(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049252
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】マスカーテープ用養生フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/34 20060101AFI20220322BHJP
【FI】
B32B27/34
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155360
(22)【出願日】2020-09-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】591200575
【氏名又は名称】四国化工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金山 和史
(72)【発明者】
【氏名】久保 信幸
(72)【発明者】
【氏名】井本 奨太
(72)【発明者】
【氏名】三谷 弘志
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK03B
4F100AK04B
4F100AK42B
4F100AK46A
4F100AK46C
4F100AK48B
4F100AK63B
4F100AK69B
4F100AL07B
4F100BA03
4F100BA06
4F100EH20
4F100JA06A
4F100JA06C
4F100JA13A
4F100JA13C
4F100JK03
4F100JL11B
4F100JL16B
4F100YY00
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】新規な機能として幅広の養生フィルムが易引裂性を有し、しかも、焼付塗装を行う用途にも使用でき且つコスト的に安価なマスカーテープ用養生フィルムを提供する。
【解決手段】NA層/B層/C層を順次に積層してなり、A層及びC層はポリアミド系樹脂からなり、B層は5~50重量の接着性樹脂を含有していてもよい多層フィルムの再生品からなり、当該多層フィルムの再生品は、ポリオレフィン樹脂と、NY、PET、PBT、EVOHの群から選択される1種以上のポリオレフィン樹脂以外の異種材料からなり,異種材料の割合が10~50重量%であるマスカーテープ用養生フィルム
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A層/B層/C層を順次に積層してなり、A層及びC層はポリアミド系樹脂からなり、B層は5~50重量の接着性樹脂を含有していてもよい多層フィルムの再生品からなり、当該多層フィルムの再生品は、ポリオレフィン樹脂と、NY、PET、PBT、EVOHの群から選択される1種以上のポリオレフィン樹脂以外の異種材料からなり,異種材料の割合が10~50重量%であることを特徴とするマスカーテープ用養生フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマスカーテープ用養生フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
マスカーテープは、基材とその上に形成された粘着層とを備える粘着テープと、前記粘着テープの側縁に沿った貼付領域において前記粘着剤層に貼り付けられる幅広の折畳み養生フィルムとからなる。
【0003】
近時、養生用のマスカーテープの用途が拡大され例えば車両ボディーにツートンカラーの焼付塗装を行う際にも使用されている。焼付塗装は、塗膜を硬化させ丈夫な表面を形成する塗装であり、塗装後、120~200℃の温度で30分以上加熱し、塗料を硬化させる。
【0004】
そこで、上記の用途の拡大に伴い、幅広の養生フィルムが易引裂性を有し、例えば、幅広の養生フィルムと粘着テープとの境が容易に引き裂かれ、使用済のマスカーテープの片づけを効率的に行うことが出来るマスカーテープが望まれる。
【0005】
本発明者らの1人は、先に、「密度が0.910~0.960g/cm3のポリエチレン(a)からなる外層(A)、多層フィルムの再生品からなる中間層(B)、密度が0.880~0.960g/cm3のポリエチレン(c)からなる内層(C)が順に積層されてなり、前記の多層フィルムの再生品は、ポリオレフィン樹脂と、NY、PET、PBT、EVOHの群から選択される1種以上のポリオレフィン樹脂以外の異種材料からなり、異種材料の割合が10重量%以上50重量%未満であり、ポリエチレン(c)は、ポリエチレン(a)と異なるポリエチレンであり、中間層(B)の層比率が20~80重量%であることを特徴とするヒートシール用易引裂性多層フィルム」の発明を提案した(特許文献1)。
【0006】
フィルムの易引裂性は、相互に混ざり合い難い樹脂を一定量配合したことにより、脆くなりMD(流れ方向)に裂け易くなるという現象を利用したものであり、前記の特許発明の引裂性多層フィルムは、中間層(B)を構成するコスト的に安価な再生品により好適な引裂性が得られるものの、外層と内層にポリエチレンを使用しているため、そのままでは、耐熱性の要求される焼付塗装を行う用途に利用することは出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、新規な機能として幅広の養生フィルムが易引裂性を有し、しかも、焼付塗装を行う用途にも使用でき且つコスト的に安価なマスカーテープ用養生フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、前記特許発明の外層と内層とを特定の耐熱性樹脂に変更するならば、中間層(B)を構成する再生品による好適な引裂性を損なわず、易引裂性を備えたマスカーテープ用養生フィルムとなり得ることを見出して本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、A層/B層/C層を順次に積層してなり、A層及びC層はポリアミド系樹脂からなり、B層は5~50重量の接着性樹脂を含有していてもよい多層フィルムの再生品からなり、当該多層フィルムの再生品は、ポリオレフィン樹脂と、NY、PET、PBT、EVOHの群から選択される1種以上のポリオレフィン樹脂以外の異種材料からなり、異種材料の割合が10~50重量%であることを特徴とするマスカーテープ用養生フィルムに存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば前記の課題が解決される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
A層及びC層はポリアミド系樹脂からなり、その具体例としては、6ナイロン、6-6ナイロン、6-10ナイロン、6-12ナイロン、11ナイロン、12ナイロン等が挙げられる。
【0014】
B層は5~50重量の接着性樹脂を含有していてもよい多層フィルムの再生品からなり、当該多層フィルムの再生品は、ポリオレフィン樹脂と、NY、PET、PBT、EVOHの群から選択される1種以上のポリオレフィン樹脂以外の異種材料からなり、異種材料の割合が10~50重量%である。異種材料の割合が上記の範囲であることにより好適な引裂性が得られる。
【0015】
なお、前記の接着性樹脂としては、特に制限されないが、通常は変性ポリオレフィン樹脂(APO)が使用される。APOは、エチレン成分および/またはプロピレン成分を主たる構成成分としたポリオレフィン樹脂にマレイン酸、フマル酸等のα,β不飽和カルボン酸またはその誘導体を共重合および/またはグラフト重合させて製造される。
【0016】
多層フィルムは、高機能性フィルムとして、各種の用途、例えば、食品、医薬品、工業薬品、工業部品、電子部品、飲料等の包装袋や容器等として好適に使用されている。そして、用途によって異なるものの、NY又はPET又PBT又はEVOHとポリオレフィン樹脂とを含む。
【0017】
多層フィルムの再生品としては、特に、多層フィルムの製膜化工程で生じる端材ロスが好適である。一般的に、端材ロスは脆くなるため、その再使用においては、いかに細かく分散させて脆い強度を改善するかという試みがなされているが、再使用で使用される相溶化剤の価格も高いため、現状では、産業廃棄物か何かの増量剤として使用されているに過ぎない。
【0018】
本発明は、多層フィルムの製膜化工程で生じる端材ロスの前記の脆さを巧みに利用して、引裂性多層フィルムの原料として使用することにしたものである。要するに、本発明は、脆さのため、使い物にならず、廃棄されていた多層フィルムの端材ロスについて、相溶化剤も利用せずに、新たな機能フィルムにすることに成功したものであり、多層フィルムの端材ロスの新たな用途を提供するものと言える。
【0019】
多層フィルムの再生品は、上記の多層フィルムの廃棄物を原料として公知の方法で行うことが出来る、例えば、粉砕機で粉砕し、必要に応じ、再生押出機によってリペレット化する。
【0020】
前記のA層/B層/C層には、本発明の目的を損なわない範囲で、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤等の成分を添加することができる。特に、フィルム成形時の加工適性を付与するため、A層及びC層には、滑剤やアンチブロッキング剤を適宜添加することが好ましい。また、各層間には必用に応じて接着性樹脂層を配置することも出来る。接着性樹脂層には前記と同様にAPOが使用される。
【0021】
易引裂性フィルム全体の厚さは、通常10~100μmであり、B層の層比率(全体の厚さに対する割合)は通常10~80%である。
【0022】
本発明のマスカーテープ用養生フィルムは、基材とその上に形成された粘着層とを備える粘着テープと、前記粘着テープの側縁に沿った貼付領域において前記粘着剤層に貼り付けられマスカーテープとなる。粘着剤層に貼り付けは養生フィルムの易引裂性方向を考慮して行われる。例えば、折畳んで粘着テープの側縁に沿って貼り付けられる養生フィルムの易引裂性方向が粘着テープの側縁と平行した方向の場合、幅広の養生フィルムと粘着テープとの境を容易に引き裂くことが出来る。また、同一方向に幅広の養生フィルムを適宜に引き裂くことが出来る。
【実施例0023】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用した原料は以下の通りである。
【0024】
(1)A層及びC層のポリアミド系樹脂:
6ナイロン(密度1.13、粘度数245cm3/g)
【0025】
(2)B層の多層フィルムの再生品:
再生品A:LLDPE(27%)/接着性PE(7%)/NY(40%)/接着性PE(8%)/LLDPE(25%)の端材ロスのリペレット
再生品B:PBT(5%)/接着性PE(7%)/NY(12%)/EVOH(7%)/NY(12%)/接着性PE(7%)/LLDPE(30μ)の端材ロスのリペレット
【0026】
(3)B層に使用した接着性樹脂:
マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン
【0027】
使用した製膜機(成形装置)及び成形条件は以下のとおりである。
【0028】
(3種3層インフレーション成形機)
装置:インフレーション成形装置(住友重機械モダン(株)製)
押出機スクリュー径:50mmφ×2、65mmφ×1
ダイ径:400mmφ
(成形条件)
押出量:70kg/hr
ダイリップギャップ:2.5mm
引取速度:24m/分
ブローアップ比:1.5
成形樹脂温度:245℃
【0029】
実施例1:
B層に接着性樹脂を50重量%配合した再生品Aを使用し、A層及びC層の各割合が10%、B層の割合が80%の層構成に従ってインフレーションフィルム(全体厚さ25μm)を成形した。得られたフィルムについて、フィルムの流れ方向(MD)に対するその垂直方向(TD)への易引裂性を手感覚により評価した。引き裂いたときにフィルム伸びが出ずに抵抗なく切れて全く問題なかった。
【0030】
実施例2:
B層に接着性樹脂を50重量%配合した再生品Bを使用し、A層及びC層の各割合が12.5%、B層の割合が75.0%の層構成に従ってインフレーションフィルム(全体厚さ25μm)を成形した。得られたフィルムについて、フィルムの流れ方向(MD)に対するその垂直方向(TD)への易引裂性を手感覚により評価した。引き裂いたときにフィルム伸びが出ずに抵抗なく切れて全く問題なかった。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用した原料は以下の通りであり、( )内の数値の「%」は重量%を意味する。
A層/B層/C層を順次に積層してなり、A層及びC層はポリアミド系樹脂からなり、B層は5~50重量%の接着性樹脂を含有していてもよい多層フィルムの再生品からなり、当該多層フィルムの再生品は、ポリオレフィン樹脂と、NY、PET、PBT、EVOHの群から選択される1種以上のポリオレフィン樹脂以外の異種材料からなり,異種材料の割合が10~50重量%である、インフレーションフィルムにて構成され、フィルムの流れ方向(MD)に引き裂いて使用することを特徴とするマスカーテープ用養生フィルム。