(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049091
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】移動量検知システム及び移動量検知システム用プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/223 20170101AFI20220322BHJP
【FI】
G06T7/223
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155126
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000143031
【氏名又は名称】コーデンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】市川 美千代
(72)【発明者】
【氏名】児山 周樹
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA03
5L096AA06
5L096BA02
5L096BA08
5L096CA04
5L096DA02
5L096EA14
5L096EA17
5L096FA66
5L096FA69
5L096HA04
5L096JA09
(57)【要約】
【課題】被写体を連続的に撮像し、その撮像画像に基づいて被写体の移動量を算出する移動量検知システムにおいて、低速時に算出される移動量の誤差を低減する。
【解決手段】被写体の移動量を検知するものであって、複数の撮像素子が縦横マトリクス状に敷設されたエリアセンサを有し、前記被写体を一定のフレームレートで撮像してその撮像画像を逐次出力する撮像部と、各フレームの撮像画像中の所定の抽出位置から部分画像を抽出する部分画像抽出部と、各フレームの撮像画像中に設定された所定の検索領域を検索して、それよりも所定フレーム間隔数前の撮像画像から抽出された前記部分画像の位置を特定する画像検索部と、前記部分画像の前記抽出位置からの変位量と前記フレーム間隔数とに基づいて、フレーム毎の前記被写体の移動量を算出する移動量算出部とを備え、直近で算出された前記移動量に基づいて前記フレーム間隔数を設定するように構成された移動量検知システム。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の移動量を検知するものであって、
複数の撮像素子が縦横マトリクス状に敷設されたエリアセンサを有し、前記被写体を一定のフレームレートで撮像してその撮像画像を逐次出力する撮像部と、
各フレームの撮像画像中の所定の抽出位置から部分画像を抽出する部分画像抽出部と、
各フレームの撮像画像中に設定された所定の検索領域を検索して、それよりも所定フレーム間隔数前の撮像画像から抽出された前記部分画像の位置を特定する画像検索部と、
前記部分画像の前記抽出位置からの変位量と前記フレーム間隔数とに基づいて、フレーム毎の前記被写体の移動量を算出する移動量算出部とを備え、
直近で算出された前記移動量に基づいて前記フレーム間隔数を設定するように構成された移動量検知システム。
【請求項2】
直近で算出された前記移動量が小さい程、前記フレーム間隔数を大きくする請求項1に記載の移動量検知システム。
【請求項3】
直近で算出された複数フレームの前記移動量の中央値と所定の閾値とを比較し、前記中央値が前記閾値よりも大きい場合には前記フレーム間隔数を1に設定し、前記中央値が前記閾値以下である場合にはフレーム間隔数を2以上に設定する請求項2に記載の移動量検知システム。
【請求項4】
最新のフレームを含み、且つ撮像された順番が連続する複数フレームの前記移動量の中央値と前記所定の閾値とを比較する請求項3に記載の移動量検知システム。
【請求項5】
前記撮像部が、前記フレームレートが120fps以上である請求項1~4の何れか一項に記載の移動量検知システム。
【請求項6】
前記画像検索部が、テンプレートマッチング法により前記部分画像の位置を特定する請求項1~5のいずれか一項に記載の移動量検知システム。
【請求項7】
複数の撮像素子が縦横マトリクス状に敷設されたエリアセンサを有し、被写体を一定のフレームレートで撮像する撮像装置を備え、当該撮像装置の撮像画像に基づいて前記被写体の移動量を検知する移動量検知システム用のプログラムであって、
各フレームの撮像画像中の所定の抽出位置から部分画像を抽出する部分画像抽出部と、
各フレームの撮像画像中に設定された所定の検索領域を検索して、それよりも所定フレーム間隔数前の撮像画像から抽出された前記部分画像の位置を特定する画像検索部と、
前記部分画像の前記抽出位置からの変位量と前記フレーム間隔数とに基づいて、フレーム毎の前記被写体の移動量を算出する移動量算出部としての機能をコンピュータに発揮させ、
直近で算出された前記移動量に基づいて前記フレーム間隔数を設定するように構成された移動量検知システム用のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動量検知システム及び移動量検知システム用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動量検知システムとして、例えばベルトコンベア等の搬送機構により搬送される紙やフィルム等の被写体を光電センサ等で検知し、その移動量を算出するものが知られている。たとえば特許文献1には、エリアセンサを備える1つの撮像装置を用いて物体を検知し、その移動量を算出する移動量検知システムが開発されている。この移動量検知システムは、被写体の表面を一定の時間間隔で撮像し、撮像素子から得られる輝度情報に基づき、例えばパターンマッチング等の画像検索処理を行うことにより被写体の位置を検出し、フレーム間の移動量を算出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記したような画像検索処理を行う移動量検知システムでは、被写体の実際の位置と検出される位置との間には、画素分解能に起因して僅かながら誤差が生じる。この画素分解能に起因する誤差は、被写体の速度が低速であるほど顕著になってしまう。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、被写体を連続的に撮像し、その撮像画像に基づいて被写体の移動量を算出する移動量検知システムにおいて、低速時に算出される移動量の誤差を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る移動量検知システムは、被写体の移動量を検知するものであって、複数の撮像素子が縦横マトリクス状に敷設されたエリアセンサを有し、前記被写体を一定のフレームレートで撮像してその撮像画像を逐次出力する撮像部と、各フレームの撮像画像中の所定の抽出位置から部分画像を抽出する部分画像抽出部と、各フレームの撮像画像中に設定された所定の検索領域を検索して、それよりも所定フレーム間隔数前の撮像画像から抽出された前記部分画像の位置を特定する画像検索部と、前記部分画像の前記抽出位置からの変位量と前記フレーム間隔数とに基づいて、フレーム毎の前記被写体の移動量を算出する移動量算出部とを備え、直近で算出された前記移動量に基づいて前記フレーム間隔数を設定するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
このような構成であれば、直近で算出された移動量に基づいてフレーム間隔数を設定するようにしているので、低速時等の移動量が小さい場合にフレーム間隔数を大きくするようにすれば、特定される部分画像の抽出位置からの変位量を大きくすることができ、この変位量に含まれる画素分解能に起因する誤差の割合を相対的に小さくすることができる。これにより、低速時における移動量の誤差を低減することができる。
【0008】
画素分解能に起因する誤差の影響は、被写体が低速度であるほど大きくなる。そのため、前記移動量検知システムは、直近で算出された前記移動量が小さい程、前記フレーム間隔数を大きくすることが好ましい。
このようにすれば、低速時における移動量の誤差をより一層低減することができる。
【0009】
前記移動量検知システムは、直近で算出された複数フレームの前記移動量の中央値と所定の閾値とを比較し、前記中央値が前記閾値よりも大きい場合には前記フレーム間隔数を1に設定し、前記中央値が前記閾値以下である場合にはフレーム間隔数を2以上に設定するのが好ましい。
このようにすれば、複数フレームの移動量の中央値に基づいてフレーム間隔数を設定するので、フレーム毎に算出される移動量のばらつきに起因する誤検知(例えば、検索領域内に部分画像が含まれない等)を防止することができる。また、複数フレームの移動量の“平均値”ではなく“中央値”とすることで、フレーム毎の移動量の異常値の影響を受けにくくすることができる。またこの平均値や中央値は、絶対値であることが好ましい。
【0010】
この場合、前記移動量検知システムは、最新のフレームを含み、且つ撮像された順番が連続する複数フレームの前記移動量の中央値と前記所定の閾値とを比較することが好ましい。
これにより、算出する中央値を、被写体の実際の移動量により近づけることができ、低速時における移動量の誤差をより一層低減することができる。
【0011】
本発明の効果を顕著に奏する態様として、前記撮像部が、前記フレームレートが120fps以上(好ましくは300fps以上)であるものが挙げられる。
【0012】
本発明の効果を顕著に奏する態様として、前記画像検索部が、テンプレートマッチング法により前記部分画像の位置を特定するものが挙げられる。
【0013】
また本発明の移動量検知システム用のプログラムは、複数の撮像素子が縦横マトリクス状に敷設されたエリアセンサを有し、被写体を一定のフレームレートで撮像する撮像装置を備え、当該撮像装置の撮像画像に基づいて前記被写体の移動量を検知する移動量検知システム用のプログラムであって、各フレームの撮像画像中の所定の抽出位置から部分画像を抽出する部分画像抽出部と、各フレームの撮像画像中に設定された所定の検索領域を検索して、それよりも所定フレーム間隔数前の撮像画像から抽出された前記部分画像の位置を特定する画像検索部と、前記部分画像の前記抽出位置からの変位量と前記フレーム間隔数とに基づいて、フレーム毎の前記被写体の移動量を算出する移動量算出部としての機能をコンピュータに発揮させ、直近で算出された前記移動量に基づいて前記フレーム間隔数を設定するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
このような移動量検知システム用のプログラムであれば、上記した移動量検知システムと同様の作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0015】
このようにした本発明によれば、被写体を連続的に撮像し、その撮像画像に基づいて被写体の移動量を算出する移動量検知システムにおいて、低速時に算出される移動量の誤差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態における移動量検知システムの構成を模式的に示す斜視図。
【
図2】同実施形態の移動量検知システムの光照射角等の構成を説明する図。
【
図3】同実施形態の移動量検知システムの機能ブロック図。
【
図4】同実施形態の移動量検知システムの検索領域を説明する図。
【
図5】同実施形態の移動量検知システムのフレーム間隔数を説明する図。
【
図6】同実施形態の移動量検知システムの移動量算出動作を説明する図。
【
図7】同実施形態の移動量検知システムの検索領域設定動作を説明するフローチャート。
【
図8】同実施形態の移動量検知システムのフレーム間隔設定動作を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施形態に係る移動量検知システム100について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態の移動量検知システム100は、例えばベルトコンベア等の搬送機構上に載せられて所定の進行方向に動く紙等の物体(被写体)Oの移動量を検知するものである。この移動量検知システム100は、物体Oの表面を連続的に撮像し、各撮像画像から切り出した部分画像のフレーム間の変位量を調べることで、物体Oの移動量を逐次算出するように構成されている。具体的にこの移動量検知システム100は、
図1に示すように、物体Oの表面に光を照射する光源1と、物体Oの表面を撮像する撮像装置2と、撮像装置2の撮像画像を処理して物体Oの移動量を算出する画像処理装置3とを備えている。以下に各部を説明する。
【0019】
光源1は、所定の波長範囲の光を発するLED装置(不図示)と、当該LED装置から発せられた光を集光するレンズ等の集光機構(不図示)とを備えており、物体Oに対して所定の角度θで平行光を照射する。
図2に示すように、本実施形態の光源1は、波長範囲が450nm~470nmである光を物体Oの表面に対して5°~10°の照射角度(主光線と物体の表面との間の角度)で照射するように構成されている。
【0020】
撮像装置2は、物体Oの表面を一定のフレームレートで撮像し、その撮像画像データを逐次出力するものである。具体的にこの撮像装置2は、複数の撮像素子が縦横マトリクス状に面状に敷設された低画素数のエリアセンサ(640×480画素以下、例えば128×128画素のCMOSイメージセンサ等)を備えており、120フレーム/秒以上(本実施形態では約2000フレーム/秒)のフレームレートで高速撮像するものである。また、この撮像装置2は、高速撮像に対応して露光時間をできるだけ短くするよう、画素ピッチが10μm×10μm以上(本実施形態では15.6μm×15.6μm)に構成されている。本実施形態の撮像装置2は、各撮像素子が、波長範囲が400nm~1000nmの光を光電変換できるように構成されている。なお以下では、撮像画像中の位置を、撮像画像の横方向をx方向、且つ縦方向をy方向とし、撮像画像の左上隅の画素中心を原点(0,0)とする画像座標系により説明する。
【0021】
画像処理装置3は、撮像装置2から出力される撮像画像データを受け付け、これを逐次処理することにより物体Oの移動量を算出する。
【0022】
具体的に画像処理装置3は、CPU、メモリ及び入出力インターフェース等を備えた汎用乃至専用のコンピュータである。そして画像処理装置3は、メモリの所定領域に格納された所定プログラムに従ってCPUや周辺機器を協働させることにより、
図3に示すように、画像受付部30、画像補正部31、部分画像抽出部32、画像記憶部33、画像検索部34、検索領域設定部35、フレーム間隔設定部36及び移動量算出部37としての機能を少なくとも発揮する。以下に各機能部を説明する。
【0023】
画像受付部30は、撮像装置2からフレーム毎の撮像画像データを受け付け、これを画像補正部31に送信する。この撮像画像データには、撮像された順番を示すフレーム番号に関する情報(フレーム番号情報ともいう)が少なくとも含まれている。本実施形態では、この撮像画像は128×128画素である。
【0024】
画像補正部31は、受け付けた撮像画像を逐次補正する。具体的には、撮像画像に対して、例えば空間フィルタ処理やフーリエ変換処理を用いてノイズ除去やシェーディング補正等の処置を行う。そして補正後の撮像画像を、部分画像抽出部32と画像検索部34に出力する。
【0025】
部分画像抽出部32は、受け付けた各フレームの撮像画像の一部の領域を切り出して部分画像を抽出し、これを部分画像データとして画像記憶部33に逐次格納する。
図4に示すように、部分画像抽出部32は、撮像画像中に設定された所定の抽出位置P
E(x
E,y
E)を基準にして部分画像を抽出する。この抽出位置P
Eは固定されており、本実施形態では撮像画像の中央(具体的には中心)に設定されている。部分画像抽出部32は、この抽出位置P
Eを中心に、所定の形状及びサイズの部分画像を抽出するようにしている。本実施形態の部分画像は、矩形状(具体的には正方形状)をなし、画像サイズは64×64画素である。なお、この部分画像データには、前記したフレーム番号情報が含まれている。
【0026】
画像記憶部33は、メモリの所定の領域に設定されたものであり、部分画像抽出部32から出力されるフレーム毎の部分画像データを逐次記憶する。この画像記憶部33は、記憶している部分画像データの数が上限に達した場合、部分画像データを新たに1つ受け付けると、フレーム番号が最も古い1つの部分画像データを消去するように構成されていてもよい。
【0027】
画像検索部34は、各フレームの撮像画像中から部分画像を検索し、当該撮像画像中における部分画像の位置を特定する。具体的にこの画像検索部34は、最新のフレームの撮像画像を画像補正部31から取得すると、画像記憶部33を参照して、当該最新の撮像画像よりも所定フレーム間隔数前の撮像画像から抽出された部分画像を取得する。そして画像検索部34は、
図4に示すように、この最新のフレームの撮像画像中を検索し、当該撮像画像中における部分画像(より詳細には、部分画像に類似度が高い画像)の位置P
D(検出位置ともいう)を検出し、抽出位置P
Eに対する検出位置P
Dの変位量[画素]をフレーム毎に算出する。この検出位置P
Dは、撮像画像中における部分画像の中心位置である。また変位量は、x方向の変位量Δx’[画素]及びy方向の変位量Δy’[画素]により表される。
【0028】
画像検索部34による部分画像の検索は、例えばテンプレートマッチング法等のパターンマッチング法により行われる。具体的には、撮像画像中に設定されている所定の検索領域R内の輝度値等の情報に基づき、部分画像との類似度が最も高い領域を特定することにより行われる。この検索領域Rの範囲は、検索領域設定部35により設定される。
【0029】
フレーム間隔設定部36は、画像検索部34が参照する撮像画像と部分画像との間のフレーム間隔数(すなわち、最新の撮像画像に対して何フレーム前の部分画像を検索するか)を設定する。具体的にフレーム間隔設定部36は、フレーム間隔数を示す情報を画像検索部34と移動量算出部37に送信する。このフレーム間隔数は、1以上の整数である。
【0030】
移動量算出部37は、フレーム毎の変位量を画像検索部34から取得するとともに、フレーム間隔数をフレーム間隔設定部36から取得する。そしてこの変位量とフレーム間隔数とに基づいて、1フレームあたりの物体の移動量を逐次算出する。具体的には、取得した変位量をフレーム間隔数で割ることにより、1フレームあたりの物体の平均移動量[画素/フレーム](単に、移動量ともいう)を算出する。この移動量は、物体のx方向の平均移動量Δx[画素/フレーム]及びy方向の平均移動量Δy[画素/フレーム]により表される。
【0031】
しかして、本実施形態の移動量検知システム100では、フレーム間隔設定部36は、算出された移動量に基づいて、画像検索部34が参照する撮像画像と部分画像との間のフレーム間隔数を設定する。具体的には、算出された移動量の絶対値が小さいほどフレーム間隔数を大きくする。
【0032】
より具体的にこのフレーム間隔設定部36は、算出された直近の移動量と所定の閾値とを比較する。そして
図5に例示するように、直近の移動量が所定値よりも大きい場合には、フレーム間隔数を1に設定する。一方で、直近の移動量が所定値以下である場合には、フレーム間隔数を2以上の値(例えば4)に設定する。そしてこの場合、直近に算出される移動量が小さいほど、フレーム間隔値を大きくするように設定する。
【0033】
具体的にフレーム間隔設定部36は、直近の連続する複数フレーム(例えば5フレーム分、最新のフレームを含む等)で算出した移動量の中央値の絶対値と、所定の閾値とを比較する。そして、この中央値の絶対値が閾値より小さい場合にのみフレーム間隔数を変更する。すなわち、フレーム間隔設定部36は、直近の複数フレームの移動量の中央値の絶対値が閾値より大きい場合には、フレーム間隔数を1に設定し、直近の複数フレームの移動量の中央値の絶対値が閾値より小さい場合に、フレーム間隔数を2以上の整数に設定する。
【0034】
ここで、参照する部分画像が撮像画像内に収まるようにすべく、フレーム間隔数は、次の式(1)を満たすように決定される。
fn+1×|Dn|+H/2<P/2 (1)
ここで、fn+1:(n+1)フレーム目のフレーム間隔数、|Dn|:nフレーム目における直近の複数フレームの移動量の中央値の絶対値[画素/フレーム]、H:部分画像の一辺のサイズ[画素]、P:撮像画像の一辺のサイズ[画素]である。
【0035】
また本実施形態の移動量検知システム100では、検索領域設定部35は、移動量算出部37が算出した直近の移動量(具体的には最新のフレームから算出した移動量)に基づいて次のフレームの撮像画像中の部分画像の位置P
P(x
P,y
P)を予測し、この予測位置P
Pを基準にして検索領域Rの範囲を設定するようにしている。具体的に検索領域設定部35は、
図4に示すように、算出された直近の移動量を移動量算出部37から取得し、抽出位置P
Eのx座標(x
E)及びy座標(y
E)に対して、x方向及びy方向の移動量Δx、Δyをそれぞれ加算した位置を、予測位置P
Pとして設定する(つまりこの予測位置P
Eは、直前に特定された検出位置P
Dと同じと言える)。そして検索領域設定部35は予測位置P
P(x
P,y
P)を中心に検索領域Rの範囲を設定する。
【0036】
検索領域設定部35は、移動量算出部37により移動量が算出される都度、その算出される移動量に基づいて新たな検索領域Rを設定する。具体的に検索領域設定部35は、部分画像と同一形状(相似形状を含む)を成すように検索領域Rを設定する。この検索領域Rは、その縦横のサイズが、撮像画像の縦横のサイズよりも小さく、且つ部分画像の縦横のサイズよりも大きくなるように設定される。
【0037】
ここで検索領域設定部35は、直近で算出された複数の移動量のばらつきが小さい場合にのみ予測位置PPを設定して、検索領域Rを限定するようにしている。すなわち、検索領域設定部35は、直近で算出された複数の移動量のばらつきが大きい場合には撮像画像の全体を検索領域Rとして設定し、移動量のばらつきが小さい場合に検索領域Rの範囲を狭めて、予測位置PPの周りに限定する。
【0038】
具体的には、検索領域設定部35は、直近に算出された連続する複数フレーム分(例えば4フレーム分)の移動量の標準偏差と、所定の閾値とを比較する。そして、移動量の標準偏差が所定の閾値(例えば3画素)よりも大きい場合には、予測位置PPを設定することなく撮像画像の全体を検索領域Rとして設定する。一方で、移動量の標準偏差が前記所定の閾値以下である場合には予測位置PPを設定し、この予測位置PPを中心に検索領域Rを設定する。この場合、移動量の標準偏差が小さいほど(すなわち、ばらつきが小さいほど)、検索領域Rのサイズを小さくするようにしてもよい。
【0039】
次に、かかる構成の移動量検知システム100による、移動量検知動作、検索領域設定動作及びフレーム間隔設定動作について、
図6~
図8のフローチャートを参照して説明する。
【0040】
(移動量検知動作)
図6に示すように、移動量検知動作では、まず搬送機構により移動される物体Oの表面を、撮像装置2により一定の時間間隔で高速撮像し、画像処理装置3に逐次出力する(ステップS11)。画像処理装置3では、まず撮像画像にノイズ除去等の補正をする(ステップS12)。そして補正された撮像画像中の所定の抽出位置から部分画像を抽出し、これを画像記憶部33に格納する(ステップS13)。これと同時に、直近の撮像画像と、これよりも前のフレームの撮像画像から抽出されている部分画像とを参照し、撮像画像中から部分画像を検索し、その位置を特定する(ステップS14)。位置が特定された部分画像の抽出位置からの変位量[画素]を、設定されているフレーム間隔数で割ることにより、1フレーム当たりの物体Oの移動量[画素/フレーム]を算出する(ステップS15)。
【0041】
(検索領域設定動作)
次に検索領域設定動作を
図7を参照して説明する。
まず物体の移動量が算出される毎にこれを取得し(ステップS21)、直近の連続する所定の数フレーム分の移動量の標準偏差を算出する(ステップS22)。算出した移動量の標準偏差と所定の閾値とを比較する(ステップS23)。移動量の標準偏差が閾値以下である場合、撮像画像中に予測位置P
Pを設定し、予測位置P
Pの周りに検索領域Rを設定する(ステップS24)。移動量の標準偏差が閾値超えである場合、検索領域Rを限定することなく、撮像画像の全体に設定する(ステップS25)。
【0042】
(フレーム間隔設定動作)
次にフレーム間隔設定動作を
図8を参照して説明する。
まず物体の移動量が算出される毎にこれを取得し(ステップS31)、直近の連続する所定の数フレーム分の移動量の中央値を算出する(ステップS32)。算出した直近の移動量の中央値と所定の閾値とを比較する(ステップS33)。直近の移動量の中央値が閾値以下である場合、フレーム間隔数を2以上に設定する(ステップS34)。一方で、直近の移動量の中央値が閾値超えである場合、フレーム間隔数を変更することなく1に設定する(ステップS35)。
【0043】
このように構成された本実施形態の移動量検知システム100によれば、直近で算出された移動量に基づいてフレーム間隔数を設定するようにしているので、低速時等の移動量が小さい場合にフレーム間隔数を大きくするようにすれば、特定される部分画像の抽出位置からの変位量を大きくすることができ、この変位量に含まれる画素分解能に起因する誤差の割合を相対的に小さくすることができる。これにより、低速時における移動量の誤差を低減することができる。
【0044】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0045】
前記実施形態の移動量検知システム100は、撮像装置2が固定され、撮像装置2に対して移動する被写体(物体O)の移動量を算出するものであったが、これに限らない。他の実施形態の移動量検知システム100は、光源1、撮像装置2及び画像処理装置3が移動可能であり、固定された被写体に対する撮像装置2の相対的な移動量を算出するように構成されてもよい。例えば、他の実施形態の移動量検知システム100は、光学式マウスの移動量の検知や、車両の移動量の検知等の用途で用いられてもよい。
【0046】
前記実施形態では、検索領域設定部35が、算出された直近の移動量に基づいて検索領域Rを設定していたが、これに限らない。他の実施形態では、検索領域設定部35は、算出された直近の移動量に関わらず、撮像画像全体又はその一部を検索領域Rとして設定してもよい。
【0047】
前記実施形態のフレーム間隔設定部36は、直近の連続する複数フレームで算出した移動量の中央値の絶対値と所定の閾値とを比較していたが、これに限らない。前記実施形態のフレーム間隔設定部36は、例えば、直近の1フレーム(例えば最新の1フレーム)の移動量の絶対値や直近の複数フレームの移動量の平均値の絶対値と、所定の閾値とを比較して、フレーム間隔数を変更してもよい。また、中央値を算出する直近の複数フレームは、フレーム番号が連続してなくてもよく、最新のフレームを含んでなくてもよい。
【0048】
前記実施形態のフレーム間隔設定部36は、算出される直近の複数の移動量のばらつきが小さい場合にのみフレーム間隔数を変更するようにしてもよい。
【0049】
前記実施形態の移動量検知システム100では、抽出位置PEは撮像画像の中心に設定されていたが、これに限らない。他の実施形態では、抽出位置PEは、ユーザが定める撮像画像中の任意の位置に設定されてもよい。
【0050】
また前記実施形態では、設定した抽出位置PEを中心に部分画像が抽出されていたがこれに限らない。抽出位置PEを基準にして、任意の領域から部分画像が抽出されてもよい。
【0051】
また他の実施形態の移動量検知システム100では、画像検索部34が取得する撮像画像と部分画像に対して、画素補間処理をしてもよい。このような画素補間処理の例としては、例えば最近傍補間、バイリニア補間、バイキュビック補間等が挙げられる。これにより、分解能をより微細にすることができる。
【0052】
また他の実施形態の画像処理装置3は画像補正部31を備えていなくてもよい。
【0053】
前記した各機能部は、例えばFPGA(Field Programable Gate Array)等の再構成可能なハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0054】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
100・・・移動量検知システム
2 ・・・撮像装置
32 ・・・部分画像抽出部
34 ・・・画像検索部
35 ・・・検索領域設定部
36 ・・・フレーム間隔設定部
37 ・・・移動量算出部
R ・・・検索領域
PE ・・・抽出位置
PD ・・・検出位置
PP ・・・予測位置