(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049317
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】紙カップ
(51)【国際特許分類】
B65D 3/28 20060101AFI20220322BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220322BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20220322BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
B65D3/28 A
B65D65/40 D
B32B27/12
B32B27/30 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155456
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 晃
(72)【発明者】
【氏名】谷口 正幸
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA22
3E086AB01
3E086AD06
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB05
3E086BB44
3E086CA11
4F100AC03E
4F100AJ04E
4F100AK04A
4F100AK04D
4F100AK07C
4F100AK21E
4F100AK42C
4F100AK46C
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100DG01B
4F100DG03E
4F100DG10B
4F100EJ38C
4F100GB16
4F100JD01
4F100JD01B
4F100JD01E
4F100JL12A
4F100JL12D
(57)【要約】
【課題】
端面が容器内部に露出しないで、バリア性を充分に確保し、保存性の高い紙カップを得る。
【解決手段】
外側から、外シーラント樹脂層(104)/バリア紙(101)/二軸延伸フィルム(102)/内シーラント樹脂層(103)の構成からなる積層シート(100)を使用して、製造される紙カップであって、
前記バリア紙は、少なくとも、外側から紙繊維層(1011)/クレーコート層(1012)/バリア剤層(1013)、から構成され、
該バリア剤層はポリビニルアルコール層、又は、ポリビニルアルコールとセルロースナノファイバーとを混合した層からなり、
カップの側面を繋ぎ合せで内側となる側シール部(211)の端面が、該内側となる側シール部に繋がった二軸延伸フィルム/内シーラント樹脂層構成の被覆樹脂膜で覆われていることを特徴とする紙カップ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側から、外シーラント樹脂層/バリア紙/二軸延伸フィルム/内シーラント樹脂層の構成からなる積層シートを使用して、製造される紙カップであって、
前記バリア紙は、少なくとも、外側から紙繊維層/クレーコート層/バリア剤層、から構成され、
該バリア剤層はポリビニルアルコール層、又は、ポリビニルアルコールとセルロースナノファイバーとを混合した層からなり、
カップの側面を繋ぎ合せで内側となる側シール部の端面が、該内側となる側シール部に繋がった二軸延伸フィルム/内シーラント樹脂層構成の被覆樹脂膜で覆われていることを特徴とする紙カップ。
【請求項2】
二軸延伸フィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルムのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の紙カップ。
【請求項3】
外シーラント樹脂層や内シーラント樹脂層に使用されるシーラント樹脂が、ポリエチレン樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の紙カップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙を基材とした積層シートを使用し、その端面処理を行うことによって、内容物の保存性能を向上させた紙カップに関する。
【背景技術】
【0002】
紙を基材とした紙カップは、一定の剛性があって、特に底面を有する紙容器は、自立性が高く、内容物が入っている時でも、内容物を注出中や注出後であっても、左右から容器胴部をつかんで持ち上げることが可能なので、使い易い。また、廃棄する時にも燃えるごみとして処分し易い容器で、便利である。
しかし、紙をそのまま用いた紙カップの場合、空気中に多くある酸素ガスの透過で、内容物は酸化劣化し易い、香りが飛んでしまう。また、水分の透過で、内容物は湿気易い、などの問題も発生していた。
【0003】
これらの問題に対して、特許文献1では、
紙基材と、前記紙基材上に形成されたセルロース繊維を含むバリア層と、を有し、
前記セルロース繊維が、オキサゾリン基を介して架橋していることを特徴とするバリア紙を使用し、
前記バリア層が内面側に配置されたことを特徴とする紙カップを提案している。
【0004】
しかしながら、単にバリア層が内側に配置したバリア紙を使用しても、カップの側面は、
図5に示すように、バリア紙の端面110が内側に露出し、カップ容器としてのバリア性は著しく低下し、確実なバリア性は得られない。そればかりか、カップに液体等の内容物を入れると、容器が層間はく離を起こし、形状を保てなくなるなどの問題も発生する恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、端面が容器内部に露出しないで、バリア性を充分に確保し、保存性の高い紙カップを得ることが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の紙カップは、
外側から、外シーラント樹脂層/バリア紙/二軸延伸フィルム/内シーラント樹脂層の構成からなる積層シートを使用して、製造される紙カップであって、
前記バリア紙は、少なくとも、外側から紙繊維層/クレーコート層/バリア剤層、から構成され、
該バリア剤層はポリビニルアルコール層、又は、ポリビニルアルコールとセルロースナノファイバーとを混合した層からなり、
カップの側面を繋ぎ合せで内側となる側シール部の端面が、該内側となる側シール部に繋がった二軸延伸フィルム/内シーラント樹脂層構成の被覆樹脂膜で覆われていることを特徴とする紙カップである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の紙カップは、シートの側面を繋ぎ合せて、内側となる側シール部の端面が、二軸延伸フィルム/シーラント樹脂層の被覆樹脂で覆われているので、酸素や水の透過率は低く、高い保存性能を得ることができる。
また、液体などを保存しても、紙カップが崩れることもなく、安心して使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の紙カップの実施形態例を示す斜視図と、その縦断面図と、その一部を拡大した部分拡大図ある。
【
図2】本発明の紙カップを製造する時に使用するブランクの形状と、使用する積層シートの構成例を示す模式図である。
【
図3】本発明の紙カップを製造する工程を示す図で、第一工程の基材を打ち抜く工程と、その部分断面、およびその部分断面において、各工程で加工する内容を示す図である。
【
図4】本発明の紙カップを製造する工程で、その側面シール部の加工工程を示す図である。
【
図5】従来の紙カップの胴部における横断面図と、その部分拡大図である。
【
図6】従来の紙カップの胴部の側シール部に、エッジテープを貼った形態で、胴部の横断面図と、その部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の紙カップにおける実施の形態例について、図を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の紙カップの実施形態例を示す図で、
図1-1が外観を示す斜視図。
図1-2がその縦断面図と、その一部を拡大した部分拡大図ある。
本発明の紙カップ1は、バリア紙を基材とした積層シートから構成され、胴部2と底部3とから形成されている。
胴部には、ブランクを丸め、その左右両端を重ね合わせた側シール部21が作られている。
【0011】
胴部2の上端は、
図1-2の部分拡大図に示すように、上端を丸く巻いたトップカール部23を形成して融着・固定し、蓋材と融着、あるいは接着によって固定し、密封することができるようになっている。トップカール部23を形成することによって、紙カップの剛性を上げ、蓋材を固定する時も、紙カップを持ち上げる時にも、役立っている。
【0012】
他方、胴部2の下端は、
図1-2の部分拡大図で示すように、底部3の端部が下方に曲げられ、その底板の端部の表裏を包み込むように、胴部2で囲んで固定した糸尻22を形成する。糸尻22は、紙カップ全体の剛性を向上させて、容易に紙カップを持ち上げることができるようにすると共に、テーブルなどに置いた時にも、安定して置くことができるようにしている。
【0013】
図2は、本発明の紙カップを製造する時に使用するブランク10の形状と、使用する積層シート100の構成を示す模式図である。
使用される積層シート100は、
図2-1に示すように、基材としてバリア紙101を使用し、その内面側に二軸延伸フィルム102と、融着可能な内シーラント樹脂層103を有している。さらに、バリア紙101の外面側にも融着可能な外シーラント樹脂層104を有している。
上記バリア紙101は、少なくとも、外側から紙繊維層1011/クレーコート層1012/バリア剤層1013、から構成されている。
また、前記バリア剤層1013は、ポリビニルアルコール層、又は、ポリビニルアルコールとセルロースナノファイバーとを混合した層から形成されている。
【0014】
図2-2は、円錐台形状の胴部を持つ実施形態例の紙カップを製造する時に使用するブ
ランク10の形状で、胴部を形成する胴部ブランク20は、扇状の形状で、側シール部210、211の端部は直線状に走り、上端が面取り形状としている。
扇状の外周側には、トップカール形成部230が形成され、内周側には、底部の折り曲げ融着部31を包み込んで融着する胴部材下部折り返し部220があり、胴部材下部折り返し部220の中央には折り罫が円弧状に加工されている。
底部ブランク30の外形は、円形形状となり、周縁に胴部と融着する底折り曲げ融着部31が形成されている。
ここで、単に
図2-2で示すブランクの形状で積層シート100を抜いて製造すると、従来の紙カップの状態になり、胴部端面がプロテクトされず、裸のままの端面がカップの内側に露出した
図5の横断面図に示される状態になり、基材の端面から内容物が浸透したり、層間はく離が生じたりして、保存性能に問題が生ずる。
【0015】
紙カップの形状は、上記に示す円錐台の胴部形状だけではなく、角錐台、円筒形などの形状であってもかまわない。角錐台の場合では、底部の形状も多角形の形状となるが、角部にRの付いた形状であれば、加工性や保存性能にとって、より好ましくなる。
【0016】
そこで、本発明の紙カップでは、
図3、
図4の工程で紙カップを製造する。
すなわち、第一工程はロール紙状になったバリア紙101単体を、
図3-1や、
図3-2のA-A断面図に示すように、胴部となるブランクの側シール部脇を、シールする幅よりも広幅とする長窓1011に抜く。
【0017】
第二工程では、
図3-3に示すように、バリア紙101内側のバリア剤層面に、接着剤を介し、ドライラミネーション機等で二軸延伸フィルム102を貼り合せ、さらにその二軸延伸フィルム102内面に、エクストラミネーション機などで、シーラント樹脂層103を貼り合せる。
又、バリア紙101の外側の紙繊維層面にシーラント樹脂層104を、エクストラミネーション機などで貼り合せる。
この時、長窓1011部分では、バリア紙101が無いので、外側の外シーラント樹脂層104内側に、二軸延伸フィルム102が接着され、さらに内側に、内シーラント樹脂層103も貼り合わされる。この為、側シール部端部のバリア紙101端面は、外シーラント樹脂層104と二軸延伸フィルム102との間に挟まれ、エッジがプロテクトされる。
【0018】
第三工程は、ビク刃、あるいはプレス型、ロータリー刃などで、紙カップのブランク10を抜く工程である。胴部と底部は、外形と共に、折り罫も加工される。
胴部となるブランクは、
図3-4に示すように、側シール部脇については、シール幅近傍の幅に相当する分大きくして、長窓1011の途中で抜く。
【0019】
ロール状に加工されたブランクの積層シートは、抜き落されると、
図3-5に示すように、胴部ブランク20は側シール部脇部分を除いて外形に沿って抜かれ、底部ブランク30も外形に沿って抜かれ、それぞれ、折り罫も加工される。
【0020】
第四工程は、
図4-1に示すように、胴部ブランク20の側シール部脇でバリア紙が無く、かつ、側シール部に繋がった被覆樹脂膜105部分を一旦外側へ垂直に曲げる。
そして、第五工程で、
図4-2ごとく、胴部ブランク20の側シール部脇のバリア紙の無い被覆樹脂膜105部分を更に外側に折り曲げる。
すなわち、被覆樹脂膜105の外シーラント樹脂層104は、180度折り曲げられ、シール部の外シーラント層104に融着する。この為、胴部ブランク20の側シール部脇のバリア紙端部は、確実に被覆された状態にすることができる。
【0021】
第五工程は、
図4-3に示すように、胴部の側シールを行う工程である。シール部は、
端部が被覆され、内シーラント層103が回って最外面に表出しているので、外側に来る他端のシール部の内シーラント層103が外側から覆い、融着して来る。
【0022】
第六工程は、
図4-4に示すように、胴部の側シールが完成した状態を示す横断面図である。
ここでは、バリア紙の端部(エッジ)をプロテクトした被覆樹脂膜105の幅より、シール幅が大きい例を示している。
側シール部では、加熱と同時に加圧されるので、融着部の厚みが圧縮されている。圧縮されると、シーラント層などの樹脂が一部流れ、やや、広がって段差を埋めるような形状になり、より強固な融着ができる。
【0023】
本発明の紙カップに使用する積層シートを構成するバリア紙の紙繊維層は、坪量100~400g/m2の紙が使用される。
【0024】
また、積層シートを構成する二軸延伸フィルムは、二軸延伸したポリエチレンテレフタレートフィルムや、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムなどが使用できる。リサイクル性を高めた紙カップにするには、比重の低い二軸延伸ポリアミドフィルムを使用することが望ましい。
【0025】
さらに、内シーラント樹脂層や外シーラント樹脂層に用いるシーラント樹脂としては、低密度ポリエチレンや、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、高密度ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体など、使用する温度に適した素材を選択して使用することができる。
【実施例0026】
<実施例>
基材シートとして、紙繊維層/クレーコート層/バリア剤層の状態で、予め、
図3-1、
図3-2に示すように、側シール部脇を、シールする幅よりも広幅とする長窓に抜いておいた。
その基材シートを使用し、その外側にポリエチレン(20μm)、内側にポリエチレン(20μm)/二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/ポリエチレン(60μm)をポリエチレン(20μm)を介して貼り合せた。
その結果、表側からポリエチレン(20μm)/紙繊維層/クレーコート層/バリア剤層/ポリエチレン(20μm)/ポリエチレン(20μm)/二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/ポリエチレン(60μm)の積層シートを得た。
胴部端面を
図4-4のようにエッジプロテクト加工して、紙カップを作成した。
蓋材は、外側からポリエチレンテレフタレートフィルム(18μm)/アルミニウム箔(12μm)/ポリエチレン(60μm)の構成の蓋材を使用し、上記トップカール上端に融着した。
【0027】
<比較例1>
実施例と同一の積層シートを作り、スカイブ-ヘミング方式でエッジプロテクト加工して、紙カップを作成した。
蓋材は、実施例と同じものを使用した。
【0028】
<比較例2>
実施例と同一の紙を使用し、但し、貼り合せフィルムをポリエチレン(60μm)としてカップを作成した。
部材構成:ポリエチレン(20μm)/紙繊維層/クレーコート層/バリア剤層/ポリエチレン(20μm)/ポリエチレン(60μm)
胴部の端面をエッジプロテクトする方法として、ポリエチレン(60μm)のフィルムをエッジテープとし、胴部の側シール部における端面を該エッジテープで被覆し保護した。
【0029】
<評価内容>
上記実施例と比較例の紙カップを、株式会社日立ハイテクサイエンス社製MOCON酸素透過率測定装置(登録商標)OX-TRAN2/22を使用し、気温23℃における1パック当たりの酸素透過量を測定した。
【0030】
<評価結果>
実施例では0.01cc/pack/dayであった。
比較例1では0.001cc/pack/dayであった。
比較例2では、成形時にエッジテープが破れ、カップ成形ができず、評価に至らなかった。
【0031】
上記実験結果からわかるように、本発明の紙カップは、基材層の側シール部脇を予め部分的な長窓状に抜いておく事で、エッジプロテクトを確実に行うことができるので、高いバリア性を有する紙カップを得ることができる。
特にエッジプロテクトするフィルムに、二軸延伸フィルムが入っている為、加工時のロスが少なく、確実にバリア性を向上できた。
【0032】
本発明は、以上のようなもので、本発明の紙カップは、シートの側面を繋ぎ合せて内側となる側シール部の端面が、二軸延伸フィルム/シーラント樹脂層の被覆樹脂で覆われているので、酸素や水の透過率は低く、高い保存性能を得ることができる。
また、液体などを保存しても、紙カップが崩れることもなく、安心して使用できる。
特に高価なバリア性フィルムを使用せずに、高いバリア性を得ると共に、基材層を投入する前に側シール部の脇に長窓を抜く工程を入れるだけで、廃棄する時にも焼却などしやすく、汎用の紙カップの製造ラインを応用でき、高速で、かつ、安価に製造可能であるなど、本発明のメリットは大きい。