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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049246
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】光ファイバケーブル
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20220322BHJP
【FI】
G02B6/44 366
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155353
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真之介
(72)【発明者】
【氏名】鯰江 彰
(72)【発明者】
【氏名】大里 健
【テーマコード(参考)】
2H001
【Fターム(参考)】
2H001BB04
2H001BB15
2H001DD06
2H001KK06
2H001KK08
2H001KK17
2H001PP01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リップコードが押さえ巻きの内側に入り込むことを抑制した光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】光ファイバケーブル1は、複数の光ファイバ21および光ファイバを包む押さえ巻きを有するコア20と、コアを収容するシース2と、シースに埋設されたリップコード3と、を備え、押さえ巻きは、閉じ部において閉じられて筒状になるとともに、径方向内側に向けて窪む凹部23を有し、周方向における凹部の位置は、リップコードの位置と一致するか、あるいは、閉じ部とリップコードとの間である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバおよび前記光ファイバを包む押さえ巻きを有するコアと、
前記コアを収容するシースと、
前記シースに埋設されたリップコードと、を備え、
前記押さえ巻きは、閉じ部において閉じられて筒状になるとともに、径方向内側に向けて窪む凹部、を有し、
周方向における前記凹部の位置は、前記リップコードの位置と一致するか、あるいは、前記閉じ部と前記リップコードとの間である、光ファイバケーブル。
【請求項2】
横断面視において、前記リップコードの直径より前記凹部の開口の幅が大きい、請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記凹部が、前記凹部から最も近い位置に配置された前記リップコードに向けて開口している、請求項1または2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記シースには、径方向内側に突出して前記凹部に入り込む凸部が形成され、
前記リップコードは前記凸部に埋設されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記押さえ巻きは少なくとも2つの前記凹部を有し、
前記リップコードから見て、周方向における両側に2つの前記凹部が位置している、請求項1から3のいずれか1項に記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
横断面視において、前記シースの内周面から前記コアの中心軸線までの距離をAとし、前記凹部の外側の表面のうち最も径方向内側の部位から前記中心軸線までの距離をXとするとき、R1=(1-X/A)×100[%]により定義される凹み率R1が、5~15[%]の範囲内である、請求項1から5のいずれか1項に記載の光ファイバケーブル。
【請求項7】
横断面視において、前記シースの内周面から前記コアの中心軸線までの距離をAとし、前記リップコードの直径をBとし、前記凹部の外側の表面のうち最も径方向内側の部位から前記コアの中心軸線までの距離をXとするとき、R2=(A-X)/B×100[%]により定義される比率R2が、50~300[%]の範囲内である、請求項1から6のいずれか1項に記載の光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シースと、光ファイバおよび押さえ巻きを有するコアと、シースを引き裂くためのリップコードと、を備えた光ファイバケーブルが開示されている。特許文献1の図面を参照すると、押さえ巻きは周方向において分断されており、当該分断された部位にリップコードが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-79878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるような構成では、リップコードが押さえ巻きの内側に入り込む場合がある。リップコードが押さえ巻きの内側に入り込むと、リップコードが光ファイバに接して光ファイバが傷付く場合がある。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、リップコードが押さえ巻きの内側に入り込むことを抑制した光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る光ファイバケーブルは、複数の光ファイバおよび前記光ファイバを包む押さえ巻きを有するコアと、前記コアを収容するシースと、前記シースに埋設されたリップコードと、を備え、前記押さえ巻きは、閉じ部において閉じられて筒状になるとともに、径方向内側に向けて窪む凹部を有し、周方向における前記凹部の位置は、前記リップコードの位置と一致するか、あるいは、前記閉じ部と前記リップコードとの間である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、リップコードが押さえ巻きの内側に入り込むことを抑制した光ファイバケーブルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る光ファイバケーブルの横断面図である。
図2】第1実施形態の第1変形例に係る光ファイバケーブルの横断面図である。
図3】第1実施形態の第2変形例に係る光ファイバケーブルの横断面図である。
図4】第1実施形態の第3変形例に係る光ファイバケーブルの横断面図である。
図5】第2実施形態に係る光ファイバケーブルの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本実施形態の光ファイバケーブルについて図面に基づいて説明する。
図1に示すように、光ファイバケーブル1は、コア20と、シース2と、一対のリップコード3と、一対の抗張力体4と、を備えている。
【0010】
(方向定義)
本実施形態では、コア20の中心軸線Oに沿う方向を長手方向という。長手方向に直交する横断面視において、中心軸線O回りに周回する方向を周方向といい、中心軸線Oに交差する方向を径方向という。横断面視において、リップコード3の中心と中心軸線Oとを結ぶ直線を、直線Lという。光ファイバケーブル1がリップコード3を複数有する場合、直線Lはリップコード3ごとに定義される。図1では一対のリップコード3に対して定義される各直線Lが共通の直線上に位置する。ただし、各直線Lは共通の直線上に位置しなくてもよい。
【0011】
コア20は、複数の光ファイバ21と、複数の光ファイバ21を包む押さえ巻き22と、を有している。光ファイバ21としては、光ファイバ心線、光ファイバ素線、光ファイバテープ心線などを用いることができる。光ファイバテープ心線の一種として、複数の光ファイバ21は、いわゆる間欠固定テープ心線を構成していてもよい。間欠固定テープ心線では、複数の光ファイバ21は、その延在方向に対して直交する方向に引っ張ると、網目状(蜘蛛の巣状)に広がるように互いに接着されている。詳しくは、ある一つの光ファイバ21が、その両隣の光ファイバ21に対して長手方向で異なる位置においてそれぞれ接着されており、かつ、隣接する光ファイバ21同士は、長手方向で一定の間隔をあけて互いに接着されている。
なお、コア20に含まれる光ファイバ21の態様は間欠固定テープ心線に限られず、適宜変更してもよい。
【0012】
押さえ巻き22としては、不織布やポリエステルテープなどを用いることができる。また、押さえ巻き22として、不織布やポリエステルテープなどに吸水性を付与した、吸水テープを用いてもよい。この場合、光ファイバケーブル1の防水性能を高めることができる。
【0013】
押さえ巻き22は、閉じ部22aにおいて閉じられることで、筒状となっている。この筒状の押さえ巻き22の内側に、複数の光ファイバ21が位置している。本実施形態の閉じ部22aは、押さえ巻き22の周方向における両端部が重ねられた領域(重なり領域)である。押さえ巻き22のうち、閉じ部22aを除く領域を、非重なり領域22bという。なお、閉じ部22aにおいて、押さえ巻き22の両端部は、周方向で対向するように突き合わされていてもよい。つまり、押さえ巻き22は重なり領域を有さなくてもよい。
【0014】
一対のリップコード3は、シース2に埋設されている。一対のリップコード3は、径方向においてコア20を間に挟むように配置されている。周方向におけるリップコード3の位置は、押さえ巻き22の閉じ部22aの位置からずれている。リップコード3は、長手方向に沿って延びている。シース2に埋設されるリップコードの数は、1または3以上であってもよい。リップコード3は、シース2を引き裂くために用いられる。リップコード3は、シース2に完全に埋没していてもよいし、部分的にシース2の内周面から露出していてもよい。リップコード3としては、繊維(例えばポリエステル繊維)で構成された糸を採用できる。また、リップコード3として、ポリプロピレン(PP)やナイロン製の円柱状ロッドなどを用いてもよい。
【0015】
シース2は、コア20を収容している。シース2の材質としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンプロピレン共重合体(EP)などのポリオレフィン(PO)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)などを用いることができる。また、上記の樹脂の混和物(アロイ、ミクスチャー)を用いてもよい。
【0016】
シース2の外周面には、リップコード3の位置を示すための印部が設けられていてもよい。印部は、シース2の外周面から径方向外側に突出する突起であってもよいし、塗料によるマーキング等であってもよい。また、シース2には印部が無くてもよい。印部が無くても、例えば抗張力体4が配置されていることで生じる光ファイバケーブル1の曲げの方向性から、リップコード3の位置を把握することが可能である。
【0017】
一対の抗張力体4は、シース2に埋設されている。一対の抗張力体4は、径方向においてコア20を間に挟むように配置されている。抗張力体4同士が向かい合う方向と、リップコード3同士が向かい合う方向と、は互いに直交している。各抗張力体4は、長手方向に沿って直線状に延びている。シース2に埋設される抗張力体4の数は、1または3以上であってもよい。あるいは、光ファイバケーブル1は抗張力体4を備えていなくてもよい。抗張力体4の材質としては、例えば金属線(鋼線など)およびFRPなどを用いることができる。抗張力体4がFRPの場合、FRPに含まれる繊維としては、例えばアラミド繊維、ガラス繊維等を採用できる。
【0018】
光ファイバケーブル1からコア20を部分的に(またはコア20の全体を)取り出す場合には、シース2をシェービングまたは切開することで、長手方向における一部分においてリップコード3をシース2から取り出す。次いで、リップコード3を引っ張ることで、シース2を引き裂く。
【0019】
ここで、光ファイバケーブル1に曲げ、側圧、振動等が作用すると、リップコード3がシース2から離れるように径方向内側に移動する場合がある。さらに、シース2の内部において、リップコード3が周方向に移動して閉じ部22aを通過し、押さえ巻き22の内側に進入する場合がある。リップコード3が押さえ巻き22の内側に進入すると、シース2をシェービングまたは切開しても使用者がリップコード3を見つけることができず、作業が困難になる。また、リップコード3が光ファイバ21を傷つける可能性もある。
【0020】
そこで、本実施形態の押さえ巻き22は、径方向内側に向けて窪む一対の凹部23を有する。凹部23の数は、1または3以上でもよい。凹部23はリップコード3に向けて開口している。横断面視において、リップコード3の直径より凹部23の開口の幅が大きい。凹部23の内面およびシース2の内周面により、空間Sが形成されている。図1では押さえ巻き22が2つの凹部23を有するため、2つの空間Sが形成されている。ただし、空間Sの数は1または3以上でもよい。
【0021】
凹部23は、押さえ巻き22の非重なり領域22bに位置している。非重なり領域22bのうち、凹部23を除く部分は、シース2の内周面に沿って周方向に延びている。凹部23を除く非重なり領域22bは、シース2の内周面に接していてもよい。あるいは、凹部23を除く非重なり領域22bとシース2との間に、隙間が設けられてもよい。
【0022】
図1において、凹部23は、直線L上に位置している。言い換えると、周方向における凹部23の位置は、リップコード3の位置と一致している。これにより、リップコード3がシース2から径方向内側に離れるように移動したとき、リップコード3は凹部23の内側に進入する。凹部23の内側にリップコード3をトラップすることで、リップコード3が周方向に移動することを規制できる。したがって、リップコード3が閉じ部22aを通過して押さえ巻き22の内側に入り込むことを抑制できる。
【0023】
(第1変形例)
本実施形態の光ファイバケーブル1において、凹部23は、必ずしも直線L上に位置しなくてもよい。すなわち、周方向において凹部23はリップコード3と異なる位置に配置されてもよい。図2に示すように、周方向における凹部23の位置が、閉じ部22aとリップコード3との間であっても、閉じ部22aに向けて移動しようとするリップコード3を、凹部23の内側にトラップすることができる。
【0024】
(第2変形例)
本実施形態の光ファイバケーブル1において、図3に示すように、凹部23とリップコード3とが周方向において異なる位置に配置されるとともに、凹部23が、その凹部23から最も近い位置に配置されたリップコード3に向けて開口していてもよい。このように、凹部23がリップコード3に向けて開口していることで、凹部23によってリップコード3をトラップしやすくなる。
【0025】
(第3変形例)
本実施形態の光ファイバケーブル1において、図4に示すように、1つのリップコード3に対して、2つの凹部23が配置されていてもよい。例えばリップコード3が2つの場合、凹部23の数は合計で4つである。リップコード3から見て、周方向における両側に2つの凹部23が位置している。このような構成によれば、リップコード3が周方向におけるどちら側に移動するかに関わらず、凹部23によってリップコード3をトラップすることができる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態の光ファイバケーブル1は、複数の光ファイバ21および光ファイバ21を包む押さえ巻き22を有するコア20と、コア20を収容するシース2と、シース2に埋設されたリップコード3と、を備える。押さえ巻き22は、閉じ部22aにおいて閉じられて筒状になるとともに、径方向内側に向けて窪む凹部23を有する。そして、周方向における凹部23の位置は、リップコード3の位置と一致するか、あるいは、閉じ部22aとリップコード3との間である。このような構成により、光ファイバケーブル1に曲げ、側圧、振動等が作用し、リップコード3がシース2から離れるように径方向内側に移動したとしても、リップコード3の周方向における移動を規制することができる。そして、リップコード3が閉じ部22aを通過して押さえ巻き22の内側に入り込むことを抑制できる。したがって、リップコード3が光ファイバ21を傷つけたり、リップコード3でシース2を引き裂く作業が困難になったりすることを回避できる。
【0027】
また、横断面視において、リップコード3の直径より凹部23の開口の幅が大きいことで、リップコード3を凹部23の内側により確実にトラップすることが可能となる。ただし、リップコード3の直径より凹部23の開口の幅が小さくてもよい。この場合も、凹部23の開口にリップコード3が引っかかることで、リップコード3の周方向における移動を抑制できる。あるいは、リップコード3が潰されるように変形したり、凹部23の開口が広がるように押さえ巻き22が変形したりすることで、リップコード3が凹部23の内側に入り込むことも可能である。
【0028】
また、凹部23は、その凹部23から最も近い位置に配置されたリップコード3に向けて開口していてもよい。これにより、凹部23によってリップコード3をより確実にトラップすることができる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0030】
図3に示すように、本実施形態におけるシース2には、径方向内側に突出して凹部23に入り込んだ凸部2aが形成され、リップコード3は凸部2aに埋設されている。図3のように凸部2aは凹部23の内面に接していてもよい。あるいは、凸部2aと凹部23との間に隙間(すなわち、先述の空間S)が形成されていてもよい。
本実施形態によれば、リップコード3の周方向における移動をより確実に抑制できる。
【0031】
以下、具体的な実施例を用いて、上記第1実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
表1に示すように、比較例1、および実施例1~4のサンプルを用意した。
【0032】
【表1】
【0033】
各サンプルの光ファイバ21の数は、864本である。実施例1~4の構造は図1に示す通りであるが、凹部23の大きさが互いに異なっている。より詳しくは、以下の数式(1)により定義される凹み率R1が異なる。
R1=(1-X/A)×100[%] …(1)
数式(1)における各パラメータの定義は以下の通りである。
A:横断面視において、シース2の内周面から中心軸線Oまでの距離
X:横断面視において、凹部23の外側の表面のうち最も径方向内側の部位から、中心軸線Oまでの距離
【0034】
比較例1については、押さえ巻き22に凹部23を形成しなかった。
各サンプルについて、ICEA640-7.31に準拠する側圧試験およびICEA640-7.21に準拠する曲げ試験を行った。以下、この側圧試験および曲げ試験を合わせて「機械試験」という。機械試験を行った後、各サンプルのシース2をシェービングしてリップコード3を部分的に露出させ、リップコード3を用いてシース2を引き裂き、コア20を取り出した。この作業のしやすさを、表1の「コアの取り出し作業性」の欄に記載した。
【0035】
比較例1については、機械試験を行った後、一定確率でリップコード3がシース2の内部において周方向に移動した。このため、シース2をシェービングしてもリップコード3を見つけることができず、コア20を取り出しが難しい場合があった。
【0036】
これに対して、実施例1~4については、機械試験後にリップコード3がシース2の内側に脱落する場合があったが、リップコード3の周方向における移動が凹部23によって規制された。したがって、シース2をシェービングするとリップコード3が容易に見つかり、コア20の取り出し作業性が良好であった。実施例1~4の凹み率R1は5~20%の範囲内であったが、凹み率R1が20%より大きい場合も、同様の結果が得られると考えられる。したがって、凹み率R1は5%以上であれば、コア20の取り出し作業性を良好にすることができる。
【0037】
なお、凹み率R1が20%である実施例4については、機械試験における伝送損失の測定結果が基準値を超える場合があった。これは、凹部23が大きいことで光ファイバ21が圧迫され、光ファイバ21に側圧が作用して伝送損失が増大したためであると考えられる。
以上を総合すると、凹み率R1を5~15%の範囲内とすることで、コア20の取り出し作業性を確保しつつ、光ファイバ21の伝送損失が増大することを抑制できる。
【0038】
次に、リップコード3の直径および凹部23の深さの好ましい範囲について説明する。具体的には、以下の数式(2)により定義される比率R2の好ましい数値範囲について検討した。
R2=(A-X)/B×100[%] …(2)
数式(2)において、Bはリップコード3の直径であり、AおよびXの定義は先述の通りである。
【0039】
【表2】
【0040】
表2における比較例1の条件は、表1の比較例1と同じである。表2における実施例5~8は、A、B、Xの各寸法を異ならせることで、比率R2を異ならせた。実施例5~8について、表1と同様の方法によって「コアの取り出し作業性」を確認した。
表2に示すように、比率R2が50[%]以上の場合に、コアの取り出し作業性が良好(OK)となった。比率R2が50[%]の場合、凹部23の深さ(A-X)がリップコード3の直径(B)の半分であることを意味する。少なくとも比率R2が50[%]以上となるように寸法A、B、Xを設定することで、リップコード3を凹部23によって効果的にトラップすることが可能となった。
【0041】
表2に示すように、比率R2が350[%]の実施例8についても、コアの取り出し作業性は良好であった。ただし、実施例8については、機械試験における伝送損失の測定結果が基準値を超える場合があった。これは、凹部23が大きいことで光ファイバ21が圧迫され、光ファイバ21に側圧が作用して伝送損失が増大したためであると考えられる。
以上を総合すると、比率R2を50~300%の範囲内とすることで、コア20の取り出し作業性を確保しつつ、光ファイバ21の伝送損失が増大することを抑制できることが確認された。
なお、比率R2が50%未満の場合も、凹部23が設けられていれば、リップコード3の移動を凹部23によって抑制するという効果は生じると考えられる。
【0042】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0043】
例えば、光ファイバ21および押さえ巻き22以外の部材がシース2の内部に収容されていてもよい。具体的には、クッション性や吸水性などを高めるための介在物を、光ファイバ21の周囲に配置してもよい。介在物以外の部材をシース2内に収容してもよい。
【0044】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
例えば、第1実施形態の第1~第3変形例、または、第2実施形態の光ファイバケーブル1において、凹み率R1を所定の範囲内としてもよい。
また、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせた光ファイバケーブルを採用してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…光ファイバケーブル 2…シース 2a…凸部 3…リップコード 20…コア 21…光ファイバ 22…押さえ巻き 22a…閉じ部 23…凹部
図1
図2
図3
図4
図5