(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049283
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】パルスアーク溶接電源
(51)【国際特許分類】
B23K 9/09 20060101AFI20220322BHJP
B23K 9/073 20060101ALI20220322BHJP
B23K 9/12 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
B23K9/09
B23K9/073
B23K9/12 306
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155408
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(72)【発明者】
【氏名】西野 晋太朗
(72)【発明者】
【氏名】中俣 利昭
【テーマコード(参考)】
4E082
【Fターム(参考)】
4E082AA07
4E082BA04
4E082DA01
4E082EA02
4E082EB11
4E082EC03
4E082ED01
4E082EE01
4E082EE03
4E082EF07
4E082EF16
(57)【要約】
【課題】溶接ワイヤの送給速度をピーク期間中はベース期間中よりも速くして溶接するパルスアーク溶接電源において、送給速度の平均値の変動を抑制して良好なビード外観を得ること。
【解決手段】溶接ワイヤを送給する送給モータと、送給モータの送給速度Fwを制御する送給制御部と、ピーク期間Tp中のピーク電流Ip及びベース期間Tb中のベース電流Ibの通電を1パルス周期Tfとして溶接電流Iwを出力する電力制御部と、溶接電圧Vwの平均値が予め定めた溶接電圧設定値と等しくなるように溶接電流Iwを制御する電圧フィードバック制御部と、を備えたパルスアーク溶接電源において、送給制御部は、ピーク期間送給速度Fpをベース期間送給速度Fbよりも速くし、かつ、送給速度Fwの平均値が一定になるようにピーク期間送給速度Fp及び/又はベース期間送給速度Fbを可変速制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ワイヤを送給する送給モータと、
前記送給モータの送給速度を制御する送給制御部と、
ピーク期間中のピーク電流及びベース期間中のベース電流の通電を1パルス周期として溶接電流を出力する電力制御部と、
溶接電圧の平均値が予め定めた溶接電圧設定値と等しくなるように前記溶接電流を制御する電圧フィードバック制御部と、
を備えたパルスアーク溶接電源において、
前記送給制御部は、ピーク期間送給速度をベース期間送給速度よりも速くし、かつ、前記送給速度の平均値が一定になるように前記ピーク期間送給速度及び/又は前記ベース期間送給速度を可変速制御する、
ことを特徴とするパルスアーク溶接電源。
【請求項2】
前記溶接電流は立上り機関及び立下り期間をさらに備えており、
前記送給速度は、前記立上り期間中は前記ベース期間送給速度から前記ピーク期間送給速度へと加速され、前記立下り期間中は前記ピーク期間送給速度から前記ベース期間送給速度へと減速される、
ことを特徴とする請求項1に記載のパルスアーク溶接電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピーク期間及びベース期間中のアーク長の変動を抑制することができるパルスアーク溶接電源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
消耗電極式パルスアーク溶接は、鉄鋼等の溶接に広く使用されている。このパルスアーク溶接では、溶接ワイヤを送給し、ピーク期間中はピーク電流を通電し、ベース期間中はベース電流を通電し、これらの溶接電流の通電を1パルス周期として繰り返して溶接が行われる。また、溶接電圧の平均値が溶接電圧設定値と等しくなるように溶接電流のパルス周期又はピーク期間をフィードバック制御することによってアーク長を適正値に維持している。パルスアーク溶接では、1パルス周期1溶滴移行状態となるので、溶滴移行状態が安定しているために、スパッタの発生が少なく、美しいビード外観を得ることができる。
【0003】
パルスアーク溶接を含む消耗電極式アーク溶接においては、溶接中のアーク長を適正値に維持することが、良好な溶接品質を得るために重要である。溶接電圧の平均値は平均アーク長と比例関係にある。そこで、パルスアーク溶接では、溶接ワイヤを定速送給し、溶接電圧の平均値が予め定めた溶接電圧設定値と等しくなるようにフィードバック制御することによって平均アーク長が適正値になるように制御している。しかし、瞬時的なアーク長は、大電流値のピーク電流が通電するピーク期間中は溶融が促進されて長くなり、小電流値のベース電流が通電するベース期間中は溶融が抑制されて短くなり、パルス周期中に変動している。特許文献1の発明では、ピーク期間中の送給速度をベース期間中の送給速度よりも速くしている。これにより、パルス周期中のアーク長の変動を抑制して、溶接品質の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術のパルスアーク溶接においては、溶接ワイヤの送給速度をピーク期間中はベース期間中よりも速くし、溶接電圧の平均値が溶接電圧設定値と等しくなるように溶接電流を制御している。このフィードバック制御によって溶接電流のパルス周期又はピーク期間は刻々と変化する。この結果、送給速度の平均値も刻々と変動することになる。送給速度の平均値が変動すると、ビード外観が不均一となるという問題が発生する。
【0006】
そこで、本発明では、溶接ワイヤの送給速度をピーク期間中はベース期間中よりも速くし、溶接電圧の平均値が溶接電圧設定値と等しくなるように溶接電流を制御するパルスアーク溶接において、送給速度の平均値の変動を抑制して良好なビード外観を得ることができるパルスアーク溶接電源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、
溶接ワイヤを送給する送給モータと、
前記送給モータの送給速度を制御する送給制御部と、
ピーク期間中のピーク電流及びベース期間中のベース電流の通電を1パルス周期として溶接電流を出力する電力制御部と、
溶接電圧の平均値が予め定めた溶接電圧設定値と等しくなるように前記溶接電流を制御する電圧フィードバック制御部と、
を備えたパルスアーク溶接電源において、
前記送給制御部は、ピーク期間送給速度をベース期間送給速度よりも速くし、かつ、前記送給速度の平均値が一定になるように前記ピーク期間送給速度及び/又は前記ベース期間送給速度を可変速制御する、
ことを特徴とするパルスアーク溶接電源である。
【0008】
請求項2の発明は、
前記溶接電流は立上り期間及び立下り期間をさらに備えており、
前記送給速度は、前記立上り期間中は前記ベース期間送給速度から前記ピーク期間送給速度へと加速され、前記立下り期間中は前記ピーク期間送給速度から前記ベース期間送給速度へと減速される、
ことを特徴とする請求項1に記載のパルスアーク溶接電源である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のパルスアーク溶接電源によれば、溶接ワイヤの送給速度をピーク期間中はベース期間中よりも速くし、溶接電圧の平均値が溶接電圧設定値と等しくなるように溶接電流を制御するパルスアーク溶接において、送給速度の平均値の変動を抑制して良好なビード外観を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係るパルスアーク溶接装置のブロック図である。
【
図2】
図1のパルスアーク溶接装置における各信号のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係るパルスアーク溶接装置のブロック図である。溶接装置は、主に破線で囲まれた溶接電源PS、ロボット制御装置RC、ロボット(図示は省略)等から構成されている。以下、同図を参照して各ブロックについて説明する。
【0013】
溶接電源PSは、以下の各ブロックから構成されている。
【0014】
電力制御回路MCは、3相200V等の交流商用電源(図示は省略)を入力として、後述する駆動信号Dvに従ってインバータ制御等の出力制御を行い、溶接に適した溶接電圧Vw及び溶接電流Iwを出力する。この電力制御回路MCは、図示は省略するが、交流商用電源を整流する1次整流回路、整流された直流を平滑するコンデンサ、平滑された直流を駆動信号Dvに従って高周波交流に変換するインバータ回路、高周波交流を溶接に適した電圧値に降圧するインバータトランス、降圧された高周波交流を整流する2次整流回路を備えている。
【0015】
リアクトルWLは、上記の電力制御回路MCの+側出力と溶接トーチ4との間に挿入されており、電力制御回路MCの出力を平滑する。
【0016】
送給モータWMは、後述する送給制御信号Fcによって回転駆動される。溶接ワイヤ1は、上記の送給モータWMに結合された送給ロール5の回転によって溶接トーチ4内を通って送給速度Fwで送給されて、母材2との間にアーク3が発生する。送給モータWM及び溶接トーチ4は、ロボットに搭載されている。溶接トーチ4内の給電チップ(図示は省略)と母材2との間に溶接電圧Vwが印加され、溶接電流Iwが通電する。
【0017】
溶接電圧検出回路VDは、上記の溶接電圧Vwを検出して、溶接電圧検出信号Vdを出力する。溶接電圧平均化回路VAVは、この溶接電圧検出信号Vdを平均化(ローパスフィルタを通す)して、溶接電圧平均値信号Vavを出力する。溶接電圧設定回路VRは、予め定めた溶接電圧設定信号Vrを出力する。電圧誤差増幅回路EVは、上記の溶接電圧設定信号Vr(+)と上記の溶接電圧平均値信号Vav(-)との誤差を増幅して、電圧誤差増幅信号Evを出力する。
【0018】
電圧フィードバック制御回路VFは、上記の電圧誤差増幅信号Evを入力として、電圧誤差増幅信号Evに基づいて電圧/周波数変換を行い、パルス周期ごとに短時間Highレベルとなるパルス周期信号Tfを出力する。
【0019】
立上り期間設定回路TURは、予め定めた立上り期間設定信号Turを出力する。ピーク期間設定回路TPRは、予め定めたピーク期間設定信号Tprを出力する。立下り期間設定回路TKRは、予め定めた立下り期間設定信号Tkrを出力する。
【0020】
ピーク電流設定回路IPRは、予め定めたピーク電流設定信号Iprを出力する。ベース電流設定回路IBRは、予め定めたベース電流設定信号Ibrを出力する。
【0021】
溶接電流設定回路IRは、上記のパルス周期信号Tf、上記の立上り期間設定信号Tur、上記のピーク期間設定信号Tpr、上記の立下り設定信号Tkr、上記のピーク電流設定信号Ipr及び上記のベース電流設定信号Ibrを入力として、パルス周期信号Tfが短時間Highレベルに変化するごとに、以下の処理を行ない、溶接電流設定信号Ir及びタイマ信号Tmを出力する。
1)立上り期間設定信号Turによって定まる立上り期間Tu中はタイマ信号Tm=1を出力し、ベース電流設定信号Ibrの値からピーク電流設定信号Iprの値へと直線状に上昇する溶接電流設定信号Irを出力する。
2)続けて、ピーク期間設定信号Tprによって定まるピーク期間Tp中はタイマ信号Tm=2を出力し、ピーク電流設定信号Iprを溶接電流設定信号Irとして出力する。
3)続けて、立下り期間設定信号Tkrによって定まる立下り期間Tk中はタイマ信号Tm=3を出力し、ピーク電流設定信号Iprの値からベース電流設定信号Ibrの値へと直線状に下降する溶接電流設定信号Irを出力する。
4)続けて、パルス周期信号Tfが再び短時間Highレベルになるまでのベース期間Tb中はタイマ信号Tm=4を出力し、ベース電流設定信号Ibrを溶接電流設定信号Irとして出力する。
【0022】
平均送給速度設定回路FARは、予め定めた平均送給速度設定信号Farを出力する。送給速度誤差増幅回路EFは、上記の平均送給速度設定信号Far(+)と後述する平均送給速度検出信号Fad(-)との誤差を増幅して、送給速度誤差増幅信号Efを出力する。
【0023】
ピーク期間送給速度設定回路FPRは、上記の送給速度誤差増幅信号Efを入力として、Fpr=Fp0+∫Efの可変速制御を行い、ピーク期間送給速度設定信号Fprを出力する。Fp0は初期値であり、Fp0>Farである。ベース期間送給速度設定信号FBRは、予め定めたベース期間送給速度設定信号Fbrを出力する。Fbr<Farに設定される。これらの回路によって、ピーク期間送給速度Fpは、ベース期間送給速度Fbよりも速くなる。さらに、電圧フィードバック制御によってパルス周期が変化しても、平均送給速度検出信号Fadの値が平均送給速度設定信号Farの値と等しくなるようにピーク期間送給速度Fpが可変速制御される。また、ピーク期間送給速度Fpを所定地として、ベース期間送給速度Fbを可変速制御しても良い。さらに、ピーク期間送給速度Fp及びベース期間送給速度Fbの両値を可変速制御しても良い。
【0024】
溶接電流検出回路IDは、上記の溶接電流Iwを検出して、溶接電流検出信号Idを出力する。電流誤差増幅回路EIは、上記の溶接電流設定信号Ir(+)と上記の溶接電流検出信号Id(-)との誤差を増幅して、電流誤差増幅信号Eiを出力する。駆動回路DVは、この電流誤差増幅信号Ei及び後述するロボット制御装置RCからの起動信号Onを入力として、起動信号OnがHighレベル(溶接開始)のときは電流誤差増幅信号Eiに基いてPWM変調制御を行ない上記の電力制御回路MC内のインバータ回路を駆動するための駆動信号Dvを出力し、起動信号OnがLowレベル(溶接停止)のときは駆動信号Dvを出力しない。
【0025】
送給速度設定回路FRは、上記のピーク期間送給速度設定信号Fpr、上記のベース期間送給速度設定信号Fbr及び上記のタイマ信号Tmを入力として、以下の処理を行い、送給速度設定信号Frを出力する。
1)タイマ信号Tm=1の立上り期間Tu中は、ベース期間送給速度設定信号Fbrの値からピーク期間送給速度設定信号Fprの値へと直線状に加速する送給速度設定信号Frを出力する。
2)続けて、タイマ信号Tm=2のピーク期間Tp中は、ピーク期間送給速度設定信号Fprを送給速度設定信号Frとして出力する。
3)続けて、タイマ信号Tm=3の立下り期間Tk中は、ピーク期間送給速度設定信号Fprの値からベース期間送給速度設定信号Fbrの値へと直線状に減速する送給速度設定信号Frを出力する。
4)続けて、タイマ信号Tm=4のベース期間Tb中は、ベース期間送給速度設定信号Fbrを送給速度設定信号Frとして出力する。
【0026】
送給制御回路FCは、上記の送給速度設定信号Fr及び後述するロボット制御装置RCからの起動信号Onを入力として、起動信号OnがHighレベル(溶接開始)のときは溶接ワイヤ1を送給速度設定信号Frの値で送給するための送給制御信号Fcを上記の送給モータWMに出力し、起動信号OnがLowレベルのときは送給を停止するための送給制御信号Fcを上記の送給モータWMに出力する。
【0027】
平均送給速度検出回路FADは、上記の送給速度設定信号Frを入力として、送給速度設定信号Frの平均値を検出して、平均送給速度検出信号Fadを出力する。
【0028】
ロボット制御装置RCは、予め教示された作業プログラムに従ってロボット(図示は省略)を移動させると共に、溶接開始又は溶接停止を指令する起動信号Onを出力する。
【0029】
図2は、
図1のパルスアーク溶接装置における各信号のタイミングチャートである。同図(A)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(B)は溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(C)は溶接ワイヤの送給速度Fwの時間変化を示す。以下、同図を参照して、各信号の動作について説明する。
【0030】
時刻t1~t2のパルス周期Tfにおいて、予め定めた立上り期間Tu中は、同図(A)に示すように、予め定めたベース電流Ibから予め定めたピーク電流Ipへと上昇する上昇遷移電流Iuが通電し、同図(B)に示すように、ベース電圧Vbからピーク電圧Vpへと上昇する上昇遷移電圧が溶接ワイヤと母材との間に印加し、同図(C)に示すように、送給速度Fwはベース期間送給速度Fbからピーク期間送給速度Fpへと加速する。続く予め定めたピーク期間Tp中は、同図(A)に示すように、溶接ワイヤから溶滴を移行させるために臨界値以上の大電流値のピーク電流Ipが通電し、同図(B)に示すように、アーク長に比例したピーク電圧Vpが印加し、同図(C)に示すように、送給速度Fwはピーク期間送給速度Fpとなる。続く予め定めた立下り期間Tk中は、同図(A)に示すように、ピーク電流Ipからベース電流Ibへと下降する下降遷移電流Ikが通電し、同図(B)に示すように、ピーク電圧Vpからベース電圧Vbへと下降する下降遷移電圧が印加し、同図(C)に示すように、送給速度Fwはピーク期間送給速度Fpからベース期間送給速度Fbへと減速する。続くベース期間Tb中は、同図(A)に示すように、溶滴を形成しないようにするために臨界値未満の小電流値のベース電流Ibが通電し、同図(B)に示すように、アーク長に比例したベース電圧Vbが印加し、同図(C)に示すように、送給速度Fwはベース期間送給速度Fbとなる。アーク長は、ピーク期間Tp中は大電流値のピーク電流Ipが通電するので溶融が促進されて長くなり、ベース期間Tb中は小電流値のベース電流Ibが通電するので溶融が抑制されて短くなる。しかし、送給速度Fwがピーク期間中はベース期間中よりも速くなっているので、アーク長の変化幅は定速送給のときよりも小さくなり、溶接状態は安定化する。
【0031】
本実施の形態においては、
図1の溶接電圧平均値信号Vavの値が予め定めた
図1の溶接電圧設定信号Vrの値と等しくなるようにパルス周期Tfがフィードバック制御(変調制御)される。このために、立上り期間Tu、ピーク期間Tp、立下り期間Tk、ピーク電流Ip及びベース電流Ibは所定値に設定され、ベース期間Tb(パルス周期Tf)は溶接電圧Vwの平均値が予め定めた溶接電圧設定値と等しくなるようにフィードバック制御によって定まる。これにより、平均アーク長が適正値になるように制御される。
【0032】
立上り期間Tuは
図1の立上り期間設定信号Turによって設定され、ピーク期間Tpは
図1のピーク期間設定信号Tprによって設定され、立下り期間Tkは
図1の立下り期間設定信号Tkrによって設定される。ピーク電流Ipは
図1のピーク電流設定信号Iprによって設定され、ベース電流Ibは
図1のベース電流設定信号Ibrによって設定される。ピーク期間送給速度Fpは
図1のピーク期間送給速度設定信号Fprによって設定され、ベース期間送給速度Fbは
図1のベース期間送給速度設定信号Fbrによって設定される。
【0033】
時刻t2~t3のパルス周期Tfにおいて、溶接電流Iw、溶接電圧Vw及び送給速度Fwの波形は、前周期と同一である。但し、ピーク期間送給速度Fpは、前周期よりも大きくなっている。上述したように、電圧フィードバック制御によってパルス周期Tfは刻々と変化する。これに伴い、送給速度Fwの平均値も変動することになる。これに対して、本実施の形態では、
図1の平均送給速度検出信号Fadが
図1の予め定めた平均送給速度設定信号Farと等しくなるように
図1のピーク期間設定信号Fprが可変速制御される。この可変速制御によって、上記のピーク期間送給速度Fpが変化している。この結果、送給速度Fwの平均値は一定値となるので、ビード外観の均一性を担保することができる。
【0034】
上記の可変速制御において、平均送給速度検出信号Fadが平均送給速度設定信号Farと等しくなるように、ピーク期間送給速度設定信号Fpr及び/又はベース期間送給速度設定信号Fbrを変化させるようにしても良い。
【0035】
上記においては、電圧フィードバック制御が、パルス周期を変化させるパルス周期変調制御について説明したが、ピーク期間を変化させるピーク期間変調制御の場合も同様である。
【0036】
上述した各パラメータの数値例を以下に示す。
Tu=0.5ms、Tp=1.2ms、Tk=0.5ms、Tf≒5ms
Ip=450A、Ib=50A
Far=3.5m/min、Fb=3m/min、Fp≒4.5m/min
【0037】
上述した実施の形態によれば、送給制御部は、ピーク期間送給速度をベース期間送給速度よりも速くし、かつ、送給速度の平均値が一定になるようにピーク期間送給速度及び/又はベース期間送給速度を可変速制御する。これにより、本実施の形態では、ピーク期間とベース期間との瞬時的なアーク長の変化を小さくすることができ、かつ、送給速度の平均値を一定に維持することができるので、ビード外観の均一性を担保することができる。この結果、本実施の形態では、溶接ワイヤの送給速度をピーク期間中はベース期間中よりも速くし、溶接電圧の平均値が溶接電圧設定値と等しくなるように溶接電流を制御するパルスアーク溶接電源において、送給速度の平均値の変動を抑制して良好なビード外観を得ることができる。
【0038】
さらに、本実施の形態によれば、溶接電流は立上り機関及び立下り期間をさらに備えており、送給速度は、立上り期間中はベース期間送給速度からピーク期間送給速度へと加速され、立下り期間中はピーク期間送給速度からベース期間送給速度へと減速される。これにより、本実施の形態では、溶接電流の波形に同期して送給速度が変化するので、瞬時的なアーク長の変化をさらに小さくすることができ、溶接状態をより安定化することができる。。
【符号の説明】
【0039】
1 溶接ワイヤ
2 母材
3 アーク
4 溶接トーチ
5 送給ロール
DV 駆動回路
Dv 駆動信号
EF 送給速度誤差増幅回路
Ef 送給速度誤差増幅信号
EI 電流誤差増幅回路
Ei 電流誤差増幅信号
EV 電圧誤差増幅回路
Ev 電圧誤差増幅信号
FAD 平均送給速度検出回路
Fad 平均送給速度検出信号
FAR 平均送給速度設定回路
Far 平均送給速度設定信号
Fb ベース期間送給速度
FbR ベース期間送給速度設定回路
Fbr ベース期間送給速度設定信号
FC 送給制御回路
Fc 送給制御信号
Fp ピーク期間送給速度
FPR ピーク期間送給速度設定回路
Fpr ピーク期間送給速度設定信号
FR 送給速度設定回路
Fr 送給速度設定信号
Fw 送給速度
Ib ベース電流
IBR ベース電流設定回路
Ibr ベース電流設定信号
ID 溶接電流検出回路
Id 溶接電流検出信号
Ik 下降遷移電流
Ip ピーク電流
IPR ピーク電流設定回路
Ipr ピーク電流設定信号
IR 溶接電流設定回路
Ir 溶接電流設定信号
Iu 上昇遷移電流
Iw 溶接電流
MC 電力制御回路
On 起動信号
PS 溶接電源
RC ロボット制御装置
Tb ベース期間
Tf パルス周期(信号)
TKR 立下り期間設定回路
Tkr 立下り期間設定信号
Tp ピーク期間
TPR ピーク期間設定回路
Tpr ピーク期間設定信号
Tu 立上り期間
TUR 立上り期間設定回路
Tur 立上り期間設定信号
VAV 溶接電圧平均化回路
Vav 溶接電圧平均値信号
Vb ベース電圧
VD 溶接電圧検出回路
Vd 溶接電圧検出信号
VF 電圧フィードバック制御回路
Vp ピーク電圧
VR 溶接電圧設定回路
Vr 溶接電圧設定信号
Vw 溶接電圧
WL リアクトル
WM 送給モータ