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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049489
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220322BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20220322BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02P27/06
H02M7/48 L
H02M7/48 N
H02J9/06 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155717
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】豆 常瀟
【テーマコード(参考)】
5G015
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5G015FA10
5G015FA16
5G015GA06
5G015GA10
5G015JA05
5G015JA27
5H505CC05
5H505DD05
5H505EE41
5H505EE42
5H505EE49
5H505FF01
5H505GG02
5H505GG04
5H505GG06
5H505HA06
5H505HB01
5H505JJ05
5H505LL01
5H505LL22
5H505MM15
5H770BA01
5H770BA15
5H770CA02
5H770EA01
5H770EA27
5H770FA05
5H770HA02Y
5H770HA02Z
5H770HA03Y
5H770HA03Z
5H770HA05Z
5H770HA07Z
5H770JA17Y
5H770LA03Z
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で電動機のソフトスタートと、負荷装置に対する瞬低補償とを実現する。
【解決手段】
電力変換装置と、交流電源を電動機に対して接続又は遮断する第1開閉器と、電力変換装置の出力を電動機に対して接続又は遮断する第2開閉器と、交流電源を負荷装置に対して接続又は遮断する第3開閉器と、電力変換装置の出力を負荷装置に対して接続又は遮断する第4開閉器と、を備え、第1開閉器が及び第4開いた状態で、第2開閉器及び第3開閉器がとした状態で、電動機を電力変換装置によりソフトスタートさせ、電動機が所定の回転速度に達した後に、第1開閉器及び第4開閉器を閉状態、第2開閉器及び第3開閉器を開状態とし、電力変換装置から負荷装置に電力を供給するように制御する制御部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から受電可能に接続された電力変換装置と、
前記電力変換装置の出力を電動機に対して接続又は遮断する第2開閉器と、
前記交流電源を前記電動機に対して接続又は遮断する第1開閉器と、
前記交流電源を負荷装置に対して接続又は遮断する第3開閉器と、
前記電力変換装置の出力を前記負荷装置に対して接続又は遮断する第4開閉器と、
制御部を備え、
前記制御部は前記第2開閉器及び第3開閉器が閉じた状態且つ、前記第1開閉器及び前記第4開閉器が開いた状態で、前記電動機に前記電力変換装置から電力を供給し、前記電動機を始動させ、前記電動機が所定の速度に達した後に、前記第1開閉器を閉じて前記電動機を前記交流電源と接続し、前記電動機が前記交流電源から直接電力供給を受電可能とし、その後、前記第2開閉器を遮断し、次に前記第4開閉器を閉じて前記負荷装置に前記電力変換装置から電力を供給し、次に、前記第3開閉器を遮断し、前記電力変換装置に瞬低補償動作させること
を特徴とする電力変換システム。
【請求項2】
交流電源から受電可能に接続された電力変換装置と、
前記電力変換装置の出力を電動機に対して接続又は遮断する第2開閉器と、
前記交流電源を前記電動機に対して接続又は遮断する第1開閉器と、
前記交流電源を負荷装置に対して接続又は遮断する第3開閉器と、
前記電力変換装置の出力を前記負荷装置に対して接続又は遮断する第4開閉器と、
制御部を備え、
前記制御部は前記第2開閉器及び第3開閉器が閉じた状態且つ、前記第1開閉器及び前記第4開閉器が開いた状態で、前記電動機に前記電力変換装置から電力を供給し、前記電動機を始動させ、前記電動機が所定の速度に達した後に、前記第1開閉器を閉じて前記電動機を前記交流電源と接続し、前記電動機が前記交流電源から直接電力供給を受電可能とし、その後、前記第4開閉器を閉じて前記負荷装置に前記電力変換装置から電力を供給し、次に前記第2開閉器と前記第3開閉器を遮断し、前記電力変換装置を瞬低補償動作させること
を特徴とする電力変換システム。
【請求項3】
前記第1開閉器と前記第2開閉器と前記第3開閉器が開状態且つ、前記第4開閉器が閉状態にて前記電力変換装置を瞬低補償動作させ、
前記第3開閉器を閉じた後、前記第4開閉器の遮断と前記電力変換装置の出力側のゲートブロックを行い、
その後、前記第2開閉器を閉してから、前記電力変換装置にて前記電動機の始動を開始することを、
特徴とする
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の電力変換システム。
【請求項4】
前記制御部は、
直交する2軸の電動機制御用信号を出力する電動機駆動制御部と、
直交する2軸の電圧制御用信号を出力する瞬低補償制御部と、
直交する2軸の信号入力と基準位相信号に基づき3相の電圧制御信号を生成する逆d/q変換部と、
前記電力変換装置の出力電圧の位相を検出する第1位相検出部と、
前記交流電源の電圧の位相を検出する第2位相検出部と、
前記逆d/q変換部の前記直交する2軸の信号入力を、前記直交する2軸の電動機制御用信号又は前記直交する2軸の電圧制御用信号に切り替える第1の切り替え回路と、
前記逆d/q変換部の前記基準位相信号を、前記第1位相検出部の出力位相又は前記第2位相検出部の出力位相に切り替える第2の切り替え回路と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力変換システム。
【請求項5】
前記瞬低補償制御部は、前記2軸の電圧制御用信号の基準となる基準電圧回路部を備え、
前記基準電圧回路部は非保持状態では、前記交流電源の振幅に、前記基準電圧回路部の出力が追従し、
前記基準電圧回路部は保持状態では、直前保持状態になる直前の前記交流電源の振幅に追従した、前記基準電圧回路部の出力値を保持して出力し、
前記基準電圧回路部は、前記第3開閉器が遮断された後に基準電圧を保持状態となり、
前記第3開閉器が遮断された後に基準電圧は非保持状態となることを、
を特徴とする請求項4に記載の電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラントなどにおいて、雷などに対する瞬時停電対策として、最近では電力用半導体を用いた無停電電源装置(UPS)が適用されること多くなっている。また、近年では電力変換装置を用いて大形交流電動機をソフトスタートさせる場合が増加している。
【0003】
例えば、特許文献1には、常時商用給電方式の無停電電源装置における復電時の位相同期処理が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-273206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は、同じ商用電源から電動機と重要負荷に電力を供給するシステムでは、電動機の起動に対してソフトスタート用の電力変換装置が使用され、その後、商用電源から直接電力を供給し、重要負荷には瞬低対策として無停電電源装置経由で電力を供給する場合では、電動機を商用電源に同期併入後は、電力変換装置は活用されていなかった。
【0006】
本発明は、簡易な構成で電動機のソフトスタートと、負荷装置に対する瞬低補償とを実現することができる電力変換システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様にかかる電力変換システムは、交流電源から受電可能に接続された電力変換装置と、前記電力変換装置の出力を電動機に対して接続又は遮断する第2開閉器と、前記交流電源を前記電動機に対して接続又は遮断する第1開閉器と、前記交流電源を負荷装置に対して接続又は遮断する第3開閉器と、前記電力変換装置の出力を前記負荷装置に対して接続又は遮断する第4開閉器と、制御部を備え、前記制御部は前記第2開閉器及び第3開閉器が閉じた状態且つ、前記第1開閉器及び前記第4開閉器が開いた状態で、前記電動機に前記電力変換装置から電力を供給し、前記電動機を始動させ、前記電動機が所定の速度に達した後に、前記第1開閉器を閉じて前記電動機を前記交流電源と接続し、前記電動機が前記交流電源から直接電力供給を受電可能とし、その後、前記第2開閉器を遮断し、次に前記第4開閉器を閉じて前記負荷装置に前記電力変換装置から電力を供給し、次に、前記第3開閉器を遮断し、前記電力変換装置に瞬低補償動作させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様にかかる電力変換システムは、交流電源から受電可能に接続された電力変換装置と、前記電力変換装置の出力を電動機に対して接続又は遮断する第2開閉器と、前記交流電源を前記電動機に対して接続又は遮断する第1開閉器と、前記交流電源を負荷装置に対して接続又は遮断する第3開閉器と、前記電力変換装置の出力を前記負荷装置に対して接続又は遮断する第4開閉器と、制御部を備え、前記制御部は前記第2開閉器及び第3開閉器が閉じた状態且つ、前記第1開閉器及び前記第4開閉器が開いた状態で、前記電動機に前記電力変換装置から電力を供給し、前記電動機を始動させ、前記電動機が所定の速度に達した後に、前記第1開閉器を閉じて前記電動機を前記交流電源と接続し、前記電動機が前記交流電源から直接電力供給を受電可能とし、その後、前記第4開閉器を閉じて前記負荷装置に前記電力変換装置から電力を供給し、次に前記第2開閉器と前記第3開閉器を遮断し、前記電力変換装置を瞬低補償動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構成で電動機の始動(ソフトスタート)と、重要負荷に対する瞬低補償とを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態にかかる電力変換システム及びその周辺を例示する図である。
図2】インバータ制御部の構成例を示す図である。
図3】一実施形態にかかる電力変換システムの第1動作例を示すタイミングチャートである。
図4】一実施形態にかかる電力変換システムの第1動作例を示すフローチャートである。
図5】一実施形態にかかる力変換システムの第2動作例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態にかかる電力変換システムについて説明する。図1は、一実施形態にかかる電力変換システム1及びその周辺を例示する図である。電力変換システム1は、3相の交流電源(商用電源)2から、電動機(M)3と重要負荷である負荷装置4に電力を供給する。
【0012】
変圧器5の一次側は、電力変換システム1内の後述する第4開閉器40及び第5開閉器50と接続されている。変圧器5の二次側は負荷装置4と接続されている。変圧器5は一次側から入力される電力を所定の電圧に変圧し、負荷装置4に供給する。
【0013】
電力変換システム1は、例えば図1に示すように、電力変換装置6、開閉器制御装置7、第1開閉器10~第5開閉器50、第1電圧検出部100、第2電圧検出部200、第1電流検出部300及び第2電流検出部400を有するシステムである。
【0014】
電力変換装置6の入力側は、第5開閉器50を介して交流電源2と接続されている。電動機3は、第1開閉器10を介して交流電源2と接続されているとともに、第2開閉器20を介して電力変換装置6の出力側と接続されている。すなわち、電動機3は、交流電源2から電力の供給を受けることが出来るとともに、電力変換装置6から電力の供給を受けることが出来る。変圧器5の一次側は、第3開閉器30を介して交流電源2と接続されているとともに、第4開閉器40を介して電力変換装置6の出力側と接続されている。すなわち、負荷装置4は、変圧器5を介して、交流電源2から電力の供給を受けることが出来るとともに、電力変換装置6から電力の供給を受けることが出来る。
【0015】
電力変換装置6は、コンバータ回路(REC)60、コンデンサ61、インバータ回路62、及びインバータ制御部8を有す。コンバータ回路60は、入力された交流電力を直流電力に変換し、直流回路のコンデンサ61に対して出力する。コンデンサ61は、コンバータ回路60から入力された直流を平滑化し、インバータ回路62に対して出力する。インバータ回路62は、コンデンサ61から入力された直流電力を所定の電圧及び所定の周波数の交流に変換して出力する。インバータ制御部8は、電力変換装置6を構成する各部を制御するとともに、開閉器制御装置7に対し、制御用の信号を出力する。
【0016】
開閉器制御装置7は、第1開閉器10~第5開閉器50を制御するとともに、インバータ制御部8に対し、制御用の信号を出力する。
【0017】
第1電圧検出部100は、交流電源2の電圧を検出する。
【0018】
第2電圧検出部200は、電力変換装置6の出力電圧を検出する。
【0019】
第1電流検出部300は、第1開閉器10の電動機3側に設置され、第1開閉器10を介して電動機3に流れる電流を検出する。
【0020】
第2電流検出部400は、第3開閉器30の変圧器5側に設置され、第3開閉器30を介して、変圧器5に流れる電流を検出する。
【0021】
例えば、開閉器制御装置7は、電動機3を始動(ソフトスタート)させるときには、第1開閉器10及び第4開閉器40が開いた状態で、第2開閉器20、第3開閉器30及び第5開閉器50を閉じている。負荷装置4には第3開閉器30及び変圧器5経由で電力が供給されている。この状態で電動機3の加速を開始する。
【0022】
そして、開閉器制御装置7は、電動機3が所定の回転速度に達した後に、第4開閉器40を閉じて、第3開閉器30を開くように制御する。いわゆる電動機3を交流電源2に同期併入を行う。このとき、第1電圧検出部100の検出結果及び第2電圧検出部200の検出結果に基づき同期をとるように制御する。
【0023】
また、開閉器制御装置7は、第1開閉器10を閉じた後、第1電流検出部300の検出結果が所定条件を満たしていることを確認して、第2開閉器20を開き、また、第4開閉器40を閉じた後、第2電流検出部400の検出結果が所定条件を満たしていることを確認して、第3開閉器30を開くように制御する。
【0024】
なお、開閉器制御装置7は、インバータ制御部8と相互に、又はインバータ制御部8と協業して上述の制御を行ってもよい。
【0025】
次に、インバータ制御部8の具体例について説明する。図2は、インバータ制御部8の構成例を示す図である。図2に示すように、インバータ制御部8は、電動機駆動部80、位相同期部81、瞬低補償部82、逆d/q変換部83、及びPWM(Pulse Width Modulation)部84等を有し、電力変換装置6を構成する各部などを制御する。なお、d/q変換回路とは位相信号を基準にして、入力された3相の交流信号を基準とした位相信号と同相な成分とそれに直効する成分の2軸の成分に変換して出力する回路である。また、逆d/q変換回路は入力された位相信号を基準にして、その逆変換すなわち、2軸の信号を3相の交流信号に逆変換する回路である。
【0026】
なお、インバータ制御部8は、切り替えスイッチSW1aとSW2aを備えており、切り替えスイッチSW1aとSW2aはそれぞれA端子入力と、B端子入力を備え、それぞれA端子入力が選択されている場合はA端子入力からの信号を出力し、それぞれB端子入力が選択されている場合はB端子入力からの信号を出力する。SW1a,SW2aのA端子入力側が選択されている場合は電動機駆動モード(電動機のソフトスタートモード)、B端子入力が選択されている場合は瞬低補償モード(重要負荷にたいする瞬低補償)と、切替えることができるようにされている。
【0027】
また、インバータ制御部8はスイッチSW3aとスイッチSW4aが設けられている、スイッチSW3aとスイッチSW4aは開状態では値0を出力するが、閉状態ではスイッチSW3aは速度補正値Δω、スイッチSW4aは周波数補正値Δfを出力する。
【0028】
電動機駆動部80は、電動機3のソフトスタート時に、電動機を駆動するための電圧制御信号を発生する回路である。インバータ制御部8は、電動機駆動部80において、図示されていない装置から送信される速度基準と、図示されないポジションセンサ、角度センサあるいは速度センサから得られる電動機3の速度帰還ωrを用いて差分信号を演算し、電動機の回転速度(速度帰還ωr)が、速度基準とスイッチSW3aの出力の和の値に、追従するように速度制御回路801から電流制御信号を出力する。
【0029】
また、電動機駆動部80はインバータ回路62の出力電流を、図示されない電流センサで検出し、その出力を電流帰還として後述する第1基準位相信号θeを用いてd/q変換回路802にてd/q返還を行い、その出力と、速度制御回路801の出力と差分を行い、電流制御回路806に出力して、インバータ回路62の出力電流が速度制御回路801の出力に追従するように信号を出力する。電流制御回路806の出力は電動機駆動モードにおける電圧制御信号であり、直交する2軸の電動機制御用信号である。そして、直交する2軸の電動機制御用信号は、切り替えスイッチSW1aのA端子入力に入力される。
【0030】
なお、電動機駆動部80は、電動機3の速度帰還ωrに対し、速度制御回路801の出力である電流制御信号にすべり演算器803の演算結果を加算器で加算し、電気周波数ωeを求め、電気周波数ωeを積分回路808にて積分した結果を電動機駆動モードにおける電気位相角信号θe1として、切り替えスイッチSW2aのA端子入力に出力される。また、電動機駆動部80は、速度レベル検出回路により、電動機3が交流電源2に同期併入可能な回転速度になったことを検出し、その結果も開閉器制御装置7に対して出力する。また、SW3aは、電動機3の同期併入時の位相調整に用いられる。すべり演算器803、加算器及び積分回路等で第1位相検出部を構成している。
【0031】
位相同期部81は、第1電圧検出部100が検出した電源電圧に対し、PLL(phase locked loop)を用いて位相を検出し、各d/q変換回路や逆d/q変換回路への位相信号を出力し、また開閉器制御装置7に対し、開閉器の同期投入のタイミング信号を出力する。同期検出部は第2位相検出部の一例である。例えば、位相検出回路PLL1A、PLL2Aは、第1電圧検出部100の入力がある場合、交流電源2に同期した各々第1電源位相信号θe2及び第2電源位相信号θsを出力する。第1電源位相信号θe2は切り替えスイッチSW2aのB端子入力に接続されている。
【0032】
また、SW4aは、瞬低補償モードから交流電源2の併入に変わるときの位相調整に用いられる。例えば、位相検出回路PLL1Aは、SW4aがオンしている状態では、第1電圧検出部100から入力信号がある場合、交流電源2に対し、補正周波数△fだけ加算された周波数に同期した第1電源位相信号θe2を出力する。
【0033】
なお、位相検出回路PLL1A、PLL2Aは、第1電圧検出部100の入力がない場合には、すなわち、交流電源2で瞬低を発生している場合は、予め設定された自走周波数で位相信号を出力する。望ましくは、自走周波数は、交流電源2の周波数あるいは、その近傍の値である。また、望ましくは、位相検出回路PLL1Aは入力信号に対し、自走周波数からの同期引き込み時定数が長くしておき、交流電源2が瞬低から復電したときに、交流電源2の位相と位相検出回路PLL1Aの自走周波数による位相が180相違していいても、位相検出回路PLL1Aの出力位相が急変しない様に設定する。急変の許容値は例えば負荷装置4の許容位相変化値や位相変化時の許容過電流から決定する。ここでは位相検出回路PLL2Aは位相検出回路PLL1Aより引き込み時定数(応答速度)が早いものとする。ここでは位相検出回路PLL1Aの出力を第1電源位相信号θe2とし、位相検出回路PLL2Aの出力を第2電源位相信号θsとする。
【0034】
位相同期部81では、第1電圧検出部100が検出した交流電源2の電圧を、位相検出回路PLL2Aの出力である第2電源位相信号θsを基準として、d/q変換回路811にてd/q変換し、交流電源2の直交した2軸の振幅成分を抽出される。そして、瞬低補償部82の基準電圧回路821に入力される。位相同期部81では、位相検出回路PLL2Aの出力である第2電源位相信号θsと、切り替えスイッチSW2aの出力である第1基準位相信号θeとを位相比較回路812で比較し、両者の差が所定値以下の場合、同期併入時の遮断器を投入するタイミング信号を開閉器制御装置7へ出力する。
【0035】
瞬低補償部82では、第2電圧検出部200で検出した電力変換装置6の出力電圧を、第1基準位相信号θeを基準としてd/q変換回路822にてd/q変換し、基準電圧回路821の出力との差分を電圧制御回路823に入力する。電圧制御回路823の出力は直交する2軸の電圧制御用信号であり、切り替えスイッチSW1aのB端子入力に接続されている。これにより、瞬低補償モードにおいては、切り替えスイッチSW1aの出力としてB端子入力が選択されるので、電圧制御回路は電力変換装置6の出力電圧が基準電圧回路821の出力に追従するように、電圧制御回路の出力を制御する。
【0036】
なお、基準電圧回路821は入力信号の保持機能を有しており、非保持状態では入力信号に応じた出力を行い、保持状態では保持状態直前の出力を保持し出力し続ける。基準電圧回路821は後述の様に、第3開閉器が開となった後の時刻t8Aに保持状態となり、第3開閉器投入前の時刻t9以降及び時刻t8A以前は非保持状態である。すなわち瞬低が発生している期間は瞬低発生前の値を保持し出力し、それ以外の期間は入力に応じ出力する様に構成される。よって、瞬低期間中も安定した電力を負荷装置4に供給可能である。なお、保持の状態から非保持の状態に移行する場合に、出力電圧の急変を防止するため、何らかの一次遅れ要素(フィルタ)を電圧制御回路の出力側に設けてもよい。
【0037】
逆d/q変換部83は切り替えスイッチSW1aからの出力である電圧制御信号を入力とし、スイッチSW2aからの出力である第1基準位相信号θeを基準として、逆d/q変換を行い3相の電圧指令信号を生成し、PWM部84へ出力する。PWM部84は電圧指令信号を所定のキャリア信号を用いてPWM変調し、ゲート信号として、インバータ回路62を構成するスイッチング素子を駆動する。この構成によりインバータ回路62は所定の交流電力を出力することができる。
【0038】
なお、図2は電動機3が誘導電動機の場合でセンサ付きベクトル制御の場合の電動機駆動部80の構成を示しているが、センサレスベクトル制御の構成としてもよい。さらに、電動機3が同期電動機でも、電動機駆動部80を類似の構成で実現可能である。
【0039】
次に、図3図4を用いて電力変換システム1の第1動作例について説明する。図3は、電力変換システム1の第1動作例を示すタイミングチャートである。図4は、電力変換システム1の第1動作例を示すフローチャートである。図3に示すように、時刻t2から時刻t6までを電動機駆動モードと呼び、時刻t6から時刻t8Aを移行モード1と呼び、時刻t8Aから時刻t9を瞬低補償モードと呼び、時刻t9~時刻t12を移行モード2と呼ぶ。時刻t1以前では、電力変換システム1は、例えば第3開閉器30が閉じられて負荷装置4に電源が供給され、第1開閉器10、第2開閉器20、第4開閉器40及び第5開閉器50が開放され、電動機3の回転速度は0、インバータ制御部8はゲートブロック状態、切り替えスイッチSW1a及びSW1bはA端子入力選択され、スイッチSW3a及びSW4bは開状態、基準電圧回路821は非保持状態を、初期状態として説明を行う。この時刻t1以前のインバータ制御部8の初期状態設定が図4のステップS100に相当する。なお、以降の説明ではフローチャートの各ステップのステップという表記を省略(例えば、ステップS100であれば単にS100と表記する)して説明する。
【0040】
開閉器制御装置7は、S102にて電動機3を始動するか否かを判定する。電動機3を始動させる判定した場合(S102のYes)にはS104の処理に進み、電動機3を始動しないと判定した場合(S102のNo)には処理を継続する。
【0041】
時刻t1に電動機3を始動させる判定した場合、開閉器制御装置7は、S104に進み、第5開閉器50を閉じ、交流電源2から電力変換装置6に電力を供給する。時刻t2に、開閉器制御装置7は、S106に進み、第2開閉器20を閉じて、電力変換装置6から電動機3に電力を供給可能な状態とする。
【0042】
次に、時刻t3にて、S108にて、インバータ制御部8がゲートをデブロックさせると、電動機3は、回転速度を徐々に上げるソフトスタートを開始する。
【0043】
S110にてインバータ制御部8は、電動機3から帰還した回転速度ωrが所定の設定値よりも大きいか(定格回転速度に達したか)否かを判定し、大きいと判定した場合(S110のYes)にはS112の処理に進み、その他の場合(S110のNo)には処理を継続する。時刻t4にて、電動機3の回転数が定格回転数に達すると、インバータ制御部8は、電動機3の同期併入操作を行うために、S112に進み、時刻t4AにSW3aをオンとして僅かに周波数を交流電源2の周波数とずらして位相調整(いわゆる揃速制御)を行う。
【0044】
次に、S114にてインバータ制御部8は第2電源位相信号θsと第1基準位相信号θeの差が所定値以内であるか否かを判定する。インバータ制御部8は、所定値以内であると判定した場合(S114のYes)にはS116の処理に進み、所定値以内でないと判定した場合(S114のNo)には処理を継続する。時刻t5にて、第2電源位相信号θsと第1基準位相信号θeの差が所定値以内となると、インバータ制御部8はS116に進み、開閉器制御装置7を経由して、第1開閉器10を閉じる投入指令を行い、第1開閉器10は閉じられ、第1開閉器10を閉じて交流電源2から電動機3への電力供給が開始される。さらに、スイッチSW3aをオフとする。
【0045】
次に、開閉器制御装置7はS118にて、第1開閉器10の補助接点信号等のアンサーバックと第1電流検出部300の出力にて通電電流の有無を判定する。開閉器制御装置7は、アンサーバックと通電電流があると判定した場合(S118のYes)にはS120の処理に進み、アンサーバックと通電電流がないと判定した場合(S118のNo)には処理を継続する。時刻t6にて、開閉器制御装置7が、アンサーバックと通電電流があると判定されると、S120に進み第2開閉器20の開放指令を出力し、第2開閉器20が開となり、電力変換装置6から電動機3への給電を停止させる。
【0046】
そして、時刻t6AにS122に進み、インバータ制御部8は切り替えスイッチSW1a及びSW2aの出力選択をA端子入力からB端子入力に切り替える。これにより、逆d/q変換部83の入力信号である電圧制御信号は、電動機駆動部80からの信号から瞬低補償部からの信号に切り替わる。さらに、逆d/q変換部83の第1基準位相信号θeも電動機駆動部80からの速度帰還に基づく信号から、交流電源2の位相に基づく信号に切り替わる。従って、電力変換装置6は交流電源2の電圧と位相に追従するように、その出力電圧は制御されることになる。
【0047】
時刻t7にS126に進み、開閉器制御装置7は、第4開閉器40を閉じる投入指令を行い、第4開閉器40は閉となり、電力変換装置6の出力が負荷装置4に対し、変圧器5を介して接続される。
【0048】
次に、S128にて、開閉器制御装置7は第4開閉器40が閉じられたことのアンサーバックとインバータ回路62の出力電流(通電電流)があるか否かを判定し、あると判定した場合(S128のNo)にはS130の処理に進み、ないと判定した場合(S128のNo)には処理を継続する。時刻t8にて、アンサーバックとインバータ回路62の出力電流があると判定されると、S130に進み、開閉器制御装置7が第3開閉器30を開く開放指令を行い、第3開閉器30が開となると、負荷装置4には電力変換装置6のみから電力が供給される。
【0049】
第4開閉器40の投入や第3開閉器の開放に伴う交流電源2の過渡現象が終了し電圧が収まった時刻t8AにS132に進み、基準電圧回路821は時刻t8aの値に出力電圧を一定にする保持動作となり、電力変換システム1は、瞬低補償モードの運転となる。すなわち、瞬低補償モードの運転では、基準電圧回路821の出力電圧が一定であるため、交流電源2に瞬低が発生しても、電力変換装置6の出力電圧は一定に保たれ、負荷装置4には安定した電力が供給される。
【0050】
電力変換システム1は、瞬低補償モードから商用電源の併入に変わるときに、時刻t9にて、基準電圧回路821は出力電圧の値を保持から非保持に切り替える。これにて、電力変換装置6の出力電圧は、交流電源2の電圧に追従するようになる。時刻t9AにてSW4aをオンにして位相調整を行い、時刻t9Bにて、位相差が所定の範囲内となったら、第3開閉器30を閉とし、SW4aをオフする。そして、時刻t10にて、第3開閉器30のアンサーバック信号と第2電流検出部400で電流を検出したら、インバータ回路62のゲートブロックを行い、さらに第4開閉器40を開放する。そして、時刻t11にて、切り替えスイッチSW1aとSW2aの出力をA端子入力側の選択に切り替える。そして、時刻t12に第2開閉器20を閉じて、電力変換装置6から電動機3に電力を供給可能な状態とする。
【0051】
時刻t12以降は電動機駆動モードであり時刻t2~t6までと同様であるので説明は省略する。
【0052】
なお、位相検出回路PLL1Aの引き込み時定数に比べ、瞬低回復後に移行モード2までの時間が十分長くできるシステムの場合は、移行モード2の開始時点で第1電源位相信号θe2と、第2電源位相信号θsはほぼ一致しているので、SW4aを省略してよい。さらに、位相検出回路PLL2Aを省略し、第2電源位相信号θsの代りに第1電源位相信号θe2を使用するようにしてもよい。
【0053】
なお、S118及びS128では各開閉器のアンサーバック信号と通電電流の両方を確認しているが、必要によりいずれか一方あるいは両方とも省略してもよい。
【0054】
次に、電力変換システム1の第2動作例について説明する。図5は、電力変換システム1の第2動作例を示すタイミングチャートである。図5ではインバータ回路62のゲートブロック及びデブロックのタイミング及び切り替えスイッチSW1a,SW2a、スイッチSW3a,SW4aの動作タイミングは図3と同様であるので記述を省略する。図5に示すように、電力変換システム1は、例えば第3開閉器30が閉じられて負荷装置4に電源が供給されている状態から、電動機3のソフトスタートを開始させる。
【0055】
まず、電力変換システム1は、時刻t1’に第5開閉器50を閉じ、時刻t2’に第2開閉器20を閉じて、電動機3に電力を供給可能な状態とする。
【0056】
時刻t3’に電力変換システム1のインバータ制御部8がインバータ回路62のゲートをデブロックさせると、電動機3は、回転数を徐々に上げるソフトスタートを開始する。
【0057】
時刻t4’にて電力変換システム1は、電動機3の回転数が定格回転数に達すると、前述の図5と同様に揃速制御を実施し、位相差が所定の範囲内となると、時刻t5’に第1開閉器10を閉じて交流電源2から電動機3への電源供給を開始する。
【0058】
次に、時刻t6’にて、電力変換システム1は、第4開閉器40を閉じて電力変換装置6の出力を負荷装置4に対して接続し、さらに時刻t7’にて、第2開閉器20を開いて電力変換装置6から電動機3への給電を停止させる。
【0059】
その後、時刻t8’にて、電力変換システム1は、第3開閉器30を開いて交流電源2から負荷装置4へ直接給電することを止める瞬低補償モードとなる。
【0060】
つまり、電力変換システム1の第2動作例では、第2開閉器20を閉じたままで、第4開閉器40を閉じるので、第1動作例よりも、遮断器の開閉による交流電源2の電圧動揺を減らすことができる。
【0061】
このように、一実施形態にかかる電力変換システム1は、電動機駆動モードと、瞬低補償モードとを切替えることができ、簡易な構成で電動機のソフトスタートと、負荷装置に対する瞬低補償とを実現することができる。
【0062】
つまり、電力変換システム1は、電動機3のソフトスタート後に電力変換装置6を有効に活用し、系統瞬時停電時においても無停電電源装置無しで瞬低・瞬停を補償し、電気機器に電源の安定供給を行うことができる。
【0063】
なお、インバータ制御部8は、その機能の一部又はすべてを開閉器制御装置7に含めてもよく、開閉器制御装置7は、その機能の一部又はすべてをインバータ制御部8に含めてもよい。さらに、瞬低補償期間を長くするために、直流回路のコンデンサ61と並列に蓄電池などを設けてもよい。また、瞬低補償部82の電圧制御にマイナーループ電流制御を追加してもよく、基準電圧に対しての、第2電圧検出部200からのフィードバックを省略して、オープンループ制御としてもよい。また、基準電圧回路821は瞬低検出回路と連動し、瞬低発生直前の電圧を保持するように構成し、瞬低から回復後、非保持状態となる様に構成してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1・・・電力変換システム、2・・・交流電源、3・・・電動機、4・・・負荷装置、5・・・変圧器、6・・・電力変換装置、7・・・開閉器制御装置、8・・・インバータ制御部、10・・・第1開閉器、20・・・第2開閉器、30・・・第3開閉器、40・・・第4開閉器、50・・・第5開閉器、60・・・コンバータ回路、61・・・コンデンサ、62・・・インバータ回路、80・・・電動機駆動部、81・・・位相同期部、82・・・瞬低補償部、83・・・逆d/q変換部、84・・・PWM部、100・・・第1電圧検出部、200・・・第2電圧検出部、300・・・第1電流検出部、400・・・第2電流検出部
図1
図2
図3
図4
図5