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特開2022-49579車道侵入判定装置、車両、通信端末装置、並びに、車道への侵入を判定するシステム、方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049579
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】車道侵入判定装置、車両、通信端末装置、並びに、車道への侵入を判定するシステム、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20220322BHJP
   G08G 1/005 20060101ALI20220322BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/005
G09B29/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155845
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】海老沢 憲一
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 弘一
【テーマコード(参考)】
2C032
5H181
【Fターム(参考)】
2C032HB05
2C032HC08
5H181AA21
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC12
5H181FF05
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL07
5H181LL08
5H181MB11
(57)【要約】
【課題】高精細の地図画像を用いることなく、歩行者の車道への侵入を精度よく判定することができる車道侵入判定装置を提供する。
【解決手段】サーバ(車道侵入判定装置)は、歩行者に所持又は装着された通信端末装置の現在位置の位置情報を取得し、その通信端末装置の現在位置の位置情報と、車道の走行基準線の位置情報と、車道の幅情報とに基づいて、歩行者が車道に侵入しているか否かを判定する。サーバは、歩行者が車道に侵入していると判定した場合、通信端末装置の現在位置と、道路に設定されている歩行者優先エリアの位置情報とに基づいて、歩行者優先エリア上に歩行者が位置するか否かを判定してもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する道路の車道への歩行者の侵入を判定する車道侵入判定装置であって、
前記歩行者に所持又は装着された通信端末装置の現在位置の位置情報を取得する情報取得手段と、
前記通信端末装置の現在位置の位置情報と、前記車道の走行基準線の位置情報と、前記車道の幅情報とに基づいて、前記歩行者が前記車道に侵入しているか否かを判定する判定手段と、を備えることを特徴とする車道侵入判定装置。
【請求項2】
請求項1の車道侵入判定装置において、
前記判定手段は、
前記通信端末装置の現在位置から前記車道の走行基準線までの最小距離を計算し、
前記最小距離が前記車道の幅の1/2未満の場合に、前記歩行者が前記車道に侵入していると判定する、ことを特徴とする車道侵入判定装置。
【請求項3】
請求項2の車道侵入判定装置において、
前記判定手段は、
前記道路が複数の車道を有する場合、前記複数の車道のそれぞれについて前記最小距離を計算し、
前記複数の車道の少なくとも一つの車道の前記最小距離が前記車道の幅の1/2未満の場合に、前記歩行者が前記車道に侵入していると判定する、ことを特徴とする車道侵入判定装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの車道侵入判定装置において、
前記判定手段は、前記歩行者が前記車道に侵入していると判定した場合、前記通信端末装置の現在位置と、前記道路に設定されている歩行者優先エリアの位置情報とに基づいて、前記歩行者優先エリア上に前記歩行者が位置するか否かを判定する、ことを特徴とする車道侵入判定装置。
【請求項5】
請求項4の車道侵入判定装置において、
前記車道の走行基準線は、前記歩行者優先エリアにより車両走行方向における上流側の走行基準線と下流側の走行基準線とにより構成され、
前記判定手段は、前記通信端末装置の現在位置の位置情報と、前記歩行者優先エリアの外周縁における前記上流側の走行基準線の終点の位置情報と、前記下流側の走行基準線の始点の位置情報とに基づいて、前記歩行者優先エリア上に前記歩行者が位置するか否かを判定する、ことを特徴とする車道侵入判定装置。
【請求項6】
請求項5の車道侵入判定装置において、
前記判定手段は、
前記歩行者優先エリアの外周縁における前記上流側の走行基準線の終点から前記通信端末装置の現在位置に向かう第1ベクトルと、前記歩行者優先エリアの外周縁における前記下流側の走行基準線の始点から前記通信端末装置の現在位置に向かう第2ベクトルと、前記上流側の走行基準線の終点から前記下流側の走行基準線の始点に向かう第3ベクトルと、前記下流側の走行基準線の始点から前記上流側の走行基準線の終点に向かう第4ベクトルとを計算し、
前記第1ベクトルと前記第3ベクトルとの間の第1判定角と、前記第2ベクトルと前記第4ベクトルとの間の第2判定角とを計算し、
前記第1判定角及び前記第2判定角が両方とも90°以下の場合に、前記歩行者優先エリア上に前記歩行者が位置すると判定し、
前記第1判定角及び前記第2判定角の少なくとも一方が90°よりも大きい場合に、前記車道の前記歩行者優先エリア以外の部分に前記歩行者が位置すると判定する、ことを特徴とする車道侵入判定装置。
【請求項7】
請求項6の車道侵入判定装置において、
前記判定手段は、
前記道路が複数の車道を有する場合、前記複数の車道について前記第1判定角及び前記第2判定角を計算し、
前記複数の車道に対する前記第1判定角及び前記第2判定角がすべて90°以下の場合に、前記歩行者が前記歩行者優先エリア上に位置すると判定する、ことを特徴とする車道侵入判定装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかの車道侵入判定装置において、
前記車道の走行基準線の位置情報と前記車道の幅情報とを含む地図情報を記憶する地図情報記憶手段を備えることを特徴とする車道侵入判定装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかの車道侵入判定装置において、
外部の地図データベース装置から前記車道の走行基準線の位置情報と前記車道の幅情報とを含む地図情報を取得する地図情報取得手段を備えることを特徴とする車道侵入判定装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかの車道侵入判定装置において、
前記判定の結果を前記歩行者に通知する通知手段を備えることを特徴とする車道侵入判定装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかの車道侵入判定装置において、
当該車道侵入判定装置は、移動通信網の基地局又は前記基地局とコアネットワークとの間のノード又はコアネットワークの外側に設けられたMEC(Multi-access Edge Computing)装置であることを特徴とする車道侵入判定装置。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれかの車道侵入判定装置を備える車両。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれかの車道侵入判定装置を備える通信端末装置。
【請求項14】
請求項1乃至10のいずれかの車道侵入判定装置により前記車道への侵入が判定される歩行者に所持又は装着される通信端末装置であって、
当該通信端末装置の現在位置の位置情報を前記車道侵入判定装置に送信する情報送信手段と、
前記歩行者が前記車道に侵入しているか否かを判定した判定の結果を前記車道侵入判定装置から受信する判定結果受信手段と、を備えることを特徴とする通信端末装置。
【請求項15】
車両が走行する道路の車道への歩行者の侵入を判定するシステムであって、
請求項1乃至10のいずれかの車道侵入判定装置と、前記歩行者の通信端末装置とを備えることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項15のシステムにおいて、
前記車道の走行基準線の位置情報と前記車道の幅情報とを含む地図情報を記憶する地図データベース装置を備え、
前記車道侵入判定装置は、前記地図データベース装置から、前記車道の走行基準線の位置情報と前記車道の幅情報とを取得することを特徴とするシステム。
【請求項17】
車両が走行する道路の車道への歩行者の侵入を判定する方法であって、
前記歩行者に所持又は装着された通信端末装置の現在位置の位置情報を取得することと、
前記通信端末装置の現在位置の位置情報と、前記車道の走行基準線の位置情報と、前記車道の幅情報とに基づいて、前記歩行者が前記車道に侵入しているか否かを判定することと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17の方法において、
前記歩行者が前記車道に侵入していると判定した場合、前記通信端末装置の現在位置と、前記道路に設定されている歩行者優先エリアの位置情報とに基づいて、前記歩行者優先エリア上に前記歩行者が位置するか否かを判定することを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
車両が走行する道路の車道への歩行者の侵入を判定する装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
前記歩行者に所持又は装着された通信端末装置の現在位置の位置情報を取得するためのプログラムコードと、
前記通信端末装置の現在位置の位置情報と、前記車道の走行基準線の位置情報と、前記車道の幅情報とに基づいて、前記歩行者が前記車道に侵入しているか否かを判定するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項20】
請求項19のプログラムにおいて、
前記歩行者が前記車道に侵入していると判定した場合、前記通信端末装置の現在位置と、前記道路に設定されている歩行者優先エリアの位置情報とに基づいて、前記歩行者優先エリア上に前記歩行者が位置するか否かを判定するためのプログラムコードを更に含むことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者の車道への侵入を判定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自装置の現在位置を地図画像上に表示する通信端末装置が知られている。例えば、特許文献1には、GPS衛星から受信したGPS信号を解析して得られた現在位置を地図上に表示するLCD表示器を有するGPS機能付き携帯電話が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-028662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、道路を歩いている歩行中の死亡者の中で、車道の横断歩道(歩行者優先エリア)以外の部分に侵入して横断しているときに死亡した死亡者の割合が多い。このような車道での歩行者の死亡を減らすために、歩行者の通信端末装置に歩行者の現在位置を示す地図を表示し、その地図上で歩行者の車道への侵入を判定し、その判定結果を歩行者への警告や歩行者と車両との衝突の回避などに用いることが考えられる。しかしながら、上記従来の携帯電話などの地図画像上に現在位置を表示する通信端末装置において、歩行者の車道への侵入を判定するには、車道と歩道とを区別できるほどの高精度の地図画像を用いる必要がある、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る車道侵入判定装置は、車両が走行する道路の車道への歩行者の侵入を判定する車道侵入判定装置である。この車道侵入判定装置は、前記歩行者に所持又は装着された通信端末装置の現在位置の位置情報を取得する情報取得手段と、前記通信端末装置の現在位置の位置情報と、前記車道の走行基準線の位置情報と、前記車道の幅情報とに基づいて、前記歩行者が前記車道に侵入しているか否かを判定する判定手段と、を備える。
【0006】
前記車道侵入判定装置において、前記判定手段は、前記通信端末装置の現在位置から前記車道の走行基準線までの最小距離を計算し、前記最小距離が前記車道の幅の1/2未満の場合に、前記歩行者が前記車道に侵入していると判定してもよい。
【0007】
前記車道侵入判定装置において、前記判定手段は、前記道路が複数の車道を有する場合、前記複数の車道のそれぞれについて前記最小距離を計算し、前記複数の車道の少なくとも一つの車道の前記最小距離が前記車道の幅の1/2未満の場合に、前記歩行者が前記車道に侵入していると判定してもよい。
【0008】
前記車道侵入判定装置において、前記判定手段は、前記歩行者が前記車道に侵入していると判定した場合、前記通信端末装置の現在位置と、前記道路に設定されている歩行者優先エリアの位置情報とに基づいて、前記歩行者優先エリア上に前記歩行者が位置するか否かを判定してもよい。
【0009】
ここで、前記車道の走行基準線は、前記歩行者優先エリアにより車両走行方向における上流側の走行基準線と下流側の走行基準線とにより構成され、前記判定手段は、前記通信端末装置の現在位置の位置情報と、前記歩行者優先エリアの外周縁における前記上流側の走行基準線の終点の位置情報と、前記下流側の走行基準線の始点の位置情報とに基づいて、前記歩行者優先エリア上に前記歩行者が位置するか否かを判定してもよい。
【0010】
また、前記判定手段は、前記歩行者優先エリアの外周縁における前記上流側の走行基準線の終点から前記通信端末装置の現在位置に向かう第1ベクトルと、前記歩行者優先エリアの外周縁における前記下流側の走行基準線の始点から前記通信端末装置の現在位置に向かう第2ベクトルと、前記上流側の走行基準線の終点から前記下流側の走行基準線の始点に向かう第3ベクトルと、前記下流側の走行基準線の始点から前記上流側の走行基準線の終点に向かう第4ベクトルとを計算し、前記第1ベクトルと前記第3ベクトルとの間の第1判定角と、前記第2ベクトルと前記第4ベクトルとの間の第2判定角とを計算し、前記第1判定角及び前記第2判定角が両方とも90°以下の場合に、前記歩行者優先エリア上に前記歩行者が位置すると判定し、前記第1判定角及び前記第2判定角の少なくとも一方が90°よりも大きい場合に、前記車道の前記歩行者優先エリア以外の部分に前記歩行者が位置すると判定してもよい。
【0011】
前記車道侵入判定装置において、前記判定手段は、前記道路が複数の車道を有する場合、前記複数の車道について前記第1判定角及び前記第2判定角を計算し、前記複数の車道に対する前記第1判定角及び前記第2判定角がすべて90°以下の場合に、前記歩行者が前記歩行者優先エリア上に位置すると判定してもよい。
【0012】
前記車道侵入判定装置において、前記車道の走行基準線の位置情報と前記車道の幅情報とを含む地図情報を記憶する地図情報記憶手段を備えてもよいし、又は、前記車道侵入判定装置において、外部の地図データベース装置から前記車道の走行基準線の位置情報と前記車道の幅情報とを含む地図情報を取得する地図情報取得手段を備えてもよい。
【0013】
前記車道侵入判定装置において、前記判定の結果を前記歩行者に通知する通知手段を備えてもよい。
【0014】
前記車道侵入判定装置は、移動通信網の基地局又は前記基地局とコアネットワークとの間のノード又はコアネットワークの外側に設けられたMEC(Multi-access Edge Computing)装置であってもよいし、又は、移動通信網を介して前記歩行者の通信端末装置と通信可能なサーバであってもよい。
【0015】
本発明の他の態様に係る車両は、前記いずれかの車道侵入判定装置を備える。
【0016】
また、本発明の更に他の態様に係る通信端末装置は、前記いずれかの車道侵入判定装置を備える。
【0017】
また、本発明の更に他の態様に係る通信端末装置は、前記いずれかの車道侵入判定装置により前記車道への侵入が判定される歩行者に所持又は装着される通信端末装置である。この通信端末装置は、当該通信端末装置の現在位置の位置情報を前記車道侵入判定装置に送信する情報送信手段と、前記歩行者が前記車道に侵入しているか否かを判定した判定の結果を前記車道侵入判定装置から受信する判定結果受信手段と、を備える。
【0018】
また、本発明の更に他の態様に係るシステムは、車両が走行する道路の車道への歩行者の侵入を判定するシステムである。このシステムは、前記いずれかの車道侵入判定装置と、前記歩行者の通信端末装置とを備える。
【0019】
前記システムにおいて、前記車道の走行基準線の位置情報と前記車道の幅情報とを含む地図情報を記憶する地図データベース装置を備え、前記車道侵入判定装置は、前記地図データベース装置から、前記車道の走行基準線の位置情報と前記車道の幅情報とを取得してもよい。
【0020】
また、本発明の更に他の態様に係る方法は、車両が走行する道路の車道への歩行者の侵入を判定する方法である。この方法は、前記歩行者に所持又は装着された通信端末装置の現在位置の位置情報を取得することと、前記通信端末装置の現在位置の位置情報と、前記車道の走行基準線の位置情報と、前記車道の幅情報とに基づいて、前記歩行者が前記車道に侵入しているか否かを判定することと、を含む。
【0021】
前記方法において、前記歩行者が前記車道に侵入していると判定した場合、前記通信端末装置の現在位置と、前記道路に設定されている歩行者優先エリアの位置情報とに基づいて、前記歩行者優先エリア上に前記歩行者が位置するか否かを判定することを更に含んでもよい。
【0022】
また、本発明の更に他の態様に係るプログラムは、車両が走行する道路の車道への歩行者の侵入を判定する装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、前記歩行者に所持又は装着された通信端末装置の現在位置の位置情報を取得するためのプログラムコードと、前記通信端末装置の現在位置の位置情報と、前記車道の走行基準線の位置情報と、前記車道の幅情報とに基づいて、前記歩行者が前記車道に侵入しているか否かを判定するためのプログラムコードと、を含む。
【0023】
前記プログラムにおいて、前記歩行者が前記車道に侵入していると判定した場合、前記通信端末装置の現在位置と、前記道路に設定されている歩行者優先エリアの位置情報とに基づいて、前記歩行者優先エリア上に前記歩行者が位置するか否かを判定するためのプログラムコードを更に含んでもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高精細の地図画像を用いることなく、歩行者の車道への侵入を精度よく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係る歩行者危険回避システムの全体構成の一例を示す説明図。
図2】地図情報における道路を構成する車道レーンの走行基準線の一例を示す説明図。
図3】本実施形態に係るMECサーバ(車道侵入判定装置)の主要な機能の一例を示すブロック図。
図4】本実施形態に係る歩行者のUE(通信端末装置)の主要な機能の一例を示すブロック図。
図5】本実施形態に係る車道侵入判定処理の一例を示すフローチャート。
図6図5の車道侵入判定処理に用いる車道侵入判定アルゴリズムの一例を示す説明図。
図7】本実施形態に係る車道侵入判定処理の他の例を示すフローチャート。
図8図7の車道侵入判定処理に用いる車道侵入の例外判定アルゴリズムの一例を示す説明図。
図9図8の例外判定アルゴリズムで用いる判定角の定義の一例を示す説明図。
図10】本実施形態に係る車道侵入判定処理におけるMECサーバ(車道侵入判定装置)と歩行者のUEの処理の一例を示すシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る歩行者危険回避システムの全体構成の一例を示す説明図である。本実施形態の歩行者危険回避システムは、道路90の近くの歩道などを歩いている歩行者20の車道への侵入判定し、車道への侵入時に歩行者20に通知することにより、歩行者の危険回避を行うものである。特に、本実施形態の歩行者危険回避システムは、歩行中死亡者数が最も多い交通違反(横断歩道以外の車道の横断など)による歩行者の交通事故死亡につながる危険の回避に効果がある。
【0027】
なお、本実施形態では、道路を横断する危険回避対象の移動体が高齢者などの歩行者20である場合について説明するが、本発明は、歩行者以外の移動体(例えば、自転車や車椅子)である場合にも適用可能である。歩行者20は、車椅子等の移動補助装置に乗っている者であってもよいし、道路の車道以外の部分で利用可能な自転車等に乗っている者であってもよい。また、本実施形態では歩行者20が1人、車両30が1台又は2台の場合について説明するが、本発明は、歩行者が2人以上の場合にも適用可能であり、車両が3台以上の場合にも適用可能であり、歩行者及び車両の数に制限されない。車両30は、道路90を移動する自動車、トラック、バス、バイクなどであり、本発明は車両の種類に制限されない。
【0028】
図1において、本実施形態の歩行者危険回避システムは、道路90の2車線91.92の車道への歩行者20の侵入を判定する車道侵入判定装置10を備えている。本実施形態の歩行者監視サーバ10は、例えば、移動通信網15の基地局16に設けられ、歩行者20の通信端末装置21との間で基地局16を介して送受信される各種のデータ処理を行うことができるMEC(Multi-access Edge Computing)装置である。車道侵入判定装置(以下「MECサーバ」という。)10は、基地局16と移動通信網15のコアネットワークとの間のノード又はコアネットワークの外側に設けてもよい。
【0029】
基地局16は、一つ又は複数のセル(セクタ、セクタセルとも呼ばれる。)を形成する。セルは地上又は海上に2次元的に形成してもよいし、上空から地上又は海上に向けて3次元的に形成してもよい。セルは、マクロセル、スモールセル、フェムトセル、ピコセル、大セル等であってもよい。複数のセルは、複二次元的に又は三次元的に隣り合うように分布するセルラー構造を構成してもよいし、階層的に一部又は全部が重なり合った階層セル構造を構成してもよい。基地局16は、マクロセル基地局、スモールセル基地局、フェムトセル基地局、ピコセル基地局、大セル基地局、地上等に固定設置された固定基地局、地上、海上、上空などを移動可能な移動型の基地局等であってもよい。基地局16は、eNodeB(evolved Node B:eNB)、gNodeB(gNB)、en-NodeB(en-gNB)、アクセスポイント等と呼ばれる無線通信装置であってもよい。
【0030】
歩行者20の通信端末装置21は、移動通信サービスの加入者として使用可能なスマートフォンなどのユーザ装置(以下「UE」という。)である。歩行者20のUE21は、ユーザ端末、端末、端末装置、移動局、移動機等と呼ばれる無線通信装置であってもよい。歩行者20のUE21は、歩行者20が所持又は装着した状態で使用され、歩行者20といっしょに移動する。
【0031】
歩行者20のUE21は、現在位置情報を取得する機能及び通信機能を有するIoTデバイス、AR(Augmented Reality)デバイス、VR(Virtual Reality)デバイス、MR(Mixed Reality)デバイス又はスマートデバイスであってもよい。また、UE21は、現在位置情報を取得する機能及び通信機能を有する眼鏡型デバイス(例えば、ARグラス、VRグラス、MRグラス、スマートグラス)、時計型デバイス(例えば、スマートウォッチ)などであってもよい。また、UE21は、現在位置情報を取得する機能及び通信機能を有するGNSS(Global Navigation Satellite System)トラッカー、防犯ブザー、歩数計などであってもよい。
【0032】
車両30の通信端末装置31は、歩行者20のUE21との間で近接無線通信可能な機能を有する。通信端末装置31は、移動通信サービスの加入者として使用可能なユーザ装置(UE)としての機能を有してもよい。この場合、車両30の中で利用者が所持又は装着した状態で使用する装置でもよい。また、通信端末装置31は、車両30に組み込んで設置された装置(例えばナビゲーション装置の一部として組み込まれた装置)であってもよい。
【0033】
歩行者20のUE21は、基地局16を介してMECサーバ10と通信可能であり、MECサーバ10に対して歩行情報を定期的に(例えば周期的に)又は不定期に送信する。歩行情報は、歩行者20(UE21)の現在位置を示す位置情報を含む。歩行情報は、歩行者20(UE21)の平均歩行速度(平均移動速度)と、利用者IDとを含んでもよい。歩行者20の平均歩行速度は、例えば、UE21に記録されている移動履歴情報における位置情報の時間変化(移動距離及び移動時間)に基づいて算出することができる。ここで、歩行者20(UE21)の「速度」は、歩行者20(UE21)の移動の方向と速さ(=速度の絶対値、大きさ)で表されるベクトル量である。
【0034】
歩行者20(UE21)の現在位置を示す位置情報は、例えば、UE21に設けたGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機の出力(測位結果)に基づいて算出することができる。また、UE21は、GNSS受信機、ジャイロスコープ、加速度センサ、速度センサ及び磁気センサの少なくとも一つを備え、その出力に基づいて、歩行者20のGNSS受信機による現在位置の測定精度が低い場合でも歩行者20の移動経路を算出して歩行者20の現在位置を精度よく推定したり、歩行者20の姿勢や向いている方位を推定したりしてもよい。この推定結果は、MECサーバ10に送信する歩行情報に含めてもよい。
【0035】
歩行者20のUE21からMECサーバ10への歩行情報の送信頻度は、歩行者20の危険性の程度に応じて変化させてもよい。例えば、歩行者20と車両30と衝突の危険性が低い平時においては歩行情報の送信頻度の低めに設定し、車両30が歩行者20と衝突する危険性が高い危険エリアに入った準危険時又は衝突する危険性がより高い危険時にときに、歩行情報の送信頻度を平時よりも高めに設定してもよい。
【0036】
また、歩行者危険回避システムは、道路90の位置、形状、幅W、車線91,92、信号設置位置、横断歩道の位置中央分離帯の有無、路側のガードレールの有無などの道路に関する情報を含む地図情報を管理する地図情報データベース(DB)装置としての地図サーバ11を備えている。図1の例では、地図サーバ11は移動通信網15に設けているが、基地局16に設けられたMEC装置、又は基地局16と移動通信網15のコアネットワークとの間のノードに設けられたMEC装置で構成してもよい。また、地図サーバ11はMECサーバ10と一体構成してもよい。
【0037】
図2は、地図サーバ11で管理されている地図情報における道路を構成する車道レーンの走行基準線の一例を示す説明図である。地図情報における道路90の車道は、例えば、車線91,92毎に複数の直線車道部分に分割された車道レーン(Lane)で管理される。地図サーバ11は、これらの複数の車道レーンのそれぞれについて、車道レーンの中心を通る線又は走行時の目安となる軌跡である走行基準線(「走行目安線(Lane Line)」とも呼ばれる)901~904の始点901s~904s及び終点901e~904eの座標のデータと、各車道レーンの幅L1~L4のデータが格納されている。また、カーブなど曲線の道路を表現するために、走行基準線は、その始点と終点の間に複数の点を持ってもよく、複数の線分で一つの走行基準線が構成されてもよい。
【0038】
図2の例は、交差点93の間の左右方向に延在する車道レーンの途中に歩行者優先エリアとしての横断歩道94が位置するため、当該車道レーンの各車線91,92の車道の走行基準線が、横断歩道94により車両走行方向における上流側の走行基準線901,904と下流側の走行基準線903、902とにより構成されている。走行基準線901,904の始点901s,904sは交差点93の外周縁との交点であり、終点901e,904eが横断歩道94の外周縁との交点である。また、走行基準線902,903の始点902s,903sが交差点エリア93の外周縁との交点であり、終点902e,903eが横断歩道94の外周縁との交点である。
【0039】
図3は、本実施形態に係るMECサーバ10の主要な機能の一例を示すブロック図である。図3において、MECサーバ10は、情報取得手段としての位置情報取得部101と、情報記憶部(DB:データベース)102と、判定手段としての車道侵入判定部103と、通知手段としての判定結果通知部104と、地図情報取得部105とを備える。MECサーバ10は。NW-RTK測位コアシステム(「クラウドRTKシステム」又は「サーバRTK」ともいう。)と間で通信してNW-RTK測位コアシステムと連携するように構成してもよい。
【0040】
ここで、RTK(リアルタイムキネマティック)測位法は、既知の位置に配置された基準局(固定局)を用いて、GNSS(全地球航法衛星システム)の人工衛星から電波を受信し、測位対象の位置測定をリアルタイムに行う測位法である。このRTK測位法では、例えば、人工衛星から電波を受信した基準局の搬送波観測データと、人工衛星から電波を受信した測位対象の搬送波観測データと、予め初期化処理により決定された測位補正情報とに基づいて、測位対象の高精度位置座標を計算する。NW-RTK測位コアシステム(クラウドRTKシステム)は、測位対象(例えば、UE等の端末装置)からアクセス可能なネットワーク上に設けられたサーバが、測位対象から搬送波観測データ(生データ)を受信し、RTK法によって測位対象の高精度位置座標を計算するシステムである。NW-RTK測位コアシステムによれば、RTK法によって高精度位置情報を計算する高精度測位手段をUE等の端末装置側が備えていなくても、UE等の端末装置が自身の現在位置のセンチメートルオーダーの高精度位置情報を取得することができる。
【0041】
位置情報取得部101は、歩行者20に所持又は装着されたUE21の現在位置の位置情報を含む歩行情報を、基地局16を介してUE21から受信して取得する。位置情報取得部101は、NW-RTK測位システム(クラウドRTKシステム)に当該位置情報を渡して、センチメートル級の位置情報演算結果を受信してもよい。
【0042】
情報記憶部102は、複数の歩行者20のUE21から受信した位置情報を、歩行者の識別情報であるユーザIDと対応付けて記憶する。情報記憶部102は、地図サーバ11から受信した監視対象エリアの地図情報(各車道レーンの走行基準線の始点及び終点の座標のデータ並びに各車道レーンの幅のデータ)を記憶する。
【0043】
なお、監視対象エリアの地図情報(各車道レーンの走行基準線の始点及び終点の座標のデータ並びに各車道レーンの幅のデータ)は、地図サーバ11から取得しないで、情報記憶部102に予め記憶しておいてもよい。
【0044】
車道侵入判定部103は、歩行者20のUE21の現在位置の位置情報と、歩行者20の近くに位置する車道の走行基準線の位置情報と、その車道の幅情報とに基づいて、歩行者20が車道に侵入しているか否かを判定する。
【0045】
判定結果通知部104は、車道侵入判定部103で判定した判定結果の情報を、基地局16を介してUE21に送信して通知する。
【0046】
地図情報取得部105は、歩行者20のUE21から受信した位置情報に基づいて、当該歩行者20の近くに位置する道路90の車道レーンの走行基準線の始点及び終点の座標のデータ並びに各車道レーンの幅のデータを含む地図情報を、地図サーバ11から取得する。
【0047】
図4は、本実施形態に係る歩行者20のUE21の主要な機能の一例を示すブロック図である。歩行者20のUE21は、位置情報取得手段としての位置情報測定部201と、情報記憶部202と、情報送信手段としての位置情報送信部203と、判定結果受信手段としての判定結果受信部204と、判定結果出力部205とを備える。
【0048】
位置情報測定部201は、歩行者20のUE21の現在位置の情報を取得する。位置情報測定部201は、例えば、UE21に設けられたGNSS受信機、ジャイロスコープ、加速度センサ、速度センサ及び磁気センサの少なくとも一つの出力の情報に基づいて、UE21の現在位置(緯度、経度及び高度)の情報を算出する。UE21の現在位置は、数センチの精度を有するセンチメートル級の位置情報であってもよい。センチメートル級の位置情報は、例えば、NW-RTK測位コアシステム(クラウドRTKシステム)と連携して取得してもよい。
【0049】
情報記憶部202は、位置情報測定部201で測定した歩行者20のUE21の現在位置の情報を記憶する。また、情報記憶部202は、MECサーバ10から受信した車道侵入判定の判定結果を記憶する。
【0050】
位置情報送信部203は、歩行者20のUE21の現在位置を含む歩行情報を、基地局16を介してMECサーバ10に送信する。歩行情報は、歩行者20のUE21の移動速度、移動履歴情報、利用者識別情報(利用者ID)などを含んでもよい。
【0051】
判定結果受信部204は、MECサーバ10で判定された車道侵入判定の判定結果を、基地局16を介してMECサーバ10から受信する。
【0052】
判定結果出力部205は、MECサーバ10から受信した車道侵入判定の判定結果を画像情報又は音声などの音情報として出力し、歩行者20に通知する。判定結果出力部205は、歩車間通信(例えば、Sidelink(PC-5)などの近距離無線通信)により、車道侵入判定の判定結果を、歩行者20の近くの車道を走行している周辺の車両30に送信する機能を有してもよい。
【0053】
図5は、本実施形態に係る車道侵入判定処理の一例を示すフローチャートである。図6は、図5の車道侵入判定処理に用いる車道侵入判定アルゴリズムの一例を示す説明図である。
図5において、まず、MECサーバ10は、対象の歩行者20のUE21の現在位置の位置情報を取得する(S101)。ここで、取得したUE21の現在位置の位置情報がGNSS位置情報などのように地理上の位置情報(緯度、経度、高度)の場合は、地図上に設定した所定の基準位置を原点とした直交座標系における位置情報(x,y,z)に変換する。
【0054】
次に、MECサーバ10は、取得したUE21の位置情報と、歩行者の20に近くに位置する車道レーンの走行基準線の位置情報(始点及び終点の座標)とに基づいて、歩行者20のUE21から当該車道レーンの走行基準線までの最小距離Dを算出する(S102)。歩行者20近くに複数の車道レーンが位置している場合は、車道レーン毎に最小距離Dを算出する。
【0055】
例えば、図6に示すように歩行者20の近くに複数の車線91,92,・・・の車道レーン1,2,・・・,nが位置している場合、次式(1)に示すように、歩行者20のUE21の位置P0(xped,yped)から、各車道レーンの走行基準線901,902,・・・における最近接点P1(xh1,yh1),P2(xh2,yh2),・・・までの距離を、最小距離D,D,・・・,Dとして算出する。
【0056】
【数1】
【0057】
次に、上記算出した車道レーンの走行基準線までの最小距離Dについて条件式1(論理式)の判定を行う(S103)。例えば、当該車道レーンの幅Lの1/2以上か否かを判断する。図6に示すように歩行者20の近くに複数の車線91,92,・・・の車道レーン1,2,・・・,nが位置している場合、次式(2)の論理式を満たすかどうかを判定する。式(2)中のL(xh1,yh1),L(xh2,yh2),・・・,L(xhn,yhn)、は、各車道レーン1,2,・・・,nの幅である。
【0058】
【数2】
【0059】
次に、MECサーバ10は、複数の車線91,92,・・・の車道レーン1,2,・・・,nのそれぞれの最小距離Dについて上記式(2)の論理式に示す条件式を満たす場合(S103でYES)、すなわち、複数の車線91,92,・・・の車道レーン1,2,・・・,nのいずれかについて最小距離Dが車道レーンの幅Lの1/2未満の場合に、歩行者20が車道に侵入していると判断する(S104)。また,それぞれの最小距離Dの中で最小のD値となった車道レーン番号が,歩行者が車道に侵入したレーンと判断する.一方、上記式(2)の論理式に示す条件式1を満たさない場合(S103でNO)、すなわち、複数の車線91,92,・・・の車道レーン1,2,・・・,nのすべてについて最小距離Dが車道レーンの幅Lの1/2以上の場合に、歩行者20は車道に侵入していないと判断する(S105)。
【0060】
なお、上記条件式1(論理式)の判定において、最小距離Dが車道レーンの幅Lの1/2よりも大きいか否かを判断してもよい。
【0061】
図5及び図6に示す車道侵入判定アルゴリズムを用いて判定することにより、道路の車道と歩道との境界の座標を含む高精度の地図情報を用いることなく、歩行者の車道への侵入を精度よく判定することができる。
【0062】
図7は、本実施形態に係る車道侵入判定処理の他の例を示すフローチャートである。図8は、図7の車道侵入判定処理に用いる車道侵入判定アルゴリズムの一例を示す説明図である。図9は、図8の例外判定アルゴリズムで用いる判定角θの定義の一例を示す説明図である。なお、図7のS201~S203、S204の処理については、図5のS101~S103,S105の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0063】
図7において、MECサーバ10は、上記式(2)の論理式に示す条件式を満たさない場合(S203でNO)、歩行者20は車道に侵入していないと判断する(S204)。
【0064】
一方、上記式(2)の論理式に示す条件式を満たす場合(S203でYES)、MECサーバ10は、車道に設定された横断歩道内に歩行者20が位置するか否かを判断する(S205~S208)。
【0065】
まず、MECサーバ10は、歩行者(UE)の位置情報と、横断歩道74の外周縁におけるレーンの始点及び終点の座標から、次のように所定の判定角θを算出する(S204)。
【0066】
例えば、図8及び図9に示すように歩行者20の近くに複数の車線91,92,・・・の車道レーン1,2が位置している場合は、次の複数のベクトルrp1、rp3、r31、r13。p2、rp4、r42、r24が算出される。
【0067】
第1ベクトルrp1:横断歩道94の外周縁における走行基準線901の終点901eからUE21の現在位置Pに向かうベクトル
第2ベクトルrp3:横断歩道94の外周縁における走行基準線903の始点903sからUE21の現在位置P0に向かうベクトル
第3ベクトルr31:走行基準線901の終点901eから走行基準線903の始点903sに向かうベクトル
第4ベクトルr13:走行基準線903の始点903sから走行基準線901の終点901eに向かうベクトル
第5ベクトルrp2:横断歩道94の外周縁における走行基準線902の始点902sからUE21の現在位置P0に向かうベクトル
第6ベクトルrp4:横断歩道94の外周縁における走行基準線904の終点904eからUE21の現在位置P0に向かうベクトル
第7ベクトルr42:走行基準線902の始点902sから走行基準線904の終点904eに向かうベクトル
第8ベクトルr24:走行基準線904の終点904eから走行基準線902の始点902sに向かうベクトル
【0068】
そして、上記複数のベクトルrp1、rp3、r31、r13、rp2、rp4、r42、r24に基づいて、下記の式(3)に示すように、複数の判定角θp3、θp1、θp4、θp2,・・・が算出される(図9参照)。
判定角θp3:第1ベクトルrp1と第3ベクトルr31との間の角度
判定角θp1:第2ベクトルrp3と第4ベクトルr13との間の角度
判定角θp4:第5ベクトルrp2と第7ベクトルr42との間の角度
判定角θp2:第6ベクトルrp4と第8ベクトルr24との間の角度
【0069】
【数3】
【0070】
次に、MECサーバ10は、上記算出した複数の判定角θp3、θp1、θp4、θp2,・・・についての次式(4)の条件式2(論理式)の判定を行う(S206)。
【0071】
【数4】
【0072】
MECサーバ10は、上記式(4)の論理式に示す条件式2を満たす場合(S206でYES)に、歩行者20が横断歩道94の外側の車道に侵入していると判断し(S207)、上記式(4)の論理式に示す条件式2を満たさない場合(S206でNO)に、歩行者20は横断歩道内に位置しているので、車道に侵入していないと判断する(S208)。
【0073】
なお、上記条件式2(論理式)の判定において、判定角θが90°未満か否かを判断してもよい。
【0074】
図7図9に示す車道侵入判定アルゴリズムを用いて判定することにより、道路の車道と歩道との境界の座標を含む高精度の地図情報を用いることなく、横断歩道の位置も考慮して歩行者の車道への侵入を精度よく判定することができる。
【0075】
なお、歩行者20のUE21が横断歩道に位置しているか否かは、UE21の現在位置の位置情報と、横断歩道94の中央を通る歩行基準線の両端の位置情報と、横断歩道94の幅情報とに基づいて判断してもよい。
【0076】
また、歩行者20のUE21が横断歩道に位置しているか否かは、UE21の現在位置の位置情報と、横断歩道94の外縁の四隅の位置情報とに基づいて判断してもよい。
【0077】
図10は、本実施形態に係る車道侵入判定処理におけるMECサーバ10と歩行者20のUE21の処理の一例を示すシーケンス図である。
図10において、まず、歩行者20がUE21を操作して車道侵入監視アプリケーション(例えば、高齢者に特化したアプリケーション)を起動すると(S301)、MECサーバ10は、歩行者20のUE21から基地局16を介して、UE21の現在位置P0の位置情報を含む歩行情報を受信する(S302)。歩行情報は、歩行者20のUE21の移動速度(方向と大きさ)を含んでもよい。また、歩行情報は、起動したアプリケーション情報と歩行者20の加入者情報としての利用者識別情報(利用者ID)を含んでもよい。
【0078】
MECサーバ10は、歩行者20のUE21から受信した位置情報に基づいて地図サーバ11にアクセスし、歩行者20の近くに位置する道路の車道レーンの始点及び終点の位置情報と車道幅の情報とを含むレーン情報を参照し(S303)、当該レーン情報を地図サーバ11から受信する。
【0079】
次に、MECサーバ10は、前述の図5図9に例示したように、UE21から受信した現在位置P0の位置情報と、地図サーバ11から受信したレーン情報とに基づいて、歩行者20が車道に侵入したか否かを判定し(S305)、判定結果(車道侵入有無)を歩行者のUE21に送信する(S306)。判定結果は、歩行者が侵入した車道の属性情報(例えば、侵入した車道レーン番号や当該車道の用途)を含んでもよい。また、判定結果は、条件式2を満たさなかった場合、横断歩道内に位置している情報(S208)を含んでもよい。
【0080】
次に、MECサーバ10から受信した判定結果が、歩行者の車道への侵入ありの結果であった場合、歩行者20のUE21は、判定結果を出力して歩行者20に通知する(S307)。判定結果の出力は、UE21のディスプレイへのメッセージの画像表示によって行ってもよいし、音声又はアラーム音(鳴動)などの音出力によって行ってもよい。出力するメッセージは、UE21内に予め記憶しておいたメッセージでもよいし、MECサーバ10から受信したメッセージでもよい。
【0081】
また、歩行者20のUE21は、歩者間通信(例えば、Sidelink(PC-5)などの近距離無線通信)により、MECサーバ10から受信した判定結果を、歩行者の近くに存在する走行中又は停車中の近傍車両に送信して通知する(S308)。
【0082】
なお、上記第三者及びへの判定結果の通知は、歩行者20のUE21を介さずに、MECサーバ10から直接送信して行ってもよい。
【0083】
以上、本実施形態によれば、高精細の地図画像を用いることなく、歩行者20の車道への侵入を精度よく判定することができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、MECサーバ(車道侵入判定装置)10は、移動通信網15の基地局16又は基地局16とコアネットワークとの間のノード又はコアネットワークの外側に設けられたMEC装置であり、基地局16に接続されている複数の歩行者20のUE21について車道侵入判定に関する処理を分散処理することができるので、移動通信網(コアネットワーク)15の負荷増大を抑制することができる。
【0085】
なお、本実施形態において、MECサーバ(車道侵入判定装置)10は、移動通信網15を介して複数の歩行者(移動体)20のUE(通信端末装置)21と通信可能なサーバであってもよい。この場合は、複数の歩行者について衝突危険の通知を集中管理することができる。
【0086】
また、本実施形態において、MECサーバ(車道侵入判定装置)10の全体の機能又は一部の機能は、歩行者(移動体)20のUE(通信端末装置)、車両30又はその車両のUE(通信端末装置)31に設けてもよい。
【0087】
また、本実施形態において、MECサーバ(車道侵入判定装置)10は、歩行者20のUE21の現在位置P0の位置情報と、横断歩道などの歩行者優先エリアの中央を通る歩行基準線の両端の位置情報と、歩行者優先エリアの幅情報とに基づいて、歩行者優先エリア上に歩行者20が位置するか否かを判定してもよい。また、MECサーバ(車道侵入判定装置)10は、歩行者20のUE21の現在位置P0の位置情報と、歩行者優先エリアの外縁の四隅の位置情報とに基づいて、歩行者優先エリア上に歩行者が位置するか否かを判定してもよい。
【0088】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに車道侵入判定装置、サーバ、地図データベース装置及びシステムの構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0089】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、eNode B、端末、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0090】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0091】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0092】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0093】
10 :MECサーバ(車道侵入判定装置)
11 :地図サーバ
15 :移動通信網
16 :基地局
20 :歩行者
21 :UE(通信端末装置)
30 :車両
31 :UE(通信端末装置)
90 :道路
91 :車線(車道レーン)
92 :車線(車道レーン)
93 :横断歩道
901 :走行基準線
902 :走行基準線
903 :走行基準線
904 :走行基準線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10