(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049180
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】車両の車椅子用乗降装置
(51)【国際特許分類】
A61G 3/06 20060101AFI20220322BHJP
【FI】
A61G3/06 711
A61G3/06 712
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155253
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古本 博一
(72)【発明者】
【氏名】大石 和史
(72)【発明者】
【氏名】永縄 拓也
(72)【発明者】
【氏名】川脇 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 仁
(72)【発明者】
【氏名】平川 智也
(72)【発明者】
【氏名】青山 宏文
(72)【発明者】
【氏名】清水 俊介
(57)【要約】
【課題】ベルト繰り出しロック機構のロック状態を解除するフリースイッチの操作、及びロック機構をロック状態にするフリー終了操作を不要にして、車椅子用乗降装置の使い勝手を向上させる。
【解決手段】車室Rのドア開口部12と路面間に掛け渡される車椅子用のスロープ21と、先端部が車椅子Kに連結可能なベルト23と、車室内でベルト23を巻き取り、あるいは繰り出し可能なドラムと、ドラムをベルト巻き取り方向に付勢する付勢手段と、ドラムのベルト繰り出し方向の回転を規制するベルト繰り出しロック機構とを備える車両10の車椅子用乗降装置20であって、車椅子Kが車室内に固定されていない状態で、駐車中にドア開口部12のドアが開放されると、ベルト繰り出しロック機構のロック状態が解除される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室のドア開口部と路面間に掛け渡される車椅子用のスロープと、先端部が車椅子に連結可能なベルトと、前記車室内で前記ベルトを巻き取り、あるいは繰り出し可能なドラムと、前記ドラムをベルト巻き取り方向に付勢する付勢手段と、前記ドラムのベルト繰り出し方向の回転を規制するベルト繰り出しロック機構とを備える車両の車椅子用乗降装置であって、
前記車椅子が前記車室内に固定されていない状態で、駐車中に前記ドア開口部のドアが開放されると、前記ベルト繰り出しロック機構のロック状態が解除される車両の車椅子用乗降装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両の車椅子用乗降装置であって、
前記ドラムと前記ベルトとは、車幅方向に並んで複数セット設けられており、
各々の前記ドラムの回転角度を検出することで、ベルト繰り出し量、あるいはベルト巻き取り量を測定可能な計測手段を備えており、
各々の前記ベルトが前記ドラムから所定量以上繰り出されて、前記先端部が車外の前記車椅子に連結された状態で、前記車椅子が前記車両の方向に移動し、各々の前記ベルトが前記ドラムに規定量巻き取られた状態で、前記ベルト繰り出しロック機構がロック状態となる車両の車椅子用乗降装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された車両の車椅子用乗降装置であって、
前記ベルト繰り出しロック機構は、前記ドラムと一体で回転するロック用歯車と、係合位置と係合解除位置間で移動可能な構成で、前記係合位置で前記ロック用歯車と係合してそのロック用歯車の前記ベルト繰り出し方向の回転を禁止するロック爪とを備えている車両の車椅子用乗降装置。
【請求項4】
請求項3に記載された車両の車椅子用乗降装置であって、
ドラム回転用のモータと、前記モータと前記ドラム間に設けられたクラッチ機構とを備えており、
前記クラッチ機構は、前記モータの駆動時に前記モータの回転力を前記ドラムに伝達する構成であり、
前記モータの駆動時には、前記ベルト繰り出しロック機構のロック爪とロック用歯車との係合が解除される車両の車椅子用乗降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室のドア開口部と路面間に掛け渡される車椅子用のスロープと、先端部が前記車椅子に連結可能なベルトと、前記車室内で前記ベルトを巻き取り、あるいは繰り出し可能なドラムと、前記ドラムをベルト巻き取り方向に付勢する付勢手段と、前記ドラムのベルト繰り出し方向の回転を規制するベルト繰り出しロック機構とを備える車両の車椅子用乗降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する車両の車椅子用乗降装置が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の車椅子用乗降装置110は、
図11の平面図に示すように、車両100の車室102におけるバックドア開口部104と路面間に掛け渡される車椅子用のスロープ106を備えている。また、車椅子用乗降装置110は、先端部が車椅子Kに連結可能な左右一対のベルト112と、車室102内でベルト112を巻き取り、あるいは繰り出し可能な左右一対のドラム114と、前記ドラム114をベルト巻き取り方向に付勢する付勢手段(図示省略)とを備えている。さらに、車椅子用乗降装置110には、ドラム114のベルト繰り出し方向の回転を規制するベルト繰り出しロック機構(図示省略)が設けられている。前記ベルト繰り出しロック機構は、車室内の操作パネル118に設けられたフリースイッチを操作することでロック状態を解除することができる。
【0003】
車椅子用乗降装置110を使用して車椅子Kの乗員を乗車させる場合、介護者は先ず車室内のフリースイッチを操作してベルト繰り出しロック機構のロック状態を解除する。そして、介護者は、
図12に示すように、ベルト112を付勢手段に抗してドラム114から引き出し、
図13に示すように、ベルト112の先端部を車外の車椅子Kに連結する。次に、介護者は、
図13に示すように、再び、車室内に戻り、フリー終了操作をしてベルト繰り出しロック機構をロック状態にする。次に、介護者は、
図14に示すように、再び車椅子Kまで戻った後、
図15に示すように、車椅子Kを支えた状態で車室内まで移動する。これにより、ベルト繰り出しロック機構が動作している状態で、ベルト112が前記付勢手段の付勢力等によりドラム114に巻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記車椅子用乗降装置110では、ベルト繰り出しロック機構をロック解除状態、あるいはロック状態にするフリースイッチ等が車室内の操作パネル118に設けられている。このため、車椅子Kの乗員を乗車させる際、介護者がフリースイッチ等を操作するために車室内と車外の車椅子K間を行き来する必要があり、車椅子用乗降装置の使い勝手が良くない。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ベルト繰り出しロック機構のロック状態を解除するフリースイッチの操作を不要にして、車椅子用乗降装置の使い勝手を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、車室のドア開口部と路面間に掛け渡される車椅子用のスロープと、先端部が車椅子に連結可能なベルトと、前記車室内で前記ベルトを巻き取り、あるいは繰り出し可能なドラムと、前記ドラムをベルト巻き取り方向に付勢する付勢手段と、前記ドラムのベルト繰り出し方向の回転を規制するベルト繰り出しロック機構とを備える車両の車椅子用乗降装置であって、前記車椅子が前記車室内に固定されていない状態で、駐車中に前記ドア開口部のドアが開放されると、前記ベルト繰り出しロック機構のロック状態が解除される。
【0008】
本発明によると、車椅子が車室内に固定されていない状態で、駐車中にドア開口部のドアが開放されると、ベルト繰り出しロック機構のロック状態が解除される。このため、ドアを開放することで、フリースイッチを操作した場合と同じ状態となり、ドラムからベルトを付勢手段の付勢力に抗して引き出すことが可能になる。即ち、ドラムからベルトを引き出す際、ベルト繰り出しロック機構のロック状態を解除するフリースイッチの操作が不要になる。
【0009】
第2の発明によると、ドラムとベルトとは、車幅方向に並んで複数セット設けられており、各々の前記ドラムの回転角度を検出することで、ベルト繰り出し量、あるいはベルト巻き取り量を測定可能な計測手段を備えており、各々の前記ベルトが前記ドラムから所定量以上繰り出されて、前記先端部が車外の前記車椅子に連結された状態で、前記車椅子が前記車両の方向に移動し、各々の前記ベルトが前記ドラムに規定量巻き取られた状態で、前記ベルト繰り出しロック機構がロック状態となる。即ち、各々のベルトをドラムから付勢手段の付勢力に抗して引き出し、車外の車椅子に連結した状態で、その車椅子を車両の方向に移動させることで、ベルト繰り出しロック機構が自動的にロック状態となる。このため、ベルト繰り出しロック機構をロック状態にするフリー終了操作が不要になる。
【0010】
第3の発明によると、ベルト繰り出しロック機構は、ドラムと一体で回転するロック用歯車と、係合位置と係合解除位置間で移動可能な構成で、前記係合位置で前記ロック用歯車と係合してそのロック用歯車の前記ベルト繰り出し方向の回転を禁止するロック爪とを備えている。
【0011】
第4の発明によると、ドラム回転用のモータと、前記モータとドラム間に設けられたクラッチ機構とを備えており、前記クラッチ機構は、前記モータの駆動時に前記モータの回転力を前記ドラムに伝達する構成であり、前記モータの駆動時には、前記ベルト繰り出しロック機構のロック爪とロック用歯車との係合が解除される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、ベルト繰り出しロック機構のロック状態を解除するフリースイッチ等の操作が不要になり、車椅子用乗降装置の使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態1に係る車両の車椅子用乗降装置の全体を表す模式斜視図である。
【
図2】前記車両の車椅子用乗降装置のベルトを車外の車椅子に連結した状態を表す模式斜視図である。
【
図3】前記車両の車椅子用乗降装置におけるベルト引き出し動作を表す側面図である。
【
図4】前記車両の車椅子用乗降装置において車椅子の乗員を乗車させる動作を表す側面図である。
【
図5】前記車両の車椅子用乗降装置における左側のドラム回転装置を表す平面図である。
【
図6】ベルト繰り出しロック機構におけるロック用歯車とロック爪とを表す側面図(
図5のVI-VI矢視図)である。
【
図7】前記車両の車椅子用乗降装置の配線ブロック図である。
【
図8】前記車両の車椅子用乗降装置の動作を表すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施形態2に係る車両の車椅子用乗降装置における左側のドラム回転装置を表す平面図である。
【
図10】実施形態2に係る車両の車椅子用乗降装置の配線ブロック図である。
【
図11】従来の車椅子用乗降装置の全体平面図である。
【
図12】従来の車椅子用乗降装置において車椅子の乗員を乗車させる動作を表す側面図(1)である。
【
図13】従来の車椅子用乗降装置において車椅子の乗員を乗車させる動作を表す側面図(2)である。
【
図14】従来の車椅子用乗降装置において車椅子の乗員を乗車させる動作を表す側面図(3)である。
【
図15】従来の車椅子用乗降装置において車椅子の乗員を乗車させる動作を表す側面図(4)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施形態1〕
以下、
図1~
図8に基づいて本発明の実施形態1に係る車両の車椅子用乗降装置について説明する。本実施形態に係る車椅子用乗降装置20は、
図1~
図4に示すように、ワンボックス型の車両10の後部背面に設けられたドア開口部12からスロープ21を利用して介護者が車椅子Kの乗員を乗り降りさせるための装置である。ここで、図中に示す前後左右、及び上下は、本実施形態に係る車椅子用乗降装置20を備える車両10の前後左右、及び上下に対応している。
【0015】
<車両10の後部概要について>
車両10の車室Rの後部には、
図1~
図4に示すように、背面側にドア開口部12が形成されている。ドア開口部12の下辺部は、車室Rの床面10fとほぼ等しい高さに設定されている。そして、ドア開口部12の下辺部には、車幅方向に延びる帯状下扉部13(
図3、
図4参照)が上下回動可能な状態で連結されている。帯状下扉部13は、起立保持された状態でリヤバンパー(図示省略)の位置に配置される。また、ドア開口部12の上辺部には、バックドア14(
図3、
図4参照)の上辺部が上下回動可能な状態で連結されている。バックドア14は、起立保持された帯状下扉部13の上側のドア開口部12を開閉するドアである。バックドア14の下辺中央部には、ドアロック機構(図示省略)が設けられており、そのドアロック機構が帯状下扉部13の中央ストライカ(図示省略)と係合可能に構成されている。そして、バックドア14のドアロック機構が帯状下扉部13の中央ストライカと係合することで、バックドア14が閉ロックされる。また、バックドア14のドアロック機構には、バックドア14の開閉状態を確認するドアスイッチDS(
図7参照)が設けられている。
【0016】
<車椅子用乗降装置20の概要について>
車椅子用乗降装置20は、車椅子Kの乗降に使用されるスロープ21と、スロープ21に沿う車椅子Kの昇降に使用される左右一対のベルト23と、ベルト23を巻き取り、あるいは繰り出し可能な左右一対のドラム回転装置30とを備えている。また、車椅子用乗降装置20は、前記ドラム回転装置30を動作させるための制御ユニットECUを備えている。さらに、車両10には、
図1等に示すように、車椅子用乗降装置20により車室R内の定位置まで引き上げられた車椅子Kのフレームに対して後方からベルト43のフック43fを掛けて固定する車椅子固定装置40が設けられている。
【0017】
<スロープ21について>
スロープ21は、
図1~
図4に示すように、車室Rのドア開口部12と路面間に掛け渡される板状部材であり、そのスロープ21の前端部が帯状下扉部13の前側で車室Rの床部に上下回動可能な状態で連結されている。スロープ21は、車室Rの床面10fに沿う展開位置と、二つ折り状態で起立して車室R内に格納される格納位置(図示省略)間で移動可能なように構成されている。
【0018】
<ドラム回転装置30について>
左右一対のドラム回転装置30は、ベルト23を巻き取り、あるいは繰り出すことで、車椅子Kをスロープ21に沿って昇降させる装置である。左右一対のドラム回転装置30は、
図1、
図2に示すように、車幅方向に長い角形のケース30cに収納された状態で車室Rの床面10f上の基準位置に固定されている。左右のドラム回転装置30は等しい構成で、左右対称に形成されている。ドラム回転装置30は、
図5に示すように、ベルト23を巻き取るためのドラム32を備えており、そのドラム32が後方にベルト23を繰り出せるように、平面コ字形の支持ブラケット33に支持されている。ここで、ベルト23の先端部には、
図1、
図2に示すように、車椅子Kの前側のフレームに掛けられるフック23fが設けられている。
【0019】
ドラム回転装置30のドラム32には、
図5に示すように、回転軸32jが同軸に通されており、その回転軸32jが前記ドラム32に対して相対回転不能な状態で連結されている。ドラム32から左側に突出した回転軸32jと右側に突出した回転軸32jとは、平面コ字形の支持ブラケット33の左右の軸受部33xによって回転自在に支持されている。ドラム32の回転軸32jの右端部には、ドラム32をベルト巻き取り方向に回転させられるように付勢されたゼンマイバネ34が連結されている。ゼンマイバネ34は、支持具34yを介して支持ブラケット33に支持されている。
【0020】
ドラム32の回転軸32jの左端部には、
図5に示すように、ロック用歯車36と回転力受け歯車37とが相対回転不能な状態で同軸に連結されている。また、ドラム32の回転軸32jの左端部には、ドラム32の回転角度を検出するためのパルスセンサーPSが装着されている。回転力受け歯車37は平歯車であり、その回転力受け歯車37に対して駆動歯車39(平歯車)が噛合している。駆動歯車39は、電磁クラッチ38の出力軸38pに取付けられており、その電磁クラッチ38の入力軸38eがモータMの出力軸(図示省略)に連結されている。モータMと電磁クラッチ38とは制御ユニットECU(後記する)によって同時に通電される。このため、モータMの回転力が電磁クラッチ38を介して駆動歯車39、回転力受け歯車37、及びドラム32に伝達されるようになる。ここで、モータMは、例えば、リモコン操作機45(
図7参照)の操作により駆動可能に構成されている。
【0021】
ロック用歯車36は、
図6に示すように、右回転方向、すなわちドラム32のベルト繰り出し回転方向に傾斜した歯36hを備える歯車である。ロック用歯車36の歯36hには、ロック爪31の爪先端部31xが右回転方向において係合可能なように構成されている。ロック爪31は、
図6に示すように、回動中心軸31cを中心に上下回動可能な状態で支持ブラケット33の縦壁部に連結されている。
【0022】
ロック爪31には、爪先端部31xと回動中心軸31cを挟んで反対側の位置に連結軸31jが設けられており、この連結軸31jにソレノイドSOLに連結されたリンク31rの先端が上下回動可能な状態で連結されている。また、ソレノイドSOLとリンク31r間には、ソレノイドSOLの非通電時にリンク31rを押し出す方向に付勢されたコイルバネ31bが設けられている。
【0023】
上記構成により、ソレノイドSOLが通電されると、コイルバネ31bのバネ力に抗してリンク31rがソレノイドSOLに引き込まれ、ロック爪31が回動中心軸31cの回りを左回動して、ロック爪31の爪先端部31xとロック用歯車36との係合が解除される。また、ソレノイドSOLの通電が解除されると、コイルバネ31bのバネ力でリンク31rが押し出され、ロック爪31が回動中心軸31cの回りを右回動して、ロック爪31の爪先端部31xがロック用歯車36に係合する。
【0024】
ここで、ロック用歯車36の歯36hは、ベルト繰り出し回転方向に傾斜しているため、ロック用歯車36の歯36hに対してロック爪31の爪先端部31xが係合すると(
図6参照)、ロック用歯車36のベルト繰り出し方向(右方向)の回転が禁止される。しかし、ロック用歯車36の歯36hの傾斜により、ロック用歯車36がベルト巻き取り方向(左方向)の回転するときは、ロック爪31の爪先端部31xがロック用歯車36の歯36hを乗り越えることで、ロック用歯車36のベルト巻き取り方向(左方向)の回転は許容される。
【0025】
<制御ユニットECUについて>
制御ユニットECUは、左右一対のドラム回転装置30を動作させる装置である。制御ユニットECUには、
図7に示すように、バックドア14のドアスイッチDSの信号と、車椅子固定装置40の車椅子固定信号とが入力される。さらに、制御ユニットECUには、リモコン操作機45等からの信号、及びドラム回転装置30のパルスセンサーPSからのパルス信号が入力される。制御ユニットECUは、パルスセンサーPSのパルス信号に基づいてドラム回転装置30のドラム32のベルト巻き取り量、あるいはベルト繰り出し量を演算できるように構成されている。
【0026】
また、制御ユニットECUは、シフトレバー=Pの信号入力時(車両10の駐車時)に、車椅子固定装置40が車椅子Kを固定していない状態(車椅子固定信号がOFF)で、バックドア14が開放さると(ドアスイッチDSがOFF)、ドラム回転装置30のソレノイドSOLを通電させる。ここで、車椅子固定装置40が車椅子Kを固定していない状態は、車室R内に車椅子Kがないことを表している。ソレノイドSOLの通電により、
図6におけるコイルバネ31bのバネ力に抗してリンク31rがソレノイドSOLに引き込まれ、ロック爪31が回動中心軸31cの回りを左回動して、ロック爪31とロック用歯車36との係合が解除される。なお、モータMの停止中は電磁クラッチ38の通電が解除されているため、モータMと駆動歯車39、回転力受け歯車37、及びドラム32との連結が解除されている。このため、ドラム回転装置30のドラム32が外力により回転可能となり、ベルト23をゼンマイバネ34のバネ力に抗して手動で引き出せるようになる。
【0027】
また、制御ユニットECUは、左右のベルト23が
図4に示す所定位置を超えて引き出されて車外の車椅子Kに掛けられた後、介護者が車椅子Kを押して所定位置から一定量Bだけ前進させたことがパルスセンサーPSの信号によって検知されると、ソレノイドSOLの通電を解除する。これにより、
図6に示すように、コイルバネ31bのバネ力でリンク31rが押し出され、ロック爪31がロック用歯車36に係合する。この結果、ドラム32のベルト繰り出し方向の回転が禁止される。なお、ベルト巻き取り方向に回転は許容される。
【0028】
また、リモコン操作機45等によりベルト巻き取り操作、あるいは繰り出し操作が行なわれると、制御ユニットECUは、電磁クラッチ38、及びモータMの通電を行なうとともに、ソレノイドSOLの通電を行なう。これにより、ロック爪31とロック用歯車36との係合が解除された状態で、ドラム32がモータMの回転力で回転し、ベルト23がドラム32に巻き取られ、あるいはベルト23がドラム32から繰り出されるようになる。
【0029】
<車椅子用乗降装置20の動作について>
次に、車椅子Kの乗員を乗車させる場合(
図3参照)の車椅子用乗降装置20の動作を
図8のフローチャートに基づいて説明する。この場合、車両10を駐車した状態(シフトレバー=P)でバックドア14を開け、さらに帯状下扉部13を起立位置から下回動させて、スロープ21を展開する。このとき、車室R内で車椅子Kが固定されていないため、車椅子固定装置40の車椅子固定信号がOFFとなる。このため、
図8のステップS101の判断がNOとなる。また、バックドア14が開でシフトレバー=Pのため、
図8のステップS102の判断がYESとなる。このため、ベルト23がフリー状態となる(
図8 ステップS103)。即ち、制御ユニットECUがドラム回転装置30のソレノイドSOLを通電させる。これにより、
図6においてコイルバネ31bのバネ力に抗してリンク31rがソレノイドSOLに引き込まれ、ロック爪31とロック用歯車36との係合が解除される。なお、この状態で、モータMと電磁クラッチ38とには通電がされていないため、モータMと駆動歯車39、回転力受け歯車37、及びドラム32との連結は解除されている。これにより、ドラム32が外力を受けて回転可能になる。
【0030】
次に、
図3に示すように、介護者が左右のベルト23をそれぞれのドラム回転装置30のドラム32からゼンマイバネ34のバネ力に抗して引き出し、左右のベルト23のフック23fを、
図4に示すように、車外の車椅子Kのフレーム前部に掛ける。ここで、車椅子Kは所定位置の外側にあるため、左右のベルト23は所定位置を超えて引き出される。このため、ステップS105の判断がYESとなる。次に、介護者が車椅子Kを押して所定位置から一定量Bだけ前進させると、左右のベルト23が同時にゼンマイバネ34のバネ力により一定量Bだけドラム32に巻き取られる。制御ユニットECUは、左右のベルト23が所定位置から一定量Bだけドラム32に巻き取られたことをパルスセンサーPSの信号により検出すると(
図8 ステップS106 YES)、ベルト23のフリー状態を解除する(
図8 ステップS107)。
【0031】
即ち、制御ユニットECUがソレノイドSOLの通電を解除する。これにより、
図6に示すように、コイルバネ31bのバネ力でリンク31rが押し出され、ロック爪31の爪先端部31xがロック用歯車36に係合して、ドラム32のベルト繰り出し方向の回転が禁止される。次に、介護者がリモコン操作機45等をベルト巻き取り方向に操作すると、電磁クラッチ38、及びモータMの通電が行われるとともに、ソレノイドSOLが通電される。これにより、ロック爪31とロック用歯車36との係合が解除された状態で、モータMの回転が電磁クラッチ38を介して駆動歯車39、及び回転力受け歯車37に伝達され、ベルト23がドラム32に巻き取られる。そして、ベルト23がドラム32により上限位置まで巻き取られると、制御ユニットECUがモータMを停止し、電磁クラッチ38の通電を解除する。さらに、ソレノイドSOLの通電を解除する。これにより、ロック爪31がロック用歯車36に係合して、ドラム32のベルト繰り出し方向の回転が禁止される。
【0032】
車椅子Kが車室R内で車椅子固定装置40により固定されている場合には、介護者が車椅子固定装置40の車椅子固定状態を解除した後、リモコン操作機45等をベルト繰り出し方向に操作する。これにより、電磁クラッチ38、及びモータMの通電が行われるとともに、ソレノイドSOLの通電が行われる。これにより、ロック爪31とロック用歯車36との係合が解除された状態で、モータMの回転が電磁クラッチ38を介して駆動歯車39、及び回転力受け歯車37に伝達され、ベルト23がドラム32から繰り出される。このため、介護者はスロープ21を利用して車椅子Kの乗員を降車させることができる。
【0033】
<本実施形態において使用した用語と本発明における用語との対応>
本実施形態に係るドラム回転装置30のロック用歯車36、ロック爪31、ソレノイドSOL、及び制御ユニットECU等が本発明のベルト繰り出しロック機構に相当し、ドラム回転装置30のゼンマイバネ34が本発明の付勢手段に相当する。また、ドラム回転装置30のパルスセンサーPS、及び制御ユニットECUが本発明の計測手段に相当し、電磁クラッチ38が本発明のクラッチ機構に相当する。さらに、バックドア14が本発明のドアに相当する。
【0034】
<本実施形態に係る車椅子用乗降装置20の長所について>
本実施形態に係る車椅子用乗降装置20によると、車椅子Kが車室R内に固定されていない状態で、駐車中にドア開口部12のバックドア14が開放されると、ベルト繰り出しロック機構(ロック用歯車36、ロック爪31等)のロック状態が解除される。このため、バックドア14を開放することで、ドラム32からベルト23をゼンマイバネ34(付勢手段)のバネ力に抗して引き出すことが可能になる。このため、ドラム32からベルト23を引き出す際、ベルト繰り出しロック機構のロック状態を解除するフリースイッチの操作が不要になる。
【0035】
また、左右のベルト23をドラム32からゼンマイバネ34(付勢手段)のバネ力に抗して引き出し、車外の車椅子Kに連結した状態で、その車椅子Kをドア開口部12の方向に移動(前進)させることで、ベルト繰り出しロック機構が自動的にロック状態となる。このため、ベルト繰り出しロック機構をロック状態にするフリー終了操作が不要になる。
【0036】
〔実施形態2〕
以下、
図9、
図10に基づいて本実施形態2に係る車両の車椅子用乗降装置について説明する。本実施形態に係る車椅子用乗降装置は、実施形態1に係る車椅子用乗降装置20のドラム回転装置30のモータM、及び電磁クラッチ38等を省略したものであり、その他の構成は実施形態1に係る車椅子用乗降装置20と同様である。即ち、本実施形態に係る車椅子用乗降装置のドラム回転装置30xは、
図9に示すように、ベルト23を巻き取るためのドラム32と、ベルト巻き取り方向に付勢されたゼンマイバネ34と、ベルト繰り出しロック機構(ロック爪31、ロック用歯車36、ソレノイドSOL等)を備えている。
【0037】
制御ユニットECUには、
図10に示すように、バックドア14のドアスイッチDSの信号と、車椅子固定装置40の車椅子固定信号と、ドラム回転装置30のパルスセンサーPSからのパルス信号とが入力される。また、制御ユニットECUは、実施形態1に係る車椅子用乗降装置20と同様の制御によりドラム回転装置30のソレノイドSOL(
図6参照)を動作させることができる。
【0038】
<本実施形態に係る車椅子用乗降装置の動作について>
車椅子Kの乗員を乗車させる場合には、
図3に示すように、車両10を駐車した状態(シフトレバー=P)でバックドア14を開け、さらに帯状下扉部13を起立位置から下回動させて、スロープ21を展開する。このとき、車室R内で車椅子Kが固定されていないため、車椅子固定装置40の車椅子固定信号がOFFとなる。このため、
図8のステップS101の判断がNOとなる。また、バックドア14が開でシフトレバー=Pのため、
図8のステップS102の判断がYESとなる。このため、ベルト23がフリー状態となる(
図8 ステップS103)。即ち、制御ユニットECUがドラム回転装置30のソレノイドSOLを通電させる。ソレノイドSOLの通電により、
図6においてコイルバネ31bのバネ力に抗してリンク31rがソレノイドSOLに引き込まれ、ロック爪31とロック用歯車36との係合が解除される。これにより、ドラム回転装置30のドラム32が外力を受けて回転可能になる。
【0039】
次に、
図3に示すように、介護者が左右のベルト23をそれぞれのドラム回転装置30のドラム32からゼンマイバネ34のバネ力に抗して引き出し、左右のベルト23のフック23fを、
図4に示すように、車外の車椅子Kにフレーム前部に掛ける。このため、
図8のステップS105の判断がYESとなる。次に、介護者が車椅子Kを押して所定位置から一定量Bだけ前進させると、左右のベルト23がゼンマイバネ34のバネ力により一定量Bだけドラム32に巻き取られる。制御ユニットECUは、左右のベルト23が所定位置から一定量Bだけドラム32に巻き取られたことをパルスセンサーPSの信号により検出すると(
図8 ステップS106 YES)、ベルト23のフリー状態を解除する(
図8 ステップS107)。
【0040】
即ち、制御ユニットECUがソレノイドSOLの通電を解除する。これにより、
図6に示すように、ロック爪31がロック用歯車36に係合して、ドラム32のベルト繰り出し方向の回転が禁止される(ベルト巻き取り方向の回転は許容)。このため、介護者が
図4に示す状態から車椅子Kをスロープ21上に押し上げて前進することで、ゼンマイバネ34のバネ力でドラム32が巻き取り方向に回転し、ベルト23がドラム32に巻き取られる。このとき、介護者が車椅子Kから手を放してもロック爪31とロック用歯車36との係合によりドラム32がベルト繰り出し方向の回転することはない。
【0041】
なお、車椅子Kが車室R内で車椅子固定装置40により固定されている場合には、車椅子固定装置40の車椅子固定状態を解除することで、車椅子固定信号がOFFになる。このため、車両10の駐車状態(シフトレバー=P)でバックドア14を開け後、車椅子固定装置40の車椅子固定状態を解除することで、ソレノイドSOLを通電してロック爪31とロック用歯車36との係合を解除することができる。このため、介護者はスロープ21を利用して車椅子Kの乗員を降車させることができる。
【0042】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、車両10が駐車中であることを表す信号としてシフトレバー=Pの信号を利用したが、サイドブレーキ信号を使用することも可能である。また、本実施形態では、車椅子Kが車室R内に固定されていない状態を車椅子固定装置40の車椅子固定信号により検出する例を示した。しかし、ドラム回転装置30のベルト23のフック23fが車椅子Kのフレームから外された状態では、ベルト23がドラム32に限界位置まで巻き取られるため、この状態をパルスセンサーPSにより検出することで、前記車椅子固定信号の代用とすることも可能である。
【符号の説明】
【0043】
10・・・・車両
R・・・・・車室
12・・・・ドア開口部
14・・・・バックドア(ドア)
DS・・・・ドアスイッチ
ECU・・・制御ユニット(ベルト繰り出しロック機構、計測手段)
20・・・・車椅子用乗降装置
21・・・・スロープ
23・・・・ベルト
30・・・・ドラム回転装置
30x・・・ドラム回転装置
32・・・・ドラム
34・・・・ゼンマイバネ(付勢手段)
31・・・・ロック爪(ベルト繰り出しロック機構)
36・・・・ロック用歯車(ベルト繰り出しロック機構)
38・・・・電磁クラッチ(クラッチ機構)
40・・・・車椅子固定装置
M・・・・・モータ
PS・・・・パルスセンサー(計測手段)
SOL・・・ソレノイド(ベルト繰り出しロック機構)
K・・・・・車椅子