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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049416
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/663 20180101AFI20220322BHJP
   F21S 45/47 20180101ALI20220322BHJP
   F21S 41/148 20180101ALI20220322BHJP
   F21V 29/10 20150101ALI20220322BHJP
   F21V 29/76 20150101ALI20220322BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20220322BHJP
【FI】
F21S41/663
F21S45/47
F21S41/148
F21V29/10
F21V29/76
F21W102:155
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155615
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
(72)【発明者】
【氏名】金森 昭貴
(57)【要約】
【課題】ロービーム照射時およびハイビーム照射時に点灯する第1発光素子とハイビーム照射時にのみ点灯する第2発光素子とが共通の放熱部材に支持された車両用灯具において、放熱部材の性能を十分に生かした配光制御を可能とする。
【解決手段】ロービーム照射時に第1発光素子30A、30Bに供給される電力W(L1)+W(L2)よりもハイビーム照射時に第1および第2発光素子30A、30B、30C、30Dに供給される電力W(H1)+W(H2)+W(H3)+W(H4)を大きくする。その上で、第1発光素子30A、30Bへの供給電力をロービーム照射時よりもハイビーム照射時の方が小さい値に設定する。これにより、放熱部材50の放熱能力の範囲内でロービーム照射時の第1発光素子30A、30Bへの供給電力を大きくしてその発光光束を高め、放熱部材50のサイズを必要最小限に維持した上でロービーム用配光パターンの明るさを増大させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロービーム照射時およびハイビーム照射時に点灯する第1発光素子とハイビーム照射時にのみ点灯する第2発光素子とが共通の放熱部材に支持された車両用灯具において、
ロービーム照射時に上記第1発光素子に供給される電力よりもハイビーム照射時に上記第1および第2発光素子に供給される電力の方が大きい値に設定されており、
上記第1発光素子への供給電力は、ロービーム照射時よりもハイビーム照射時の方が小さい値に設定されている、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
上記第1発光素子を複数備えており、
上記複数の第1発光素子への供給電力の合計値が、ロービーム照射時よりもハイビーム照射時の方が小さい値に設定されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
ロービーム照射を行う灯具ユニットとして、ロービーム用配光パターンの中心領域を形成するための中心領域用灯具ユニットと、ロービーム用配光パターンの拡散領域を形成するための拡散領域用灯具ユニットとを備えており、
上記中心領域用灯具ユニットの第1発光素子よりも上記拡散領域用灯具ユニットの第1発光素子の方が、ロービーム照射時に対するハイビーム照射時の供給電力の低下率が大きい値に設定されている、ことを特徴とする請求項2記載の車両用灯具。
【請求項4】
上記中心領域用灯具ユニットの第1発光素子への供給電力が、ロービーム照射時とハイビーム照射時とで同じ値に設定されている、ことを特徴とする請求項3記載の車両用灯具。
【請求項5】
上記拡散領域用灯具ユニットの第1発光素子よりも上記中心領域用灯具ユニットの第1発光素子の方が、上記第2発光素子から離れた位置に配置されている、ことを特徴とする請求項3または4記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ロービーム照射時およびハイビーム照射時に点灯する第1発光素子とハイビーム照射時にのみ点灯する第2発光素子とが共通の放熱部材に支持された車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用灯具として、第1発光素子の点灯によりロービーム照射を行うとともに第1および第2発光素子の同時点灯によりハイビーム照射を行うように構成されたものが知られている。
【0003】
「特許文献1」には、このような車両用灯具の構成として、第1および第2発光素子が共通の放熱部材に支持されたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-114386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような車両用灯具において、ロービーム照射時およびハイビーム照射時の各々において所要の明るさを確保するためには、ロービーム照射時に第1発光素子に供給される電力よりもハイビーム照射時に第1および第2発光素子に供給される電力の方が大きい値に設定された構成とする必要がある。
【0006】
その際、放熱部材に関しては、ハイビーム照射時における第1および第2発光素子への供給電力の大きさを考慮して、そのサイズや材質の選定が行われる必要がある。
【0007】
しかしながら、このような灯具構成を採用した場合、第1発光素子のみが点灯するロービーム照射時においては放熱部材の放熱能力に余力が生じてしまうため、放熱部材の性能を十分に生かすことができないものとなってしまう。
【0008】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ロービーム照射時およびハイビーム照射時に点灯する第1発光素子とハイビーム照射時にのみ点灯する第2発光素子とが共通の放熱部材に支持された車両用灯具において、放熱部材の性能を十分に生かした配光制御を行うことができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、第1発光素子への供給電力に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0010】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
ロービーム照射時およびハイビーム照射時に点灯する第1発光素子とハイビーム照射時にのみ点灯する第2発光素子とが共通の放熱部材に支持された車両用灯具において、
ロービーム照射時に上記第1発光素子に供給される電力よりもハイビーム照射時に上記第1および第2発光素子に供給される電力の方が大きい値に設定されており、
上記第1発光素子への供給電力は、ロービーム照射時よりもハイビーム照射時の方が小さい値に設定されている、ことを特徴とするものである。
【0011】
上記「車両用灯具」は、第1発光素子の点灯によりロービーム照射を行うとともに第1および第2発光素子の同時点灯によりハイビーム照射を行うように構成されたものであれば、その配光制御を行うための光学系の具体的な構成については特に限定されるものではない。
【0012】
上記「放熱部材」は、第1および第2発光素子の同時点灯時にもその各々の発光光束として所期の値を維持し得る放熱機能を備えていれば、そのサイズや材質等の具体的な構成については特に限定されるものではない。
【0013】
上記「第1発光素子への供給電力」は、ロービーム照射時よりもハイビーム照射時の方が小さい値に設定されていれば、その具体的な値は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
本願発明に係る車両用灯具は、ロービーム照射時およびハイビーム照射時に点灯する第1発光素子とハイビーム照射時に点灯する第2発光素子とが共通の放熱部材に支持された構成となっているが、ロービーム照射時に第1発光素子に供給される電力よりもハイビーム照射時に第1および第2発光素子に供給される電力の方が大きい値に設定されているので、ロービーム照射時およびハイビーム照射時の各々において所要の明るさを確保することが容易に可能となる。
【0015】
その上で、第1発光素子への供給電力はロービーム照射時よりもハイビーム照射時の方が小さい値に設定されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0016】
すなわち、放熱部材の放熱能力の範囲内でロービーム照射時における第1発光素子への供給電力を大きくしてその発光光束を高めることにより、放熱部材のサイズを必要最小限に維持した上でロービーム用配光パターンの明るさを増大させることができる。そしてこれにより、放熱部材の性能を十分に生かした配光制御を行うことができる。
【0017】
このように本願発明によれば、ロービーム照射時およびハイビーム照射時に点灯する第1発光素子とハイビーム照射時にのみ点灯する第2発光素子とが共通の放熱部材に支持された車両用灯具において、放熱部材の性能を十分に生かした配光制御を行うことができる。
【0018】
上記構成において、さらに、第1発光素子を複数備えた構成とした上で、これら複数の第1発光素子への供給電力の合計値が、ロービーム照射時よりもハイビーム照射時の方が小さい値に設定された構成とすれば、複数の第1発光素子を備えている場合であっても放熱部材の性能を十分に生かした配光制御を行うことができる。
【0019】
その際、ロービーム照射を行う灯具ユニットとして、ロービーム用配光パターンの中心領域を形成するための中心領域用灯具ユニットと、ロービーム用配光パターンの拡散領域を形成するための拡散領域用灯具ユニットとを備えた構成とした上で、中心領域用灯具ユニットの第1発光素子よりも拡散領域用灯具ユニットの第1発光素子の方が、ロービーム照射時に対するハイビーム照射時の供給電力の低下率が大きい値に設定されたものとすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0020】
すなわち、ロービーム用配光パターンの中心領域は車両前方走行路の比較的遠距離領域を照射するものであるのに対して、ロービーム用配光パターンの拡散領域は車両前方走行路の比較的近距離領域を照射するものであるので、この拡散領域が明るくなりすぎるとハイビーム照射時における遠方視認性が阻害されてしまう。
【0021】
そこで、中心領域用灯具ユニットの第1発光素子よりも拡散領域用灯具ユニットの第1発光素子の方が、ロービーム照射時に対するハイビーム照射時の供給電力の低下率が大きい値に設定された構成とすることにより、複数の第1発光素子全体として確保し得る発光光束の範囲内においてハイビーム照射時の遠方視認性を効果的に高めることができる。
【0022】
このような構成を採用した場合において、中心領域用灯具ユニットの第1発光素子への供給電力が、ロービーム照射時とハイビーム照射時とで同じ値に設定された構成とすれば、ハイビーム照射時の遠方視認性を最大限に高めることができる。
【0023】
また、このような構成を採用した場合において、拡散領域用灯具ユニットの第1発光素子よりも中心領域用灯具ユニットの第1発光素子の方が、第2発光素子から離れた位置に配置された構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0024】
すなわち、拡散領域用灯具ユニットの第1発光素子への供給電力よりも中心領域用灯具ユニットの第1発光素子への供給電力の方が大きい値に設定されている場合には、これらを支持する放熱部材においては、拡散領域用灯具ユニットの第1発光素子の近傍領域よりも中心領域用灯具ユニットの第1発光素子の近傍領域の方が発熱しやすくなる。
【0025】
そこで、拡散領域用灯具ユニットの第1発光素子よりも中心領域用灯具ユニットの第1発光素子の方が第2発光素子から離れた位置に配置された構成とすることにより、放熱部材全体としての放熱効率を高めることができ、これにより放熱部材の性能を十分に生かすことが一層容易に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本願発明の一実施形態に係る車両用灯具を示す正面図
図2図1のII-II線断面図
図3】上記車両用灯具の要部を示す斜視図
図4】上記車両用灯具からの照射光により形成される配光パターンを示す図であって、(a)はロービーム用配光パターンを示す図、(b)はハイビーム用配光パターンを示す図
図5】上記ロービーム用配光パターンおよびハイビーム用配光パターンの各々を構成する配光パターンを、上記車両用灯具の構成と共に示す図
図6】上記実施形態の第1変形例を示す、図4と同様の図
図7】上記第1変形例を示す、図5と同様の図
図8】上記実施形態の第2変形例を示す、図4と同様の図
図9】上記第2変形例を示す、図5と同様の図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0028】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す正面図である。また、図2は、図1のII-II線断面図である。
【0029】
図1、2において、Xで示す方向が「灯具前方」であり、Yで示す方向が「灯具前方」と直交する「左方向」(灯具正面視では「右方向」)であり、Zで示す方向が「上方向」である。図1、2以外の図においても同様である。
【0030】
図1、2に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10は、車両の前端部に設けられるヘッドランプであって、ランプボディ12とこのランプボディ12の前端開口部に取り付けられた素通し状の透光カバー14とで形成される灯室内に、4つのパラボラ型の灯具ユニット20A、20B、20C、20Dが車幅方向に並んだ状態で(具体的には右側からこの順番で並んだ状態で)組み込まれた構成となっている。
【0031】
図3は、車両用灯具10の要部を示す斜視図である。
【0032】
図3にも示すように、4つの灯具ユニット20A~20Dのうち、右寄りの2つの灯具ユニット20A、20Bは、ロービーム照射時およびハイビーム照射時に点灯する第1発光素子30A、30Bを備えており、左寄りの2つの灯具ユニット20C、20Dは、ハイビーム照射時にのみ点灯する第2発光素子30C、30Dを備えている。
【0033】
そして、2つの灯具ユニット20A、20Bは、第1発光素子30A、30Bからの出射光をリフレクタ40A、40Bによって灯具前方へ向けて反射制御するように構成されており、残り2つの灯具ユニット20C、20Dは、第2発光素子30C、30Dからの出射光をリフレクタ40C、40Dによって灯具前方へ向けて反射制御するように構成されている。
【0034】
4つの第1および第2発光素子30A、30Bおよび30C、30Dは、いずれも横長矩形状の発光面30aを有する白色発光ダイオードであって、その発光面30aを上向きにした状態で共通の放熱部材50に支持されている。
【0035】
放熱部材50は、金属製(例えばアルミニウム製)の部材であって、水平面に沿って平板状に延びる本体部50Aと、この本体部50Aから鉛直下方へ向けて延びる3つの放熱フィン50Bとを備えた構成となっている。
【0036】
本体部50Aは、平面視において横長矩形状に形成されており、3つの放熱フィン50Bは、灯具前後方向に等間隔をおいて車幅方向に延びるように形成されている。
【0037】
放熱部材50における本体部50Aの上面には、絶縁シート32が貼付されている。
【0038】
絶縁シート32は、例えばポリイミド製シートやエポキシ系シートで構成されており、放熱部材50の本体部50Aよりもひと回り小さいサイズで横長矩形状に形成されている。
【0039】
絶縁シート32の上面における車幅方向の4箇所には、左右1対の導電層34が互いに等間隔をおいて積層されている。
【0040】
左右1対の導電層34は、多少の間隔をおいて灯具前後方向に延びるようにして配置されている。その際、各導電層34は、絶縁シート32の前端縁近傍位置からその後端位置まで帯状に延びるように形成されている。各導電層34は、銅箔で構成されており、その前端部および後端部以外の上面にはレジスト層が形成されている。
【0041】
4つの第1および第2発光素子30A、30Bおよび30C、30Dは、4箇所に配置された左右1対の導電層34の前端部において両導電層34に跨るようにして載置されており、これにより両導電層34と電気的に接続されている。
【0042】
一方、4箇所に配置された左右1対の導電層34の後端部には、コネクタ36が、両導電層34に跨るようにして載置されており、これにより両導電層34と電気的に接続されている。
【0043】
そして、4箇所のコネクタ36に電源側コネクタ(図示せず)が装着されることにより、4つの第1および第2発光素子30A、30Bおよび30C、30Dに対して電力が供給されるようになっている。
【0044】
4つの灯具ユニット20A~20Dのリフレクタ40A~40Dは、単一の樹脂成形品42として一体的に形成されており、その下端フランジ部42aにおいて放熱部材50の本体部50Aに支持されている。
【0045】
図1に示すように、右端部に位置する灯具ユニット20Aのリフレクタ40Aは、複数の反射素子40Asが形成された反射面40Aaを備えており、各反射素子40Asにおいて第1発光素子30Aからの出射光を灯具前方へ向けて反射させるようになっている。
【0046】
右側から2番目の灯具ユニット20Bのリフレクタ40Bは、複数の反射素子40Bsが形成された反射面40Baを備えており、各反射素子40Bsにおいて第1発光素子30Bからの出射光を灯具前方へ向けて反射させるようになっている。
【0047】
右側から3番目の灯具ユニット20Cのリフレクタ40Cは、複数の反射素子40Csが形成された反射面40Caを備えており、各反射素子40Csにおいて第2発光素子30Cからの出射光を灯具前方へ向けて反射させるようになっている。
【0048】
左端部に位置する灯具ユニット20Dのリフレクタ40Dは、複数の反射素子40Dsが形成された反射面40Daを備えており、各反射素子40Dsにおいて第2発光素子30Dからの出射光を灯具前方へ向けて反射させるようになっている。
【0049】
図4は、車両用灯具10から車両前方へ照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す図であって、図4(a)に示す配光パターンはロービーム用配光パターンPLであり、図4(b)に示す配光パターンはハイビーム用配光パターンPHである。
【0050】
図4(a)に示すように、ロービーム用配光パターンPLは左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端縁に左右段違いのカットオフラインCL1、CL2を有している。このカットオフラインCL1、CL2は、灯具正面方向の消点であるH-Vを鉛直方向に通るV-V線を境にして左右段違いで水平方向に延びており、V-V線よりも右側の対向車線側部分が下段カットオフラインCL1として形成されるとともに、V-V線よりも左側の自車線側部分が、この下段カットオフラインCL1から傾斜部を介して段上がりになった上段カットオフラインCL2として形成されている。
【0051】
このロービーム用配光パターンPLにおいて、下段カットオフラインCL1とV-V線との交点であるエルボ点Eは、H-Vの0.5~0.6°程度下方に位置している。
【0052】
図4(a)に示すように、ロービーム用配光パターンPLは、第1および第2配光パターンPL1、PL2の合成配光パターンとして形成されている。
【0053】
第1配光パターンPL1は、灯具ユニット20Aからの照射光によって形成される配光パターンであって、ロービーム用配光パターンPLの中心領域を構成している。
【0054】
灯具ユニット20Aにおいては、リフレクタ40Aの反射面40Aaを構成する複数の反射素子40Asの各々による第1発光素子30Aからの出射光の反射方向および拡散角度を適宜調整することにより、第1配光パターンPL1をカットオフラインCL1、CL2に沿った横長の集光パターンとして形成するようになっている。
【0055】
第2配光パターンPL2は、灯具ユニット20Bからの照射光によって形成される配光パターンであって、ロービーム用配光パターンPLの拡散領域を構成している。
【0056】
灯具ユニット20Bにおいては、リフレクタ40Bの反射面40Baを構成する複数の反射素子40Bsの各々による第1発光素子30Bからの出射光の反射方向および拡散角度を適宜調整することにより、第2配光パターンPL2をカットオフラインCL1、CL2の下方近傍においてV-V線の左右両側に大きく拡がる横長の拡散パターンとして形成するようになっている。
【0057】
図4(b)に示すように、ハイビーム用配光パターンPHは、第1~第4配光パターンPH1~PH4の合成配光パターンとして形成されている。
【0058】
第1配光パターンPH1は、灯具ユニット20Aからの照射光によって形成される配光パターンであって、第1配光パターンPL1と同一の配光パターンである。
【0059】
第2配光パターンPH2は、灯具ユニット20Bからの照射光によって形成される配光パターンであって、第1配光パターンPL2と同一の形状を有しているが第1配光パターンPL2よりも明るさが減少した配光パターンとなっている。
【0060】
第3配光パターンPH3は、灯具ユニット20Cからの照射光によって形成される配光パターンであって、ハイビーム用配光パターンPHの中心領域を構成している。
【0061】
灯具ユニット20Cにおいては、リフレクタ40Cの反射面40Caを構成する複数の反射素子40Csの各々による第2発光素子30Cからの出射光の反射方向および拡散角度を適宜調整することにより、第3配光パターンPH3を第1配光パターンPH1と部分的に重複する横長の集光パターンとして形成するようになっている。
【0062】
第4配光パターンPH4は、灯具ユニット20Dからの照射光によって形成される配光パターンであって、ハイビーム用配光パターンPHの拡散領域を構成している。
【0063】
灯具ユニット20Dにおいては、リフレクタ40Dの反射面40Daを構成する複数の反射素子40Dsの各々による第2発光素子30Dからの出射光の反射方向および拡散角度を適宜調整することにより、第4配光パターンPH4を第2配光パターンPH2と部分的に重複する横長の拡散パターンとして形成するようになっている。
【0064】
図5は、ロービーム用配光パターンPLを構成する第1および第2配光パターンPL1、PL2およびハイビーム用配光パターンPHを構成する第1~第4配光パターンPH1~PH4を、灯具ユニット20A~20Dの構成と共に示す図である。
【0065】
図5に示すように、ロービーム照射時に2つの第1発光素子30A、30Bに供給される電力(すなわちW(L1)+W(L2))よりも、ハイビーム照射時に4つの第1および第2発光素子30A、30Bおよび30C、30Dに供給される電力(すなわちW(H1)+W(H2)+W(H3)+W(H4))の方が、大きい値に設定されている。
【0066】
これにより、ロービーム用配光パターンPLとして所要の明るさを確保するとともにハイビーム用配光パターンPHとして所要の明るさを確保するようになっている。
【0067】
その上で、2つの第1発光素子30A、30Bへの供給電力は、ロービーム照射時よりもハイビーム照射時の方が小さい値(すなわちW(L1)+W(L2)>W(H1)+W(H2))に設定されている。
【0068】
その際、第1発光素子30Bへの供給電力は、ロービーム照射時に対するハイビーム照射時の比率が50~80%程度の値(すなわちW(H2)=0.5~0.8×W(L2))に設定されており、一方、第1発光素子30Aへの供給電力は、ロービーム照射時とハイビーム照射時とで同じ値(すなわちW(L1)=W(H1))に設定されている。
【0069】
なお、ロービーム照射時における2つの第1発光素子30A、30Bへの供給電力は、いずれも同じ値(すなわちW(L1)=W(L2))に設定されており、また、ハイビーム照射時における3つの第1および第2発光素子30Aおよび30C、30Dへの供給電力は、いずれも同じ値(すなわちW(H1)=W(H3)=W(H4))に設定されている。
【0070】
このような供給電力制御を行うことにより、ロービーム用配光パターンPLにおいてその拡散領域を形成する配光パターンPL2の明るさよりも、ハイビーム用配光パターンPHにおいてその拡散領域を形成する配光パターンPH2の明るさを減少させ、これによりハイビーム照射時に車両前方走行路の近距離領域が明るくなり過ぎてしまわないようにしている。
【0071】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0072】
本実施形態に係る車両用灯具10は、ロービーム照射時およびハイビーム照射時に点灯する第1発光素子30A、30Bとハイビーム照射時に点灯する第2発光素子30C、30Dとが共通の放熱部材50に支持された構成となっているが、ロービーム照射時に第1発光素子30A、30Bに供給される電力よりもハイビーム照射時に第1および第2発光素子30A、30B、30C、30Dに供給される電力の方が大きい値に設定されているので、ロービーム照射時およびハイビーム照射時の各々において所要の明るさを確保することが容易に可能となる。
【0073】
その上で、第1発光素子30A、30Bへの供給電力はロービーム照射時よりもハイビーム照射時の方が小さい値に設定されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0074】
すなわち、放熱部材50の放熱能力の範囲内でロービーム照射時における第1発光素子30A、30Bへの供給電力を大きくしてその発光光束を高めることにより、放熱部材50のサイズを必要最小限に維持した上でロービーム用配光パターンPLの明るさを増大させることができる。そしてこれにより、放熱部材50の性能を十分に生かした配光制御を行うことができる。
【0075】
このように本実施形態によれば、ロービーム照射時およびハイビーム照射時に点灯する第1発光素子30A、30Bとハイビーム照射時にのみ点灯する第2発光素子30C、30Dとが共通の放熱部材50に支持された車両用灯具10において、放熱部材50の性能を十分に生かした配光制御を行うことができる。
【0076】
その際、本実施形態においては、2つの第1発光素子30A、30Bへの供給電力の合計値が、ロービーム照射時よりもハイビーム照射時の方が小さい値に設定されているので、本実施形態のように2つの第1発光素子30A、30Bを備えている場合であっても放熱部材50の性能を十分に生かした配光制御を行うことができる。
【0077】
しかも本実施形態においては、2つの灯具ユニット20A、20Bからの照射光によってロービーム用配光パターンPLを形成するように構成されており、その際、灯具ユニット20Aがロービーム用配光パターンPLの中心領域を形成するための中心領域用灯具ユニットとして構成されており、灯具ユニット20Bがロービーム用配光パターンPLの拡散領域を形成するための拡散領域用灯具ユニットとして構成されているが、灯具ユニット20Aの第1発光素子30Aよりも灯具ユニット20Bの第1発光素子30Bの方が、ロービーム照射時に対するハイビーム照射時の供給電力の低下率が大きい値に設定されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0078】
すなわち、ロービーム用配光パターンPLの中心領域は車両前方走行路の比較的遠距離領域を照射するものであるのに対して、ロービーム用配光パターンPLの拡散領域は車両前方走行路の比較的近距離領域を照射するものであるので、この拡散領域が明るくなりすぎるとハイビーム照射時における遠方視認性が阻害されてしまう。
【0079】
そこで、灯具ユニット20Aの第1発光素子30Aよりも灯具ユニット20Bの第1発光素子30Bの方が、ロービーム照射時に対するハイビーム照射時の供給電力の低下率が大きい値に設定された構成とすることにより、2つの第1発光素子30A、30B全体として確保し得る発光光束の範囲内においてハイビーム照射時の遠方視認性を効果的に高めることができる。
【0080】
さらに本実施形態においては、灯具ユニット20Aの第1発光素子30Aへの供給電力が、ロービーム照射時とハイビーム照射時とで同じ値に設定されているので、ハイビーム照射時の遠方視認性を最大限に高めることができる。
【0081】
また本実施形態においては、灯具ユニット20Aが右端部に配置されているので(すなわち灯具ユニット20Bよりも灯具ユニット20C、20Dから離れた位置に配置されているので)、次のような作用効果を得ることができる。
【0082】
すなわち、ハイビーム照射時には灯具ユニット20Bの第1発光素子30Bへの供給電力よりも灯具ユニット20Aの第1発光素子30Aへの供給電力の方が大きい値となるので、これらを支持する放熱部材50においては第1発光素子30Bの近傍領域よりも第1発光素子30Aの近傍領域の方が発熱しやすくなる。そこで、第1発光素子30Bよりも1発光素子30Aの方が第2発光素子30C、30Dから離れた位置に配置された構成とすることにより、放熱部材50全体としての放熱効率を高めることができ、これにより放熱部材50の性能を十分に生かすことが一層容易に可能となる。
【0083】
上記実施形態においては、灯具ユニット20Aの第1発光素子30Aへの供給電力が、ロービーム照射時とハイビーム照射時とで同じ値に設定されているものとして説明したが、ロービーム照射時とハイビーム照射時とで異なる値に設定された構成とすることも可能である。
【0084】
上記実施形態においては、放熱部材50が本体部50Aと3つの放熱フィン50Bとを備えた構成となっているものとして説明したが、これ以外の構成(例えば、平板状に形成された構成、ブロック状に形成された構成、L字形に形成された構成等)とすることも可能である。
【0085】
上記実施形態においては、車両用灯具10が4つの灯具ユニット20A~20Dを備えているものとして説明したが、3つ以下あるいは5つ以上の灯具ユニットを備えた構成とすることも可能である。
【0086】
上記実施形態においては、4つの灯具ユニット20A~20Dがいずれもパラボラ型の灯具ユニットとして構成されているものとして説明したが、その一部または全部が他の種類の灯具ユニット(例えばプロジェクタ型の灯具ユニットや直射型の灯具ユニット)で構成されたものとすることも可能である。
【0087】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0088】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0089】
図6は、本変形例に係る車両用灯具からの照射光によって形成される配光パターンを示す、図4と同様の図であり、図7は、上記配光パターンを上記車両用灯具の構成と共に示す、図5と同様の図である。
【0090】
図6(a)に示すように、本変形例においても、ロービーム用配光パターンPLは2つの第1および第2配光パターンPL1、PL2の合成配光パターンとして形成されているが、図6(b)に示すように、本変形例においては、ハイビーム用配光パターンPHが3つの第1~第3配光パターンPH1~PH3の合成配光パターンとして形成されている。
【0091】
図7に示すように、第1および第2配光パターンPL1、PL2ならびに第1および第2配光パターンPH1、PH2は、上記実施形態の場合と同様の構成を有する灯具ユニット20A、20Bからの照射光によって形成されるが、第3配光パターンPH3は、上記実施形態の灯具ユニット20C、20Dの中間的な構成を有する灯具ユニット120Cからの照射光によって形成されるようになっている。
【0092】
その際、ロービーム照射時に灯具ユニット20A、20Bの第1発光素子30A、30Bに供給される電力W(L1)+W(L2)よりも、ハイビーム照射時に灯具ユニット20A、20B、120Cの第1および第2発光素子30A、30B、30Cに供給される電力W(H1)+W(H2)+W(H3)の方が、大きい値に設定されている。
【0093】
その上で、2つの第1発光素子30A、30Bへの供給電力は、ロービーム照射時よりもハイビーム照射時の方が小さい値(すなわちW(L1)+W(L2)>W(H1)+W(H2))に設定されている。その際、第1発光素子30Bへの供給電力は、ロービーム照射時に対するハイビーム照射時の比率が50~80%程度の値(すなわちW(H2)=0.5~0.8×W(L2))に設定されており、一方、第1発光素子30Aへの供給電力は、ロービーム照射時とハイビーム照射時とで同じ値(すなわちW(L1)=W(H1))に設定されている。
【0094】
本変形例の構成を採用することにより、灯具構成を簡素化した上で上記実施形態の場合と略同様の作用効果を得ることができる。
【0095】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0096】
図8は、本変形例に係る車両用灯具からの照射光によって形成される配光パターンを示す、図4と同様の図であり、図9は、上記配光パターンを上記車両用灯具の構成と共に示す、図5と同様の図である。
【0097】
図8(a)に示すように、本変形例においては、ロービーム用配光パターンPLが第1配光パターンPL1のみで形成されており、また、図8(b)に示すように、本変形例においては、ハイビーム用配光パターンPHが2つの第1および第2配光パターンPH1、PH2の合成配光パターンとして形成されている。
【0098】
図9に示すように、第1配光パターンPL1は、上記実施形態のロービーム用配光パターンPL全体と略同様の形状を有する配光パターンであって、灯具ユニット20A、20Bの中間的な構成を有する灯具ユニット220Aからの照射光によって形成されるようになっている。第2配光パターンPH2は、上記第1変形例の場合と同様の構成を有する灯具ユニット120Cからの照射光によって形成されるようになっている。
【0099】
その際、ロービーム照射時に灯具ユニット220Aの第1発光素子30Aに供給される電力W(L1)よりもハイビーム照射時に灯具ユニット220A、120Cの第1および第2発光素子30A、30Cに供給される電力W(H1)+WW(H2)が大きい値に設定されており、かつ、第1発光素子30Aへの供給電力は、ロービーム照射時の供給電力W(L1)よりもハイビーム照射時の供給電力W(H1)の方が小さい値に設定されている。
【0100】
本変形例の構成を採用することにより、灯具構成をさらに簡素化した上で上記実施形態の場合と略同様の作用効果を得ることができる。
【0101】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0102】
また本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。
【符号の説明】
【0103】
10 車両用灯具
12 ランプボディ
14 透光カバー
20A 灯具ユニット(中心領域用灯具ユニット)
20B 灯具ユニット(拡散領域用灯具ユニット)
20C、20D、120C、220A 灯具ユニット
30A、30B 第1発光素子
30C、30D 第2発光素子
30a 発光面
32 絶縁シート
34 導電層
36 コネクタ
40A、40B、40C、40D リフレクタ
40Aa、40Ba、40Ca、40Da 反射面
40As、40Bs、40Cs、40Ds 反射素子
42 樹脂成形品
42a 下端フランジ部
50 放熱部材
50A 本体部
50B 放熱フィン
CL1 下段カットオフライン
CL2 上段カットオフライン
E エルボ点
PH ハイビーム用配光パターン
PH1、PL1 第1配光パターン
PH2、PL2 第2配光パターン
PH3 第3配光パターン
PH4 第4配光パターン
PL ロービーム用配光パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9