(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049412
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】波力活用ユニット及びそれを用いた波力活用システム
(51)【国際特許分類】
F03B 13/14 20060101AFI20220322BHJP
【FI】
F03B13/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155607
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】501485375
【氏名又は名称】恩田 銀二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】恩田 銀二郎
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA02
3H074AA06
3H074AA12
3H074BB09
3H074CC02
(57)【要約】
【課題】製品コスト及び設置コストをより抑えることができ、波力を衰勢させつつ有効活用することができる波力活用ユニット及びそれを用いた波力活用システムを提供することを課題とする。
【解決手段】支持手段を介して海面の上下動に呼応して上下動するように支持される箱状の浮動ユニット1により構成される。浮動ユニット1は、主体部2と、主体部2の一側に連設される導入部3と、主体部2の他側に連設される排水部4とから成り、主体部2は、密閉空間であって浮動ユニット1を浮上させるよう作用する空気室5と、導入部3から排水部4に海水を通流させる通流室6とを含み、通流室6は、底面に砂抜き孔9を有し、導入部側に導入扉10を備えると共に、排水部側に排水扉11を備え、導入部3には、通流室6に海水を導入するための整流板15が複数、主体部2の側面に対して傾斜するように設置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海面上に、支持手段を介して海面の上下動に呼応して上下動するように支持される箱状の浮動ユニットにより構成され、
前記浮動ユニットは、主体部と、前記主体部の一側に連設される導入部と、前記主体部の他側に連設される排水部とから成り、
前記主体部は、密閉空間であって前記浮動ユニットを浮上させるよう作用する空気室と、前記導入部から前記排水部に海水を通流させる通流室とを含み、
前記通流室は、前記導入部側に、室内方向にのみ開く導入扉を備えると共に、前記排水部側に、室外方向にのみ開く排水扉を備え、
前記導入部には、前記通流室に海水を導入するための整流板が複数、前記主体部の側面に対して傾斜するように設置されて成る波力活用ユニット。
【請求項2】
前記通流室と前記空気室は、それぞれ複数交互に配置される、請求項1に記載の波力活用ユニット。
【請求項3】
前記排水部の底に、前記各通流室から延びて前記排水部の後面に抜ける砂抜き用角パイプが設置されると共に、前記排水部の流出側端面に、砂抜き用扉が設置される、請求項1又は2に記載の波力活用ユニット。
【請求項4】
前記各空気室に、浮力調整機構が配備される、請求項1乃至3のいずれかに記載の波力活用ユニット。
【請求項5】
前記導入部の波受け入れ口に、ごみや海藻を絡め取るごみ・海藻回収柵が設置される、請求項1乃至4のいずれかに記載の波力活用ユニット。
【請求項6】
前記導入部の天面端から斜め上向きに波受け板が延設される、請求項1乃至5のいずれかに記載の波力活用ユニット。
【請求項7】
前記排水部の流出側端部に、魚介類の進入防止柵が設置される、請求項1乃至6のいずれかに記載の波力活用ユニット。
【請求項8】
前記主体部の上面に、前記排水部から延びるU字型パイプが接続される発電装置が配備される、請求項1乃至7のいずれかに記載の波力活用ユニット。
【請求項9】
前記U字型パイプに、前記砂抜き用角パイプ及び砂抜き用扉からの堆積物の排出を促進するよう作用する水圧調整弁が配設される、請求項8に記載の波力活用ユニット。
【請求項10】
前記U字型パイプに、圧縮空気の取り入れ口が設けられる、請求項1乃至9のいずれかに記載の波力活用ユニット。
【請求項11】
前記導入部の内天面に、前記導入部の上部に空気を残存させるための空気溜め板を垂設した、請求項1乃至10のいずれかに記載の波力活用ユニット。
【請求項12】
前記支持手段は、海中に立設されて、前記浮動ユニットを貫通して上下に突出するように形成された複数の摺動支持パイプ内に挿入される複数の支持ポールである、請求項1乃至11のいずれかに記載の波力活用ユニット。
【請求項13】
前記支持手段は、前記浮動ユニットの複数個所に係留索を介して固定される錨状ブロックである、請求項1乃至11のいずれかに記載の波力活用ユニット。
【請求項14】
請求項1に記載の波力活用ユニットを複数用い、それらの前記排水部から支管を延ばして1つの本流管パイプに接続し、前記本流管に集められた海水流の流水エネルギーを、前記本流管に設置された波力活用手段によって利用可能にしたことを特徴とする波力活用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は波力活用ユニット及びそれを用いた波力活用システムに関するものであり、 より詳細には、主として海の波のある場所の浅瀬に設置されて、波力を衰勢させつつ波力エネルギーを有効に活用するための波力活用ユニット及びそれを用いた波力活用システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
海波の持つエネルギーは強大且つ無限であるので、それを有効活用する試みが種々なされており、成果を上げている例もあるが、その多くは大規模な設備を要するハイコストなものであるため、普及に制約が伴う。そこで本発明者は先に、簡易で小規模な構成で、海の浅瀬に比較的容易に設置でき、強大且つ無限である波のエネルギーを発電、海底浄化等に有効活用し得る波力活用システムを提案している(特許第3917858号公報)。
【0003】
その提案に係る波力活用システムは、長さ方向に伸びる開口部を有していて、その開口部を波に対向させて波の進行方向に対して傾斜状態に設置される筒体を設け、筒体内に開口部から流入する海水を筒内水流に変換して一端部に導く整流板を並設して成る波力収集部と、その波力収集部の一端部に設置される波力活用手段とから成るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記提案に係る波力活用システムの場合、期待通りの効果を発揮し、成果を上げているが、そのシステムの場合も、固定杭を含む波力収集部自体のコスト及びその設置工事のためのコストが、従来の大規模システムほどではないにしても、かなり嵩むため、よりコストを抑えた波力活用システムの出現が切望されていた。本発明は、かかる要請に応えるためになされたもので、製品コスト及び設置コストをより抑えることができ、その上で、波力を衰勢させつつ有効活用することができる波力活用ユニット、及び、それを用いた波力活用システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、海面上に、支持手段を介して海面の上下動に呼応して上下動するように支持される箱状の浮動ユニットにより構成され、
前記浮動ユニットは、主体部と、前記主体部の一側に連設される導入部と、前記主体部の他側に連設される排水部とから成り、前記主体部は、密閉空間であって前記浮動ユニットを浮上させるよう作用する空気室と、前記導入部から前記排水部に海水を通流させる通流室とを含み、前記通流室は、前記導入部側に、室内方向にのみ開く導入扉を備えると共に、前記排水部側に、室外方向にのみ開く排水扉を備え、前記導入部には、前記通流室に海水を導入するための整流板が複数、前記主体部の側面に対して傾斜するように設置されて成る波力活用ユニットである。
【0007】
一実施形態においては、前記通流室と前記空気室は、それぞれ複数交互に配置される。また、前記排水部の底に、前記各通流室から延びて前記排水部の後面に抜ける砂抜き用角パイプが設置されると共に、前記排水部の流出側端面に、砂抜き用扉が設置される。
【0008】
前記各空気室に、浮力調整機構が配備される。また、前記導入部の天面端から斜め上向きに波受け板が延設される。
【0009】
一実施形態においては、前記導入部の波受け入れ口に、ごみや海藻を絡め取るごみ・海藻回収柵が設置され、また、前記排水部の流出側端部に、魚介類の進入防止柵が設置される。
【0010】
一実施形態においては、前記主体部の上面に、前記排水部から延びるU字型パイプが接続される発電装置が配備される。また、前記U字型パイプに、前記砂抜き用角パイプ及び砂抜き用扉からの堆積物の排出を促進するよう作用する水圧調整弁が配設される。更に、前記U字型パイプに、圧縮空気の取り入れ口が設けられる。
【0011】
一実施形態においては、前記導入部の内天面に、前記導入部の上部に空気を残存させるための空気溜め板が垂設される。
【0012】
一実施形態においては、前記支持手段は、海中に立設されて、前記浮動ユニットを貫通して上下に突出するように形成された複数の摺動支持パイプ内に挿入される複数の支持ポールであり、他の実施形態においては、前記支持手段は、前記浮動ユニットの複数個所に係留索を介して固定される錨状ブロックである。
【0013】
上記課題を解決するための請求項14に記載の発明は、請求項1に記載の波力活用ユニットを複数用い、それらの前記排水部から支管を延ばして1つの本流管パイプに接続し、前記本流管に集められた海水流の流水エネルギーを、前記本流管に設置された波力活用手段によって利用可能にしたことを特徴とする波力活用システムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る波力活用ユニット及びそれを用いた波力活用システムは上記のとおりであるので、波力を衰勢させつつ有効活用することが可能であり、しかも、製品コスト及び設置コストを低く抑えることができるので、システムの普及に貢献し得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る波力活用ユニットの一実施形態の斜視図である。
【
図2】本発明に係る波力活用システムの一実施形態の横断面図である。
【
図5】本発明に係る波力活用ユニットの他の実施形態の斜視図である。
【
図6】本発明に係る波力活用システムの一実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態を、添付図面に依拠して説明する。本発明に係る波力活用ユニットAは、支持手段を介して海面の上下動に呼応して上下動するように支持される、箱状の浮動ユニット1により構成される。浮動ユニット1は、後述するように、喫水線が中間位置、即ち、上半部が海面上に浮上し、下半部が海中に沈む位置にくるように浮力設定される。
【0017】
浮動ユニット1は、主体部2と、主体部2の一方の側に連設される導入部3と、主体部2の他方の側に連設される排水部4とから成り、主体部2、導入部3及び排水部4の天面及び底面は共通の1枚板、あるいは、一体に連結されたものとなる。
【0018】
主体部2は、浮動ユニット1を浮上させるよう機能する密閉空間である空気室5と、導入部3から排水部4に海水を通流させる通流室6とをそれぞれ複数、交互に配置したものである。その場合、バランスが取れるように両端は空気室5とすることが好ましい。空気室5は空気を封止したもので、その浮力により浮動ユニット1全体を浮遊させるよう機能する。そのために、空気室5全体の容積が、浮動ユニット1全体を浮遊させるに足りる浮力、即ち、喫水線が上記位置にくるような浮力が得られる容積となるように設計される。
【0019】
一実施形態においては、その浮力の調整が可能となるように、空気室5内にバラスト水の出入機構が付設される。例えば、各空気室5に海水が自由に出入する海水出入口61が開設され、また、各空気室5に、エアポンプ62から延びる、浮力調整用エアバルブ64が取り付けられた配管63が配設される(
図2参照)。各空気室5内には、海水出入口61から海水が自由に流入するため、各空気室5内には、常時、喫水線60の高さまで海水が流入している。そこで、エアポンプ62を作動させて空気室5内の圧力を高めれば、空気室5内の海水が海水出入口61から押し出されて水位が下降し、浮動ユニット1は、その水位が喫水線60の位置にくるまで上昇する。
【0020】
通流室6の導入部3側には、室内方向にのみ開く導入扉10が設置され、排水部4側には、室外方向にのみ開く排水扉11が設置される。従って、後述するようにして導入部3に流入した海水流は、その流圧によって導入扉10を押し開いて通流室6内に流入し、そこから排水扉11を押し開いて排水部4に流出する。導入扉10と排水扉11は、通例、ヒンジを介して垂設され、その垂直状態から一方向にのみ、約90度回動する。なお、導入扉10と排水扉11を設置する仕切り壁に、導入扉10と排水扉11の反転を防止するためのストッパーが設置される(
図4参照)。
【0021】
導入部3は、上面板13と下面板14との間に、波の進行方向を制御する整流板15を複数設置して構成される。整流板15は、主体部2の側板に対して約45度傾斜させて設置される。導入部3の前面開口面には、ごみや海藻を絡め取るごみ・海藻回収柵16が設置される。更に、導入部3の上面板13の縁部に、上向き傾斜する波受け板17が延設される。この波受け板17は、波を受け止めて導入部3内に向かわせるもので、上面板13に固定される三角形状の補強材18によって補強される。到来する波は、この波受け板17に当たることにより、衰勢する。
【0022】
排水部4は、主体部2側の側面が開口されて主体部2に連設される長尺な箱状閉塞空間であり、その流出側の端面板に、U字型パイプ20が配設される。そして、排水部4内のU字型パイプ20の入口付近を覆うように、U字型パイプ20内への魚類の進入を防止するための進入防止柵21が設置され、また、進入防止柵21の手前に、魚類を逃がすための解放口22が設けられる。上述したように排水部4は、各通流室6から各排水扉11を押し開いて流れ込んでくる海水を受け入れて集め、U字型パイプ20を介して後述する波力活用手段に供給する。
【0023】
浮動ユニット1を海中に支持する支持手段としては、海中に立設される複数の支持ポール31が考えられる。この支持ポール31は、浮動ユニット1の導入部3及び排水部4を縦に貫いて上下に突出するように配備される複数の摺動支持パイプ30内に挿入されて、海面変化に伴う浮動ユニット1の自由な上下動動作を支持する。図示した例では、摺動支持パイプ30は、導入部3に3ヵ所、排水部4に2ヵ所設置されていて、浮動ユニット1は5本の支持ポール31で支持されるように構成されているが、これに限られる訳ではない。
【0024】
浮動ユニット1の他の海中支持手段としては、浮動ユニット1の複数個所(例えば、四隅)に係留索32を介して固定される錨状ブロック33が考えられる(
図5参照)。錨状ブロック33は、錨形状であってもよいし、単なるブロックであってもよく、また、海底に置くだけであってもよいし、埋設することとしてもよい。支持手段としてこの錨状ブロック33を用いる場合は、浮動ユニット1は上下方向のみならず、任意の方向に揺動可能となる。
【0025】
図示した例における波力活用手段は、浮動ユニット1の上面(通例、主体部2の上面)に設置された小型の発電装置40である。この発電装置40には、排水部4から延びるU字型パイプ20が接続され、排水部4からの海水流が常時導入される。発電装置40内における流れの方向は、排水部4における流れの方向とは逆になる。発電装置40においては、この海水流によってプロペラ41が回転し、発電機を駆動することで発電が行われ、図示せぬ電線を介して陸地に電力供給される。発電装置40内を通り抜けた海水は、U字型パイプ20接続面と反対の端面に接続される排水管42から放出される。44は、作業者が点検修理等をする際に利用する手摺を示している。
【0026】
U字型パイプ20には必要に応じ、発電装置40への供給流体圧を高めるために、コンプレッサからの圧縮空気の取り入れ口56が設けられる。圧縮空気取り入れ口56は、U字型パイプ20の下面側に配設される。かくして、圧縮空気取り入れ口56から供給される多くの気泡を含む圧縮空気がU字型パイプ20内を上昇するに伴い、排水部4内の海水が引張られ、流速を増して発電装置40内に流れ込む。
【0027】
他の波力活用手段としては、海水浄化装置が考えられる。海水浄化装置の場合は、U字型パイプ20の端部を延長し、あるいは、そこにパイプを連結してその先端を海底に向けることにより構成される。これは、例えば、砂採掘後の窪地において赤潮等の原因となるプランクトンが異常発生したり、魚の養殖場所において餌料の残滓が堆積したりすることを防止するために、それらの場所に向けて噴流を供給するためのものである。
【0028】
好ましい実施形態においては、通流室6内及び排水部4内に溜まる砂等の堆積物を排出する手段が配設される。この実施形態においては、通流室6と排水部4との間の、排水扉11を設置する仕切壁の下部に砂抜き用角パイプ52が配置され、また、排水部4のU字型パイプ20設置側端面の下部に、砂を排出するための排出扉53が設置される。この排出扉53は、通例、電動の上下開閉式とされる。また、角パイプ52の開口端にも、通例、電動の上下開閉式排出扉54が設置される。砂抜き作業時には、通流室6及び排水部4内の流体圧を上げて、砂を強制的に押し流すようにする。そのために、U字型パイプ20に水圧調整弁55が設置され、それが閉動作することで通流室6及び排水部4内の流体圧を上げるようにする。
【0029】
また、一旦通流室6内に流入した海水が引く際に、導入部3の上部に、空気溜まり59ができるようにする(
図4参照)。そのために、導入部3の上面板13の裏面に、空気溜め板58が垂設される。この空気溜め板58は、波が引く際に、海水と共に導入部3から通流室6内に入り込んだ空気の一部を堰き止めることで、空気溜め板58の内側に空気溜まり59が生成されるように作用する。この空気溜まり59に一時的に滞留する空気は、次に到来して通流室6内に流れ込む海水の流入圧を付勢するよう作用し、同時に、通流室6内底面に溜まった砂の、角パイプ52からの流出を促進する。
【0030】
上記構成の本発明に係る波力活用ユニットは、波のある場所の浅瀬に、上記支持手段を介し、導入部3を海側にし且つ海岸線に対して45度程傾けるように、即ち、整流板15が波の進行方向に向くように設置される。浮動ユニット1は、空気室5の浮力によって浮遊しつつ、海面の動きに呼応して揺動する。このように設置された浮動ユニット1に向けて到来した波は、整流板15及び波受け板17に導かれて波頭部が導入部3内に流入し、その流入圧で導入扉10を押し開いて主体部2の通流室6内に流入し、次いで、その勢いのまま排出扉11を押し開いて排水部4に流出する。排水部4に流出した海水は、流域の狭いU字型パイプ20において流速を増しながら、波力活用手段である発電装置40に送られて有効活用される。
【0031】
導入部3内に流入する海水中には、魚類や海藻、ごみその他種々の浮遊物が入り混じっているが、海藻等は導入部3の入り口のごみ・海藻回収柵16に引っ掛かって回収され、一部進入したものは、砂と共に角パイプ52及び排水部4の排出扉53から排出される。また、排水部4に入り込んだ魚類は、進入防止柵21によってそれ以上の進入を阻止され、解放口22から逃がされる。更に、砂抜き機構を配備した場合は、適時、水圧調整弁55を閉じて通流室6及び排水部4内の流体圧を上げ、また、排出扉53,54を開くことで、通流室6内及び排水部4内に滞留した砂を強制的に押し流す。
【0032】
本発明に係る波力活用ユニットAは、単独で利用することができるが、通例、それを多数、適宜間隔置きに並べて設置したシステムに構成して利用される(
図6参照)。その場合、各波力活用ユニットAのU字型パイプ20を1本の本流管66に結集させ、本流管66に、1つの波力活用手段67を設置することとしてもよい。
【0033】
本発明に係る波力活用システムを上記のようにして設置することにより、波力活用効果と共に、消波効果及び砂浜育成効果が得られる。即ち、各波力活用ユニットAに向かって到来する入射波は、各波力活用ユニットAに当たり、一部は該装置を通り抜けることで分散消波され、また、一部は約90度屈折して反射波となる。この入射波の分散消波に伴い、波力活用システムの陸側には、消波に伴う漂砂の淀み域が生じ、漂砂はそこに堆積していき、結果的に徐々に砂浜が育成されていくことになる。
【0034】
なお、海底の深場から浅場に至る傾斜面に当たった海水は、その傾斜面に沿って斜め上方に上昇する上昇波となる。この上昇波は、下側から波力活用ユニットAの浮動ユニット1の底面に当たるため、浮動ユニット1は、この上昇波を受けて上下動しつつ、抵抗となって消波するよう作用する。なお、陸側に向かう入射波は、この上昇波の影響を受けることによっても衰勢する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る波力活用ユニット及びそれを用いた波力活用システムは上記のとおりであって、波力を衰勢させつつ波力を有効活用することが可能で、同時に砂浜育成を促進することができ、しかも、製品コスト及び設置コストを低く抑えることができるので、その産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0036】
1 浮動ユニット
2 主体部
3 導入部
4 排水部
5 空気室
6 通流室
10 導入扉
11 排水扉
13 上面板
14 下面板
15 整流板
16 ごみ・海藻回収柵
17 波受け板
20 U字型パイプ
21 進入防止柵
30 摺動支持パイプ
31 支持ポール
40 発電装置
52 砂抜き用角パイプ
53、54 砂抜き用扉
55 水圧調整弁
58 空気溜め板