(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049208
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】水素充填装置
(51)【国際特許分類】
F17C 13/02 20060101AFI20220322BHJP
F17C 5/06 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
F17C13/02 301Z
F17C5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155302
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】富本 尚也
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB13
3E172BD03
3E172DA90
3E172EA02
3E172EA12
3E172EA13
3E172EA14
3E172EA22
3E172EA23
3E172EA24
3E172KA03
3E172KA22
3E172KA23
(57)【要約】
【課題】車両に複数の水素タンクが搭載される場合において、水素の充填時間の増加を抑える。
【解決手段】水素タンクTの全体の容積及び個数を取得する取得部111と、水素タンクTの全体の容積に基づいて充填容量上限値及び充填流量目標値を算出する算出部112と、充填流量上限値を超えないようにしつつ充填流量目標値と一致するように流量計Fにより計測される充填流量を制御し、圧力計Pにより計測される充填圧力が閾値以上になると、すべての水素タンクTが満充填状態になったと判断して水素の充填を終了する制御部113とを備えて水素充填装置1を構成し、算出部112は、水素タンクTの個数が2以上である場合で、かつ、流量計Fにより計測される充填流量が一定である場合、圧力計Pにより計測される充填圧力の上昇度が減少する度に充填流量目標値を増加させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される水素タンクに水素を充填する水素充填装置であって、
水素の充填流量を計測する流量計と、
水素の充填圧力を計測する圧力計と、
前記水素タンクの全体の容積及び個数を取得する取得部と、
前記水素タンクの全体の容積に基づいて充填流量上限値及び充填流量目標値を算出する算出部と、
前記充填流量上限値を超えないようにしつつ前記充填流量目標値と一致するように前記流量計により計測される充填流量を制御し、前記圧力計により計測される充填圧力が閾値以上になると、すべての前記水素タンクが満充填状態になったと判断して水素の充填を終了する制御部と、
を備え、
前記算出部は、前記水素タンクの個数が2以上である場合で、かつ、前記流量計により計測される充填流量が一定である場合、前記圧力計により計測される充填圧力の上昇度が減少する度に前記充填流量目標値を増加させる
ことを特徴とする水素充填装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水素充填装置であって、
前記算出部は、前記水素タンクの全体の容積、水素の圧力及び温度、並びに目標充填時間に基づいて、前記充填流量目標値を算出する
ことを特徴とする水素充填装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の水素充填装置であって、
前記制御部は、前記水素タンクの個数が1である場合、前記圧力計により計測される充填圧力の上昇度が減少すると、水素の充填経路に異常が発生したと判断し水素の充填を終了する
ことを特徴とする水素充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される水素タンクに水素を充填する水素充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素充填装置として、水素タンクの容積により算出される充填流量目標値と一致するように水素の充填流量を制御し、水素の充填圧力が閾値以上になると、水素タンクが満充填状態になったと判断して水素の充填を終了するものがある。関連する技術として、特許文献1がある。
【0003】
ところで、車両に複数の水素タンクが搭載される場合で、かつ、各水素タンクの圧力が互いに異なっている場合、まず、圧力が低い水素タンクのみに水素が充填され、次に、各水素タンクの圧力が互いに同じなると、各水素タンクにそれぞれ水素が充填される。
【0004】
そのため、上記水素充填装置では、車両に複数の水素タンクが搭載される場合で、かつ、各水素タンクの圧力が互いに異なっている場合、水素の充填途中において各水素タンクの圧力が互いに同じになると、水素充填装置側からみた水素タンクの全体の容積が増加するため、水素の充填圧力の上昇度が減少して水素の充填時間が増加するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面に係る目的は、車両に複数の水素タンクが搭載される場合において、水素の充填時間の増加を抑えることが可能な水素充填装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一つの形態である水素充填装置は、車両に搭載される水素タンクに水素を充填する水素充填装置であって、水素の充填流量を計測する流量計と、水素の充填圧力を計測する圧力計と、前記水素タンクの全体の容積及び個数を取得する取得部と、前記水素タンクの全体の容積に基づいて充填流量上限値及び充填流量目標値を算出する算出部と、前記充填流量上限値を超えないようにしつつ前記充填流量目標値と一致するように前記流量計により計測される充填流量を制御し、前記圧力計により計測される充填圧力が閾値以上になると、すべての前記水素タンクが満充填状態になったと判断して水素の充填を終了する制御部とを備え、前記算出部は、前記水素タンクの個数が2以上である場合で、かつ、前記流量計により計測される充填流量が一定である場合、前記圧力計により計測される充填圧力の上昇度が減少する度に前記充填流量目標値を増加させる。
【0008】
これにより、充填途中において各水素タンクの圧力が互いに同じになる度に水素充填装置側からみた水素タンクの全体の容積が増加して圧力計により計測される充填圧力の上昇度が減少しても、その充填圧力の上昇度をすぐに増加させることができるため、水素の充填時間の増加を抑えることができる。
【0009】
また、前記算出部は、前記水素タンクの全体の容積、水素の圧力及び温度、並びに目標充填時間に基づいて、前記充填流量目標値を算出するように構成してもよい。
【0010】
また、前記制御部は、前記水素タンクの個数が1である場合、前記圧力計により計測される充填圧力の上昇度が減少すると、水素の充填経路に異常が発生したと判断し水素の充填を終了するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両に複数の水素タンクが搭載される場合において、水素の充填時間の増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態の水素充填装置の一例を示す図である。
【
図2】記憶部に記憶されている情報の一例を示す図である。
【
図3】流量計により計測される充填流量の一例及び圧力計により計測される充填圧力の一例を示す図である。
【
図4】実施形態の水素充填装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】流量計により計測される充填流量の一例及び圧力計により計測される充填圧力の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0014】
図1は、実施形態の水素充填装置の一例を示す図である。
【0015】
図1に示す水素充填装置1は、水素ステーションなどに設置されるディスペンサであり、サーバ2から送信される情報などに基づいて、産業用車両や電気自動車などの車両Veに水素を供給する。なお、水素充填装置1と車両Veとの間でデータの送受信が行われないものとする。
【0016】
車両Veは、走行用モータを駆動するインバータ回路などの負荷Loに電力を供給する燃料電池システムFCSを備える。
【0017】
燃料電池システムFCSは、燃料電池FCと、水素タンクT1、T2と、エアコンプレッサACと、蓄電装置Sとを備える。なお、水素充填装置1から車両Veに延びる1本の充填経路が燃料電池システムFCSにおいて2本に分岐し、その2本の充填経路のうちの一方の充填経路が逆止弁CB1を介して水素タンクT1に接続され、他方の充填経路が逆止弁CB2を介して水素タンクT2に接続されているものとする。そのため、水素充填装置1から車両Veに水素が充填されるとき、まず、水素タンクT1、T2のうち、圧力が低い方に水素が充填され、次に、水素タンクT1、T2のそれぞれの圧力が互いに同じなると、水素タンクT1、T2にそれぞれ水素が充填されるものとする。
【0018】
燃料電池FCは、水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う。
【0019】
水素タンクT1、T2は、それぞれ、水素を燃料電池FCに供給する。なお、水素タンクT1、T2を特に区別しない場合は単に水素タンクTとする。また、車両Veに搭載される水素タンクTの個数は3以上でもよい。また、車両Veの車種によって、車両Veに搭載される水素タンクTの容積や個数が異なるものとする。例えば、車両Veをフォークリフトとする場合、水素タンクTの個数を1とし、水素タンクTの容積を50[L]とする。また、車両Veの車種をトーイングトラクタとする場合、水素タンクTの個数を2とし、一方の水素タンクTの容積を20[L]とし、他方の水素タンクTの容積を80[L]とする。また、水素タンクTの個数が2以上である場合、各水素タンクTの容積や使用頻度の違いなどが原因で、各水素タンクTの圧力が互いに異なるものとする。
【0020】
エアコンプレッサACは、酸素が含まれる空気を燃料電池FCに供給する。
【0021】
蓄電装置Sは、リチウムイオンキャパシタなどにより構成され、燃料電池FCと負荷Loとの間に接続される。また、蓄電装置Sは、燃料電池FCまたは負荷Loから供給される電力により充電されるとともに負荷Loに電力を供給する。なお、燃料電池FCと蓄電装置Sとの間に昇圧回路を設けてもよい。
【0022】
また、サーバ2は、プロセッサ21と、記憶部22と、通信部23とを備える。なお、記憶部22は、RAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)などにより構成される。また、通信部23は、インターネットにアクセス可能なネットワークカードなどにより構成される。
【0023】
プロセッサ21は、水素充填装置1から送信される、車両Veの識別情報IDに対応する情報を記憶部22から読み出して、その読み出した情報を通信部23により水素充填装置1に送信させる。
【0024】
ここで、
図2は、記憶部22に記憶されている情報の一例を示す図である。
【0025】
図2に示す情報DBは、車両Veの識別情報IDと、車両Veに搭載される水素タンクTの全体の容積[L]と、車両Veに搭載される水素タンクTの個数[個]とが格納されるデータベースである。
図2に示す情報DBには、識別情報IDとしての「ID1」と、容積[L]としての「50」と、個数[個]としての「1」とが互いに対応付けられて格納されている。また、
図2に示す情報DBには、識別情報IDとしての「ID2」と、容積[L]としての「100」と、個数[個]としての「2」とが互いに対応付けられて格納されている。例えば、水素充填装置1からサーバ2に識別情報IDとして「ID1」が送信された場合、プロセッサ21は、情報DBを参照して、「ID1」に対応する「50」及び「1」を水素充填装置1に送信させる。また、水素充填装置1からサーバ2に識別情報IDとして「ID2」が送信された場合、プロセッサ21は、情報DBを参照して、「ID2」に対応する「100」及び「2」を水素充填装置1に送信させる。
【0026】
また、水素充填装置1は、流量調整弁Bと、流量計Fと、圧力計Pと、プロセッサ11と、記憶部12と、通信部13とを備える。なお、記憶部12は、RAMまたはROMなどにより構成される。また、通信部13は、インターネットにアクセス可能なネットワークカードなどにより構成される。
【0027】
流量調整弁Bは、水素充填装置1の外部に設けられている蓄圧器Aから水素タンクT1、T2に充填される水素の充填流量を調整する。
【0028】
流量計Fは、蓄圧器Aから水素タンクT1、T2に充填される水素の充填流量を計測する。
【0029】
圧力計Pは、蓄圧器Aから水素タンクT1、T2に充填される水素の充填圧力を計測する。
【0030】
プロセッサ11は、取得部111と、算出部112と、制御部113とを備える。例えば、プロセッサ11が記憶部12に記憶されるプログラムを実行することにより、取得部111、算出部112、及び制御部113が構成される。
【0031】
取得部111は、車両Veに対応する識別情報IDを取得すると、その識別情報IDを通信部13によりサーバ2に送信させる。例えば、取得部111は、ユーザが所有するIC(Integrated Circuit)カードに格納されている識別情報IDをカードリーダなどで読み取ることにより識別情報IDを取得し、その識別情報IDを通信部13によりサーバ2に送信させる。
【0032】
また、取得部111は、サーバ2から通信部13に送信された情報(車両Veに搭載される水素タンクTの全体の容積と個数)を取得する。
【0033】
算出部112は、取得部111により取得された情報に基づいて、水素の充填流量上限値及び充填流量目標値を算出する。なお、充填流量目標値は、充填流量上限値より低いものとする。
【0034】
例えば、算出部112は、下記式1を計算することにより充填流量上限値を算出する。
【0035】
充填流量上限値[g/min]=1400[kg/min]×水素タンクTの全体の容積[L]/150[L] ・・・式1
【0036】
なお、水素タンクTの全体の容積[L]を「50」とする場合、充填流量上限値は466[g/min]≒1400[g/min]×50[L]/150[L]になる。また、水素タンクTの全体の容積[L]を[100]とする場合、充填流量上限値は933[g/min]≒1400[g/min]×100[L]/150[L]になる。
【0037】
また、算出部112は、下記式2を計算することにより充填流量目標値を算出する。すなわち、算出部112は、水素タンクTの全体の容積、水素の圧力及び温度、並びに目標充填時間に基づいて、充填流量目標値を算出する。
【0038】
充填流量目標値[g/min]=水素タンクTの全体の容積[L]×(水素の圧力[MPa]/目標充填時間[min])×(273.15[K]/(273.15[K]+水素の温度[K]))×(10/(圧縮係数[MPa]×水素の体積[L/mol]))×水素の分子量[g/mol] ・・・式2
【0039】
なお、水素タンクTの全体の容積[L]を「50」とし、水素の圧力[MPa]を「35」とし、目標充填時間[min]を「3」とし、水素の温度[K]を「20」とし、圧縮係数[MPa]を「1.2」とし、水素の体積[L/mol]を「22.4」とし、水素の分子量[g/mol]を「2.0159」とする場合、充填流量目標値は407[g/min]≒50[L]×(35[MPa]/3[min])×(273.15[K]/(273.15[K]+20[K]))×(10/(1.2[MPa]×22.4[L/mol]))×2.0159[g/mol]になる。また、水素タンクTの全体の容積[L]を「100」とし、水素の圧力[MPa]を「35」とし、目標充填時間[min]を「3」とし、水素の温度[K]を「20」とし、圧縮係数[MPa]を「1.2」とし、水素の体積[L/mol]を「22.4」とし、水素の分子量[g/mol]を「2.0159」とする場合、充填流量目標値は815[g/min]≒100[L]×(10[MPa]/3[min])×(273.15[K]/(273.15[K]+20[K]))×(10/(1.2[MPa]×22.4[L/mol]))×2.0159[g/mol]になる。
【0040】
また、算出部112は、水素タンクTの個数が2以上である場合で、かつ、流量計Fにより計測される充填流量が一定である場合、圧力計Pにより計測される充填圧力の上昇度(圧力計Pにより計測される充填圧力の単位時間あたりの増加幅)が減少する度に充填流量目標値を増加させる。例えば、算出部112は、充填圧力の上昇度が、予め定めている変化量の閾値を越えて減少する度に充填流量目標値を所定値ずつ増加させる。所定値は、充填流量上限値と充填流量目標値との差より小さい値であって、水素タンクTの個数または充填圧力の上昇度の減少幅に応じた値としてもよい。
【0041】
制御部113は、充填流量上限値を超えないようにしつつ充填流量目標値と一致するように流量計Fにより計測される充填流量を制御する。例えば、制御部113は、不図示のユーザインタフェイスのユーザ操作により充填開始指示がプロセッサ11に入力されると、流量計Fにより計測される充填流量が充填流量上限値を超えないように、かつ、流量計Fにより計測される充填流量が充填流量目標値と一致するように、流量調整弁Bの開度を制御することで流量計Fにより計測される充填流量を制御する。
【0042】
また、制御部113は、圧力計Pにより計測される充填圧力が閾値Pthより小さいとき、水素タンクT1、T2への水素の充填を継続する。また、制御部113は、圧力計Pにより計測される充填圧力が閾値Pth以上になると、すべての水素タンクTが満充填状態になったと判断し、流量調整弁Bの開度をゼロにして水素タンクT1、T2への水素の充填を終了する。なお、閾値Pthは、すべての水素タンクTが満充填状態になったときに圧力計Pにより計測される充填圧力とする。
【0043】
ここで、
図3(a)は、流量計Fにより計測される充填流量の一例を示す図であり、
図3(b)は、圧力計Pにより計測される充填圧力の一例を示す図である。なお、
図3(a)に示す2次元座標の横軸は時間[min]を示し、縦軸は流量計Fにより計測される充填流量[g/min]を示している。また、
図3(b)に示す2次元座標の横軸は時間[min]を示し、縦軸は圧力計Pにより計測される充填圧力[MPa]を示している。また、車両Veに搭載される水素タンクTの個数が1である場合、または、車両Veに搭載される水素タンクTの個数が2以上である場合で、かつ、充填開始時の各水素タンクTの圧力が互いに同じである場合を想定する。
【0044】
図3(a)及び
図3(b)に示すように、充填開始時(t0)から充填圧力が閾値Pth以上になるとき(t3)までの充填時間tにおいて、充填流量目標値F1と一致するように流量計Fにより計測される充填流量が制御される場合、充填時間tを目標充填時間に近づけることができる。すなわち、車両Veに搭載される水素タンクTの個数が1である場合、または、車両Veに搭載される水素タンクTの個数が2以上である場合で、かつ、充填開始時の各水素タンクTの圧力が互いに同じである場合において、充填流量目標値F1と一致するように流量計Fにより計測される充填流量が制御されると、目標充填時間においてすべての水素タンクTを満充填状態にさせることができる。
【0045】
図4は、水素充填装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
【0046】
まず、取得部111は、水素タンクTの全体の容積及び個数を取得する(ステップS1)。
【0047】
次に、算出部112は、充填流量上限値及び充填流量目標値を算出する(ステップS2)。
【0048】
次に、制御部113は、水素タンクTの個数が2以上である場合(ステップS3:Yes)、ステップS4に移行して水素の充填を開始する。また、制御部113は、水素タンクTの個数が1である場合(ステップS3:No)、ステップ10に移行して水素の充填を開始する。
【0049】
次に、制御部113は、圧力計Pにより計測される充填圧力が閾値Pth以上でないと判断し(ステップS5:No)、流量計Fにより計測される充填流量が一定(充填流量目標値)であると判断し(ステップS7:Yes)、圧力計Pにより計測される充填圧力の上昇度が減少していないと判断すると(ステップS8:No)、ステップS5に戻り、水素の充填を継続する。
【0050】
また、制御部113は、圧力計Pにより計測される充填圧力が閾値Pth以上でないと判断し(ステップS11:No)、圧力計Pにより計測される充填圧力の上昇度が減少していないと判断すると(ステップS12:No)、ステップS11に戻り、水素の充填を継続する。
【0051】
また、制御部113は、圧力計Pにより計測される充填圧力が閾値Pth以上であると判断すると(ステップS5またはステップS11:Yes)、水素の充填を終了する(ステップS6)。
【0052】
また、制御部113は、圧力計Pにより計測される充填圧力が閾値Pth以上でないと判断し(ステップS5:No)、流量計Fにより計測される充填流量が一定でないと判断すると(ステップS7:No)、水素充填装置1から水素タンクTまでの充填経路に異常が発生したと判断し(ステップS13)、水素の充填を終了する(ステップS6)。
【0053】
また、制御部113は、圧力計Pにより計測される充填圧力が閾値Pth以上でないと判断し(ステップS11:No)、圧力計Pにより計測される充填圧力の上昇度が減少したと判断すると(ステップS12:Yes)、水素充填装置1から水素タンクTまでの充填経路に異常が発生したと判断し(ステップS13)、水素の充填を終了する(ステップS6)。すなわち、制御部113は、水素タンクTの個数が1である場合、圧力計Pにより計測される充填圧力の上昇度が減少すると、水素の充填経路に異常が発生したと判断し水素の充填を終了する。
【0054】
また、算出部112は、圧力計Pにより計測される充填圧力が閾値Pth以上でないと判断し(ステップS5:No)、流量計Fにより計測される充填流量が一定であると判断し(ステップS7:Yes)、圧力計Pにより計測される充填圧力の上昇度が減少したと判断すると(ステップS8:Yes)、充填流量目標値を増加させた後(ステップS9)、ステップS5に戻る。
【0055】
例えば、充填開始時、水素タンクT1の圧力が水素タンクT2の圧力より低い場合を想定する。
【0056】
この場合、充填開始後、まず、水素タンクT1のみに水素が充填され水素タンクT1の圧力のみが上昇し、次に、充填途中において水素タンクT1の圧力が水素タンクT2の圧力と同じになると、水素タンクT1、T2それぞれに水素が充填される。
【0057】
図5(a)は、充填開始時、水素タンクT1の圧力が水素タンクT2の圧力より低い場合において流量計Fにより計測される充填流量の一例を示す図である。また、
図5(b)は、充填開始時、水素タンクT1の圧力が水素タンクT2の圧力より低い場合において圧力計Pにより計測される充填圧力の一例を示している。なお、
図5(a)に示す2次元座標の横軸は時間[min]を示し、縦軸は流量計Fにより計測される充填流量[g/min]を示している。また、
図5(b)に示す2次元座標の横軸は時間[min]を示し、縦軸は圧力計Pにより計測される充填圧力[MPa]を示している。また、圧力計Pにより計測される充填圧力が閾値Pth以上になるまで流量計Fにより計測される充填流量が充填流量目標値F1に追従しているものとする。また、
図3及び
図5に示す時刻t0~時刻t5の大小関係は、時刻t0<時刻t1<時刻t2<時刻t3<時刻t4<時刻t5とする。
【0058】
図5(b)に示すように、時刻t1において、水素が充填される水素タンクTの個数が1個から2個に変化すると、水素充填装置1側からみた水素タンクTの全体の容積が増加するため、圧力計Pにより計測される充填圧力の上昇度が減少する。そのため、
図5(a)に示すように、時刻t1以降も充填流量目標値F1を増加させない場合では、充填開始時(t0)から充填終了時(t5)までの充填時間が、
図3(a)及び
図3(b)に示す充填開始時(t0)から充填終了時(t3)までの充填時間より増加してしまう。すなわち、車両Veに搭載される水素タンクTの個数が2以上である場合では、水素の充填時間が増加するおそれがある。
【0059】
そこで、実施形態の水素充填装置1では、車両Veに搭載される水素タンクTの個数が2以上である場合で、かつ、流量計Fにより計測される充填流量が一定である場合、圧力計Pにより計測される充填圧力の上昇度が減少する度に充填流量目標値を増加させている。
【0060】
図5(c)は、圧力計Pにより計測される充填圧力の上昇度が減少する度に充填流量目標値を増加させる場合において流量計Fにより計測される充填流量の一例を示す図である。また、
図5(d)は、圧力計Pにより計測される充填圧力の上昇度が減少する度に充填流量目標値を増加させる場合において圧力計Pにより計測される充填圧力の一例を示す図である。なお、
図5(c)に示す2次元座標の横軸は時間[min]を示し、縦軸は流量計Fにより計測される充填流量[g/min]を示している。また、
図5(d)に示す2次元座標の横軸は時間[min]を示し、縦軸は圧力計Pにより計測される充填圧力[MPa]を示している。また、充填開始時、水素タンクT1の圧力が水素タンクT2の圧力より低いものとする。
【0061】
図5(c)及び
図5(d)に示すように、時刻t1において、水素が充填される水素タンクTの個数が1個から2個に変化して圧力計Pにより計測される充填圧力の上昇度が減少すると、充填流量目標値F1を充填流量目標値F1より大きい充填流量目標値F2に増加させる。これにより、流量計Fにより計測される充填流量が充填流量目標値F2に追従した時刻t2以降において、圧力計Pにより計測される充填圧力の上昇度を増加させることができるため、充填開始時(t0)から充填終了時(t4)までの充填時間を、
図5(a)及び
図5(b)に示す充填開始時(t0)から充填終了時(t5)までの充填時間より減少させることができる。すなわち、車両Veに搭載される水素タンクTの個数が2以上である場合で、かつ、流量計Fにより計測される充填流量が一定である場合、圧力計Pにより計測される充填圧力の上昇度が減少する度に充填流量目標値を増加させることにより、水素の充填時間の増加を抑えることができる。
【0062】
このように、実施形態の水素充填装置1では、充填途中において水素タンクT1、T2の圧力が互いに同じになり水素充填装置1側からみた水素タンクT1、T2の全体の容積が増加して圧力計Pにより計測される充填圧力の上昇度が減少しても、その充填圧力の上昇度をすぐに増加させることができるため、水素の充填時間の増加を抑えることができる。
【0063】
また、実施形態の水素充填装置1では、水素タンクTの全体の容積や目標充填時間に基づいて充填流量目標値を算出する構成であるため、車両Veに搭載される水素タンクTの容積や個数に依らず、水素の充填時間を目標充填時間に近づけることができる。
【0064】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0065】
例えば、記憶部22に記憶されている情報は、記憶部12に記憶されていてもよい。このように構成する場合、取得部111は、記憶部12に記憶されている情報を参照して、識別情報IDに対応する水素タンクTの全体の容積及び個数を取得する。また、このように構成する場合、水素充填装置1において通信部13を省略してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 水素充填装置
2 サーバ
11、21 プロセッサ
12、22 記憶部
13、23 通信部
111 取得部
112 算出部
113 制御部
A 蓄圧器
B 流量調整弁
F 流量計
P 圧力計
Ve 車両
FCS 燃料電池システム
T1、T2 燃料タンク
AC エアコンプレッサ
FC 燃料電池
S 蓄電装置
CB1、CB2 逆止弁
Lo 負荷