい。たとえば、マスク本体の内面の左右の端縁部に沿って、それぞれその端縁部に対応する長さの短冊状の支持片を設けることとして、この支持片をマスク本体の上端縁部および下端縁部に対しそれぞれ所定の距離を隔てて上下に並ぶ2箇所で連結することによって、それらの連結箇所の間の隙間を、紐部材を通す孔部にすることができる。この場合、押さえ部材も上端および下端の双方の端縁部に設けられる。
【0027】
上下の支持片を一体にする場合には、その支持片を、マスク本体の上端縁部および下端縁部にそれぞれ固定すると共に、各固定位置からそれぞれ所定距離だけ離れた位置をマスク本体に着脱可能に連結し、その連結位置と前記固定位置との間の隙間を紐部材を通す孔部とすることもできる。さらに、左右の各支持片の各孔部の間の部分をマスク本体に着脱可能に連結、または連結せずにマスク本体に重ねておくと、孔部の固定されていない側の連結を外して孔部を開放することによって、支持片の両端の固定位置を除く範囲全体とマスク本体との間に隙間を形成することができる。
【0028】
上記の隙間ができると、マスク本体の上端部側または下端部側の紐部材を他端部側に移動させることによって、上下に分かれていた紐部材をマスク本体の上端縁または下端縁に寄せることができる。
【0029】
紐部材がマスク本体の上端縁側に寄せられたときは、その状態の紐部材による耳掛け部を利用者の左右の耳に掛けることによって、マスク本体を、下端縁全体が開放された状態にして鼻や口を含む範囲の前方に支持することができる(以下、この支持状態を「フェイスシールドモード」という。)。
【0030】
紐部材がマスク本体の下端縁側に寄せられたときは、その状態の紐部材による耳掛け部を利用者の左右の耳に掛けることによって、マスク本体を上端縁全体が開放された状態で口元に接近させて支持することができる(以下、この支持状態を「マウスシールドモード」という。)
【0031】
さらに、本発明では、押さえ部材またはマスク本体の押さえ部材が重ねられる端縁部に可撓性を有する線状体を設けることによって、紐部材を支持する端縁部を通気のために撓ませた場合の端縁部の撓みの度合いの調整や維持を容易に行うことができる。
【0032】
本発明では、さらに、可撓性または柔軟性を有する帯状の基部と、この基部の両端位置にそれぞれ形成される一対の孔部と、これらの孔部に挿通された状態で支持される帯状または紐状の連結部材と、当該連結部材を基部の一面に寄せた状態で保持するための押さえ部材とを備えるマスク補助具を提供する。
【0033】
上記基部は、連結部材が保持される面とは反対側の面をマスク本体の内面に重ねた状態として当該マスク本体の上端縁部または下端縁部に取り付けられる。連結部材は、基部の各孔部に通されることによって、当該基部に対しその横幅方向に沿って相対的に移動可能に支持されると共に、孔部から突出する両端部がそれぞれマスクの耳掛け部の前記マスク本体から離された端部に連結される。
【0034】
押さえ部材は、各孔部の間の連結部材の支持範囲の少なくとも一部分の上に重なって当該連結部材を基部との間に保持する状態とその保持が解除された状態とを切り替えるように、基部に対して変位可能に連結される。
【0035】
たとえば、押さえ部材を、基部の連結部材が支持される側の面に対して上端および下端の各端縁位置で連結すると共に、少なくともいずれか一方の連結箇所を基部から離反可能にすることができる。また、基部の連結部材が支持される側の面に押さえ部材を上下動可能に連結することによって、押さえ部材が連結部材の面の上に重なる状態(連結部材を保持する状態)と、押さえ部材を連結部材に重ならない位置に配置する状態(保持が解除された状態)とを切り替えることができる。
【0036】
上記構成の補助具を一般的なマスクのマスク本体の上端縁部または下端縁部に装着すると共に、このマスクの左右の耳掛け部の補助具が装着された側の端部をマスク本体から外し、それらの端部を補助具の連結部材を介して連結することによって、一般的なマスクにも、上端縁部または下端縁部を顔面から離して通気スペースを形成することができる機能を付加することができる。また補助具を装着したまま、この通気スペースが設けられる状態と通気スペースがない状態とを切り替えることができる。
【0037】
さらに、上記の補助具をマスク本体の上端縁部および下端縁部の双方に上記の補助具を装着すると共に、耳掛け部の両端部をそれぞれマスク本体から外して対応する側の補助具の連結部材に連結すれば、マスク本体の上端縁部および下端縁部の双方と顔面との間に通気スペースを形成することが可能になる。
【0038】
マスク本体の上端部および下端部のいずれか一方のみに補助具を装着し、各耳掛け部の補助具が装着されていない側の端部をマスク本体から外し、それらの端部を連結部材に連結することによって、マスク本体を前述したフェイスシールドモードやマウスシールドモードにして支持することもできる。
【0039】
上記のとおり、本発明のマスク補助具を使用する際には、補助具が装着されたマスクの耳掛け紐の端部をマスク本体から離して連結部材に連結する必要がある。ただし、連結部材の両端部に所定長さの紐部材を連結すれば、左右の耳掛け部を完全にマスク本体から外し、上記の紐部材をマスク本体に連結することによって、新たな耳掛け部として機能させることができる。この新たな耳掛け部を、クリップ等でマスク本体に着脱可能にすることもできる。
【発明の効果】
【0040】
本発明のマスクを装着している状態を正面から見ると、一般的なマスクと大差はないが、上端縁および下端縁の少なくとも一方と顔面との間に通気スペースが形成されるので、周囲の人に違和感を与えたり、飛沫が前方に飛び散ることを心配することなく、呼吸を楽に行うことができ、マスク本体と顔面との間の温度を下げることもできる。
【0041】
さらに本発明によれば、紐部材と押さえ部材との係わりを変更することによって、通気スペースが形成されている状態と通気スペースがない状態とを容易に切り替えることができ、周囲の人の密集の度合いに容易に対応することができる。また、紐部材の耳掛け部に十分な弾力性があれば、マスクを外さずに上記の切り替えを行うことができ、既存のマスクスペーサーを使用するより格段に便利になる。
【0042】
さらに、本発明では、マスク本体の上端および下端の双方の端縁部に紐部材を支持することによって、上端縁および下端縁の双方と顔面との間に通気スペースを形成できるようにすると共に、紐部材を上下いずれか一方の端縁に寄せて他方の端縁の全体を開放してフェイスシールドモードやマウスシールドモードを設定することができる。
【0043】
フェイスシールドモードやマウスシールドモードによれば、紐部材が支持されていない側の端縁全体を顔面から離して通気の機能を高めながら、鼻孔や口の前方にマスク本体を支持して飛沫が前方に飛ぶのを防ぐことができる。さらに、これらのモードによれば、マスク本体の上端縁または下端縁の全体が開放されるので、マスクを外さずに、食べ物や飲み物を口に入れることが容易になる。
【0044】
さらに本発明による補助具によれば、一般的なマスクにも上記の諸機能を付加することができる。また補助具を外さずに、通気スペースが生じる状態と通気スペースがなくなる状態とを切り替えることができるので、利用者は煩雑な思いをせず、周囲の人の密集度合いに応じてマスクの装着状態を容易に切り替えることができる。マスクの着用中に補助具が外されることがなくなれば、補助具が行方不明になるおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明に係る第1実施例のマスクM1の表面側の構成、および紐部材と支持片との係わりを表した断面図である。
図2】上記マスクM1の内面側の平面図の組み合わせにより押さえ片と紐部材との係わりの変化を表した図である。
図3】上記マスクM1の中央部の断面図の組み合わせにより押さえ片と紐部材との係わりの変化を表した図である。
図4】本発明に係る第2実施例のマスクM2の表面側の構成、および紐部材と支持片との係わりを表した断面図である。
図5】上記マスクM2の内面側の平面図の組み合わせにより押さえ片と紐部材との係わりの変化を表した図である。
図6】上記マスクM2の中央部の断面図の組み合わせにより、図5(A)(B)の押さえ片と紐部材との関係を表した図である。
図7】本発明に係る第3実施例のマスクM3について、内面側の平面図の組み合わせにより押さえ片と紐部材との係わりの変化を表した図である。
図8】上記マスクM3の内面側の平面図の組み合わせにより、紐部材を下端縁側または上端縁側に寄せて支持した例を表した図である。
図9】上記マスクM3の中央部の断面図の組み合わせにより、図8(A)(B)のマスクM2における押さえ片と紐部材との関係を表した図である。
図10】第1実施例のマスクM1の装着例を表した図である。
図11】第3実施例のマスクM3の装着例を表した図である。
図12】本発明が適用されたマスク補助具の構成例を、平面図および断面図の組み合わせにより表した図である。
図13】上記のマスク補助具の連結部材の保持が解除されたときの状態を、平面図および断面図の組み合わせにより表した図である。
図14】上記のマスク補助具の基部と押さえ片との間に可撓性を有する線状体を支持した場合のこれらと連結部材との関係の変化を表した図である。
図15】上記のマスク補助具をマスクに取り付けた例を表した平面図である。
図16】上記のマスク補助具をマスクに取り付けた例を表した平面図である。
図17】上記のマスク補助具が取り付けられたマスクの装着例を表した図である。
図18】上記のマスク補助具が取り付けられたマスクの装着例を表した図である。
図19】別例のマスクM4の構成を、内面側の平面図の組み合わせにより表した図である。
図20】上記マスクM4の被覆片とプラスチックワイヤーとの関係の変化を、断面図の組み合わせにより表した図である。
図21】上記マスクM4の装着例を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1~3は、本発明が適用された第1実施例のマスクM1を表したものである。
図1には、当該マスクM1の表側の構成を表す平面図と、マスク本体1と耳掛け部2a,2bとの連結状態を表す断面図とが含まれる(図ごとに(A)(B)とする。)。図2には、上記マスクM1の内面側の平面図が2つ含まれる(図ごとに(A)(B)とする。)。図3には、マスク本体1の幅中央部の断面図とその一部を拡大した図との組み合わせが2組含まれる(組み合わせごとに(A)(B)とする。)。
【0047】
なお、図1(B)および図3(A)(B)では、耳掛け部2aをマスク本体1の後方側(マスク本体1を装着した利用者の耳に向かう方向)に引っ張られた状態として表している。後続の実施例でも同様の方針で図示する。
【0048】
第1実施例のマスクM1は、不織布によるマスク本体1と、一本の紐部材2とにより構成される。マスク本体1の詳細な形態の図示を省略したが、このマスク本体1はプリーツ型(図ではプリーツの図示を省略。)であって、一般的なプリーツ型の衛生マスクの本体と同様に、利用者の顔面の顎から鼻の中間位置までの範囲を覆う大きさのものである。
【0049】
一般的なマスクと異なる構成として、この実施例のマスク本体1では、内面側の各角部に矩形状の支持片10が設けられると共に、上端縁側の各支持片10,10の間と下端縁側の各支持片10,10との間に、それぞれ帯状の押さえ片11が設けられている。支持片10は紐部材2をマスク本体1の端縁部に沿って支持する目的に使用され、押さえ片11は支持片10により支持された紐部材2をマスク本体1に寄せた状態で保持する目的に使用される。
【0050】
各支持片10は、上端および下端の各端縁位置で接着剤または溶着によってマスク本体1に固定される。支持片10の左右の端縁や主要な面はマスク本体1には連結されておらず、それによりマスク本体1との間に生じる微小間隙12(図1(B)を参照。)が紐部材2を挿通させる孔部として機能する。
【0051】
押さえ片11も、マスク本体1との間に紐部材2を通すための間隙が形成されるように、上下の端縁位置のみがマスク本体1に連結される。ただし、マスク本体1に固定されるのは、マスク本体1の端縁部に重なる部分(上端縁側の押さえ片11では上端縁部、下端縁側の押さえ片11では下端縁部)のみであって、他方の端縁部は弱粘性の粘着剤によってマスク本体1に着脱可能に連結される。よって押さえ片11は、マスク本体1の上端縁部または下端縁部に重なる部分を除き、マスク本体1から離反可能となっている。
【0052】
紐部材2は、マスク本体1の横幅の2倍を上回る長さのゴム紐であって、マスク本体1の内面側の上下の各端縁部に沿うように各支持片10の孔部12に順に通されると共に、両端部が接合されている。このようにすることによって、紐部材2は、輪の状態とマスク本体1の上下の各端縁部に沿う状態とを維持しながら、マスク本体1に対しその横幅方向(左右方向)に沿って相対的に移動可能に支持される。また、紐部材2のマスク本体1の左右に延び出た部分2a,2bがそれぞれ耳掛け部として機能する。
【0053】
紐部材2のマスク本体1の上端縁部および下端縁部に沿う部分は、その端縁部の押さえ片11とマスク本体1との間の間隙13内に保持される(図3(A)を参照。)。しかし、押さえ片11の着脱可能な端縁部とマスク本体1との連結を一時的に外し、その開放箇所から紐部材2を押さえ片11の外に出し、再び押さえ片11をマスク本体1に重ねて連結することによって、紐部材2が押さえ片11の表側に出る状態(マスク本体1から見て押さえ片11より内側に位置する状態)にすることができる(図2(B)および図3(B)を参照。)。後者の状態になったとき、後述するように、マスク本体1を紐部材2から離れる方向に湾曲させることが可能になる。
【0054】
以下、上記実施例と同様の原理で紐部材2を保持すると共に、その保持状態と保持が解除された状態とを切り替えることが可能なマスクについて、他の2つの実施例をあげて説明する。これらのマスクもプリーツ型のマスク本体1を有する。その他の第1実施例に対応する構成要素も、図において第1実施例と同じ符号により示すことによって、説明を省略または簡単にする。
【0055】
図4~6は、第2実施例のマスクM2の構成を表すものである(各図の詳細は図1~3と同じ)。
第2実施例のマスクM2では、支持片10の押さえ片11に対向する側の端縁部を除く3辺がマスク本体1に固定され、マスク本体1の各支持片10が重なる箇所に厚み部分を貫く方向に沿って孔部12が形成されている。紐部材2は、この孔部12に表側から挿入され、マスク本体1と支持片10との間の間隙14を介して押さえ片12の側の間隙13へと導かれる。したがって、この実施例では、支持片10は必須の構成要素ではない。
【0056】
この実施例の押さえ片11も、上下の端縁部のうちマスク本体1の縁側の端縁部がマスク本体1に固定されている。他方の端縁部はマスク本体1から離れ、その内側に可撓性を有する線状体15を保持する袋状の収容部16が設けられている(図6(A)(B)を参照。)。
【0057】
具体的な線状体15として、この実施例では、一般のマスクにおいて上端縁部を鼻に沿う形に撓ませる目的(一般に「ノーズフィッター」等の名称で呼ばれている。)に使用される形状保持プラスチック製のプラスチックワイヤーが使用される。ただし、これに限らず、針金やその他の線状のバネ材を使用することもできる。
【0058】
上記の線状体15は、マスク本体1の端縁部を撓みやすくし、その撓み形状を保持することを目的とするものである。また線状体15の収容部16によって、押さえ片11とマスク本体1との間の間隙13の開口端面が狭められるので、押さえ片11の収容部16の側の端縁部をマスク本体1に連結しなくとも、間隙13に入った紐部材2が開口端面から出るのを防ぐことができる。ただし、押さえ片11の浮きを抑えるために、収容部16とマスク本体1との間隙の一部を弱粘着性の接着剤等で塞いでもよい。
なお、第1実施例のマスクM1の押さえ片11も、この第2実施例の形態に変更することができる。
【0059】
図7~9は、本発明が適用された第3実施例のマスクM3の構成を表すものである。このマスクM3の基本的な構成は第1実施例と同様であるので、図1および図3に対応する図面を省略し、内面側の平面図(図7,8)とマスク本体1の幅中央部の断面図(図9)とを提示する。
【0060】
第3実施例では、マスク本体1の左右の端縁部に、その端縁全体に沿う長さの短冊状の支持片10が設けられると共に、上端縁部および下端縁部にそれぞれ第1実施例と同様の構成の押さえ片11が設けられる。
【0061】
各支持片10は、上端縁部および下端縁部がそれぞれマスク本体1に固定されると共に、紐部材2の孔部12となる範囲(押さえ片11の幅部分に対向する範囲)を除く部分10a(説明の便宜上、以下、「中央部10a」という。)がマスク本体1に着脱可能となっている。
【0062】
支持片10の中央部10aがマスク本体1に連結されているときは、第1実施例と同様に、各支持片10の上端部および下端部とマスク本体1との間に、それぞれ紐部材2を通すための孔部12が形成される。紐部材2は、これらの孔部12に通されることによって、第1実施例と同様に、マスク本体1の内面側の上端縁および下端縁に沿って相対的に移動可能に支持される。また、押さえ片11と紐部材2との係わりを変化させることによって、紐部材2が押さえ片11とマスク本体1との間の間隙13に保持される状態からその保持が解除された状態へと切り替えることができる(図7(A)(B)を参照。)。
【0063】
一方、支持片10の中央部10aとマスク本体1との連結が解除されると、孔部12も開放され、支持片10の上端および下端の固定箇所を除く全範囲がマスク本体1から離反可能となる。よって、左右双方の支持片10とマスク本体1との連結を解除すると、紐部材2をマスク本体1の縦幅方向(支持片10の長さ方向)に沿って移動させることが可能になる。
【0064】
図8(A)および図9(A)は、支持片10の中央部10aとマスク本体1との連結を解除した後に紐部材2の上端側に支持されていた部分を下端側に移動させ、二重になった紐部材2を下端縁側の押さえ片11とマスク本体1との間に保持した状態を表す。
図8(B)および図9(B)は、支持片10とマスク本体1との連結を解除した後に紐部材2の下端端側に支持されていた部分を上端側に移動させ、二重になった紐部材2を上端縁側の押さえ片11とマスク本体1との間に保持した状態を表す。
【0065】
上記2とおりの事例では、いずれも、紐部材2の移動が完了した後に支持片10の主要部を再びマスク本体1に連結することによって、一方の端縁部に寄せられて二重になった紐部材2が当該端縁部の側の孔部12に挿通され、押さえ片11とマスク本体1との間に挟まれた状態となって支持される。この状態になっても紐部材2の輪は保持されているので、マスク本体1の左右に延び出た部分2a,2bを引き続き耳掛け部として機能させることができる。また、この状態下でも、押さえ片11による紐部材2の保持を解除して、二重になった紐部材2を押さえ片11の表側に配置することができる。
【0066】
なお、第3実施例では、支持片10の中央部10aの全体をマスク本体1に着脱可能とし、当該中央部10aがマスク本体1に連結されることによって上下の孔部12が形成されるようにしたが、これに限らず、孔部12と中央部10aとの境界位置のみをマスク本体1に着脱可能に連結し、中央部10aをマスク本体1に連結せずに重ねるだけにしてもよい。
【0067】
図10は、第1実施例のマスクM1を顔面に装着した状態(4通り)を模式的に表したものである。この図10と共に再び図1~3を参照して、第1実施例のマスクM1が有する機能について説明する。
【0068】
前述したとおり、第1実施例のマスクM1では、耳掛け部2a,2bと一体となった紐部材2が、マスク本体1の内面側の上端縁部および下端縁部に対してそれぞれ左右方向に沿って相対的に移動可能に支持される。さらに、この紐部材2のマスク本体1の上端縁部および下端縁部に沿う範囲と押さえ片11との係わりを変更することによって、当該範囲の紐部材2が押さえ片11とマスク本体1との間に保持される状態(図2(A)および図3(A))と、その保持が解除されて紐部材2が押さえ片11の表側に出る状態(図2(B)および図3(B))とを切り替えることができる。
【0069】
紐部材2が押さえ片11の表側に出ているとき、言い換えると紐部材2が押さえ片11より内側(顔面側)に位置しているときには、当該紐部材2が通されている孔部12,12を含む支持片10,10が互いに近づく(マスク本体1の幅中央部に向かう)ように紐部材2またはマスク本体1を動かすことによって、マスク本体1を紐部材2から離れる方向に撓ませることができる。また、その状態のマスクM1の左右の耳掛け部2a,2bをそれぞれマスク本体1から離れる方向(左右の耳の方向)に適度な力で引っ張ることによって、上記の撓み状態を維持することができる。
【0070】
図10(A)の例の紐部材2は、上端縁側では押さえ片11とマスク本体1との間に保持されているが、下端縁側では押さえ片11による保持が解除されている。図10(B)の例の紐部材2は、下端縁側では押さえ片11とマスク本体1との間に保持されているが、上端縁側では押さえ片11による保持が解除されている。図10(C)の例では、上端縁および下端縁ともに、押さえ片11による紐部材2の保持が解除されている。
【0071】
上記の3例に示すとおり、上端縁側の紐部材2の保持が解除されたときは、紐部材2から離れる方向に撓んだマスク本体1の上端縁を顔面から離して通気スペースを形成することができる。また下端縁側の紐部材2の保持が解除されたときは、紐部材2から離れる方向に撓んだマスク本体1の下端縁を顔面から離して通気スペースを形成することができる。いずれの場合も、開放された端縁部分だけでなく、鼻孔や口を含む範囲とマスク本体1との間にも空間が形成される。
【0072】
マスク本体1の上端縁が開放された場合は、マスク本体1から離れた紐部材2(押さえ片11による保持が解除された部分)が利用者の鼻梁や顎に当たり、その当接部分に耳掛け部2a,2bから伝搬した引張り力によって、マスク本体1の姿勢や開口状態を維持することができる。マスク本体1の下端縁が開放された場合も、マスク本体1から離れた紐部材2が利用者の顎に当たり、その当接部分に耳掛け部2a,2bから伝搬した引張り力によって、マスク本体1の姿勢や開口状態を維持することができる。
【0073】
一方、紐部材2が押さえ片11とマスク本体1との間に保持されているときは、マスク本体1や押さえ片11が変形すると、紐部材2も同じように変形する。よって、マスク本体1の紐部材2が保持されている側の端縁部では、当該端縁部を顔面に沿うように変形させて通気スペースのない状態にすることができる。上端縁部および下端縁部の双方において紐部材2を押さえ片11により保持しているときは、図10(D)に示すように、上下双方の端縁部を顔面に沿わせて、一般的なマスクと同様の装着状態にすることができる。
【0074】
実際に利用者がマスクM1を装着する際には、開放したい側の端縁の紐部材2の保持を解除し、マスク本体1の内面側を顔面に向けて耳掛け部2a,2bを両耳に掛けることによって、紐掛け部2a,2bがマスク本体1から離れる方向に引っ張られ、それらの引っ張り力が紐部材2の保持が解除された部分に伝搬して対応する側の端縁部が撓み、通気スペースが形成される。その後、通気スペースをなくす必要が生じたときは、マスクM1を着けたまま、マスク本体1を少し前方に引っ張って紐部材2を押さえ部材12に保持される状態にし、マスク本体1を顔面側に戻すことによって、通気スペースのない状態にすることができる。
【0075】
第2実施例のマスクM2でも、上記と同様に、押さえ片11による紐部材2の保持を解除することによって、その解除がされた側のマスク本体1の端縁と顔面との間に通気スペースを形成することができる。さらに第2実施例のマスク本体1の上端縁部および下端縁部に可撓性を有する線状体15が設けられているので、紐部材2の保持が解除された側の端縁部の線状体15の撓みの度合いを調整することによって通気スペースの形状や大きさを整え、その形状や大きさを安定して維持することができる。
【0076】
第3実施例のマスクM3も、紐部材2が上端縁部および下端縁部の双方に沿って支持されている状態(図7(A)(B))になっているときは、図10に示したのと同様の方法で顔面に装着することができる。
【0077】
さらに第3実施例のマスクM3では、紐部材2を二重にしてマスク本体1の下端縁側に寄せて支持する(図8(A)および図9(A)を参照。)ことによって、図11(A)に示すように、主として口元付近が保護される装着状態(マウスシールドモード)にすることができる。また、紐部材2を二重にしてマスク本体1の上端縁側に寄せて支持する(図8(B)および図9(B)を参照。)ことによって、図11(B)に示すように、鼻や口元を含む範囲の前方にマスク本体1を支持しながらその下端縁を開放する状態(フェイスシールドモード)にすることができる。
【0078】
マウスシールドモードでは、マスク本体1の下端縁側に寄せられた紐部材2による耳掛け部2a,2bを両耳に掛けることによって、当該紐部材2が顎の部分にあてがわれた状態となってマスク本体1が支持される。この支持によれば、マスク本体1は口元に対してはかなり接近するが、上方に向かうにつれて顔面との距離が大きくなるように傾斜して、上端縁および左右の端縁の上部を含む範囲が開放されるので、口からの飛沫が前方に飛ぶのを防ぎながら通気性を高めることができる。
【0079】
フェイスシールドモードでは、マスク本体1の上端縁側に寄せられた紐部材2による耳掛け部2a,2bを両耳に掛けることによって、当該上端縁部が鼻根付近にあてがわれた状態となってマスク本体1が支持される。この支持によりマスク本体1が鼻梁に沿って傾斜するが、鼻孔や口元の前方にマスク本体1が配備されるので、口からの飛沫が前方に飛ぶのを防ぎながら通気性を高めることができる。
【0080】
さらに、フェイスシールドモードやマウスシールドモードでも、押さえ片11による紐部材2の保持を解除することによって、紐部材2が寄せられている側の端縁も顔面から離して通気スペースを設けることができる。
【0081】
上記のとおり、第3実施例のマスクM3を、マスク本体1の上端縁または下端縁に紐部材2を寄せた状態にすることによって、フェイスシールドモードまたはマウスシールドモードとしてマスク本体1を顔面に装着すれば、通気スペースをより一層広げて通気性を大幅に高め、マスク本体1と顔面との間に熱気がこもるのを防ぐことができる。その場合でも、鼻孔や口元の前方にはマスク本体1が配備されるので、戸外での作業や人との距離を十分に確保できる場所であれば、飛沫感染対策には十分な効果を発揮できる。
【0082】
また従前のプラスチック製のフェイスシールドやマウスシールドには、熱がこもって暑くなる、呼気により主面が曇るなどの問題が指摘されているが、不織布のマスク本体1によるフェイスシールドモードやマウスシールドモードには、そのような問題は生じない。またプラスチック製のフェイスシールドやマウスシールドでは、くしゃみや咳による飛沫を防ぐことが難しいが、不織布のマスク本体1であれば飛沫を吸収をすることができる。さらにくしゃみや咳をするときにマスク本体1を手で押さえるなどの対策によって、飛沫の拡散効果を高めることができる。
【0083】
さらに、フェイスシールドモードによれば、マスク本体1が装着された状態を維持したまま、そのマスク本体1を下端縁からめくりあげることで口元を露出させることができ、マウスシールドモードでも、マスク本体1の上端縁を下方にめくることで口元を露出させることができる。よって、これらのモードによれば、マスク1を付けたまま、食べ物や飲み物を口に入れることが容易になり、食事どきの飛沫感染のリスクを軽減することができる。
【0084】
マウスシールドモードによれば、マスク本体1が口元から大きく離れないようにすることができるので、会議など、人との会話が必要な場での飛沫の拡散を防ぐ機能を高めることができる。
【0085】
以下、上記の各実施例から考えられ得る変形例を説明する。
まず、第1および第2の実施例では、マスク本体1の上端および下端の双方の端縁部に紐部材2が支持されるようにしたが、紐部材2をマスク本体1の横幅方向に沿わせて支持する範囲をいずれか一方の端縁部のみに留めてもよい。
【0086】
たとえば、マスク本体1の下端縁部の両端位置に孔部12を設けると共に、それらの孔部12の間に押さえ片11を設け、下端縁部の内面側に沿って紐部材2が配置されるように各孔部12に紐部材2を通し、その紐部材2の両端部をそれぞれ上端縁部の両端位置に固定することによって、図10(A)に示した下端縁開放状態にすることが可能なマスクを提供することができる。これとは逆に、マスク本体1の上端縁部の両端位置に孔部12を設けると共に、それらの孔部12の間に押さえ片11を設け、上端縁部の内面側に沿って紐部材2が配置されるように各孔部12に紐部材2を通し、その紐部材2の両端部をそれぞれ下端縁部の両端位置に固定することによって、図10(B)に示した上端縁開放状態にすることが可能なマスクを提供することができる。
【0087】
ただし、上端および下端の双方に孔部12および押さえ片11を設けるという構成自体は変更せずに、一方の端縁部のみで押さえ片11による紐部材2の保持と保持の解除とを切り替えられるようにし、他方の押さえ片11では、上下の各端縁部をともにマスク本体1に固定して、紐部材2を保持する状態が維持されるようにしてもよい。
【0088】
第1実施例および第3実施例では、支持片10の孔部12と押さえ片11とマスク本体1との間隙13とが連通するように、左右の支持片10と押さえ片11とを隣接させたが、紐部材2をマスク本体1から離れないように保持する機能が損なわれないのであれば、各支持片10と押さえ片11との間にある程度の隙間が生じても差し支えはない。また、押さえ片11を複数にして、それらを所定の間隔を隔ててマスク本体1の横幅方向に沿って配置してもよい。
【0089】
第1実施例のマスクM1については、四隅の支持片10を第3実施例と同様の短冊状の形態に変更し、支持片10の紐部材2を通す範囲以外をマスク本体1に固定することによって、孔部12を形成してもよい。
【0090】
第1実施例および第3実施例では、押さえ片11の上端縁部および下端縁部のうち、マスク本体1の縁側の端縁部をマスク本体1に固定し、他方をマスク本体に着脱可能に連結したが、この関係を逆とし、マスク本体1の内側に対する連結を固定し、端縁側への連結を外せるようにしてもよい。また、紐部材2との係わりを変更するとき以外に自然に外れるおそれがないだけの連結強度を維持できるのであれば、上端縁部および下端縁部の双方をマスク本体1に着脱可能に連結してもよい。
【0091】
マスク本体1への重なり状態が安定するように押さえ片11の幅を支持片10より広くすると共に、マスク本体1に着脱可能に連結される箇所の連結に面ファスナーや両面テープを用いてもよい。また、押さえ片11の端縁全体をその連結の対象とする必要はなく、紐部材2の保持に差し支えない範囲で、適当な間隔をあけて連結するにとどめてもよい。
【0092】
第3実施例の支持片10の中央部10aとマスク本体1との連結も同様に、中央部10aの全体を連結せずに、適当な間隔をあけた複数箇所で連結することもできる。
【0093】
各実施例では、マスク本体1をプリーツ型としたが、これに限らず、平型のマスク本体1にも各実施例の技術的特徴を適用することができる。立体型のマスク本体1にも、第1実施例や第2実施例に示した基本の構成を適用することができる。
【0094】
マスク本体1の素材は不織布に限らず、織物による布地や薄い紙シートを用いてもよい。マスク本体1を布製にする場合には、支持片10や押さえ片11は、着脱できるようにする部分を除き、縫製によってマスク本体1に連結してもよい。
【0095】
各実施例では、1本のゴム紐を紐部材2としたが、上端縁部の孔部12,12に通される紐部材2と、下端縁部の孔部12,12に通される紐部材2との2本として、それらを連結して耳掛け部2a,2bを形成してもよい。いずれか一方の端縁部のみに紐部材2が支持される場合も、孔部12が形成されない側の端縁部の両端位置にそれぞれ1本ずつ紐部材を連結し、それらの紐部材と孔部12に通された紐部材2とを連結して耳掛け部2a,2bを形成してもよい。
【0096】
紐部材2の素材はゴム紐のみから構成されるものに限らず、たとえば、マスク本体1の端縁部に沿わせる箇所をゴム紐より幅の広い平紐とし、この平紐の両端にゴム紐を連結した構成のものを紐部材2としてもよい。ゴム紐についても平型のものを使用することもできる。また紐部材2の幅が広くなったときは、押さえ片12を紐状の部材に置き換えても構わない。
【0097】
さらに、紐部材2のマスク本体1の左右に延び出る部分による耳掛け部に長さ調整用の部材(アジャスター)を取り付けたり、左右の耳掛け部を後頭部またはうなじの位置で専用の留め具により連結するなど、マスク本体1がずれずに顔面に装着されるようにするための種々の工夫を盛り込むことができる。また、耳掛け部の長さを調節可能とすることによって、マスク本体1がずれる心配がないだけの引張り力を耳掛け部にかけることができるのであれば、伸縮性を持たない材料による紐部材2を使用してもよい。
【0098】
上記の各実施例のマスクM1,M2,M3は、一般的な構成のマスクに簡単な変形を加えることによって製作することができるので、大幅なコストや労力をかけずに提供することができる。しかし、一般的なマスクにも、図12および図13に示すようなマスク補助具3を取り付けることによって、第3実施例相当の機能を付加することができる。
【0099】
このマスク補助具3(以下、単に「補助具3」という。)は、帯状の基部30と、この基部30の一方の面の両端部に配置される一対の支持片31,31と、各支持片31により基部30の長さ方向に沿った姿勢で支持される帯状の連結部材33と、各支持片31の間に配置される押さえ片32とを有する。
【0100】
基部30および支持片31は可撓性を有する樹脂シートにより形成される。押さえ片32や連結部材33にも同様の樹脂シートを用いることができるが、顔面に触れたときの肌触りを考慮して、布や通気性を有する樹脂シートやシリコン樹脂による成形品などの柔軟な材料を使用するのが望ましい。
【0101】
支持片31は上端位置および下端位置でそれぞれ基部30に連結され、この支持片31と基部30との間に生じる孔部34に連結部材33が挿通される(図12(C)および図13(C)を参照、)。押さえ片32は、図中の下端縁部が基部30に固定され、上端縁部が基部30に着脱可能に連結されている。連結部材33は、基部30とほぼ同等の長さで幅は基部30より短い帯布の両端部にそれぞれ紐掛け用のフック35が設けられた構成のものである。
【0102】
連結部材33は、押さえ片32と基部30との間に保持される(図12(D)を参照。)。また、押さえ片32の上端縁部と基部30との連結を一時的に外して連結部材33を押さえ片32の外に出し、押さえ片32を再び基部30に連結することによって、押さえ片32の表側に連結部材33を配置することができる(図13(D)を参照。)。
【0103】
さらに、上記の補助具3には、図14に示すように、基部30と押さえ片32との間に可撓性を有する線状体36(プラスチックワイヤーや針金など)を配備することもできる。その場合の線状体36は、たとえば、基部30の複数箇所に設けられたリング状の支持部材に挿通されることによって支持され、その支持が維持されたまま、連結部材33が基部30と押さえ片32との間に保持される状態(図14(A))と、その保持が解除されて連結部材33が押さえ片32の表側に出る状態(図14(B))とを切り替えることができる。。
【0104】
図示を省略した基部30の裏面(支持片31や押さえ片32が設けられていない側の面)には、剥離紙付きの両面テープが装着されている。この剥離紙を剥がしてテープの粘着層をマスク本体の内面の下端縁部または上端縁部に接触させることによって、補助具3はマスク本体に一体に設けられた状態となる。
【0105】
図15および図16は、上記の補助具3が一般的な構成のマスク100に取り付けられた例を表すものである。各図中の101はプリーツ型のマスク本体(プリーツの図示は省略。)であり、102はゴム紐による耳掛け部である。
【0106】
図15(A)の例の補助具3は、マスク本体101の内面の下端縁に沿う範囲に取り付けられている。また、マスク本体1の左右の耳掛け部102,102の下端部がマスク本体1から切り離されてそれらの端部が連結部材33の対応する側にあるフック35に連結されている。
【0107】
図15(B)の例の補助具3は、マスク本体101の上端縁に沿う範囲に、図15(A)の例とは180度回転した姿勢、すなわち押さえ片32のマスク本体101に固定される側の端縁部がマスク本体101の上端縁部に重ねられた姿勢にされて、取り付けられる。左右の耳掛け部102,102は、上端端部がマスク本体101から切り離されてそれらの端部が連結部材33の対応する側にあるフック35に連結される。
【0108】
図15(A)(B)の事例では、一方の耳掛け部102の上端部から他方の耳掛け部102の上端部までの範囲が連結部材33を挟んで一連に連なった状態になる。
【0109】
図16(A)の例の補助具3は、図15(A)の例と同様の姿勢でマスク本体101の下端縁に沿う範囲に取り付けられている。一方、左右の耳掛け紐102,102の下端部はマスク本体101に固定されたままとなり、上端部がマスク本体101から切り離されて連結部材33の対応する側にあるフック35に連結される。これによりマスク本体101の上端縁部は耳掛け部102による拘束から解放され、自由に動かせる状態になる。
【0110】
図16(B)の例の補助具3は、図15(B)の例と同様の姿勢でマスク本体101の上端縁に沿う範囲に取り付けられている。一方、左右の耳掛け紐102,102は、上端側はマスク本体101に固定されたままとなり、下端部がマスク本体101から切り離されて連結部材33の対応する側にあるフック35に連結される。これによりマスク本体101の下端縁部は耳掛け部102による拘束から解放され、自由に動かせる状態になる。
【0111】
上記の4例では、連結部材33が基部30と押さえ片32との間に保持された状態にして表したが、マスク本体101に取り付けられた後も、図13に示したように、押さえ片32による保持を解除して、押さえ片32の表側に連結部材33を配置することができる。
【0112】
なお、耳掛け部102と連結部材33とを連結する手段については、上記のようなフック35に限らず、クリップを用いてもよい。また、連結部33に直接にスリットまたは貫通穴を設けて、これに耳掛け部10を通し、玉結びやテープの貼着などの方法で固定してもよい。また、連結部材33の形態は帯状紐に限らず、マスク100の耳掛け部102と同程度の太さの丸紐または平紐を連結部材33としてもよい。その場合の紐はゴム紐であってもよい。
【0113】
基部30をマスク本体101に連結する手段も両面テープに限らず、たとえば、マスク本体101の端縁部やプリーツのひだなどの複数箇所にクリップ等で留めるようにしてもよい。
【0114】
図15および図16に示した4つの取付例のいずれにおいても、マスク本体101に取り付けられた補助具3の連結部材33は、取り付け後も、マスク本体101に対しその左右方向に沿って相対的に移動可能に支持されると共に、押さえ片32と連結部材33との係わりを変化させることによって、連結部材33が基部30と押さえ片32との間に保持された状態(図12)と、この保持が解除されて押さえ片32の表側に配置された状態(図13)とを切り替えることが可能である。
【0115】
よって、押さえ片32による保持を解除して、マスク本体101の補助具3が取り付けられた端縁部の両端部が互いに接近するように、マスク本体101または連結部材33を動かすと、可撓性を有する基部30が連結部材33から離れる方向に撓み、これに伴い、マスク本体101の補助具3が装着されている端縁部を同様に撓ませることができる。この状態を維持したまま、各耳掛け部102,102をマスク本体101から離れる方向に適度な力で引っ張って、その引張り力を連結部材33に伝搬させることによって、基部30やマスク本体101の撓みを維持することができる。
【0116】
図17(A)は、図15(A)に示した取付方法によりマスク本体101の下端縁部に補助具3が取り付けられたマスク100を装着した例を示し、図17(B)は、図15(B)に示した取付方法によりマスク本体101の上端縁部に補助具3が取り付けられたマスク100を装着した例を示す。さらに、図17(C)は、マスク本体101の下端縁部および上端縁部の双方に、それぞれ図15(A)(B)に示した方法で補助具3が取り付けられたマスク100を装着した例を示す。
【0117】
上記3例ではいずれも、補助具3の押さえ片32による連結部材33の保持が解除された状態にすることによって、マスク本体101の補助具3が取り付けられている側の端縁部が顔面から離れる方向に湾曲し、先の図10(A)(B)(C)の例と同様の通気スペースが形成される。
【0118】
一方、連結部材33が基部30と押さえ片32との間に保持されると、三者は変形するときも一体となって変形するので、マスク本体101の補助具3が取り付けられた端縁部を顔面に沿わせて通気スペースのない状態にすることができる。
【0119】
図18(A)および(B)は、図16(A)に示した方法で補助具3が取り付けられたマスク100によって、マウスシールドモードの装着状態にした例を表したものである。図18(A)の例では、連結部材33を基部30と押さえ部材32との間に保持することによって、マスク本体101の下端縁を顔面に沿わせた状態にしている。一方、図18(B)の例では、押さえ部材32による連結部材33の保持を解除することによって、マスク100の下端縁の中心部が顔面から離れた位置で支持されている。
【0120】
図18(C)および(D)は、図16(B)に示した方法で補助具3が取り付けられたマスク100によって、フェイスシールドモードの装着状態にした例を表したものである。図18(C)の例では、連結部材33を基部30と押さえ部材32との間に保持することによって、マスク本体101の上端縁を顔面に沿わせた状態にしている。一方、図18(D)の例では、押さえ部材32による連結部材33の保持を解除することによって、マスク100の上端縁の中心部が顔面から離れた位置で支持されている。
【0121】
上記のとおり、この実施例の補助具3によれば、一般的な構成のマスク100に、第3実施例のマスクM3と同等の機能を付加することができる。この補助具3を複数のマスク100に使えるようにマスク本体101から取り外し可能とする、または安価な材料で製作して使い捨て可能とすれば、通気性や熱気を逃がす機能の向上を求める多くの人に、手頃な価格で提供して役立ててもらうことができる。
【0122】
図14に示したように、基部30と押さえ片32との間に可撓性を有する線状体36を収容して保持するようにすれば、基部30の撓みの度合いを調整しやすくなり、その調整により通気スペースの形状や大きさを安定させることができる。通気スペースを閉じる必要が生じたときも、線状体36の復元力によって基部30やマスク本体101の撓みを速やかに解消させることができる。
また、線状体36を加えれば、基部30を布などの柔軟な材料にしても、基部30やマスク本体101に通気スペースの形成に必要な撓みを生じさせ、その撓みを維持することができる。
【0123】
上記実施例の補助具3では、支持片31,31に挟まれた範囲全体に押さえ片32を配置すると共に、この押さえ片32の幅を連結部材33より広くすることによって、連結部材33が保持されるときは、支持片31,31の外に突出した部分以外の全範囲に押さえ片32が被さるようにしたが、押さえ片32の形態はこれに限るものではない。たとえば、マスクM1の第1実施例について述べたのと同様に、支持片31,31に挟まれる範囲の一部分のみに押さえ片32を配置しても良いし、当該範囲に適当な間隔を隔てて複数の押さえ片32を配置してもよい。
【0124】
また押さえ片32の幅を連結部材33より狭くしても、押さえ片32を連結部材33の幅の範囲の一部に重なるように配備すれば、連結部材33を基部3と押さえ片32との間に挟んで保持したり、その保持を解除することができる。連結部材33にある程度の幅があれば、押さえ片32に代えて紐状の部材を使用することもできる。
【0125】
連結部材33を支持片31,31に挿入されたまま上下動可能とし、その上下動によって連結部材33を基部3と押さえ片32との間に出没させることによって、両者の間に保持された状態と保持が解除された状態とを切り替えてもよい。また支持片31,31に、孔部34とは別に、上下方向に沿うスリットを形成し、それらのスリットに押さえ片32を挿通することによって押さえ片32が上下動できるようにすれば、その上下動によって、押さえ片32を連結部材33の上に載せて保持する状態とその保持が解除された状態とを切り替えることができる。
【0126】
上述した各種変形例を含め、本発明の補助具3を、基部30や押さえ片31をプラスチックワイヤーや針金などによる枠体とし、その枠体に帯状または紐状の連結部材33を支持した構成にすることもできる。
【0127】
ここまでに説明した3例のマスクM1,M2,M3や補助部材3は、いずれも左右の耳掛け部と一体となった紐状または帯状の連結部材を、マスク本体の上端縁部および下端縁部に対して左右方向に沿って相対的に移動可能かつマスク本体から離反可能に支持することによって、マスク本体を顔面から離れる方向に撓ませることを可能としたものである。ただし、これらの実施例より簡易な構成でも、各実施例の基本的な機能と同じ機能を発揮できる場合がある。その一例を図19および図20を用いて説明する。
【0128】
この別例のマスクM4は、プリーツ型のマスク本体40の左右にゴム紐による耳掛け部43,43を連結して成り、マスク本体40の上端縁部および下端縁部には、その端縁部からマスク本体1の高さ中央部までの範囲に重なる大きさの被覆片41が連結されている。この被覆片41は、二重になるように曲げられ、曲げられた側とは反対側の端縁部がマスク本体1の端縁部に固定される。曲げられた側の端縁部は面ファスナーなどによってマスク本体1の中央部に着脱可能に連結される。
【0129】
さらに、この被覆片41は、内面の上端位置および下端位置の2箇所でプラスチックワイヤー42を挿脱可能に支持することができる(たとえば、それぞれの支持位置にリング状の収容部材が2つ設けられ、それらの間にワイヤー42が掛け渡される。)。プラスチックワイヤー42は、被覆片41ごとに1本ずつ用意され、対応する被覆片41の2箇所の支持位置に支持される。なお、この実施例のプラスチックワイヤー42は、ノーズフィッター用のワイヤーよりも剛性が高く、かつ可撓性を有するものであるが、可撓性を有する金属製の線状体(針金など)に置き換えることも可能である。
【0130】
図21(A)(B)は、上記のマスクM4を装着した事例を表すものである。各被覆片41のプラスチックワイヤー42は、図21(A)の例ではマスク本体40の端縁部側に支持され、図21(B)の例ではマスク本体40の中央部側に支持されている。
【0131】
図19(A)および図20(A)に示すように、マスク本体40の端縁部側にプラスチックワイヤー42が支持されているときは、このワイヤー42を顔面から離れる方向に撓ませることによって端縁部にも同様の撓みを発生させ、図21(A)に示すように、撓んだ端縁部と顔面との間に通気スペースを形成することができる。
【0132】
通気スペースを形成せずにマスク本体40の顔面への密着度を高めたい場合には、プラスチックワイヤー42を含む端縁部が顔面にあたると、その押圧に痛みを感じたり、顔面に端縁部の形がつくなどの問題が生じるおそれがある。しかし、この問題は、プラスチックワイヤー42の支持位置をマスク本体40の端縁部の側から中央部の側に変更することによって解決することができる。
【0133】
図19(B)および図20(B)に示すように、プラスチックワイヤー42をマスク本体40の中央部に移動させることによって、図21(B)に示すように、顔面への密着度合いを高めた状態にすることができる。また、マスク本体40の上端縁部や下端縁部はワイヤー42のない柔らかい状態に戻るので、これらの端縁部が顔面に当たったときの堅苦しさを和らげることができる。
【符号の説明】
【0134】
M1,M2,M3,100 マスク
1,101 マスク本体
2 紐部材
2a,2b,102 耳掛け部
3 補助具
10,31 支持片
11,32 押さえ片
12,34 孔部
15 線状体
30 基部33
33 連結部材
35 フック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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