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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049042
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】シート材搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/12 20060101AFI20220322BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20220322BHJP
   H01M 10/058 20100101ALN20220322BHJP
【FI】
B65H5/12 B
H01M10/04 Z
H01M10/058
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155054
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】藤田 亮
(72)【発明者】
【氏名】阿部 竜太
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雅秀
【テーマコード(参考)】
3F101
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
3F101CA14
3F101CA17
3F101CB08
3F101CC08
3F101CC11
3F101CD05
3F101CE29
3F101LA15
3F101LB10
5H028AA05
5H028BB18
5H028CC08
5H029AJ14
5H029CJ30
(57)【要約】
【課題】曲面形状の保持面と平面形状の保持面との間でシート材の授受を行う際にシート材にかかる負荷を軽減する。
【解決手段】シート材搬送装置100は、曲面形状の第1保持面116を有する複数の第1保持ヘッド102と、複数の第1保持ヘッド102を保持して回転する第1ドラム104と、平面形状の第2保持面120を有する複数の第2保持ヘッド106と、複数の第2保持ヘッド106を保持して回転する第2ドラム108と、各第2保持面120の傾きを調整する傾き調整機構110と、第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106の相対移動速度を調整する速度調整機構112とを備える。第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106は、各ドラムの回転により受渡位置IVに移動し、傾き調整機構110および速度調整機構112による調整がなされた状況で、シート材Wを第1保持面116と第2保持面120との間で受け渡す。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を保持するための曲面形状の第1保持面を有する複数の第1保持ヘッドと、
複数の前記第1保持ヘッドを円周方向に所定の間隔をあけて且つ各第1保持面が外側を向くように保持し、第1方向に回転して複数の前記第1保持ヘッドを周回させる第1ドラムと、
前記シート材を保持するための平面形状の第2保持面を有する複数の第2保持ヘッドと、
複数の前記第2保持ヘッドを円周方向に所定の間隔をあけて且つ各第2保持面が外側を向くように保持し、前記第1方向とは逆の第2方向に回転して複数の前記第2保持ヘッドを周回させる第2ドラムと、
前記第2ドラムの半径方向に対する前記第2保持面の傾きを調整する傾き調整機構と、
前記シート材の授受が行われる1組の前記第1保持ヘッドおよび前記第2保持ヘッドの相対移動速度を調整する速度調整機構と、を備え、
いずれか一方が前記シート材を保持し、他方が前記シート材を未保持の前記第1保持ヘッドおよび前記第2保持ヘッドは、各ドラムの回転によって前記第1保持面および前記第2保持面が互いに対向する受渡位置に移動し、前記傾き調整機構および前記速度調整機構により前記傾きおよび前記相対移動速度が調整された状況で、前記シート材を前記第1保持面と前記第2保持面との間で受け渡す、
シート材搬送装置。
【請求項2】
互いに対向する第1保持面および第2保持面において、互いに最も接近する位置に前記シート材の受渡点が形成され、
前記傾き調整機構および前記速度調整機構は、前記受渡点が前記第1保持面に対して平行に移動し、且つ前記受渡点における前記相対移動速度がゼロに近づくように、前記傾きおよび前記相対移動速度を調整する、
請求項1に記載のシート材搬送装置。
【請求項3】
前記第2ドラムの半径方向における各第2保持面の位置を調整する半径位置調整機構を備える、
請求項1に記載のシート材搬送装置。
【請求項4】
互いに対向する第1保持面および第2保持面において、互いに最も接近する位置に前記シート材の受渡点が形成され、
前記傾き調整機構、速度調整機構および前記半径位置調整機構は、前記受渡点の位置が各ドラムの回転中心に対して固定され、且つ前記受渡点における前記相対移動速度がゼロに近づくように、前記傾き、前記相対移動速度および前記第2保持面の半径方向位置を調整する、
請求項3に記載のシート材搬送装置。
【請求項5】
各第2保持ヘッドは、各第1保持ヘッドから前記シート材を受け取り、前記第2ドラムの回転によって積層ステージと対向する積層位置に順次移動し、保持している前記シート材を積層ステージ上に排出して複数のシート材を積層する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシート材搬送装置。
【請求項6】
各第2保持ヘッドは、前記積層位置において前記第2保持面を前記積層ステージに接近させる、
請求項5に記載のシート材搬送装置。
【請求項7】
前記シート材は、電池の電極板およびセパレータの少なくとも一方を含む、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシート材搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シート材搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用等の電池として、積層ラミネートタイプの電池が開発されている。この電池は、複数の正極板および複数の負極板がセパレータを挟んで交互に積層された積層電極体と、電解液とが容器に収容された構造を有する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-221715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層電極体は、例えば数枚の電極板とセパレータとを交互に積層したシート材である単位積層体を順次搬送し、複数の単位積層体を積層ステージ上に積層することで形成することができる。単位積層体の搬送では、曲面形状の保持面を有する保持ヘッドと平面形状の保持面を有する保持ヘッドとの間で単位積層体の授受が行われる場合がある。この場合、保持面が曲面から平面に、あるいは平面から曲面に切り替わることが原因で、単位積層体に剪断力等の負荷がかかるおそれがある。また、単位積層体に限らず他のシート材の搬送においても、曲面形状の保持面と平面形状の保持面との間での授受は行われる場合があり、これらのシート材にも搬送時に負荷がかかるおそれがある。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、曲面形状の保持面と平面形状の保持面との間でシート材の授受を行う際にシート材にかかる負荷を軽減する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様は、シート材搬送装置である。この装置は、シート材を保持するための曲面形状の第1保持面を有する複数の第1保持ヘッドと、複数の第1保持ヘッドを円周方向に所定の間隔をあけて且つ各第1保持面が外側を向くように保持し、第1方向に回転して複数の第1保持ヘッドを周回させる第1ドラムと、シート材を保持するための平面形状の第2保持面を有する複数の第2保持ヘッドと、複数の第2保持ヘッドを円周方向に所定の間隔をあけて且つ各第2保持面が外側を向くように保持し、第1方向とは逆の第2方向に回転して複数の第2保持ヘッドを周回させる第2ドラムと、第2ドラムの半径方向に対する第2保持面の傾きを調整する傾き調整機構と、シート材の授受が行われる1組の第1保持ヘッドおよび第2保持ヘッドの相対移動速度を調整する速度調整機構とを備える。いずれか一方がシート材を保持し、他方がシート材を未保持の第1保持ヘッドおよび第2保持ヘッドは、各ドラムの回転によって第1保持面および第2保持面が互いに対向する受渡位置に移動し、傾き調整機構および速度調整機構により傾きおよび相対移動速度が調整された状況で、シート材を第1保持面と第2保持面との間で受け渡す。
【0007】
以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、曲面形状の保持面と平面形状の保持面との間でシート材の授受を行う際にシート材にかかる負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】積層電極体製造装置の模式図である。
図2】実施の形態1に係るシート材搬送装置の模式図である。
図3】第2保持ヘッド、傾き調整機構、速度調整機構および半径位置調整機構の模式図である。
図4図4(a)~図4(c)は、シート材搬送装置の動作を説明するための模式図である。
図5】実施の形態2に係るシート材搬送装置の模式図である。
図6】第2保持ヘッド、傾き調整機構および速度調整機構の模式図である。
図7図7(a)~図7(c)は、シート材搬送装置の動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、本開示を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、積層電極体製造装置1の模式図である。積層電極体製造装置1は、一例として複数のドラムを組み合わせた連続ドラム式の製造装置である。電極体やセパレータの切断、加熱、接着、積層等の各工程をドラムで実行することで、高速且つ連続的に積層電極体を製造することができる。積層電極体は、例えばリチウムイオン二次電池に用いられる。
【0012】
積層電極体製造装置1は、第1極切断ドラム2と、第1極加熱ドラム4と、第2極切断ドラム6と、第2極加熱ドラム8と、接着ドラム10と、セパレータ切断ドラム12と、積層ドラム14とを備える。
【0013】
第1極切断ドラム2は、複数の第1極板の連続体を切断し、複数の第1極板に個片化して搬送するドラムである。本実施の形態では、第1極は負極である。第1極切断ドラム2には、複数の第1極板の連続体である、帯状の第1極連続体Nが供給される。第1極連続体Nは、第1極集電体と、第1極活物質層とを有する。第1極活物質層は、第1極集電体上に積層される。本実施の形態では、第1極集電体の両面に第1極活物質層が積層されるが、第1極集電体の一方の面のみに第1極活物質層が積層されてもよい。
【0014】
第1極集電体および第1極活物質層は、いずれも公知の材料で構成することができ、いずれも公知の構造を有する。第1極集電体は、例えば銅やアルミニウム等からなる、箔や多孔体で構成される。第1極活物質層は、例えば第1極活物質、結着材および分散剤等を含む第1極合材スラリーを第1極集電体の表面に塗布し、塗膜を乾燥、圧延することで形成される。第1極集電体の厚さは、例えば3μm以上50μm以下である。第1極活物質層の厚さは、例えば10μm以上100μm以下である。
【0015】
第1極切断ドラム2は、ドラムの円周方向に配置される複数の保持ヘッドと、第1極連続体Nを切断する切断刃とを有する。複数の保持ヘッドは、第1極連続体Nを吸着保持する保持面を有する。各保持ヘッドの保持面は、第1極切断ドラム2の外側を向く。第1極切断ドラム2に供給される第1極連続体Nは、複数の保持ヘッドの保持面に吸着保持された状態で、第1極切断ドラム2の回転によって搬送される。
【0016】
複数の保持ヘッドは、それぞれ第1極切断ドラム2の中心軸回りに回転するとともに、他の保持ヘッドに対して互いに独立にドラムの円周方向に移動することができる。各保持ヘッドの相対的な移動は、第1極切断ドラム2を回転させるモータとは別のモータが各保持ヘッドに搭載されることで実現される。保持ヘッドの独立駆動により、切断刃による第1極連続体Nの切断位置の調整や、個片化された第1極板の位置調整等が可能となる。
【0017】
第1極切断ドラム2は、供給される第1極連続体Nを吸着保持して回転搬送し、図1に模式的に示す切断位置16において第1極連続体Nを切断する。第1極連続体Nは、隣り合う保持ヘッドの間の位置で切断刃により切断されて、複数の第1極板に個片化される。得られた各第1極板は、各保持ヘッドに吸着保持された状態で搬送される。生成される複数の第1極板の位置は、カメラ等で監視される。
【0018】
第1極加熱ドラム4は、第1極切断ドラム2に近接配置される。第1極切断ドラム2の保持ヘッドは、第1極加熱ドラム4との近接位置の手前において、第1極加熱ドラム4の線速度と略同一になるまで一時的に増速または減速する。これにより、保持ヘッドは、第1極加熱ドラム4との相対速度が略ゼロになる。保持ヘッドは、相対速度が略ゼロになったタイミングで、吸着保持していた第1極板を第1極加熱ドラム4側に排出する。
【0019】
第1極加熱ドラム4は、第1極切断ドラム2から排出された第1極板を吸着保持しながら回転し、内蔵するヒータで第1極板を予備加熱する。予備加熱は、後の接着工程においてセパレータと第1極板とを熱接着するために実施される。本実施の形態では、加熱位置18において第1極板を加熱するが、これに限らず、例えば第1極加熱ドラム4の円周方向の全域で第1極板を加熱してもよい。
【0020】
第2極切断ドラム6は、複数の第2極板の連続体を切断し、複数の第2極板に個片化して搬送するドラムである。本実施の形態では、第2極は正極である。第2極切断ドラム6には、複数の第2極板の連続体である、帯状の第2極連続体Pが供給される。第2極連続体Pは、第2極集電体と、第2極活物質層とを有する。第2極活物質層は、第2極集電体上に積層される。本実施の形態では、第2極集電体の両面に第2極活物質層が積層されるが、第2極集電体の一方の面のみに第2極活物質層が積層されてもよい。
【0021】
第2極集電体および第2極活物質層は、いずれも公知の材料で構成することができ、いずれも公知の構造を有する。第2極集電体は、例えばステンレス鋼やアルミニウム等からなる、箔や多孔体で構成される。第2極活物質層は、例えば第2極活物質、結着材および分散剤等を含む第2極合材スラリーを第2極集電体の表面に塗布し、塗膜を乾燥、圧延することで形成される。第2極集電体の厚さは、例えば3μm以上50μm以下である。第2極活物質層の厚さは、例えば10μm以上100μm以下である。
【0022】
第2極切断ドラム6は、ドラムの円周方向に配置される複数の保持ヘッドと、第2極連続体Pを切断する切断刃とを有する。複数の保持ヘッドは、第2極連続体Pを吸着保持する保持面を有する。各保持ヘッドの保持面は、第2極切断ドラム6の外側を向く。第2極切断ドラム6に供給される第2極連続体Pは、複数の保持ヘッドの保持面に吸着保持された状態で、第2極切断ドラム6の回転によって搬送される。
【0023】
複数の保持ヘッドは、それぞれ第2極切断ドラム6の中心軸回りに回転するとともに、他の保持ヘッドに対して互いに独立にドラムの円周方向に移動することができる。各保持ヘッドの相対的な移動は、第2極切断ドラム6を回転させるモータとは別のモータが各保持ヘッドに搭載されることで実現される。保持ヘッドの独立駆動により、切断刃による第2極連続体Pの切断位置の調整や、個片化された第2極板の位置調整等が可能となる。
【0024】
第2極切断ドラム6は、供給される第2極連続体Pを吸着保持して回転搬送し、図1に模式的に示す切断位置20において第2極連続体Pを切断する。第2極連続体Pは、隣り合う保持ヘッドの間の位置で切断刃により切断されて、複数の第2極板に個片化される。得られた各第2極板は、各保持ヘッドに吸着保持された状態で搬送される。生成される複数の第2極板の位置は、カメラ等で監視される。
【0025】
第2極加熱ドラム8は、第2極切断ドラム6に近接配置される。第2極切断ドラム6の保持ヘッドは、第2極加熱ドラム8との近接位置の手前において、第2極加熱ドラム8の線速度と略同一になるまで一時的に増速または減速する。これにより、保持ヘッドは、第2極加熱ドラム8との相対速度が略ゼロになる。保持ヘッドは、相対速度が略ゼロになったタイミングで、吸着保持していた第2極板を第2極加熱ドラム8側に排出する。
【0026】
第2極加熱ドラム8は、第2極切断ドラム6から排出された第2極板を吸着保持しながら回転し、内蔵するヒータで第2極板を予備加熱する。予備加熱は、後の接着工程においてセパレータと第2極板とを熱接着するために実施される。本実施の形態では、加熱位置22において第2極板を加熱するが、これに限らず、例えば第2極加熱ドラム8の円周方向の全域で第2極板を加熱してもよい。
【0027】
接着ドラム10は、複数の単位積層体が連続する連続積層体26を形成するドラムである。各単位積層体は、第1セパレータ、第1極板、第2セパレータおよび第2極板で構成される。接着ドラム10には、複数の第1セパレータが連続する、帯状の第1セパレータ連続体S1と、複数の第2セパレータが連続する、帯状の第2セパレータ連続体S2とが供給される。第1セパレータ連続体S1および第2セパレータ連続体S2のそれぞれの表面には、熱接着層が設けられる。熱接着層は、室温では接着性を発現しないが、加熱により接着性を発現する性質を有する。例えば熱接着層は、熱可塑性ポリマーを含有する熱可塑性層であり、加熱による熱可塑性ポリマーの塑性変形に基づいて接着性を発現する。
【0028】
また、接着ドラム10は、第1極加熱ドラム4および第2極加熱ドラム8に近接配置される。そして、接着ドラム10には、第1極加熱ドラム4を介して第1極切断ドラム2から複数の第1極板が供給され、第2極加熱ドラム8を介して第2極切断ドラム6から複数の第2極板が供給される。第1極板は、第1極加熱ドラム4で予備加熱されながら回転搬送され、第1極加熱ドラム4と接着ドラム10との近接位置において接着ドラム10側に排出される。第2極板は、第2極加熱ドラム8で予備加熱されながら回転搬送され、第2極加熱ドラム8と接着ドラム10との近接位置において接着ドラム10側に排出される。
【0029】
接着ドラム10に対する第1セパレータ連続体S1、第1極板、第2セパレータ連続体S2および第2極板の供給位置は、接着ドラム10の回転方向の上流側から、列挙した順に並ぶ。したがって、まず所定位置において、接着ドラム10に第1セパレータ連続体S1が供給される。第1セパレータ連続体S1は、接着ドラム10に吸着保持されて、回転搬送される。続いて、第1セパレータ連続体S1の供給位置よりも下流側において、第1極加熱ドラム4から接着ドラム10に第1極板が供給され、第1セパレータ連続体S1の上に載置される。複数の第1極板は、第1セパレータ連続体S1の搬送方向に所定の間隔をあけて第1セパレータ連続体S1の上に配列される。
【0030】
続いて、第1極板の供給位置よりも下流側において、接着ドラム10に第2セパレータ連続体S2が供給され、複数の第1極板の上に載置される。続いて、第2セパレータ連続体S2の供給位置よりも下流側において、第1セパレータ連続体S1、複数の第1極板および第2セパレータ連続体S2が熱圧着ローラ24によって加圧され、これらが互いに接着される。続いて、熱圧着ローラ24による圧着位置よりも下流側において、第2極加熱ドラム8から接着ドラム10に第2極板が供給され、第2セパレータ連続体S2の上に載置される。複数の第2極板は、第2セパレータ連続体S2の搬送方向に所定の間隔をあけて第2セパレータ連続体S2の上に配列される。また、第2極加熱ドラム8の押圧力によって、複数の第2極板は第2セパレータ連続体S2に接着される。
【0031】
以上の工程により、第1セパレータ連続体S1、複数の第1極板、第2セパレータ連続体S2および複数の第2極板がこの順に積層され、接着されて、連続積層体26が形成される。連続積層体26は、第1セパレータ、第1極板、第2セパレータおよび第2極板で構成される単位積層体が、第1セパレータ連続体S1および第2セパレータ連続体S2でつながれて連続する構造を有する。連続積層体26は、接着ドラム10からセパレータ切断ドラム12に搬送される。なお、第2極切断ドラム6側から第2極板が供給されないことで、一定個数毎に、第2極板を含まない3層構造の単位積層体が生成されてもよい。また、供給されない電極板は第1極板であってもよい。
【0032】
セパレータ切断ドラム12は、連続積層体26の第1セパレータ連続体S1および第2セパレータ連続体S2を切断して、複数の単位積層体に個片化するドラムである。セパレータ切断ドラム12は、ドラムの円周方向に配置される複数の保持ヘッドと、連続積層体26を切断する切断刃とを有する。複数の保持ヘッドは、連続積層体26を吸着保持する保持面を有する。各保持ヘッドの保持面は、セパレータ切断ドラム12の外側を向く。セパレータ切断ドラム12に供給される連続積層体26は、複数の保持ヘッドの保持面に吸着保持された状態で、セパレータ切断ドラム12の回転によって搬送される。
【0033】
複数の保持ヘッドは、それぞれセパレータ切断ドラム12の中心軸回りに回転するとともに、他の保持ヘッドに対して互いに独立にドラムの円周方向に移動可能であってもよい。各保持ヘッドの相対的な移動は、セパレータ切断ドラム12を回転させるモータとは別のモータが各保持ヘッドに搭載されることで実現される。保持ヘッドの独立駆動により、切断刃による連続積層体26の切断位置の調整や、個片化された単位積層体の位置調整等が可能となる。
【0034】
セパレータ切断ドラム12は、図1に模式的に示す切断位置28において連続積層体26を切断する。連続積層体26は、隣り合う保持ヘッドの間の位置で切断されて、複数の単位積層体に個片化される。このとき、連続積層体26の第1セパレータ連続体S1および第2セパレータ連続体S2は、連続積層体26の搬送方向で隣り合う電極板の間において切断される。得られた各単位積層体は、各保持ヘッドに吸着保持された状態で搬送される。保持ヘッドは、吸着保持していた単位積層体を積層ドラム14側に排出する。生成される複数の単位積層体の位置は、カメラ等で監視される。
【0035】
積層ドラム14は、複数の単位積層体を積層ステージ30に積層して積層電極体を形成するドラムである。積層ドラム14は、ドラムの円周方向に配置される複数の積層ヘッドを有する。各積層ヘッドは、単位積層体を吸着保持する保持面を有する。各積層ヘッドの保持面は、積層ドラム14の外側を向く。複数の積層ヘッドは、それぞれ積層ドラム14の中心軸回りに回転して、積層ステージ30と対向する積層位置に順次進行する。積層位置に到達した積層ヘッドは、保持している単位積層体を積層ステージ30に排出する。
【0036】
積層ステージ30は、積層ドラム14の直下に配置される。積層ステージ30には、積層ドラム14の各積層ヘッドから排出される単位積層体が順次積層される。これにより、積層電極体が形成される。積層ステージ30は、互いに直交するX軸方向およびY軸方向に駆動可能である。また、積層ステージ30は、X―Y平面上における傾き角を調整可能である。これにより、積層ステージ30に既に積層されている単位積層体に対する、積層ドラム14から排出される単位積層体のX軸方向およびY軸方向の位置、ならびに傾き角が調整される。
【0037】
セパレータ切断ドラム12および積層ドラム14は、本実施の形態に係るシート材搬送装置100で構成される。図2は、実施の形態1に係るシート材搬送装置100の模式図である。なお、図2では、固定プレート154に設けられる各カムおよびガイドレール158の図示を省略している。
【0038】
シート材搬送装置100は、複数の第1保持ヘッド102と、第1ドラム104と、複数の第2保持ヘッド106と、第2ドラム108と、傾き調整機構110と、速度調整機構112と、半径位置調整機構114とを備える。第1ドラム104は、セパレータ切断ドラム12に相当し、複数の第1保持ヘッド102は、セパレータ切断ドラム12が備える複数の保持ヘッドに相当する。また、第2ドラム108は、積層ドラム14に相当し、複数の第2保持ヘッド106は、複数の積層ヘッドに相当する。したがって本実施の形態では、第1保持ヘッド102は受渡ヘッドであり、第2保持ヘッド106は受取ヘッドである。なお、図1ではセパレータ切断ドラム12と積層ドラム14とが横に並び、図2では第1ドラム104と第2ドラム108が縦に並んでいるが、当業者であれば、これら2つのドラムの位置関係を適宜変更できることを当然に理解することができる。
【0039】
各第1保持ヘッド102は、シート材Wを保持するための第1保持面116を有する。例えば各第1保持面116は、空気等の雰囲気ガスを吸引する真空バルブ等の吸着機構(図示せず)を有し、吸着機構によってシート材Wを吸着保持する。各第1保持面116は、第1ドラム104の円周方向に並ぶ複数の吸着穴を有する。各吸着穴における雰囲気ガスの吸引の開始と停止とは、独立に切り替えることができる。本実施の形態のシート材Wは、一例として1枚または2枚の電極板と、2枚のセパレータとが積層された単位積層体である。つまり、シート材Wは電池の電極板およびセパレータを含む。なお、図2には8個の第1保持ヘッド102が図示されているが、第1保持ヘッド102の数は限定されない。
【0040】
複数の第1保持ヘッド102は、第1ドラム104によって保持される。第1ドラム104は、円筒状のドラムであり、複数の第1保持ヘッド102を円周方向に所定の間隔をあけて且つ各第1保持面116が円筒の外側を向くように保持する。第1ドラム104の回転中心C1には、モータ等の駆動機構(図示せず)が連結される。これにより第1ドラム104は、第1方向D1に回転して複数の第1保持ヘッド102を周回させる。本実施の形態では、一例として第1方向D1は反時計回り方向である。
【0041】
各第1保持面116は、曲面形状を有する。例えば、各第1保持面116の全体は、第1ドラム104の回転中心C1から等距離の位置に延在する。したがって、第1ドラム104の回転によって各第1保持ヘッド102が円周方向に移動すると、各第1保持面116は同一円筒面上を移動する。
【0042】
各第1保持ヘッド102は駆動部118を有し、他の第1保持ヘッド102に対して互いに独立に第1ドラム104の円周方向に移動可能である。駆動部118は、例えば公知のステッピングモータ等で構成される。つまり、各第1保持ヘッド102は、第1ドラム104の回転による移動とは別に、第1ドラム104の円周方向に移動することができる。これにより、第1保持ヘッド102は、第1ドラム104の回転に対して第1保持面116を回転方向の前後に変位させることができる。
【0043】
各第2保持ヘッド106は、シート材Wを保持するための第2保持面120を有する。例えば各第2保持面120は、空気等の雰囲気ガスを吸引する吸引機構(図示せず)を有し、吸引機構によってシート材Wを吸着保持する。各第2保持面120は、第2ドラム108の円周方向に並ぶ複数の吸着穴を有する。各吸着穴における雰囲気ガスの吸引の開始と停止とは、独立に切り替えることができる。なお、図2には8個の第2保持ヘッド106が図示されているが、第2保持ヘッド106の数は限定されない。
【0044】
複数の第2保持ヘッド106は、第2ドラム108によって保持される。第2ドラム108は、円筒状のドラムであり、複数の第2保持ヘッド106を円周方向に所定の間隔をあけて且つ各第2保持面120が円筒の外側を向くように保持する。第2ドラム108の回転中心C2には、モータ等の駆動機構(図示せず)が連結される。これにより第2ドラム108は、第1方向D1とは逆の第2方向D2に回転して複数の第2保持ヘッド106を周回させる。本実施の形態では、一例として第2方向D2は時計回り方向である。また、一例として第1ドラム104と第2ドラム108とは、同じ速度で回転する。
【0045】
各第2保持面120は、平面形状を有する。本実施の形態の各第2保持ヘッド106は、平面形状の積層ステージ30にシート材Wを排出し、積層ステージ30上でシート材Wを積層していく。このため、第2保持面120は、平面形状を有することが好ましい。
【0046】
第2ドラム108は、第1ドラム104に近接配置される。これにより、第1ドラム104および第2ドラム108それぞれの円周上の所定位置には、第1保持面116および第2保持面120が互いに対向する受渡位置IVが形成される。シート材Wを保持する各第1保持ヘッド102と、シート材Wを未保持の各第2保持ヘッド106とは、各ドラムの回転によって受渡位置IVに順次移動する。
【0047】
具体的には、各第1保持ヘッド102は、第1ドラム104の円周上位置Iにおいて、個片化されたシート材Wを吸着保持する。また、第1方向D1で円周上位置Iよりも下流側の円周上位置IIには、カメラ122が配置される。カメラ122により、シート材Wの状態や第1保持面116上の位置が検出される。そして、第1方向D1で円周上位置IIよりも下流側の円周上位置IIIにおいて、カメラ122の検知結果に応じて駆動部118が駆動する。これにより、各第1保持ヘッド102は、第1保持面116上のシート材Wの位置に応じて第1ドラム104の回転に対し前進または後退する。この結果、受渡位置IVで対向することになる第2保持面120に対する第1保持面116の位置が補正される。
【0048】
シート材Wを保持する各第1保持ヘッド102は、第1方向D1で円周上位置IIIよりも下流側の受渡位置IVに到達する。また、第2ドラム108の回転により、シート材Wを未保持の第2保持ヘッド106も受渡位置IVに到達する。そして、受渡位置IVにおいて、第1保持面116から第2保持面120にシート材Wが受け渡される。
【0049】
第1保持面116は曲面形状であり、第2保持面120は平面形状であるため、互いに対向する第1保持面116および第2保持面120には、互いに最も接近する部分が各面内に局所的に形成される。この互いに最も接近する位置に、シート材Wの受渡点124が形成される。受渡点124は、厳密には各ドラムの軸心方向に平行な直線である。第1保持ヘッド102の進行にともなって、受渡点124は、第1保持ヘッド102の移動方向の前から後に向かって第1保持面116上を移動する。また、第2保持ヘッド106の進行にともなって、受渡点124は、第2保持ヘッド106の移動方向における前から後に向かって第2保持面120上を移動する。
【0050】
第1保持面116の吸着穴は、受渡点124を通過したものから順にシート材Wの吸着を解除(吸着破壊)する。一方、第2保持面120の吸着穴は、受渡点124を通過したものから順にシート材Wの吸着を開始する。これにより、第1保持面116に保持されるシート材Wは、受渡点124を通過した部分から順に第2保持面120に受け渡される。なお、実際には、吸着機構を駆動してから吸着穴に吸引力(真空圧)が発生するまでタイムラグがある。このため、受渡点124を通過した時点で第2保持面120の吸着穴に吸引力が生じているように、各吸着穴が受渡点124を通過する所定時間前に、各吸着穴に対応する吸着機構が駆動される。
【0051】
第1ドラム104および第2ドラム108の回転を維持したまま第1保持面116から第2保持面120にシート材Wを受け渡す場合、シート材Wが曲面上から平面上に移る際にシート材Wに剪断力等の負荷がかかるおそれがある。これに対し、本実施の形態のシート材搬送装置100は、傾き調整機構110、速度調整機構112および半径位置調整機構114によって、シート材Wにかかる負荷を軽減する。図3は、第2保持ヘッド106、傾き調整機構110、速度調整機構112および半径位置調整機構114の模式図である。
【0052】
第2保持ヘッド106は、ヘッド部126と、ヘッド支持部128と、ベースプレート130と、リンク部132とを有する。ヘッド部126は略平板状であり、第2ドラム108の半径方向R外側を向く主表面が第2保持面120を構成する。半径方向R内側を向くヘッド部126の主表面には、第1カムフォロア134が設けられる。一例として、第1カムフォロア134は、第2保持ヘッド106の移動方向の後端に設けられる。
【0053】
ヘッド支持部128は略棒状であり、第2ドラム108の半径方向Rに延びる。半径方向R外側に位置するヘッド支持部128の端部は、揺動軸136を介してヘッド部126に連結される。ヘッド部126は、揺動軸136周りに回動可能であり、これにより半径方向Rに対する第2保持面120の傾きを変化させることができる。半径方向R内側に位置するヘッド支持部128の端部には、第2カムフォロア138が設けられる。
【0054】
ベースプレート130は、ヘッド支持部128を半径方向Rにスライド可能に保持する。ベースプレート130は、おおよそ半径方向Rに延びる長穴140を有する。リンク部132は、略L字状の部材であり、おおよそ半径方向Rに延びる第1部分142と、半径方向R外側の第1部分142の端部から略直角に延びる第2部分144とを有する。半径方向R内側の第1部分142の端部は、第3カムフォロア146を介して長穴140に連結される。これにより、リンク部132がリンク軸148を中心として回転することによって生じる第3カムフォロア146の半径方向Rの変位を長孔140の長さ分だけ許容することができる。
【0055】
第1部分142と第2部分144との交点(L字の角部)には、リンク軸148が設けられる。リンク軸148は、第2ドラム108に連結され、第2ドラム108の回転に追従する。リンク部132、ベースプレート130、ヘッド支持部128およびヘッド部126は、リンク軸148を介して第2ドラム108に連結される。したがって、リンク軸148が第2ドラム108の回転に追従することで、リンク部132、ベースプレート130、ヘッド支持部128およびヘッド部126が連動して第2ドラム108の円周方向に移動する。第2部分144の先端には、第4カムフォロア150が設けられる。
【0056】
傾き調整機構110は、第2ドラム108の半径方向Rに対する第2保持面120の傾きを調整する機構である。傾き調整機構110が第2保持面120の傾きを調整することで、半径方向Rに対して第2保持面120の法線の傾きが変化する。本実施の形態の傾き調整機構110は、第1カム152と、第1カムフォロア134とを含むカム機構で構成される。
【0057】
第2ドラム108には、第2ドラム108の回転に対して追従しない円形の固定プレート154が設けられる。第1カム152は、固定プレート154に設けられる。固定プレート154は、その中心が第2ドラム108の回転中心C2と重なるように配置される。第1カム152は、固定プレート154の円周方向に延在する。一例として、第1カム152は、固定プレート154の外周端面に設けられる。第1カムフォロア134は、第1カム152に摺動可能に当接し、第2ドラム108の回転にともなって第1カム152に沿って移動する。
【0058】
第1カム152は、第2ドラム108と同心の円を基調とした形状を有する。ただし、第1カム152のうち受渡位置IVを含む領域に延在する部分は、第2保持面120の傾きが変化するように、基調円に対してずれている。受渡位置IVを含む領域は、例えば、第2保持ヘッド106の移動方向後方側で受渡位置IVに接する所定領域(つまり、第2保持ヘッド106が受渡位置IVに到達する直前に通過する領域)と、受渡位置IVとを含む。
【0059】
例えば、第1カム152が基調円に対して円の中心から離れる方向に湾曲する場合、この部分を通過する第1カムフォロア134は第2ドラム108の半径方向R外側に変位する。これにより、第2保持面120は、揺動軸136周りに回動して第2保持ヘッド106の進行方向の前端側が半径方向R内側に変位する。したがって、第2保持面120を前傾させることができる。一方、第1カム152が基調円に対して円の中心に近づく方向に湾曲する場合、この部分を通過する第1カムフォロア134は、第2ドラム108の半径方向R内側に変位する。これにより、第2保持面120は、揺動軸136周りに回動して第2保持ヘッド106の進行方向の前端側が半径方向R外側に変位する。したがって、第2保持面120を後傾させることができる。なお、第1カムフォロア134が第1カム152の基調円上にあるときの第2保持面120の姿勢、つまり第2保持面120の法線が半径方向Rに対して平行になる第2保持面120の姿勢を基準傾斜姿勢とする。
【0060】
速度調整機構112は、シート材Wの授受が行われる1組の第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106の相対移動速度を調整する機構である。本実施の形態の速度調整機構112は、第1保持ヘッド102については第1ドラム104の全周で移動速度を一定とする。一方、第2保持ヘッド106については、移動方向後方側で受渡位置IVに接する所定領域と受渡位置IVとにおける移動速度を他の領域における移動速度とは異ならせる。これにより、受渡位置IVにおいて、第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106の相対移動速度が調整される。
【0061】
本実施の形態の速度調整機構112は、第2カム156と、第4カムフォロア150とを含むカム機構で構成される。第2カム156は、固定プレート154に設けられる。第2カム156は、固定プレート154の円周方向に延在する。一例として、第2カム156は、固定プレート154の主表面に設けられる溝カムである。第4カムフォロア150は、第2カム156に摺動可能に当接し、第2ドラム108の回転にともなって第2カム156に沿って移動する。
【0062】
第2カム156は、第2ドラム108と同心の円を基調とした形状を有する。ただし、第2カム156のうち受渡位置IVを含む領域に延在する部分は、第1保持ヘッド102と第2保持ヘッド106との相対移動速度が調整されるように、基調円に対してずれている。
【0063】
例えば、第2カム156が基調円に対して円の中心から離れる方向に湾曲する場合、この部分を通過する第4カムフォロア150は、第2ドラム108の半径方向R外側に変位する。これにより、リンク部132がリンク軸148周りに第2方向D2に回動し、第3カムフォロア146が第2保持ヘッド106の移動方向とは逆方向に変位する。ベースプレート130は、固定プレート154に設けられるガイドレール158に摺動可能に嵌まっている。ガイドレール158は、第2ドラム108と同心の円を基調とした形状を有する。このためベースプレート130は、第3カムフォロア146の変位にともなって、ガイドレール158上を第2保持ヘッド106の移動方向とは逆方向にスライドする(移動方向後方に変位する)。これにより、第2保持ヘッド106の移動速度が下がる。
【0064】
一方、第2カム156が基調円に対して円の中心に近づく方向に湾曲する場合、この部分を通過する第4カムフォロア150は、第2ドラム108の半径方向R内側に変位する。これにより、リンク部132がリンク軸148周りに第2方向D2とは逆方向(第1方向D1)に回動し、第3カムフォロア146が第2保持ヘッド106の移動方向に変位する。ベースプレート130は、第3カムフォロア146の変位にともなって、ガイドレール158上を第2保持ヘッド106の移動方向にスライドする(移動方向前方に変位する)。これにより、第2保持ヘッド106の移動速度が上がる。なお、第4カムフォロア150が第2カム156の基調円上にあるときの第2保持ヘッド106の移動速度、つまり第2ドラム108の回転のみに起因する移動速度を基準移動速度とする。また、速度調整機構112により加減速されていない第2保持ヘッド106がとる移動方向の前後位置を基準前後位置とする。
【0065】
半径位置調整機構114は、第2ドラム108の半径方向Rにおける各第2保持面120の位置を調整する機構である。本実施の形態の半径位置調整機構114は、第3カム160と、第2カムフォロア138とを含むカム機構で構成される。第3カム160は、固定プレート154に設けられる。第3カム160は、固定プレート154の円周方向に延在する。一例として、第3カム160は、固定プレート154の主表面に設けられる溝カムである。第2カムフォロア138は、第3カム160に摺動可能に当接し、第2ドラム108の回転にともなって第3カム160に沿って移動する。
【0066】
第3カム160は、第2ドラム108と同心の円を基調とした形状を有する。ただし、第3カム160のうち受渡位置IVを含む領域に延在する部分は、第2保持面120の半径方向位置が変化するように、基調円に対してずれている。
【0067】
例えば、第3カム160が基調円に対して円の中心から離れる方向に湾曲する場合、この部分を通過する第2カムフォロア138は第2ドラム108の半径方向R外側に変位する。これにより、ヘッド支持部128が半径方向R外側にスライドし、第2保持面120が第1保持面116に接近する。一方、第3カム160が基調円に対して円の中心に近づく方向に湾曲する場合、この部分を通過する第2カムフォロア138は、第2ドラム108の半径方向R内側に変位する。これにより、ヘッド支持部128が半径方向R内側にスライドし、第2保持面120が第1保持面116から遠ざかる。なお、第2カムフォロア138が第3カム160の基調円上にあるときの第2保持面120の位置を基準半径方向位置とする。
【0068】
受渡位置IVに到達した第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106は、傾き調整機構110、速度調整機構112および半径位置調整機構114によって、第2保持面120の傾きと、第1保持面116および第2保持面120の相対移動速度と、第2保持面120の半径方向位置とが調整された状況で、シート材Wを第1保持面116から第2保持面120に受け渡す。
【0069】
図4(a)~図4(c)は、シート材搬送装置100の動作を説明するための模式図である。なお、図4(a)~図4(c)では、各カムおよびガイドレール158の図示を省略している。本実施の形態の傾き調整機構110、速度調整機構112および半径位置調整機構114は、受渡点124の位置が各ドラムの回転中心C1,C2に対して固定され、且つ受渡点124における第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106の相対移動速度がゼロに近づくように、第2保持面120の傾きと、第1保持面116および第2保持面120の相対移動速度と、第2保持面120の半径方向位置とを調整する。
【0070】
具体的には、傾き調整機構110、速度調整機構112および半径位置調整機構114の連携によって、第2保持面120は、第1保持面116の受渡点124における接線に対し平行に且つ等速で移動する。したがって、受渡点124において第1保持面116に対する第2保持面120の角度は一定に保たれる。また、第2保持面120は、直線的に移動する。これにより、受渡点124の位置を第1ドラム104の回転中心C1および第2ドラム108の回転中心C2に対して固定することができる。一例として受渡点124の位置は、第1ドラム104の回転中心C1および第2ドラム108の回転中心C2と同一直線L上に固定される。また、受渡点124における第1保持面116および第2保持面120の相対移動速度はゼロに近づけられる。一例として相対移動速度は、シート材Wの受け渡しが完了するまでの間、実質的にゼロになる。
【0071】
まず、図4(a)に示すように、第2保持面120は、傾き調整機構110の作用により基準傾斜姿勢よりも前傾する。また、速度調整機構112の作用により基準移動速度よりも減速させられて、基準前後位置よりも後方に変位する。また、半径位置調整機構114の作用により基準半径方向位置よりも第1保持面116側に突出する。この状態で、第2保持ヘッド106は受渡位置IVに進入する。これにより、第1保持面116および第2保持面120の移動方向前端に受渡点124が形成される。受渡点124は、回転中心C1と回転中心C2とをつなぐ直線L上に位置する。第1保持ヘッド102は、シート材Wにおける受渡点124を通過した部分から順に第2保持ヘッド106に受け渡していく。
【0072】
第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106の進行中、傾き調整機構110は、第2保持面120の傾斜を徐々に緩めて、基準傾斜角度に近づけていく。また、速度調整機構112は、第2保持面120を進行方向に加速させ、受渡点124における第1保持面116および第2保持面120の相対移動速度を略ゼロに維持する。また、半径位置調整機構114は、第2保持面120を徐々に第1保持面116から離間させて、基準半径方向位置に近づけていく。これにより、図4(b)に示すように、受渡点124は、直線L上に位置する状態を保ったまま、第1保持面116および第2保持面120それぞれの中間位置に到達する。この状態で第2保持面120は、基準傾斜角度、基準前後位置および基準半径方向位置をとる。したがって、第2保持面120は、直線Lに対して垂直になっている。
【0073】
第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106がさらに進行すると、傾き調整機構110は、第2保持面120を基準傾斜角度から徐々に後傾させる。また、速度調整機構112は、第2保持面120が加速された状態を維持し、受渡点124における第1保持面116および第2保持面120の相対移動速度を略ゼロに維持する。また、半径位置調整機構114は、第2保持面120を基準半径方向位置から徐々に第1保持面116に近づけていく。これにより、図4(c)に示すように、受渡点124は、直線L上に位置する状態を保ったまま、第1保持面116および第2保持面120の移動方向後端に到達する。以上の動作により、第1保持面116から第2保持面120へのシート材Wの受け渡しが完了する。
【0074】
図2に示すように、シート材Wを受け取った第2保持ヘッド106は、第2ドラム108の回転により第2ドラム108の円周上位置Vに移動する。円周上位置Vには、カメラ162が配置される。カメラ162により、シート材Wの状態や第2保持面120上の位置が検出される。
【0075】
そして、各第2保持ヘッド106は、第2ドラム108の回転によって積層ステージ30と対向する積層位置VIに順次移動し、保持しているシート材Wを積層ステージ30上に排出して複数のシート材Wを積層する。シート材Wが第2保持ヘッド106から積層ステージ30に排出される際、積層ステージ30は、カメラ162の検知結果に応じて、ステージのX軸方向位置、Y軸方向位置および傾き角を調整する。この調整により、シート材Wを高精度に積層することができる。
【0076】
本実施の形態の各第2保持ヘッド106は、積層位置VIにおいて第2保持面120を積層ステージ30に接近させてシート材Wを排出する。この第2保持面120の変位は、半径位置調整機構114によって実現することができる。また、第2保持ヘッド106は、積層位置VIにおいて、第2ドラム108の回転による第2保持面120の移動を相殺するように移動方向後方に変位する。これにより、第2ドラム108の円周方向において第2保持面120が見かけ上停止した状態で、シート材Wを積層ステージ30に積層することができる。この第2保持ヘッド106の変位は、速度調整機構112によって実現することができる。
【0077】
なお、傾き調整機構110、速度調整機構112および半径位置調整機構114を構成する各カムの曲線形状は、第2保持面120がとる位置や姿勢に応じて、設計者による幾何学的計算やシミュレーション等に基づき適宜設定することができる。
【0078】
上述の説明では、曲面形状の第1保持面116から平面形状の第2保持面120にシート材Wを受け渡しているが、シート材Wの受け渡しは逆であってもよい。また上述の説明において、速度調整機構112は、第2ドラム108の回転に対して第2保持ヘッド106を回転方向の前後に変位させることで、第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106の相対移動速度を調整しているが、この構成に限定されない。例えば、速度調整機構112は、第1ドラム104の回転に対して第1保持ヘッド102を回転方向の前後に変位させることで、第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106の相対移動速度を調整してもよい。この場合、速度調整機構112は、各第1保持ヘッド102の駆動部118で構成することができる。つまり、速度調整機構112は、各第1保持面116を第1ドラム104の回転に対して回転方向の前後に変位させるか、各第2保持面120を第2ドラム108の回転に対して回転方向の前後に変位させるか、その両方によって、相対移動速度を調整できる。
【0079】
また上述の説明では、セパレータ切断ドラム12と第1ドラム104とが対応付けられているが、この構成に限定されない。例えば、セパレータ切断ドラム12と積層ドラム14との間に、単位積層体をセパレータ切断ドラム12から受け取って積層ドラム14に受け渡すドラムが介在する場合、第1ドラム104は、このドラムに相当してもよい。また、第2ドラム108は積層ドラム14に限定されず、第2保持ヘッド106が保持するシート材Wは、積層ステージ30以外の機構に受け渡されてもよい。また、シート材Wは、電極板およびセパレータが積層された単位積層体に限定されず、電極体のみ、あるいはセパレータのみであってもよいし、電池の構成部品以外のものであってもよい。つまり、シート材搬送装置100は、積層電極体や、この積層電極体を用いた電池の製造だけでなく、コンデンサやフレキシブル基板等を含むフィルム材や、このフィルム材を用いた製品の製造に適用できる。
【0080】
以上説明したように、本実施の形態に係るシート材搬送装置100は、複数の第1保持ヘッド102と、第1ドラム104と、複数の第2保持ヘッド106と、第2ドラム108と、傾き調整機構110と、速度調整機構112と、半径位置調整機構114とを備える。
【0081】
複数の第1保持ヘッド102は、シート材Wを保持するための曲面形状の第1保持面116を有する。第1ドラム104は、複数の第1保持ヘッド102を円周方向に所定の間隔をあけて且つ各第1保持面116が外側を向くように保持し、第1方向D1に回転して複数の第1保持ヘッド102を周回させる。複数の第2保持ヘッド106は、シート材Wを保持するための平面形状の第2保持面120を有する。第2ドラム108は、複数の第2保持ヘッド106を円周方向に所定の間隔をあけて且つ各第2保持面120が外側を向くように保持し、第1方向D1とは逆の第2方向D2に回転して複数の第2保持ヘッド106を周回させる。
【0082】
傾き調整機構110は、第2ドラム108の半径方向Rに対する第2保持面120の傾きを調整する。速度調整機構112は、シート材Wの授受が行われる1組の第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106の相対移動速度を調整する。半径位置調整機構114は、第2ドラム108の半径方向Rにおける各第2保持面120の位置を調整する。
【0083】
いずれか一方がシート材Wを保持し、他方がシート材Wを未保持の第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106は、各ドラムの回転によって第1保持面116および第2保持面120が互いに対向する受渡位置IVに移動し、傾き調整機構110、速度調整機構112および半径位置調整機構114により第2保持面120の傾き、第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106の相対移動速度および第2保持面120の半径方向位置が調整された状況で、シート材Wを第1保持面116と第2保持面120との間で受け渡す。
【0084】
曲面形状の第1保持面116と平面形状の第2保持面120との間でシート材Wの授受が行われる際、受渡点124における第1保持面116および第2保持面120の相対位置や相対速度の変化等によって、シート材Wには剪断力等の負荷がかかるおそれがある。これに対し、傾き調整機構110、速度調整機構112および半径位置調整機構114によって第1保持面116および第2保持面120の状態を調整しながらシート材Wを受け渡すことで、受渡点124における第1保持面116および第2保持面120の間隔がシート材Wの受け渡し中に変動することを抑制できる。例えば、2つの保持面の相対変位量を0.5mm以下、さらには0に抑えることができる。また、受渡点124における第1保持面116および第2保持面120の相対移動速度を安定化することができる。よって、受け渡し時にシート材Wにかかる負荷を軽減することができる。また、第2保持面120上でシート材Wにシワが生じたり、狙った受け渡し位置からずれたりすることを抑制することができる。
【0085】
また、本実施の形態のシート材搬送装置100によれば、シート材Wを個片化された状態のまま受け渡すことができるため、第2ドラム108によるシート材Wの搬送に続く工程の設計自由度を高めることができる。さらに、第1保持面116および第2保持面120を移動させながらシート材Wを受け渡しできるため、シート材搬送装置100のスループットの向上を図ることができる。
【0086】
また、本実施の形態の傾き調整機構110、速度調整機構112および半径位置調整機構114は、受渡点124の位置が第1ドラム104の回転中心C1および第2ドラム108の回転中心C2に対して固定され、且つ受渡点124における第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106の相対移動速度がゼロに近づくように、第2保持面120の傾き、第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106の相対移動速度ならびに第2保持面120の半径方向位置を調整する。
【0087】
シート材Wの受け渡し中に、第1ドラム104や第2ドラム108に対して受渡点124が移動する場合、第1ドラム104と第2ドラム108との相対位置が設計上の位置からずれていると、受渡点124の位置によって第1保持面116および第2保持面120の相対位置や相対速度が変化し、シート材Wに負荷がかかり得る。このため、第1ドラム104および第2ドラム108を高精度に位置合わせする必要が生じる。これに対し、本実施の形態では第1ドラム104および第2ドラム108に対して受渡点124を固定しているため、第1ドラム104および第2ドラム108の相対的な位置関係の自由度を高めることができる。したがって、シート材搬送装置100の組み立て作業が容易になり、またシート材搬送装置100の設計の自由度を高めることができる。
【0088】
また、本実施の形態の各第2保持ヘッド106は、第2ドラム108の回転によって積層ステージ30と対向する積層位置VIに順次移動し、保持しているシート材Wを積層ステージ30上に排出して複数のシート材Wを積層する。また、一例としてのシート材Wは、電池の電極板を含む単位積層体である。これにより、電池の生産リードタイムやスループットの向上を図ることができる。また、本実施の形態の各第2保持ヘッド106は、積層位置VIにおいて第2保持面120を積層ステージ30に接近させる。これにより、第2保持面120を固定し、積層ステージ30を第2保持面120に接近させる場合に比べて、シート材搬送装置100の構造を簡略化することができる。
【0089】
(実施の形態2)
実施の形態2は、半径位置調整機構114を備えない点を除き、実施の形態1と概ね共通の構成を有する。以下、本実施の形態について実施の形態1と異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
【0090】
図5は、実施の形態2に係るシート材搬送装置100の模式図である。なお、図5では、固定プレート154に設けられる各カムおよびガイドレール158の図示を省略している。シート材搬送装置100は、複数の第1保持ヘッド102と、第1ドラム104と、複数の第2保持ヘッド106と、第2ドラム108と、傾き調整機構110と、速度調整機構112とを備える。
【0091】
各第1保持ヘッド102は、曲面形状の第1保持面116を有する。複数の第1保持ヘッド102は、第1ドラム104によって保持される。第1ドラム104は、複数の第1保持ヘッド102を円周方向に所定の間隔をあけて且つ各第1保持面116が円筒の外側を向くように保持する。第1ドラム104は、回転中心C1周りに第1方向D1に回転して、複数の第1保持ヘッド102を周回させる。各第1保持ヘッド102は駆動部118を有し、他の第1保持ヘッド102に対して互いに独立に第1ドラム104の円周方向に移動可能である。
【0092】
各第2保持ヘッド106は、平面形状の第2保持面120を有する。複数の第2保持ヘッド106は、第2ドラム108によって保持される。第2ドラム108は、複数の第2保持ヘッド106を円周方向に所定の間隔をあけて且つ各第2保持面120が円筒の外側を向くように保持する。第2ドラム108は、回転中心C2周りに第2方向D2に回転して複数の第2保持ヘッド106を周回させる。第2ドラム108は第1ドラム104に近接配置され、第1保持面116および第2保持面120が互いに対向する受渡位置IVが形成される。シート材Wを保持する各第1保持ヘッド102と、シート材Wを未保持の各第2保持ヘッド106とは、各ドラムの回転によって受渡位置IVに順次移動する。
【0093】
互いに対向する第1保持面116および第2保持面120において、互いに最も接近する位置にシート材Wの受渡点124が形成される。各ヘッドの進行にともなって、受渡点124は各保持面上を移動する。第1ドラム104および第2ドラム108の回転を維持したまま第1保持面116から第2保持面120にシート材Wを受け渡す場合、シート材Wに剪断力等の負荷がかかるおそれがある。これに対し、本実施の形態のシート材搬送装置100は、傾き調整機構110および速度調整機構112によって、シート材Wにかかる負荷を軽減する。図6は、第2保持ヘッド106、傾き調整機構110および速度調整機構112の模式図である。
【0094】
第2保持ヘッド106は、ヘッド部126と、ベースプレート130と、リンク部132とを有する。ヘッド部126は略平板状であり、第2ドラム108の半径方向R外側を向く主表面が第2保持面120を構成する。半径方向R内側を向くヘッド部126の主表面には揺動軸136が設けられ、ヘッド部126は揺動軸136を介してベースプレート130に連結される。ヘッド部126は揺動軸136に固定され、ベースプレート130は揺動軸136を摺動可能に保持する。また、揺動軸136には、略棒状のアーム部164の一端が接続される。アーム部164の他端には、第1カムフォロア134が設けられる。アーム部164が回動すると、これにともなって揺動軸136およびヘッド部126が回動する。これにより、半径方向Rに対する第2保持面120の傾きを変化させることができる。
【0095】
ベースプレート130は、おおよそ半径方向Rに延びる長穴140を有する。リンク部132は、略L字状の部材であり、おおよそ半径方向Rに延びる第1部分142と、半径方向R内側の第1部分142の端部から略直角に延びる第2部分144とを有する。半径方向R外側の第1部分142の端部は、第3カムフォロア146を介して長穴140に連結される。これにより、リンク部132がリンク軸148を中心として回転することによって生じる第3カムフォロア146の半径方向Rの変位を長孔140の長さ分だけ許容することができる。
【0096】
第1部分142と第2部分144との交点(L字の角部)には、リンク軸148が設けられる。リンク軸148は、第2ドラム108に連結され、第2ドラム108の回転に追従する。リンク部132、ベースプレート130およびヘッド部126は、リンク軸148を介して第2ドラム108に連結される。したがって、リンク軸148が第2ドラム108の回転に追従することで、リンク部132、ベースプレート130およびヘッド部126が連動して第2ドラム108の円周方向に移動する。第2部分144の先端には、第4カムフォロア150が設けられる。
【0097】
傾き調整機構110は、第2ドラム108の半径方向Rに対する第2保持面120の傾きを調整する機構である。傾き調整機構110は、第1カム152と、第1カムフォロア134とを含むカム機構で構成される。第2ドラム108には、第2ドラム108の回転に対して追従しない円形の固定プレート154が設けられる。第1カム152は、固定プレート154に設けられる。固定プレート154は、その中心が第2ドラム108の回転中心C2と重なるように配置される。第1カム152は、固定プレート154の円周方向に延在する。一例として、第1カム152は、固定プレート154の主表面に設けられる溝カムである。第1カムフォロア134は、第1カム152に摺動可能に当接し、第2ドラム108の回転にともなって第1カム152に沿って移動する。
【0098】
第1カム152は、第2ドラム108と同心の円を基調とした形状を有する。ただし、第1カム152のうち受渡位置IVを含む領域に延在する部分は、第2保持面120の傾きが変化するように、基調円に対してずれている。受渡位置IVを含む領域は、例えば、第2保持ヘッド106の移動方向後方側で受渡位置IVに接する所定領域と、受渡位置IVとを含む。
【0099】
例えば、第1カム152が基調円に対して円の中心から離れる方向に湾曲する場合、この部分を通過する第1カムフォロア134は第2ドラム108の半径方向R外側に変位する。これにより、アーム部164が第2方向D2に回動する。このアーム部164の回動により、揺動軸136およびヘッド部126は第2方向D2に回動する。この結果、第2保持面120は、第2保持ヘッド106の進行方向の前端側が半径方向R内側に変位する。一方、第1カム152が基調円に対して円の中心に近づく方向に湾曲する場合、この部分を通過する第1カムフォロア134は、第2ドラム108の半径方向R内側に変位する。これにより、アーム部164が第2方向D2とは逆方向に回動する。このアーム部164の回動により、揺動軸136およびヘッド部126は第2方向D2とは逆方向に回動する。この結果、第2保持面120は、第2保持ヘッド106の進行方向の前端側が半径方向R外側に変位する。
【0100】
速度調整機構112は、シート材Wの授受が行われる1組の第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106の相対移動速度を調整する機構である。本実施の形態の速度調整機構112は、第1保持ヘッド102については第1ドラム104の全周で移動速度を一定とする。一方、第2保持ヘッド106については、移動方向後方側で受渡位置IVに接する所定領域と受渡位置IVとにおける移動速度を他の領域における移動速度とは異ならせる。これにより、受渡位置IVにおいて、第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106の相対移動速度が調整される。
【0101】
本実施の形態の速度調整機構112は、第2カム156と、第4カムフォロア150とを含むカム機構で構成される。第2カム156は、固定プレート154に設けられる。第2カム156は、固定プレート154の円周方向に延在する。一例として、第2カム156は、固定プレート154の主表面に設けられる溝カムである。第4カムフォロア150は、第2カム156に摺動可能に当接し、第2ドラム108の回転にともなって第2カム156に沿って移動する。
【0102】
第2カム156は、第2ドラム108と同心の円を基調とした形状を有する。ただし、第2カム156のうち受渡位置IVを含む領域に延在する部分は、第1保持ヘッド102と第2保持ヘッド106との相対移動速度が調整されるように、基調円に対してずれている。
【0103】
例えば、第2カム156が基調円に対して円の中心から離れる方向に湾曲する場合、この部分を通過する第4カムフォロア150は、第2ドラム108の半径方向R外側に変位する。これにより、リンク部132がリンク軸148周りに第2方向D2に回動し、第3カムフォロア146が第2保持ヘッド106の移動方向に変位する。ベースプレート130は、固定プレート154に設けられるガイドレール158に摺動可能に嵌まっている。ガイドレール158は、第2ドラム108と同心の円を基調とした形状を有する。このためベースプレート130は、第3カムフォロア146の変位にともなって、ガイドレール158上を第2保持ヘッド106の移動方向にスライドする。これにより、第2保持ヘッド106の移動速度が上がる。
【0104】
一方、第2カム156が基調円に対して円の中心に近づく方向に湾曲する場合、この部分を通過する第4カムフォロア150は、第2ドラム108の半径方向R内側に変位する。これにより、リンク部132がリンク軸148周りに第2方向D2とは逆方向に回動し、第3カムフォロア146が第2保持ヘッド106の移動方向とは逆方向に変位する。ベースプレート130は、第3カムフォロア146の変位にともなって、ガイドレール158上を第2保持ヘッド106の移動方向とは逆方向にスライドする。これにより、第2保持ヘッド106の移動速度が下がる。
【0105】
受渡位置IVに到達した第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106は、傾き調整機構110および速度調整機構112によって、第2保持面120の傾きと、第1保持面116および第2保持面120の相対移動速度とが調整された状況で、シート材Wを第1保持面116から第2保持面120に受け渡す。
【0106】
図7(a)~図7(c)は、シート材搬送装置100の動作を説明するための模式図である。なお、図7(a)~図7(c)では、各カムおよびガイドレール158の図示を省略している。本実施の形態の傾き調整機構110および速度調整機構112は、受渡点124が第1保持面116に対して平行に移動し、且つ受渡点124における第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106の相対移動速度がゼロに近づくように、第2保持面120の傾きと、第1保持面116および第2保持面120の相対移動速度とを調整する。
【0107】
具体的には、傾き調整機構110および速度調整機構112の連携によって、第2保持面120は、第1保持面116の曲面に沿って円弧を描くように揺動する。つまり、第2保持面120は、第1保持面116の表面上を転がるように傾斜角度が変化する。これにより、受渡点124は、第1保持面116の曲面に対して平行に移動する。また、受渡点124における第1保持面116および第2保持面120の相対移動速度はゼロに近づけられる。一例として相対移動速度は、シート材Wの受け渡しが完了するまでの間、実質的にゼロになる。
【0108】
まず、図7(a)に示すように、第2保持面120は、傾き調整機構110の作用により基準傾斜姿勢よりも前傾する。また、速度調整機構112の作用により基準移動速度よりも減速させられて、基準前後位置よりも後方に変位する。この状態で、第2保持ヘッド106は受渡位置IVに進入する。これにより、第1保持面116および第2保持面120の移動方向前端に受渡点124が形成される。受渡点124は、回転中心C1と回転中心C2とをつなぐ直線Lよりも第1保持面116および第2保持面120の移動方向前方に位置する。第1保持ヘッド102は、シート材Wにおける受渡点124を通過した部分から順に第2保持ヘッド106に受け渡していく。
【0109】
第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106の進行中、傾き調整機構110は、第2保持面120の傾斜を徐々に緩めて、基準傾斜角度に近づけていく。また、速度調整機構112は、第2保持面120を進行方向に加速させ、受渡点124における第1保持面116および第2保持面120の相対移動速度を略ゼロに維持する。これにより、図7(b)に示すように、受渡点124は、第1保持面116に対して平行に移動しながら、第1保持面116および第2保持面120それぞれの中間位置に到達する。この状態で第2保持面120は、基準傾斜角度および基準前後位置をとる。したがって、第2保持面120は、直線Lに対して垂直になっている。また、受渡点124は、直線L上に位置する。
【0110】
第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106がさらに進行すると、傾き調整機構110は、第2保持面120を基準傾斜角度から徐々に後傾させる。また、速度調整機構112は、第2保持面120が加速された状態を維持し、受渡点124における第1保持面116および第2保持面120の相対移動速度を略ゼロに維持する。これにより、図7(c)に示すように、受渡点124は、第1保持面116に対して平行に移動しながら、第1保持面116および第2保持面120の移動方向後端に到達する。受渡点124は、直線Lよりも第1保持面116および第2保持面120の移動方向後方に位置する。以上の動作により、第1保持面116から第2保持面120へのシート材Wの受け渡しが完了する。
【0111】
図5に示すように、シート材Wを受け取った第2保持ヘッド106は、第2ドラム108の回転により第2ドラム108の円周上位置Vに移動し、カメラ162によりシート材Wの状態や第2保持面120上の位置が検出される。そして、各第2保持ヘッド106は、第2ドラム108の回転によって積層ステージ30と対向する積層位置VIに順次移動し、保持しているシート材Wを積層ステージ30上に排出して複数のシート材Wを積層する。
【0112】
本実施の形態の各第2保持ヘッド106は、積層位置VIにおいて第2保持面120を積層ステージ30に接近させてシート材Wを排出する。この第2保持面120の変位は、積層位置VIでのみ第2保持面120を第2ドラム108の半径方向Rに変位させる半径位置調整機構114を設けることで実現できる。また、第2保持ヘッド106は、積層位置VIにおいて、第2ドラム108の回転による第2保持面120の移動を相殺するように移動方向後方に変位する。この第2保持ヘッド106の変位は、速度調整機構112によって実現することができる。
【0113】
実施の形態1と同様に、傾き調整機構110および速度調整機構112を構成する各カムの曲線形状は、設計者による幾何学的計算やシミュレーション等に基づき適宜設定することができる。また、シート材Wは、平面形状の第2保持面120から曲面形状の第1保持面116に受け渡されてもよい。また、速度調整機構112は、第1ドラム104の回転に対して第1保持ヘッド102を回転方向の前後に変位させることで、第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106の相対移動速度を調整してもよい。また、第1ドラム104はセパレータ切断ドラム12に限定されず、第2ドラム108は積層ドラム14に限定されない。また、シート材Wは、単位積層体に限定されない。
【0114】
本実施の形態に係るシート材搬送装置100では、傾き調整機構110および速度調整機構112によって、受渡点124が第1保持面116に対して平行に移動し、且つ受渡点124における第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106の相対移動速度がゼロに近づくように、第2保持面120の傾きならびに第1保持ヘッド102および第2保持ヘッド106の相対移動速度が調整される。このような構成によっても、シート材Wを曲面から平面に受け渡す際にシート材Wにかかる負荷を軽減することができる。また、実施の形態1と同様に、第2ドラム108によるシート材Wの搬送に続く工程の設計自由度を高めたり、シート材搬送装置100のスループットの向上を図ったりすることができる。
【0115】
つまり、少なくとも傾き調整機構110および速度調整機構112があれば、曲面から平面への受け渡し時にシート材Wにかかる負荷を軽減できる。一方、本実施の形態では半径位置調整機構114が設けられないため、受渡点124の位置を第1ドラム104および第2ドラム108に対して固定することができない。この場合、要求される第1ドラム104および第2ドラム108の位置精度は高くなる。しかしながら、半径位置調整機構114がない分だけ第2保持ヘッド106の可動部が減るため、第2保持ヘッド106を構成する部品の点数を削減することができる。したがって、第2保持ヘッド106の剛性を高めることができ、シート材搬送装置100の動作の高速化を図りやすくすることができる。
【0116】
以上、本開示の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本開示を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本開示の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された本開示の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本開示の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【符号の説明】
【0117】
30 積層ステージ、 100 シート材搬送装置、 102 第1保持ヘッド、 104 第1ドラム、 106 第2保持ヘッド、 108 第2ドラム、 110 傾き調整機構、 112 速度調整機構、 114 半径位置調整機構、 116 第1保持面、 120 第2保持面、 124 受渡点。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7