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  • 特開-コネクタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049149
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/24 20060101AFI20220322BHJP
   H01R 13/639 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
H01R13/24
H01R13/639 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155215
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今泉 鉄一郎
(72)【発明者】
【氏名】後 豊
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA04
5E021FA09
5E021FC36
5E021HC09
(57)【要約】
【課題】半嵌合状態が生じにくいコネクタ構造
【解決手段】
一方のコネクタと他方のコネクタとの嵌合状態を保持するためのロック構造を備えたコネクタ構造であって、一方のコネクタのコンタクトは嵌合方向に沿って伸縮するバネ構造を備え、他方のコンタクトと一方のコンタクトとの接続状態でバネ構造は弾縮する。一方のコンタクトと他方のコンタクトとの接続状態はコンタクト同士の先端部同士の突合せによって生じ、バネ構造は圧延材の板面方向に弾縮する。ロック構造は一方のハウジングのロック爪と他方のハウジングのロック爪受けとで構成され、ロック爪とロック爪受けとの嵌め合う前にバネ構造の弾縮が始まる。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のコネクタと他方のコネクタとの嵌合状態を保持するためのロック構造を備えたコネクタ構造であって、前記一方のコネクタのコンタクトは嵌合方向に沿って伸縮するバネ構造を備え、前記他方のコネクタのコンタクトと前記一方のコネクタのコンタクトとの接続状態で前記バネ構造は弾縮するところに特徴を有するコネクタ構造。
【請求項2】
前記一方のコネクタのコンタクトと前記他方のコネクタのコンタクトとの接続状態は前記コンタクト同士の先端部同士の突合せによって生じるところに特徴を有する請求項1に記載のコネクタ構造。
【請求項3】
前記バネ構造は圧延材の板面方向に弾縮するところに特徴を有する請求項1又は2に記載のコネクタ構造。
【請求項4】
前記ロック構造は一方のコネクタハウジングのロック爪と他方のコネクタハウジングのロック爪受けとで構成され、前記ロック爪と前記ロック爪受けとの嵌め合う前に前記バネ構造の弾縮が始まるところに特徴を有する請求項3に記載のコネクタ構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半嵌合が抑止されたコネクタに関する
【0002】
この分野の技術として特許文献1に記載の技術が知られている。ベースコネクタとソケットコネクタとからなるコネクタ構造で、ベースコネクタとソケットコネクタとの嵌合状態を保持するロック装置が備わる。そして、ソケットコネクタのハウジング内には、嵌合方向に沿って伸縮するコイルバネが装着されており、ロック装置が作動する前に嵌合操作(ソケットコネクタの挿入操作)を終えてしまうと、コイルバネの復元力によってソケットコネクタが押し戻されるので、嵌合操作が未だ終了していないことを知ることができる。これにより、半嵌合状態が生じないコネクタが得られるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-302894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
確かに挿入途中で挿入操作を終了すると、コイルバネの作用によってソケットコネクタが押し戻されるので、半嵌合状態は生じにくい。しかし、ソケットハウジング内にコイルバネを装着するためのスペースが必要であり、また別途コイルバネを準備しなければならない。したがって、この構造では材料、加工及び組み立て工数が増すことになる。
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであり、別途材料を必要とせず、組立工数を増やすことなく、半嵌合状態が生じにくいコネクタ構造の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るコネクタ構造は、(1)一方のコネクタと他方のコネクタとの嵌合状態を保持するためのロック構造を備えたコネクタ構造であって、前記一方のコネクタのコンタクトは嵌合方向に沿って伸縮するバネ構造を備え、前記他方のコネクタのコンタクトと前記一方のコネクタのコンタクトとの接続状態で前記バネ構造は弾縮するところに特徴を有するものである。
【0006】
この発明によれば、別途コイルバネ等の材料を必要とせず、組立工数を増やすことなく、半嵌合状態が生じにくいコネクタ構造が得られる。
【0007】
好ましくは、本発明に係るコネクタ構造は、(2)前記一方のコネクタのコンタクトと、前記他方のコネクタのコンタクトとの接続状態は、前記コンタクト同士の先端部同士の突合せによって生じるところに特徴を有する(1)に記載のものである。
【0008】
この発明によれば、コンタクト同士の接触によりバネ構造の弾縮が始まるので、誤ってロック構造が作動する前に嵌合操作を終えてしまう恐れがない。
【0009】
好ましくは、本発明に係るコネクタ構造は、(3)前記バネ構造は圧延材の板面方向に弾縮するところに特徴を有する(1)又は(2)に記載のものである。
【0010】
この発明によれば、圧延材からの切り出しでバネ構造が形成されるので、効率よく成型できるとともに、バネのヘタリが生じにくいバネ構造が得られる。
【0011】
好ましくは、本発明に係るコネクタ構造は、(4)前記ロック構造は一方のコネクタハウジングのロック爪と、他方のコネクタハウジングのロック爪受けとで構成され、前記ロック爪と、前記ロック爪受けとの嵌め合う前に前記バネ構造の弾縮が始まるところに特徴を有する(3)に記載のものである。
【0012】
この発明によれば、ロック構造のロックが作動する前にバネ構造の弾縮による挿入コネクタに押し戻し力が作用するコネクタ構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態に係るベースコネクタと、ソケットコネクタとの嵌合前の外観斜視図である。
図2図2は、図1のII-II断面線で切断した断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るベースコンタクトと、ソケットコンタクトとの外観図である。
図4図4は本発明の実施形態に係るベースコネクタと、ソケットコネクタとの嵌合過程を示す工程図であって、(1)は嵌合前、(2)は嵌合途中、(3)は嵌合完了を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係るコネクタを図面に従って説明する。図1は、本発明の実施形態に係るベースコネクタと、ソケットコネクタとの嵌合前の外観斜視図である。図2は、図1のII-II断面線で切断した断面図である。図3は、本発明の実施形態に係るベースコンタクトと、ソケットコンタクトとの外観図である。図4は本発明の実施形態に係るベースコネクタと、ソケットコネクタとの嵌合過程を示す工程図であって、(1)は嵌合前、(2)は嵌合途中、(3)は嵌合完了を示す外観図である。なお、本発明の技術的範囲は、本実施形態に限定的に解釈されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の適宜変更は可能である。また、説明中の方向指示は図中の方向定義に従う。
【0015】
本実施形態に係るコネクタ構造1は、図1に示されるように、ベースコネクタ2と、ソケットコネクタ3とからなる。ベースコネクタ2は、ベースハウジング20と、ベースコンタクト22とを備え、ソケットコネクタ3は、ソケットハウジング30と、ソケットコンタクト33とを備える。ソケットコネクタ3は、ベースコネクタ2に対して軸方向に沿って挿入され正規嵌合状態に至る。
【0016】
<コンタクト>
ベースコンタクト22は、銅合金圧延材料の打ち抜き品であって、図2に示されるように、板状の基部225と、基部225の後方に連なる針状の接続部227と、基部225の前方に連なる相手方コンタクトに接続する接触部220とを備える。そして、接触部220は後方にバネ部を備えている。
【0017】
バネ部222のバネ性は、打ち抜き加工によって形成されたコイル様の構造によって得られる。本実施形態では、山部と谷部が連続的に形成されたコイル様の構造が2周期分備わる。勿論バネ性は、コイル様構造によるものに限定されるものではない。
【0018】
ソケットコンタクト33は、銅合金等導電材料の塑性加工品であって、図2に示されるように、軸状に延びるベース部33a上に前方から順に、箱体の接触部330と、連結部333と、電線Wに接続する接続部335とからなる。電線Wとの接続は、導体バレル部と被覆バレル部とによる。
【0019】
接触部330は、ボックス部を備える。ボックス部は圧延材料の折り曲げによって得られる。ボックス部は、周囲4面に側壁と前面に前壁331とを備える。
【0020】
<ハウジング>
ベースハウジング20は、本体部200と嵌合受け部210とからなり、図1図3に示されるように、厚目の基部200aと、基部200aの周面から前方に延びる上壁203、下壁201及び左右側壁202、202とを備える。そして、これらの内側にコンタクト収容室207を形成する。前面には開口部204aが形成された前壁204が備わる。
【0021】
ベースハウジング20には、図2に示されるように、上壁203に前面から前方に延びるロックアーム205が備わる。ロックアーム205は、上下方向に可動する片持ち梁であって、先端部の下面には係止突部が備わる。
【0022】
ソケットハウジング30は、図1図2に示されるように、本体部300と嵌合部310とからなり、底壁301、上壁303、左右側壁302、302及び前壁304を備え、内部にはコンタクト収容室307が備わる。ソケットハウジング30には、図2示されるように、嵌合部310の上面に係止突部306が備わる。
【0023】
<嵌合操作>
嵌合操作を図4に従って説明する。
ソケットコネクタ3の嵌合部310をベースコネクタ2の嵌合受け部210に突き合せる。嵌合部310を嵌合受け部210の開口部204a内側に形成された案内面に沿わせて嵌合開始位置を得る。
【0024】
嵌合開始位置にあるソケットコネクタ3をベースコネクタ2側に軽く押し、嵌合受け部210と、嵌合部310とが正しい姿勢で重なり合うことを確認してソケットコネクタ3を挿入する。
【0025】
ベースハウジング20と、ソケットハウジング30との嵌合が始まると、ソケットコンタクト33と、ベースコンタクト22との接続が開始する。このとき、ロックアーム205の係止突部205aは、ソケットハウジング30の係止突部306の手前にある。
【0026】
ソケットコネクタ3をさらに挿入すると、ソケットコンタクト33と、ベースコンタクト22との当接が強くなり、ベースコンタクト22のバネ部222には、収縮方向の力が作用する。このとき、ロックアーム205の係止突部205aと、ソケットハウジング30の係止突部306とは近接しやがて互いに係止突部同士が衝突する。
【0027】
ソケットコネクタ3をさらに挿入すると、ベースコンタクト22のバネ部222の収縮はさらに大きくなる。これにより、ソケットコネクタ3を押し戻す方向に大きな反発力が作用する。このとき、ロックアーム205の係止突部205aは、ソケットハウジング30の係止突部306の山を乗り越える手前にある。
【0028】
嵌合終了前の状態で、いわゆる半嵌合状態で、操作していた手をソケットコネクタ3から放してしまうと、ソケットコネクタ3はその位置に留まることができずに嵌合方向とは逆の方向に後退することとなる。すなわち、ソケットコネクタ3は、嵌合開始の状態に戻される。これにより、半嵌合状態のまま次工程に送られるおそれはない。
【0029】
ソケットコネクタ3の挿入に応じて、ベースコンタクト22のバネ部222の収縮はさらに増し、大きな反発力が作用する。ソケットコンタクト33の先端にある接触部330は、ソケットコネクタ3の挿入に応じてベースコンタクト22の接触部220に接触しており、バネ部222の反発力は接圧(接触圧)として現れる。
【0030】
ソケットコネクタ3をさらに押し込むと、ロックアーム205の係止突部205aは、ソケットハウジング30の係止突部306を乗り越えて反対側の斜面を下る区間に入る。係止突部306の頂点を越える前後で斜面を登る区間から斜面を下る区間に変わるので、操作感に変化が生じるとともに嵌合操作は一気に終了状態に至ることとなる。
【0031】
嵌合終了状態で、ソケットハウジング30の嵌合部310は、ベースハウジング20の嵌合受け部210に奥まで嵌り込む。また、ロックアーム205の係止突部205aは、ソケットハウジング30の係止突部306と係り合う。そして、ソケットコンタクト33の接触部330は、ベースコンタクト22の接触部220に大きな保持力を伴って接続する。このとき、ベースコンタクト22のバネ部222は大きく収縮している。
【0032】
このようにして、別途部材を準備したり、工数を追加したりすることがなく、嵌合終了前に嵌合操作をやめると、一方のコネクタをバネの圧縮力で押し戻す半嵌合抑止コネクタ構造が得られる。
【0033】
<効果>
・ベースコンタクト22の一部をコイル状にすることで、別部材として圧縮コイルバネを準備する必要がなくなる。また、別部材の圧縮コイルバネをコネクタに組み込む工数が不要になる。
・従来技術では、嵌合時の挿入力は、別部材として準備したコイルバネの圧縮力と、コンタクトの接触力であったのに対して、本実施形態では、嵌合時の挿入力は、ベースコンタクト22のコイル様バネ部222の圧縮力だけである。これにより、接圧はそのままで挿入力の低減が可能とる。また、作業者への負担が軽減されることとなる。
【0034】
本発明の技術的範囲は、本実施形態に限定的に解釈されるものではない。発明の要旨を逸脱しない範囲で発明の構成要素は適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 コネクタ構造
2 ベースコネクタ
20 ベースハウジング
200 本体部
210 嵌合受け部
200a 後壁
200b スリット
201 下壁
202 左右側壁
203 上壁
204 前壁
204a 開口部
205 ロックアーム
205a 係止突部
207 コンタクト収容室
22 ベースコンタクト
220 接触部
222 バネ部
225 基部
227 接続部
3 ソケットコネクタ
30 ソケットハウジング
310 嵌合部
300 本体部
301 底壁
302 左右側壁
303 上壁
304 前壁
304a 開口部
306 係止突部
307 コンタクト収容室
308 ランス
33 ソケットコンタクト
330 接触部
331 前壁
333 連結部
335 接続部
W 電線

図1
図2
図3
図4