(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049577
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】鏡の裏面塗料層用活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 201/06 20060101AFI20220322BHJP
【FI】
C09D201/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155837
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐内 康之
(72)【発明者】
【氏名】二宮 健
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038GA03
4J038GA07
4J038NA04
4J038NA12
4J038PA17
4J038PB02
4J038PB05
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】硬化膜が、鏡の裏面塗料層、特にメラミン含有層に対する密着性に優れ、高湿度下で使用された場合も密着性を損なうことがなく、さらに耐水性及び耐酸性に優れる鏡の裏面塗料層用活性エネルギー線コーティング剤硬化型組成物の提供。
【解決手段】下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む鏡の裏面塗料層用活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物。
(A)成分:オキセタン環を有する化合物
(B)成分:オキシラン環を有する化合物
(C)成分:活性エネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる化合物
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む鏡の裏面塗料層用活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物。
(A)成分:オキセタン環を有する化合物
(B)成分:オキシラン環を有する化合物
(C)成分:活性エネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる化合物
【請求項2】
前記(A)成分が、(A1)成分:1個のオキセタン環を有する化合物又は/及び(A2)成分:2個以上のオキセタン環を有する化合物を含む請求項1に記載の鏡の裏面塗料層用活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物。
【請求項3】
前記(A1)成分が、1個のオキセタン環と1個の水酸基を有する化合物を含む請求項1又は請求項2に記載の鏡の裏面塗料層用活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物。
【請求項4】
前記(A2)成分が、2個のオキセタン環を有する化合物を含む請求項1又は請求項2に記載の鏡の裏面塗料層用活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物。
【請求項5】
前記(B)成分が、(B1)成分:2個以上のオキシラン環を有する化合物を含む請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の鏡の裏面塗料層用活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物。
【請求項6】
前記(B1)成分が、芳香族エポキシ化合物を含む請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の鏡の裏面塗料層用活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物。
【請求項7】
前記(B1)成分が、ビスフェノール骨格を有する芳香族エポキシ化合物である請求項6に記載の鏡の裏面塗料層用活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物。
【請求項8】
前記(A)成分及び(B)成分の合計100重量%中に、前記(A)成分を5~95重量%、及び前記(B)成分を95~5重量%含む請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の鏡の裏面塗料層用活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物。
【請求項9】
鏡の裏面塗料層がメラミン含有層を含む請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の鏡の裏面塗料層用活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物。
【請求項10】
メラミン含有層がアルキッド・メラミン樹脂を含む請求項9に記載の鏡の裏面塗料層用活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鏡の裏面塗料層用活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物に関する。本発明の組成物の硬化膜は、高湿度又は直接水と接触する環境で鏡を使用した場合も、密着性、耐水性及び耐酸性に優れており、キッチン及び風呂場等の水回りの製品で使用される鏡の裏止め塗料層、特にメラミン含有層の保護コーティング剤として好適に使用することができ、これら技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
鏡は、板ガラスの裏面に「銀引き」と呼ばれる銀メッキによる銀膜の形成を行い、さらに銀膜を湿気等から保護するために、銀膜の上に銅メッキによる銅膜を形成し、さらにこの上に裏止め塗料と称される塗料を使用して保護塗膜(以下、「裏面塗料層」という)を形成して製造されており、メラミン樹脂等を含む裏止め塗料が使用されていた。
【0003】
メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとの反応で得られる熱硬化型樹脂であり、電気特性、機械強度、耐熱性、耐薬品性、耐候性及び着色性等の性能に優れており、これらの性能を利用して、成型材料、接着剤及び塗料等の種々の用途に使用されており、前記した鏡の裏止め塗料としても使用されている。
メラミン樹脂を含む鏡の裏止め塗料としては、メラミン樹脂と、エポキシ樹脂、熱硬化型アクリル樹脂又はアルキッド樹脂と混合した樹脂、顔料、及び顔料分散剤を含み、必要に応じて、有機溶剤、前記熱硬化性樹脂の硬化剤、及びその他の添加剤を含む塗料等が知られている。
【0004】
しかしながら、従来の裏止め塗料による裏面塗料層は、酸による侵食を充分に抑えることができず、浴室、化粧室、及び洗面室等の高湿度又は直接水と接触する環境に設置された鏡においては、酸性の強い薬品によって銀鏡面膜が腐食することがある。そのため、高湿度環境に設置される鏡用としては、耐水性のみならず、酸に侵食されにくい耐酸性に優れる裏面塗料層を形成できる裏止め塗料の開発が望まれていた。
【0005】
裏止め塗料組成物としては、メラミン樹脂としてアルキッド・メラミン樹脂等が使用されていたが、前記問題を解決するために、これらの以外の塗料も検討されていた。
例えば、塗料中の金属分を特定割合とする裏止め塗料組成物(特許文献1)、並びにエポキシ樹脂又はアルキッド樹脂等の熱硬化樹脂、顔料、及び分散剤を含み、当該分散剤が酸基を有さないアミノ基含有ポリマーを含む裏止め塗料組成物(特許文献2)が検討されていた。
しかしながら、従来の裏止め塗料組成物は、得られる塗料層が前記した酸による浸食防止効果が不十分なものであった。
【0006】
一方、活性エネルギー線硬化型組成物は、紫外線、可視光線及び電子線等の活性エネルギー線をごく短時間照射することで硬化可能であり、生産性が高いことから各種基材向けインキやコーティング剤として幅広く用いられている。
この様な活性エネルギー線硬化型組成物を、前記した鏡の裏止め塗料として、又は、鏡の裏面塗料層を保護するコーティング剤組成物として使用する検討もなされている(特許文献3、4)。
しかしながら、これら文献で記載された活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物は、その硬化膜が、鏡の裏面塗料層、特にメラミン含有層に対する密着性が不十分であり、又、耐水性及び耐酸性が十分なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-050056号公報
【特許文献2】特許第5733212号公報
【特許文献3】特開平6-340725号公報
【特許文献4】特開2002-012635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、その硬化膜が、鏡の裏面塗料層、特にメラミン含有層に対する密着性に優れ、高湿度下で使用された場合も密着性を損なうことがなく、さらに耐水性及び耐酸性に優れる鏡の裏面塗料層用活性エネルギー線コーティング剤硬化型組成物を見出すため鋭意検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、オキセタン環を有する化合物、オキシラン環を有する化合物、及び活性エネルギー線によりカチオン重合を開始させる化合物を含む活性エネルギー線硬化型組成物を用いることで、鏡の裏止め塗料層、特にメラミン含有層に対する密着性が良好であり、さらに耐水性及び耐酸性に優れることを見出し、本発明を完成した。
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の組成物によれば、硬化膜が、鏡の裏面塗料層に対する密着性、特にメラミン含有層に対する密着性に優れ、耐水性及び耐酸性にも優れる。
よって、本発明の組成物は、キッチン及び風呂場等の水回りの製品で使用される鏡の裏止め塗料層、特にメラミン含有層の保護コーティング剤として、好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む鏡の裏面塗料層用活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物に関する。
(A)成分:オキセタン環を有する化合物
(B)成分:オキシラン環を有する化合物
(C)成分:活性エネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる化合物
以下、必須成分である(A)成分、(B)成分、(C)成分、その他の成分、使用方法等について説明する。
【0012】
1.(A)成分
(A)成分は、オキセタン環を有する化合物である。
(A)成分は、組成物に良好な硬化性を付与し、かつ硬化膜に良好な柔軟性を付与することで、部材に衝撃が加わってもコーティング剤の割れや剥がれを防ぐための成分である。
【0013】
(A)成分としては、1個のオキセタン環を有する化合物〔以下、「(A1)成分」という〕及び2個以上のオキセタン環を有する化合物〔以下、「(A2)成分」という〕のいずれも使用することができる。
【0014】
(A1)成分としては、1個のオキセタン環を有する化合物であれば種々の化合物が使用できる。
(A1)成分の好ましい化合物としては、下記式(1)で表される化合物を挙げることができる。
【0015】
【0016】
ここで、式(1)において、Zは、酸素原子又は硫黄原子を意味する。R1は、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6個のアルキル基、炭素数1~6個のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基、又はチエニル基を意味する。R2は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6個のアルケニル基、アリール基、炭素数1~6個のアルキルカルボニル基、又は炭素数1~6個のアルコキシカルバモイル基を意味する。
R1及びR2における炭素数1~6個のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等が挙げられる。
R2における炭素数1~6個のアルケニル基の例としては、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、及び3-ブテニル基等が挙げられる。
R1及びR2におけるアリール基の例としては、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、及びフェノキシエチル基等が挙げられる。
R2における炭素数1~6個のアルキルカルボニルの例としては、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基、及びペンチルカルボニル基等が挙げられる。
R2における炭素数1~6個のアルキルカルバモイル基の例としては、エトキシカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、及びブチルペンチルカルバモイル等が挙げられる。
【0017】
本発明では、上記式(1)において、Z、R1及び/又はR2が以下に示す化合物が好ましい。
Zとしては、酸素原子である化合物が好ましい。R1としては、低級アルキル基の化合物が好ましく、メチル基又はエチル基である化合物が好ましい。又、R2としては、水素原子、ブチル基、2-エチルヘキシル基、又はベンジル基である化合物が好ましい。
【0018】
式(1)で表される好ましい化合物の具体例としては、Zが酸素原子、R1が低級アルキル基、及びR2が水素原子である化合物である、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン等が挙げられる。
式(1)で表される好ましい化合物の具体例としては、Zが酸素原子、R1が低級アルキル基、及びR2がアルキル基である化合物である、3-エチル-3-ブチロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ヘキシロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-ドデシロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-オクタデシロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-シクロヘキシロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(ノニルフェノキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(フェニルメトキシメチル)オキセタン、2-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]ビフェニル、4-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]ビフェニル等が挙げられる。
【0019】
(A1)成分としては、1個のオキセタン環と1個の水酸基を有する化合物が、基材への密着性に優れるためより好ましい。
1個のオキセタン環と1個の水酸基を有する化合物の具体例としては、式(1)において、Zが酸素原子、R1が低級アルキル基、及びR2が水素原子である化合物である、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン等が挙げられる。
【0020】
(A1)成分は市販されており、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(オキセタンアルコール)〔東亞合成(株)製アロンオキセタンOXT-101〕、及び2-エチルヘキシルオキセタン〔東亞合成(株)製アロンオキセタンOXT-212〕等が挙げられる。
【0021】
(A2)成分としては、2個以上のオキセタン環を有する化合物であれば種々の化合物を使用することができる。(A2)成分の具体例としては、例えば、特開平11-246647号公報で例示された化合物等を挙げることができる。
【0022】
(A2)成分の好ましい具体例としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。
3-エチル-3-〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕オキセタン、
1,4-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕ベンゼン、
1,4-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ベンゼン、
1,3-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ベンゼン、
1,2-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ベンゼン、
4,4’-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ビフェニル、
2,2’-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ビフェニル、
3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ビフェニル、
2,7-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ナフタレン、
ビス〔4-{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}フェニル〕メタン、
ビス〔2-{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}フェニル〕メタン、
2,2-ビス〔4-{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}フェニル〕プロパン、
ノボラック型フェノール-ホルムアルデヒド樹脂の3-クロロメチル-3-エチルオキセタンによるエーテル化変性物、
3(4),8(9)-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、
2,3-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕ノルボルナン、
1,1,1-トリス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕プロパン、
1-ブトキシ-2,2-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕ブタン、
1,2-ビス〔{2-(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}エチルチオ〕エタン、
ビス〔{4-(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルチオ}フェニル〕スルフィド、
1,6-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン、
3-〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕プロピルトリエトキシシランの加水分解縮合物、
テトラキス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル〕シリケートの縮合物等。
【0023】
(A2)成分としては、2個のオキセタン環を有する化合物が好ましく、その具体例としては、前記で挙げた化合物が例示される。
【0024】
(A2)成分は市販されており、キシリレンビスオキセタン〔東亞合成(株)製アロンオキセタンOXT-121〕、及び3-エチル3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン〔東亞合成(株)製アロンオキセタンOXT-221〕等が挙げられる。
【0025】
(A)成分としては、上記化合物の1種のみを使用することも、2種類以上を併用することもできる。
又、(A)成分としては、(A1)成分のみを使用することも、(A2)成分のみを使用することも、(A1)成分及び(A2)成分を併用することもできる。
【0026】
(A1)成分としては、基材への密着性をより強固なものとすることができることから、前記した通り、1個のオキセタン環と1個の水酸基を有する化合物が好ましいが、硬化膜の耐水性をより高めたい場合は、水による硬化膜の膨潤倍率をより低いものとするために、(A2)成分を併用することが好ましい。
(A1)及び(A2)成分の合計量100重量%中の(A1)及び(A2)成分の割合は任意の範囲にすることができ、基材である鏡の裏面塗料層の種類に応じて調節すれば良く、具体的には、(A1)成分3~80重量%及び(A2)成分97~20重量%が好ましく、(A1)成分3~50重量%及び(A2)成分97~50重量%がより好ましい。
【0027】
2.(B)成分
(B)成分は、オキシラン環を有する化合物である。
(B)成分は、組成物に含有することにより硬化膜の強度を高くすることができ、耐水性を良好なものとすることができる成分である。
(B)成分としては、モノマー、オリゴマー、及びポリマーいずれも使用可能である。
【0028】
(B)成分の具体例としては、従来公知の芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、及び脂環式エポキシ化合物等が挙げられる。
【0029】
芳香族エポキシ化合物としては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノール、又は、そのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルである。
芳香族エポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、及び臭素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル等のビスフェノール型エポキシ樹脂;
ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加体のジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのアルキレンオキシド付加体のジグリシジルエーテル、及び臭素化ビスフェノールAFのアルキレンオキシド付加体のジグリシジルエーテル等のビスフェノールのアルキレンオキシド付加体のジグリシジルエーテル;並びに、
フェノールノボラック型エポキシ樹脂、及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記以外の例としては、ビフェニル型エポキシ樹脂、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、スチレン-ブタジエン共重合体のエポキシ化物、スチレン-イソプレン共重合体のエポキシ化物、及び末端カルボン酸ポリブタジエンとビスフェノールA型エポキシ樹脂の付加反応物等が挙げられる。
前記したアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0030】
ここで、エポキシ樹脂とは、分子中に平均2個以上のエポキシ基を有し、反応により硬化する化合物又はポリマーをいう。
この分野での慣例に従い、本明細書では、硬化性のエポキシ基を分子内に2個以上有するものであれば、モノマーであってもエポキシ樹脂ということがある。
【0031】
脂環族エポキシ化合物としては、少なくとも1個のシクロヘキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルケン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる化合物等が挙げられる。
脂環族エポキシ化合物の具体例としては、ジシクロペンタジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、4-ビニルシクロヘキセンジオキサイド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、及びビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート等のエポキシ化シクロヘキシル基を少なくとも1つ有する化合物、並びに、水素添加ビスフェノールA又はそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0032】
脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
当該化合物の具体例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;
グリセリン又はそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;並びに、
ポリエチレングリコール又はそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、及びポリプロピレングリコール又そのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
さらに、これらの化合物のほかに、分子内に1個のオキシラン環を有するモノマーである脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール又はこれらのアルキレンオキサイド付加体のモノグリシジルエーテル等も用いることができる。
【0033】
(B)成分としては、得られる硬化膜の表面硬度が良好となり、かつ耐薬品性、耐酸性、及び耐水性に優れるものとなるため、2個以上のオキシラン環を有する化合物が好ましい。
さらに、このような化合物の中でも、芳香族エポキシ化合物が好ましく、ビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂がより好ましい。ビスフェノール骨格としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールP、及びビスフェノールZ等が挙げられる。
【0034】
(B)成分としては、上記化合物の1種のみを使用することも、2種類以上を併用することもできる。
【0035】
(A)成分及び(B)成分の含有割合としては、(A)成分及び(B)成分の合計100重量%中に、(A)成分を5~95重量%及び(B)成分を95~5重量%含むことが好ましく、(A)成分を10~30重量%及び(B)成分を90~70重量%含むことがより好ましい。
(A)成分及び(B)成分の含有割合を上記とすることで、組成物の硬化速度を良好なものとすることができ、基材への密着性に優れるものとすることができる。
【0036】
3.(C)成分
(C)成分は、活性エネルギー線の照射によりカチオン重合を開始する化合物であり、活性エネルギー線の照射によりカチオン種やルイス酸を生じる化合物であり、通常、光カチオン重合開始剤として知られている化合物である。
(C)成分としては、光カチオン重合開始剤として知られている種々の化合物を使用することができ、芳香族ヨードニウム塩及び芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、及び鉄-アレン錯体等が挙げられ、芳香族ヨードニウム塩及び芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩が好ましい。
(C)成分における、芳香族ヨードニウム塩及び芳香族スルホニウム塩の具体例としては、例えば、特開平11-246647号公報で例示された化合物等を挙げることができる。
【0037】
(C)成分の好ましい具体例としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、下記の化合物等が挙げられる。
ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ジ(4-ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート等。
【0038】
芳香族スルホニウム塩としては、例えば、下記の化合物等が挙げられる。
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニル〔4-(フェニルチオ)フェニル〕スルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ジフェニル〔4-(フェニルチオ)フェニル〕スルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
4,4’-ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
4,4’-ビス〔ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、
4,4’-ビス〔ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
7-〔ジ(p-トルイル)スルホニオ〕-2-イソプロピルチオキサントン ヘキサフルオロアンチモネート、
7-〔ジ(p-トルイル)スルホニオ〕-2-イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4-フェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、
4-(p-tert-ブチルフェニルカルボニル)-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、
4-(p-tert-ブチルフェニルカルボニル)-4’-ジ(p-トルイル)スルホニオ-ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等。
【0039】
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、下記の化合物等が挙げられる。
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロボレート等。
【0040】
鉄-アレン錯体としては、例えば、下記の化合物等が挙げられる。
キシレン-シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロアンチモネート、
クメン-シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、
キシレン-シクロペンタジエニル鉄(II)-トリス(トリフルオロメチルスルホニル)
メタナイド等。
【0041】
(C)成分としては、前記した化合物の1種類を単独で使用しても良く、2種類以上を併用しも良い。
【0042】
(C)成分としては、市販品を使用することが可能である。
その具体例としては、例えば、それぞれ商品名で、“カヤラッドPCI-220”、“カヤラッドPCI-620”〔以上、日本化薬(株)製〕、
“UVI-6992”(ダウ・ケミカル社製)、
“アデカオプトマーSP-150”、“アデカオプトマーSP-170”〔以上、(株)ADEKA製〕、
“CI-5102”、“CIT-1370”、“CIT-1682”、“CIP-1866S”、“CIP-2048S”、“CIP-2064S” 〔以上、日本曹達(株)製〕、
“DPI-101”、“DPI-102”、“DPI-103”、“DPI-105”、“MPI-103”、“MPI-105”、“BBI-101”、“BBI-102”、“BBI-103”、“BBI-105”、“TPS-101”、“TPS-102”、“TPS-103”、“TPS-105”、“MDS-103”、“MDS-105”、“DTS-102”、“DTS-103”〔以上、みどり化学(株)製〕、
“PI-2074”(ローディア社製)、
“Omnicat250”、“OmnicatPAG103”、OmnicatPAG108”、OmnicatPAG121”、OmnicatPAG203”〔以上、IGM RESINS B.V.社製)、
“CPI-100P”、“CPI-101A”、“CPI-200K”、“CPI-210S”〔以上、サンアプロ(株)製〕等を挙げられる。
これらの中でも、特に、ジフェニル〔4-(フェニルチオ)フェニル〕スルホニウムをカチオン成分として含む、ダウ・ケミカル社製の“UVI-6992”、サンアプロ(株)製の“CPI-100P”、“CPI-101A”、“CPI-200K”、“CPI-210S”が好ましい。
【0043】
(C)成分の含有割合としては、(A)成分及び(B)成分の合計を100重量部に対して、有効成分として0.1~10重量部であることが好ましく、0.5~5重量部がさらに好ましい。
ここで有効成分とは、(C)成分は有機溶剤の溶液として使用される場合が多く、固形分を意味する。
この含有割合とすることで、比較的重合速度が遅い(B)成分の配合部数が多い組成物であっても、産業上十分な生産性を達成可能な硬化速度を得ることができる。一方、(C)成分の含有割合が10重量部を超えると、(C)成分に含まれる酸の影響により、塗工される基材や製品によっては腐食等の不具合を生じるおそれがある。
又、(C)成分の種類によっては、有機溶剤で希釈された溶液〔以下、「(C)成分溶液」という〕を使用する場合があるが、この場合、仮に有効成分濃度が50重量%であれば、添加する使用量を2倍にすればよい。(C)成分溶液を使用する場合も、配合量が多いと、(C)成分溶液から持ち込まれる有機溶剤量が増えることとなり、別途乾燥工程が必要となったり、乾燥せずに硬化させると有機溶剤の影響で外観不良が発生するおそれがあるため、硬化性の程度及び硬化膜の性能低下等を考慮して含有割合を調整することが好ましい。
【0044】
4.鏡の裏面塗料層用活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物
本発明は、前記(A)、(B)、及び(C)成分を含む鏡の裏面塗料層用活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物である。
組成物の製造方法としては、前記(A)、(B)、及び(C)成分、並びに必要に応じて後記するその他の成分を、常法に従い撹拌及び混合する方法等が挙げられる。
この場合、必要に応じて加熱して撹拌しても良い。加熱して撹拌・混合する場合の温度としては、20~70℃の範囲であることが好ましい。
【0045】
組成物の粘度としては、使用する用途及び目的等に応じて適宜設定すれば良い。好ましい粘度としては、100~20,000mPa・sであり、より好ましくは200~8,000mPa・sである。
本発明において粘度とは、E型粘度計(コーンプレート型粘度計)により25℃で測定した値を意味する。
【0046】
本発明の組成物は、前記(A)、(B)及び(C)成分を必須とするものであるが、塗工性の調整、基材との密着性調整、及びその他意匠性付与等の目的で、必要に応じて種々の成分を配合することができる。
好ましいその他の成分としては、重合体〔以下、「(D)成分」という〕、シランカップリング剤〔以下、「(E)成分」という〕、光ラジカル重合開始剤〔以下、「(F)成分」という〕これら以外のその他の成分配合することができる。
以下、(D)~(F)成分についてについて説明する。
尚、以下において、(A)成分及び(B)成分を「硬化性成分」という。
又、後記するその他の成分は、例示した化合物の1種のみを使用しても良く、2種以上を併用しても良い
【0047】
4-1.(D)成分
(D)成分である重合体は、例えば、硬化膜の耐水性や耐薬品性を向上させる目的、塗工時のレベリング調整等を目的とした増粘剤として使用することができる。
(D)成分としては、カチオン重合を大きく阻害するものでなければ任意のものが使用できる。
【0048】
具体例としては、種々の(メタ)アクリルポリマーを使用することができる。
さらに、低粘度で配合が容易である点で、(メタ)アクリレートを必須構成単量体単位とし、重量平均分子量(以下、「Mw」という)が1,000~30,000である重合体が好ましい。
本発明において、Mwとは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(以下、「GPC」という)により測定した分子量をポリスチレン換算した値を意味する。
又、(D)成分のガラス転移点(以下、「Tg」という)としては、-85℃~120℃の範囲であることが好ましく、-80℃~100℃の範囲であることがより好ましい。
尚、本発明においてTgとは、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の昇温速度で測定した値を意味し、ΔT-温度曲線においてガラス転移温度中間点(Tmg)における値を意味する。
【0049】
さらに、(D)成分としては、多量の連鎖移動剤や重合開始剤を必要としない高温重合により製造された重合体が好ましく、160~350℃の温度で高温連連続重合して製造された重合体がより好ましい。
(D)成分において高温連続重合で得られた重合体は市販されており、東亞合成(株)製ARUFON UP-1000(Mw:3,000、Tg:-77℃)、ARUFON UP-1010(Mw:1,700、Tg:-31℃)、ARUFON UP-1020(Mw:2,000、Tg:-80℃)、ARUFON UP-1021(Mw:1,600、Tg:-71℃)、ARUFON UP-1061(Mw:1,600、Tg:-60℃)、ARUFON UP-1080(Mw:6,000、Tg:-61℃)、ARUFON UP-1110(Mw:2,500、Tg:-64℃)、ARUFON UP-1170(Mw:8,000、Tg:-57℃)、ARUFON UP-1190(Mw:1,700、Tg:-50℃)が挙げられる。
さらに水酸基を有する共重合体として、ARUFON UH-2041(Mw:2,500、Tg:-50℃)、ARUFON UH-2190(Mw:6,000、Tg:-47℃)、ARUFON UHE-2012(Mw:5,800、Tg:20℃)及びARUFON UH-2170(Mw:14,000、多分散度:3.5、Tg:60℃)等が挙げられる。
この他にもカルボキシル基を有する(メタ)アクリロイル樹脂、エポキシ基を有する(メタ)アクリロイル樹脂、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリロイル樹脂としては、を用いることもできる。具体的には、ARUFON UC-3510(Mw:2,000、Tg:-50℃)、ARUFON UG-4010(Mw:2,900、Tg:-57℃)、ARUFON US-6100(Mw:2,500、Tg:-58℃)等を挙げることができる。
【0050】
(D)成分として各種重合体を使用する場合は、特に上記の構造に特定されるものではない。
【0051】
4-2.(E)成分
本発明の組成物は、基材との密着性をより良好にする目的で、(E)成分(シランカップリング剤)をさらに含有していてもよい。
【0052】
(E)成分としては、特に限定はなく、公知のものを用いることができる。
シランカップリング剤の好ましい具体例としては、
3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;
ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、及びビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;
アリルトリメトキシシラン等のアリル基含有シランカップリング剤;
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等の環状エーテル基含有シランカップリング剤;
N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、及びN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;並びに
3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤が挙げられる。
【0053】
上記の中では、カチオン共重合可能であることから、分子中にオキシラン環を有する化合物が好ましい。
これら化合物の中では、(A)成分及び(B)成分とカチオン共重合により、硬化膜中に化学的に取り込まれるため、カチオン重合性基を有するシランカップリング剤が好ましい。
カチオン重合性基を有するシランカップリング剤としては、前記した環状エーテル基含有シランカップリング剤が挙げられ、さらに、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、及び3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
(E)成分の含有割合としては、硬化性成分100重量部に対して10重量部以下であることが好ましい。(E)成分は、反応の過程で脱離反応が起こるため、10重量部を超えると、得られた硬化膜を温水に浸漬したときに、気泡が発生し硬化膜外観を損ねるおそれがある。
【0054】
4-3.(F)成分
本発明における(F)成分としては、種々の公知の光ラジカル重合開始剤を使用することができる。
(F)成分は、(C)成分として、芳香族ヨードニウム塩を使用する場合に、硬化速度を高くする目的で使用する。
【0055】
(F)成分としては、種々の光ラジカル開始剤が使用できるが、配合組成に関わらず効率よくラジカルを発生できることから、光開裂型の光ラジカル重合開始剤が好ましい。
(F)成分における光開裂型の光ラジカル重合開始剤の具体例としては、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパノン}及び2-ヒドロキシ-1-{4-〔4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン等のアセトフェノン系化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド系化合物;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系化合物;チタノセン系化合物等が挙げられる。
【0056】
(F)成分の含有割合は、硬化性成分の合計量100重量部に対して、0.01~10重量部であることが好ましく、0.5~7重量部であることがより好ましく、1~5重量部であることが特に好ましい。上記範囲であると、組成物の硬化性に優れ、又、得られる硬化膜の耐擦傷性に優れる。
【0057】
4-4.前記以外のその他の成分
前記以外のその他の成分としては、コーティング剤に使用される公知の添加剤を用いることができる。
その具体例としては、例えば、有機溶剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸性物質、無機粒子、酸化防止剤、表面改質剤、顔料、染料、粘着性付与剤、及び重合禁止剤等が挙げられる。
以下、その他の成分のうち、有機溶剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸性物質、無機粒子、酸化防止剤、及び表面改質剤について説明する。
【0058】
<有機溶剤>
本発明の組成物は無溶剤で使用することが可能であるが、塗工粘度や膜厚調整等の目的で種々の有機溶剤を用いることができる。
有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノール等のアルコール化合物;エチレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノエーテル化合物;ダイアセトンアルコール等のアセトンアルコール;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族化合物;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン化合物;ジブチルエーテル等のエーテル化合物;並びにN-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0059】
本発明は乾燥工程が不要であることが大きな意義であるため、有機溶剤は使用しないことが好ましく、仮に使用する場合も最低限の配合量とする必要がある。やむを得ず使用する場合は、含有割合は、組成物合計量100重量部に対して、0.01~20重量部であることが好ましく、0.1~5重量部であることがより好ましい。
【0060】
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤の具体例としては、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシロキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシロキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2-エチルヘキシロキシ)プロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチロキシフェニル)-6-(2,4-ビスブチロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤;2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、オクチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化錫粒子等の紫外線を吸収する無機粒子等が挙げられる。前記化合物の中でも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。
紫外線吸収剤の含有割合は、硬化性成分の合計量100重量部に対して、0.01~10重量部であることが好ましく、0.05~5重量部であることがより好ましく、0.1~2重量部であることがさらに好ましい。
【0061】
一般に、(C)成分は、吸収波長が短いことから紫外線吸収剤は使用しないことが好ましいが、やむを得ず紫外線吸収剤を使用する場合は、(C)成分が長波長でも作用するような光増感剤を併用することが好ましい。
光増感剤の具体例としては、2-クロロチオキサントン、及び2-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、並びに9,10-ジブトキシアントラセン及び9,10-ビス(アシルオキシ)アントラセン等のアントラセン誘導体が挙げられる。
【0062】
<光安定剤>
光安定剤としては、公知の光安定剤を用いることができるが、中でも、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)が好ましく挙げられる。
ヒンダードアミン系光安定剤の具体例としては、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチロキシ)-4-ピペリジニル)エステル等が挙げられる。
ヒンダードアミン系光安定剤の市販品としては、BASF社製、TINUVIN 111FDL、TINUVIN123、TINUVIN 144、TINUVIN 152、TINUVIN 292、TINUVIN 5100等が挙げられる。
【0063】
紫外線吸収剤の含有割合は、硬化性成分の合計量100重量部に対して、0.01~5重量部であることが好ましく、0.05~2重量部であることがより好ましく、0.1~1重量部であることがさらに好ましい。
【0064】
<無機粒子>
無機粒子としては、金属酸化物粒子が好ましい。
金属酸化物粒子としては、珪素、ジルコニウム、チタン、アンチモン、スズ、セリウム、アルミニウム、亜鉛及びインジウムよりなる群から選ばれた1種以上の金属からなる金属酸化物粒子又は複合金属酸化物粒子が好ましく挙げられる。
【0065】
無機粒子の平均粒子径は、用途に応じて選択すればよいが、1~1,000nmが好ましく、5~500nmがさらに好ましく、10~100nmが特に好ましい。上記範囲であると、硬化膜の透明性や外観が良好である。
なお、本発明において、無機粒子の平均粒子径は、BET法によって得られる試料の比表面積から真球状粒子と仮定したときの粒子径を意味する。
【0066】
無機粒子は、表面修飾された粒子であってもよい。
表面修飾剤としては、公知のものを用いることができるが、シランカップリング剤やチタンカップリング剤等が好適に挙げられる。
中でも、シランカップリング剤がより好ましく、エチレン性不飽和基及びアルコキシシリル基を有する化合物が特に好ましい。上記態様であると、得られる硬化膜の硬度及び耐カール性により優れる。シランカップリング剤の具体例としては、後記する化合物と同様の化合物が挙げられる。
又、無機粒子の表面修飾量としては、特に制限はないが、無機粒子に対し表面修飾剤を、表面修飾剤及び無機粒子の全重量に対して、1.0~45.0重量%の割合で反応させたものであることが好ましい。
【0067】
無機粒子の含有割合は、硬化性成分の合計量100重量部に対して、25~400重量部であることが好ましく、30~200重量部であることがより好ましく、50~150重量部であることがさらに好ましい。上記態様であると、得られる硬化膜の密着性、耐擦傷性及び耐カール性により優れる。
【0068】
<酸化防止剤>
本発明の組成物は、硬化膜の耐熱性や耐候性を良好にする目的で、酸化防止剤をさらに含有していてもよい。
本発明に用いられる酸化防止剤としては、例えばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、又は、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、ジ-t-ブチルヒドロキシトルエン等のヒンダードフェノール類を好ましく挙げることができる。市販されているものとしては、(株)アデカ製のAO-20、AO-30、AO-40、AO-50、AO-60、AO-70、AO-80等が挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン等のホスフィン類や、亜リン酸トリアルキルや亜リン酸トリアリール等が好ましく挙げられる。これらの誘導体で市販品としては、例えば(株)アデカ製、アデカスタブPEP-4C、PEP-8、PEP-24G、PEP-36、HP-10、260、522A、329K、1178、1500、135A、3010等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、チオエーテル系化合物が挙げられ、市販品としては(株)アデカ製AO-23、AO-412S、AO-503A等が挙げられる。
【0069】
酸化防止剤の含有割合は、本発明の組成物合計量100重量部に対して、0.01~5重量部であることが好ましく、0.1~1重量部であることがより好ましい。上記態様であると、組成物の安定性に優れる。
【0070】
<表面改質剤>
本発明の組成物は、塗布時のレベリング性を高める目的や、硬化膜の滑り性を高めて耐擦傷性を高める目的等のため、表面改質剤を添加してもよい。
表面改質剤としては、表面調整剤、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、スベリ性付与剤、防汚性付与剤等が挙げられ、これら公知の表面改質剤を使用することができる。
それらのうち、シリコーン系表面改質剤及びフッ素系表面改質剤が好適に挙げられる。具体例としては、シリコーン鎖とポリアルキレンオキサイド鎖とを有するシリコーン系ポリマー及びオリゴマー、シリコーン鎖とポリエステル鎖とを有するシリコーン系ポリマー及びオリゴマー、パーフルオロアルキル基とポリアルキレンオキサイド鎖とを有するフッ素系ポリマー及びオリゴマー、並びに、パーフルオロアルキルエーテル鎖とポリアルキレンオキサイド鎖とを有するフッ素系ポリマー及びオリゴマー等が挙げられる。
又、滑り性の持続力を高めるなどの目的で、分子中にオキセタン環、オキシラン環を有する表面改質剤を使用してもよい。表面改質剤の含有割合は、本発明の組成物の合計量100重量部に対して、0.01~1.0重量部であることが好ましい。上記範囲であると、硬化膜の表面平滑性に優れる。
【0071】
5.使用方法
本発明の組成物の使用方法としては、常法に従えば良い。
例えば、適用される鏡の裏面塗料層(以下、単に「基材」ともいう)に、組成物を通常の塗工方法により塗布した後、活性エネルギー線を照射する方法等が挙げられる。
本発明の組成物を高湿条件で使用する場合、塗布後の組成物の脱泡が不十分な場合に硬化膜に欠陥が発生するおそれがある。例えば、本発明の組成物から得られる硬化膜を後述する温水浸漬試験に供した場合に、塗布後の組成物の脱泡が不十分な場合に硬化膜に欠陥が発生するおそれがある。この問題を解決するためには、塗布した後に40~60℃で数分間、好ましくは1~30分間加熱して脱泡することが好ましい。ただし、塗布した組成物にどの程度気泡が含まれるかは塗工方法により異なるため、加熱工程は必須ではない。
活性エネルギー線の照射方法は、従来の硬化方法として知られている一般的な方法を採用すれば良い。
必要に応じて、活性エネルギー線を照射した後に加熱することもできる。
【0072】
本発明の組成物が適用できる鏡の裏面塗料層としては、種々の裏止め塗料から得られる層に適用できる。
裏止め塗料としては、例えば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂に、顔料、及び顔料分散剤を含み、必要に応じて有機溶剤、前記熱硬化性樹脂の硬化剤、及びその他の添加剤分散させた塗料等を挙げることができる。
【0073】
本発明の組成物は、特に鏡の裏面塗料層として、メラミン含有層に好適に使用することができる。
メラミン含有層を構成する樹脂層としては、メラミン樹脂を含む樹脂であれば種々の樹脂に適用することができ、メラミン樹脂にアルキッド樹脂、エポキシ樹脂、又は熱硬化型アクリル樹脂を混合した塗料から形成される樹脂層、さらに、メラミン樹脂にアルキッド樹脂、エポキシ樹脂、又は熱硬化型アクリル樹脂を混合し、さらに、熱硬化型塗料で通常使用される添加剤を配合した塗料を、焼付け塗装して形成される樹脂層等が挙げられる。前記添加剤としては、タルク等の顔料を分散させたペースト分散安定剤、消泡剤、並びにレベリング剤等が挙げられる。
【0074】
メラミン含有層を構成する樹脂としては、メラミン樹脂とアルキッド樹脂を混合したものから得られるアルキッド・メラミン樹脂が好ましい。
メラミン樹脂としては、メラミンとホルムアルデヒドをアルカリ条件下で縮合させたメチロールメラミンを好適に使用することができ、任意のものを使用することができる。
メラミン樹脂としては市販品を使用することができ、メチル化メラミン樹脂としては、(株)三和ケミカル製 MW-30MLF、MW-30M、MW-30LF、MW-30、MW-22、MS-11、MW-12LF、MS-001、MZ-351、MX-730、MX-750、MX-706、MX-035等、DIC(株)製 アミディアL-105-60等が挙げられ、ブチル化メラミン樹脂としては、DIC(株)製 アミディアJ-820-60、L-109-65、L-117-60、L-125-60、L-127-60、L-150-60、L-16-60B等が挙げられ、混合エーテル化メラミン樹脂としては、(株)三和ケミカル製MX-45、MX-410等、トリメチロールメラミン樹脂としては、三木理研工業(株)製リケンレヂンMA-156、MM-3C、MM-35等が挙げられる。
又、アルキッド樹脂としては市販品を使用することができ、大豆油、亜麻仁油等を原料とする長油アルキッド樹脂としては、DIC(株)製 アルキディア52-514、EL-8001、EL-8011、KE-183等が挙げられ、中油アルキッド樹脂としては、DIC(株)製 アルキディア1334-EL、16-141、EL-4501-50、ES-4505-60X、ES-5103-50X、WJB-27、ES-4012等が挙げられ、フェノール変性アルキッド樹脂としては、DIC(株)製 アルキディアM-2167-50、M-2168-50、M-2171-50、M-2174-50、P-539等が挙げられ、その他各種溶剤系ポリエステル樹脂としては、DIC(株)製ベッコライト46-118、46-119、54-707、M-6205-50、M-6402-50等が挙げられる。
メラミン樹脂とアルキッド樹脂は、それぞれ1種のみ、又は複数種を使用し、任意の割合で混合したものを使用することができる。尚、上記で列挙したもの以外の種々の市販品を使用できる。
【0075】
本発明の組成物の基材への塗工方法としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、バーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ディップコーター、ロールコーター、スピンコーター、フローコーター、ナイフコーター、コンマコーター、リバースロールコーター、ダイコーター、リップコーター、スプレーコーター、グラビアコーター及びマイクログラビアコーター等で塗工する方法が挙げられる。
【0076】
基材に対する組成物硬化膜の膜厚は、目的に応じて適宜設定すればよい。硬化膜の厚さとしては、使用する基材や製造した硬化膜を有する基材の用途に応じて選択すればよいが、10~500μmであることが好ましく、20~100μmであることがより好ましい。
【0077】
組成物が有機溶剤を含む場合は、基材に塗工した後、加熱・乾燥させ、有機溶剤を蒸発させることが好ましい。
乾燥温度は、適用する基材が変形等の問題を生じない温度以下であれば特に限定されるものではない。好ましい加熱温度としては、40~100℃である。乾燥時間は適用する基材及び加熱温度によって適宜設定すれば良く、好ましくは0.5~3分である。
【0078】
本発明の組成物を硬化させるための活性エネルギー線としては、電子線、紫外線及び可視光線が挙げられるが、紫外線又は可視光線が好ましく、紫外線が特に好ましい。紫外線照射装置としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線(UV)無電極ランプ、発光ダイオード(LED)等が挙げられる。
照射エネルギーは、活性エネルギー線の種類や配合組成に応じて適宜設定すべきものであるが、一例として高圧水銀ランプを使用する場合を挙げると、UV-A領域の照射エネルギーで100~8,000mJ/cm2が好ましく、200~3,000mJ/cm2がより好ましい。
【0079】
活性エネルギー線照射直後に、硬化膜にタックが残っている場合があるが、この場合も室温で概ね10分以上放置することで完全に硬化する。
コンベアを備えた装置を用いて連続的に塗工・硬化が行われる場合は、活性エネルギー線照射後に、乾燥炉にて加熱による後硬化を行ってもよい。温度に制約はないものの、40~80℃にて、1~30分程度加熱することが好ましい。
【0080】
6.用途
本発明の組成物は種々の鏡に使用可能であり、鏡の裏面塗料層、特にメラミン含有層に対する密着性に優れ、耐水性及び耐酸性に優れるものであり、主に水回りで使用されるキッチン及び風呂場等の使用される鏡の裏面塗料層に対する保護コーティング剤として好ましく使用することができる。
【実施例0081】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
又、以下において、特に断りのない限り、「部」とは重量部を意味し、「%」とは重量%を意味する。
【0082】
1.実施例1~同5及び比較例1~同2(組成物の調製)
後記表1に示す各成分を30℃にて撹拌・混合して、実施例1~同5、並びに比較例1及び同2の組成物を得た。
得られた組成物について、E型粘度計により25℃における粘度を測定した。それらの結果を、表1に示す。
【0083】
2.鏡の裏面塗料層(アルキッド・メラミン塗料層)に対する評価
得られた実施例1~同5、並びに比較例1及び同2の組成物をバーコーターを用い、裁断した(株)LIXIL製ガラスKF-3045A(裏面塗料層としてアルキッド・メラミンを有する)(356mm×305mm×5mm)裏面に膜厚が50μmとなるよう塗工し、試験体とした。
次いで、コンベアを備えた高圧水銀ランプ〔アイグラフィックス(株)製H06-L 41〕を用いて、UV-A照度80W/cm、照射エネルギー1,000mJ/cm2の条件で試験体に紫外線を照射した。
得られた硬化膜を室温、40%RHにて24時間静置したものを使用し、以下の方法に従い密着性及び硬化膜外観を評価した。それらの結果を表3に示す。
【0084】
1)密着性
密着性評価のための試験体として、上記で得られた硬化膜を、a)硬化24時間後のもの、b)10%塩酸水溶液に48時間浸漬後に取り出して、水道水で洗浄後24時間室内にて乾燥させたもの、c)60℃温水に7日間浸漬したものを取り出し、24時間室内にて乾燥させたものの3種の試験体を使用した。
3種の試験体の硬化膜に、カッターナイフで縦横1mm間隔の切り込みを入れて、1mm×1mmの大きさの升目100個を形成し、この碁盤目上にニチバン(株)製#405のセロハンテープを貼り付けた後に強く剥がした。剥離後の残膜数を評価した。残膜数が多いほど密着性が良好であることを示す。
【0085】
2)硬化膜外観
前記密着性試験で使用したものと同じ3種の試験体について、目視にて外観を確認し、以下の3水準で評価した。
◎:凹凸のない平滑な硬化膜で透明、〇:凹凸のない平滑な硬化膜だが、わずかに白濁、×:明らかに凹みや膨らみがある
【0086】
【0087】
【0088】
表1及び表2における略号は、下記を意味する。表1及び表2中の括弧書きは、各成分の部数を意味する。
(A)成分
・OXT-101:3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン〔東亞合成(株)製 アロンオキセタン OXT-101〕
・OXT-221:3-エチル3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン〔東亞合成(株)製 アロンオキセタンOXT-221〕
(B)成分
・jER-828:ビスフェノールA型エポキシ樹脂〔三菱ケミカル(株)製 jER-828〕
(C)成分
・CPI-100P:トリアリールスルホニウム・PF6塩の50%プロピレンカーボネート溶液〔サンアプロ(株)製 CPI-100P〕
【0089】
【0090】
3.評価結果
表3における実施例1~同5の結果から明らかなように、本発明の組成物は鏡の裏面塗料層への密着性、耐酸性及び耐水性に優れるものであった。
これに対して、比較例1の組成物は、塩酸浸漬後において、密着性がやや低下し、温水浸漬後において、密着性が得られず、外観不良ともなった。又、比較例2の組成物は、初期密着性が不十分で、塩酸浸漬後において、密着性が大きく低下し、外観不良ともなり、温水浸漬後において、密着性が得られず、外観不良ともなった。
本発明の鏡の裏面塗料層用活性エネルギー線硬型コーティング剤組成物は、得られる硬化膜が、鏡の裏面塗料層に対して、特にメラミン含有層に対して、密着性、耐水性、及び耐酸性に優れるものであり、主に水回りで使用される鏡の裏面の防触コーティング剤として好ましく使用できる。