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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049216
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】解砕混合機
(51)【国際特許分類】
   B02C 13/02 20060101AFI20220322BHJP
【FI】
B02C13/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155320
(22)【出願日】2020-09-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】591022232
【氏名又は名称】株式会社三央
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】和田 克彦
【テーマコード(参考)】
4D065
【Fターム(参考)】
4D065AA01
4D065AA09
4D065AA24
4D065BB12
4D065BB20
4D065EB03
4D065EB20
4D065EC09
4D065ED06
4D065ED16
4D065ED23
4D065EE08
4D065EE15
(57)【要約】
【課題】単位時間当たりの処理量が多く、混合効果の高い解砕混合機を提供する。
【解決手段】上部に投入口23、下部に排出口25が設けられたケーシング20と、前記ケーシング内に略水平に配置された複数の回転体30~32とを有し、前記複数の回転体のそれぞれは、回転軸と、該回転軸から放射状に突出するアームと、該アームの先端部に固定されたハンマーとを有し、前記複数の回転体のうち、一対の第1回転体30、30が横方向に並べて配置されて、いずれも内回りに回転し、2本以上の第2回転体31、31が、それぞれの前記アームの軌道が軸方向視で重なり合い、かつ軸方向にずれていることにより干渉しないように入り組んだ状態で横方向に並べて、前記第1回転体の下方に配置される、解砕混合機10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に投入口、下部に排出口が設けられたケーシングと、
前記ケーシング内に略水平に配置された複数の回転体とを有し、
前記複数の回転体のそれぞれは、回転軸と、該回転軸から放射状に突出するアームと、該アームの先端部に固定されたハンマーとを有し、
前記複数の回転体のうち、
一対の第1回転体が横方向に並べて配置されて、いずれも内回りに回転し、
2本以上の第2回転体が、それぞれの前記アームの軌道が軸方向視で重なり合い、かつ軸方向にずれていることにより干渉しないように入り組んだ状態で横方向に並べて、前記第1回転体の下方に配置される、
解砕混合機。
【請求項2】
前記複数の回転体のうち一対の第3回転体が、横方向に並べて、前記第2回転体の下方に配置されて、いずれも内回りに回転する、
請求項1に記載の解砕混合機。
【請求項3】
前記第2回転体は、前記第1回転体と比べて、前記アームが短く、より高速で回転する、
請求項1または2に記載の解砕混合機。
【請求項4】
前記ケーシングの内壁面への処理物の堆積抑制手段をさらに有し、
前記ケーシングが略直方体形状を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の解砕混合機。
【請求項5】
前記堆積抑制手段は、前記ケーシングの壁面の内側に、複数のロールが高さ方向に並列して形成されたスクリーンであって、
前記ロールは、シャフトから放射状に突出し、軸方向に間隔を開けて設けられた複数の指部を備え、
隣接する前記ロールは、それぞれの前記指部の軌道が軸方向視において重なり合い、かつ軸方向にずれていることにより干渉しないように入り組んだ状態で並列している、
請求項4に記載の解砕混合機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残土、汚染土などの解砕、改質に用いられる解砕混合機に関する。
【背景技術】
【0002】
建設・土木現場等から発生する残土や汚染土の解砕や改質のために、混合機を用いて残土等と処理剤と混合することが行われている。例えば、水分を含む建設発生土を運搬や埋戻しのために固化剤等と混合して改質する場合や、汚染土からの重金属の溶出を防止するために不溶化剤を混合して不溶化処理する場合などである。
【0003】
混合機としては、上部から投入された処理物を装置内の回転打撃材で破砕または解砕しながら処理剤と混合して、下部から排出する竪型の混合機が多く用いられる。竪型の混合機では処理物が重力に従って上から下へと降下するため、比較的単純な構造で耐久性や保守性に優れた装置を実現しやすい。特許文献1および2には、回転打撃材の回転軸を直立させて複数設けた竪型垂直軸型の破砕混合機が記載されている。特許文献3および4には、回転打撃材の回転軸を水平にして複数設けた竪型水平軸型の混合機が記載されている。
【0004】
処理物が粘土質であったり、固化剤としてセメント粉を混合したりする場合は、回転打撃材に弾き飛ばされた粘着性の処理物がケーシングの内壁面に付着、堆積して、回転刃等の摩耗や回転動力の過負荷といった問題が生じることがある。この問題に対して、特許文献1では、ケーシングの内側に複数の棒状体からなるカーテンを設け、回転打撃材に弾き飛ばされた原料がカーテンに衝突したときに棒状体の振動および揺動によって衝撃を緩和して、原料をカーテンに付着、堆積しにくくすることが記載されている。特許文献2には、機函の内面に敷設した可動ライナーを上下方向に摺動させることにより、泥土等の付着物を近接して高速回転する攪拌羽根によって剥離除去する付着物除去装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-111531号公報
【特許文献2】特開2013-128891号公報
【特許文献3】特開2001-190970号公報
【特許文献4】実開平06-052928号公報
【特許文献5】特開平07-213999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載されたような竪型垂直軸型の破砕混合機は、処理物が装置内を降下する間に数多く回転打撃材の軌道を通過するため、破砕能力に優れ、岩石やコンクリート塊の破砕処理に適している。しかし、処理物が回転軸の外側(ケーシング側)に投入されると回転打撃材によってすぐに外側に弾かれてしまうため、処理物の投入部が複数の回転軸に囲まれた範囲内に限られ、投入口を大きくすることが難しく、単位時間当たりの処理量を増やすことが難しかった。
【0007】
一方、特許文献3および特許文献4に記載されたような竪型水平軸型の混合機では、投入口を回転打撃材の回転軸に沿って長く形成することができるので、投入口の面積を大きくすることができる。しかし、本発明者の実験によれば、処理物の塊、例えば土塊を解砕、混合するには、土塊を切るように解砕することが効果的であるのに対して、特許文献3および特許文献4に記載された混合機では、揺動可能に蝶着されて軸方向に密に並んだ反発子またはハンマーの打撃で土塊を崩壊させるため、特に粘着性の処理物に対して処理剤との混合の均一性に改善の余地があると考えられた。
【0008】
本発明は上記を考慮してなされたものであり、残土等の解砕、改質処理において単位時間当たりの処理量が多く、混合の均一性に優れる解砕混合機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解砕混合機は、上部に投入口、下部に排出口が設けられたケーシングと、前記ケーシング内に略水平に配置された複数の回転体とを有する。前記複数の回転体のそれぞれは、回転軸と、該回転軸から放射状に突出するアームと、該アームの先端部に固定されたハンマーとを有し、前記複数の回転体のうち、一対の第1回転体が横方向に並べて配置されて、いずれも内回りに回転し、2本以上の第2回転体が、それぞれの前記アームの軌道が軸方向視で重なり合い、かつ軸方向にずれていることにより干渉しないように入り組んだ状態で横方向に並べて、前記第1回転体の下方に配置される。
【0010】
ここで、回転体が横方向に並べて配置されるとは、回転体が軸同士を平行にして、略水平方向に隣り合って配置されることをいう。回転体が内回りに回転するとは、回転体の上側にある点が装置の中心に向かう方向に回転することをいう。アームの軌道とは回転にともなってアームが通過する円板状の領域をいう。
【0011】
この構成により、残土等の単位時間当たりの処理量を多くしながら、混合の均一性を高くすることができる。
【0012】
好ましくは、前記複数の回転体のうち一対の第3回転体が、横方向に並べて、前記第2回転体の下方に配置されて、いずれも内回りに回転する。これにより、排出口から排出される処理物を、排出口の中央に寄せることができる。
【0013】
好ましくは、前記第2回転体は、前記第1回転体と比べて、前記アームが短く、より高速で回転する。これによって、より強力に処理物を解砕して混合できる。
【0014】
好ましくは、前記ケーシングの内壁面への処理物の堆積抑制手段をさらに有し、前記ケーシングが略直方体形状を有する。これにより、解砕混合機を小型化することが可能となる。
【0015】
好ましくは、前記堆積抑制手段は、前記ケーシングの壁面の内側に、複数のロールが高さ方向に並列して形成されたスクリーンであって、前記ロールはシャフトから放射状に突出し、軸方向に間隔を開けて設けられた複数の指部を備え、隣接する前記ロールは、それぞれの前記指部の軌道が軸方向視において重なり合い、かつ軸方向にずれていることにより干渉しないように入り組んだ状態で並列している。これにより、高い堆積抑制効果が得られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の解砕混合機によれば、上段に位置する一対の第1回転体が略水平に配置されるので、投入口を第1回転体の回転軸に沿って長く形成することにより、投入口の面積を大きくすることができる。また、投入された処理物は一対の第1回転体によって解砕、混合されるとともに装置の中央に寄せられ、第2回転体によってさらに解砕、混合される。その際、回転体のアームが処理物の塊を切るように解砕するので、処理物は効率よく解砕され、処理物と処理剤をより均一に混合できる。結果として、残土等の単位時間当たりの処理量を多くしながら、高い混合の均一性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態の解砕混合機の正面断面図である。
図2図1のAAにおける平面断面図である。
図3】回転体のアームの、A:平面図、B:右側面図である。
図4】スクリーンを構成するロールが備える板体のA:斜視図、B:平面図、C:正面図である。
図5】隣接するロールの位置関係を説明するための図である。
図6】回転体の配置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の解砕混合機の一実施形態を図1図5に基づいて説明する。
【0019】
図1および図2を参照して、本実施形態の解砕混合機10はケーシング20と、ケーシング内に水平に配置された6本の回転体とを有する。ケーシングの壁面の内側には、複数のロール52が高さ方向に並列して、スクリーン50、51が形成されている。スクリーン50、51は、ケーシングの内壁面への処理物の堆積を抑制する堆積抑制手段である。なお、図2図1のAA断面図であるが、煩雑になるのを避けるため、回転体のうち上段の第1回転体30のみを描き、下方の第2回転体31および第3回転体32は省略した。また、本明細書において、回転軸に平行でケーシングを垂直に二分する中心面Cに近い方を内側といい、遠い方を外側という。
【0020】
ケーシング20は略直方体形状を有する。ケーシングは筒状の胴部21と上蓋22からなり、上部に投入口23、下部に排出口25が設けられている。投入口23は、一対の第1回転体30、30の回転軸40、40に挟まれて回転軸に沿って長く延び、図2に一点鎖線で示した長方形Rの上部に形成されている。投入口の上には投入シュート24が設けられている。
【0021】
ケーシング20は、回転体30~32のアーム41(回転打撃材)が通過しない内部のデッドスペースを少なくすることが好ましい。デッドスペースが多く、特に回転体の外側とケーシングとの間隔が広いと、解砕や混合が不十分な処理物の塊がデッドスペースを降下してそのまま排出される確率が高まるからである。粘着性の処理物を解砕、混合する場合、ケーシングを下部が広がった形状とすることで、ケーシング内壁面への処理物の付着、堆積を抑制できる。しかし、ケーシングを裾広がりに形成すると回転体の外側のデッドスペースが広くなるという問題がある。この問題に対して、ケーシングの壁面の内側に処理物の堆積抑制手段を設けることによって、ケーシングを略直方体形状で小型化して、デッドスペースを狭くすることができる。また、ケーシングを略直方体形状で小型化することによって、解砕混合機10をベルトコンベア等の上方に設置して、処理物を排出口25からコンベア上に供給することが容易になる。堆積抑制手段であるスクリーン50、51の詳細は後述する。
【0022】
ケーシング20内に配置された6本の回転体は、2本ずつ対をなして、上中下の3段に配置される。具体的には、一対の第1回転体30が上段、一対の第2回転体31が中段、一対の第3回転体32が下段に配置される。各回転体は、軸受45、46を介して、ケーシングの対向する側面に回転軸が保持され、一方の軸受から側方に突出した端部にプーリー47が設けられ、図示しないモータによってベルト駆動される。
【0023】
図3を参照して、回転体30~32は同じ構造を有し、回転軸40と、回転軸の側面から放射状に突出するアーム41と、アームの先端部に固定されたハンマー42を備える。このアームが回転打撃材であって、処理物を切るように叩くことができる。アーム41は断面が略長方形で、軸方向に薄く旋回の径方向に幅広い板状の部材である。アームは例えば、回転軸40の側面を構成するスリーブ43に蝶着され(44)、アーム全体が揺動可能に取り付けられる。アームは、回転軸の軸方向に所定の間隔を開けて複数設けられる。ハンマー42は硬度の高いチップからなり、断面が逆U字状で、アームの先端部の3面を覆うように固定されている。回転体のこの構造は、竪型垂直軸型の破砕混合機で用いられるものと同じで、アームの先端にハンマーを備えることによって、処理物に岩石やコンクリート塊などの硬い物が混入していても、それを破砕することができる。
【0024】
図1および図2に戻って、一対の第1回転体30、30は、回転軸同士を平行にして水平方向に並んで配置される。第1回転体は、解砕混合機10に投入された処理物を解砕、混合するとともに、装置の内側に寄せる機能を有する。
【0025】
第1回転体30は、投入された処理物を内側に寄せるために、いずれも内回りに回転する。回転体が内回りに回転するとは、ある時刻に回転体の上側にある点が内側に向かう方向(図1の矢印の方向)に回転することをいう。
【0026】
第1回転体30は、好ましくは、アーム41の軌道同士が重ならないように配置される。アームの軌道とは回転にともなってアームが通過する円板状の領域をいい、アームの軌道同士が重ならないとは軸方向視において重ならないことをいう。処理物の解砕、混合効果の点からは、隣り合う回転体のアームの軌道が軸方向視で重なり、それぞれの回転体のアームが他方の回転体のアームの間に入り込んだ状態であることが好ましい。また、軌道が重ならない場合でも、軌道同士の距離が小さいほどが好ましい。しかし、処理物を導入できる部分は、一対の第1回転体30、30の回転軸に挟まれた部分に限られるので、ケーシング20の幅(図1および図2の左右方向)が同じなら、第1回転体30同士の回転軸間の距離が大きいほど、投入口23の幅を広くできる。第1回転体のアームを適度に短くして、一対の回転体をそれぞれケーシングの壁面に近付けることで、ある程度の解砕、混合効果を確保しながら、投入口の幅を広くできる。
【0027】
一方で、第1回転体30同士の距離が大きすぎると、処理物を内側に寄せても、一対の第2回転体31の間に供給される処理物の割合が減少する。このことから、第1回転体のアーム軌道の最も内側の点Iが、それぞれ第2回転体の軸心を含む鉛直面Xより内側にあることが好ましい。
【0028】
一対の第1回転体30、30は、好ましくは、軸方向視のアームの軌道が中心面Cに関して対称に構成される。つまり、好ましくは一対の第1回転体は同形状で同寸法である。また、一対の第1回転体は、好ましくは、同じ回転速度で回転する。このように、第1回転体の対を対称に構成することにより、投入口23から投入された処理物がどちらか一方に偏ることなく内側に寄せられる。
【0029】
一対の第2回転体31、31は、回転軸同士を平行にして水平方向に並んで、第1回転体30、30の下方に配置される。好ましくはすべての第2回転体の回転軸が一対の第1回転体の回転軸の内側に配置される。第1回転体によって内側に寄せられた処理物を第2回転体で受けるためである。
【0030】
第2回転体は、専ら処理物を解砕、混合する機能を有する。そのため、第2回転体は、第1回転体と比べて、アーム41を短くして、より高速で回転させるのが好ましい。
【0031】
第2回転体31の回転方向は限定されない。後述する実験結果から、混合の均一性を高めるには、一対の第2回転体をそれぞれ外回りに回転させることが好ましい。一方、単位時間当たりの処理量を増やすには、一対の第2回転体をいずれも内回りに回転させることが好ましい。
【0032】
第2回転体31は、好ましくは、アーム41の軌道同士が重なるように配置される。軌道同士は軸方向視で重なっていても、軸方向に互いにずれていることにより回転の際に衝突することはない。隣り合う回転体のアームが他方の回転体のアームの間に入り込んだ状態であることによって、処理物の塊により強い剪断力が加わり、塊を切るように効果的に解砕、混合できるし、回転軸40の表面に付着した処理物を除去する効果が高まる。
【0033】
一対の第2回転体31、31は、好ましくは、軸方向視のアームの軌道が中心面Cに関して対称に構成される。つまり、好ましくは一対の第2回転体は同形状で同寸法である。また、一対の第2回転体は、好ましくは、いずれも外回りまたは内回りに、同じ回転速度で回転する。このように、第2回転体の対を対称に構成することにより、解砕混合機10内部で処理物が偏在することを抑制できる。
【0034】
一対の第3回転体32、32は、回転軸同士を平行にして水平方向に並んで、第2回転体31、31の下方に配置される。第3回転体は、処理物を解砕、混合するとともに、第2回転体によって弾き飛ばされた処理物を内側に寄せることにより、排出口25から排出される処理物を排出口の幅の中央部に寄せる機能を有する。また、一対の第2回転体の外側を降下する処理物を捕捉して装置の内側に戻す機能を有する。そのため、第3回転体は、第2回転体と比べて、アーム41を長くして、より低速で回転させるのが好ましい。例えば、第3回転体を、第1回転体と同形状で同寸法として、同じ回転速度で回転させることができる。
【0035】
第3回転体32は、処理物を内側に寄せるために、いずれも内回りに回転する。
【0036】
一対の第3回転体32、32は、好ましくは、一対の回転軸がすべての第2回転体31の回転軸を内側に挟むように、第2回転体の対より幅方向に広がって配置される。第3回転体のそれぞれが、上方の第2回転体より外側に位置することによって、第2回転体の対の外側のデッドスペースを降下する処理物を捕捉できるからである。一方で、第3回転体は、好ましくは、アーム41の軌道同士が重なるように配置される。処理物の解砕、混合効果を上げ、回転軸40表面に付着した処理物の除去効果を高めるためである。
【0037】
一対の第3回転体32、32は、好ましくは、軸方向視のアームの軌道が中心面Cに関して対称に構成される。つまり、好ましくは一対の第3回転体は同形状で同寸法である。また、一対の第3回転体は、好ましくは、同じ回転速度で回転する。このように、第3回転体の対を対称に構成することにより、排出口から排出される処理物がどちらか一方に偏ることなく内側に寄せられる。
【0038】
第3回転体32は省略することも可能であるが、好ましくは、解砕混合機10は一対の第3回転体を備える。上述したように、第2回転体の対の外側のデッドスペースを降下する処理物を捕捉するためである。
【0039】
また、回転体30~32のうち、上下に隣り合う各段の回転体同士も、好ましくは、アーム41の軌道同士が重なるように配置される。処理物の解砕、混合効果を上げ、回転軸40表面に付着した処理物の除去効果を高めるためである。
【0040】
スクリーン50、51は、ケーシング内壁面への処理物の堆積を抑制する堆積抑制手段である。堆積抑制手段には、ケーシングの内壁面はもちろん、堆積抑制手段自体への処理物の堆積も抑制する機能が求められる。
【0041】
スクリーン50、51はいずれも、高さ方向に並列する複数のロール52からなる。各ロール52は、シャフト53と、シャフトの軸方向に並列して固定された複数の板体60とを有する。各ロール52は、軸受55、56を介してケーシング20の対向する側面にシャフト53が保持され、一方の軸受から側方に突出した端部にプーリー57が設けられ、図示しないモータによってベルト駆動される。それぞれのスクリーン50、51について、構成するすべてのロールは同じ方向に回転し、好ましくは内回りに回転する。
【0042】
図4を参照して、板体60は、シャフト53を挿通するシャフト穴61が設けられた芯部62と、芯部から放射状に突出する複数の指部63を有する。
【0043】
シャフト穴61はシャフト53の断面と同形状に形成され、シャフトを挿通したときに嵌合する。例えば、シャフトが略四角柱形状である場合は、シャフト穴をシャフトの断面と同じ四角形状に形成される。これにより、シャフトを回転させたときに板体60が一緒に回転する。シャフトとシャフト穴の形状はこれには限られず、シャフトをシャフト穴に挿通したときに両者が嵌合して、板体60が回らない形状であればよい。
【0044】
指部63の本数は、好ましくは4~20本、より好ましくは8~16本である。指部の数が少なすぎると、回転体30~32に弾き飛ばされた原料がスクリーン50、51を通り抜けやすいからである。一方、指部の数が多すぎると、指部同士の間(指の股67)に入り込んだ原料が排出されにくいからである。
【0045】
指部63の形状は、平面視における幅が、先端65から芯部62にかけて単調に増加することが好ましい。指の股67に入り込んだ原料が排出されやすいからである。指部63は、平面視において一方向に湾曲していることが好ましい。湾曲の方向は、図4Bにおいて板体60の回転方向が反時計回りであるとして、回転方向に対する指部の前面64が凸状に膨らみ、後面66が凹状になっていることが好ましい。原料が指の股67に入り込みにくく、また、排出されやすいからである。
【0046】
板体60の材質は、原料の衝突によって破損しない強度を有していれば特に限定されず、例えば各種の金属、軟質プラスチック、硬質ゴムなどを用いることができる。指部63については硬質ゴム等の弾性体からなることが好ましい。指部がしなることによって、指の股67に入り込んだ原料が排出されやすいからである。芯部62については、十分な強度があれば特に限定されないが、コストの点からは、指部63と同じ材質で一体に成形されていることが好ましい。
【0047】
板体60や指部63の大きさは処理する原料に応じて決定できるが、解砕混合機10を残土や汚染土の改質に用いる場合は、板体の外周の輪郭が円形である場合は、その直径が100~300mm、指部の長さが25~75mmであることが好ましい。指部の長さは、すべての指部が同じ長さである必要はなく、指部毎に異なっていてもよい。また、板体の輪郭が円形であっても偏心しているときや、板体の輪郭が円形でない場合は、シャフト53の中心から最も遠い指部先端65までの距離が、好ましくは50~150mmとする。
【0048】
指部63の厚さは、好ましくは20~40mmである。芯部62の厚さは指部の厚さの2倍+(8~20)mmであることが好ましい。芯部の厚さを指部の2倍以上とする理由は、後述するように、指部をロール52の軸方向に間隔を開けて並列させ、その間隔に隣接するロールの指部が入り込めるようにするためである。芯部の厚さを指部の2倍より8~20mm厚くする理由は、指部と隣接するロールの指部との好ましい間隔が4~10mmだからである。
【0049】
図2に戻って、各ロール52は、複数の板体60のシャフト穴61にシャフト53を挿通して、押さえ部材58、59で挟み込み、両方の押さえ部材をシャフトにねじ等で固定することによって、板体がシャフトと一体となる。これにより、ロール52は、放射状に突出し、軸方向に間隔を開けて設けられた複数の指部63を備えることになる。
【0050】
図5を参照して、隣接する2本のロール52a、52bの位置関係を説明する。板体60a、60bが、いずれも輪郭が円形であって偏心しておらず、同じ大きさであるとする。ロール52aの回転に伴って指部63aの軌道、すなわち指部63aが通過する領域は、底面が板体60aの外周の輪郭に等しく、高さが指部63aの厚さtfに等しい円板状となる。ロール52bについても同様である。ロールのピッチ、すなわちシャフト53a、53bの中心間距離Pは、板体60a、60bの直径より小さい。これにより、ロール52aの指部63aが通過する空間とロール52bの指部63bが通過する空間とが、シャフト53a、53bの軸方向視において重なり合う。さらに、2本のロールの指部63a、63bは軸方向にずれていて、互いの指部が他方の指部の間に入り込んだ状態となる。言い換えると、ロール52aの指部63aが通過する空間とロール52bの指部63bが通過する空間とが、シャフト53a、53bの軸方向にずれていることにより、干渉しない状態となる。
【0051】
板体60の輪郭が円形であっても偏心しているときや、板体の輪郭が円形でない場合にも同様に、隣接するロール52それぞれの指部63が通過する空間がシャフト53の軸方向視において重なり合い、かつ、シャフトの軸方向にずれていることにより干渉しない状態とすればよい。
【0052】
上記のとおり、隣接するロール52が互いに入り組んで並列することによりスクリーン50、51が構成される。解砕混合機10の作動中にロール52を常時回転させることによって、スクリーン50、51に衝突した処理物はすぐにスクリーンから剥離し、スクリーンには実質的に処理物が付着することがない。これにより、回転体とスクリーンの間隔を狭くして、デッドスペースを小さくでき、ケーシング20を略直方体形状で小型化することが可能となる。
【0053】
なお、回転軸から放射状に突出した複数の指部を備えるロールからなるこのようなスクリーンは、水平に配置して、スクリーン上を搬送される土石その他の廃棄物から所望の粒度以下のものを下方に通過させる目的で、分級機として用いられることがある(例えば特許文献5)。本実施形態では、回転体に弾き飛ばされた処理物を、スクリーン50、51に付着させず、かつスクリーンを通過させずに回転体側に戻す目的で用いられる。
【0054】
次に、本実施形態の解砕混合機10の作用を説明する。
【0055】
すべての回転体30~32とロール52を内回りに回転させて、投入口23から処理物である残土等と固化剤などの処理剤を投入する。処理物は第1回転体30によって解砕、混合されるとともに内側に寄せられる。処理物は重力に従って装置内を降下し、一対の第2回転体31の回転軸間に供給され、第2回転体によって強力に解砕、混合される。処理物はさらに降下して、第3回転体32によって解砕、混合されるとともに内側に寄せられ、排出口25から排出される。
【0056】
処理物に岩石やコンクリート塊が混入していても、各回転体はそれら硬い塊を破砕することができるし、設備が破損するなどの問題は発生しない。
【0057】
処理物が装置内を降下する過程で、処理物の一部は回転体によって弾き飛ばされて、大小の塊状でスクリーン50、51に衝突する。スクリーンに衝突してロール52に付着した処理物は、ロールの回転によって隣接するロールとの境界に運ばれる。隣接するロール同士が入り組んだ部分では、処理物が付着したロールの指部がスクリーンの内側から外側に向かって移動するのに対して、隣接するロールの指部はスクリーンの外側から内側に向かって移動する。これにより、ロールに付着した原料は当該ロールから剥がされ、スクリーンの内側に落下して、回転体30~32によってさらに解砕、混合される。なお、スクリーンの内側とは回転体のある側をいい、外側とはケーシング20のある側をいう。
【0058】
細かな粉となって指の股67に入り込んだ原料は、原料との衝突による指部63の変形などにともない、指の股から排出されて、スクリーンの内側または外側に落下する。このとき、指部63が弾性体からなり、回転方向の後方に向かって湾曲した形状であれば、原料が指の股から効率よく排出される。スクリーンの外側に落下した原料は排出口25へと落下する。
【0059】
このように、回転体30~32に弾き飛ばされた処理物がスクリーン50、51に阻まれて、ケーシング20の内壁面に直接衝突することがない。スクリーンに付着した処理物は、ロールが回転することによってスクリーンから剥離して落下するので、スクリーン上にも堆積しにくい。
【0060】
本発明者は、上記実施形態の解砕混合機を、図1および図2に示した回転体の配置で試作して実験を行った。試作機の概要は、ケーシングの外寸がW1850mm×D2200mm×H2400mm、第1回転体および第3回転体のアーム軌道の直径が780mm、第2回転体のアーム軌道の直径が610mm、最も外側に位置する第1回転体とスクリーンとの間隔が50mmであった。処理物として含水率の異なる土砂と固化剤であるセメント粉を投入して、種々の条件で運転して、排出された処理土から無作為にサンプリングした試料のコーン指数およびセメント含有率を測定して混合の均一性を評価した。回転体の回転速度は、第1回転体および第3回転体が500~800rpm、第2回転体が900~1000rpmの範囲で、特に均一な混合状態が得られた。また、表1に示すとおり、中段の第2回転体をいずれも外回りに回転させる方が混合の均一性が高くなることが分かった。
【0061】
【表1】
【0062】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0063】
例えば、上記実施形態では中段に一対の第2回転体が配置されているが、第2回転体の本数は3本以上でもよい。第2回転体の数を3本以上に増やした場合でも、すべての第2回転体の回転軸が、一対の第1回転体の回転軸の内側に配置され、かつ一対の第3回転体の回転軸の内側に配置されることが好ましい。第2回転体の数を増やすことによって、第1回転体同士の回転軸間の距離を大きくして、投入口23の幅を広くできる。結果として、単位時間当たりの処理量を多くできる。図6に4本の第2回転体31を備える解砕混合機11を示す。
【0064】
また、例えば、上記実施形態では、回転体30~32を水平に配置した。回転体は装置のガタツキや騒音を抑えるために、製作精度の範囲内で水平に配置することが好ましい。しかし、設置場所による制限など種々の理由に応じて回転体を意図的に水平から傾けても、本発明の効果は奏する。したがって、例えば水平からの傾きが5度以内であれば、回転体は略水平に配置されているとみなすことができる。
【0065】
また、同様に、上記実施形態では、第1回転体、第2回転体および第3回転体の各対は水平方向に並べて配置したが、各回転体の対は略水平方向、具体手には水平からの傾きが5度以内で、横方向に並べて配置されていればよい。
【0066】
また、例えば、上記実施形態における板体60は、指部63の厚さtfより芯部の厚さtsが大きく、これをシャフトの軸方向に重ねることによって、放射状に突出する指部を、シャフトの軸方向に間隔を開けて設けた。しかし、シャフト53の軸方向に間隔を開けて指部63を配列させるには、板体の厚さを一様(tf)にして、厚さがts-tfである円筒形等のスペーサ部材と板体とを交互に並列させてもよい。あるいは、シャフトに被せたスリーブに、その軸方向に間隔を開けて、指部を直接固定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の解砕混合機は、残土や汚染土の解砕や改質などに広く用いることができる。建設現場や地盤掘削等で発生する水分を含む発生土等に対し、セメント系、高分子系等を固化剤を混合し改質してハンドリング性を改善する場合、掘削された人工または自然由来の重金属等を含む土壌に対し、有害物質の溶出等を抑制する不溶化剤などを混合して安定化する場合が挙げられる。
【0068】
本発明の解砕混合機は、竪型垂直軸型の破砕混合機と比べて処理物がハンマーで打撃される回数が少ないため、硬い処理物を細かく破砕する用途に適したものではない。一方で、残土等の解砕や改質では、竪型垂直軸型の破砕混合機より格段に高い処理効率を実現できる。本発明の解砕混合機は、建設・土木現場等から発生する残土や汚染土を大量に処理のに適している。
【符号の説明】
【0069】
10、11 解砕混合機
20 ケーシング
21 ケーシング胴部
22 ケーシング上蓋
23 投入口
24 投入シュート
25 排出口
30 第1回転体
31 第2回転体
32 第3回転体
40 回転軸
41 アーム
42 ハンマー
43 スリーブ
44 蝶着部
45、46 軸受
47 プーリー
50、51 スクリーン
52、52a、52b ロール
53、53a、53b シャフト
55、56 軸受
57 プーリー
58、59 押さえ部材
60、60a、60b 板体
61 シャフト穴
62 芯部
63、63a、63b 指部
64 指部前面
65 指部先端
66 指部後面
67 指の股
C 中心面
I 第1回転体のアーム軌道の最内点
P 隣接するシャフトの中心間距離
R 投入口の大きさを示す長方形
tf 指部の厚さ
ts 芯部の厚さ
X 第2回転体の軸心を含む鉛直面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2020-12-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に投入口、下部に排出口が設けられたケーシングと、
前記ケーシング内に略水平に配置された複数の回転体とを有し、
前記複数の回転体のそれぞれは、回転軸と、該回転軸から放射状に突出するアームと、該アームの先端部に固定されたハンマーとを有し、
前記複数の回転体のうち、
一対の第1回転体が横方向に並べて配置されて、いずれも内回りに回転し、
2本以上の第2回転体が、それぞれの前記アームの軌道が軸方向視で重なり合い、かつ軸方向にずれていることにより干渉しないように入り組んだ状態で横方向に並べて、前記第1回転体の下方に配置され
前記第2回転体は、前記第1回転体と比べて、前記アームが短く、より高速で回転する、
解砕混合機。
【請求項2】
前記複数の回転体のうち一対の第3回転体が、横方向に並べて、前記第2回転体の下方に配置されて、いずれも内回りに回転する、
請求項1に記載の解砕混合機。
【請求項3】
前記ケーシングの内壁面への処理物の堆積抑制手段をさらに有し、
前記ケーシングが略直方体形状を有する、
請求項1または2に記載の解砕混合機。
【請求項4】
前記堆積抑制手段は、前記ケーシングの壁面の内側に、複数のロールが高さ方向に並列して形成されたスクリーンであって、
前記ロールには、放射状に突出する複数本の指部が、該ロールの軸方向に間隔を開けて並列して設けられており、
隣接する前記ロールは、それぞれの前記指部の軌道が軸方向視において重なり合い、かつ軸方向にずれていることにより干渉しないように入り組んだ状態で並列している、
請求項3に記載の解砕混合機。