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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049156
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】調質圧延設備および金属板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 39/08 20060101AFI20220322BHJP
   B21B 1/22 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
B21B39/08 A
B21B1/22 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155224
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】野口 侑紀
(72)【発明者】
【氏名】海宝 寿実雄
(72)【発明者】
【氏名】青江 信一郎
【テーマコード(参考)】
4E002
【Fターム(参考)】
4E002AD06
4E002BC03
4E002BD03
4E002CA07
4E002CA08
4E002CA09
(57)【要約】
【課題】センサーや新たな制御システムを必要とせず、調質圧延機に搬送される金属板の蛇行を抑制できる調質圧延設備を提供する。
【解決手段】調質圧延設備であって、金属板を調質圧延する調質圧延機と、1以上のブライドルロールと、を有し、1以上のブライドルロールは、金属板の搬送方向に対して調質圧延機の上流側および下流側の少なくとも一方に設けられ、1以上のブライドルロールのうちの少なくとも1つは、センタークラウンロールである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板を調質圧延する調質圧延機と、
1以上のブライドルロールと、
を有し、
前記1以上のブライドルロールは、前記金属板の搬送方向に対して前記調質圧延機の上流側および下流側の少なくとも一方に設けられ、
前記1以上のブライドルロールのうちの少なくとも1つは、センタークラウンロールである、調質圧延設備。
【請求項2】
前記センタークラウンロールのクラウン量は、1.0mm以上5.0mm以下である、請求項1に記載の調質圧延設備。
【請求項3】
前記センタークラウンロールは、前記金属板の搬送方向に対して前記調質圧延機の上流側に設けられる、請求項1または請求項2に記載の調質圧延設備。
【請求項4】
前記センタークラウンロールは、前記調質圧延機から前記金属板の板幅の3倍以上離れた位置に設けられる、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の調質圧延設備。
【請求項5】
前記センタークラウンロールが前記金属板に付与する張力を制御する制御装置をさらに有する、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の調質圧延設備。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の調質圧延設備を用いる金属板の製造方法であって、
前記金属板の調質圧延時の摩擦係数は0.05以上0.15以下である、金属板の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の調質圧延設備を用いる金属板の製造方法であって、
前記センタークラウンロールは、前記金属板に1kg/mm以上10kg/mm以下の張力を付与する、金属板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調質圧延設備および当該調質圧延設備を用いた金属板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属板や鋼板などの製造において、金属板加工時に発生する降伏点伸びを防止させたり、形状を矯正するために、金属板に約1%程度の伸びを与える調質圧延が行われる。この調質圧延では、調質圧延機に搬送される金属板に蛇行が発生する場合がある。金属板に蛇行が発生すると、金属板に絞りが発生して製品が得られなくなる場合があり、これにより、歩留まりおよび生産性が低下する。この金属板の蛇行を防止する技術として、調質圧延機に搬送される金属板に張力を付与する技術が知られている。
【0003】
しかしながら、表面の摩擦係数が低い金属板には大きな張力が張れないので、蛇行が抑制される張力を金属板に付与できない場合がある。さらに、摩擦係数が低い金属板に大きな張力を付与すると調質圧延ロールと金属板との間でスリップし、金属板の表面に傷が発生し、製品が得られなくなって生産性が低下する場合もある。一方、張力を付与せずに金属板の蛇行を防止する技術として、特許文献1には、スキンパスミルの運転中に金属板の左右方向の偏りを検出し、検出された金属板の偏り度合いに応じてスキンパスミルの左右方向の圧下量および圧下位置を制御する技術が開示されている。特許文献1によれば、金属板の偏り度合いに応じてスキンパスミルの左右方向の圧下量および圧下位置を制御することで金属板の蛇行を防止できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-53411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術では、金属板の偏りを検出するセンサーや、当該センサーの検出値に応じてスキンパスミルの圧下量および圧下位置を制御する新しい制御システムが必要になる。このため、当該設備導入のための追加費用が発生し、製造コストが上昇するという課題がある。さらに、新しい制御システムを導入すると、当該制御システムの調整のための時間が必要になる、といった課題もある。本発明は、このような従来技術の課題を鑑みてなされたものであり、その目的とする所は、センサーや新たな制御システムを必要とせず、調質圧延機に搬送される金属板の蛇行を抑制できる調質圧延設備および当該調質圧延設備を用いた金属板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
(1)金属板を調質圧延する調質圧延機と、1以上のブライドルロールと、を有し、前記1以上のブライドルロールは、前記金属板の搬送方向に対して前記調質圧延機の上流側および下流側の少なくとも一方に設けられ、前記1以上のブライドルロールのうちの少なくとも1つは、センタークラウンロールである、調質圧延設備。
(2)前記センタークラウンロールのクラウン量は、1.0mm以上5.0mm以下である、(1)に記載の調質圧延設備。
(3)前記センタークラウンロールは、前記金属板の搬送方向に対して前記調質圧延機の上流側に設けられる、(1)または(2)に記載の調質圧延設備。
(4)前記センタークラウンロールは、前記調質圧延機から前記金属板の板幅の3倍以上離れた位置に設けられる、(1)から(3)の何れか1つに記載の調質圧延設備。
(5)前記センタークラウンロールが前記金属板に付与する張力を制御する制御装置をさらに有する、(1)から(4)の何れか1つに記載の調質圧延設備。
(6)(1)から(5)の何れか1つに記載の調質圧延設備を用いる金属板の製造方法であって、前記金属板の調質圧延時の摩擦係数は0.05以上0.15以下である、金属板の製造方法。
(7)(1)から(5)の何れか1つに記載の調質圧延設備を用いる金属板の製造方法であって、前記センタークラウンロールは、前記金属板に1kg/mm以上10kg/mm以下の張力を付与する、金属板の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る調質圧延設備では、既存のブライドルロールをセンタークラウンロールとして調質圧延機に搬送される金属板の蛇行を抑制する。このため、本発明に係る調質圧延設備では、センサーや新たな制御システムを用いることなく金属板の蛇行を抑制できので、当該調質圧延設備を用いることで、金属板の製造コストの上昇を抑制でき、かつ、制御システムの調整に時間がかかることも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る調質圧延設備10の一例を示す模式図である。
図2】センタークラウンロールのクラウン量と蛇行抑制効果との関係を示すグラフである。
図3】金属板の蛇行抑制効果を示すグラフである。
図4】実施例1の結果を示すグラフである。
図5】実施例2の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を本発明の実施形態を通じて説明する。図1は、本実施形態に係る調質圧延設備10の一例を示す模式図である。調質圧延設備10は、ペイオフリール12と、テンションリール14と、調質圧延機16と、複数のブライドルロール20、22、24、26、30、32、34、36と、制御装置40とを有する。複数のブライドルロールのうち、ブライドルロール20~26は、金属板18の搬送方向に対して調質圧延機16の上流側に設けられ、ブライドルロール30~36は、金属板18の搬送方向に対して調質圧延機16の下流側に設けられる。また、ブライドルロール20、22は、調質圧延機16から金属板18の板幅の3倍以上離れた位置に設けられているのに対し、ブライドルロール24、26は、調質圧延機16から金属板18の板幅の3倍より短い範囲内に設けられている。
【0010】
これら複数のブライドルロールは、金属板18に張力を付与する。なお、以後の説明では、調質圧延機16に対して金属板18の搬送方向上流側に設けられているブライドルロール20~26を入側ブライドルロール20~26と記載し、金属板18の搬送方向下流側に設けられているブライドルロール30~36を出側ブライドルロール30~36と記載する。
【0011】
ペイオフリール12によって送出された金属板18は、入側ブライドルロール20~26により調質圧延機16に送り込まれて調質圧延される。調質圧延機16によって調質圧延された金属板18は、出側ブライドルロール30~36により送出され、テンションリール14によって巻き取られる。このようにして金属板18の調質圧延が実施され、調質圧延された金属板が製造される。なお、本実施形態では、他の設備から独立した調質圧延設備10の例を示したが、これに限らず、酸洗設備等の他の設備に組み込まれていてもよい。その場合には、調質圧延設備10は、ペイオフリール12やテンションリール14を有していなくてもよい。
【0012】
調質圧延機16には、通常、4段または6段の圧延機が用いられる。また、図1では、単スタンドの圧延機で構成される例を示したが、2スタンドの圧延機で構成されていてもよい。入側ブライドルロール20~26の周速、調質圧延機16のロール周速および出側ブライドルロール30~36の周速は、制御装置40によって制御される。制御装置40による周速制御により、入側ブライドルロール20~26によって金属板18に付与される張力の大きさ、および、出側ブライドルロール30~36によって金属板18に付与される張力の大きさが定められる。すなわち、制御装置40は、これらロールの周速を制御することで、金属板18に付与する張力を制御している。
【0013】
調質圧延機16では、金属板18が所定の伸長率となるように調質圧延される。ここで伸長率とは、金属板18の圧延前後の伸び率であり、調質圧延が施される前後での金属板18の長さの増加率である。調質圧延の伸長率は、入側ブライドルロール20~26と、出側ブライドルロール30~36との周速差によって計測される。
【0014】
調質圧延機16は熱間圧延機に比べると圧延荷重が軽いので、調質圧延機16に搬送される金属板18には蛇行が発生しやすい。このような、金属板18の蛇行に対し、本実施形態における調質圧延設備10では、入側ブライドルロール20、22にクラウン量が1.0mm以上5.0mm以下のセンタークラウンロールを用いている。このように、入側ブライドルロール20、22にクラウン量が1.0mm以上5.0mm以下のセンタークラウンロールを用いることで、調質圧延機16に搬送される金属板18の蛇行を抑制できる。
【0015】
次に、センタークラウンロールのクラウン量と蛇行抑制効果との関係について説明する。図2は、センタークラウンロールのクラウン量と蛇行抑制効果との関係を示すグラフである。図2において、横軸は1つのセンタークラウンロールのクラウン量(mm)であり、縦軸は蛇行比率(-)である。また、破線は板厚1.6mmの金属板を用いて蛇行抑制効果を確認した結果を示し、実線は板厚4.5mmの金属板を用いて蛇行抑制効果を確認した結果を示す。図2の縦軸の蛇行比率は、クラウン量0mmにおける金属板18の最大蛇行量を1とした場合の各条件における金属板18の最大蛇行量の比率である。金属板18の蛇行量は、調質圧延機16の入り側に蛇行計を設置し、金属板18のオフセンター量を検出し、検出されたオフセンター量から最大蛇行量を求めた。
【0016】
図2に示すように、入側ブライドルロール20のセンタークラウン量を大きくするほど蛇行比率は小さくなった。この結果から、センタークラウンロールを用いることで、センタークラウンロールを用いない場合よりも金属板18の蛇行を抑制できることがわかる。センタークラウンロールのクラウン量は、1.0mm以上5.0mm以下であることが好ましい。クラウン量が1.0mm以上のセンタークラウンロールを用いることで、センタークラウンロールを用いない場合と比較して最大蛇行量を20%以上小さくできる。一方、センタークラウン量が5.0mmより大きいセンタークラウンロールを用いると、金属板18とセンタークラウンロールとの接触面積が小さくなり、蛇行抑制効果が小さくなるので好ましくない。センタークラウンロールのクラウン量は、センタークラウンロールの軸線方向の中央の直径から軸線方向の端部の直径を減じることで算出される。
【0017】
また、金属板18の板厚で蛇行抑制効果を比較すると、板厚が1.6mmの金属板を用いた場合よりも板厚が4.5mmの金属板を用いた場合の方が、蛇行抑制効果が大きかった。板厚が厚いと金属板18に張力が張りづらい。このため、同じ構成の調質圧延機に金属板を搬送する場合で比較すると、板厚が薄い金属板よりも板厚が厚い金属板の方が張力が小さくなるので大きな蛇行が発生する。このため、板厚1.6mmの金属板を用いた場合よりも板厚4.5mmの金属板を用いた方がクラウン量0mmにおける最大蛇行量が大きくなる。一方、センタークラウンロールによる蛇行抑制効果は、金属板の板厚に影響を受けないので、クラウン量0mmにおける最大蛇行量が大きい分、板厚4.5mmの金属板の蛇行抑制効果の方が、板厚1.6mmの金属板の蛇行抑制効果よりも大きくなったものと考えられる。この観点から、本実施形態に係る調質圧延設備10に用いる金属板の板厚は厚い方が好ましいといえる。但し、板厚が薄い金属板であっても本実施形態に係る調質圧延設備10を適用して蛇行を抑制できるので、本実施形態に係る調質圧延設備10に用いられる金属板18の板厚は、0.8mm以上8.0mm以下であればよく、2.3mm以上6.0mm以下であることが好ましい。
【0018】
次に、センタークラウンロールを設ける位置と金属板18の蛇行抑制効果との関係を確認した結果を説明する。図3は、金属板18の蛇行抑制効果を示すグラフである。図3の縦軸はセンタークラウンロールを設ける条件を示しており、横軸は、最大蛇行量の割合(%)である。最大蛇行量の割合は、クラウン量0mmにおける金属板18の最大蛇行量を100%とした場合の各条件における金属板18の最大蛇行量の割合である。
【0019】
図3において、クラウン1は、ブライドルロール20、22をクラウン量1.0mmのセンタークラウンロールとした条件である。クラウン2は、ブライドルロール20、22およびブライドルロール34、36をクラウン量1.0mmのセンタークラウンロールとした条件である。クラウン3は、ブライドルロール20、22およびブライドルロール30、32をクラウン量1.0mmのセンタークラウンロールとした条件である。クラウン4は、ブライドルロール20、22およびブライドルロール30、32、34、36をクラウン量1.0mmのセンタークラウンロールとした条件である。クラウン5は、ブライドルロール20、22、24、26をクラウン量1.0mmのセンタークラウンロールとした条件である。
【0020】
図3から、ブライドルロール20、22をクラウン量1.0mmのセンタークラウンロールとすることで、最大蛇行量を28%程度小さくできることがわかる。また、(クラウン1-クラウン4)の最大蛇行量の割合が、{(クラウン1-クラウン2)+(クラウン1-クラウン3)}の最大蛇行量の割合とほぼ同じになっていることからセンタークラウンロールを用いることによる蛇行抑制効果には加算性があることがわかる。
【0021】
このように蛇行抑制効果に加算性があることから、図3からそれぞれのブライドルロールの位置にセンタークラウンロールを用いることによる蛇行抑制効果を見積もることができる。すなわち、クラウン1とクラウン5の結果からブライドルロール24、26をセンタークラウンロールとすることで最大蛇行量を14%程度小さくできることがわかる。同様に、クラウン1とクラウン3の結果からブライドルロール30、32をセンタークラウンロールとすることで最大蛇行量を9%程度小さくできることがわかる。また、クラウン1とクラウン2の結果からブライドルロール34、36をセンタークラウンロールとすることで最大蛇行量を4%程度小さくできることがわかる。
【0022】
これらの結果から、金属板18の搬送方向に対して調質圧延機16の下流側のブライドルロールをセンタークラウンロールにするよりも、調質圧延機16の上流側のブライドルロールをセンタークラウンロールにする方が蛇行量を大きく抑制できることがわかる。この結果から、金属板18の搬送方向に対して調質圧延機16の下流側のブライドルロールをセンタークラウンロールにするよりも調質圧延機16の上流側のブライドルロールをセンタークラウンロールにすることが好ましいことがわかる。
【0023】
また、ブライドルロール20、22は、調質圧延機16から金属板18の板幅の3倍以上離れた位置に設けられているのに対し、ブライドルロール24、26は、調質圧延機16から金属板18の板幅の3倍より短い範囲内に設けられている。このように、センタークラウンロールは、調質圧延機16から金属板18の板幅の3倍以上離れたブライドルロール20、22の位置に設けることが好ましく、これにより、金属板18の蛇行抑制効果を高めることができる。さらに、センタークラウンロールを調質圧延機16から金属板18の板幅の3倍以上離れた位置に設けることで、センタークラウンロールを通過した際に生じる板幅方向の不均一な張力分布が解消されるので、調質圧延時に形状不良が発生することも防止できる。なお、調質圧延機16からブライドルロール20、22までの距離は、金属板18の板幅の50倍以下であることが好ましく、30倍以下であることがより好ましい。
【0024】
また、センタークラウンロールによって金属板18に付与される張力は1kg/mm以上10kg/mm以下であることが好ましい。1kg/mm以上10kg/mm以下の張力であれば、表面の摩擦係数が小さい金属板や、板厚が厚い金属板にも付与できるとともに、調質圧延機と金属板18との間でスリップが起きることも防止できる。一方、張力が1kg/mmより低いと金属板18の蛇行の抑制が困難になる場合があるので好ましくない。さらに、張力が10kg/mmより大きいと調質圧延ロールと金属板18との間でスリップして金属板18の表面に傷が生じる場合があるので好ましくない。
【0025】
金属板18に付与される張力は、センタークラウンロールの周速と調質圧延機のロール周速とを調整することで調整される。なお、テンションメーターをブライドルロール26と調質圧延機16との間、および、調質圧延機16とブライドルロール30との間に設けて、金属板18の張力を測定してもよい。
【0026】
また、調質圧延時における調質圧延ロールと金属板18との摩擦係数は0.05以上0.15以下であることが好ましい。調質圧延時の摩擦係数が0.05より低くなると、調質圧延機と金属板18との間でスリップが起きる場合があるので好ましくない。また、調質圧延時の摩擦係数が0.15より大きいということは、金属板18の塗油量が少ないことを意味し、塗油量が少ないと金属板18に錆が発生する懸念が生じるので好ましくない。
【0027】
調質圧延速度は10mpm以上500mpm以下の範囲内とすることが好ましい。圧延速度が500mpmを超えると、金属板18に絞り等の圧延トラブルが発生する場合があるので好ましくない。また、品質の観点からは圧延速度の下限は定めなくてよいが、生産性の観点から10mpm以上とすることが好ましい。
【0028】
本実施形態に係る調質圧延設備10で調質圧延する金属板18としては、熱間圧延後の酸洗工程を通過していない熱延鋼板、熱間圧延後の酸洗工程を通過した酸洗後の熱延鋼板、板厚2.3mm以上の熱延鋼板および防錆油等が塗布された熱延鋼板が好ましい。また、金属板18の成分組成、材料強度、板厚および板幅等は特に限定することなく、本実施形態に係る調質圧延設備10を用いてこれらの金属板18の蛇行を抑制しながら調質圧延を施すことができる。
【0029】
このように、本実施形態に係る調質圧延設備10では、センタークラウンロールを用いることで調質圧延機に搬送される金属板の蛇行を抑制しているので、センサーや新たな制御システムを用いることなく金属板の蛇行を抑制できる。このため、本実施形態に係る調質圧延設備10を用いることで、金属板の製造コストの上昇を抑制でき、かつ、制御システムの調整に時間がかかることも防止できる。
【0030】
なお、本実施形態に係る調質圧延設備10では、ブライドルロール20、22にセンタークラウンロールを用いた例を示したがこれに限らない。ブライドルロール20~26、30~36のうち少なくとも1つのブライドルロールにセンタークラウンロールを用いればよく、これにより、センタークラウンロールを用いていない調質圧延設備よりも金属板の蛇行を抑制できる。また、本実施形態では、調質圧延機16の入側に4つのブライドルロール20~26、調質圧延機16の出側に4つのブライドルロール30~36を有する例を示したがこれに限らない。1以上のブライドルロールが、調質圧延機16の入側および出側の少なくとも一方に設けられていればよく、このうちの少なくとも1つがセンタークラウンロールであればよい。
【0031】
さらに、本実施形態に係る調質圧延設備10では、入側ブライドルロール20~26の周速、調質圧延機16のロール周速および出側ブライドルロール30~36の周速を制御する制御装置40を有する例で説明した。しかしながら、これらロールの周速が一定である場合には、調質圧延設備10は制御装置40を有していなくてもよい。
【実施例0032】
次に本発明の実施例1を説明する。実施例1における発明例1では、図1に示した調質圧延設備10のブライドルロール20、22をクラウン量2.0mmのセンタークラウンロールとし、張力が4.0kg/mm、板厚2.3~3.2mm、板幅1000mm、引張強度350MPaの塗油された熱延鋼板を用いて、調質圧延時の摩擦係数0.10として、調質圧延を1週間実施した。比較例1では、センタークラウンロールを用いずに、発明例1の条件で調質圧延を1週間実施した。発明例1および比較例1ともに、調質圧延機の入側に蛇行計を設置し、調質圧延機に搬送される金属板のオフセンター量を検出することで蛇行量を算出した。この蛇行量を1週間測定し、1週間分の蛇行量の平均値を算出した。
【0033】
図4は、実施例1の結果を示すグラフである。図4の縦軸は蛇行割合(%)であり、この割合は、比較例1の蛇行量の平均値を100%とした場合における発明例1の蛇行量の平均値の割合である。
【0034】
図4に示すように、ブライドルロール20、22をクラウン量2.0mmのセンタークラウンロールとすることで、センタークラウンロールを用いていない比較例1に対して金属板の蛇行量の平均値を45%低減できた。この結果から、センタークラウンロールを用いることで、調質圧延機に搬送される金属板の蛇行を抑制できることが確認された。なお、図2に示したように、センタークラウンロールを用いることによる蛇行抑制効果は板厚が厚い金属板の方が高いので、板厚が2.3~3.2mmよりも厚い金属板においては、さらに金属板の蛇行を抑制できると考えられる。
【実施例0035】
次に、本発明の実施例2を説明する。実施例2における発明例2では、ブライドルロール20、22をクラウン量2.0mmのセンタークラウンロールとした調質圧延設備10を用いて、板厚の範囲が2.3~3.2mmである金属板を用いて調質圧延を1週間実施し、これらの金属板の通板速度の平均値を算出した。比較例2では、センタークラウンロールを用いずに、それ以外は発明例2と同じ条件で調質圧延を1週間実施し、通板速度の平均値を算出した。比較例2では、金属板に蛇行が発生し、その都度、作業者が通板速度を落として蛇行を修正したため、金属板の蛇行が抑制される発明例2よりも通板速度の平均値は低くなった。
【0036】
図5は、実施例2の結果を示すグラフである。図5の縦軸は、通板速度割合(%)であり、センタークラウンロールを用いた発明例2の通板速度を100%とした場合における比較例2の通板速度の割合を示す。図5に示すように、発明例2の通板速度割合100%に対し、比較例2の通板速度割合が78%となった。センタークラウンロールを用いることで、調質圧延機に搬送される金属板の蛇行が抑制されるので作業者による蛇行修正の頻度が少なくなり、これにより、調質圧延機に搬送される金属板の通板速度を速めることができ、調質圧延工程の生産性を向上できることが確認された。
【符号の説明】
【0037】
10 調質圧延設備
12 ペイオフリール
14 テンションリール
16 調質圧延機
18 金属板
20 ブライドルロール
22 ブライドルロール
24 ブライドルロール
26 ブライドルロール
30 ブライドルロール
32 ブライドルロール
34 ブライドルロール
36 ブライドルロール
40 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5