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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049238
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】超音波検査方法、及び超音波検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/265 20060101AFI20220322BHJP
【FI】
G01N29/265
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155344
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000191397
【氏名又は名称】新和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中内 啓雅
(72)【発明者】
【氏名】笠谷 高宏
(72)【発明者】
【氏名】冨田 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】平林 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】森中 満
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AB01
2G047BA03
2G047BC09
2G047DB03
2G047DB17
2G047GA06
2G047GA19
2G047GE01
2G047GJ14
(57)【要約】
【課題】表面に傷や模様等の凹凸がある被検査対象物であっても、その内部の欠損等の存在の有無を良好に検知する。
【解決手段】被検査対象物Hの第1凹凸部EF2に対応した形状の第2凹凸部G1が形成される対向面G2を有する硬化物から成る検査治具Gを、第1凹凸部EF2に第2凹凸部G1を嵌合させる嵌合状態とする検査治具装着工程と、検査治具装着工程の後に、検査治具Gの対向面G2の裏面である治具表面G3に対して、超音波の送信波を送信すると共に当該送信した送信波の反射波を受信する送受波器12を走査させる送受波器走査工程とを実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹み及び突起の少なくとも一方を備える第1凹凸部を有する被検査対象物を超音波により検査する超音波検査方法であって、
前記被検査対象物の前記第1凹凸部に対応した形状の第2凹凸部が形成される対向面を有する硬化物から成る検査治具を、前記第1凹凸部に前記第2凹凸部を嵌合させる嵌合状態とする検査治具装着工程と、
前記検査治具装着工程の後に、前記検査治具の前記対向面の裏面である治具表面に対して、超音波の送信波を送信すると共に当該送信した送信波の反射波を受信する送受波器を走査させる送受波器走査工程とを実行する超音波検査方法。
【請求項2】
前記検査治具装着工程は、前記被検査対象物の表面と前記検査治具の前記対向面との間に高粘度物質を塗布する高粘度物質塗布工程を含む請求項1に記載の超音波検査方法。
【請求項3】
前記検査治具装着工程では、前記嵌合状態において、前記被検査対象物の表面に沿う表面方向で、前記第1凹凸部と前記第2凹凸部との間に隙間を設ける状態で、前記検査治具を前記被検査対象物に対して装着する請求項2に記載の超音波検査方法。
【請求項4】
前記検査治具装着工程では、前記嵌合状態において、前記被検査対象物の表面に直交する垂直方向で、前記第1凹凸と前記第2凹凸部との間に隙間を設ける状態で、前記検査治具を前記被検査対象物に対して装着する請求項2又は3に記載の超音波検査方法。
【請求項5】
前記検査治具装着工程の後で前記送受波器走査工程の前に、前記検査治具の前記対向面を前記被検査対象物の前記表面に対して押圧しながら前記表面に沿う方向で摺動する押圧摺動工程を実行する請求項2~4の何れか一項に記載の超音波検査方法。
【請求項6】
前記検査治具装着工程の前に、加熱して軟化させた熱硬化性又は熱可塑性樹脂を前記被検査対象物の前記表面の前記第1凹凸部へ押し付け所定時間放置して硬化させ前記第2凹凸部を前記対向面に対して形成することで前記検査治具を成型する対向面形成工程を実行する請求項1~5の何れか一項に記載の超音波検査方法。
【請求項7】
前記被検査対象物が円筒形状であり、
前記第1凹凸部が前記被検査対象物の筒軸周りの周方向に沿って連続して形成されている請求項1~6の何れか一項に記載の超音波検査方法。
【請求項8】
前記被検査対象物は、流体を内部に通流する一対の配管と、
前記一対の配管を溶着するEF管継手とを含む請求項7に記載の超音波検査装置。
【請求項9】
前記検査治具は、板状であって、その表面が前記被検査対象物の前記円筒形状の表面に沿う形状である請求項7又は8に記載の超音波検査装置。
【請求項10】
表面に凹み及び突起の少なくとも一方を有する第1凹凸部を備える被検査対象物を超音波により検査する超音波検査装置であって、
前記被検査対象物の前記第1凹凸部に対応した形状の第2凹凸部が形成される対向面を有する硬化物から成る検査治具と、
前記検査治具の前記対向面の裏面である治具表面に対して、超音波の送信波を送信すると共に当該送信した送信波の反射波を受信する送受波器とを備える超音波検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に凹み又は突起の少なくとも何れか一方からなる第1凹凸部を有する被検査対象物を超音波により検査する超音波検査方法及び超音波検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示の技術の如く、被検査対象物の内部の溶着箇所等に形成される欠損等を検知するべく、超音波を用いて被検査対象物の内部を検査する超音波検査方法及び超音波検査装置が知られている。
当該特許文献1に開示の技術では、超音波の送信波を送信すると共に当該送信した送信波の反射波を受信する送受波器を有する超音波検査装置を、被検査対象物の表面に沿う状態で走査して、被検査対象物の内部を検査する。超音波検査装置において、被検査対象物の表面に沿って回転駆動する回転輪及び当該回転輪の回転量を位置情報へ変換するロータリーエンコーダを備えることにより、被検査対象物の表面走査方向におけるどの箇所の内部に、欠損等が存在する可能性があるかを検知できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-048770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示の技術では、被検査対象物の表面が平面又は比較的緩やかな曲面である場合には良好に検査ができるものの、表面に傷や模様等の凹凸がある場合には、反射波を画像化した場合に、内部の溶着箇所等に形成される欠損等が表示されなかったり、表面の凹凸に起因するノイズが表示されたりすることになり、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、表面に傷や模様等の凹凸がある被検査対象物であっても、その内部の欠損等の存在の有無を良好に検知できる超音波検査方法、及び超音波検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための超音波検査方法は、
表面に凹み及び突起の少なくとも一方を有する第1凹凸部を備える被検査対象物を超音波により検査する超音波検査方法であって、その特徴構成は、
前記被検査対象物の前記第1凹凸部に対応した形状の第2凹凸部が形成される対向面を有する硬化物から成る検査治具を、前記第1凹凸部に前記第2凹凸部を嵌合させる嵌合状態とする検査治具装着工程と、
前記検査治具装着工程の後に、前記検査治具の前記対向面の裏面である治具表面に対して、超音波の送信波を送信すると共に当該送信した送信波の反射波を受信する送受波器を走査させる送受波器走査工程とを実行する点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、被検査対象物の第1凹凸部に対応した形状の第2凹凸部が形成される対向面を有する硬化物から成る検査治具を用いることで、検査治具装着工程において、被検査対象物の表面に形成される第1凹凸部に対して検査治具の対向面の第2凹凸部を嵌合させることができる。更に、当該嵌合状態で、送受波器走査工程を実行することで、検査治具の対向面の裏側の治具表面に超音波を送受信する送受波器を走査すればよく、被検査対象物の表面に形成される第1凹凸部の表面に送受波器を沿わせる必要がなくなるから、送受波器の走査を円滑に実行できる。
これにより、表面に凹凸が多く存在する被検査対象物であっても、その内部の状態を良好に検知することができる超音波検査方法を実現できる。
【0008】
超音波検査方法の更なる特徴構成は、
前記検査治具装着工程は、前記被検査対象物の表面と前記検査治具の前記対向面との間に高粘度物質を塗布する高粘度物質塗布工程を含む点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、被検査対象物の第1凹凸部と検査治具の第2凹凸部との間に、隙間が形成される場合であっても、当該隙間を高粘度物質により埋めることができ、隙間での超音波の反射を抑制することでノイズを低減することができる。
【0010】
超音波検査方法の更なる特徴構成は、
前記検査治具装着工程では、前記嵌合状態において、前記被検査対象物の表面に沿う表面方向で、前記第1凹凸部と前記第2凹凸部との間に隙間を設ける状態で、前記検査治具を前記被検査対象物に対して装着する点にある。
【0011】
発明者らは、鋭意検討した結果、嵌合状態において、被検査対象物の表面に沿う表面方向で第1凹凸部と第2凹凸部との間に隙間を設ける状態で、検査治具を被検査対象物に対して装着することで、被検査対象物と検査治具との間の高粘度物質が、第1凹凸部と第2凹凸部との表面方向での隙間に沿って全域に亘って略均等に広がるので、送受波器からの送信波が第1凹凸部の近傍で反射し難くなり、当該部位でのノイズをより一層良好に低減できるという知見を見出した。
因みに、発明者らは、送受波器から送信される送信波の通過方向において高粘度物質が厚いほど、ノイズが発生し易いことを、後述する実験により確認している。
【0012】
超音波検査方法の更なる特徴構成は、
前記検査治具装着工程では、前記嵌合状態において、前記被検査対象物の表面に直交する垂直方向で、前記第1凹凸と前記第2凹凸部との間に隙間を設ける状態で、前記検査治具を前記被検査対象物に対して装着する点にある。
【0013】
発明者らは、鋭意検討した結果、嵌合状態において、被検査対象物の表面に直交する垂直方向で第1凹凸部と第2凹凸部との間に隙間を設ける状態で、検査治具を被検査対象物に対して装着することで、被検査対象物と検査治具との間の高粘度物質が、第1凹凸部と第2凹凸部との表面に直交する垂直方向での隙間に沿って全域に亘って略均等に広がるので、送受波器からの送信波が第1凹凸部の近傍で反射し難くなり、当該部位でのノイズをより一層良好に低減できるという知見を見出した。
【0014】
超音波検査方法の更なる特徴構成は、
前記検査治具装着工程の後で前記送受波器走査工程の前に、前記検査治具の前記対向面を前記被検査対象物の前記表面に対して押圧しながら前記表面に沿う方向で摺動する押圧摺動工程を実行する点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、検査治具装着工程の後に、押圧摺動工程を実行することで、検査治具の対向面を被検査対象物の表面に対して押圧しながら表面に沿う方向で摺動することで、検査治具の対向面と被検査対象物の表面との間の高粘度物質の厚みを略均一化できると共に十分に薄くすることができるから、検知結果のノイズをより一層低減できる。
【0016】
超音波検査方法の更なる特徴構成は、
前記検査治具装着工程の前に、加熱して軟化させた熱硬化性又は熱可塑性樹脂を前記被検査対象物の前記表面の前記第1凹凸部へ押し付け所定時間放置して硬化させ前記第2凹凸部を前記対向面に対して形成することで前記検査治具を成型する対向面形成工程を実行する点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、軟化した熱硬化性又は熱可塑性樹脂を被検査対象物の表面に押し付けることで、当該熱硬化性樹脂の対向面に対して、被検査対象物の表面に形成される第1凹凸部に対応する形状としての第2凹凸部を、切削加工等を行うことなく、容易に形成することができる。
【0018】
超音波検査方法としては、
前記被検査対象物が円筒形状であり、
前記第1凹凸部が前記被検査対象物の筒軸周りの周方向に沿って連続して形成されている場合にも好適にも好適に適用可能である。
具体的には、前記被検査対象物が、流体を内部に通流する一対の配管と、
前記一対の配管を溶着するEF管継手とを含む場合であっても、超音波検査を好適に実施できる。
この場合、前記検査治具は、板状であって、その表面が前記被検査対象物の前記円筒形状の表面に沿う形状となる。
【0019】
上記目的を達成するための超音波検査装置は、
表面に凹み及び突起の少なくとも一方を有する第1凹凸部を備える被検査対象物を超音波により検査する超音波検査装置であって、その特徴構成は、
前記被検査対象物の前記第1凹凸部に対応した形状の第2凹凸部が形成される対向面を有する硬化物から成る検査治具と、
前記検査治具の前記対向面の裏面である治具表面に対して、超音波の送信波を送信すると共に当該送信した送信波の反射波を受信する送受波器とを備える点にある。
【0020】
上記特徴構成を有する超音波検査装置によれば、これまで説明してきた超音波検査方法を好適に実行して、表面に凹凸が多く存在する検査対象物であっても、その内部の状態を良好に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る超音波検査方法を実行する超音波検査装置の斜視図である。
図2】実施形態に係る超音波検査方法を実行する超音波検査装置の一部断面図である。
図3】検査治具の対向面と被検査対象物の表面との間の隙間の形成状態のパターンを示す図である。
図4】検査治具の対向面と被検査対象物の表面との間に隙間がない場合の検査結果である。
図5】検査治具の凸部の側方側と検査対象物の表面との間に隙間がある場合の検査結果である。
図6】検査治具の凹部の上側と検査対象物の表面との間に隙間がある場合の検査結果である。
図7】検査治具の凸部の側方側と検査対象物の表面との間に隙間がある場合で、検査治具を被検査対象物に対して軽く載置したときの検査結果である。
図8】エラストマーから成る検査治具を用いた場合の検査結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係る超音波検査方法、及び超音波検査装置は、表面に傷や模様等の凹凸がある被検査対象物であっても、その内部の溶着箇所等に形成される欠損等の存在の有無を良好に検知できるものに関する。
以下、図1、2に基づいて、本発明に係る超音波検査装置100を説明する。
【0023】
当該実施形態に係る超音波検査装置100は、表面EF3に凹みEF2b及び突起EF2aの少なくとも一方を有する第1凹凸部EF2を備える被検査対象物Hを超音波により検査する超音波検査装置100である。
超音波検査装置100は、図1又は図2に示すように、被検査対象物Hに対して超音波の送信波を送信すると共に当該送信した送信波の反射波を受信する送受波器12と、当該送受波器12とケーブル5を介して電気的に接続された信号処理部20とを備えている。
当該送受波器12は、送受波器支持本体13に対して被検査対象物Hに対する遠近方向に出退移動自在に支持されており、検査時に被検査対象物H側の端部に設けられるプローブ15を被検査対象物Hの表面EF3に接当させた状態で、送受波器支持本体13を被検査対象物Hの表面に沿って移動させ、被検査対象物Hの内部の状態を検査可能に構成されている。検査結果は、送受波器12からケーブル5を介して信号処理部20へ送られ、当該信号処理部20にて処理されてモニタ6に表示される。
【0024】
尚、当該実施形態では、被検査対象物Hは、表面EF3に凹みEF2b及び突起EF2aの少なくとも一方を有する第1凹凸部EF2を備えるものとして、都市ガス(例えば、都市ガス13A等)等の気体を通流する一対のガス管L(配管の一例)と、当該ガス管Lの接続部位Laを気密に溶着するためのEF管継手EFとから成るものとする。更に、当該実施形態において、第1凹凸部EF2は、EF管継手EFの表面EF3に管軸周りの管周方向に沿って延びる凹みEF2b及び突起EF2aが交互に複数形成される。
尚、EF管継手EFの第1凹凸部EF2が設けられる表面には、その内部に配設される導電線(図示せず)の一端に電気的に接続可能な一端接続部位EF1aが設けられると共に、導電線(図示せず)の他端に電気的に接続可能な他端接続部位EF1bが設けられ、図示しない電源から電圧が印加されることにより、ガス管Lの接続部位Laの周囲でEF管継手EFが溶けて融着することで接続部位Laが気密に接続される。尚、導電線は、EF管継手EFの内部にその円筒形状に沿って巻回される形態で、設けられている。
即ち、当該実施形態にあっては、被検査対象物Hは、円筒形状であり、第1凹凸部EF2は、そのEF管継手EFの筒軸周りの周方向に沿って連続して形成されている。
【0025】
図1、2に示すように、送受波器支持本体13は、その横断面形状が下向き略コの字状となるように構成してあり、検査時において、その被検査対象物Hの側の端部に、回転輪26を有すると共に、当該回転輪26とは別に被検査対象物Hに当接可能な当接端部24を有する。即ち、検査時においては、回転輪26を被検査対象物Hの表面EF3に沿って回転させると共に、当接端部24を被検査対象物Hの表面EF3に沿って摺動させることにより、送受波器支持本体13を被検査対象物Hの表面EF3に沿って移動自在に構成してある。
尚、図2に示すように、送受波器12のプローブ15は、回転輪26と当接端部24との間に設けられている。
【0026】
送受波器支持本体13の内部には、回転輪26の回転量(送受波器支持本体13の移動量)を検出可能なロータリーエンコーダ27が設けられている。
説明を追加すると、回転輪26の回転は、回転輪回転軸28と、第1プーリ29と、ベルト30と、第2プーリ31と、回転軸32とからなるベルト伝達機構33を介して、ロータリーエンコーダ27に伝達され、その回転数に基づいて送受波器支持本体13の移動量を検出し、ケーブル5を介して信号処理部20に伝達するように構成してある。
【0027】
送受波器12について説明を追加すると、当該送受波器12のプローブ15は、回転輪26及び当接端部24を被検査対象物Hに接当させた状態で、その被検査対象物Hに対する遠近方向に送受波器12を出退移動自在に支持されている。
すなわち、送受波器12としてのプローブ15は、送受波器支持本体13の内側に設けてあるコイルバネ36により、コイルバネ36の自然状態において、送受波器支持本体13の内側へ引退する引退姿勢をとるように設けられると共に、プローブ15を含む送受波器12は、検査時において、送受波器支持本体13の外側から指等により把持して被検査対象物Hの側へ押下可能に構成されている。
以上の構成により、超音波検査装置100は、検査時においては、送受波器12を把持し、回転輪26と当接端部24とを被検査対象物Hの表面EF3に当接させて、超音波検査装置100を被検査対象物H上に設置し、コイルバネ36の付勢力に逆らって送受波器12を被検査対象物Hに近接する方向に押下することで、プローブ15の先端面37を被検査対象物H表面EF3に当接し密着させることができる。更に、この状態で、スイッチ38をONにして超音波を被検査対象物Hに対して送信することができる。
一方、非検査時においては、プローブ15が送受波器支持本体13の内部に引退することで、他の部材との接触による損傷を防止できる。
【0028】
さて、上述した超音波検査装置100を用いて、その表面EF3に第1凹凸部EF2が設けられている被検査対象物Hの内部を検査する場合、被検査対象物Hの表面に沿って送受波器12のプローブ15を走査するときに、プローブ15が凹みEF2b又は突起EF2aに引っ掛かり、滑らかな走査ができなくなる可能性が高い。また、操作時に、送受波器12のプローブ15と被検査対象物Hの表面EF3との十分な接触状態を維持できなくなる。この場合、超音波は、音響インピーダンスが異なる空気と被検査対象物Hとを通過することになるため、検査結果にノイズが発生したり、被検査対象物Hの内部の欠損等を検出できなかったりする虞がある。
そこで、当該実施形態に係る超音波検査装置100は、被検査対象物Hの第1凹凸部EF2に対応した形状の第2凹凸部G1が形成される対向面G2を有する硬化物から成る検査治具Gを有し、当該検査治具Gの第2凹凸部G1が被検査対象物Hの第1凹凸部EF2に嵌合する嵌合状態において、超音波検査を実行する。
即ち、当該嵌合状態においては、被検査対象物Hの凹みEF2bと検査治具Gの突起G1bとが対向すると共に、被検査対象物Hの突起EF2aと検査治具Gの凹みG1aとが対向する状態で、互いが嵌合する状態となる。
当該実施形態において、検査治具Gは、その表面が被検査対象物HのEF管継手EFの外表面EF3に沿う板形状であり、EF管継手EFの外表面EF3の管軸周りの一部を覆う形状である。
【0029】
尚、当該実施形態における超音波検査装置100では、検査時において、被検査対象物Hの表面EF3と検査治具Gの対向面G2との間に、グリセリンJ(高粘度物質の一例)が塗布される。
ここで、グリセリンJ及び検査治具Gは、音響インピーダンスが、被検査対象物Hの音響インピーダンスと略同等となる材料を用いることが好ましく、検査治具Gは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂材料を好適に用いることができる。当該材料を用いる場合、検査治具Gは、予め被検査対象物Hの表面EF3の形状に対応した形状に加工される。
【0030】
当該実施形態に示す超音波検査装置100の如く、第1凹凸部EF2を有する被検査対象物Hの検査を、第2凹凸部G1を有する検査治具Gを用いて検査を行う場合、第1凹凸部EF2と第2凹凸部G1との間を、高粘度物質JとしてのグリセリンJを隙間なく適切に満たす必要がある。
そこで、当該実施形態に係る検査治具Gの第2凹凸部G1は、図3(B)に示すように、嵌合状態において、被検査対象物Hの表面EF3に沿う表面方向で、被検査対象物Hの第1凹凸部EF2と第2凹凸部G1との間に隙間Sを設ける形状とする。当該隙間S(図3(B)でL1)は、グリセリンJを介在させる意味で0mmを超え、且つグリセリンJの不足が発生することを抑制するべく0.4mm以下程度とすることが好ましい。以下で示す検査では、0.1mmに設定している。
また、検査治具Gの第2凹凸部G1は、図3(C)に示すように、嵌合状態において、被検査対象物Hの表面EF3に直交する垂直方向で、被検査対象物Hの第1凹凸部EF2の突起EF2aと第2凹凸部G1の凹みG1aとの間に隙間Sを設ける形状としても構わない。当該隙間S(図3(C)でL2)は、グリセリンJを介在させる意味で0mmを超え、且つグリセリンJの不足が発生することを抑制するべく0.4mm以下程度とすることが好ましい。以下で示す検査では、0.2mmに設定している。
尚、検査治具Gの第2凹凸部G1は、図3(B)に示す形状単独であっても良いし、図3(C)に示す形状単独であっても良いし、図3(B)に示す形状と図3(C)に示す形状の双方を有する形状であっても良い。
【0031】
尚、検査治具Gとしては、上述した材料以外に、例えば、熱可塑性エラストマー(熱可塑性樹脂の一例:具体的には、オレフィン系エラストマー(商品名:プラスチックねんど おゆまる)を用いることができる。当該材料を用いる場合、後述する検査治具装着工程の前に、加熱して軟化させた熱可塑性エラストマーを被検査対象物Hの表面EF3の第1凹凸部EF2へ押し付け所定時間(例えば、15秒以上60秒以下程度の時間)放置し冷却後に硬化させ第2凹凸部G1を対向面G2に対して形成することで検査治具Gを成型する。
従って、熱可塑性エラストマーを用いた検査治具Gは、被検査対象物Hの第1凹凸部EF2と検査治具Gの第2凹凸部G1との間に隙間は形成されない形状(図3(A)に示す形状)となる。
【0032】
次に、当該実施形態に係る検査治具Gを用いた検査方法を説明する。
まず、検査治具Gとして、ポリエチレン等の樹脂材料により、その第2凹凸部G1が、被検査対象物Hの第1凹凸部EF2に対応した形状に成型されているものを用いる場合について説明する。
この場合、まず、検査治具Gを、被検査対象物Hの第1凹凸部EF2に第2凹凸部G1を嵌合させる嵌合状態とする検査治具装着工程を実行する。ここで、検査治具装着工程では、被検査対象物Hの表面EF3と検査治具Gの対向面G2との間にグリセリンJを塗布するグリセリン塗布工程を含む。
【0033】
更に、当該検査治具装着工程の後に、検査治具Gの対向面G2を被検査対象物Hの表面EF3に対して押圧しながら表面EF3に沿う方向(第1凹凸部EF2の延びる方向)で摺動する押圧摺動工程を実行する。これにより、グリセリンJを第1凹凸部EF2と第2凹凸部G1との間になじませることができる。
更に、検査治具Gとして、図3(B)に示すように、嵌合状態において、被検査対象物Hの表面EF3に沿う表面方向で、被検査対象物Hの第1凹凸部EF2と第2凹凸部G1との間に隙間Sを設ける形状のものを採用している場合、検査治具Gの第2凹凸部G1の突起G1bの両端に、隙間Sが形成される状態で、検査治具Gを被検査対象物Hに対して、グリセリンJの粘性により一時固定される。
【0034】
当該検査治具装着工程及び押圧摺動工程の後に、検査治具Gの対向面G2の裏面である治具表面G3に対して、超音波の送信波を送信すると共に当該送信した送信波の反射波を受信する送受波器12を、被検査対象物Hの管軸方向に沿う捜査方向Kに沿って走査させる送受波器走査工程とを実行する。
【0035】
一方、検査治具Gとして、熱可塑性エラストマーから成るものを用いる場合、検査治具装着工程の前に、加熱して軟化させた熱可塑性エラストマーを被検査対象物Hの表面EF3の第1凹凸部EF2へ押し付け所定時間(例えば、10秒以上60秒以下程度の時間)放置し冷却後に硬化させ第2凹凸部G1を検査治具Gの対向面G2に対して形成することで検査治具Gを成型する対向面形成工程を実行する。その後の工程については、グリセリンJを使用しない点を除き、上述した工程と同一の工程を実行する。
【0036】
次に、これまで説明してきた超音波検査装置100及び超音波検査方法を用いた検査結果について、図3~8に基づいて説明する。尚、図4~8において、縦軸は、EF管継手EFの表面EF3からの深さを示しており、横軸は、捜査方向Kで操作開始位置からの距離を示しており、凡例は、色が濃いほど超音波の反射強度が高いことを示している。
当該検査では、ポリエチレン等の樹脂材料から成る検査治具Gを図3(A)、図3(B)、図3(C)の形状を用いた検査結果としての超音波検出結果を、図4、5、6に示す。尚、図4、5、6に示す検査結果を得るための検査では、上述の押圧摺動工程を実行している。
当該検査では、被検査対象物HとしてのEF管継手EFの内部に埋め込まれる導電線Dを検出対象としている。
図3(A)の如く、検査治具Gとして、第1凹凸部EF2と第2凹凸部G1との間に隙間を設けない形状を採用する場合、図4に示す検査結果において、強いノイズ(図4で矢印α)が現れることがわかる。
一方、図3(B)の如く、検査治具Gとして、被検査対象物Hの表面EF3に沿う方向において、第1凹凸部EF2と第2凹凸部G1との間に隙間Sを設ける形状を採用する場合、図5に示す検査結果において、ノイズがなく、導電線Dが良好に検出されていることがわかる。
更に、図3(C)の如く、検査治具Gとして、被検査対象物Hの表面EF3と直交する方向において、第1凹凸部EF2と第2凹凸部G1との間に隙間Sを設ける形状を採用する場合、図6に示す検査結果においても、ノイズが少なく、導電線Dが良好に検出されていることがわかる。
当該検査結果の如く、図3(B)、(C)の如く、隙間Sを設けた場合に、良好な検査結果が得られた理由としては、押圧摺動工程を実行しているときに、グリセリンJが第1凹凸部EF2と第2凹凸部G1との間において当該隙間Sを介して移動して、第1凹凸部EF2と第2凹凸部G1との間を空気がほぼ存在しない状態を実現できたためと考えられる。
【0037】
一方、図3(B)に示す形状の検査治具Gを用いて、上述の押圧摺動工程を実施することなく、グリセリンJを塗布した被検査対象物Hに対して検査治具Gを軽く載せた場合には、図7の検査結果に示す如く、導電線Dを適切に検出できていない箇所(図7で矢印α2)が存在し、良好な検査結果が得られていないことがわかる。
【0038】
更に、熱可塑性エラストマーから成る検査治具Gを用いた場合、図8に示すように、一部信号の強い箇所(図8で矢印α3)が生じているものの、ほぼ良好な検査結果が得られていることがわかる。
尚、当該熱可塑性エラストマーから成る検査治具Gを用いた場合では、グリセリンJを用いないため、上述の押圧摺動工程も実施していない。
【0039】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、被検査対象物Hは、都市ガス等の気体を通流する一対のガス管Lと、当該ガス管Lの接続部位Laを気密に溶着するためのEF管継手EFとから成るものとした。
しかしながら、被検査対象物Hは、これに限定されるものではなく、表面EF3に凹みEF2b及び突起EF2aの少なくとも一方を有する第1凹凸部EF2を備えるものであれば、どのような構造のものでも採用できる。
また、上記実施形態では、第1凹凸部EF2は、EF管継手EFの管周方向に沿って凹みEF2b及び突起EF2aが交互に複数形成される構成例を示したが、これに限られるものではなく、例えば、エンボス形状として凹みEF2b及び突起EF2aが形成されるものであっても構わない。
【0040】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の超音波検査方法、及び超音波検査装置は、表面に傷や模様等の凹凸がある被検査対象物であっても、その内部の欠損等の存在の有無を良好に検知できる超音波検査方法、及び超音波検査装置として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
12 :送受波器
100 :超音波検査装置
EF2 :第1凹凸部
EF2a :突起
EF2b :凹み
G :検査治具
G1 :第2凹凸部
G1a :凹み
G1b :突起
G2 :対向面
G3 :治具表面
H :被検査対象物
J :高粘度物質
S :隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8