(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049256
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】手術ナビゲーションシステム、手術ナビゲーション機能を備えた医用撮像システム、および、手術ナビゲーション用の医用画像の位置合わせ方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/20 20160101AFI20220322BHJP
【FI】
A61B34/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155365
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 琢
(72)【発明者】
【氏名】阿部 信隆
(72)【発明者】
【氏名】島本 貴文
(72)【発明者】
【氏名】秋丸 英久
(57)【要約】
【課題】毛髪のある頭部の領域であっても、毛髪の影響を抑制して、精度よくサーフェスレジストレーションを行う。
【解決手段】撮像装置から患者の医用画像を受け取る。操作者が患者の表面をなぞっている最中のポインタの位置を位置検出センサから連続的に受け取って記憶部に格納することにより、実空間上の患者の表面の複数の点の位置情報を取得する。複数の点の位置により表される患者の表面形状と、医用画像内の患者像の表面形状とが一致するように、実空間の患者位置と医用画像の位置とを対応づける位置合わせを行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の装置から患者について撮影された医用画像を受け取って格納する記憶部と、
操作者が実空間で移動させるポインタの先端の位置情報を検出する位置検出センサと、
前記実空間の患者位置と前記医用画像内の患者像の位置とを対応づける位置合わせ部とを有し、
前記位置合わせ部は、前記操作者が前記患者の表面をなぞっている最中のポインタの位置を前記位置検出センサから連続的に受け取って前記記憶部に格納することにより、実空間上の患者の表面の複数の点の位置情報を取得し、前記複数の点の位置により表される前記患者の表面形状と、前記医用画像内の患者像の表面形状とが一致するように、前記実空間の患者位置と前記医用画像の位置とを対応づける位置合わせを行うことを特徴とする手術ナビゲーションシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の手術ナビゲーションシステムであって、前記位置合わせ部は、前記位置検出センサから受け取った前記ポインタの位置から予め定めた距離以内にすでに取得した点が前記記憶部内に存在するかどうか判定し、存在しない場合、前記ポインタの位置を次の点の位置として前記記憶部に格納する動作を、所定数の点の位置情報が前記記憶部に格納されるまで繰り返すことを特徴とする手術ナビゲーションシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の手術ナビゲーションシステムであって、前記位置検出センサは、前記ポインタの先端の位置のみならず、前記ポインタの向きを検出可能であり、
前記位置合わせ部は、前記位置検出センサから受け取った前記ポインタの先端の位置および向きの少なくとも一方に基づいて、前記ポインタが予め定めたジェスチャを示しているかどうかを判定し、前記ポインタが所定の開始ジェスチャを示している場合、前記実空間上の患者の表面の複数の点の位置情報の取得を開始することを特徴とする手術ナビゲーションシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の手術ナビゲーションシステムであって、前記位置合わせ部は、前記ポインタが所定の一時停止ジェスチャを示している場合、前記複数の点の位置情報の取得を一時停止することを特徴とする手術ナビゲーションシステム。
【請求項5】
請求項3に記載の手術ナビゲーションシステムであって、前記位置合わせ部は、前記複数の点の位置情報を取得した後、前記ポインタが所定のやり直しジェスチャを示している場合、前記記憶部内の前記複数の点の位置情報を消去し、再度前記複数の位置情報を取得することを特徴とする手術ナビゲーションシステム。
【請求項6】
請求項2に記載の手術ナビゲーションシステムであって、前記位置合わせ部は、前記所定数の点の位置情報が前記記憶部に格納されるまで前記ポインタの位置を前記位置検出センサから連続的に受け取る処理を、予め定めた回数繰り返すことを特徴とする手術ナビゲーションシステム。
【請求項7】
請求項1に記載の手術ナビゲーションシステムであって、前記位置合わせ部は、前記患者の表面形状を取得すべき領域を表示装置に表示し、前記ポインタによって前記領域内の前記患者の表面をなぞるように操作者に促す画面を表示装置に表示させることを特徴とする手術ナビゲーションシステム。
【請求項8】
患者の医用画像を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置から前記医用画像を受け取って格納する記憶部と、
操作者が実空間で移動させるポインタの先端の位置情報を検出する位置検出センサと、
前記実空間の患者位置と前記医用画像内の患者像の位置とを対応づける位置合わせ部とを有し、
前記位置合わせ部は、前記操作者が前記患者の表面をなぞっている最中のポインタの位置を前記位置検出センサから連続的に受け取って前記記憶部に格納することにより、実空間上の患者の表面の複数の点の位置情報を取得し、前記複数の点の位置により表される前記患者の表面形状と、前記医用画像内の患者像の表面形状とが一致するように前記実空間の患者位置と前記医用画像の位置とを対応づける位置合わせを行うことを特徴とする手術ナビゲーション機能を備えた医用撮像システム。
【請求項9】
撮像装置から患者の医用画像を受け取るステップと、
操作者が前記患者の表面をなぞっている最中のポインタの位置を位置検出センサから連続的に受け取って記憶部に格納することにより、実空間上の患者の表面の複数の点の位置情報を取得するステップと、
前記複数の点の位置により表される前記患者の表面形状と、前記医用画像内の患者像の表面形状とが一致するように、前記実空間の患者位置と前記医用画像の位置とを対応づける位置合わせを行うステップと
を含むことを特徴とする手術ナビゲーション用の医用画像の位置合わせ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、実空間上の患者位置と医用画像を位置合わせする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
手術ナビゲーションシステムは、手術時に術者が患者の表面をポインタ等により指し示した位置を検出し、その位置を患者の直交する3つの断面画像等に重畳させて表示することにより、手術の操作をナビゲーションするシステムである。このシステムは、脳神経外科手術などの高精度外科手術に適用されている。患者の断層画像は、予めX線CT装置やMRI装置などの3次元撮像装置によって撮像した3次元データであるボリュームデータから生成される。
【0003】
手術ナビゲーションを行うためには、患者の配置された実空間の座標系と、患者像が含まれる医用画像の座標系との対応づけ(レジストレーション)を行う必要である。
【0004】
レジストレーションの方法としては、例えば、特許文献1に記載されているように、患者に複数の医用マーカを固定して撮像装置によって撮像を行うことにより、ボリュームデータ中に医用マーカの像を写し込んでおき、実空間の患者において、同じ医用マーカを操作者がポインタで指し示すことにより、医用マーカの位置を検出し、ボリュームデータ中の医用マーカの位置に対応づける方法がある。
【0005】
しかし、医用マーカを用いたレジストレーションは、医用マーカを患者に取り付けてボリュームデータを撮像する必要があるため、操作者の作業負担が増える。また、患者にとっても、X線CT装置による撮像の場合は、医用マーカを取り付けていることが患者の被ばく量にも影響する。また、ボリュームデータの撮像を実施してから手術するまで、医用マーカを患者に貼り付けたままにしなければならならず、患者に負担がかかってしまう。
【0006】
そこで、特許文献1には、医用マーカを使用しない方法として、レーザを患者の体表で走査するように照射し、反射光を検出することにより患者の表面形状を計測し、予め撮像したボリュームデータから作成した3D画像の患者の表面形状とパターンマッチング等により対応づける方法(サーフェスレジストレーション)が開示されている。
【0007】
また、非特許文献1には、点のレジストレーション(ポイントレジストレーション)と、面のレジストレーション(サーフェスレジストレーション)とを組み合わせて行う方法が開示されている。この方法は、まず、患者に貼り付けたマーカ、または、解剖学的なランドマークを用いて、実空間上のマーカや解剖学的なランドマークの位置と、医用画像上のマーカや解剖学的なランドマークの位置との対応付けを行う(ポイントレジストレーション)。その後で、実空間の患者の表面の数十点の位置から表面形状を求め、医用画像の患者像の表面形状に対して、面のレジストレーションを行う。これにより、実空間上の患者の表面形状を医用画像の患者像の形状に精度よく位置合わせする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kenshi KANEKO, et al.,” Application of Surgical Simulation and Navigation System with 3D Imaging”, MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY Vol.18 No.2 March 2000, p121-126.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
実空間の患者の位置や表面形状を検出する方法としては、上述したように、患者に取り付けた医用マーカを操作者がポインタで指し示す方法と、レーザを患者の体表でスキャンして反射光を検出する方法があるが、いずれも、手術部位が頭部である場合には、毛髪が医用マーカの取り付けや、レーザの頭皮への到達の妨げになり、レジストレーションの精度が悪くなってしまうことがある。
【0011】
本発明の目的は、毛髪のある頭部の領域であっても、毛髪の影響を抑制して、精度よくサーフェスレジストレーションを行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の手術ナビゲーションシステムは、外部の装置から患者について撮影された医用画像を受け取って格納する記憶部と、操作者が実空間で移動させるポインタの先端の位置情報を検出する位置検出センサと、実空間の患者位置と医用画像内の患者像の位置とを対応づける位置合わせ部とを有する。位置合わせ部は、操作者が患者の表面をなぞっている最中のポインタの位置を位置検出センサから連続的に受け取って記憶部に格納することにより、実空間上の患者の表面の複数の点の位置情報を取得し、複数の点の位置により表される患者の表面形状と、医用画像内の患者像の表面形状とが一致するように、実空間の患者位置と医用画像の位置とを対応づける位置合わせを行う。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、毛髪のある頭部の領域であっても、毛髪の影響を抑制して、精度よくサーフェスレジストレーションを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態1の手術ナビゲーションシステムの構成を示すブロック図
【
図2】実施形態1の実空間上の患者に設定されている領域311と、ポインタ15でなぞりながら複数の点321を取得することを説明する図
【
図3】実施形態1の手術ナビゲーションシステムの位置合わせ部の処理を示すフローチャート図
【
図4】実施形態1の位置合わせ部21が、操作者に位置取得が行われることを示すための画面例
【
図5】(a)~(c)実施形態1等で用いるポインタ15によるジェスチャを説明する図
【
図6】実施形態2の手術ナビゲーションシステムの位置合わせ部の処理を示すフローチャート図
【
図7】実施形態3の手術ナビゲーションシステムの位置合わせ部の処理を示すフローチャート図
【
図8】実施形態4の手術ナビゲーションシステムの位置合わせ部の処理を示すフローチャート図
【
図9】実施形態5の手術ナビゲーションシステムの位置合わせ部の処理を示すフローチャート図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に従って本発明に係る手術ナビゲーションシステムの好ましい実施形態について説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
【0016】
図1は手術ナビゲーションシステム1の構成を示す図である。手術ナビゲーション装置1は、CPU(Central Processing Unit)2、主メモリ3、記憶装置4、表示メモリ5、表示装置6、マウス8に接続されたコントローラ7、ポインタ15の位置を検出する位置検出センサ9、ネットワークアダプタ10が、システムバス11によって信号送受可能に接続されて構成される。
【0017】
手術ナビゲーションシステム1は、ネットワーク12を介して3次元撮像装置13や医用画像データベース14と信号送受可能に接続される。ここで、「信号送受可能に」とは、電気的、光学的に有線、無線を問わずに、相互にあるいは一方から他方へ信号送受可能な状態を示す。
【0018】
CPU2は、各構成要素の動作を制御するとともに、所定の演算を行う制御部である。以下、CPU2を制御部2とも呼ぶ。
【0019】
主メモリ3は、CPU2が実行するプログラムや演算処理の途中経過を記憶するものである。
【0020】
記憶装置4は、CT装置やMRI装置などの3次元撮像装置13により撮影された医用画像情報を格納する装置であり、具体的にはハードディスク等である。また、記憶装置4は、フレシキブルディスク、光(磁気)ディスク、ZIPメモリ、USBメモリ等の可搬性記録媒体とデータの受け渡しをする装置であっても良い。医用画像情報はLAN(Local Area Network)等のネットワーク12を介して3次元撮像装置13や医用画像データベース14から取得される。また、記憶装置4には、CPU2が実行するプログラムやプログラム実行に必要なデータが格納される。
【0021】
表示メモリ5は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)等の表示装置6に表示するための表示データを一時格納するものである。マウス8は、操作者が手術ナビゲーションシステム1に対して操作指示を行う操作デバイスである。マウス8はトラックパッドやトラックボールなどの他のポインティングデバイスであっても良い。
【0022】
表示コントローラ7は、マウス8の状態を検出して、表示装置6上のマウスポインタの位置を取得し、取得した位置情報等をCPU2へ出力するものである。
【0023】
位置検出センサ9は、システムバス11に信号送受可能に接続されている。
【0024】
ネットワークアダプタ10は、手術ナビゲーションシステム1をLAN、電話回線、インターネット等のネットワーク12に接続するためのものである。
【0025】
ポインタ15は、反射球16を複数取り付けた棒状の剛体である。
【0026】
位置検出センサ9は、一対の赤外線カメラ等を含み、ポインタ15の複数の反射球16の実空間座標を検出することができる。また、手術時には、反射球16が複数取り付けられた術具を用いることにより、術具の反射球16の実空間座標を検出することができる。
【0027】
CPU2は、記憶装置4に予め格納されているプログラムやプログラム実行に必要なデータを主メモリ3にロードして実行することにより、制御部としての種々の機能を実現する。具体的には、CPU2は、位置検出センサ9から受け取った反射球16の位置情報及びポインタ15や術具の形状情報(複数の反射球16に対するポインタ15の先端の向きや、反射球16からポインタ15までの距離等の位置関係)を用いて、所定のプログラムに従って演算を行うことにより、ポインタ15や術具の先端の空間位置や向きを算出する。
【0028】
また、CPU2は、記憶装置4に予め格納されている位置合わせプログラムを実行することにより、実空間上の患者の表面の3以上の領域について、領域内の点群の位置情報を取得し、患者の表面形状と医用画像との位置合わせ(レジストレーション)を行う位置合わせ部21として機能する。位置合わせ部21による位置合わせ処理について、以下の実施形態1~5により詳細に説明する。
【0029】
なお、CPU(制御部)2のポインタ15や術具の先端の位置の算出処理部としての機能や、位置合わせ部21として機能等種々の機能の一部または全部をハードウエアによって実現することも可能である。例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のようなカスタムICや、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルICを用いて、ポインタ15や術具の先端の位置の算出処理部や、位置合わせ部21の機能等を実現するように回路設計を行えばよい。
【0030】
<<実施形態1>>
実施形態1として、
図1の手術ナビゲーション装置による患者301の表面形状と医用画像の患者像の表面形状との位置合わせ(レジストレーション)処理について詳しく説明する。
【0031】
本実施形態では、
図2に示したように、操作者が患者301の表面をポインタ15の先端でなぞり、なぞっている最中のポインタ15の先端位置を連続的に位置検出センサ9が検出する。位置合わせ部21は、位置検出センサ9が検出したポインタ15の先端位置を連続的に受け取って、主メモリ3に格納する。これにより、位置合わせ部21は、実空間上の患者301の表面の複数の点321の位置情報を取得することができる。
【0032】
例えば、位置合わせ部21は、位置検出センサ9から受け取ったポインタ15の位置から予め定めた距離以内にすでに取得した点321がメモリ3内に存在するかどうか判定し、存在しない場合、ポインタ15の位置を次の点の位置として記憶部に格納する。この動作を、所定数の点321の位置情報が記憶部に格納されるまで繰り返すように構成する。
【0033】
位置合わせ部21は、取得した複数の点321の位置により表される患者301の表面形状と、医用画像内の患者像の表面形状とが一致するように、実空間の患者位置と医用画像の位置とを対応づける位置合わせを行う。
【0034】
図3のフローを用いて、本発明の手術ナビゲーション装置の位置合わせ(レジストレーション)処理を説明する。なお、患者位置合わせの対象である医用画像データは、3次元撮像装置13や医用画像データベース14から取得され、記憶装置4に格納されている。
【0035】
(ステップ301、302)
操作者が、位置合わせ画面を起動したならば、位置合わせ部21は、例えば
図4のような位置合わせ画面を表示し(ステップ301)、画面上で、操作者から患者301の表面情報を取得する領域311の設定するように促す表示501を行い、操作者から領域311の設定を受けつける(ステップ302)。
【0036】
操作者は、準備が完了したらポインタ15の先端を患者301の表面に置きジャスチャAを実施する。
【0037】
ジェスチャAは、
図5(a)に示したように、ポインタ15の先端位置の移動量がほぼゼロ(一定値以内)で、反射球16を取り付けている後端の位置の移動量が一定値以上となるように、ポインタ15を揺り動かすジェスチャである。
【0038】
(ステップ303、304)
位置合わせ部21は、位置検出センサ9から反射球16の位置を時系列に受け取って、先端位置を時系列に算出し、ポインタ15の先端および後端の反射球16の位置の変化がジェスチャAに該当するかどうか判定する。
【0039】
操作者がジェスチャAを実施していると判定したならば、ステップ304に進み、位置合わせ部21は、位置情報取得処理を開始する。具体的には、表示装置6に位置取得中であることを操作者に伝える表示502を表示する。また、操作者に、患者の表面をポインタの先端でなぞる操作を実施するように促す表示503を表示する。
【0040】
(ステップ305)
操作者は、
図2のように、ポインタ15の先端で領域311内をなぞる操作を行う。なぞる方向や軌跡をガイドするような表示を位置合わせ部21は表示してもよい。
【0041】
位置検出センサ9は、操作者が患者301の表面をなぞっているポインタ15の反射球16の位置を連続的に検出する。CPU2は、反射球16の位置を受け取って、所定の演算を行うことにより、ポインタ15の先端の位置を算出する。これにより、位置合わせ部21は、患者301の表面位置を検出する。
【0042】
(ステップ306~308)
位置合わせ部21は、検出したポインタ15の先端位置から、予め定めた一定距離以内に取得済みの表面位置点が主メモリ3内に存在するか判定する(ステップ306)。存在しない場合、ステップ308に進み、その位置を次の点の位置情報であるとして、主メモリ3に格納する(ステップ308)。これにより、すでに取得した点の位置から予め定めた距離以上離れた点の位置を主メモリ3に格納することができる。
【0043】
ステップ306において、現在のポインタ15の先端位置から、予め定めた一定距離以内に取得済みの表面位置点が存在する場合には、ステップ307に進んで検出した位置情報を破棄し、ステップ305に戻り、操作者は患者体表面をなぞる動作を続ける。
【0044】
(ステップ309)
位置合わせ部21は、ステップ308で主メモリ3に点を追加した結果、取得済み表面位置の点数が、予め定めた上限数以上であるかどうか判定する。上限数に達していない場合には、ステップ305に戻る。
【0045】
位置合わせ部21は、取得済み表面位置の点数が、予め定めた上限数以上に達した場合には、領域311について上限数の点321の取得が完了したので、ステップ310に進む。
【0046】
(ステップ310)
位置合わせ部21は、主メモリ3に格納した、所定数の点321により表される患者301の表面形状を求め、医用画像内の患者の3D画像から得た表面形状とが一致するように、実空間の患者301の位置と医用画像の位置とを対応づけるサーフェスレジストレーションを行う。例えば、サーフェスレジストレーションには、特許文献1や非特許文献1に記載されている広く知られた手法を用いることができるので、ここでは手法についての詳細な説明を省略する。
【0047】
また、上記レジストレーションにより、位置合わせ部21は、ポインタ15や術具の先端の空間位置を認識することができ、患者の表面形状をポインタ15の先端位置情報から把握することが可能になる。また、術具の先端の位置を、医用画像上で表示することが可能になる。
【0048】
上述のように、本実施形態では、ポインタ15で患者301をなぞる操作により、複数の点の位置情報を取得して、患者301の表面形状と、医用画像内の患者の3D画像から得た表面形状とが一致するように詳細位置合わせする2段階の位置合わせを行うことができる。よって、患者の毛髪がある領域であっても、毛髪をポインタ15でかき分け頭皮をなぞることができるため、毛髪の影響を抑制して、精度よく実空間の患者301と医用画像の患者像とを位置合わせできる。
【0049】
しかも、ポインタ15によるジェスチャAにより、位置情報取得処理を開始を指示する操作を行うことができる。よって、操作者の負担を軽減することができる。
【0050】
<<実施形態2>>
実施形態2の手術ナビゲーションシステムについて
図6を用いて説明する。
【0051】
実施形態2の手術ナビゲーションシステムは、実施形態1のシステムと同様の構成であるが、位置合わせ部21は、ポインタ15が所定の一時停止ジェスチャを示している場合、複数の点321の位置情報の取得を一時停止する点が実施形態1とは異なっている。
【0052】
なお、一時停止ジェスチャは、
図5(b)に示すように、ポインタ15の先端位置の移動量および反射球16を取り付けている後端位置の移動量がほぼゼロ(一定値以内)の状態を予め定めた時間継続するジェスチャBである。
【0053】
実施形態2の位置合わせ部21の処理のフローを
図6を用いて説明する。
【0054】
実施形態2の位置合わせ部21は、ステップ303において操作者がジェスチャAを実施したと判定してから、ステップ309において取得済みの表面位置の点の数が上限数以上になるまでの間に、位置情報の取得を一時停止したい場合、操作者309はジェスチャBを実施する。位置合わせ部21は、ステップ401において、ポインタ15の先端と後端の移動量を算出し、その移動量が一定値以内かどうか、すなわちジェスチャBを実施しているかどうかを判定し、ジェスチャBを実施していると判定した場合、ステップ402に進む。
【0055】
ステップ402において、位置合わせ部21は、位置取得を一時停止中であることを表示装置6に表示させ、ステップ303に戻る。よって、操作者がジェスチャBを実施した場合、位置取得が一時停止され、再び操作者がジェスチャAを実施した場合には、位置取得の処理を再開することができる。
【0056】
なお、
図6に示したフローは、位置合わせ部21がジェスチャBを実施したかを判定するステップ401をステップ308と309の間のタイミングで実施する例を示しているが、ステップ301~309の間であれば、どのタイミングで行ってもよい。
【0057】
<<実施形態3>>
実施形態3の手術ナビゲーションシステムについて
図7を用いて説明する。
【0058】
実施形態3の手術ナビゲーションシステムは、実施形態1のシステムと同様の構成であるが、位置合わせ部21は、複数の点の位置情報を取得した後、ポインタ15が所定のやり直しジェスチャを示している場合、主メモリ3内の複数の点の位置情報を消去し、再度複数の位置情報を取得する点が実施形態1とは異なっている。ここでは、やり直しジェスチャは、開始ジェスチャと同じジェスチャAである。
【0059】
実施形態3の位置合わせ部21の処理のフローを
図7を用いて説明する。
【0060】
実施形態3の位置合わせ部21は、ステップ303において操作者がジェスチャAを実施し、位置情報取得処理の開始を指示したと判定してから、ステップ309において取得済みの表面位置の点の数が上限数以上になるまでの間に、位置情報の取得をやり直ししたい場合、操作者309はジェスチャAを再度実施する。位置合わせ部21は、ステップ501において、ポインタ15の先端と後端の移動量を算出し、ジェスチャAを実施しているかどうかを判定し、ジェスチャAを実施していると判定した場合、ステップ502に進む。
【0061】
ステップ502において、位置合わせ部21は、主メモリ3に格納済みの位置すべて消去し、ステップ303に戻る。よって、操作者が複数の点の位置情報を取得している最中に再度ジェスチャAを実施した場合には、現時点までに取得した主メモリ3内の複数の点の位置情報が消去される。操作者は、位置取得の処理を再開したい場合には、ステップ303において、もう一度ジェスチャAを実施する。これにより、位置合わせ部21は、ステップ304に進み、複数の位置情報を取得する処理を再開することができる。
【0062】
なお、
図7に示したフローでは、位置合わせ部21がやり直しのためにジェスチャAを再度実施したかを判定するステップ501の処理をステップ308と309の間のタイミングで実施する構成であるが、ステップ301~309の間であれば、どのタイミングで行ってもよい。
【0063】
<<実施例4>>
実施形態4の手術ナビゲーションシステムについて
図8のフローを用いて説明する。
【0064】
実施形態4の手術ナビゲーションシステムは、実施形態1のシステムと同様の構成であるが、患者の表面の位置情報の取得を複数回に分けて実施するために、ステップ309の後にステップ601を行う。すなわち、位置合わせ部21は、ステップ309の後、ステップ601に進み、ステップ303~309を規定回数繰り返したかどうか判定し、規定回数繰り返していない場合、ステップ303に戻って、再び位置取得の処理を繰り返す(ステップ601)。
【0065】
これにより、患者の表面位置を複数回に分けて多数取得することが可能になるため、ステップ310における位置合わせをより精度よく行うことができる。
【0066】
<<実施形態5>>
実施形態5の手術ナビゲーションシステムについて
図9を用いて説明する。
【0067】
実施形態5の手術ナビゲーションシステムは、実施形態1のシステムと同様の構成であるが、位置合わせ部21は、ステップ309において上限値以上の数の点の位置情報を取得したと判定した場合、ステップ701に進み、ポインタ15が所定のやり直しジェスチャCを示しているかどうかを判定する。位置合わせ部21は、ジェスチャCを実施していると判定した場合、ステップ702において主メモリ3内の複数の点の位置情報を消去し、ステップ303に戻り、再度ジェスチャAが実施されたならば、複数の位置情報の取得を開始する。これにより、位置取得をやり直すことができる。この点が実施形態1とは異なっている。
【0068】
なお、ジェスチャCは、
図5(c)に示したように、ポインタ16の先端位置の移動量および反射球16を取り付けている後端の位置の移動量が一定値以上になるようにポインタ15を揺り動かすジェスチャである。
【0069】
実施形態5と実施形態3の処理は、似ているが、やり直しを判定するタイミングが異なる。実施形態3の処理では、主メモリ3の位置情報が上限数になるまで取得している最中にやり直しジェスチャを受け付けるが、実施形態5の処理は、主メモリ3の位置情報が上限数に到達した後で、やり直しジェスチャを受ける構成である。
【0070】
上述してきた実施形態2~5は、2以上を組み合わせて実施する構成にすることも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1:手術ナビゲーションシステム、2:CPU、3:主メモリ、4:記憶装置、5:表示メモリ、6:表示装置、7:表示コントローラ、8:マウス、9:位置検出センサ、10:ネットワークアダプタ、11:システムバス、12:ネットワーク、13:3次元撮像装置、14:医用画像データベース