(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049181
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】プレーナ型変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 30/10 20060101AFI20220322BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
H01F30/10 D
H01F30/10 A
H01F30/10 C
H01F27/28 104
H01F27/28 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155254
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 真吾
【テーマコード(参考)】
5E043
【Fターム(参考)】
5E043AA08
(57)【要約】
【課題】二次コイルからコアや固定具への放電を効果的に抑制することができるプレーナ型変圧器を提供するものである。
【解決手段】プレーナ型変圧器は、複数の基板を絶縁層を挟んで積層して構成される多層基板と、複数の基板のうちの第1の基板に複数層に亘って形成され電力を伝送する一次コイルとして機能する巻線パターンと、複数の基板のうちの第2の基板に複数層に亘って形成され一次コイルとして機能する第2巻線パターンと、第1の基板と第2の基板との間に挟まれる第3の基板に複数層に亘って形成され1次巻線パターンと2次巻線パターンとから電力を受信する二次コイルとして機能する第3巻線パターンと、第1乃至第3巻線パターンの中心に配置されるコア材とを備える。第3巻線パターンは、多層基板に垂直な方向から見て第1巻線パターン及び第2巻線パターンに包含される大きさを有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板を絶縁層を挟んで積層して構成される多層基板と、
前記複数の基板のうちの第1の基板に複数層に亘って形成された導電層を有し、電力を伝送する一次コイルとして機能する第1巻線パターンと、
前記複数の基板のうちの第2の基板に複数層に亘って形成された導電層を有し、前記一次コイルとして機能する第2巻線パターンと、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に挟まれる第3の基板に複数層に亘って形成された導電層を有し、前記第1巻線パターンと第2巻線パターンから電力を受信する二次コイルとして機能する第3巻線パターンと、
前記第1乃至第3巻線パターンの中心に配置されるコア材と
を備え、
前記第3巻線パターンは、前記多層基板に垂直な方向から見て前記第1巻線パターン及び前記第2巻線パターンに包含される大きさを有する
ことを特徴とするプレーナ型変圧器。
【請求項2】
前記第1巻線パターン及び前記第2巻線パターンは、導電膜を分割するスリットを備え、
前記スリットの位置は、複数層の前記第1巻線パターン又は複数層の前記第2巻線パターンの間で異なっている、請求項1に記載のプレーナ型変圧器。
【請求項3】
前記第1巻線パターン、前記第2巻線パターン、及び前記第3巻線パターンは、複数層に亘り形成された前記導電層を接続するビアコンタクトを備え、
前記ビアコンタクトは、前記導電層に対しマトリクス状に配置されて接続される、請求項1に記載のプレーナ型変圧器。
【請求項4】
前記第3巻線パターンの上下に位置する前記絶縁層は、積層方向において均一の厚さを有し、誘電率が全体として一定である、請求項1又は2に記載のプレーナ型変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレーナ型変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器として、巻線が平面上の配線パターンにより形成されたプレーナ型変圧器が知られている。プレーナ型変圧器は、一般的な電線をコアの周りに巻いて形成するコイルを備える旧来の巻線型変圧器に比べ、小型化が可能であり、また、磁気結合が高く、発熱量も小さく、高い回路効率が得られるという利点がある。
【0003】
プレーナ型変圧器では、一次コイルと二次コイルの間の距離が近いため、高電圧での一次コイルと二次コイルの間の絶縁を確実に行う必要がある。一次コイルと二次コイルの間の樹脂モールドにボイドが生じると、そのボイドにおいてコロナ放電が生じることがある。また、コロナ放電は、二次コイル(高電圧側)から一次コイル(低電圧側)に放電するだけでなく、二次コイルからコアや固定具などの導電性物体に対しても生じることがある。
【0004】
二次コイルからコアや固定具への放電が生じると、電力損失が大きくなると共に、絶縁膜の劣化が生じたり、又はコアにおける発熱量が大きくなったりするなどの不利益が生じる。このため、このような二次コイルからコアへの放電を効果的に抑制することが出来るプレーナ型変圧器が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、二次コイルからコアや固定具への放電を効果的に抑制することができるプレーナ型変圧器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係るプレーナ型変圧器は、複数の基板を絶縁層を挟んで積層して構成される多層基板と、前記複数の基板のうちの第1の基板に複数層に亘って形成された導電層を有し、電力を伝送する一次コイルとして機能する第1巻線パターンと、前記複数の基板のうちの第2の基板に複数層に亘って形成された導電層を有し、前記一次コイルとして機能する第2巻線パターンと、前記第1の基板と前記第2の基板との間に挟まれる第3の基板に複数層に亘って形成された導電層を有し、前記1次巻線パターンと2次巻線パターンから電力を受信する二次コイルとして機能する第3巻線パターンと、前記第1乃至第3巻線パターンの中心に配置されるコア材とを備える。前記第3巻線パターンは、多層基板に垂直な方向から見て前記第1巻線パターン及び前記第2巻線パターンに包含される大きさを有する。
【0008】
この発明によれば、二次コイルとしての第3巻線パターンが、上下層において一次コイルとしての第1巻線パターン及び第2巻線パターンにより挟まれるように配置されると共に、第3巻線パターンが、多層基板に垂直な方向から見て第1巻線パターン及び前記第2巻線パターンに包含される大きさを有する。このため、二次コイルとしての第3巻線パターンからの放電は、コア材よりも一次コイルとしての第1及び第2巻線パターンに向かう傾向とすることができ、これにより、電力損失を抑制し、絶縁膜の劣化を防止し、発熱量を低減することができる。
【0009】
好適には、このプレーナ型変圧器において、第1巻線パターン及び前記第2巻線パターンの導電膜を分割するスリットを備え、当該スリットの位置は、複数層の1次巻線パターン又は複数層の2次巻線パターンの間で異なるようにすることができる。スリットの位置を互いに異ならせることにより、二次コイルとしての第3巻線パターンからコア材や固定具への放電が生じる虞を更に低減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、二次コイルからコアや固定具への放電を効果的に抑制することのできるプレーナ型変圧器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施の形態に係るプレーナ型変圧器の構成を説明する概略断面図である。
【
図2】第1の実施の形態に係るプレーナ型変圧器の構造及び製造工程の概略を説明する斜視図である。
【
図3】第1の実施の形態のプレーナ型変圧器の多層基板10の断面構造を説明する断面図である。
【
図4】導電層CL1~3の平面レイアウトの一例を説明する平面図である。
【
図5】導電層CL10~12の平面レイアウトの一例を説明する平面図である。
【
図6】導電層CL4~9の平面レイアウトの一例を説明する平面図である。
【
図7】導電層CL1~12の平面レイアウトの一例を説明する平面図である。
【
図8】第1の実施の形態の効果を説明する温度分布図である。
【
図9】第2の実施の形態に係るプレーナ型変圧器の構成を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
【0013】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0014】
[第1の実施の形態]
(全体構成)
図1を参照して、第1の実施の形態に係るプレーナ型変圧器の構成を説明する。このプレーナ型変圧器は、多層基板10と、第1コア材20と、第2コア材30と、モールド材40とを備えている。なお、
図2は、プレーナ型変圧器の製造工程の概略を示している。
【0015】
多層基板10は、後述するように、それぞれ複数の導電層を含む複数の基板を、それらの間に層間絶縁層を挟んで構成される。複数の層に亘り形成された導電層は、後述するようにループ状に形成されて一次コイル及び二次コイルを構成する。多層基板10の表面には、一次コイル及び二次コイルに接続される端子T1及びT2が形成されている。一次コイルと二次コイルの中心を通るように、前述のコア材が配置される。
【0016】
多層基板10は、その中央付近に円形の貫通穴Hを有している(
図2(a))。この貫通穴Hに、第2コア材30の突起部を通過させた後(
図2(b))、第1コア材20により、多層基板10と第2コア材30の上方を覆う(
図2(c))。第1コア材20と第2コア材30とによりコア材が形成される。その後、多層基板10、第1コア材20、及び第2コア材30は、モールド材40により封止される(
図2(d))。第1コア材20及び第2コア材30は、一次コイルと二次コイルとの間で電力伝送が行われる場合において、一次コイルに流れる電流により発生した磁束の磁路となる。第1コア材20及び第2コア材30は、例えばマンガン亜鉛系フェライトなどの材料により構成され得る。
【0017】
(多層基板10の構成)
図3を参照して、第1の実施の形態のプレーナ型変圧器の多層基板10の断面構造を説明する。この多層基板10は、前述のように、複数の基板11、12、13と、それらの間に挟まれた層間絶縁層14、15を備えている。基板の数は、ここでは3枚であるが、この数は一例であって、この数に限定されるものではない。層間絶縁層14及び15は、例えばポリイミド等を材料として形成され得る。
【0018】
層間絶縁層14及び15は、少なくとも導電層CLが形成されている領域の近傍において、平坦な界面を有し、積層方向において均一な厚さを有しているのが好適である。層間絶縁層14及び15の界面に凹凸があり、厚さが不均一であると、その凹凸の位置や不均一な厚さの部分において電界の集中が生じ、放電による熱の集中が生じ易い。また、層間絶縁層14及び15は、全体として誘電率が一定であるよう形成されるのが好適である。一部において誘電率が異なる誘電体が形成されていると、その部分において電界の集中が生じ易い。
【0019】
基板11~13の各々は、その内部に、複数の導電層CLを、絶縁層ILを挟んで積層させて構成される。導電層CLの各々は、絶縁層ILの上に数百μm程度の膜厚に堆積された銅(Cu)の薄膜(導電膜)を、略ループ状にパターニングして形成される。基板11及び13には、一次コイルとして機能する導電層CL1~3、CL10~CL12が形成され、基板11及び13に挟まれる基板12には、二次コイルとして機能する導電層CL4~9が形成される。導電層CL1~3により、一次コイルとして機能する第1巻線パターンが形成される。また、導電層CL10~12により、同様に一次コイルとして機能する第2巻線パターンが形成される。
【0020】
また、導電層CL4~9により、一次コイル(第1巻線パターン、第2巻線パターン)から電力を受信する二次コイルとして機能する第3巻線パターンが形成される。すなわち、このプレーナ型変圧器では、2つの一次コイル(第1巻線パターン及び第2巻線パターン)が、上下から二次コイル(第3巻線パターン)を挟むような形で形成される。なお、基板11~13に形成される導電層CLの数は、図示の例ではそれぞれ3(一次コイル)、6(二次コイル)、3(一次コイル)であるが、これは一例であり、特定の数には限定されない。
【0021】
これらの導電層CL1~CL12は、基板11~13及び層間絶縁層14、15を貫通して形成されるビアコンタクトBCに接続されている。ビアコンタクトBCは、例えば導電層CL1~CL12に接触するように配設され、これにより隣接する導電層CLを接続して一次コイル又は二次コイルを形成する。ビアコンタクトBCの材料としては、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、タングステン(W)等を使用することができるが、これらには限定されるものではない。また、基板11~13の各々に含まれる導電層CLの数は、上記のものには限定されない。なお、直径の大きな単一又は少数のビアコンタクトBCを導電層CLに接続する代わりに、
図4~
図6に示すように、多数のビアコンタクトBCを格子状(マトリクス状)に、広域に配置することが好ましい。ここで格子状、又はマトリクス状とは、正方格子に限られず、縦方向にも横方向にも、複数配列されているものを広く含む意味で使用される。このようにするのは、直径の大きな単一又は少数のビアコンタクトBCを導電層CLに接続すると、その部分において電界が集中しやすいためである。
【0022】
[導電層CLの構造]
図4~
図6を参照して、導電層CL1~12の平面レイアウトの一例を説明する。
図4に示すように、最上層の基板11に形成される導電層CL1~CL3は、ループ状の配線パターンを有し、その一部にコンタクトBCが接し、プレーナ型変圧器の一次コイルを形成する。基板11に存在する導電層CL1~CL3のループ配線部分(端子T1との接続のための引き出し部分を除いた部分)は、いずれもX方向の幅D1、Y方向の幅H1を有し、その中心に貫通穴Hに対応する開口AP1を有している。また、導電層CL1~CL3のループ配線部分は、配線幅W1以上で形成されている。
【0023】
また、導電層CL1~CL3は、ループ状の配線パターンを分割するスリットSL1~SL3を備えている。このスリットSL1~SL3は、いずれも平面方向の異なる位置に形成されている。ここで、「異なる位置に形成」との表現は、上下方向で隣接するスリットSL1~SL3が交差するのみで、スリットSL1~SL3が、その幅方向よりも十分に長い距離に亘って平面方向で一致することが無い、という意味において使用される。
【0024】
また、
図5に示すように、最下層の基板13に形成される導電層CL10~CL12は、同様にループ状の配線パターンを有し、その一部にコンタクトBCが接し、変圧器の一次コイルを形成する。基板13に存在する導電層CL10~CL12のループ配線部分(端子T1との接続のための引き出し部分を除いた部分)は、いずれもX方向の幅D2、Y方向の幅H2を有し、その中心に貫通穴Hに対応する開口AP2を有している。また、導電層CL1~3と同様に、導電層CL10~CL12は、ループ状の配線パターンを分断するスリットSL10~SL12を備えている。このスリットSL10~SL12は、いずれも平面方向の異なる位置に形成されている。また、導電層CL10~CL12のループ配線部分は、配線幅W2以上で形成されている。
【0025】
図6に示すように、中間の基板12に形成される導電層CL4~CL9は、ループ状の配線パターンをその一部にコンタクトBCが接し、変圧器の二次コイルを形成する。基板12に存在する導電層CL4~CL9のパターンは、ループ配線部分(引き出し線DL6、DL7は除く)において、X方向の幅D3、Y方向の幅H3を有している。また、導電層CL4~9のパターンは、その中心に貫通穴Hに対応する開口AP3を有している。
【0026】
幅D3は、導電層CL1~CL3の幅D1、及び導電層CL10~CL12の幅D2よりも小さい(D1>D3、D2>D3)。また、幅H3も、導電層CL1~CL3の幅H1、及び導電層CL10~CL12の幅H2よりも小さい(H1>H3、H2>H3)。すなわち、
図7に示すように、導電層CL4~CL9は、多層基板10の主平面に垂直な方向から見て、導電層CL1~CL3、及び導電層CL10~CL12に包含されるように配置されている(導電層CL6、CL7の引き出し線パターンDL6、DL7(
図7では図示を省略)の部分を除く)。また、導電層CL4~CL9のループ配線部分は、配線幅W3以下で形成されている。この配線幅W3は、前述の配線幅W1及びW2よりも小さい値である(W1>W3、W2>W3)。
【0027】
このように、本実施の形態では、二次コイルを構成する導電層CL4~CL9が、一次コイルを構成する導電層CL1~CL3、CL10~CL12により上下方向から挟まれている。更に、導電層CL4~CL9が、多層基板10に垂直な方向から見て、導電層CL1~CL3、CL10~CLに包含されるような大きさを与えられている。これにより、二次コイルの高電圧に基づくコロナ放電は、コアや他の固定材には向かわず、一次コイルに主に到達させることができる。更に、導電層CL1~CL3に形成されているスリットSL1~3は、平面方向の異なる位置に配置されており、このため、二次コイルからの放電が一次コイルを通過してコア材や他の固定部材に到達することが防止される。また、導電層CL10~CL12に形成されているスリットSL10~12は、平面方向の異なる位置に配置されており、このため、二次コイルからの放電が一次コイルを通過してコア材や他の固定部材に到達することが防止される。
【0028】
図8は、第1の実施の形態の効果を説明するための温度分布図である。
図8は、多層基板10の温度分布を示す温度分布図(ヒートマップ)である。
図8(a)及び
図8(c)は、それぞれ第1比較例、第2比較例に係るプレーナ型変圧器での温度分布を示しており、
図8(b)が第1の実施の形態のプレーナ型変圧器における温度分布を示している。
図8(a)の第1比較例は、第1の実施の形態と同様に、二次コイルが上下において一次コイルに挟まれる構造を有しているが、二次コイルの大きさが一次コイルと略同一である。
図8(c)の第2比較例は、一次コイルと二次コイルがそれぞれ1枚の基板に配置されており、二次コイルは一次コイルによって挟まれていない。
【0029】
図8(b)から明らかなように、第1の実施の形態の構造では、高熱が発生するのは一次コイル又は二次コイルを構成する導電層と、その極近傍に限られる。コア材や、その他の固定材では、高熱は殆ど発生していない。一方、
図8(a)、
図8(c)から、第1比較例、及び第2比較例では、導電層とその近傍以外の領域(例えばコア材や、その他の固定材)でも高熱が発生していることが分かる。特に、第2比較例(
図8(c))では、その傾向が顕著である。このような高熱の発生は、絶縁膜の劣化や、回路効率の低下などの原因となり得る。
【0030】
[効果]
以上説明したように、本実施の形態によれば、多層基板の複数の基板において、複数の導電層からなる二次コイルが、その上下において、複数の導電層からなる一次コイルには挟まれると共に、その大きさが一次コイルよりも小さくされている。このため、高電圧を与えられた二次コイルからの放電の多くは一次コイルに向かい、コア材や他の固定部材には向かわない。これにより、二次コイルからコアや固定具への放電を効果的に抑制し、電力損失が小さく、絶縁膜の劣化や、発熱量の増大を抑制することができるプレーナ型変圧器を提供することができる。
【0031】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係るプレーナ型変圧器を、
図9を参照して説明する。第2の実施の形態のプレーナ型変圧器の全体構成は、第1の実施の形態(
図1及び
図2)と同様でよい。また、多層基板10の断面構造も、第1の実施の形態と同様でよい。この第2の実施の形態では、各基板11~13に形成される導電層CLが、第1の実施の形態とは異なり、円形ではなく、Y軸方向に長い略矩形形状を有している点で、第1の実施の形態と異なっている。この構造によっても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0032】
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
10…多層基板
11~13…基板
14、15…層間絶縁層
20…第1コア材
30…第2コア材
40…モールド材
AP1~3…開口
BC…ビアコンタクト
CL1~CL12…導電層、
SL1~3、SL10~12…スリット