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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049368
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】保温材剥取器
(51)【国際特許分類】
   B26B 27/00 20060101AFI20220322BHJP
   F24F 1/34 20110101ALI20220322BHJP
【FI】
B26B27/00 G
F24F1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155544
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000163419
【氏名又は名称】株式会社きんでん
(71)【出願人】
【識別番号】591083772
【氏名又は名称】株式会社永木精機
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】水野 慶蔵
(72)【発明者】
【氏名】野川 保次
(72)【発明者】
【氏名】タイ レ ホアイ ドゥック
【テーマコード(参考)】
3C061
3L054
【Fターム(参考)】
3C061AA10
3C061AA26
3C061BA03
3C061BA08
3C061BB12
3C061CC17
3C061EE22
3L054BC03
3L054BC04
(57)【要約】
【課題】冷媒配管の保温材を表面から一定の厚さだけ正確に除去する保温材剥取器を提供する。
【解決手段】保温材剥取器1は、筒状の枠体4の内側に中心軸を一致させる配置で筒状の刃体6を備えている。枠体4の先端側には、冷媒配管100を挿入する際の摺接ガイドとなるガイド部2が設けられている。内側の刃体6は、径方向に立設される4本のボルト8及び枠体4に形成された長孔4aから構成されるスライド支持構造によって長手方向へスライド可能に支持されている。刃体6の先端は、後端寄りの配置では、枠体4内に完全に収容される。そして、スライドした前端寄りの配置では、僅かに刃体6の先端が突出するように設定されている。刃体6の後端側の内側には、ストッパー10が設けられており、切り進められた冷媒配管100の長手方向への移動が規制される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアコンの冷媒配管の銅管を被覆している保温材を剥ぎ取る保温材剥取器であって、
前記保温材を周方向に囲むように形成され、前記冷媒配管の長手方向への摺動をガイドする摺動ガイド部と、
前記摺動ガイド部が先端側に脱着可能に取り付けられ、後端側が前記冷媒配管の摺動方向へ延設されている枠体と、
刃先を先端側に向けるようにして後端側が前記枠体に支持され、刃が前記摺動ガイド部の内径よりも小さく且つ前記銅管の外径よりも大きい筒状に形成されている刃体と、
摺動方向に直交する方向へ切断をガイドするように、前記刃と交差する位置に設けられた直交ガイド部と
を備えたことを特徴とする保温材剥取器。
【請求項2】
前記刃体は、前記刃が前記摺動ガイド部の先端側において出没自在にスライドできるように、前記枠体に対してスライド支持部を介して支持されていることを特徴とする請求項1に記載の保温材剥取器。
【請求項3】
前記刃体が最も後端側に位置する状態における前記刃体の刃先は、前記摺動ガイド部の後端側の端縁と一致していることを特徴とする請求項2に記載の保温材剥取器。
【請求項4】
前記摺動ガイド部よりも後端側の前記枠体内の空間は、前記摺動ガイド部内よりも外径側に広がっていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の保温材剥取器。
【請求項5】
前記刃体は、外側に刃が形成された片刃であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の保温材剥取器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコン本体と冷媒配管とを接続する際の前処理において保温材の一部を剥ぎ取るための保温材剥取器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
結露防止対策のために、冷媒配管とエアコン本体との接続箇所において保温材の外側の一部を一定の厚さで剥ぎ取り、剥ぎ取った箇所に接続口を重ねた後、保温処理を行うといった施工が知られている。このような施工において、保温材剥ぎ取り作業を行う際、作業者がカッターナイフを使用して剥ぎ取り作業を行う場合が多い。
【0003】
しかし、カッターナイフを用いて剥ぎ取り作業を行う場合、作業者によって保温材の剥ぎ取り状態にバラツキが生じやすい。残された保温材の厚さが一定でない場合、保温材の厚さが不十分な箇所で結露が生じる可能性がある。
【0004】
なお、冷媒配管を対象とした工具ではないが、被覆線の被覆を一定の厚さで剥ぎ取るための工具については、特許文献1に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-4605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
被覆線の被覆は一般に、冷媒配管の保温材よりも硬質の部材が用いられている。したがって、刃を斜めに入れて削ぎ切りを行うのは容易である。しかし、冷媒配管の保温材のように、軟質の部材に対して削ぎ切りを行うのは容易ではない。よって、引き千切るように削ぎ切りを行うことはできるが、後工程における処理を容易にするために、表面から一定の厚さ分だけを正確に除去することは難しい。
【0007】
そこで、本発明は、冷媒配管の保温材を表面から一定の厚さだけ正確に除去する保温材剥取器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の保温材剥取器は、エアコンの冷媒配管の銅管を被覆している保温材を剥ぎ取る保温材剥取器であって、前記保温材を周方向に囲むように形成され、前記冷媒配管の長手方向への摺動をガイドする摺動ガイド部と、前記摺動ガイド部が先端側に脱着可能に取り付けられ、後端側が前記冷媒配管の摺動方向へ延設されている枠体と、刃先を先端側に向けるようにして後端側が前記枠体に支持され、刃が前記摺動ガイド部の内径よりも小さく且つ前記銅管の外径よりも大きい筒状に形成されている刃体と、摺動方向に直交する方向へ切断をガイドするように、前記刃と交差する位置に設けられた直交ガイド部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の保温材剥取器は、上記構成に加えて、前記刃体が、前記刃が前記摺動ガイド部の先端側において出没自在にスライドできるように、前記枠体に対してスライド支持部を介して支持されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の保温材剥取器は、上記構成に加えて、前記刃体が最も後端側に位置する
状態における前記刃体の刃先は、前記摺動ガイド部の後端側の端縁と一致していることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の保温材剥取器は、上記構成に加えて、前記摺動ガイド部よりも後端側の前記枠体内の空間は、前記摺動ガイド部内よりも外径側に広がっていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の保温材剥取器は、上記構成に加えて、前記刃体は、外側に刃が形成された片刃であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、筒状の刃体の径が、摺動ガイド部の内径よりも小さく、且つ、冷媒配管の銅管の外径よりも大きいので、銅管から一定の厚さで保温材の一部を残して外側を剥ぎ取ることができる。すなわち、摺動方向に直交する方向へ保温材の切断をガイドする直交ガイド部が、刃体の刃の部分と交差する位置に設けられているので、少なくとも刃体の内側の領域を確実に残した状態で、保温材を冷媒配管の径方向へ切断することができる。
【0014】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、刃先が摺動ガイド部の先端側へ出没自在となるように刃体が配置されているので、長手方向へ切断後、刃を摺動ガイド部の先端側へ突出させると、その刃体を径方向へのストッパーとして利用することができる。すなわち、先端側へ突出させた刃体に突き当たるまでカッター等を切り込ませると、必要以上に深く切り込むことなく、冷媒配管の周りに必要な厚さの保温材を正確に切り残すことができる。
【0015】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、刃体が最も後端側に位置する状態における刃体の刃先の位置が、摺動ガイド部の後端側の端縁と一致しているので、長手方向への切断が開始される直前までは、確実に摺動ガイド部に対して冷媒配管の中心を維持することができる。すなわち、刃が切り込まれる位置まで摺動方向に送り込まれた保温材は正確に位置決めがされているので、銅管から均等な厚さの保温材を残すように正確な切断が可能となる。
【0016】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、摺動ガイド部よりも後端側の枠体内の空間がガイド部内よりも径方向に広がっているので、長手方向に保温材を切り進める際、切り離される保温材の外側部分は、刃体を圧迫することなく後端側へ送られる。これにより、保温材と刃体との間の摩擦の増大を防止できるので、刃体を長手方向へ深く切り込ませることが可能となる。
【0017】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、刃体の外側に片刃が形成されているので、切り離された保温材の外側部分は、刃の傾斜に沿って外側へ送られる。これにより、保温材と刃体との間に生じる摩擦を低減できるので、刃体を長手方向へ深く切り込ませることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る保温材剥取器を示し、(a)は正面側から見た全体斜視図、(b)は背面側から見た全体斜視図である。
図2】保温材剥取器の分解斜視図である。
図3】保温材剥取器の中央縦断面図であり、(a)は刃体が枠体内に収容された状態、(b)は刃体の刃が枠体の先端から突出した状態を示す図である。
図4】長手方向への切断作業を表し、(a)は第1配置の保温材剥取器による長手方向への切断状態を示す断面図、(b)は(a)の部分拡大図である。
図5】径方向への切断作業における状態を表し、(a)は第2配置の保温材剥取器の断面図、(b)は(a)の部分拡大図である。
図6図1の保温材剥取器の変形例を示す全体斜視図である。
図7図6の保温材剥取器の中央縦断面図である。
図8図6の保温材剥取器をスリットの位置で摺動方向に直交する方向に切断した後方側の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る保温材剥取器について図を用いて説明する。
【0020】
<構造>
図1は、本発明の実施の形態に係る保温材剥取器1を示しており、(a)は正面側から見た全体斜視図、(b)は背面側から見た全体斜視図である。以降、正面側を保温材剥取器1の先端側とし、背面側を後端側として説明を行うこととする。
【0021】
保温材剥取器1は、筒状の枠体4を有している。この枠体4の内側には、同心配置で筒状の刃体6が収容されている。図1(a)の先端側には、刃体6の刃先6bが一部表れている。筒状の枠体4の先端側の開口には、この開口から挿入される冷媒配管100(図4参照)を保温材剥取器1の長手方向に摺動させるガイドとしてリング状のガイド部2が嵌め込まれている。なお、以降、刃6a(後述する図2参照)が形成されている部材を刃体6とし、刃6aの先端を刃先6bとして説明する。
【0022】
図1(b)には、刃体6の後端側の一部が表れている。図1(b)に見て取れるように、刃体6は、後端側において枠体4に対して4本のボルト8で支持されている。これら4本のボルト8は、それぞれ、枠体4の長手方向に形成された長孔4aを貫通して配置されている。このように構成されているので、長孔4aの長さに応じた距離分だけ、刃体6は枠体4に対して長手方向へ相対的にスライド可能となる。このように、本実施の形態では、ボルト8と長孔4aによってスライド支持部が構成されている。
【0023】
次に、図2を用いて、内部構造について詳しく説明する。
【0024】
図2は、保温材剥取器1の分解斜視図である。枠体4に対して刃体6を固定するスライド支持部を構成する4本のボルト8は、周方向に90度の間隔を空けて配置されている。これら4本のボルト8は、枠体4の4箇所の長孔4aをそれぞれ貫通して刃体6の後端に螺合し、さらに、刃体6の内側に配置されるリング状のストッパー10にも螺合される。上述した枠体4の先端側のガイド部2は、比較的摩擦係数の小さい樹脂材で形成されており、枠体4に対して脱着自在に嵌合設置される。
【0025】
次に、図3を用いて保温材剥取器1の動作について説明する。
【0026】
図3は、保温材剥取器1の中央縦断面図であり、(a)は刃体6が枠体4内に収容された状態、(b)は刃体6の刃6aが枠体4の先端から突出した状態を示す図である。以降、説明の便宜のため、図3(a)の状態を第1配置とし、図3(b)の状態を第2配置と呼ぶこととする。
【0027】
図3(a)に見て取れるように、本実施の形態に係る構成では、第1配置において、刃体6の刃先6bの位置がガイド部2の後端側の端縁の位置に対して長手方向で一致するように構成されている。ガイド部2は枠体4の先端の開口に嵌め込むように設けられているので、ガイド部2と枠体4とが重なるところで内壁に段差が形成されている。
【0028】
刃体6の後端側には、上述のように、リング状のストッパー10が設けられている。このストッパー10は、刃体6によって切り進められた冷媒配管100(後の図4を参照)の移動を規制するために設けられている。これにより、端部から一定の距離だけを正確に切断することができる。なお、図3(b)の第2配置では、刃体6の刃先6bがガイド部2の先端側から突出しているのが分かる。この突出した刃先6bについては、作用のところでも説明する。
【0029】
<作用>
図4は、冷媒配管100の長手方向への切断作業を表しており、(a)は第1配置の保温材剥取器1による長手方向への切断状態の断面図、(b)は(a)の部分拡大図である。
【0030】
図4(a)のように冷媒配管100の端部から長手方向へ保温材剥取器1を切り進める際、まず、ガイド部2内に冷媒配管100の先端が挿入される。ガイド部2の内径は、作業対象となる冷媒配管100の外径と略同じ径で構成されている。これにより、ガイド部2内に冷媒配管100を差し込むだけで、冷媒配管100の中心を刃体6の中心に対して位置合わせすることができる。なお、図4ではこの前段階の位置合わせ作業については図示を省略している。
【0031】
刃体6はスライド支持部を構成する長孔4aの形成されている範囲内で自在にスライド可能である。したがって、ガイド部2からさらに押し込まれる冷媒配管100によって、刃体6が最も後端側へ押し付けられる。なお、このとき、ボルト8を掴んで作業者が後端側へ刃体6をスライドさせた状態で切断を開始しても構わない。周方向に90度の角度を設けて4本のボルト8が配置されているので、少なくとも対向する2本のボルト8を指で掴んで後端側へ押し付けるだけで、容易に刃体6の中心軸と冷媒配管100の中心軸とを一致させることができる。位置合わせ後、そのまま切り進めると、冷媒配管100の先端は、刃体6の内側でストッパー10に突き当たるように構成されている。
【0032】
次に、図4(b)を参照する。刃体6は、外側に刃6aが形成された片刃の構成となっている。すなわち、ここでいう片刃とは、筒状の刃体6の外壁側に傾斜を形成することにより付けられた刃を示している。このため、刃先6bで切り分けられた保温材101の内側部分は径方向の圧力を生じることなくスムーズに切り進められる。これに対して、保温材101の外側部分は、外側の刃(刃6a)によって外径側へ押し退けられるような圧力を生じる。このとき、保温材101はガイド部2よりも後端側で切断が開始されるので、ガイド部2の内側に重なった厚さTの部分(長さL1の範囲)によって形成されている段差の範囲で保温材101が外径方向へ逃げることができる。これにより、刃体6の外側が切断後の保温材101から圧迫されることを防止できる。
【0033】
このように、刃体6の内側では切断後の保温材101の断面積を一定に維持することにより冷媒配管100の中心が刃体6の中心から外れないように安定させることができる。また、刃体6の外側では、保温材101からの圧力を外径側へ逃がすことにより両者間の摩擦を低減し、スムーズに切り進めることが可能となる。
【0034】
なお、ガイド部2と保温材101の表面との間には、図4(b)に示したような摩擦力F1が作用する。この摩擦力F1により、長手方向へ向けた切断の際、保温材101の表面は先端側へ引っ張られる。ところで、冷媒配管100に用いられる保温材101には軟質材が用いられているので、僅かな力であっても保温材101の表面を容易に変形できる。すなわち、刃先6b周辺の保温材101には、摩擦力F1に基づく表面の引きつれによって変形が生じ、外側への力F2が働く。すなわち、ちょうど刃先6bが保温材101に
当たる位置の近傍で、外側へ力F2が働くことにより、あたかも切断箇所を広げるような作用を生じさせながら切進めることができる。このような作用によって、保温材101をスムーズに切り分けることができるので、一回の作業で比較的深い切断が可能になる。
【0035】
図5は、径方向への切断作業における状態を表しており、(a)は第2配置の保温材剥取器1の断面図、(b)は(a)の部分拡大図である。
【0036】
図5(a)のように、冷媒配管100の先端が刃体6の内側のストッパー10に突き当たるまで長手方向に切り進められた後、ボルト8及び長孔4aからなるスライド支持部によって、刃体6と一体となって冷媒配管100が先端側へ押し戻される。そして、この状態で、保温材101はガイド部2の端縁に沿って長手方向に直交する方向(径方向)にカッター等で切り込まれる。すなわち、第2配置におけるストッパー10の先端側とガイド部2の先端側との間の距離が、長手方向へ加工するための切断長さL2として設定されていることになる。
【0037】
このとき、図5(b)の拡大図に見て取れるように、刃体6の刃先6bがガイド部2の先端側に突出している。したがって、ガイド部2の先端側の端縁に沿ってカッターの刃を滑らせるようにして径方向に切り進める際、刃体6の刃先6bが防護壁となって、不要な深さまで切り進められることを防止できる。
【0038】
なお、ガイド部2の内径は、冷媒配管100の外径と略同じ径となるように設定されていることは上述した。すなわち、図5(b)のように、第2配置において冷媒配管100の銅管102とガイド部2との間に刃体6が侵入することにより、刃体6の厚さの分だけ保温材101内の圧力が増す。これにより、ガイド部2によって冷媒配管100が圧着状態で固定されるので、径方向への切断作業が安定する。
【0039】
<変形例>
図6は、保温材剥取器1の変形例である保温材剥取器21を示す全体斜視図である。
【0040】
筒状の枠体24の先端側に、冷媒配管100(図4参照)の摺動方向への挿入をガイドするガイド部(摺動ガイド部)22を備え、枠体24の内側には、摺動方向へ延びる筒状の刃体26を備えている構成については、図1の保温材剥取器1と共通している。また、刃体26が枠体24の後端側で支持されている構成も同様である。
【0041】
しかし、刃体26が枠体24に対して固定されており、相対的にスライド可能には構成されていない点において、保温材剥取器1とは異なっている。また、枠体24の側面のうち、先端側にスリット24aが形成されている点も異なっている。
【0042】
図7は、図6の保温材剥取器21の縦断面図である。
【0043】
ガイド部22がボルト27によって枠体24の先端側に固定されている構成は図1の保温材剥取器1と同様であることが分かる。また、刃体26の刃26aは、外側に刃付けされた片刃である。そして、このガイド部22の後端側に刃26aの刃先26bを一致させるように刃体26が配置されている。したがって、保温材剥取器1の説明として上述したように、ガイド部22に沿って送られてきた刃体26によって切断された冷媒配管100の保温材101の外側部分は、ガイド部22と枠体24の内壁との間に形成された段差によって外径側に逃げることができる。すなわち、刃体26の外壁と切断された保温材101との間の摩擦が低減されるので、刃体26を保温材101の中に深く切り込ませることが容易である。
【0044】
刃体26の後端側には、図1の保温材剥取器1と同様に保温材101と干渉する位置にストッパー30が設けられているので、一定の深さまで保温材101を切断することができる。刃体26はこのストッパー30とともにボルト28によって枠体24に固定されている。
【0045】
スリット24a(直交ガイド部)は、摺動方向に延びる刃体26に対して、先端側と交差する方向に形成されている。このスリット24aは冷媒配管100の摺動方向に直交する方向(冷媒配管100の径方向)に向けてカッターなどの切断工具を入れるためのガイドとして形成されている。図7から見て取れるように、保温材剥取器21では、スリット24aは、刃体26よりも径方向の僅かに外側で止められている。このため、スリット24aに挿入されたカッター等の切断工具が刃体26と干渉することはない。よって、刃体26、カッター共に損傷を生じることはない。
【0046】
図8は、スリット24aの位置で摺動方向に直交する方向に切断した後方側の断面図である。スリット24aの最も深い位置を一点鎖線で表している。上述したように、刃体26から僅かに外径側に離れた位置まで保温材101に切り込むことができる。
【0047】
作業においては、まず、冷媒配管100の先端がストッパー30に突き当たるまで、刃体26によって摺動方向に保温材101に切り込ませた状態で、摺動方向に直交する方向からスリット24aに沿ってカッターなどの切断可能な工具を切り込ませる。
【0048】
次に、冷媒配管100を保温材剥取器21に対して相対的に軸回転させると、スリット24a内のカッターが保温材101を周方向に切り進められる。
【0049】
このように切断された冷媒配管100を保温材剥取器21から引き抜いた後で、処理後の保温材101の外側を引き抜くことにより不要な部分を分離して段差を形成することができる。なお、上述のように、スリット24aの位置における径方向の切断では、刃体26に達する前にカッターの侵入が規制されるので、僅かに切残しがある。しかし、冷媒配管100の保温材101は軟質材で形成されているので、外側の筒状に切れ目を入れられた部分を掴んで長手方向に引っ張るだけで、引き千切るように容易に分離させることが可能である。
【0050】
このように、刃体26及びカッター等によって切れ目を入れられた保温材101の外側部分を付けたまま一体にして冷媒配管100ごと引き抜いた後、保温材剥取器21の外で除去することができるので、保温材剥取器21の内側には何も残らない。すなわち、切り残した保温材101の筒状の一部を保温材剥取器21の内側から取り除くといった作業が省かれるので、作業効率が向上する。
【0051】
以上に述べてきたような構成は本発明の一例であり、さらに以下のような変形例も含まれる。
【0052】
(1)上記の実施の形態では、ガイド部2はリング状に形成されている構成を例として示した。しかし、冷媒配管100の保温材101の外周に沿って囲むように形成されていれば、周方向に分割して当接部分が形成された構成でも構わない。
【0053】
(2)上記の実施の形態では、第1配置において刃体6の刃先6bがガイド部2の後端側の端縁と一致するように構成されている例を示した。しかし、第1配置において刃先6bが先端から突出していなければ、ガイド部2と重なる領域に配置される構成でも構わない。
【0054】
(3)上記の実施の形態では、枠体4が筒状に形成されている構成を例として示した。しかし、ガイド部2を先端に嵌め込むことができ、刃体6をスライド可能に支持できる構成であれば、筒状でなくても構わない。例えば、ガイド部2や刃体6を一体に保持できる構成であれば線材で形成されていてもよい。
【0055】
(4)上記の実施の形態では、スライド支持部が枠体4に形成された長孔4aとボルト8によって構成されている例を示した。しかし、刃先6bをガイド部2の先端側へ出没可能に支持できる構成であれば、長手方向に形成された溝と、この溝内を摺動する凸部のような組合せでも構わない。
【0056】
(5)上記の実施の形態では、刃体6が全体として筒状に構成されている例を示した。しかし、少なくとも、刃先6bが筒状に形成されており、後端側にストッパー10を設けることができる構成であれば、中間部分は筒状に形成されていなくても構わない。例えば、部分的に貫通孔を形成することによって肉抜き加工が施されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の保温材剥取器は、中心の銅管ではなく外側の保温材で位置決めを行うことにより、保温材を一定の深さまで均等に切除できるので、冷媒配管のように中心に鋼材を有しない軟質材であっても、外皮の一部を正確に剥ぎ取ることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 保温材剥取器
2 ガイド部(摺動ガイド部)
4 枠体
4a 長孔(スライド支持部)
6 刃体
6a 刃
6b 刃先
7 ボルト
8 ボルト(スライド支持部)
10 ストッパー
21 保温材剥取器
22 ガイド部(摺動ガイド部)
24 枠体
24a スリット(直交ガイド部)
26 刃体
26a 刃
26b 刃先
27 ボルト
28 ボルト
30 ストッパー
100 冷媒配管
101 保温材
102 銅管
F1 摩擦力
F2 力
T 厚さ
L1、L2、L3 長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8