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特開2022-49525戸挟み検出装置、鉄道用ドア装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049525
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】戸挟み検出装置、鉄道用ドア装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/41 20150101AFI20220322BHJP
   E05F 15/655 20150101ALI20220322BHJP
   B61D 19/02 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
E05F15/41
E05F15/655
B61D19/02 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155762
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】夏 盈菁
(72)【発明者】
【氏名】田邉 和男
(72)【発明者】
【氏名】柳本 裕右
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA08
2E052DB08
2E052EA15
2E052EB01
2E052EC02
2E052GA08
2E052GA09
2E052GB06
2E052GB12
2E052GB15
2E052GB20
2E052GC06
2E052GD05
2E052KA14
2E052KA15
2E052KA16
(57)【要約】
【課題】戸挟みが生じたか否かを簡易かつ正確に検出する。
【解決手段】モータの駆動力によってドアが閉方向に駆動される際の戸挟みを検出する戸挟み検出装置は、ドアの閉動作中の第1期間にモータに流れる第1電流値を取得する第1取得部と、取得された第1電流値に基づいて、戸挟みを判定するための閾値を設定する閾値設定部と、ドアの閉動作中の第1期間の後である第2期間にモータに流れる第2電流値を取得する第2取得部と、取得された第2電流値と設定された閾値とを比較することにより、戸挟みが生じたか否かを判定する判定部と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの駆動力によってドアが閉方向に駆動される際の戸挟みを検出する戸挟み検出装置であって、
前記ドアの閉動作中の第1期間に前記モータに流れる第1電流値を取得する第1取得部と、
取得された前記第1電流値に基づいて、前記戸挟みを判定するための閾値を設定する閾値設定部と、
前記ドアの閉動作中の前記第1期間の後である第2期間に前記モータに流れる第2電流値を取得する第2取得部と、
取得された前記第2電流値と前記設定された閾値とを比較することにより、前記戸挟みが生じたか否かを判定する判定部と、を備える、戸挟み検出装置。
【請求項2】
前記第1期間は、前記ドアが閉方向に移動を開始した後、前記ドアが定速で移動している期間を含む、請求項1に記載の戸挟み検出装置。
【請求項3】
前記第1期間は、前記ドアが閉方向に移動を開始した後の加速域内の期間又は前記加速域から移行した定速域内の期間である、請求項2に記載の戸挟み検出装置。
【請求項4】
前記閾値設定部は、前記第1期間内に前記モータに流れる電流値の平均値、中央値、最頻値、又は積分値の少なくとも一つに基づいて、前記閾値を設定する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の戸挟み検出装置。
【請求項5】
前記ドアを閉方向に駆動した際の戸挟みしていない際に前記モータに流れる電流値の平均値、中央値、最頻値、又は積分値の少なくとも一つの計測値と、前記計測値に基づく基準閾値と、の対応関係を記憶する記憶部を備え、
前記閾値設定部は、前記記憶部に記憶された前記対応関係と、前記第1期間内に前記モータに流れる電流値の平均値、中央値、最頻値、又は積分値の少なくとも一つとに基づいて、前記閾値を設定する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の戸挟み検出装置。
【請求項6】
前記閾値設定部は、前記第1期間内の前記モータの駆動電圧に基づいて、前記閾値を設定する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の戸挟み検出装置。
【請求項7】
前記ドアの閉動作中の移動速度、移動距離、又は移動時間の少なくとも一つに基づいて、前記第1期間及び前記第2期間を特定する期間特定部を備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の戸挟み検出装置。
【請求項8】
前記第1取得部は、前記ドアを全開位置から閉方向に移動させるたびに、前記第1期間に前記第1電流値を取得し、
前記閾値設定部は、前記ドアを全開位置から閉方向に移動させるたびに前記第1取得部で取得された前記第1電流値に基づいて、前記閾値を設定し直す、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の戸挟み検出装置。
【請求項9】
前記第1取得部は、前記ドアの起動直後に前記ドアを閉方向に駆動する際の前記第1期間に前記第1電流値を取得し、
前記閾値設定部は、前記ドアの起動直後に前記ドアを閉方向に駆動する際に、前記第1取得部で取得された前記第1電流値に基づいて前記閾値を設定する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の戸挟み検出装置。
【請求項10】
前記判定部は、前記第2期間内に前記モータに流れる電流により前記ドアの戸挟みが生じたと判定された場合、又は前記ドアの速度に基づいて前記ドアの戸挟みが生じたと判定された場合の少なくとも一方のときに、前記ドアの戸挟みが生じたと判定する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の戸挟み検出装置。
【請求項11】
モータの駆動力によってドアが閉方向に駆動される際の戸挟みを検出する戸挟み検出装置であって、
過去の戸閉時に前記モータに流れる第1電流値を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記第1電流値に基づいて、閾値を設定する閾値設定部と、
前記ドアの戸閉時に前記モータに流れる第2電流値を取得する取得部と、
取得された前記第2電流値と前記設定された閾値とを比較することにより、前記戸挟みが生じたか否かを判定する判定部と、を備える、戸挟み検出装置。
【請求項12】
鉄道車両に設けられたドアと、
ドアを開閉させるモータと、
前記モータを制御するドア開閉制御部と、
前記モータの駆動力によって前記ドアが閉方向に駆動される際の戸挟みを検出する戸挟み検出部と、を備える鉄道用ドア装置であって、
前記戸挟み検出部は、
前記ドアの閉動作中の第1期間に前記モータに流れる第1電流値を取得する第1取得部と、
取得された前記第1電流値に基づいて、前記戸挟みを判定するための閾値を設定する閾値設定部と、
前記ドアの閉動作中の前記第1期間の後である第2期間に前記モータに流れる第2電流値を取得する第2取得部と、
取得された前記第2電流値と前記設定された閾値とを比較することにより、前記戸挟みが生じたか否かを判定する判定部と、を有する、鉄道用ドア装置。
【請求項13】
コンピュータに、モータの駆動力によってドアが閉方向に駆動される際の戸挟みを検出させるプログラムであって、
前記ドアの閉動作中の第1期間に前記モータに流れる第1電流値を取得する手順と、
取得された前記第1電流値に基づいて、前記戸挟みを判定するための閾値を設定する手順部と、
前記ドアの閉動作中の前記第1期間の後である第2期間に前記モータに流れる第2電流値を取得する手順と、
取得された前記第2電流値と前記設定された閾値とを比較することにより、前記戸挟みが生じたか否かを判定する手順と、を前記コンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項14】
前記戸挟みが生じたと判定された後に、前記ドアが閉方向への駆動を再開した場合、前記ドアが全閉位置に移動するまでは、前記第1電流値の再取得と前記閾値の再設定とを中止する、請求項13に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、戸挟み検出装置、鉄道用ドア装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気式ドア装置は、ドアリーフの戸先に人間や物体が接触したことを検知する戸挟み検出装置を備えている。従来の戸挟み検出装置には、ドアリーフの移動速度により戸挟みを検出する方式と、ドアリーフを移動させる駆動力を発生するモータに流れる電流(以下、モータ電流)により戸挟みを検出する方式とがある。
【0003】
ドアリーフの移動速度で戸挟みを検出する場合、戸挟みが生じるとドアリーフの移動速度がゼロになるため、移動速度がゼロになれば戸挟みが生じたと判断する。また、モータ電流で戸挟みを検出する場合、戸挟みが生じるとモータ電流が急増するため、モータ電流が所定の閾値を超えると戸挟みが生じたと判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-93901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドアリーフの戸先には、人間や物体への接触を和らげるために戸先ゴムが取り付けられており、人間や物体が戸先ゴムに接触してもすぐにはドアリーフの移動速度はゼロにならず、戸先ゴムが収縮できる範囲でドアリーフが低速で移動する。同様に、全閉時には、左右のドアリーフの戸先ゴム同士が接触しても、しばらくはドアリーフが低速で移動する。このため、ドアの移動速度だけでは、戸挟みが生じたか否かを正確には判断できないおそれがある。
【0006】
一方、モータ電流も様々な要因で変動しやすく、モータ電流を閾値と比較して戸挟みを検出しようとしても、モータ電流が大きく変動する状況では、正確な戸挟み検出を行うことはできない。例えば、モータ電流は、ドアリーフの摺動抵抗やモータの駆動力に応じて変化するが、ドアリーフの摺動抵抗やモータの駆動力は常に一定とは限らず、経年変化を生じさせるため、モータ電流で戸挟みを検出する場合には、モータ電流が経年劣化で変化することを念頭に置く必要がある。
【0007】
そこで、本発明の一実施形態では、戸挟みが生じたか否かを簡易かつ正確に検出できる戸挟み検出装置、鉄道用ドア装置及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一実施形態によれば、モータの駆動力によってドアが閉方向に駆動される際の戸挟みを検出する戸挟み検出装置であって、
前記ドアの閉動作中の第1期間に前記モータに流れる第1電流値を取得する第1取得部と、
取得された前記第1電流値に基づいて、前記戸挟みを判定するための閾値を設定する閾値設定部と、
前記ドアの閉動作中の前記第1期間の後である第2期間に前記モータに流れる第2電流値を取得する第2取得部と、
取得された前記第2電流値と前記設定された閾値とを比較することにより、前記戸挟みが生じたか否かを判定する判定部と、を備える、戸挟み検出装置が提供される。
【0009】
前記第1期間は、前記ドアが閉方向に移動を開始した後、前記ドアが定速で移動している期間を含んでもよい。
【0010】
前記第1期間は、前記ドアが閉方向に移動を開始した後の加速域内の期間又は前記加速域から移行した定速域内の期間であってもよい。
【0011】
前記閾値設定部は、前記第1期間内に前記モータに流れる電流値の平均値、中央値、最頻値、又は積分値の少なくとも一つに基づいて、前記閾値を設定してもよい。
【0012】
前記ドアを閉方向に駆動した際の戸挟みしていない際に前記モータに流れる電流値の平均値、中央値、最頻値、又は積分値の少なくとも一つの計測値と、前記計測値に基づく基準閾値と、の対応関係を記憶する記憶部を備え、
前記閾値設定部は、前記記憶部に記憶された前記対応関係と、前記第1期間内に前記モータに流れる電流値の平均値、中央値、最頻値、又は積分値の少なくとも一つとに基づいて、前記閾値を設定してもよい。
【0013】
前記閾値設定部は、前記第1期間内の前記モータの駆動電圧に基づいて、前記閾値を設定してもよい。
【0014】
前記ドアの閉動作中の移動速度、移動距離、又は移動時間の少なくとも一つに基づいて、前記第1期間及び前記第2期間を特定する期間特定部を備えてもよい。
【0015】
第1取得部は、前記ドアを全開位置から閉方向に移動させるたびに、前記第1期間に前記第1電流値を取得し、
前記閾値設定部は、前記ドアを全開位置から閉方向に移動させるたびに前記第1取得部で取得された前記第1電流値に基づいて、前記閾値を設定し直してもよい。
【0016】
前記第1取得部は、前記ドアの起動直後に前記ドアを閉方向に駆動する際の前記第1期間に前記第1電流値を取得し、
前記閾値設定部は、前記ドアの起動直後に前記ドアを閉方向に駆動する際に、前記第1取得部で取得された前記第1電流値に基づいて前記閾値を設定してもよい。
【0017】
前記判定部は、前記第2期間内に前記モータに流れる電流により前記ドアの戸挟みが生じたと判定された場合、又は前記ドアの速度に基づいて前記ドアの戸挟みが生じたと判定された場合の少なくとも一方のときに、前記ドアの戸挟みが生じたと判定してもよい。
【0018】
本発明の他の一態様では、モータの駆動力によってドアが閉方向に駆動される際の戸挟みを検出する戸挟み検出装置であって、
過去の戸閉時に前記モータに流れる第1電流値を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記第1電流値に基づいて、閾値を設定する閾値設定部と、
前記ドアの戸閉時に前記モータに流れる第2電流値を取得する取得部と、
取得された前記第2電流値と前記設定された閾値とを比較することにより、前記戸挟みが生じたか否かを判定する判定部と、を備える、戸挟み検出装置が提供されてもよい。
【0019】
本発明の他の一態様では、鉄道車両に設けられたドアと、
ドアを開閉させるモータと、
前記モータを制御するドア開閉制御部と、
前記モータの駆動力によって前記ドアが閉方向に駆動される際の戸挟みを検出する戸挟み検出部と、を備える鉄道用ドア装置であって、
前記戸挟み検出部は、
前記ドアの閉動作中の第1期間に前記モータに流れる第1電流値を取得する第1取得部と、
取得された前記第1電流値に基づいて、前記戸挟みを判定するための閾値を設定する閾値設定部と、
前記ドアの閉動作中の前記第1期間の後である第2期間に前記モータに流れる第2電流値を取得する第2取得部と、
取得された前記第2電流値と前記設定された閾値とを比較することにより、前記戸挟みが生じたか否かを判定する判定部と、を有する、鉄道用ドア装置が提供される。
【0020】
本発明の一態様では、コンピュータに、モータの駆動力によってドアが閉方向に駆動される際の戸挟みを検出させるプログラムであって、
前記ドアの閉動作中の第1期間に前記モータに流れる第1電流値を取得する手順と、
取得された前記第1電流値に基づいて、前記戸挟みを判定するための閾値を設定する手順部と、
前記ドアの閉動作中の前記第1期間の後である第2期間に前記モータに流れる第2電流値を取得する手順と、
取得された前記第2電流値と前記設定された閾値とを比較することにより、前記戸挟みが生じたか否かを判定する手順と、を前記コンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。
【0021】
前記戸挟みが生じたと判定された後に、前記ドアが閉方向への駆動を再開した場合、前記ドアが全閉位置に移動するまでは、前記第1電流値の再取得と前記閾値の再設定とを中止してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1の実施形態による戸挟み検出装置を内蔵した電気式ドア装置の外観図。
図2】モータの周辺の構造をより具体的に示す図。
図3図1の電気式ドア装置の制御系の概略構成を示すブロック図。
図4】ストローク量、移動速度、モータ電流の変化を示すグラフ。
図5】本実施形態による戸挟み検出装置の内部構成を示すブロック図。
図6】本実施形態による戸挟み検出装置の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、戸挟み検出装置、鉄道用ドア装置及びプログラムの実施形態について説明する。以下では、戸挟み検出装置、鉄道用ドア装置及びプログラムの主要な構成部分を中心に説明するが、戸挟み検出装置、鉄道用ドア装置及びプログラムには、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態による戸挟み検出装置1を内蔵した電気式ドア装置2の外観図である。図1の電気式ドア装置2は、鉄道車両に搭載されるものである。なお、本実施形態による電気式ドア装置2は、鉄道車両以外の用途に幅広く用いることができる。例えば、本実施形態による電気式ドア装置2は、乗物や建物、施設の自動ドア装置の他、家屋のホームドアなどにも適用可能である。以下では、本明細書では主に鉄道車両に搭載される電気式ドア装置2について説明する。
【0025】
図1の電気式ドア装置2は、引き戸である一対のドアリーフ3R、RLを備えている。ドアリーフ3R、3Lは図示の左右方向に移動可能とされている。ドアリーフ3R、3Lの上方には、ガイドレール4と、右側のドアリーフ3Rを支持する戸吊装置5Rと、左側のドアリーフ3Lを支持する戸吊装置Lとが配置されている。
【0026】
戸吊装置5Rとドアリーフ3Rは、ガイドレール4に沿って一体に移動自在とされている。また、戸吊装置5Lとドアリーフ3Lは、ガイドレール4に沿って一体に移動自在とされている。本明細書では、一対のドアリーフ3R、3Lの少なくとも一方を単にドアと呼ぶことがある。
【0027】
戸吊装置5R、5Lの内部には、図1に破線で示すように、複数の戸車6が設けられている。各戸車6は、ガイドレール4の上面又は下面に接触しながら転動する。
【0028】
各ドアリーフ3R、3Lの戸先には、軟質の合成ゴム材料で形成された戸先ゴム7が取り付けられている。一対のドアリーフ3R,3Lを全閉すると、戸先ゴム7同士が互いに接触し、接触した状態で戸先ゴム7同士がある程度まで収縮してからドアリーフ3R、3Lが停止するようになっている。
【0029】
ガイドレール4の上方には、ガイドレール4の延びる方向に沿って右用ラックギア8Rと左用ラックギア8Lが設けられている。右用ラックギア8Rには、右側ブラケット9Rが連結されており、右用ラックギア8Rが左右に移動すると、その移動に伴って右側連結ブラケット9Rが左右に移動する。同様に、左側ラックギア8Lには、左側ブラケット9Lが連結されており、左用ラックギア8Lが左右に移動すると、その移動に伴って左側連結ブラケット9Lが左右に移動する。右側連結ブラケット9Rには戸吊装置5Rが連結されており、右側連結ブラケット9Rの左右の移動に合わせて戸吊装置5Rとドアリーフ3Rが一体に左右に移動する。また、左側連結ブラケット9Lには戸吊装置5Lが連結されており、左側連結ブラケット9Lの左右の移動に合わせて戸吊装置5Lとドアリーフ3Lが一体に左右に移動する。
【0030】
右用ラックギア8Rと左用ラックギア8Lは、ピニオンギア10に噛み合っており、ピニオンギア10の回転運動を直線運動に変換する作用を行う。ピニオンギア10は、モータ11の駆動力で回転する。
【0031】
図2はモータ11の周辺の構造をより具体的に示す図である。モータ11の回転軸12に取り付けられたサンギア13と、サンギア13の周囲に配置されてサンギア13と噛み合う複数の遊星ギア14と、複数の遊星ギア14の外側に配置されて複数の遊星ギア14と噛み合うアウタギアであるピニオンギア10とが設けられている。
【0032】
このように、モータ11が回転すると、その回転力は、ピニオンギア10を介してラックギア8R、8Lに伝達され、ラックギア8R、8Lがモータ11の回転に応じて左右に移動すると、右側ブラケット9R及び左側ブラケット9Lを介して一対のドアリーフ3R、3Lはガイドレール4に沿って左右に移動する。モータ11は後述する図3の制御器15により制御される。
【0033】
なお、電気式ドア装置2の開閉方式は、必ずしも上述したラックアンドピニオン方式である必要はなく、それ以外の任意の方式(例えば、ベルト式、スクリュー式、リニアモータ式など)でもよい。
【0034】
図3図1の電気式ドア装置2の制御系の概略構成を示すブロック図である。本実施形態による電気式ドア装置2の制御系は、戸挟み検出装置1を内蔵する制御器15と、電源部16と、モータモニタ部17とを備えている。
【0035】
電源部16は、架線から供給される交流電圧を直流電圧に変換する電源装置を内蔵する。制御器15は、ドア開閉制御部18と、指令部19とを有する。指令部19は、ドア開閉制御部18に対して、ドアリーフ3R、3Lを開閉させるための指令信号を出力する。ドア開閉指令部19は、指令信号に基づいて、ドアリーフ3R、3Lの開閉を制御する。
【0036】
ドア開閉制御部18は、電源電圧検出部21と、PWM制御部22と、モータ駆動部23と、ホール信号検出器24とを備えている。
【0037】
電源電圧検出部21は、電源部16から出力される直流電圧の電圧レベルを検出する。PWM制御部22は、電源電圧検出部21で検出された直流電圧の電圧レベルと、指令部19からの指令信号とに基づいて、モータ11を駆動するためのPWM信号を生成する。より詳細には、PWM制御部22は、指令信号に応じた基準電圧指令パターンと、電源電圧検出部21で検出された直流信号の電圧レベルとに基づいて、モータ11に供給される電圧のデューティ比を制御するためのPWM信号を生成する。
【0038】
モータ駆動部23は、PWM信号に基づいて、モータ11を駆動するトランジスタのオン又はオフを制御する。例えば、モータ11が三相モータ11の場合、モータ駆動部23は、U相、V相及びW相の各トランジスタをオン又はオフさせるためのゲート信号を生成する。
モータ11の回転軸12の近傍にはホール素子25が取り付けられており、ホール素子25にてモータ11の回転数が検出される。また、モータ11の近傍には、モータモニタ部17が設けられている。モータモニタ部17は、上述したホール素子25の他に、モータ電流を検出するためのモータ電流検出器26と、モータ11への印加電圧を検出するモータ電圧検出器27とを有する。
【0039】
ホール信号検出器24は、ホール素子25の検出信号に基づいて、モータ11の回転数を検出する。モータ駆動部23は、ホール信号検出器24で検出されたモータ11の回転数に基づいて、モータ11を駆動する各トランジスタのオン又はオフの制御タイミングを帰還制御することができる。
【0040】
戸挟み検出装置1は、モータ11の駆動力にてドアリーフ3R、3Lが閉方向に駆動される際に、ドアリーフ3R、3Lの戸先に戸挟みが生じたことを検出する。
【0041】
本実施形態による電気式ドア装置2は、送信部28を備えていてもよい。送信部28は、戸挟み検出装置1が戸挟みを検出したときに、戸挟みが起こったことを不図示の管理装置や保守作業員が所持する携帯端末等に通知する。
【0042】
図4は、ドアリーフ3R、3Lが全開位置から全閉位置まで移動する間のドアリーフ3R、3Lのストローク量w1、移動速度w2、モータ電流w3a、w3b、w3cの変化を示すグラフである。図4の横軸はドアリーフ3R、3Lの戸先の位置、縦軸の波形w1はストローク量、波形w2は移動速度、波形w3a、w3b、w3cはモータ電流を示している。ストローク量とは、ドアリーフ3R、3Lが移動した距離を示す。モータ電流については、ドアリーフ3R、3Lの摺動抵抗が第1抵抗値の場合の波形w3aと、第2抵抗値の場合の波形w3bと、第3抵抗値の場合の波形w3cを示している。
【0043】
ドアリーフ3R、3Lの移動速度は、波形w2に示すように、ドアリーフ3R、3Lが移動し始めた直後は加速域であり、時間に応じて線形に移動速度が上昇する。その後、一定の速度に達すると、その速度が所定期間維持される定速域に移行し、その後、時間に応じて移動速度が減少する減速域に移行する。減速域では、段階的に速度が減少する。ドアリーフ3R、3Lのストロークは、移動速度が変化することから、波形w1に示すように、非線形なカーブで変化する。
【0044】
図4の波形w3a、w3b、w3cは摺動抵抗が異なる際に電気式ドア装置2を閉動作させたときのそれぞれのモータ電流値の推移である。摺動抵抗は、鉄道車両の停車駅のカントや乗客の混雑度によって変動する。
【0045】
モータ電流は、ドアリーフ3R、3L全開位置から閉方向に向けて移動を開始した直後は、外乱の影響を受けて大きく変動する。その後、モータ電流は段階的に減少し、ドアリーフ3R、3Lの移動速度が減速域に移行すると、いったん大きく変動し、その後、段階的に減少する。ドアリーフ3R、3Lが全閉付近に到達すると、ドアリーフ3R、3Lの戸先ゴム同士が接触するため、モータ電流は急激に増大する。波形w3a、w3b、w3cの波形からわかるように、摺動抵抗に応じてモータ電流はそれぞれ異なるものの、モータ電流が変化する傾向はいずれも同じである。どの摺動抵抗であっても、ドアリーフ3R、3Lが全閉する直前で、モータ電流が急増する。
【0046】
図4のグラフには記載されていないが、ドアリーフ3R、3Lの全閉付近で戸挟みを起こすと、さらにモータ電流が増える。そこで、本実施形態による戸挟み検出装置1は、ドアリーフ3R、3Lの全閉付近での戸挟みを検出するための閾値を設定する。設定される閾値は、戸挟みを起こしていないときのモータ電流よりも大きな値に設定される。ただし、波形w3a、w3b、w3cからわかるように、ドアリーフ3R、3Lの摺動抵抗に応じてモータ電流が変化するため、ドアリーフ3R、3Lの摺動抵抗を考慮に入れた閾値を設定する。
【0047】
図4は、波形w3aのモータ電流に対応した閾値w4aと、波形w3bのモータ電流に対応した閾値w4bと、波形w3cのモータ電流に対応した閾値w4cを示している。本実施形態による戸挟み検出装置1は、ドアリーフ3R、3Lの全閉付近でのモータ電流が閾値を超えた場合には、戸挟みが生じたと判定する。
【0048】
図5は本実施形態による戸挟み検出装置1の内部構成を示すブロック図である。図5に示すように、戸挟み検出装置1は、第1取得部31と、閾値設定部32と、第2取得部33と、判定部34とを備えている。
【0049】
第1取得部31は、ドアリーフ3R、3Lの閉動作中の第1期間にモータ11に流れる第1電流値を取得する。第1期間は、例えば、図4に示すドアリーフ3R、3Lの移動速度の定速域を含む期間であり、本明細書では、電流採集域と呼ぶこともある。図5に示すように、定速域の期間内は、モータ電流が比較的安定しており、この期間内にモータ電流を取得することで、外乱の影響の少ないモータ電流を取得できる。
【0050】
第1期間は、ドアが閉方向に移動を開始した後の加速域内の期間又は加速域から移行した定速域内の期間でもよい。図4に示すように、加速域が始まった直後はモータ電流が大きく変動するため、この期間ではモータ電流を取得しない方がよいが、加速域の中盤から終盤では、モータ電流の変動は少ない。よって、第1期間に加速域が含まれていてもよい。同様に、移動速度が定速域から減速域に移行した場合、図4に示すように減速域に移行してからしばらくの間はモータ電流の変動が少ないことから、第1期間にドアリーフ3R、3Lの移動速度の減速域の一部の期間が含まれていてもよい。
【0051】
第1取得部31は、ドアリーフ3R、3Lを全開位置から閉方向に移動させるたびに、第1期間内の第1電流値を取得してもよい。この場合、閾値設定部32は、ドアリーフ3R、3Lを全開位置から閉方向に移動させるたびに、第1取得部31で取得された第1電流値に基づいて、閾値を設定し直してもよい。このように、ドアリーフ3R、3Lを閉じるたびに閾値を設定し直すことで、電気式ドア装置2の経年劣化の影響を受けることなく、最適な閾値を設定できる。
【0052】
第1取得部31は、ドアリーフ3R、3L(電気式ドア装置2)の起動直後にドアリーフ3R、3Lを閉方向に駆動する際の第1期間に第1電流値を取得してもよい。閾値設定部32は、ドアリーフ3R、3Lの起動直後にドアリーフ3R、3Lを閉方向に駆動する際に、第1取得部31で取得された第1電流値に基づいて閾値を設定してもよい。鉄道用の電気式ドア装置2の場合、ドアリーフ3R、3Lにもたれかかる乗客や、混雑によりドアリーフ3R、3Lに押しつけられる乗客がいることから、摺動抵抗が変動する。このため、乗客が乗車している状態ではモータ電流が摺動抵抗の変動の影響を受けやすくなる。また、駅ごとに異なるカントの高低差によってもドアリーフ3R、3Lの摺動抵抗が変動するおそれがある。そこで、第1取得部31は、ドアリーフ3R、3Lの起動直後などの摺動抵抗の変動の影響が少ない状況で、モータ電流を取得することで、摺動抵抗の変動の影響を受けることなくモータ電流を取得できる。
【0053】
閾値設定部32は、第1取得部31で取得された第1電流値に基づいて、戸挟みを判定するための閾値を設定する。閾値設定部32が設定する閾値は、ドアリーフ3R、3Lの全閉付近でモータ電流と比較するために設けられている。このように、閾値設定部32は、ドアリーフ3R、3Lがまだ全閉付近に到達していない状態でのモータ電流の実績値に基づいて、ドアリーフ3R、3Lが全閉付近に位置するときのモータ電流の閾値を設定する。
【0054】
閾値設定部32を設ける理由は以下の通りである。電気式ドア装置2は、稼働している間に摺動抵抗が次第に変化したり、モータ11の駆動力が低下したりし、同じ速度でドアリーフ3R、3Lを移動させていたとしても、モータ電流が同じとは限らない。そこで、現時点でのモータ電流の実績値に基づいて、モータ電流の閾値を設定するようにしたものである。
【0055】
閾値設定部32は、第1期間内にモータ11に流れる電流値の平均値、中央値、最頻値、又は積分値の少なくとも一つに基づいて、閾値を設定する。モータ電流は、ドアリーフ3R、3Lの摺動抵抗やモータ11の駆動力によって変動する他に、温度や電源電圧等の環境条件によっても変動する。このため、閾値設定部32は、第1期間内でモータ電流が変化することを見込んで、閾値と比較するべきモータ電流を決定する。例えば、第1期間内にモータ電流が一時的に大きく変動することがない場合には、平均値を取ればよい。逆に、第1期間内にモータ電流が一時的に大きく変動する場合には、平均値を取ると、モータ電流の一時的な変動の影響を受けてしまう。そこで、このような場合は、中央値や最頻値を取るのが望ましい。また、モータ電流自体が小さい場合には、積分値を取ってもよい。
【0056】
モータ11に供給される電源電圧が変動すると、モータ電流にも影響が及ぶおそれがある。そこで、閾値設定部32は、電圧検出器で検出された電源電圧も加味して、閾値を設定してもよい。すなわち、閾値設定部32は、第1期間内のモータ11の駆動電圧に基づいて閾値を設定してもよい。一般には、モータ11の駆動電圧が大きくなるほど、モータ電流も大きくなるため、閾値設定部32は、駆動電圧が大きくなるほど閾値をより大きく設定するのが望ましい。
【0057】
第2取得部33は、ドアリーフ3R、3Lの閉動作中の第1期間の後である第2期間にモータ11に流れる第2電流値を取得する。第2期間は、例えば、図4に示すように、ドアリーフ3R、3Lが全閉付近に位置してモータ電流が急増する期間である。ドアリーフ3R、3Lが全閉の手前のどこに位置するときにモータ電流が急増するかは、電気式ドア装置2ごとに異なるため、電気式ドア装置2ごとに個別に第2期間を設定するのが望ましい。第2期間は、例えば、全閉の手前の数十mmから数mmに範囲に位置する期間である。
【0058】
判定部34は、取得された第2電流値と設定された閾値とを比較することにより、戸挟みが生じたか否かを判定する。より詳細には、判定部34は、第2期間内にモータ11に流れる電流によりドアの戸挟みが生じたと判定された場合、又はドアの速度に基づいてドアの戸挟みが生じたと判定された場合の少なくとも一方のときに、ドアの戸挟みが生じたと判定する。
【0059】
本実施形態による戸挟み検出装置1は、期間特定部35を備えていてもよい。期間特定部35は、ドアリーフ3R、3L閉動作中の移動速度、移動距離、又は移動時間の少なくとも一つに基づいて、第1期間及び第2期間を特定する。例えば、期間特定部35は、不図示のストローク検出器にて検出されたドアリーフ3R、3Lのストローク量に基づいて、第1期間と第2期間を特定してもよい。ストローク検出器は、例えば、ホール信号検出器24で検出されたモータ11の回転数に基づいて、ストロークを検出する。あるいは、期間特定部35は、ドアリーフ3R、3Lの全開位置からの移動時間により、第1期間と第2期間を特定してもよい。あるいは、期間特定部35は、ドアリーフ3R、3Lの移動速度により、第1期間と第2期間を特定してもよい。
【0060】
本実施形態による戸挟み検出装置1は、記憶部36を備えていてもよい。記憶部36は、ドアを閉方向に駆動した際の戸挟みしていない際にモータ11に流れる電流値の平均値、中央値、最頻値、又は積分値の少なくとも一つの計測値と、計測値に基づく基準閾値と、の対応関係を記憶する。ドアリーフ3R、3Lの摺動抵抗によってモータ11に流れる電流が変化するため、例えば、戸吊装置5R、5Lに重量の異なる複数の錘を代わり番こに取り付けて擬似的に摺動抵抗を擬似的に変化させて、モータ電流と基準閾値との対応関係を事前に求めて記憶部36に記憶しておく。この場合、閾値設定部32は、記憶部36に記憶された対応関係と、第1期間内にモータ11に流れる電流値の平均値、中央値、最頻値、又は積分値の少なくとも一つとに基づいて、閾値を設定する。このように、記憶部36を設けることで、以前に閾値設定部32が設定した閾値を記憶部36に記憶して再利用することができる。
【0061】
上述したように、本実施形態による戸挟み検出装置1は、ドアリーフ3R、3Lが閉方向に移動し始めて、第1期間内に取得したモータ電流に基づいて閾値を設定し、設定した閾値を用いてその後の第2期間内にモータ電流と比較することを想定しているが、ドアリーフ3R、3Lを全開位置から閉方向に移動させるたびに閾値を設定し直すのは電気式ドア装置2の処理負担が大きいため、ドアリーフ3R、3Lの閉動作を複数回行うたびに1回の割合で閾値設定部32が閾値の設定をやり直すようにし、閾値設定部32が設定した閾値は記憶部36に記憶して、必要に応じて記憶部36に記憶された閾値を読み出してモータ電流との比較を行ってもよい。このように、記憶部36を設けることで、ドアリーフ3R、3Lを閉じるたびに閾値を設定し直さなくて済み、戸挟み検出装置1の処理負担を軽減できる。
【0062】
また、記憶部36は、過去の戸挟み時にモータ11に流れる電流(以下、第1電流値と呼ぶ)を記憶してもよい。この場合、閾値設定部32は、記憶部36に記憶された第1電流値に基づいて、閾値を設定する。例えば、閾値設定部32は、第1電流値に、0より大きくて1より小さい係数を乗じた値を閾値としてもよい。電気式ドア装置2の実際の運用時には、第2取得部33は、ドアの戸閉時にモータ11に流れる電流(以下、第2電流値と呼ぶ)を取得する。判定部34は、取得された第2電流値と、閾値設定部32で設定された閾値とを比較することにより、戸挟みが生じたか否かを判定する。これにより、ドアリーフ3R、3Lを全開位置から閉方向に移動させるたびに、閾値を設定し直す必要がなくなり、戸挟み検知の処理動作を簡略化できる。
【0063】
図6は本実施形態による戸挟み検出装置1の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、ドアリーフ3R、3Lが全開位置から閉方向に移動し始めたときに開始される。より詳細には、鉄道車両の上位装置から閉指令を受けたときに、電気式ドア装置2はドアリーフ3R、3Lの閉動作を開始し、かつ戸挟み検出装置1は図6の処理を開始する。
【0064】
まず、第1取得部31は、ドアリーフ3R、3Lが第1期間の開始位置に到達したか否かを判定する(ステップS1)。ドアリーフ3R、3Lが第1期間の開始位置に到達するまで、ステップS1の処理を繰り返す。第1期間の開始位置に到達すると、モータ電流の取得を開始し、第1期間内で継続してモータ電流を取得する(ステップS2)。ステップS2の処理は第1取得部31が行う。
【0065】
次に、第1期間が終了したか否かを判定する(ステップS3)。第1期間が終了したと判定されると、第1取得部31は、モータ電流の取得を停止する(ステップS4)。
【0066】
続いて、閾値設定部32は、第1取得部31で取得されたモータ電流に基づいて、閾値を設定する(ステップS5)。例えば、閾値設定部32は、第1期間内のモータ電流の平均値、中央値、最頻値、又は積分値の少なくとも一つに基づいて、閾値を設定してもよい。例えば、第1期間内のモータ電流を累積加算した値の平均値に、所定の係数を乗じた値を閾値としてもよい。所定の係数は、0より大きく、1未満の値であり、例えば過去の電気式ドア装置2の運用実績から設定される値である。あるいは、第1期間内のモータ電流の中央値に所定の係数を乗じた値を閾値としてもよい。あるいは、第1期間内のモータ電流の電流値を頻度順に分類して、最頻値のモータ電流に所定の係数を乗じた値を閾値としてもよい。あるいは、第1期間内のモータ電流の累積加算値(積分値)に所定の係数を乗じた値を閾値としてもよい。この場合の係数は、平均値から閾値を求める場合の係数よりも小さい値にする。
【0067】
その後、ドアリーフ3R、3Lが第2期間の開始位置に到達したか否かを判定する(ステップS6)。ドアリーフ3R、3Lが第2期間の開始位置に到達するまで、ステップS6の処理を繰り返す。第2期間の開始位置に到達すると、第2取得部33はモータ電流を検出する。そして、判定部34はステップS5で設定された閾値と比較する(ステップS7)。モータ電流が閾値を超えていれば、戸挟みが生じたことを検出する(ステップS8)。この場合、戸挟みが生じたことを不図示の管理装置や保守作業員に知らせるための所定の通知処理などを行う。
【0068】
ステップS7でモータ電流が閾値を超えていなければ、戸挟みが生じていないと判定して、第2期間が終了したか否かを判定する(ステップS9)。まだ、第2期間が終了していない場合は、ステップS7に戻り、第2期間が終了すると、図6の処理を終了する。
【0069】
このように、本実施形態では、ドアリーフ3R、3Lが閉方向に移動し始めてから、第1期間内にモータ電流を取得して閾値を設定する。その後、ドアリーフ3R、3Lが全閉位置に到達する前の第2期間内に、モータ電流を再度取得して閾値と比較して、モータ電流が閾値を超えていれば、戸挟みが生じたと判断する。本実施形態によれば、戸挟みを検出するための閾値を、ドアリーフ3R、3Lを閉じ始めてまもなくの第1期間内のモータ電流にて設定するため、モータ電流が経年変化や環境条件等により変動した場合であっても、変動後のモータ電流にて閾値を設定でき、戸挟みが生じたか否かを精度よく判断できる閾値を設定できる。
【0070】
上述した実施形態で説明した戸挟み検出装置1及び鉄道用ドア装置の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、戸挟み検出装置1及び鉄道用ドア装置の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0071】
また、戸挟み検出装置1及び鉄道用ドア装置の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0072】
本開示の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 戸挟み検出装置、2 電気式ドア装置、3R、3L ドアリーフ、4 ガイドレール、5R、5L 戸吊装置、6 戸車、7 戸先ゴム、8R、8L ラックギア、9R、9L ブラケット、10 ピニオンギア、11 モータ、12 回転軸、13 サンギア、14 遊星ギア、15 制御器、16 電源部、17 モータモニタ部、18 ドア開閉制御部、19 指令部、21 電源電圧検出部、22 PWM制御部、23 モータ駆動部、24 ホール信号検出器、25 ホール素子、26 モータ電流検出器、27 モータ電圧検出器、31 第1取得部、32 閾値設定部、33 第2取得部、34 判定部、35 期間特定部、36 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6