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  • 特開-遮音・吸音材及び遮音・吸音部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049217
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】遮音・吸音材及び遮音・吸音部材
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/162 20060101AFI20220322BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
G10K11/162
G10K11/168
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155321
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000223034
【氏名又は名称】株式会社ROKI
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】仲辻 真章
(72)【発明者】
【氏名】藤島 聖剛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直人
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA07
5D061AA22
5D061BB21
(57)【要約】
【課題】遮音効果及び吸音効果の両立を図ることができると共に、自動車や電気製品等への適応性を向上させた遮音・吸音材を提供する。
【解決手段】樹脂繊維径が1000nm以下のナノファイバーを50%以上含み、残余の樹脂繊維径が10μm以下のマイクロファイバーからなる繊維構造体が常温で圧縮されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂繊維径が1000nm以下のナノファイバーを50%以上含み、残余の樹脂繊維径が10μm以下のマイクロファイバーからなる繊維構造体が常温で圧縮されていることを特徴とする遮音・吸音材。
【請求項2】
請求項1に記載の遮音・吸音材において、
圧縮永久ひずみ率が40%以上であることを特徴とする遮音・吸音材。
【請求項3】
請求項2に記載の遮音・吸音材において、
少なくとも第1の遮音・吸音材と第2の遮音・吸音材を積層してなることを特徴とする遮音・吸音材。
【請求項4】
請求項3に記載の遮音・吸音材において、
前記第1の遮音・吸音材と前記第2の遮音・吸音材は、互いに目付又は空隙率の少なくともいずれか一方が異なることを特徴とする遮音・吸音材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の遮音・吸音材が所定の形状に成形されたことを特徴とする遮音・吸音部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や電気製品等から生じる騒音を低減することができる遮音・吸音材及びこの遮音・吸音材を用いた遮音・吸音部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車や電気製品等から生じる騒音を低減する方法として、吸音材を用いることが行われている。吸音材は種々の形態が知られており、例えば、特許文献1に記載されたような熱安定性防音材が知られている。
【0003】
特許文献1に記載された吸音材は、自動車や電気製品等から生じた騒音を吸収することで音の反射を防ぎ、音が外部に透過することを防いでいる。また、防音の手法としては、空気中で伝わってくる音を遮断して、外部へ音が透過しないようにする遮音が知られている。
【0004】
このような遮音については、特許文献2に記載されたように、遮音効果を高めるために、発泡樹脂体(ウレタン等)からなる吸音材と、メラミンフォーム材とコットンフェルトとを2枚の不織布で挟み込んだ4層構造を有する遮音カバーとを用いてエンジンなどの騒音抑制効果を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3911548号公報
【特許文献2】特許第5831281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来、騒音抑制効果を図るための吸音材及び遮音材は存在したものの、特許文献2に示すように、吸音材と遮音材をそれぞれ設ける必要があり、吸音効果及び遮音効果を両立した消音材は存在しておらず、吸音及び遮音を図ることができる吸音・遮音材が求められていた。
【0007】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、遮音効果及び吸音効果の両立を図ることができると共に、自動車や電気製品等への適応性を向上させた遮音・吸音材を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る遮音・吸音材は、樹脂繊維径が1000nm以下のナノファイバーを50%以上含み、残余の樹脂繊維径が10μm以下のマイクロファイバーからなる繊維構造体が常温で圧縮されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る遮音・吸音材において、圧縮永久ひずみ率が40%以上であると好適である。
【0010】
また、本発明に係る遮音・吸音材において、少なくとも第1の遮音・吸音材と第2の遮音・吸音材を積層してなると好適である。
【0011】
また、本発明に係る遮音・吸音材において、前記第1の遮音・吸音材と前記第2の遮音・吸音材は、互いに目付又は空隙率の少なくともいずれか一方が異なると好適である。
【0012】
また、本発明に係る遮音・吸音部材は、上述した遮音・吸音材が所定の形状に成形されたことを特徴とする。
【0013】
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る遮音・吸音材は、樹脂繊維径が1000nm以下のナノファイバー繊維を50%以上含み、残余の樹脂繊維径が10μm以下のマイクロファイバーからなる繊維構造体が常温で圧縮されているので、遮音効果及び吸音効果を両立させることができ、金属などを含有しないことで、軽量化やコスト削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る遮音・吸音部材の斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る遮音・吸音材の断面図。
図3】本発明の実施形態に係る遮音・吸音材の製造方法を示す概略図。
図4】(a)本発明の実施形態に係る遮音・吸音材の拡大図、(b)従来の吸音材の拡大図。
図5】圧縮温度と圧縮永久ひずみ率の関係を示すグラフ。
図6】本実施形態に係る遮音・吸音材と従来の吸音材との吸音率を比較したグラフ。
図7】本実施形態に係る遮音・吸音材と圧縮されていない吸音材との透過損失の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る遮音・吸音部材の斜視図であり、図2は、本発明の実施形態に係る遮音・吸音材の断面図であり、図3は、本発明の実施形態に係る遮音・吸音材の製造方法を示す概略図であり、図4(a)は、本発明の実施形態に係る遮音・吸音材の拡大図、(b)は、従来の吸音材の拡大図であり、図5は、圧縮温度と圧縮永久ひずみ率の関係を示すグラフであり、図6は、本実施形態に係る遮音・吸音材と従来の吸音材との吸音率を比較したグラフであり、図7は、本実施形態に係る遮音・吸音材と圧縮されていない吸音材との透過損失の関係を示すグラフである。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る遮音・吸音部材1は、後述する遮音・吸音材10を所定の形状に成形したものであり、例えば、中空状の本体2と本体2の外縁から延びる鍔部3とを備えている。なお、本実施形態に係る遮音・吸音部材1は、遮音・吸音材10を常温で所定の圧力で圧縮されて形成されている。
【0019】
図2に示すように、本実施形態に係る遮音・吸音材10は、第1の遮音・吸音材11及び第2の遮音・吸音材12を積層して構成されており、第1の遮音・吸音材11及び第2の遮音・吸音材12は、ともに樹脂繊維径が1000nm以下の所謂ナノファイバー繊維を50%以上含み、残余の樹脂繊維径が10μm以下のマイクロファイバーからなる繊維構造体から構成されている。
【0020】
本実施形態に係る遮音・吸音材10の樹脂繊維の材質は、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンやポリウレタンなどが用いられる。また、ポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等が用いられ、ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11等が用いられ、ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレンなどが用いられると好適である。
【0021】
なお、樹脂繊維径が1000nm以下のナノファイバー繊維及び、樹脂繊維径が10μm以下のマイクロファイバー繊維は、それぞれ同一の樹脂繊維で構成されると好適である。さらに、ナノファイバー繊維とマイクロファイバー繊維は、同一の合成樹脂を用いて同時に製造しても構わないし、ナノファイバー繊維とマイクロファイバー繊維を別個に製造し、互いに混合して形成しても構わない。
【0022】
また、ナノファイバー繊維の製造方法は、電界紡糸法やメルトブロー法など、種々のナノファイバーの製造方法を採用することができる。
【0023】
また、第1の遮音・吸音材11及び第2の遮音・吸音材12は、互いに目付量又は空隙率の少なくとも一方が異なるように構成されており、例えば、第1の遮音・吸音材11の目付は、第2の遮音・吸音材12よりも大きくなるように形成されている。
【0024】
図3に示すように、本実施形態に係る遮音・吸音材10は、常温で圧縮されて構成されている。なお、本明細書において、常温とは、成形時に加熱されていない状態をいい、例えば、10から35℃、より好適には、23℃±2℃であることが好ましい。
【0025】
図3に示すように、本実施形態における遮音・吸音材10は、加圧装置20によって例えば24時間保持することによって圧縮されると好適である。加圧装置20は、本実施形態に係る遮音・吸音材10を一対の加圧板21によって挟み込み、一対の加圧板21に挿通されたボルト23にナット22を螺合させてボルト23の軸方向に圧縮している。この際、圧縮には270N程度の力が本実施形態に係る遮音・吸音材10に付与されると好適である。
【0026】
また、本実施形態に係る遮音・吸音材10の圧縮永久ひずみ率は、30%以上、より好適には、40%以上に構成されている。これにより、図4(a)に示すように、樹脂繊維径が1000nm未満の樹脂繊維を50%以上含有する場合、常温による圧縮永久ひずみ率が上述した値とできることに加え、加熱をしないで圧縮することによって繊維状態が崩壊せず、圧縮の影響を空隙率の変化のみとすることができる。
【0027】
これに対し、従来の吸音材では、加熱を伴わないで圧縮を行う場合、図5の比較例1に示すように圧縮永久ひずみ率が低く、成形体を得ることができない。一方加熱をして圧縮を行った場合、図4(b)に示すように、繊維構造体の支持体である繊維が熱によって溶融し、繊維から膜状に変化してしまう。この現象によって、成形体として作成することはできるものの、吸音・遮音の性能が発揮することができないことを確認した。
【0028】
図5に示すように、本実施形態に係る遮音・吸音材10の実施例は、従来の吸音材の比較例1と比較して、圧縮永久ひずみ率が大幅に向上しており、例えば常温(図5における約23℃)での圧縮永久ひずみ率は、比較例1の85℃程度の圧縮温度での圧縮永久ひずみ率よりも向上していることが確認できる。これにより、本実施形態に係る遮音・吸音材10の圧縮永久ひずみ率は、加熱を行うことなく、従来以上の性能を発揮することができることが確認できた。
【0029】
また、図6に示すように、本実施形態に係る遮音・吸音材10の実施例は、加熱圧縮を行っていないことから、吸音率が向上しており、従来の吸音材の比較例1は、熱圧縮を行ていることから、図4(b)に示すように、繊維が溶融することで吸音率が悪化し、吸音効果が低いことが確認できた。
【0030】
また、図7に示すように、本実施形態に係る遮音・吸音材10の透過損失は、圧縮を行わない場合の比較例2と比較して全体的に向上しており、透過損失の向上によって、圧縮によって目付を増やすことなく遮蔽性をあげることができることが確認できた。なお、本実施形態に係る遮音・吸音材10は、互いに目付や空隙率が異なる第1の遮音・吸音材11及び第2の遮音・吸音材12を積層しているので、目付を増やすことによる更なる相乗効果や積層による吸音率の低下を抑制することで、遮音と吸音の両立を図ることができる遮音・吸音材を構成することが可能となる。また、本実施形態に係る遮音・吸音材は、金属を含有することなく、圧縮された樹脂繊維のみで構成されているので、軽量化を図ることができ、自動車や電気製品等への適応性を向上させることができる。
【0031】
また、上記本発明の実施形態については、第1の遮音・吸音材11及び第2の遮音・吸音材12の2層を積層した場合について説明を行ったが、積層する数については、1層のみ又は3層以上積層しても構わない。また、第1の遮音・吸音材11と第2の遮音・吸音材12は、それぞれ同一の材質を採用しても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0032】
1 遮音・吸音部材, 2 本体, 3 鍔部, 10 遮音・吸音材, 11 第1の遮音・吸音材, 12 第2の遮音・吸音材, 20 加圧装置, 21 加圧板, 22 ナット, 23 ボルト。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7