(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049352
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】光検出モジュール及びビート分光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 31/02 20060101AFI20220322BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20220322BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20220322BHJP
G01N 21/39 20060101ALI20220322BHJP
G01J 1/04 20060101ALI20220322BHJP
H01L 31/0264 20060101ALN20220322BHJP
G01N 21/3504 20140101ALN20220322BHJP
【FI】
H01L31/02 B
G01J1/02 B
G01N21/27 H
G01N21/39
G01J1/04 K
H01L31/08 L
G01N21/3504
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155515
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】道垣内 龍男
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昭生
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 正洋
(72)【発明者】
【氏名】枝村 忠孝
【テーマコード(参考)】
2G059
2G065
5F849
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC04
2G059DD13
2G059EE01
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2G059GG09
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2G059MM04
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2G065CA27
2G065CA30
2G065DA08
5F849AA17
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5F849DA35
5F849FA05
5F849JA05
5F849JA08
5F849JA12
5F849LA01
5F849XB08
5F849XB24
(57)【要約】
【課題】応答速度の高速化及び信頼性の確保を実現することができる光検出モジュール、及び波長掃引範囲を広くすることできるビート分光装置を提供する。
【解決手段】光検出モジュール1は、光検出器10及び固定部材50を備える。光検出器10は、半導体基板11と、メサ部12と、第1コンタクト層13と、第2コンタクト層14と、半導体基板11の主面11a上に平面状に形成され、第1コンタクト層13及び第2コンタクト層14の一方に電気的に接続された第1電極15と、を有する。固定部材50は、絶縁基板51と、絶縁基板51の主面51a上に平面状に形成された第1配線52と、を有する。絶縁基板51の主面51aには、凹部54が形成されており、メサ部12の少なくとも一部は、凹部54内に配置されている。第1電極15は、第1配線52に面接触した状態で、第1配線52に電気的に接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光検出器と、
前記光検出器が固定された固定部材と、を備え、
前記光検出器は、
主面を有する半導体基板と、
検出光の入射量に応じて電気信号を発生させる半導体領域を含み、前記半導体基板の前記主面上に形成されたメサ部と、
前記メサ部における前記半導体基板とは反対側の表面上に形成された第1コンタクト層と、
前記半導体基板の前記主面と前記メサ部との間に形成された第2コンタクト層と、
前記半導体基板の前記主面上に平面状に形成され、前記第1コンタクト層及び前記第2コンタクト層の一方に電気的に接続された第1電極と、を有し、
前記固定部材は、
主面を有する絶縁基板と、
前記絶縁基板の前記主面上に平面状に形成された第1配線と、を有し、
前記絶縁基板の前記主面には、凹部が形成されており、
前記メサ部の少なくとも一部は、前記凹部内に配置されており、
前記第1電極は、前記第1配線に面接触した状態で、前記第1配線に電気的に接続されている、光検出モジュール。
【請求項2】
前記メサ部の前記半導体領域は、サブバンド間吸収によって検出光を吸収する吸収領域と前記サブバンド間吸収によって励起された電子を輸送する輸送領域とが交互に積層された活性層を含む、請求項1に記載の光検出モジュール。
【請求項3】
前記半導体基板の前記主面に平行な方向における前記メサ部の一方の端面は、前記検出光の入射面となっている、請求項1又は2に記載の光検出モジュール。
【請求項4】
前記半導体基板の前記主面に平行な方向における前記メサ部の一方の端面は、前記半導体基板の側面と面一になっている、請求項1~3のいずれか一項に記載の光検出モジュール。
【請求項5】
前記メサ部の前記端面と向かい合うように配置され、前記メサ部の前記端面に向けて前記検出光を収束させるレンズを更に備える、請求項3又は4に記載の光検出モジュール。
【請求項6】
前記凹部は、前記絶縁基板の側面に開口している、請求項1~5のいずれか一項に記載の光検出モジュール。
【請求項7】
前記凹部は、前記絶縁基板の主面の外縁から離間するように前記主面に形成された穴によって構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の光検出モジュール。
【請求項8】
前記光検出器は、前記第1電極と前記第1コンタクト層及び前記第2コンタクト層の前記一方とに電気的に接続された接続配線を更に有し、
前記接続配線の少なくとも一部は、前記凹部内に配置されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の光検出モジュール。
【請求項9】
前記接続配線は、シート状のエアブリッジ配線である、請求項8に記載の光検出モジュール。
【請求項10】
前記光検出器は、前記半導体基板の前記主面上に平面状に形成され、前記第1コンタクト層及び前記第2コンタクト層の他方に電気的に接続された第2電極を更に有し、
前記固定部材は、前記絶縁基板の前記主面上に平面状に形成された第2配線を更に有し、
前記第2電極は、前記第2配線に面接触した状態で、前記第2配線に電気的に接続されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の光検出モジュール。
【請求項11】
前記第2コンタクト層は、前記半導体基板の前記主面に垂直な方向から見た場合に、前記半導体基板の前記主面と前記メサ部との間に位置する第1部分と、前記メサ部の外側に位置する第2部分と、を有し、
前記第2電極は、前記第2コンタクト層の前記第2部分上に形成されている、請求項10に記載の光検出モジュール。
【請求項12】
前記第1電極は、半田層を介して前記第1配線に面接触しており、
前記第2電極は、半田層を介して前記第2配線に面接触している、請求項11に記載の光検出モジュール。
【請求項13】
前記光検出器は、前記半導体基板の前記主面上に平面状に形成され、前記第2コンタクト層から電気的に分離された高さ調整層を有し、
前記第1電極は、前記高さ調整層上に形成されている、請求項11又は12に記載の光検出モジュール。
【請求項14】
前記第1配線は、前記第1配線を伝搬する電気信号の波長の1/4以下の長さを有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の光検出モジュール。
【請求項15】
光導波方向に垂直な方向における前記メサ部の両側面は、露出している、請求項1~14のいずれか一項に記載の光検出モジュール。
【請求項16】
前記メサ部は、前記凹部の内面から離間している、請求項1~15のいずれか一項に記載の光検出モジュール。
【請求項17】
波長固定光源と、
波長可変光源と、
前記波長固定光源からの光及び前記波長可変光源からの光を前記検出光として検出する請求項1~16のいずれか一項に記載の光検出モジュールと、を備え、
前記波長固定光源からの光と前記波長可変光源からの光との間の波長差に応じた周波数を有するビート信号の周波数が掃引されるように、前記波長可変光源からの光の波長が変化させられつつ、前記波長固定光源からの光及び前記波長可変光源からの光が前記光検出器により検出される、ビート分光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出モジュール及びビート分光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、量子カスケード検出器が開示されている。量子カスケード検出器では、量子井戸構造におけるサブバンド間遷移(サブバンド間吸収)を利用して光が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような光検出器には、応答速度の高速化が求められる。また、信頼性の確保も併せて求められる。そこで、本発明は、応答速度の高速化及び信頼性の確保を実現することができる光検出モジュール、及び波長掃引範囲を広くすることができるビート分光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の光検出モジュールは、光検出器と、光検出器が固定された固定部材と、を備え、光検出器は、主面を有する半導体基板と、検出光の入射量に応じて電気信号を発生させる半導体領域を含み、半導体基板の主面上に形成されたメサ部と、メサ部における半導体基板とは反対側の表面上に形成された第1コンタクト層と、半導体基板の主面とメサ部との間に形成された第2コンタクト層と、半導体基板の主面上に平面状に形成され、第1コンタクト層及び第2コンタクト層の一方に電気的に接続された第1電極と、を有し、固定部材は、主面を有する絶縁基板と、絶縁基板の主面上に平面状に形成された第1配線と、を有し、絶縁基板の主面には、凹部が形成されており、メサ部の少なくとも一部は、凹部内に配置されており、第1電極は、第1配線に面接触した状態で、第1配線に電気的に接続されている。
【0006】
この光検出モジュールでは、光検出器における半導体基板上の第1電極が、固定部材における絶縁基板上の第1配線に面接触した状態で、第1配線に電気的に接続されている。これにより、例えばワイヤボンディングにより第1電極と第1配線とが接続される場合と比べて、ワイヤによりインダクタンスが発生するのを回避することができ、インダクタンスを低減することができる。その結果、応答速度を高速化することができる。また、第1電極と第1配線とを面接触した状態で接続することで、光検出器と固定部材とを強固に固定することができ、信頼性を確保することができる。更に、この光検出モジュールでは、光検出器のメサ部の少なくとも一部が、絶縁基板に形成された凹部内に配置されている。これにより、繊細なメサ部を保護することができ、信頼性を確保することができる。よって、この光検出モジュールによれば、応答速度の高速化及び信頼性の確保を実現することができる。
【0007】
メサ部の半導体領域は、サブバンド間吸収によって検出光を吸収する吸収領域とサブバンド間吸収によって励起された電子を輸送する輸送領域とが交互に積層された活性層を含んでいてもよい。このような活性層をメサ部が有する場合、応答速度の高速化の観点から、インダクタンスを低減することが特に重要となる。この点、この光検出モジュールでは、上述したとおりインダクタンスを低減することができ、応答速度の高速化を実現することができる。
【0008】
半導体基板の主面に平行な方向におけるメサ部の一方の端面は、検出光の入射面となっていてもよい。この場合、メサ部において光を効果的に吸収することができ、出力信号の強度を確保することができる。
【0009】
半導体基板の主面に平行な方向におけるメサ部の一方の端面は、半導体基板の側面と面一になっていてもよい。この場合、メサ部の当該端面を検出光の入射面として容易に利用することができる。
【0010】
本発明の光検出モジュールは、メサ部の端面と向かい合うように配置され、メサ部の端面に向けて検出光を収束させるレンズを更に備えていてもよい。この場合、メサ部の端面の幅(光導波方向に垂直な方向における長さ)を狭くすることができ、平面視におけるメサ部の面積を小さくすることができる。その結果、寄生容量を低減することができ、応答速度を一層高速化することができる。また、メサ部の面積が一定であると仮定すると、メサ部の幅を狭くすることで、光導波方向におけるメサ部の長さを長くすることができる。その結果、メサ部において光を効果的に吸収することができ、出力信号の強度を確保することができる。
【0011】
凹部は、絶縁基板の側面に開口していてもよい。この場合、メサ部の端面に検出光を容易に入射させることができる。或いは、凹部は、絶縁基板の主面の外縁から離間するように主面に形成された穴によって構成されていてもよい。
【0012】
光検出器は、第1電極と第1コンタクト層及び第2コンタクト層の一方とに電気的に接続された接続配線を更に有し、接続配線の少なくとも一部は、凹部内に配置されていてもよい。この場合、接続配線を保護することができ、信頼性を確実に確保することができる。
【0013】
接続配線は、シート状のエアブリッジ配線であってもよい。この場合、凹部内に配置することで繊細なエアブリッジ配線を保護することができ、信頼性を確実に確保することができる。
【0014】
光検出器は、半導体基板の主面上に平面状に形成され、第1コンタクト層及び第2コンタクト層の他方に電気的に接続された第2電極を更に有し、固定部材は、絶縁基板の主面上に平面状に形成された第2配線を更に有し、第2電極は、第2配線に面接触した状態で、第2配線に電気的に接続されていてもよい。この場合、例えばワイヤボンディングにより第2電極と第2配線とが接続される場合と比べてインダクタンスを低減することができ、応答速度を一層高速化することができる。また、第2電極と第2配線とを面接触した状態で接続することで、光検出器と固定部材とを強固に固定することができ、信頼性を確実に確保することができる。
【0015】
第2コンタクト層は、半導体基板の主面に垂直な方向から見た場合に、半導体基板の主面とメサ部との間に位置する第1部分と、メサ部の外側に位置する第2部分と、を有し、第2電極は、第2コンタクト層の第2部分上に形成されていてもよい。この場合、第2電極の面積を大きく確保することができ、第2電極と第2配線との間の接触面積を大きく確保することができる。
【0016】
第1電極は、半田層を介して第1配線に面接触しており、第2電極は、半田層を介して第2配線に面接触していてもよい。この場合、第1電極と第1配線とを電気的及び機械的に強固に接続することができると共に、第2電極と第2配線とを電気的及び機械的に強固に接続することができる。また、第1電極と第1配線とを接続すると共に第2電極と第2配線とを接続する際に、第1電極と第2電極との間に高さの差が存在する場合でも、当該高さの差を半田層によって吸収することができ、各接続箇所において良好な面接触を実現することができる。
【0017】
検出器は、半導体基板の主面上に平面状に形成され、第2コンタクト層から電気的に分離された高さ調整層を有し、第1電極は、高さ調整層上に形成されていてもよい。この場合、第1電極と第1配線とを接続すると共に第2電極と第2配線とを接続する際に、第1電極と第2電極との間に高さの差が存在する場合でも、高さ調整層によって第1電極と第2電極との間の高さの差を低減することができ、各接続箇所において良好な面接触を実現することができる。
【0018】
第1配線は、第1配線を伝搬する電気信号の波長の1/4以下の長さを有してもよい。この場合、インピーダンスマッチングを実現することができる。
【0019】
光導波方向に垂直な方向におけるメサ部の両側面は、露出していてもよい。この場合、寄生容量の発生を抑制することができ、応答速度を一層高速化することができる。
【0020】
メサ部は、凹部の内面から離間していてもよい。この場合、メサ部を確実に保護することができる。
【0021】
本発明のビート分光装置は、波長固定光源と、波長可変光源と、波長固定光源からの光及び波長可変光源からの光を検出光として検出する上記光検出モジュールと、を備え、波長固定光源からの光と波長可変光源からの光との間の波長差に応じた周波数を有するビート信号の周波数が掃引されるように、波長可変光源からの光の波長が変化させられつつ、波長固定光源からの光及び波長可変光源からの光が光検出器により検出される。このビート分光装置が備える光検出モジュールでは、上述した理由により応答速度が高速化されている。そのため、このビート分光装置では、ビート分光における波長掃引範囲を広くすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、応答速度の高速化及び信頼性の確保を実現することができる光検出モジュール、及び波長掃引範囲を広くすることできるビート分光装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態の光検出モジュールの正面図である。
【
図7】光検出モジュールの実装状態を示す斜視図である。
【
図8】光検出モジュールの実装状態を示す平面図である。
【
図9】光検出モジュールの実装状態を示す正面図である。
【
図11】高周波領域における出力信号の例を示すグラフである。
【
図12】(a)は、実施形態の光検出器の正面図であり、(b)は、第1変形例の光検出器の正面図である。
【
図13】第2変形例に係る光検出モジュールの断面図である。
【
図14】第2変形例に係る固定部材の平面図である。
【
図15】第3変形例に係る光検出器の平面図である。
【
図17】光検出器の感度特性及び波長固定光源の発振波長を示すグラフである。
【
図18】波長固定光源及び波長可変光源の発振波長を示すグラフである。
【
図19】波長可変光源の注入電流と発振波長との間の関係を示すグラフである。
【
図20】波長可変光源への注入電流とビート周波数との間の関係を示すグラフである。
【
図23】ビート分光の測定結果を示すグラフである。
【
図24】ビート分光の測定結果を示すグラフである。
【
図25】ビート分光の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
[光検出モジュール]
【0025】
図1に示されるように、光検出モジュール1は、光検出器10と、光検出器10が固定された固定部材(サブマウント)50と、を備えている。光検出器10は、例えば量子カスケード検出器(Quantum Cascade Detector:QCD)であり、量子井戸構造におけるサブバンド間遷移(サブバンド間吸収)を利用して検出光DLを検出する。
[光検出器]
【0026】
図2、
図3及び
図4に示されるように、光検出器10は、半導体基板11と、メサ部12と、第1コンタクト層13と、第2コンタクト層14と、第1電極15と、エアブリッジ配線16と、第2電極17と、を備えている。
【0027】
半導体基板11は、例えば、矩形平板状に形成され、平坦な主面11aを有している。半導体基板11は、例えば、半絶縁性のInP基板である。以下、半導体基板11の幅方向、奥行き方向、厚さ方向をそれぞれX方向、Y方向、Z方向として説明する。X方向、Y方向及びZ方向は互いに直交している。なお、
図2~
図4では
図1に対して光検出器10の各構成がX方向に関して反転して配置されている。実際には、光検出器10の各構成は、
図2~
図4に示される配置に対してX方向に関して反転して配置されている。要は、後述するように、第1電極15が第1配線52に接続されると共に第2電極17が第2配線53に接続されるように、各要素が配置されていればよい。
【0028】
メサ部12は、光導波方向Aに沿って延在するように半導体基板11の主面11a上に形成されている。光導波方向Aは、Y方向と平行である。メサ部12は、第2コンタクト層14を介して主面11a上に形成されており、半導体基板11からZ方向に突出している。X方向におけるメサ部12の一対の側面12aの各々は、露出している。すなわち、各側面12aは、他の要素によって覆われていない。側面12aは、X方向と交差するように延在する表面であり、この例ではX方向に垂直な平坦面である。
【0029】
メサ部12は、活性層21を含んでいる。
図5に示されるように、活性層21は、Z方向(半導体基板11の主面11aに垂直な方向)に沿って交互に積層された複数の吸収領域22及び複数の輸送領域23を含んでおり、量子カスケード構造を有している。活性層21においては、吸収領域22及び輸送領域23の対からなる単位積層体24が繰り返し積層されている。この例では、活性層21は、感度波長のピークが4.5μmとなるように構成されており、90周期分の単位積層体24を含んでいる。単位積層体24の周期数は、例えば10以上150以下であってもよい。
【0030】
吸収領域22は、障壁層261及び井戸層271を含んでおり、サブバンド間吸収によって検出光DLを吸収する。輸送領域23は、複数の障壁層262~267及び複数の井戸層272~277を含んでおり、吸収領域22におけるサブバンド間吸収によって励起された電子を次周期の吸収領域22へと輸送する。障壁層261~267及び井戸層272~277の組成、層厚、ドーピング状態の一例は、
図5に示されるとおりである。
【0031】
活性層21に検出光DLが入射すると、活性層21において検出光DLが吸収される。より具体的には、サブバンド間吸収による電子励起、励起された電子の緩和、輸送及び次周期の単位積層体24への電子の抽出が複数の単位積層体24において繰り返されることにより、活性層21においてカスケード的な光吸収が起こる。光検出モジュール1では、この光吸収により発生する電流を電気信号として取り出し、その電流量を計測することにより、検出光DLを検出する。すなわち、活性層21は、検出光DLの入射量に応じて電気信号を発生させる半導体領域として機能する。
【0032】
メサ部12は、Y方向に長尺に形成されており、例えば、平面視において(Z方向から見た場合に)長辺がY方向と平行な長方形状に形成されている。すなわち、平面視において、Y方向(光導波方向A)におけるメサ部12の長さL1は、X方向(光導波方向Aに垂直な方向)におけるメサ部12の長さ(幅)L2よりも長い。長さL1は、例えば50μm以上である。長さL1は、例えば50μm~3000μm程度であり、この例では100μmである。長さL2は、例えば10μm~1000μm程度であり、この例では25μmである。平面視におけるメサ部12のアスペクト比(長さL1の長さL2に対する比)は、1~100である。メサ部12のアスペクト比は、1.5~50であってもよく、好ましくは2~10であってもよい。長さL1,L2は、10μm以上であってもよい。長さL1が50μmよりも小さいと、出力信号の強度を確保することが難しくなるおそれがある。長さL2が10μmよりも小さいと、エアブリッジ配線16を形成することが難しくなるおそれがある。長さL1が3000μmよりも大きいか、又は長さL2が1000μmよりも大きいと、素子サイズが大きくなり、高いカットオフを実現することが難しくなるおそれがある。
【0033】
第1コンタクト層13は、メサ部12における半導体基板11とは反対側の表面12b上に形成された上部コンタクト層である。第2コンタクト層14は、半導体基板11の主面11aとメサ部12との間に形成された下部コンタクト層である。第1コンタクト層13及び第2コンタクト層14の組成、層厚、ドーピング状態の一例は、
図5に示されるとおりである。
【0034】
第2コンタクト層14は、メサ部12よりも各辺の長さが長い長方形状に形成されており、メサ部12からはみ出した部分を有している。すなわち、第2コンタクト層14は、平面視において、半導体基板11の主面11aとメサ部12との間に位置する第1部分14aと、メサ部12の外側に位置する第2部分14bと、を有している。
【0035】
メサ部12、第1コンタクト層13及び第2コンタクト層14は、例えば結晶成長により半導体基板11の主面11a上に形成される。メサ部12、第1コンタクト層13及び第2コンタクト層14は、結晶成長後にフォトリソグラフィ技術及びドライエッチング技術を用いて第2コンタクト層14の表面又は第2コンタクト層14の内部に至るようにエッチングを行うことにより、形成される。製造時には、例えば、メサ部12、第1コンタクト層13及び第2コンタクト層14に対応する部分をウェハ上に複数形成した後にウェハを切断することにより、複数の素子が一括形成される。
【0036】
この例では、Y方向(光導波方向A)(半導体基板11の主面11aに平行な方向)におけるメサ部12の一方の端面12cが、検出光DLの入射面(受光面)となっている。端面12cから入射した検出光DLは、光導波方向Aに沿ってメサ部12内を進行する。端面12cは、半導体基板11の側面11bと面一になっている。すなわち、端面12cと側面11bは同一の平面上に位置する。側面11bは、Y方向と交差するように延在する表面であり、この例ではY方向に垂直な平坦面である。この例では、側面11b及び端面12cは、ウェハの切断により形成される劈開面である。
【0037】
第1電極15は、半導体基板11の主面11a上に平面状に形成されている。第1電極15は、例えば、金により構成されており、パターニングにより正方形状に形成されている。第1電極15は、メサ部12に対してX方向における一方側に位置する接続部分15aを有している。この例では、接続部分15aは、第1電極15の全体である。第1電極15は、エアブリッジ配線16を介して第1コンタクト層13に電気的に接続されている。第1電極15は、活性層21から出力される電流を外部に取り出すために設けられている。第1電極15の面積は、例えば10000μm2以上である。この場合、第1電極15と後述する第1配線52とを良好に面接触させることができる。この例では、第1電極15の寸法は400μm×400μmである。
【0038】
エアブリッジ配線16は、第1コンタクト層13及び第1電極15に電気的に接続された接続配線である。エアブリッジ配線16は、第1コンタクト層13からX方向における一方側に引き出され、第1コンタクト層13と第1電極15との間に架け渡されている。この例では、エアブリッジ配線16は、第1コンタクト層13からX方向と平行な方向に沿って引き出されている。エアブリッジ配線16は、平面視において、X方向における第1コンタクト層13(メサ部12)の端部から引き出されている。エアブリッジ配線16は、空中を延在するブリッジ部16aを有する空中配線(立体配線)である。ブリッジ部16aは、後述するめっき層151を介して第1電極15(接続部分15a)に電気的に接続されている。エアブリッジ配線16は、第1コンタクト層13上に形成された平面状の部分16bを更に有している。ブリッジ部16aは部分16bと一体に形成されている。
【0039】
エアブリッジ配線16は、例えば次の工程により形成される。まず、半導体基板11の主面11aにおけるメサ部12と第1電極15との間の領域に、パターニングによりレジストを形成する。続いて、レジスト上にめっきにより厚さ5μm程度の金の薄膜を形成し、その後にレジストを除去する。これにより、シート状のエアブリッジ配線16が形成される。
【0040】
ブリッジ部16aは、幅広なシート状(層状)に形成されている。Y方向(光導波方向A)におけるブリッジ部16aの長さ(幅)L3は、X方向におけるブリッジ部16aの長さL4よりも長い。この例では、ブリッジ部16aは、Y方向から見た場合に湾曲して延在している。この場合、
図4に示されるように、X方向におけるブリッジ部16aの長さL4は、延在方向に沿ってのブリッジ部16aの長さ(実長)である。長さL3は、例えば50μm以上である。長さL3は、例えば50μm~3000μm程度であり、この例では80μmである。長さL4は、例えば5μm~200μm程度であり、この例では30μmである。ブリッジ部16aのアスペクト比(長さL3の長さL4に対する比)は、0.25~100であってもよく、好ましくは1~50であってもよい。ブリッジ部16aのアスペクト比は、より好ましくは1~20であってもよく、更に好ましくは2~10であってもよい。Z方向におけるブリッジ部16a(エアブリッジ配線16)の厚さは、1μm以上10μm以下である。
【0041】
第2電極17は、第2コンタクト層14の第2部分14b上に平面状に形成されている。換言すれば、第2電極17は、第2コンタクト層14を介して半導体基板11の主面11a上に平面状に形成されている。第2電極17は、例えば、金により構成されており、パターニングにより正方形状に形成されている。第2電極17は、メサ部12に対してX方向における他方側(第1電極15とは反対側)に配置されている。第2電極17は、第2コンタクト層14に電気的に接続されている。第2電極17は、活性層21から出力される電流を外部に取り出すために設けられている。第2電極17は、第1電極15から電気的に分離されている。第2電極17の面積は、例えば10000μm2以上である。この場合、第2電極17と後述する第2配線53とを良好に面接触させることができる。この例では、第2電極17の寸法は400μm×400μmであり、第1電極15と同一である。
【0042】
上述したエアブリッジ配線16の形成工程におけるめっきの際に、第1電極15及び第2電極17上にもめっき層が形成されてもよい。
図2~
図4では、これらのめっき層が符号151,171で示されている。めっき層151,171は、それぞれ第1電極15及び第2電極17を構成しているとみなすことができる。この例では、めっき層151は第1電極15よりも一回り小さく形成されている(第1電極15の一部上のみに形成されている)が、第1電極15の全面上に形成されてもよい。同様に、めっき層171は第2電極17よりも一回り小さく形成されているが、第2電極17の全面上に形成されてもよい。めっき層151は、エアブリッジ配線16を構成しているとみなすこともできる。めっき層151,171は形成されなくてもよい。
[固定部材]
【0043】
図1及び
図6に示されるように、固定部材50は、絶縁基板51と、第1配線52と、第2配線53と、を備えている。
図6では、理解の容易化のために第1配線52及び第2配線53にハッチングが付されている。絶縁基板51は、例えば矩形平板状に形成され、主面51aと、主面51aとは反対側の51bと、を有している。この例では、主面51a,51bは互いに平行な平坦面である。絶縁基板51の母材は、例えばアルミナ(酸化アルミニウム)である。この場合、高周波数帯での誘電損失を低減することができる。絶縁基板51の母材は、絶縁性が高い材料であるSiC又はセラミックスであってもよい。
【0044】
絶縁基板51の主面51aには、凹部54が形成されている。この例では、凹部54は、Y方向(光導波方向A)に沿って延在する溝であり、絶縁基板51の側面51cに開口している。すなわち、凹部54は、側面51cに至るように延在している。側面51cは、Y方向と交差するように延在する表面であり、この例ではY方向に垂直な平坦面である。一例として、凹部54は、平面視において長方形状を呈し、Y方向に垂直な断面において略半円形状を呈している。
【0045】
第1配線52は、絶縁基板51の主面51a上に平面状に形成されている。第1配線52は、例えば、金により構成されており、パターニングにより所定の形状に形成されている。第1配線52は、凹部54に対してX方向における一方側に配置されている。第1配線52は、長辺がY方向と平行な長方形状に形成されており、絶縁基板51の側面51c,51d間にわたって延在している。側面51dは、絶縁基板51における側面51cとは反対側の表面である。
【0046】
第2配線53は、絶縁基板51の主面51a上に平面状に形成されている。第2配線53は、第1配線52から電気的に分離されている。第2配線53は、例えば、金により構成されており、パターニングにより所定の形状に形成されている。第2配線53は、絶縁基板51の主面51aから側面51eを通って主面51bへ至るように(回り込むように)形成されている。すなわち、第2配線53は、主面51a上に配置された第1部分53aと、主面51b及び側面51e上にわたって配置された第2部分53bと、を有している。第1部分53aは、凹部54に対してX方向における他方側(第1配線52とは反対側)に配置されている。第1部分53aは、長辺がX方向と平行な長方形状に形成された部分53a1と、長辺がY方向と平行な長方形状に形成された部分53a2と、を有している。部分53a2は、部分53a1から絶縁基板51の側面51dに至るように延在している。第2部分53bは、主面51b及び側面51eの全面上に形成されている。
【0047】
第1配線52上には、半田層55が形成されており、第2配線53上には半田層56が形成されている。半田層56は、第2配線53の部分53a1上に形成されている。各半田層55,56は、例えば金属材料により正方形状に形成されており、1μm以上10μm以下程度の厚さを有している。
【0048】
図1に示されるように、光検出器10は、半導体基板11の主面11aが絶縁基板51の主面51aと向かい合った状態で、固定部材50に固定されている。光検出器10が固定部材50に固定された固定状態においては、メサ部12の少なくとも一部が凹部54内に配置されている。この例では、メサ部12の先端部(Y方向における半導体基板11とは反対側の端部)が凹部54内に配置されている。メサ部12は、凹部54の内面54aから離間している。メサ部12の長手方向は、凹部54の長手方向と平行になっている。メサ部12の端面12cは、Y方向から見た場合に凹部54から露出している。固定状態においては、エアブリッジ配線16(ブリッジ部16a)の一部も、内面54aから離間するように凹部54内に配置されている。これにより、エアブリッジ配線16と第1コンタクト層13との間の接続部が凹部54内に配置されている。
【0049】
光検出器10は、第1電極15が第1配線52に接続されると共に第2電極17が第2配線53に接続されることにより、固定部材50に固定されている。第1電極15は、半田層55を用いて第1配線52に融着されており、半田層55を介して第1配線52に面接触した状態で、第1配線52に電気的に接続されている。第2電極17は、半田層56を用いて第2配線53に融着されており、半田層56を介して第2配線53に面接触した状態で、第2配線53に電気的に接続されている。第1電極15と第1配線52との間の接触面積、及び第2電極17と第2配線53との間の接触面積の各々は、10000μm
2以上である。固定状態においては、後述するコネクタ80の端子81が接続可能となるように、第1配線52の一部が露出する(
図7、
図8)。
[光検出モジュールの実装状態]
【0050】
図7、
図8及び
図9に示されるように、光検出モジュール1は、例えばコネクタ80に接続されて使用される。コネクタ80は、例えばSMAコネクタであり、SMAケーブルの信号線に電気的に接続された端子81を有している。端子81は、固定部材50の第1配線52に機械的に接続されており、第1配線52に電気的に接続されている。或いは、端子81は、半田付けにより第1配線52に接続されてもよい。このように、この例では、第1配線52は、信号線に電気的に接続される信号側配線である。
【0051】
コネクタ80は、本体部材82と、本体部材82と一体に形成された支持部材83と、を更に有している。本体部材82及び支持部材83は、SMAケーブルのグランド線に電気的に接続されている。光検出モジュール1は、固定部材50が支持部材83に接続されることにより、コネクタ80に固定されている。例えば、固定部材50の第2配線53の第2部分53bが、支持部材83の表面上に形成された金層に、半田付けにより接続されている。金層は、例えば支持部材83の全面を覆うように形成されている。或いは、本体部材82は、支持部材83と別体に構成されてもよい。この場合、固定部材50が接続された支持部材83が、ネジ止め又は半田付けにより本体部材82に固定されてもよい。以上の接続により、第2配線53がグランド線に電気的に接続される。すなわち、この例では、第2配線53は、グランド線に電気的に接続されるグランド側配線である。この例では、光検出器10とコネクタ80との間の電気的な接続が、ボンディングワイヤを用いることなく実現されている(ワイヤレス接続)。これにより、ボンディングワイヤに起因するインダクタンスの発生を回避することができる。また、ボンディングワイヤを用いた場合、衝撃や引っ掛かり等によりワイヤが破損するおそれがあるため、装置の取扱いに注意を要する。これに対し、この例では、ボンディングワイヤが用いられていないため、装置の取り扱いを容易化することができる。
【0052】
第1配線52の形状(配線パターン)は、インピーダンスマッチングを考慮して設定されている。この例では、第1配線52は、マイクロストリップ線路として構成されている。一例として、絶縁基板51の厚さが0.5mmであり、絶縁基板51の比誘電率が9.8であり、第1配線52の厚さが0.8μmであり、20GHzにおけるマッチング抵抗値を50Ωとする場合には、第1配線52の幅Wが0.5mm以下、第1配線52の長さL5が1.45mm以下に設定される(
図6)。これにより、第1配線52の長さL5が、第1配線52を伝搬する電気信号の波長(電気長)の1/4以下の長さとなる。このように、第1配線52の長さL5を第1配線52の設計パラメータに基づいて算出される電気長の1/4以下とすることで、所望の周波数帯におけるインピーダンスマッチングが可能となる。なお、第1配線52は、マイクロストリップ線路ではなくコプレーナ線路として構成されてもよい。
【0053】
図8に示されるように、光検出モジュール1(光検出器10)は、レンズ40を更に備えている。レンズ40は、光入射面であるメサ部12の端面12cと向かい合うように配置されており、端面12cに向けて検出光DLを集束させ、端面12c上で検出光DLを集光させる。レンズ40の開口数(NA)は例えば0.4以上であり、集光径は数μm~数十μmである。レンズ40の両面及び端面12c上には、誘電体多層膜を含む低反射層が形成されていてもよい。この場合、これらの表面における光検出器10の感度波長範囲の光に対する透過率を95%以上とすることができる。
[作用及び効果]
【0054】
光検出モジュール1では、光検出器10における半導体基板11上の第1電極15が、固定部材50における絶縁基板51上の第1配線52に面接触した状態で、第1配線52に電気的に接続されている(面接続されている)。これにより、例えばワイヤボンディングにより第1電極15と第1配線52とが接続される場合と比べて、ワイヤによりインダクタンスが発生するのを回避することができ、インダクタンスを低減することができる。その結果、応答速度を高速化することができる。また、第1電極15と第1配線52とを面接触した状態で接続することで、光検出器10と固定部材50とを強固に固定することができ、信頼性を確保することができる。更に、光検出モジュール1では、光検出器10のメサ部12の少なくとも一部が、絶縁基板51に形成された凹部54内に配置されている。これにより、繊細なメサ部12を保護することができ、信頼性を確保することができる。例えば、外部からの接触、浮遊物の付着、風圧等による破損(外部要因による機械的損傷)からメサ部12を保護することができる。よって、光検出モジュール1によれば、応答速度の高速化及び信頼性の確保を実現することができる。
【0055】
図10は、光検出器10の応答特性を示すグラフであり、
図11は、高周波領域における出力信号の例を示すグラフである。
図10に示されるように、光検出器10では、信号強度が-3dB低下するときの周波数であるカットオフ周波数が20GHz以上となっている。例えば、中赤外の光検出器として用いられてきたMCT(HgCdTe)センサでは、数百MHz程度(最大1GHz程度)のカットオフ周波数しか実現することができなかった。これに対し、光検出器10では、カットオフ周波数を高めることができ、応答速度を高速化することができる。また、
図11に示されるように、26GHzを超える周波数帯域において、30dBを超える高い信号強度が得られている。
【0056】
メサ部12が、サブバンド間吸収によって検出光を吸収する吸収領域22とサブバンド間吸収によって励起された電子を輸送する輸送領域23とが交互に積層された活性層21を含んでいる。このような活性層21をメサ部12が有する場合、応答速度の高速化の観点から、インダクタンスを低減することが特に重要となる。この点、光検出モジュール1では、上述したとおりインダクタンスを低減することができ、応答速度の高速化を実現することができる。
【0057】
Y方向(半導体基板11の主面11aに平行な方向)(光導波方向A)におけるメサ部12の一方の端面12cが、検出光DLの入射面となっている。これにより、メサ部12において光を効果的に吸収することができ、出力信号の強度を確保することができる。
【0058】
Y方向におけるメサ部12の一方の端面12cが、半導体基板11の側面11bと面一になっている。これにより、メサ部12の端面12cを検出光DLの入射面として容易に利用することができる。
【0059】
光検出モジュール1が、メサ部12の端面12cと向かい合うように配置され、メサ部12の端面12cに向けて検出光DLを収束させるレンズ40を備えている。これにより、メサ部12の端面12cの幅(X方向における長さ)を狭くすることができ、平面視におけるメサ部12の面積を小さくすることができる。その結果、寄生容量を低減することができ、応答速度を一層高速化することができる。また、メサ部12の面積が一定であると仮定すると、メサ部12の幅を狭くすることで、光導波方向Aにおけるメサ部12の長さを長くすることができる。その結果、メサ部12において光を一層効果的に吸収することができ、出力信号の強度を確実に確保することができる。活性層21における単位積層体24の周期数を増加させて活性層21を厚くすることによっても、吸収効率を高めることができる。活性層21の厚さの増加は、寄生容量の低減、及び素子抵抗の増加によるノイズ低減にも寄与する。一方、周期数が多くなり過ぎると量子効率の低下を招くため、周期数は10以上150以下程度であることが好ましい。
【0060】
凹部54が、絶縁基板51の側面51cに開口している。これにより、Y方向におけるメサ部12の端面12cに検出光を容易に入射させることができる。
【0061】
光検出器10が、第1電極15及び第1コンタクト層13に電気的に接続されたエアブリッジ配線16(接続配線)を有し、エアブリッジ配線16の一部が、凹部54内に配置されている。これにより、繊細なエアブリッジ配線16を保護することができ、信頼性を確実に確保することができる。
【0062】
第2電極17が、第2配線53に面接触した状態で、第2配線53に電気的に接続されている(面接続されている)。これにより、例えばワイヤボンディングにより第2電極17と第2配線53とが接続される場合と比べてインダクタンスを低減することができ、応答速度を一層高速化することができる。また、第2電極17と第2配線53とを面接触した状態で接続することで、光検出器10と固定部材50とを強固に固定することができ、信頼性を確実に確保することができる。
【0063】
第2コンタクト層14が、平面視において、半導体基板11の主面11aとメサ部12との間に位置する第1部分14aと、メサ部12の外側に位置する第2部分14bと、を有し、第2部分14b上に第2電極17が形成されている。これにより、第2電極17の面積を大きく確保することができ、第2電極17と第2配線53との間の接触面積を大きく確保することができる。
【0064】
第1電極15が、半田層55を介して第1配線52に面接触しており、第2電極17が、半田層56を介して第2配線53に面接触している。これにより、第1電極15と第1配線52とを電気的及び機械的に強固に接続することができると共に、第2電極17と第2配線53とを電気的及び機械的に強固に接続することができる。また、第1電極15と第1配線52とを接続すると共に第2電極17と第2配線53とを接続する際に、第1電極15と第2電極17との間に高さの差が存在する場合でも、当該高さの差を半田層55,56によって吸収することができ、各接続箇所において良好な面接触を実現することができる。
【0065】
第1配線52が、第1配線52を伝搬する電気信号の波長の1/4以下の長さを有している。これにより、インピーダンスマッチングを実現することができる。
【0066】
X方向におけるメサ部12の側面12aが露出している。これにより、寄生容量の発生を抑制することができ、応答速度を一層高速化することができる。以下、この点について
図12を参照しつつ説明する。
【0067】
図12(a)は光検出器10の正面図であり、
図12(b)は第1変形例の光検出器10Aの正面図である。
図12(a)に示されるように、光検出器10では、X方向におけるメサ部12の両側面12aが露出している。これに対し、
図12(b)に示されるように、光検出器10Aでは、メサ部12の両側面12aが絶縁層90によって覆われている。絶縁層90は、例えば窒化シリコン(SiN)膜である。絶縁層90は、第1コンタクト層13と第1コンタクト層13上の金属層(エアブリッジ配線16の部分16b)との間に入り込んでいる。この部分は金属により絶縁体が挟まれた構造を有するため、例えば絶縁層90の形成時にアラインメントのずれが生じた場合には、当該部分に僅かながら寄生容量が発生する可能性がある。この点、光検出器10では、メサ部12の両側面12aが露出しているため、そのような寄生容量の発生を抑制することができる。
【0068】
メサ部12が、凹部54の内面から離間している。これにより、メサ部12を確実に保護することができる。光検出器10が量子井戸構造におけるサブバンド間吸収を利用して検出光DLを検出する検出器である場合、外部電圧を印加することなく検出を行うことができるため、メサ部12において熱が発生し難い。そのため、メサ部12を絶縁基板51から離間させることができる。
【0069】
光検出器10では、第1コンタクト層13と第1電極15とがエアブリッジ配線16によって接続されている。これにより、例えばワイヤボンディングにより第1コンタクト層13と第1電極15とが接続される場合と比べて、配線長を短くすることができると共に、平面視におけるメサ部12の面積を小さくすることができる。ワイヤボンディングの場合、配線に必要な面積がワイヤ先端を圧着するため必要な面積から決まっており、例えば100μm×100μm程度の面積が必要となる。配線長を短くすることでインダクタンスを低減することができ、応答速度を高速化することができる。また、メサ部12の面積を小さくすることで寄生容量を低減することができ、このことによっても応答速度を高速化することができる。一方、単にメサ部12の面積を小さくすると、出力信号の強度が低下することが懸念される。この点、光検出器10では、Z方向(半導体基板11の主面11aに垂直な方向)から見た場合に、光導波方向A(Y方向)におけるメサ部12の長さL1が、X方向(光導波方向Aに垂直な方向)におけるメサ部12の長さL2よりも長くなっている。これにより、検出光DLがメサ部12内を進行する経路を長くすることができ、メサ部12において光を効果的に吸収することができる。その結果、メサ部12の面積を小さくした場合でも、出力信号の強度を確保することができる。更に、光検出器10では、エアブリッジ配線16が、第1コンタクト層13からX方向における一方側に引き出され、第1コンタクト層13と第1電極15との間に架け渡されている。これにより、エアブリッジ配線16の幅(光導波方向Aにおける長さ)を確保することが可能となる。配線幅が広い場合、断面積が大きくなることでインダクタンスを一層低減することが可能となると共に、エアブリッジ配線16の強度を確保して信頼性を確保することが可能となる。
【0070】
第1電極15が、メサ部12に対してX方向における一方側に位置する接続部分15aを有し、エアブリッジ配線16が、第1コンタクト層13からX方向における一方側に引き出され、第1電極15の接続部分15aに接続されている。これにより、エアブリッジ配線16を第1コンタクト層13からX方向における一方側に引き出すことができ、エアブリッジ配線16の幅を確実に確保することができる。
【0071】
エアブリッジ配線16が、空中を延在するブリッジ部16aを有し、光導波方向Aにおけるブリッジ部16aの長さL3が、X方向におけるブリッジ部16aの長さL4よりも長い。これにより、ブリッジ部16a(エアブリッジ配線16)の幅を確実に確保することができる。
【0072】
光導波方向Aにおけるメサ部12の長さL1、及び光導波方向Aにおけるブリッジ部16aの長さL3の各々が、50μm以上である。これにより、ブリッジ部16aの幅を確実に確保することができる。また、光導波方向Aにおけるメサ部12の長さを確保することができ、メサ部12において光を一層効果的に吸収することができる。
[変形例]
【0073】
図13及び
図14に示される第2変形例の光検出モジュール1では、検出光DLが半導体基板11内を進行した後にメサ部12に入射する。第2変形例では、半導体基板11の側面11bが、Z方向に対して傾斜した傾斜面となっている。一例として、X方向から見た場合における側面11bのZ方向に対する傾斜角度θは、45度となっている。側面11bは、例えば研磨により形成される研磨面である。検出光DLは、側面11bに垂直な方向から側面11bに入射し、半導体基板11内を進行した後、第2コンタクト層14を介してメサ部12の表面12dに入射する。表面12dは、メサ部12における半導体基板11側の表面である。すなわち、この例では、側面11bが検出光DLの入射面となっている。メサ部12の端面12cは、半導体基板11の側面11bと面一になっていない。メサ部12に入射した検出光DLは、メサ部12内において多重に反射され、検出光DLのうちZ方向に平行な電場振動成分が、活性層21において吸収される。検出光DLは、半導体基板11内において多重に反射され、メサ部12の表面12dに複数回入射してもよい。なお、
図13では、第1電極15等が省略されていると共に、断面を示すハッチングが省略されている。
【0074】
図14に示されるように、第2変形例では、凹部54が、絶縁基板51の主面51aに形成された穴によって構成されている。凹部54は、絶縁基板51の側面51cに開口しておらず、主面51aの外縁から離間している。凹部54は、X方向に垂直な断面において略半円形状を呈している。第2変形例においても、メサ部12の少なくとも一部が凹部54内に配置されている。メサ部12は、凹部54内に配置可能となるような形状に形成されている。このような第2変形例によっても、上記実施形態と同様に、応答速度の高速化及び信頼性の確保を実現することができる。また、凹部54が絶縁基板51の側面51cに開口しておらず穴として構成されているため、メサ部12を一層確実に保護することができる。
【0075】
図15に示される第3変形例では、光検出器10が高さ調整層19を備えている。高さ調整層19は、半導体基板11の主面11a上に平面状に形成されている。高さ調整層19は、第2コンタクト層14から離間するように主面11a上に形成されており、第2コンタクト層14から電気的に分離されている。高さ調整層19は、第2コンタクト層14の形成と同時に形成され、第2コンタクト層14と同様の構成を有している。すなわち、高さ調整層19は、第2コンタクト層14と同一の厚さを有している。第1電極15は、高さ調整層19上に形成されている。このような第3変形例によっても、上記実施形態と同様に、応答速度の高速化及び信頼性の確保を実現することができる。また、第1電極15と第1配線52とを接続すると共に第2電極17と第2配線53とを接続する際に、第1電極15と第2電極17との間に高さの差が存在する場合でも、高さ調整層19によって第1電極15と第2電極17との間の高さの差を低減することができ、各接続箇所において良好な面接触を実現することができる。
【0076】
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。光導波方向Aにおけるブリッジ部16aの長さL3は、必ずしもX方向におけるブリッジ部16aの長さL4よりも長くなくてもよい。レンズ40は省略されてもよい。第2コンタクト層14は、第2部分14bを有さず、第1部分14aのみを有していてもよい。メサ部12は、活性層21と第1コンタクト層13との間に配置された上部クラッド層、及び活性層21と第2コンタクト層14との間に配置された下部クラッド層を更に含んでいてもよい。
【0077】
メサ部12は、Y方向に長尺に形成されていなくてもよく、例えば平面視において正方形状又は円形状等を呈していてもよい。メサ部12の全体が凹部54内に配置されてもよい。エアブリッジ配線16(接続配線)の全体が凹部54内に配置されてもよい。第1電極15と第1コンタクト層13とを接続する接続配線は、ボンディングワイヤであってもよい。
【0078】
第1電極15と第1配線52の対、及び第2電極17と第2配線53の対の少なくとも一方が、面接触した状態で互いに接続されていればよい。第1電極15と第1配線52とは、面接続されていなくてもよく、例えばボンディングワイヤにより接続されてもよい。第2電極17と第2配線53とは、面接続されていなくてもよく、例えばボンディングワイヤにより接続されてもよい。第1電極15又は第2電極17は、半導体基板11における主面11aとは反対側の表面上に形成されてもよい。半田層55,56は省略されてもよい。すなわち、第1電極15は、半田層又はめっき層等を介して第1配線52に面接触していてもよいし、第1配線52に直接に面接触していてもよい。同様に、第2電極17は、半田層又はめっき層を介して第2配線53に面接触していてもよいし、第2配線53に直接に面接触していてもよい。
【0079】
上記実施形態における第1電極15、第2電極17、第1配線52、第2配線53を、それぞれ、第2電極、第1電極、第2配線、第1配線とみなすこともできる。すなわち、第1電極が第2コンタクト層14に接続されると共に、第2電極が第1コンタクト層13に接続されてもよい。
【0080】
上記実施形態では光検出器10が量子カスケード検出器として構成されていたが、光検出器10は、量子井戸赤外線光検出器(Quantum Well Infrared Photodetector:QWIP)等の他の光検出器として構成されてもよい。量子井戸赤外線光検出器は、量子井戸構造におけるサブバンド間吸収を利用して光を検出する赤外線検出器である。メサ部12は、検出光DLの入射量に応じて電気信号を発生させる半導体領域を含んでいればよく、必ずしも活性層21を含んでいなくてもよい。例えば、光検出器10はフォトダイオードとして構成されてもよく、この場合、メサ部12は、PN接合を形成する半導体領域を含む。
[ビート分光装置]
【0081】
図16に示されるように、ビート分光装置100は、第1光源(波長固定光源)101と、第2光源(波長可変光源)102と、ビームスプリッタ103と、光検出モジュール1と、スペクトラムアナライザ104と、ガスセル105と、を備えている。ビート分光装置100では、第1光源101からの光P1と第2光源102からの光P2との間の波長差に応じた周波数を有するビート信号の周波数が掃引(スキャン)されるように、光P2の波長が変化させられつつ、光P1,P2が光検出モジュール1により検出される。これにより、ヘテロダイン検波分光を行うことができる。
【0082】
第1光源101及び第2光源102は、光検出モジュール1の感度波長範囲に含まれ、かつ互いに近接した発振波長の光P1,P2を出力する。第1光源101及び第2光源102は、例えば、分布帰還型の量子カスケードレーザ(Distributed Feedback Quantum Cascade Laser:DFB-QCL)である。使用時には、第1光源101の発振波長が固定されると共に、第2光源102の発振波長が変調される。例えば、注入電流を変化させることで第2光源102の発振波長を変調させることができる。すなわち、第1光源101は、出力される光P1の波長が固定された波長固定光源であり、第2光源102は、出力される光P2の波長が変化する波長可変光源である。第2光源102の動作は、例えばコンピュータにより構成された制御部により制御される。
【0083】
図17には、光検出器10の感度特性が符号R1で示され、第2光源102の発振波長が符号R2で示されている。
図17に示されるように、第2光源102の発振波長は、光検出器10の感度波長範囲に含まれている。
図18は、第1光源101及び第2光源102の発振波長を示すグラフである。符号Fは、注入電流が780mAである場合の第1光源101の発振波長を示している。符号T1~T4は、それぞれ、注入電流が780mA,810mA,830mA,850mAである場合の第2光源102の発振波長を示している。このように、注入電流を変化させることで第2光源102の発振波長を変調させることができる。
【0084】
第1光源101からの光P1は、レンズ108を通った後にミラー111,112で反射されてビームスプリッタ103に入射する。第2光源102からの光P2は、レンズ109を通った後にミラー113で反射されてビームスプリッタ103に入射する。光P1,P2は、ビームスプリッタ103により合波される。合波された光P1,P2は、絞り部材(アイリス)114,115を通った後にミラー116で反射されてレンズ40に入射し、光検出器10に入射する。光検出器10にはスペクトラムアナライザ104が接続されている。第2光源102とミラー113との間には、測定対象のガスを収容したガスセル105が配置されている。第2光源102からの光P2は、ガスセル105内を通った後にミラー113に入射する。第2光源102からの光P2の波長変調範囲がガスの吸収線を跨ぐ場合、光P2のうち特定波長の光が吸収される。
【0085】
光検出器10では、第1光源101からの光P1と第2光源102からの光P2との間の波長差に応じた周波数を有するビート信号(うなり)が検出される。光の周波数を直接測定することは難しい。例えば、波長が4μmである場合、光検出器の応答速度は75THz程度以上である必要がある。これに対し、ビート信号を用いたビート分光方法では、例えば、光P1の波長が4.000μmであり光P2の波長が4.001μmである場合、光検出器10の応答速度は18GHz程度以上であればよい。上述したとおり、光検出モジュール1では、20GHz以上のカットオフ周波数が得られている。そのため、光検出モジュール1を用いてビート分光を行うことで、広い波長範囲について分光を行うことができる。
【0086】
ビート分光装置100では、上述したとおり、ビート信号の周波数が掃引されるように光P2の波長が変化させられつつ、光P1,P2が光検出モジュール1により検出される。
図19は、第2光源102の注入電流と発振波長との間の関係を示すグラフである。
図19に示されるように、第2光源102の電流をxとし、第2光源102からの光P2の波数をyとすると、y=0.0147x+2202.1の関係が成り立つ。破線Bは、注入電流が750mAである場合の第1光源101の発振波長を示している。この例では、第1光源101及び第2光源102の動作温度は20℃であり、いずれもCW(Continuous Wave)により駆動されている。符号Cは、或る注入電流における第1光源101及び第2光源102の発振波長の差を示している。光検出器10の応答速度が速くなるほど、この差を大きくすることが可能となり、波長掃引範囲を広くすることが可能となる。
図20は、第2光源102への注入電流とビート周波数との間の関係を示すグラフである。
図20に示されるように、注入電流の増加に従ってビート周波数は直線的に増加する。
【0087】
図21は、ビート信号の例を示すグラフである。
図22は、応答特性の比較結果を示すグラフである。
図22において、符号S1は、光検出モジュール1の周波数応答特性を示しており、符号S2は、比較対象の光検出器の周波数応答特性を示している。
図22から、光検出モジュール1では、カットオフ周波数が20GHz以上となっており、比較対象の光検出器と比べて応答速度が高速化されていることが分かる。
【0088】
図23、
図24及び
図25は、ビート分光の測定結果を示すグラフである。
図23は、スペクトラムアナライザ104の出力信号を示すグラフであり、
図24は、
図23に示されるグラフの横軸を波長に変換したグラフである。
図25は、出力信号から背景光の信号を減算したグラフである。
【0089】
この例では、測定対象のガスを一酸化炭素とし、波数2190cm
-1付近の吸収線を観測した。波長掃引範囲が測定対象のガスの吸収線を跨ぐ場合、
図23に矢印Dで示されるように、波長に依存したガスの吸収が観測される。これは、第2光源102からの光P2の波長がガスの吸収波長と一致する場合、吸収によって光強度が低下するためである。ビート信号の強度は、第1光源101からの光P1の電場振幅と第2光源102からの光P2の電場振幅の積に比例する。そのため、光P2の強度が低下することで、矢印Dで示されるようなディップが観測される。
図24では、ガスセル105内に一酸化炭素が封入されている場合の出力信号が符号SGで示されており、ガスセル105内に一酸化炭素が存在しない場合の出力信号が符号BGで示されている。また、一酸化炭素の吸収スペクトルが破線で示されている。符号FTは、フーリエ変換赤外分光光度計(Fourier Transform Infrared Spectrometer:FTIR)の分解能の範囲の一例を示している。FTIRの分解能が3GHz(0.1cm
-1)程度であるのに対し、ビート分光装置100では、20MHz程度の分解能を得ることができた。これはFTIRの分解能の150倍以上である。このように、ビート分光装置100によれば、ビート分光における波長掃引範囲を広くすることができる。
【0090】
また、ビート分光装置100では、第1光源101及び第2光源102が量子カスケードレーザであり、光検出器10が量子カスケード検出器である。量子カスケードレーザの出力光は活性層の成長方向に平行な直線偏光であるため、第1光源101及び第2光源102の偏光方向と光検出器10が感度を有する偏光方向とが一致するように第1光源101、第2光源102及び光検出器10を配置することで、第1光源101及び第2光源102からの光P1,P2を光検出器10の活性層21に効果的に吸収させることができる。更に、その場合、第1光源101及び第2光源102の偏光特性と光検出器10の偏光特性とが互いに偏光フィルタのように機能することで、ランダムな偏光を有する背景光の影響を抑制することができ、その結果、SN比を向上することが可能となる。
【符号の説明】
【0091】
1…光検出モジュール、10,10A…光検出器、11…半導体基板、11a…主面、11b…側面、12…メサ部、12a…側面、12c…端面、13…第1コンタクト層、14…第2コンタクト層、14a…第1部分、14b…第2部分、15…第1電極、16…エアブリッジ配線(接続配線)、17…第2電極、19…高さ調整層、21…活性層、22…吸収領域、23…輸送領域、40…レンズ、50…固定部材、51…絶縁基板、51a…主面、51c…側面、52…第1配線、53…第2配線、54…凹部、54a…内面、55,56…半田層、100…ビート分光装置、101…第1光源(波長固定光源)、102…第2光源(波長可変光源)、A…光導波方向、DL…検出光、P1…第1光源からの光、P2…第2光源からの光。