IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋製罐グループホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-表面検査システム 図1
  • 特開-表面検査システム 図2
  • 特開-表面検査システム 図3
  • 特開-表面検査システム 図4
  • 特開-表面検査システム 図5
  • 特開-表面検査システム 図6
  • 特開-表面検査システム 図7
  • 特開-表面検査システム 図8
  • 特開-表面検査システム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049436
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】表面検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20220322BHJP
【FI】
G01N21/892 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155645
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩道 行正
(72)【発明者】
【氏名】藤井 博史
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA37
2G051AB01
2G051AB07
2G051BB01
2G051CA03
2G051CA04
2G051CB05
2G051EA01
2G051EA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コストのかからない新たな表面検査システムを提供する。
【解決手段】イメージセンサと画像処理装置3を備え、イメージセンサは、被検査物の表面を撮像し、画素値2111を画像処理装置3に送る送信部を有し、画像処理装置3は、あらかじめ想定した想定欠陥95の大きさおよび形状に合わせて、隣接する複数の画素211を統合して1つの統合画素41を生成する統合画素生成部4と、イメージセンサから送られた画素値2111に基づき、統合画素41に含まれる複数の画素の画素値2111から1つの代表値511を算出し、統合画素値52として割り当てる割当部5と、統合画素値52から統合2次元画像61を再構成する統合画像再構成部6、統合2次元画像61および統合画素値52に基づき、欠陥の大きさおよび形状を判別する判別部7を有することを特徴とする表面検査システム。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージセンサと画像処理装置を備え、
前記イメージセンサは、被検査物の表面を撮像し、画素値を前記画像処理装置に送る送信部を有し、
前記画像処理装置は、
あらかじめ想定した想定欠陥の大きさおよび形状に合わせて、隣接する複数の画素を統合して1つの統合画素を生成する統合画素生成部と、
前記イメージセンサから送られた前記画素値に基づき、前記統合画素に含まれる複数の前記画素の前記画素値から1つの代表値を算出し、前記統合画素値として割り当てる割当部と、
前記統合画素値から統合2次元画像を再構成する統合画像再構成部、
前記統合2次元画像および前記統合画素値に基づき、欠陥の大きさおよび形状を判別する判別部
を有することを特徴とする表面検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像により被検査物の表面の欠陥を検査する表面検査システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面検査するシステムは、被検査物として平面的な半導体ウエハーや鋼板等の疵や立体物に対しても行われている。そして、より小さな傷などの欠陥を検出できるよう工夫がなされている。例えば、鋼板については、特許文献1に記載されているように、より高精度な疵検出を可能とするよう工夫がなされている。
そして、より高精度な疵(欠陥)検出を可能とするためにイメージセンサを高精細化しラインセンサ(1次元のイメージセンサであり、被検査物を一定速度で動かすことで2次元画像を得る)が用いられ、画素はますます小さいものへと移行してきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-219177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの欠陥に対する品質要求は、年々厳しくなり、表面検査システムの精度の向上も継続的に要求されている。現在多く使用されるイメージセンサを用いた表面検査システムは、能力の向上、欠点分類の精度及び適格率向上を行う場合、イメージセンサの画素サイズを小さくして分解能を上げ、欠陥の形状、面積の測定精度をあげることで、対応する方向にある。品質要求に応えるためには、さらに、同イメージセンサの性能に対応する画像処理速度を有する新たな画像処理装置に交換する必要もあるし、新たな処理プログラムを導入することになる。このように、表面検査システムの交換は、非常に大掛かりで出費の負担が多いものとなっていた。
さらに、画素サイズが小さくなることで、入光する光量が少なくなるし、画素の少ないイメージセンサと比較して、単位面積当たりの受光面積が小さくなる。これらは、S/N比を下げる原因となり、画素サイズを小さくすることで、予想より測定精度が上がらないこともあり得る。
【0005】
本発明は、コストのかからない新たな表面検査システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、イメージセンサと画像処理装置を備え、前記イメージセンサは、被検査物の表面を撮像し、画素値を前記画像処理装置に送る送信部を有し、前記画像処理装置は、あらかじめ想定した想定欠陥の大きさおよび形状に合わせて、隣接する複数の画素を統合して1つの統合画素を生成する統合画素生成部と、前記イメージセンサから送られた前記画素値に基づき、前記統合画素に含まれる複数の前記画素の前記画素値から1つの代表値を算出し、統合画素値として割り当てる割当部と、前記統合画素値から統合2次元画像を再構成する統合画像再構成部、前記統合2次元画像および前記統合画素値に基づき、欠陥の大きさおよび形状を判別する判別部を有することを特徴とする表面検査システムとした。
【発明の効果】
【0007】
コストのかからない表面検査システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の概念図
図2】画像処理装置の概念図
図3】想定欠陥と統合画素の説明図
図4】統合2次元画像の説明図
図5】想定欠陥と統合画素の概念図(A)想定欠陥と統合画素の拡大図(B)想定欠陥とほぼ同じ形状と大きさの欠陥が検出される説明図
図6】縦方向の統合画素により想定欠陥と異なる形状と大きさの欠陥が検出される様子を示す説明図(A)欠陥の形状と大きさの説明図(B)縦方向の統合画素を一画素ずつ下げた状態の統合画素値の説明図(C)統合2次元空間を重ね合わせる説明図
図7】横方向の統合画素により欠陥が検出される説明図(A)欠陥の形状と大きさの説明図(B)横方向の統合画素を右に1画素ずつ動かした状態の統合画素値の説明図
図8】丸形の凹凸疵を想定欠陥とした統合画素の説明図
図9】重合2次元画像の説明図(A)欠陥の形状と大きさの説明図(B)縦方向の統合画素による統合画素値の説明図(C)横方向の統合画素による統合画素値の説明図(D)重合2次元画像の説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における
同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0010】
(実施例1)
[イメージセンサ]
図1は、実施例の概念図である。実施例は、被検査物として鋼板9を検査するものである。鋼板(被検査物)9は図面中の矢印方向に搬送されており、イメージセンサであるラインセンサカメラ(イメージセンサ)2が鋼板9の上に設けられている。ラインセンサカメラ(イメージセンサ)2の検出ライン21を照明するライン照明22は、欠陥91の凹凸の陰影が目立つように検出ライン21の斜めから照射される。検出ライン21で撮影された鋼板9の表面は、画素211ごとの画素値2111として、送信部23から通信線24を介して画像処理装置3へと送られる。
なお、実施例では、イメージセンサとしてラインセンサカメラ(イメージセンサ)2を使用しているが、2次元画像を撮影するイメージセンサでもよい。ラインセンサカメラ(イメージセンサ)2は、一般的に2次元画像を撮影するイメージセンサより画素が多く、搬送されているラインで送られる被検査物を撮影する場合はラインセンサカメラ(イメージセンサ)2の方が好ましい。被検査物の種類によっては2次元画像を撮影するイメージセンサの方が好ましいこともある。
また、撮像素子としては、CCDやCMOSが代表的であるがアバランシェフォトダイオードなど高感度撮像素子であってもよく、撮像素子の種類は問わない。
【0011】
[欠陥]
鋼板(被検査物)9の表面の欠陥91は、多数あるが、いくつかの例を示す。
(1)鋼板9の搬送または製造工程で鋼板9の搬送中に金属片などの異物が接触し、搬送方向に生じた縦疵912
(2)鋼板9の搬送または製造工程で鋼板9に接触するローラーが回転不良を起こし、スリップするなどで発生する搬送方向と直交する横疵913
が多い。
また、鋼板9の表面の汚れも欠陥91に含まれる。
さらに、丸や四角などの形状によっても分類できる。
などである。
【0012】
[画像処理装置]
図2は、画像処理装置3の概念図である。画像処理装置3の主要部は、統合画素生成部4と、割当部5と、統合画像再構成部6と判別部7である。ここでいう「部」とは、一つの装置でもよいし、ソフトウエア上のモジュールでもよく、一つの装置に搭載されていてもよいし、ネットワーク上で分散配置されたものが繋がれ仮想的に画像処理装置3として存在してもよい。本発明でいう画像処理装置3としての機能を備えるのであれば、形態を問わない。
画像処理装置3は、ラインセンサカメラ(イメージセンサ)2の送信部23から送信された画素211ごとの画素値2111を受信する。それぞれの「部」について、順に説明する。
【0013】
(1)統合画素生成部
想定欠陥95は、後述する統合画像再構成部6における画像処理により欠陥91の形状を再構成するのに適した基本的な形状や大きさとしてもよい。
実施例1では、購入したロール状の鋼板9から、加工物を製造する製造プラントであり、まず、あらかじめ欠陥91の形状や大きさが想定できる場合の例として説明する。購入した鋼板(被検査物)9のロールは、巻き戻されて長尺な鋼板9が搬送ローラー等で加工品製造ラインに送られる。鋼板9は、鋼板9自体の圧延等の製造工程や搬送工程で、搬送方向に生じた縦疵912が付きやすい。
【0014】
[想定欠陥]
図3は、想定欠陥95と統合画素41の説明図である。鎖線で示されたマス目一つ一つは、画素211を表している。画素211は、ラインセンサカメラ(イメージセンサ)2に搭載された個々の撮像素子(図示せず)から、シャッタースピードに同期して取得されるデータ単位と対応するものである。検出ライン21を撮像している個々の撮像素子の撮影位置と画素211の位置は対応する。鋼板9の搬送速度とシャッタースピードに合わせて次々と検出ライン21が搬送方向にずれて行き、シャッターが切れるごとに検出ライン21が変わり、次々と画素211単位のデータ(画素値2111)が割当部5に送られる。検出ライン21毎に画素211単位のデータ(画素値2111)を並べることで、2次元の画像となる。画素211の形は、鋼板9の搬送測度と、シャッタースピードにより変わるが、略正方形になるように鋼板9の搬送測度に合わせてシャッタースピードの設定をすることが好ましい。なお、画素211の形が長方形になることを妨げるものではない。
【0015】
鋼板9は、鋼板9自体の圧延等の製造工程や搬送工程で、搬送方向に生じた縦疵912が付きやすい。欠陥91の大きさや形が決まっているので、その欠陥91を想定欠陥95とする。統合画素41は、想定欠陥95よりやや小さく、縦方向に画素211が20個含まれ×横方向に画素211が5個含まれる計100個の画素211の集合体である。統合画素41は、ラインセンサカメラ(イメージセンサ)2から検出ライン21毎に送られてきた画素211を2次元に仮想的に集めて作成したものである。また、統合画素41の形状は、想定欠陥95の形状に相似させものである。例えば、実施例では、図3に示すように長方形をしている。想定欠陥95を確実に検出するために、統合画素生成部4は想定欠陥95よりあえて一回り小さい寸法の統合画素41を作成するのが好ましい。
【0016】
(2)割当部
前記したようにラインセンサカメラ(イメージセンサ)2からは、鋼板9が搬送され、シャッターが切れるごとに次々と検出ライン21が変わり、画素211に対応する画素値2111が次々と送られて来る。実施例の画素値2111は256階調の濃淡データである。なお、画素値2111を処理にするに当たり、まず、欠陥91のない鋼板9の表面の画素値2111と検出された欠陥91の箇所の画素値2111の差分を取り画素値2111を標準化しておくことが好ましい(バックグラウンドノイズ除去)。
割当部5は、統合画素生成部4で作成された仮想的な統合画素41(縦方向の画素211が20個×横方向の画素211が5個)に含まれるすべての画素211(合計100個)の各々の画素値2111に基づき、空間フィルタ51を用いて代表値511を算出する(図2参照)。
ここでいう、空間フィルタ51の例としては、統合画素41に含まれる合計100個の画素211のそれぞれ画素値2111の平均値を代表値511とする空間フィルタ51を挙げることができる。また、空間フィルタ51は、単に合計100個の画素値2111の合計値を代表値511するものであってもよいし、中間値(メジアン)を代表値511とするものであってもよい。空間フィルタ51は、欠陥91の存在する部分の代表値511と欠陥91の存在しない鋼板9の表面の代表値511と比較して後述する判別部7で判別するのに適したものが好ましい。また、ノイズに対して効果的な空間フィルタ51であることが好ましい。上記の空間フィルタ51の例は、ノイズに対して効果的な例である。例えば、平均化する空間フィルタ51を用いると、画素値2111にノイズが混じっても、平均化されることで個々の画素211単位のばらつきを低減させることができる。
以上のように算出された代表値511は、統合画素41の統合画素値52として割り当てられる。統合画素41ごとに計算された代表値511を一つ一つの統合画素41に統合画素値52として割り当てることは、あたかも一つの大きな画素として扱うことで、受光面が仮想的に拡大されノイズの影響が減ることが理解されよう。
【0017】
(3)統合画像再構成部
図4は統合2次元画像61の説明図である。前記割当部5から出力される統合画素値52を用いて、統合2次元画像61を再構成する。統合2次元画像61は、統合画素41で埋め尽くされている。また、図中の鎖線で示された小さいマス目は、すべて画素211であり、代表して一つの画素211だけ符号をつけて図示している。縦横の軸に付した数字は、画素211を原点0から数えた数を表す。
統合画像再構成部6は、前記割当部5から出力される統合画素値52を用いて、統合2次元画像61を再構成する。視覚的に表現すれば、統合画素41を単位として、統合画素値52に相当する濃淡が統2次元画像61として表示される。これにより、隣接する統合画素41間の関係性が分かるようになる。
統合画像再構成部6は、統合画素41を単位とし、統合画素41で埋め尽くされた統合2次元画像61を再構成する。図4の左上の太い線で描いた長方形は、1画素ずらせた統合画素411を表す。統合画像再構成部6は、1画素ずらせた統合画素411を単位として別の統合2次元画像61も再構成する。そして、統合画像再構成部6は、図4の状態から、さらに2画素ずらせた統合画素(図示せず)を単位とするさらに別の統合2次元画像61を再構成する。このように、0画素~4画素ずらせた計5枚の統合2次元画像61が作られる。5画素ずらせると、図4で示した統合2次元画像61に戻るから、計5枚の統合2次元画像61で十分である。
このようにするのは、欠陥91が、鋼板9の表面上のどこにあるかは分からないから、1つの画素211ずつずらせた統合2次元画像61を作成することで欠陥91の判別を正確に行うためである。この点については、次の項で詳細に説明する。
【0018】
(4)判別部
図5は、想定欠陥95と統合画素41の概念図である。説明を簡単にするため、マス目の縮尺を変え、点線で囲われた一つのマス目は縦5画素×横5画素を表す。したがって、図5の統合画素41の大きさは、図3および図4の統合画素41(縦20画素×横5画素)と同じである。図5(A)は想定欠陥95と統合画素41の拡大図であり図5(B)は、想定欠陥95とほぼ同じ形状と大きさの欠陥91が検出される説明図である。
判別部7は、統合画像再構成部6から送られた統合2次元画像61と、それを構成する統合画素41の統合画素値52(代表値511)を用いて、欠陥91の判別を開始する。
判別部7は、閾値71を持っており、実施例1では統合画素値52(代表値511)の上限の50%となるように設定されている。
図5(B)のex.1では、想定欠陥95と同じ形状の欠陥91が、統合画素41のちょうど中心を通るように矢印の方向に搬送される様子を示している。図5(B)の下と右の棒グラフは、代表値511(統合画素値52)の大きさを示している。想定欠陥95と同じ形状の欠陥91は、統合画素41より、左右がやや大きいため、中央の統合画素41では、統合画素値52の上限となる代表値511(統合画素値52)が出力されているが、中央の統合画素41の左右に隣接する統合画素41には、それぞれ閾値71より小さな代表値511(統合画素値52)が出力されている。閾値71により、中央の統合画素41の代表値511(統合画素値52)しか判別対象とならず、中央の統合画素41には非常に大きな代表値511(統合画素値52)が検出されるため、想定欠陥95と同じかやや大きい欠陥91がある場合、確実に検出ができる。
また、非常に簡単に想定欠陥95とほぼ同じ大きさの形状と大きさの欠陥91があると判別できる。想定欠陥95の形状や大きさがほぼ定まっている場合には、計算資源に負荷を与えず検出でき非常に有利である。
【0019】
図5(B)のex.2のように想定欠陥95と同じ形状の欠陥91の中央が、隣接する統合画素41と統合画素41の接合線を通るように搬送されるときが、一番判別が難しい。閾値71と統合画素値52が近接しており、ノイズの影響を考慮すると、判別し損ねることが起こり得る。
そこで、図4を使って説明したように、統合画素41を1画素ずらせて作成した計5枚の統合2次元画像61を用いる。判別部7は、統合画素値52が最も高い値を示す統合2次元画像61を用いて判別を行うことで判別精度を各段に向上させることができる。これにより、欠陥91がどの位置にあろうとも、想定欠陥95と略同じ形状で同じ大きさの欠陥91であれば確実に検出し、形状や大きさを判別できる。
【0020】
また、統合2次元画像61に対して、微分フィルタや差分フィルタなどの空間フィルタ51を適用することにより、欠陥91に隣接する統合画素41との変化を明確化でき、変化が輪郭線のように浮かび上がる。このようにすると、形状や大きさを判別するのに便利である。統合画素41より小さい欠陥91は、代表値511(合計値や平均値など)が割り当てられることで平均化され、欠陥91の分類精度が向上する。
また、統合画素41よりやや大きい欠陥91は、微粉フィルタや差分フィルタなどの空間フィルタを適用した上で2値化すると、統合画素41からはみ出た部分は除去されてしまうが、逆に、統合画素41に類似か非類似かの欠陥91の形状を判断は明確にできるようになる。
空間フィルタとしては、この他にもラプラシアンフィルタ(二次微分フィルタ・輪郭抽出)や適宜案フィルタを適用できる。
【0021】
(追加の態様)
(追加の態様)
[統合画像再構成部における統合画素の起点位置の変更]
図4では、横方向に1画素ずつずらせた統合画素411を用いて、合計5枚の統合2次元画像61を作成することを説明した。しかし、統合画素41の起点も欠陥91の検出に影響する。統合画素41の起点位置を上下に変更することで、さらに欠陥91の形状や大きさを判別する精度を上げることが可能となる。
図6は、縦方向の統合画素41により想定欠陥95と異なる形状と大きさの欠陥91が検出される様子を示す説明図であり、図6(A)は欠陥91の形状と大きさの説明図である。欠陥91は、搬送方向に向かって動くため、統合画素41の起点をどこにするかによっても、統合画素値52が異なってくる。
【0022】
鎖線で囲まれるマス目は1つの画素211を表す。ここで、説明のためにノイズが全くないことを前提とする。また、合計値を算出する空間フィルタ51を採用することとする。さらに、画素211が欠陥で覆われていないときは「0」を画素値2111として出力し、画素211が欠陥で覆われているときは「1」を画素値2111として出力するものとする。
このような前提を置いたとき、統合画素41に含まれる4つの画素211の内1つの画素211が欠陥91で覆われた時の代表値511は「1」と出力され、同じく2つの画素211が欠陥91で覆われたときの代表値511は「2」と出力され、同じく3つの画素211が欠陥91で覆われたときの代表値511は「3」と出力され、これらの代表値511を各々統合画素値52として割り当てる。図6の実施例の場合、画素211を集めて作成した統合画素41であるから、合計値を算出する空間フィルタ51を採用すると、集めた4つの画素211に含まれる欠陥の数が代表値511となる。

統合画素値52の最大値は、統合画素41に含まれる4つの画素211がすべて欠陥91で覆われた時の「4」である。図中の統合画素41を示す枠の線の太さは統合画素値52の大きさに比例し描かれており、枠の線が太い程、統合画素値52が大きいことを示し、図示された統合画素41の枠内の数字は統合画素値52を示す。
同じ位置に欠陥91があるとしても、縦方方向の統合画素41では、図6(B)のように、縦方向の統合画素41を一画素ずつ下げて代表値511を計算し統合画素値52として割り当てることで、計4枚の統合2次元画像61を作成される。図6(B)に図示したそれぞれの統合画素41内の数値は、前記した統合画素値52の数値を表す。また、統合画素値52が「0」となる統合画素41は省略して図示していないが、実際には、図4で説明したように、統合2次元画像61上に隙間無く統合画素41が敷き詰められている。それぞれ、統合画素41の起点が異なることで、図6(A)の欠陥91からは、図6(B)のように異なる統合2次元画像61が計4枚作製されることが理解される。
【0023】
[統合画像再構成部における画像の重ね合わせ]
図6(C)は統合2次元画像61を重ね合わせる説明図である。統合画素41の起点を1画素ずつ下げた統合画素値52を重ね合わせる。これは、それぞれの統合2次元画像61を透明なシートに転写し重ね合わせ上から観たような状態となる。統合画素値52の大きな箇所が浮かび上がり、欠陥91の形状や大きさが浮かび上がる。この点については、後述の[重合2次元画像]で詳しく説明する。
【0024】
[想定欠陥の多様性]
欠陥91は、縦疵912ばかりとは限らない。図7は横疵913を想定欠陥95として作られた横方向の統合画素41により欠陥91が検出される説明図である。図7(A)は欠陥91の形状と大きさの説明図であり、図6(A)と全く同じ形状と大きさの欠陥91である。図7(B)は横方向の統合画素41を右に1画素ずつ動かした状態の統合画素値52の説明図である。図中の枠の線の太さは、統合画素値52の大きさと比例し、また、枠内の数値は、統合画素41の統合画素値52を表す。
図6(A)と図7(A)は全く同じ形状で同じ大きさの欠陥91であるが、統合画素41の方向により、統合画素41の出力が変わるとともに、それから作成される統合2次元画像61が全く異なるものとなることが分かる。図6(C)の縦方向の統合画素41による統合2次元画像61に加えて、横方向の統合2次元画像61を更に重ね合わせることで、より欠陥91の形状や大きさが判別できるように浮かび上がることが理解されよう。
また、図8は丸型の凹凸疵を想定欠陥95とした統合画素41の説明図である。統合画素41は十字の形をしている。統合画素41の形状や大きさは、必要に応じ適宜定めることができるものである。図示していないが、このような形状の統合画素41であっても上下左右に1画素ずつ動かし、複数の統合2次元画像61が作られる。
【0025】
[重合2次元画像]
図9は、重合2次元画像62の説明図である。図6(C)では、統合2次元画像61を重ね合わせることができることを説明した。あらかじめ想定した想定欠陥95と異なる形状や大きさの欠陥91に対しても、本発明が有効であることを説明する。欠陥91の形状や大きさがバラバラな時にも本発明は対応できる。
図9(A)は、欠陥91の形状と大きさの説明図であり、欠陥91は縦3画素×横3画素の正方形の形をしている。これに対して、縦3画素×横1画素の形状と大きさの縦方向の統合画素41と、縦1画素×横3画素の形状と大きさの横方向の統合画素41の2種類の統合画素41が用意されている。
欠陥91に対して、図9(B)では、縦方向の統合画素41による統合画素値52の説明図であり、画素211を一つずつ動かして複数の統合2次元画像61を作成している。また、図9(C)は、横方向の統合画素41による統合画素値52の説明図であり、やはり、画素211を一つずつ動かして統合2次元画像61を作成している。
【0026】
説明のため、図6と同じ前提を置き、ノイズがないものとし、欠陥91に完全に覆われた画素211の画素値2111を「1」とし、欠陥91のない画素211の画素値2111は「0」としている。統合画素値52が0の部分の統合画素41は描いていない。空間フィルタ51は、統合画素41に含まる画素211の画素値2111の合計値を代表値511として出力する空間フィルタ51としている。3個の画素211からなる統合画素41に割り当てられる代表値511の上限は「3」であり、代表値511が割り当てられた統合画素値52は、0~3の間で変化する。枠内の線の太さは、図6図7と同様に統合画素値52に比例し、数字は統合画素値52を表す。
【0027】
図9(D)は重合2次元画像62の説明図であり、図9(B)と図9(A)のそれぞれの3枚の統合2次元画像61(合計6枚の統合2次元画像)を重ね合わせた重合2次元画像62である。図9(B)で作成された(B1)~(B3)の統合2次元画像61と図9(C)で作成された(C1)~(C2)の統合2次元画像61の計6枚の統合2次元画像61を重合し、重合2次元画像62を作成したのが図9(D)である。各重合画素621内の数字は、統合画素値52を重合画素621単位で合計した重合画素値6211を表している。例えば、図9(D)の第1の重合画素値6212の「1」は、図9(B1)の第1の統合画素412の統合画素値52の「1」に由来する。図9(D)の第2の重合画素値6213は、図9(B1)の第1の統合画素412の統合画素値52の「1」と図9(B2)の第1の統合画素412の統合画素値52と第2の統合画素413の統合画素値52の「2」を合計した「3」に由来する。
さらに、図9(D)の第3の重合画素値6214の「12」は、図9(B1)~図9(B3)の第1の統合画素412の統合画素値52の「1」、第2の統合画素413の統合画素値52の「2」、第3の統合画素414の統合画素値52の「3」に加え、図9(C1)~(C3)の第4の統合画素415の統合画素値52の「2」、第5の統合画素416の統合画素値52の「1」、第6の統合画素417の統合画素値52の「3」を合計した「12」に由来する。図9(D)の太線の枠は、欠陥91の位置を示し、欠陥91と重なる統合画素41が多い程、重合画素値6211が急激に大きくなることが分かる。
図9(D)の重合2次元画像62の重合画素621は、以上のような処理を経て作成されたものである。図9(D)を観ても分かるように、欠陥91に相当する枠で囲んだ箇所内の重合画素値6211は、欠陥91の周囲と比較して大きな重合画素値6211となっていることが分かる。最大値は欠陥91に相当する枠内の中央の重合画素値6211であり「14」となっている。閾値を最大値「14」の半分の「7」であるが、それよりも閾値を低くしても検出可能なことが理解されよう。閾値に余裕ができることは、検出の精度が向上したことを意味する。
さらに、重合2次元画像62を作成することにより、統合画素41と異なる形状の欠陥91であっても検出可能となり、しかも、形状や大きさも判別することができる。
また、重合2次元画像62を適宜な閾値を使用して2値化することで形状もシャープに再現できる。
以上のように、多様な欠陥91を検出しようとする場合、多様な形状や大きさの統合画素41を用意し、重ね合わせることで、欠陥91のおおよその形状と大きさを検出できる。
【0028】
(ノイズ)
前述したように、統合画素41という仮想の大きな画素を形成することで、あたかも受光面積を大きくしたように作用することとなる。加えて、統合画素41に含まれる画素211の画素値2111は、空間フィルタ51により平均化されたり合計されたり中間値(メジアン)とすることで、ノイズが分散され、S/N比が向上する。
【0029】
(変形例)
品質要求から定まる最小の縦疵912や横疵913等を想定欠陥95としてもよい。品質要求から定まる様々な形状の最小の欠陥を想定欠陥95とすることで、品質要求に応える欠陥91を確実に検出できるし、また、想定欠陥95に応じた様々な形状の統合画素41により統合2次元画像61や重合2次元画像62を再構成することで、最小の欠陥91より大きな欠陥91の形状や大きさを判別できることとなる。画素値2111は、256階調の濃淡データとしてもよいし、カラーデータでもよいことは言うまでもない。
図示していないが、ラインセンサカメラ(イメージセンサ)2を、複数台角度を変えながら設けることで、S/N比の向上がさらに図れる。角度が違うラインセンサカメラ(イメージセンサ)2からは、欠陥91の形状や大きさあるいは凹か凸かなどにより生じる陰影が、様々な画像が取得できる。欠陥91に適した角度のラインセンサカメラ(イメージセンサ)2からのデータ(すなわち、出力の大きい)を用いてもよいし、すべてのラインセンサカメラ(イメージセンサ)2からのデータを、角度を補正して重合2次元画像62を作成し分析してもよい。
【0030】
品質要求から定まる最小の縦疵912や横疵913等を想定欠陥95とした統合画素41を様々作成し、複数の統合2次元画像61を再構成し、加えて、複数の統合2次元画像61を重合して重合2次元画像62とすることで、最小の縦疵912や横疵913と異なる形状や大きさの欠陥91であっても検出することが可能となる。
【0031】
(実施例の作用効果のまとめ)
従来、画素211および画素値2111を用いた表面検査システム1では、形状を別途のプログラムにより判別する必要がある。しかも、画素211が小さいため膨大な計算資源を必要としていた。
本発明では、上述のように、想定欠陥95の形状をパターン化した統合画素41の形状とマッチングした統合画素値52を得るだけで、形状や大きさの判別ができるため、計算資源を浪費しない使い方もできる。
また、画素211を集めて作成した統合画素41は、受光面積を大きくしたのと同様の効果があり、空間フィルタ51により代表値511を統合画素値52として割り当てるため、S/N比が向上する。
そして、想定欠陥95のパターン変更や追加は、想定欠陥95の形状や大きさを統合画素生成部4に入力するだけで足り、従来のように判別のためのプルコルをアルゴリズムとして加えるような大規模な修正を行う必要がなくなる。仮に形状判別精度を高めるため想定欠陥95のパターンを極端に増やしたとしても図1のように画像処理装置3を増やし並列化することで対応できる。なぜなら、画像処理装置3に入力される想定欠陥95が異なるだけで、その他のプログラムに変更はなく、簡単に並列化することができるからである。
さらに、重合2次元画像62を作成するようにすれば、想定欠陥95以外の様々な形状の欠陥91の形状や大きさも検出できる。
想定欠陥95を、品質要求から定められる最小の欠陥91の形状や大きさを想定欠陥95として統合画素41を生成すれば、欠陥91に対する品質要求が高まったとしても、ラインセンサカメラ(イメージセンサ)2を変えなくても対応できる。本発明は、実施例のように従来の表面検査システム1の性能をギリギリまで引き出すことができるので、品質要求が厳しくなったとしても対応できるようになる。
また、画素211単位の分析に対して形状判別能力や面積計算能力は犠牲になるが、統合画素41に対して、その統合画素41を代表する代表値511(平均値は中間値等)を統合画素値52として割り当てる段階でノイズ処理が終わるため、画素211単位の分析で行われるような平滑化処理、膨張・収縮処理、微小欠陥除去処理などの数々のノイズ対策を施す必要がなくなり、計算器に負担をかけることがない。
【0032】
以上、本発明に係る実施例を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、前述の各実施例や変形例は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である
【符号の説明】
【0033】
1 表面検査システム

2 ラインセンサカメラ(イメージセンサ)
21 検出ライン
211 画素
2111 画素値
22 ライン照明
23 送信部
24 通信線

3 画像処理装置

4 統合画素生成部
41 統合画素
411 1画素ずらせた統合画素
412 第1の統合画素
413 第2の統合画素
414 第3の統合画素
415 第4の統合画素
416 第5の統合画素
417 第6の統合画素

5 割当部
51 空間フィルタ
511 代表値
52 統合画素値

6 統合画像再構成部
61 統合2次元画像
62 重合2次元画像
621 重合画素
6211 重合画素値
6212 第1の重合画素値
6213 第2の重合画素値
6214 第3の重合画素値
7 判別部
71 閾値

9 鋼板
91 欠陥
912 縦疵
913 横疵

95 想定欠陥
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9