(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049601
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】農作穀物刈取補助機構及び農作穀物刈取補助機構を備えたコンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 57/10 20060101AFI20220322BHJP
【FI】
A01D57/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155884
(22)【出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】599099537
【氏名又は名称】株式会社メリット情報内藤
(74)【代理人】
【識別番号】110001405
【氏名又は名称】特許業務法人篠原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100065824
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100104983
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 雅之
(74)【代理人】
【識別番号】100166394
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和弘
(72)【発明者】
【氏名】橘井 徳宏
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 孝志
【テーマコード(参考)】
2B081
【Fターム(参考)】
2B081AA03
2B081BB11
2B081CC13
2B081DA11
2B081EB02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】倒伏農作穀物を起立収穫可能とし、豆類を刈り取る際の豆や莢の落下による収穫量ロスを改善し、刈り取った農作穀物をより確実にプラットフォーム内後方に送り込み、収穫量ロスを極めて低減可能な農作穀物刈取補助機構を提供する。
【解決手段】遠心型送風装置3と送風用配管4と第1の空気噴出部材5と複数個の第2の空気噴出部材6とを備え、第1の空気噴出部材は、刈刃領域の幅方向に分割された領域をカバーするスリット状の第1の噴出孔を有し、第2の空気噴出部材は、刈刃領域の幅方向に分割された領域をカバーするスリット状の孔部が形成され、孔部が形成された領域の両端が狭く開口した第2の噴出孔を有し、第1の噴出孔から、刈刃の上方10~100cmの高さ位置に向けて空気を噴出させ、同時に、第2の噴出孔から、刈刃の上方0~数cmの高さ位置に向けて空気を噴出させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部と、前記走行部により走行させられながら農作穀物を刈り取る刈取部を装備し、前記刈取部が、プラットフォームの前側下縁部に農作穀物を刈り取る刈刃を備えた、コンバインに設けられた、前記刈取部による農作穀物の刈り取りを補助するコンバインの刈取補助機構であって、
前記コンバインに備わる所定の回転駆動軸と接続する軸部材と、
前記軸部材の回転により駆動する遠心型送風装置と、
前記遠心型送風装置の排出口と接続する主配管及び該主配管から夫々複数個分岐した、第1及び第2の分岐管を有する送風用配管と、
複数個の前記第1の分岐管からの空気を刈刃側に向けて噴出させる第1の空気噴出部材と、
個々の前記第2の分岐管からの空気を刈刃側に向けて噴出させる複数個の第2の空気噴出部材と、
を備え、
前記第1の空気噴出部材は、刈刃側に、前記プラットフォームの前側下端部における前記刈刃が設けられている領域の幅方向に前記第1の分岐管の個数に応じて分割された一部の分割領域をカバーする長さのスリット状の第1の噴出孔を有するとともに、上部又は前記刈刃とは反対側の所定部位に、複数個の前記第1の分岐管の排出口と接続する複数個の第1の分岐管接続部を有し、前記刈刃の前方且つ該刈刃の上方10~100cmの所定の高さ位置において、前記第1の噴出孔が、前記プラットフォームの前側下端部における前記刈刃が設けられている領域の幅方向の辺に対して平行な向きとなって配設された第1の管状部材からなり、
個々の前記第2の空気噴出部材は、刈刃側に、前記刈刃が設けられている領域の幅方向に前記第2の分岐管の個数に応じて分割された一部の分割領域をカバーする長さのスリット状の孔部が形成され、該孔部が形成されている領域の両端が開口した第2の噴出孔を有するとともに、管幅が前記第2の噴出孔側に向けて広がるように、側面にテーパを有し、且つ、該第2の噴出孔における該孔部が形成されている領域の両端の開口が狭く形成された、噴出部と、該噴出部の下方位置で、第2の管状部材を間に挟んで個々の前記第2の分岐管の排出口と接続する第2の分岐管接続部とを有するとともに、前記刈刃とは反対側の所定部位に、前記第2の分岐管接続部と前記噴出部とに連通する連通部を有し、前記第1の空気噴出部材と前記刈刃との間且つ前記刈刃近傍の高さ位置において、スリット状の第2の噴出孔が、前記刈刃が設けられている領域の幅方向に対して平行な向きとなって配設されてなり、
前記噴出部の両端の開口近傍には、刈刃側に向かって傾斜した噴出空気ガイド板が設けられ、
前記第1の噴出孔から前記刈刃の上方10~100cmの所定範囲で傾き及び高さ位置を自在に変えて空気を噴出させると同時に、複数個の前記第2の噴出孔から前記刈刃の上方0~数cmの所定範囲の高さ位置に向けて、空気を噴出させるようにしたことを特徴とする農作穀物刈取補助機構。
【請求項2】
前記噴出部は、隣り合う夫々の前記噴出部の前記第2の噴出孔から噴出した空気が、前記刈刃の先端位置において交差するように配設されていることを特徴とする請求項1に記載の農作穀物刈取補助機構。
【請求項3】
前記第1の空気噴出部材は、前記刈取部の両側部に設けられた第1の空気噴出部材支持部材に、前記刈刃の上方10~100cmの所定範囲で傾き及び高さを調節自在に支持され、
前記第2の管状部材は、前記第2の分岐管に対応して前記プラットフォームの下側面に固定され、その一端で個々の前記第2の分岐管の排出口と接続するとともに、他端で前記第2の分岐管接続部と接続し、
個々の前記第2の空気噴出部材は、前記第2の管状部材に支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の農作穀物刈取補助機構。
【請求項4】
更に、個々の前記第2の空気噴出部材には、前記第2の空気噴出部材の前方且つ刈刃よりも下方の位置から刈刃側に向かって上向きに傾斜した部位を有し、且つ、刈刃側の一部の部位が前記第2の空気噴出部材の前記噴出部の上方に位置する起立部材が備えられていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の農作穀物刈取補助機構。
【請求項5】
前記起立部材は、一端が前記第2の分岐管接続部に固定され、該第2の空気噴出部材の前方に延びた板状の支持部と、該板状の支持部の他端と接続し、刈刃よりも下方の位置から刈刃側に向かって上向きに傾斜し、断面が湾曲した板状の起立部と、を有してなり、
前記板状の起立部における刈刃側の端部が前記第2の空気噴出部材の前記噴出部の上方に位置することを特徴とする請求項4に記載の農作穀物刈取補助機構。
【請求項6】
前記起立部材は、一端が前記第2の分岐管接続部に固定され、該第2の空気噴出部材の前方に延びた板状の支持部と、該板状の支持部と接続し、刈刃よりも下方の位置から刈刃側に向かって上向きに傾斜した部位を有し、断面がU字状に湾曲し、刈刃側の端部が前記噴出部を覆う大きさを有して広がった半円錐状の起立部と、を有してなり、
前記半円錐状の起立部における刈刃側の端部の一部が、前記第2の空気噴出部材の前記噴出部の上方に位置することを特徴とする請求項4に記載の農作穀物刈取補助機構。
【請求項7】
走行部と、前記走行部により走行させられながら農作穀物を刈り取る刈取部を装備し、前記刈取部が、プラットフォームの前側下縁部に設けられた、農作穀物を刈り取る刈刃を備えた、コンバインにおいて、
前記コンバインに備わる所定の回転駆動軸と接続する軸部材と、
前記軸部材の回転により駆動する遠心型送風装置と、
前記遠心型送風装置の排出口と接続する主配管及び該主配管から夫々複数個分岐した、第1及び第2の分岐管を有する送風用配管と、
複数個の前記第1の分岐管からの空気を刈刃側に向けて噴出させる第1の空気噴出部材と、
個々の前記第2の分岐管からの空気を刈刃側に向けて噴出させる複数個の第2の空気噴出部材と、
を備え、
前記第1の空気噴出部材は、刈刃側に、前記プラットフォームの前側下端部における前記刈刃が設けられている領域の幅方向に前記第1の分岐管の個数に応じて分割された一部の分割領域をカバーする長さのスリット状の第1の噴出孔を有するとともに、上部又は前記刈刃とは反対側の所定部位に、複数個の前記第1の分岐管の排出口と接続する複数個の第1の分岐管接続部を有し、前記刈刃の前方且つ該刈刃の上方10~100cmの所定の高さ位置において、前記第1の噴出孔が、前記プラットフォームの前側下端部における前記刈刃が設けられている領域の幅方向の辺に対して平行な向きとなって配設された第1の管状部材からなり、
個々の前記第2の空気噴出部材は、刈刃側に、前記刈刃が設けられている領域の幅方向に前記第2の分岐管の個数に応じて分割された一部の分割領域をカバーする長さのスリット状の孔部が形成され、該孔部が形成されている領域の両端が開口した第2の噴出孔を有し、管幅が前記第2の噴出孔側に向けて広がるように、側面にテーパを有し、且つ、該第2の噴出孔における該孔部が形成されている領域の両端の開口が狭く形成された、噴出部と、該噴出部の下方位置で、第2の管状部材を間に挟んで個々の前記第2の分岐管の排出口と接続する第2の分岐管接続部とを有するとともに、前記刈刃とは反対側の所定部位に、前記第2の分岐管接続部と前記噴出部とに連通する連通部を有し、前記第1の空気噴出部材と前記刈刃との間且つ前記刈刃近傍の高さ位置において、スリット状の第2の噴出孔が、前記刈刃が設けられている領域の幅方向に対して平行な向きとなって配設されてなり、
前記噴出部の両端の開口近傍には、刈刃側に向かって傾斜した噴出空気ガイド板が設けられ、
前記第1の噴出孔から前記刈刃の上方10~100cmの所定範囲で傾き及び高さ位置を自在に変えて空気を噴出させると同時に、複数個の前記第2の噴出孔から前記刈刃の上方0~数cmの所定範囲の高さ位置に向けて、空気を噴出させるようにしたことを特徴とする農作穀物刈取補助機構を備えたコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作穀物を刈り取る刈取部を装備し、刈取部がプラットフォームの前側下縁部に刈刃を備えた、大型コンバインの刈取部による農作穀物の刈り取りを補助するための農作穀物刈取補助機構及び農作穀物刈取補助機構を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大型コンバインには、例えば、
図7、
図8に示すように、本体を走行させる走行部10と、農作穀物を刈り取る刈取部20と、刈り取った農作穀物を搬送するコンベア31を備えた搬送部30と、搬送された農作穀物を脱穀する脱穀部40と、脱穀された穀粒を選別する選別部50と、脱穀部40により排出された排藁を細断する排藁処理部60を備えたものがある。
【0003】
このタイプのコンバインの刈取部20は、例えば、
図9、
図10に示すように、プラットフォーム21と、農作穀物を刈り取る刈刃22と、農作穀物を刈刃22側へ掻き込む掻き込みリール23と、刈刃22で刈り取られた農作穀物を搬送部30に送り込む横送りオーガ24を備えている。
刈刃22は、左右方向にわたって延びたバリカン状の刃で構成され、プラットフォーム21の前側下縁部に設けられている。
掻き込みリール23は、一対のリール支持アーム23aと、リール支持アーム23aの先端部間に設けたリール支軸23bと、リール支軸23bの左右端部に放射方向に延びたリール形成アーム23cと、リール形成アーム23cを連結する連結片23dと、リール形成アーム23cの先端部間に架設されたタインバー23eと、タインバー23eに所定間隔をあけて吊るされたタイン23fと、リール支軸23bを回転駆動する回転駆動手段(符号省略)と、上下前後に位置を調節可能な位置調節手段(符号省略)を有して構成されている。そして、掻き込みリール23は、プラットフォーム21の上方で農作穀物を刈刃22側へ掻き込むことができるように配置されている。
横送りオーガ24は、円筒状部材24aの外周に、一対の螺旋状部材24bを左右対称に備えるとともに、掻き込みフィンガ24cを放射方向に備え、回転駆動手段(符号省略)により回転することで、刈刃22により刈り取られた農作穀物を搬送部30が設けられている部位に横送りするように構成されている。
その他、プラットフォーム21の前側の両側端部には、圃場における刈取範囲の農作穀物を分草する分草部材25が取り付けられている。
【0004】
そして、このタイプのコンバインは、農作穀物の収穫作業を行う際には、走行部10を介して走行しながら、刈取範囲の農作穀物を分草部材25で分草し、分草部材25で分草された刈取範囲内の農作穀物を回転する掻き込みリール23により刈刃22側へ掻き込み、掻き込んだ農作穀物の茎の根元を刈刃22で刈り取る。刈り取った農作穀物を、回転する一対の横送りオーガ24が搬送部30の設けられている部位に横送りし、横送りされた農作穀物を、搬送部30のコンベア31が脱穀部40に搬送し、脱穀された穀粒を選別部50が選別するとともに、脱穀部40により排出された排藁を排藁処理部60が細断して外部に排出する。
このようなコンバインは、次の特許文献1、2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-1171851号公報
【特許文献2】特開2009-1171917号公報
【特許文献3】特開2012-143199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、台風により、稲、麦、大豆、小豆等の農作穀物が倒伏する被害が多くなっている。
農作穀物が倒伏すると、特許文献1、2に記載されているコンバインでは、農作穀物の先端部が刈刃の下方を通過してしまい易くなり、農作穀物の茎の根元を刈刃で刈り取ることが難しくなる。
【0007】
コンバインにおいて、倒伏状態の農作穀物を引き起こすための技術として、例えば、刈取部の前面側に、チェーンを介して上下方向に周回する複数のタイン爪を有する引き起しケースを左右一対の組で備える引き起し装置が、特許文献3に提案されている。
【0008】
この引き起し装置は、例えば、
図11(a)、
図11(b)に示すように、少なくとも左右一対の引き起しケース72c1を有している。なお、
図11中、71は走行部、72bは刈刃である。
引き起しケース72c1は、刈取部72の前方、且つ、分草部材72dの後側に、刈取部72のフレーム72aに取り付けられた、分草部材72dを支持する取付金具(符号省略)に支持されて、上方を向いて斜めに傾斜した状態で立設配置されている。
引き起しケース72c1は、チェーン72c3と、タイン爪72c4を備えている。
チェーン72c3は、スプロケット72c2を介して懸け回されている。
タイン爪72c4は、チェーン72c3に一定間隙で多数取り付けられており、チェーン72c3の回転により上下方向に周回するように構成されている。
そして、
図11の引き起し装置では、一対の分草部材72dを介して分草された刈取範囲内における倒伏した状態の農作穀物を、一対の引き起しケース72c1において回転するタイン爪72c4で引き起こして、梳き上げた状態とし、刈刃72bにより茎の根元を切断することができるようにしている。
【0009】
しかし、特許文献1、2に記載されているような大型コンバインにおいて、分草部材で分草された刈取範囲における倒伏した農作穀物を引き起こすために、特許文献3に記載の引き起し装置のような複数のタイン爪を回転駆動させる構成を備えるようにする場合、広範囲に及ぶ刈取範囲に対応できるように、そのような構成の引き起し装置が多数必要となるが、部品点数が多く動力を必要とする装置を多数設けたのでは、装置が大掛かりなものとなる上、コスト高となってしまう。
【0010】
このような問題を鑑み、本件発明者らは、試行錯誤の末に、農作穀物を刈り取る刈取部を装備し、刈取部がプラットフォームの前側下縁部に刈刃を備えた、大型コンバインにおいて、コストを格段に抑え、倒伏した農作穀物を起立させて収穫可能にする倒伏農作穀物起立ユニットを導出した。
【0011】
また、本件発明者らは、上記倒伏農作穀物起立ユニットを用いた農作穀物の刈り取りについての試行錯誤を繰り返す過程において、上記倒伏農作穀物起立ユニットには、大豆や小豆等の豆類を刈り取る際の豆や莢の落下により収穫量がロスするという問題に関し改善の余地があることが判明した。
【0012】
更に、本件発明者らは、上記倒伏農作穀物起立ユニットにおける、大豆や小豆等の豆類を刈り取る際の豆や莢の落下による収穫量のロスの改善についての検討及び試行錯誤を繰り返す過程において、倒伏した農作穀物を起立させて刈刃で刈り取った後や、起立状態の農作穀物を刈刃で刈り取った後に、刈り取った農作穀物をより確実にプラットフォーム内後方の横送りオーガに送り込むために改善の余地があることが判明した。
【0013】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、農作穀物を刈り取る刈取部を装備し、刈取部がプラットフォームの前側下縁部に刈刃を備えた大型コンバインにおいて、倒伏した農作穀物を起立させて収穫可能にするとともに、大豆や小豆等の豆類を刈り取る際の豆や莢の落下による収穫量のロスを改善することに加えて、更に、農作穀物を刈刃で刈り取った後に、刈り取った農作穀物をより確実にプラットフォーム内後方の横送りオーガに送り込み、収穫量のロスを極めて低減することの可能な農作穀物刈取補助機構及び農作穀物刈取補助機構を備えたコンバインを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明による農作穀物刈取補助機構は、走行部と、前記走行部により走行させられながら農作穀物を刈り取る刈取部を装備し、前記刈取部が、プラットフォームの前側下縁部に農作穀物を刈り取る刈刃を備えた、コンバインに設けられた、前記刈取部による農作穀物の刈り取りを補助するコンバインの刈取補助機構であって、前記コンバインに備わる所定の回転駆動軸と接続する軸部材と、前記軸部材の回転により駆動する遠心型送風装置と、前記遠心型送風装置の排出口と接続する主配管及び該主配管から夫々複数個分岐した、第1及び第2の分岐管を有する送風用配管と、複数個の前記第1の分岐管からの空気を刈刃側に向けて噴出させる第1の空気噴出部材と、個々の前記第2の分岐管からの空気を刈刃側に向けて噴出させる複数個の第2の空気噴出部材と、を備え、前記第1の空気噴出部材は、刈刃側に、前記プラットフォームの前側下端部における前記刈刃が設けられている領域の幅方向に前記第1の分岐管の個数に応じて分割された一部の分割領域をカバーする長さのスリット状の第1の噴出孔を有するとともに、上部又は前記刈刃とは反対側の所定部位に、複数個の前記第1の分岐管の排出口と接続する複数個の第1の分岐管接続部を有し、前記刈刃の前方且つ該刈刃の上方10~100cmの所定の高さ位置において、前記第1の噴出孔が、前記プラットフォームの前側下端部における前記刈刃が設けられている領域の幅方向の辺に対して平行な向きとなって配設された第1の管状部材からなり、個々の前記第2の空気噴出部材は、刈刃側に、前記刈刃が設けられている領域の幅方向に前記第2の分岐管の個数に応じて分割された一部の分割領域をカバーする長さのスリット状の孔部が形成され、該孔部が形成されている領域の両端が開口した第2の噴出孔を有し、管幅が前記第2の噴出孔側に向けて広がるように、側面にテーパを有し、且つ、該第2の噴出孔における該孔部が形成されている領域の両端の開口が狭く形成された、噴出部と、該噴出部の下方位置で、第2の管状部材を間に挟んで個々の前記第2の分岐管の排出口と接続する第2の分岐管接続部とを有するとともに、前記刈刃とは反対側の所定部位に、前記第2の分岐管接続部と前記噴出部とに連通する連通部を有し、前記第1の空気噴出部材と前記刈刃との間且つ前記刈刃近傍の高さ位置において、スリット状の第2の噴出孔が、前記刈刃が設けられている領域の幅方向に対して平行な向きとなって配設されてなり、前記噴出部の両端の開口近傍には、刈刃側に向かって傾斜した噴出空気ガイド板が設けられ、前記第1の噴出孔から前記刈刃の上方10~100cmの所定範囲で傾き及び高さ位置を自在に変えて空気を噴出させると同時に、複数個の前記第2の噴出孔から前記刈刃の上方0~数cmの所定範囲の高さ位置に向けて、空気を噴出させるようにしたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の農作穀物刈取補助機構においては、前記噴出部は、隣り合う夫々の前記噴出部の前記第2の噴出孔から噴出した空気が、前記刈刃の先端位置において交差するように配設されているのが好ましい。
【0016】
また、本発明の農作穀物刈取補助機構においては、前記第1の空気噴出部材は、前記刈取部の両側部に設けられた第1の空気噴出部材支持部材に、前記刈刃の上方10~100cmの所定範囲で傾き及び高さを調節自在に支持され、前記第2の管状部材は、前記第2の分岐管に対応して前記プラットフォームの下側面に固定され、その一端で個々の前記第2の分岐管の排出口と接続するとともに、他端で前記第2の分岐管接続部と接続し、個々の前記第2の空気噴出部材は、前記第2の管状部材に支持されているのが好ましい。
【0017】
また、本発明の農作穀物刈取補助機構においては、更に、個々の前記第2の空気噴出部材には、前記第2の空気噴出部材の前方且つ刈刃よりも下方の位置から刈刃側に向かって上向きに傾斜した部位を有し、且つ、刈刃側の一部の部位が前記第2の空気噴出部材の前記噴出部の上方に位置する起立部材が備えられているのが好ましい。
【0018】
また、本発明の農作穀物刈取補助機構においては、前記起立部材は、一端が前記第2の分岐管接続部に固定され、該第2の空気噴出部材の前方に延びた板状の支持部と、該板状の支持部の他端と接続し、刈刃よりも下方の位置から刈刃側に向かって上向きに傾斜し、断面が湾曲した板状の起立部と、を有してなり、
前記板状の起立部における刈刃側の端部が前記第2の空気噴出部材の前記噴出部の上方に位置するのが好ましい。
【0019】
また、本発明の農作穀物刈取補助機構においては、前記起立部材は、一端が前記第2の分岐管接続部に固定され、該第2の空気噴出部材の前方に延びた板状の支持部と、該板状の支持部と接続し、刈刃よりも下方の位置から刈刃側に向かって上向きに傾斜した部位を有し、断面がU字状に湾曲し、刈刃側の端部が前記噴出部を覆う大きさを有して広がった半円錐状の起立部と、を有してなり、前記半円錐状の起立部における刈刃側の端部の一部が、前記第2の空気噴出部材の前記噴出部の上方に位置するのが好ましい。
【0020】
また、本発明による農作穀物刈取補助機構を備えたコンバインは、走行部と、前記走行部により走行させられながら農作穀物を刈り取る刈取部を装備し、前記刈取部が、プラットフォームの前側下縁部に設けられた、農作穀物を刈り取る刈刃を備えた、コンバインにおいて、前記コンバインに備わる所定の回転駆動軸と接続する軸部材と、前記軸部材の回転により駆動する遠心型送風装置と、前記遠心型送風装置の排出口と接続する主配管及び該主配管から夫々複数個分岐した、第1及び第2の分岐管を有する送風用配管と、複数個の前記第1の分岐管からの空気を刈刃側に向けて噴出させる第1の空気噴出部材と、個々の前記第2の分岐管からの空気を刈刃側に向けて噴出させる複数個の第2の空気噴出部材と、を備え、前記第1の空気噴出部材は、刈刃側に、前記プラットフォームの前側下端部における前記刈刃が設けられている領域の幅方向に前記第1の分岐管の個数に応じて分割された一部の分割領域をカバーする長さのスリット状の第1の噴出孔を有するとともに、上部又は前記刈刃とは反対側の所定部位に、複数個の前記第1の分岐管の排出口と接続する複数個の第1の分岐管接続部を有し、前記刈刃の前方且つ該刈刃の上方10~100cmの所定の高さ位置において、前記第1の噴出孔が、前記プラットフォームの前側下端部における前記刈刃が設けられている領域の幅方向の辺に対して平行な向きとなって配設された第1の管状部材からなり、個々の前記第2の空気噴出部材は、刈刃側に、前記刈刃が設けられている領域の幅方向に前記第2の分岐管の個数に応じて分割された一部の分割領域をカバーする長さのスリット状の孔部が形成され、該孔部が形成されている領域の両端が開口した第2の噴出孔を有し、管幅が前記第2の噴出孔側に向けて広がるように、側面にテーパを有し、且つ、該第2の噴出孔における該孔部が形成されている領域の両端の開口が狭く形成された、噴出部と、該噴出部の下方位置で、第2の管状部材を間に挟んで個々の前記第2の分岐管の排出口と接続する第2の分岐管接続部とを有するとともに、前記刈刃とは反対側の所定部位に、前記第2の分岐管接続部と前記噴出部とに連通する連通部を有し、前記第1の空気噴出部材と前記刈刃との間且つ前記刈刃近傍の高さ位置において、スリット状の第2の噴出孔が、前記刈刃が設けられている領域の幅方向に対して平行な向きとなって配設されてなり、前記噴出部の両端の開口近傍には、刈刃側に向かって傾斜した噴出空気ガイド板が設けられ、前記第1の噴出孔から前記刈刃の上方10~100cmの所定範囲で傾き及び高さ位置を自在に変えて空気を噴出させると同時に、複数個の前記第2の噴出孔から前記刈刃の上方0~数cmの所定範囲の高さ位置に向けて、空気を噴出させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、農作穀物を刈り取る刈取部を装備し、刈取部がプラットフォームの前側下縁部に刈刃を備えた大型コンバインにおいて、コストを格段に抑え、倒伏した農作穀物を起立させて収穫可能にするとともに、大豆や小豆等の豆類を刈り取る際の豆や莢の落下による収穫量のロスを改善することに加えて、更に、農作穀物を刈刃で刈り取った後に、刈り取った農作穀物をより確実にプラットフォーム内後方の横送りオーガに送り込み、収穫量のロスを極めて低減することの可能な農作穀物刈取補助機構及び農作穀物刈取補助機構を備えたコンバインが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る農作穀物刈取補助機構の一構成例を示す説明図で、(a)は全体の構成部材を抽出し、模式的に示す上面図、(b)は(a)の側面図である。
【
図2】第1実施形態の農作穀物刈取補助機構の要部構成を斜め前方から示す部分説明図である。
【
図3】第1実施形態の農作穀物刈取補助機構における刈取部の刈刃近傍に配置される構成部材を側方からみたときの構成を示す部分説明図である。
【
図4】
図1の農作穀物刈取補助機構に備わる第1の空気噴出部材及び第2の空気噴出部材の夫々の構成を示す説明図で、(a)は第1の空気噴出部材及び第2の空気噴出部材の噴出孔の位置関係を示す、刈刃側斜め上方からみたときの図、(b)は第1の空気噴出部材の部分拡大図、(c)は一つの第2の空気噴出部材の拡大図である。
【
図5】
図1の農作穀物刈取補助機構において、第2の空気噴出部材に、一例に係る起立部材を備えた構成を示す説明図である。
【
図6】
図1の農作穀物刈取補助機構において、第2の空気噴出部材に、他の例に係る起立部材を備えた構成を示す説明図である。
【
図7】従来の大型コンバインの全体構成の一例を示す側面図である。
【
図9】
図7の大型コンバインの刈取部の構成の一例を示す平面図である。
【
図10】
図9の大型コンバインの刈取部の側面図である。
【
図11】従来の倒伏状態の農作穀物を引き起こすための技術としての引き起し装置の構成を示す説明図で、(a)は刈取部における引き起し装置の位置関係を示す側面図、(b)は引き起し装置の要部を簡略化して示す正面図である。
【
図12】本発明の刈取補助機構を導出する前の段階において、本件発明者らが導出した倒伏農作穀物起立ユニットの概略構成を分解して示す要部斜視図である。
【
図13】
図12の倒伏農作穀物起立ユニットの一構成例を示す説明図で、(a)は斜視図、(b)は倒伏農作穀物起立ユニットにおける起立部材の配置を示す上面図、(c)は起立部材における傾斜部を示す(b)のA-A断面図、(d)は倒伏農作穀物起立ユニットに備わる個々の起立部材の上面図である。
【
図14】
図12の倒伏農作穀物起立ユニットをコンバイン刈取部のプラットフォームに取り付けたときの、倒伏農作穀物起立ユニットに備わる個々の起立部材と、刈刃と、掻き込みリールとの位置関係を模式的に示す側面図である。
【
図15】従来の大豆や小豆等の豆類の稈を持ち上げて収穫効率を向上させるための技術としてのコンバインの刈取ヘッダーの構成を示す説明図で、(a)はコンバインの刈取部にエアー反射部材が設けられた汎用型コンバインの上面図、(b)はエアー反射部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施形態の説明に先立ち、本発明が導出されるに至った経緯及び本発明の作用効果について説明する。
1.本発明が導出されるに至った経緯
(1)倒伏した農作穀物を起立させて収穫するための従来技術の問題点
上述のように、農作穀物が倒伏すると、
図7~
図10に示した、特許文献1、2に記載されているような大型コンバインでは、倒伏状態の農作穀物の先端部が刈刃の下方を通過してしまい易くなり、農作穀物の茎の根元を刈刃で刈り取ることが難しくなる。
倒伏状態の農作穀物を引き起こすための技術としては、
図11に示した、特許文献3に記載の引き起し装置が提案されているが、特許文献3に記載の引き起し装置は、引き起しケースが立設配置された構成である。このため、特許文献1、2に記載されているような大型コンバインに適用しようとすると、広範囲に及ぶ刈取範囲に対応できるように、そのような構成の引き起し装置が多数必要となる。部品点数が多く動力を必要とする装置を多数設けたのでは、装置が大掛かりなものとなる上、コスト高となってしまう。
【0024】
(2)本発明の刈取補助機構を導出する前の段階において、本件発明者らが上記問題点を解決するために導出した倒伏農作穀物起立ユニットについて
このような問題を鑑み、本件発明者らは、試行錯誤の末に、農作穀物を刈り取る刈取部を装備し、刈取部がプラットフォームの前側下縁部に刈刃を備えた大型コンバインにおいて、コストを格段に抑え、倒伏した農作穀物を起立させて収穫可能にする倒伏農作穀物起立ユニットを導出した。
図12は本発明の刈取補助機構を導出する前の段階において、本件発明者らが導出した倒伏農作穀物起立ユニットの概略構成を分解して示す要部斜視図、
図13は
図12の倒伏農作穀物起立ユニットの一構成例を示す説明図である。
なお、
図12中、21は刈取部のプラットフォーム、22は刈刃、24は横送りオーガである。これらの構成は
図7~
図10に示すコンバインにおけるものと略同じである。
【0025】
本件発明者らが導出した倒伏農作穀物起立ユニット1’は、起立部材1aと、第1の支持部材1bと、第2の支持部材1cとで構成されている。
起立部材1aは、
図13(c)、
図13(d)に示すように、根元側に向かって上向きに傾斜した面を有する細長形状の板状鋼材1a-1と、板状鋼材1a-1の根元側に向かって上向きに傾斜した状態で、板状鋼材1a-1の上面に少なくとも一つ(図示の例では二つ)固定された、V字又はU字形状の棒状鋼材1a-2と、を有している。
そして、起立部材1aの板状鋼材1a-1と棒状鋼材1a-2とが、根元側に向かって、上向きに傾斜した傾斜部となっている。
板状鋼材1a-1の先端は、凸状に湾曲した外形を有している。あるいは、板状鋼材1a-1の先端は、先細の外形を有していてもよい。
棒状鋼材1a-2は、板状鋼材1a-1の上面に溶着されている。なお、棒状鋼材1a-2は、取り付け穴を有する板状鋼材1a-1の面に差し込んだ状態で溶着されていてもよい。
起立部材1aの根元には、雄螺子部1a-3が設けられている。
【0026】
第1の支持部材1bは、プラットフォームにおける刈刃が設けられている領域の幅方向の長さに合わせた長さを有するとともにクランク状に折れ曲がった断面形状を有する、細長鋼材を用いて構成され、前面に、起立部材1aの雄螺子部1a-3と螺合可能な雌螺子からなる取付部1b-1を、所定間隔をあけて複数個備えている。そして、第1の支持部材1bは、夫々の取付部1b-1に起立部材1aの雄螺子部1a-3を螺合させることによって、複数個の起立部材1aを櫛歯状に並んだ状態に備えている。
なお、取付部1b-1を、起立部材1aの雄螺子部1a-3が通過可能な径の貫通孔で構成し、上記貫通孔を貫通した雄螺子部1a-3の先端部に雌螺子を螺合させることによって、第1の支持部材1bが複数個の起立部材1aを櫛歯状に並んだ状態に備えた構成となるようにしてもよい。
あるいは、起立部材1aの根元を、雄螺子部1a-3の代わりに螺子の設けられていない棒状部(図示省略)で構成するとともに、取付部1b-1を、上記棒状部が通過可能な径の貫通孔で構成し、上記棒状部が上記貫通孔を貫通した状態の起立部材1aを第1の支持部材1bに溶着することによって、第1の支持部材1bが複数個の起立部材1aを櫛歯状に並んだ状態に備えた構成となるようにしてもよい。
また、第1の支持部材1bの前側下端には、取付部1b-1に雄螺子部1a-3を螺合させた状態の起立部材1aの下側面を支持する縁部1b-2が形成されている。
【0027】
第2の支持部材1cは、直角に折れ曲がった断面形状を有する、細長鋼材を用いて構成され、第1の支持部材1bの両端部に溶着されている。
そして、第2の支持部材1cは、夫々の面にプラットフォーム21の前側の両側端部に取り付け可能な取付部1c-1を備えている。
取付部1c-1は、起立部材1aの全部位が、プラットフォーム21における刈刃22よりも前方且つ下方に位置することができ、さらには位置を調整することができるように、第2の支持部材1cをなす細長鋼材の夫々の面の長手方向に沿って形成された複数の貫通孔で構成されている。
なお、起立部材1aの全部位が、プラットフォーム21における刈刃22よりも前方且つ下方に位置するようにプラットフォーム21の前側の両側端部に取り付けることができる構成であれば、第2の支持部材1cは、取り付け対象となるプラットフォーム21における前側の両側端部の形態に応じて、どのような形態に形成されていてもよい。また、取付部1c-1を構成する貫通孔も、起立部材1aの全部位が、プラットフォーム21における刈刃22よりも前方且つ下方に位置することができ、さらには位置を調整することができれば、どのような配置で設けられていてもよい。
【0028】
このように構成された倒伏農作穀物起立ユニット1’を、
図7~
図10に示したような大型コンバインにおける、例えば
図12に示す刈取部のプラットフォーム21に取り付けたとき、倒伏農作穀物起立ユニットに備わる個々の起立部材1aと、刈刃22と、掻き込みリール23との位置関係は
図14に示すようになる。なお、
図14では、便宜上、起立部材1aと、刈刃22と、掻き込みリール23の位置関係のみを示しており、夫々の部材に接続する構成部材は省略してある。
【0029】
倒伏農作穀物起立ユニット1’を取り付けた大型コンバインでは、倒伏した農作穀物の穂先が刈刃22よりも低い位置にあるときにおいて、刈取部を農作穀物の方向に向けて走行させると、まず、起立部材1aの板状鋼材1a-1が農作穀物の穂先と角度のない状態で緩やかに接しながら、穂先を上向きに押し上げ、次いで、起立部材1aのV字又はU字形状の棒状鋼材1a-2が、穂先をより一層上向きに押し上げる。
刈取部の走行を続けると、起立部材1aの棒状鋼材1a-2が、穂先に続く部位の茎(及び葉)を上向きに押し上げる。これにより、農作穀物は穂先が刈刃22よりも高い位置に位置するように、徐々に引き起される。
さらに、刈取部の走行を続けると、起立部材1aにおける板状鋼材1a-1の先端又は棒状鋼材1a-2が、農作穀物を起立部材1aの板状鋼材1a-1の側方に案内する。そして、両側の板状鋼材1a-1が案内された農作穀物の茎(及び葉)を保持しながら、棒状鋼材1a-2が茎の中央から茎の根元近傍を上向きに押し上げる。これにより、農作穀物は、穂先から茎の中央近傍に及ぶ部分が刈刃22の上方に位置し、穂先(更には茎の上部)が掻き込みリール23の掻き込みタイン23fに掻き込まれる高さに位置するように、起立した状態となる。このとき、掻き込みリール23が、掻き込みタイン23fを介して農作穀物の穂先を刈刃22側に掻き込む。農作穀物は、茎の根元側を両側の板状鋼材1a-1、穂先(及び茎の上部)を掻き込みタイン23fにより、夫々保持された状態となるため、倒伏しない。
さらに、刈取部の走行を続けることで、刈刃22が農作穀物の穂先を含む茎部分を刈り取る。
刈り取られた農作穀物を、
図7~
図10に示したコンバインと同様、回転する一対の横送りオーガ24が搬送部30の設けられている部位に横送りし、横送りされた農作穀物を、搬送部30のコンベア31が脱穀部40に搬送し、脱穀された穀粒を選別部50が選別するとともに、脱穀部40により排出された排藁を排藁処理部60が細断して外部に排出する。
【0030】
倒伏農作穀物起立ユニット1’によれば、穂先が刈刃22よりも低い位置に位置し、従来の大型コンバインでは刈り取ることが難しいほどに倒伏した農作穀物を、コンバイン刈取部のプラットフォーム21に取り付けることによって、刈り取ることができるようになる。
【0031】
また、倒伏農作穀物起立ユニット1’は、
図11に示した従来のコンバインに用いられている引き起し装置のような大掛かりな装置ではなく、簡素な構成であり、しかもユニット自体の動力が不要であるため、
図11のような引き起し装置を用いることを想定した場合に比べて、コストを格段に低減することができる。
【0032】
従って、倒伏農作穀物起立ユニット1’によれば、農作穀物を刈り取る刈取部を装備し、刈取部がプラットフォームの前側下縁部に刈刃を備えた大型コンバインにおいて、コストを格段に抑え、倒伏した農作穀物を起立させて収穫可能にすることができる。
【0033】
(3)倒伏農作穀物起立ユニットに内在する改善すべき課題
さらに、本件発明者らは、倒伏農作穀物起立ユニット1’を用いた農作穀物の刈り取りについての試行錯誤を繰り返した。
その過程で、倒伏農作穀物起立ユニット1’には、大豆や小豆等の豆類を刈り取る際の豆や莢の落下により収穫量がロスするという問題に関し改善の余地があることが判明した。
【0034】
より詳しくは、大豆や小豆等の豆類は、大麦や小麦等とは異なり、莢高が低く倒伏し易い、倒伏していなくても地面に近い高さ位置で結実し易い、また、一つ一つの実が大きくて重い、さらには、収穫のために乾燥させる必要がある、といった特性を有している。
このため、従来一般のコンバインを用いた大豆や小豆等の豆類の収穫においては、刈刃で刈り取られたときの豆及び莢の自重や、刈刃や掻き込みリールのタインに接触したときの衝撃で莢から豆が弾け出て、刈り取られた豆や莢がプラットフォーム内後方の横送りオーガに送り込まれることなく、プラットフォームの下方に落下して、収穫量のロスが生じ易いという問題がある。
また、大豆や小豆等の豆類を栽培する圃場には雑草が発生し易い。そして、従来一般のコンバインを用いて圃場に雑草が発生したままの状態で大豆や小豆等の豆類の刈り取りを行った場合、刈刃で刈り取られた豆及び莢が、刈り取られた雑草により、刈刃位置からプラットフォーム内後方の横送りオーガ方向への進路を妨げられて、プラットフォームの下方に落下し易くなり、収穫量のロスがより一層大きく生じる虞がある。
【0035】
本件発明者らは、倒伏農作穀物起立ユニット1’を用いて倒伏した大豆や小豆等の豆類及び倒伏していなくても地面に近い高さ位置で結実している大豆や小豆等の豆類の刈り取りを行い、刈り取られた豆や莢の動きを繰り返し観察した。その結果、倒伏農作穀物起立ユニット1’により起立させられた大豆や小豆等の豆類は、豆の莢に近い部位が刈刃で刈り取られ、刈り取られたときに豆及び莢の自重や、刈刃や掻き込みリールのタインに接触したときの衝撃で莢から豆が弾け出ることにより、プラットフォーム内後方の横送りオーガに送り込まれることなく、プラットフォームの下方に落下して、収穫量のロスが生じ易く、従来一般のコンバインを用いた豆類の収穫と同様、豆や莢の落下による収穫量のロスの問題が改善できていないことが判明した。
また、本件発明者らは、雑草が発生したままの状態で倒伏農作穀物起立ユニット1’を用いて大豆や小豆等の豆類の刈り取りも行い、刈り取られた豆や莢の動きを繰り返し観察した。その結果、刈刃で刈り取られた豆及び莢が、刈り取られた雑草により、刈刃位置からプラットフォーム内後方の横送りオーガ方向への進路を妨げられて、プラットフォームの下方に落下し易くなり、収穫量のロスがより一層大きく生じてしまうことを確認した。
【0036】
そこで、本件発明者らは、刈刃で刈り取った豆及び莢を、プラットフォームの下方に落下させることなくプラットフォーム内後方の横送りオーガに送り込むための方策につき検討及び考察を重ねた。そして、参考となる技術として、特開2001-252930号公報に開示されている、大豆や小豆等の豆類の稈を持ち上げて収穫効率を向上させるための技術に着目し、その効果についての検討及び考察を行った。
【0037】
図15は上記公報に開示されている大豆や小豆等の豆類の稈を持ち上げて収穫効率を向上させるための技術としてのコンバインの刈取部の構成を示す説明図で、(a)はコンバインの刈取部にエアー反射部材が設けられた汎用型コンバインの上面図、(b)はエアー反射部材の側面図である。
図15のコンバインの刈取部は、刈刃22の前方に複数のエアー反射部材101を備えている。
図15中、23は掻き込みリール、24は横送りオーガ、25は分草部材である。
エアー反射部材101は、三角錐状の形状を有し、その内底部にターボブロワー104に接続されたパイプ103が固着され、その上部には起立部102が形成されている。ターボブロワー104は搬送部の側部に設置され、図示しないコンベアの駆動軸を介して駆動力が得られるように構成されている。
そして、
図15のコンバインの刈取部では、ターボブロワー104から供給されるエアーがパイプ103を経由してエアー反射部材101内で反射され、エアー反射部材101の周辺に逆流エアーを刈刃22の上方約10~20cmの範囲に発生させて、倒伏している大豆や小豆等の豆類の莢を持ち上げるように構成されている。また、倒伏状態から持ち上げられた莢の倒伏状態への逆戻りを起立部102が防止している。
そして、
図15のコンバインの刈取部は、エアー反射部材101内で発生させた逆流エアーにより、コンバインの進行方向と同じ方向に倒伏している大豆や小豆等の豆類の莢を持ち上げ、莢を掻き込み、刈刃22により株元を切断させることで、刈取ロスの改善を図っている。
【0038】
しかし、上記公報に開示されているコンバインの刈取部の技術は、大豆や小豆等の豆類の稈を持ち上げることによって倒伏した豆類の刈り残しによる刈取ロスを改善するものであって、「刈刃で刈り取られたときの豆及び莢の自重や、刈刃や掻き込みリールのタインに接触したときの衝撃で莢から豆が弾け出て、プラットフォーム内後方の横送りオーガに送り込まれることなく、プラットフォームの下方に落下し易い」といった問題に着目したものではない。
このため、上記公報に開示されているコンバインの刈取部の技術では、倒伏した大豆や小豆等の豆類の刈り残しによる刈取ロスの改善を図ることはできるが、大豆や小豆等の豆類の刈り取り時の豆及び莢の落下による収穫量のロスを改善することはできない。
【0039】
また、上記公報に開示されているコンバインの刈取部の技術は、
図15(b)に示すように、エアー反射部材101の周辺に逆流エアーを刈刃22の上方約10~20cmの範囲に発生させて、倒伏している大豆や小豆等の豆類の莢を持ち上げ、また、倒伏状態から持ち上げられた莢の倒伏状態への逆戻りを起立部102で防止する構成となっているが、エアー反射部材101及び起立部102は、
図15(a)に示すように、刈刃22が設けられている領域の幅方向における一部の領域をカバーする配置となっている。このため、分草部材25の間の刈刃22が設けられている領域の幅方向全域において刈取対象となっている倒伏した大豆や小豆等の豆類の稈の全てを持ち上げることができず、エアー反射部材101及び起立部102による持ち上げ及び倒伏状態への逆戻り作用を受けない位置にある、倒伏した大豆や小豆等の豆類の持ち上げ漏れに起因する刈り残しによる刈取ロスの問題が残存する。
【0040】
また、上記公報に開示されているコンバインの刈取部の技術における三角錐状の形状を有するエアー反射部材101は、
図15(b)に示すように、逆流エアーを排出する開口径がパイプ103の管径に比べて大きく広がっている。このため、エアー反射部材101の開口部から排出される逆流エアーは、パイプ103内を通るエアーに比べて圧力が弱く、その分、倒伏した大豆や小豆等の豆類の稈の持ち上げ作用を十分に奏し難くなる。
【0041】
さらに、本件発明者らは、上記倒伏農作穀物起立ユニットにおける、大豆や小豆等の豆類を刈り取る際の豆や莢の落下による収穫量のロスの改善についての検討及び試行錯誤を繰り返す過程において、倒伏した農作穀物を起立させて刈刃で刈り取った後や、起立状態の農作穀物を刈刃で刈り取った後に、刈り取った農作穀物をより確実にプラットフォーム内後方の横送りオーガに送り込むために改善の余地があることが判明した。
【0042】
しかるに、本件発明者らは、
図15に示したコンバインの刈取部の技術からヒントを得て、大豆や小豆等の豆類を刈り取る際の豆や莢の落下による収穫量のロスの改善を図ることに加えて、更に、農作穀物を刈刃で刈り取った後に、刈り取った農作穀物をより確実にプラットフォーム内後方の横送りオーガに送り込み、収穫量のロスを極めて低減するための構成を着想し、本発明の農作穀物刈取補助機構を導出するに至った。
【0043】
2.本発明の構成及び作用効果
本発明の農作穀物刈取補助機構は、走行部と、走行部により走行させられながら農作穀物を刈り取る刈取部を装備し、刈取部が、プラットフォームの前側下縁部に農作穀物を刈り取る刈刃を備えた、コンバインに設けられた、刈取部による農作穀物の刈り取りを補助するための機構であって、コンバインに備わる所定の回転駆動軸と接続する軸部材と、軸部材の回転により駆動する遠心型送風装置と、遠心型送風装置の排出口と接続する主配管及び該主配管から夫々複数個分岐した、第1及び第2の分岐管を有する送風用配管と、複数個の第1の分岐管からの空気を刈刃側に向けて噴出させる第1の空気噴出部材と、個々の第2の分岐管からの空気を刈刃側に向けて噴出させる複数個の第2の空気噴出部材と、を備え、第1の空気噴出部材は、刈刃側に、プラットフォームの前側下端部における刈刃が設けられている領域の幅方向に第1の分岐管の個数に応じて分割された一部の分割領域をカバーする長さのスリット状の第1の噴出孔を有するとともに、上部又は前記刈刃とは反対側の所定部位に、複数個の第1の分岐管の排出口と接続する複数個の第1の分岐管接続部を有し、刈刃の前方且つ該刈刃の上方10~100cmの所定の高さ位置において、第1の噴出孔が、プラットフォームの前側下端部における刈刃が設けられている領域の幅方向の辺に対して平行な向きとなって配設された第1の管状部材からなり、個々の第2の空気噴出部材は、刈刃側に、刈刃が設けられている領域の幅方向に第2の分岐管の個数に応じて分割された一部の分割領域をカバーする長さのスリット状の孔部が形成され、該孔部が形成されている領域の両端が開口した第2の噴出孔を有し、管幅が第2の噴出孔側に向けて広がるように、側面にテーパを有し、且つ、該第2の噴出孔における該孔部が形成されている領域の両端の開口が狭く形成された、噴出部と、該噴出部の下方位置で、第2の管状部材を間に挟んで個々の第2の分岐管の排出口と接続する第2の分岐管接続部とを有するとともに、刈刃とは反対側の所定部位に、第2の分岐管接続部と噴出部とに連通する連通部を有し、第1の空気噴出部材と刈刃との間且つ刈刃近傍の高さ位置において、スリット状の第2の噴出孔が、刈刃が設けられている領域の幅方向に対して平行な向きとなって配設されてなり、噴出部の両端の開口近傍には、刈刃側に向かって傾斜した噴出空気ガイド板が設けられ、第1の噴出孔から刈刃上方10~100cmの所定範囲で傾き及び高さ位置を自在に変えて空気を噴出させると同時に、複数個の第2の噴出孔から刈刃の上方0~数cmの所定範囲の高さ位置に向けて、空気を噴出させるように構成されている。
【0044】
このように構成すれば、
図12~
図14に示した倒伏農作穀物起立ユニットと略同様の効果を奏することに加えて、大豆や小豆等の豆類が刈刃で刈り取られたときの豆及び莢の自重や、刈刃に接触したときの衝撃で莢から弾け出た豆が、第2の空気噴出部材における噴出部の第2の噴出孔から刈刃の上方0~数cmの所定範囲の高さ位置に向けて、噴出領域の面積が狭められて噴出される空気の強力な風圧により、プラットフォームの下方に落下することなく、プラットフォーム内後方の横送りオーガに送り込まれ易くなる。
しかも、第2の空気噴出部材における噴出部の第2の噴出孔の、スリット状の孔部が形成されている領域の両端が開口し、第2の噴出孔における孔部が形成されている領域の両端の開口が狭く形成されていることにより、第2の分岐管の個数に応じて分割された個々の第2の空気噴出部材の間の刈刃側へ向けた位置に対しても、第2の空気噴出部材の第2の噴出孔から強力な風圧の空気を噴出させ易くなる。
このため、倒伏した大豆や小豆等の豆類の持ち上げ漏れに起因する刈り残しによる刈取ロスや大豆や小豆等の豆類を刈り取る際の豆や莢の落下による収穫量のロスが大幅に改善され、その分、収穫量が大幅に増加する。
そして、圃場に雑草が発生したままの状態で大豆や小豆等の豆類の刈り取りを行ったときに、刈刃で刈り取られた豆及び莢が、刈り取られた雑草により、刈刃位置からプラットフォーム内後方の横送りオーガ方向への進路を妨げられても、刈り取られた豆及び莢は、第2の空気噴出部材における噴出部の第2の噴出孔からの、刈刃の上方0~数cmの所定範囲の高さ位置に向けて噴出する空気の強力な風圧に同時に加わる、第1の空気噴出部材における第1の噴出孔からの、刈刃の上方10~100cmの所定範囲で傾き及び高さ位置を自在に変えて噴出する空気の強力な風圧により、プラットフォームの下方に落下することなく、プラットフォーム内後方の横送りオーガに送り込まれ易くなる。
このため、本発明の農作穀物刈取補助ユニットのように構成すれば、掻き込みリールを装備することなく、掻き込みリールを装備した構成に比べて、豆や莢の落下による収穫量のロスを大幅に改善しながら、圃場に雑草が発生したままの状態で大豆や小豆等の豆類の刈り取りを行うことができる。
【0045】
また、本発明の農作穀物刈取補助機構のように構成すれば、プラットフォームの前側下端部における刈刃が設けられている領域の幅方向に第1の分岐管の個数に応じて分割された一部の分割領域をカバーする長さのスリット状の第1の噴出孔からの、刈刃の上方10~100cmの所定範囲で傾き及び高さ位置を自在に変えて噴出する空気の強力な風圧により、倒伏した農作穀物を起立させて刈刃で刈り取った後や、起立状態の農作穀物を刈刃で刈り取った後においても、刈り取った農作穀物をより確実にプラットフォーム内後方の横送りオーガに送り込み易くなり、しかも送り込み漏れを極めて少なくすることができる。
【0046】
また、本発明の農作穀物刈取補助機構においては、好ましくは、噴出部は、隣り合う夫々の噴出部の第2の噴出孔から噴出した空気が、刈刃の先端位置において交差するように配設されている。
このようにすれば、噴出部の第2の噴出孔から噴出した空気の強力な風圧が、刈刃が備えられている領域の幅方向全体に及び、落下しようとする豆及び莢をプラットフォーム内後方の横送りオーガに送り込むため、倒伏した大豆や小豆等の豆類の持ち上げ漏れに起因する刈り残しによる刈取ロスや大豆や小豆等の豆類を刈り取る際の豆や莢の落下による収穫量のロスがより一層改善され、収穫量がより一層増加する。
【0047】
また、本発明の農作穀物刈取補助機構においては、好ましくは、第1の空気噴出部材は、刈取部の両側部に設けられた第1の空気噴出部材支持部材に、刈刃の上方10~100cmの所定範囲で傾き及び高さを調節自在に支持され、第2の管状部材は、第2の分岐管に対応してプラットフォームの下側面に固定され、その一端で個々の第2の分岐管の排出口と接続するとともに、他端で第2の分岐管接続部と接続し、個々の第2の空気噴出部材は、第2の管状部材に支持されている。
このようにすれば、第1の空気噴出部材を刈刃の上方10~100cmの所定範囲で傾き及び高さを調節自在に、第1の空気噴出部材支持部材に固定した状態で配置するとともに、個々の第2の空気噴出部材を刈取部のプラットフォームに対して固定した状態で配置することができ、刈り取りの際の走行時の揺れの影響を受けることなく、送風用配管を経由した遠心型送風装置からの空気を刈取対象となる農作穀物に対し安定した状態で噴出させることができる。
【0048】
また、本発明の農作穀物刈取補助機構においては、好ましくは、更に、個々の前記第2の空気噴出部材には、前記第2の空気噴出部材の前方且つ刈刃よりも下方の位置から刈刃側に向かって上向きに傾斜した部位を有し、且つ、刈刃側の一部の部位が前記第2の空気噴出部材の前記噴出部の上方に位置する起立部材が備えられている。
このようにすれば、倒伏した農作穀物等を起立させることができ刈刃の下側に結実している農作穀物等の収穫ロスをより一層改善することができる。
その一態様としては、前記起立部材は、一端が前記第2の分岐管接続部に固定され、該第2の空気噴出部材の前方に延びた板状の支持部と、該板状の支持部の他端と接続し、刈刃よりも下方の位置から刈刃側に向かって上向きに傾斜し、断面が湾曲した板状の起立部と、を有してなり、前記板状の起立部における刈刃側の端部が前記第2の空気噴出部材の前記噴出部の上方に位置するように構成する。
また、その他の態様としては、前記起立部材は、一端が前記第2の分岐管接続部に固定され、該第2の空気噴出部材の前方に延びた板状の支持部と、該板状の支持部と接続し、刈刃よりも下方の位置から刈刃側に向かって上向きに傾斜した部位を有し、断面がU字状に湾曲し、刈刃側の端部が前記噴出部を覆う大きさを有して広がった半円錐状の起立部と、を有してなり、前記半円錐状の起立部における刈刃側の端部の一部が、前記第2の空気噴出部材の前記噴出部の上方に位置するように構成する。
上記のような半円錐形状の起立部を設ければ、倒伏した農作穀物等を起立させるとともに農作穀物を分草して、分草により押し曲げられた状態から復帰した農作穀物等を第2の空気噴出部材による空気の噴出位置へ導き易くなり、刈刃の下側に結実している農作穀物等の収穫ロスを更により一層改善することができる。
【0049】
このため、本発明によれば、農作穀物を刈り取る刈取部を装備し、刈取部が、プラットフォームの前側下縁部に刈刃を備えた大型コンバインにおいて、コストを格段に抑え、倒伏した農作穀物を起立させて収穫可能にするとともに、掻き込みリールを装備することなく、掻き込みリールを装備した構成に比べて、大豆や小豆等の豆類を刈り取る際の豆や莢の落下による収穫量のロスを改善することに加えて、更に、農作穀物を刈刃で刈り取った後に、刈り取った農作穀物をより確実にプラットフォーム内後方の横送りオーガに送り込み、収穫量のロスを極めて低減することの可能な農作穀物刈取補助機構及び農作穀物刈取補助機構を備えたコンバインが得られる。
【0050】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の説明を行う。
図1は本発明の第1実施形態に係る農作穀物刈取補助機構の一構成例を示す説明図で、(a)は全体の構成部材を抽出し、模式的に示す上面図、(b)は(a)の側面図である。
図2は第1実施形態の農作穀物刈取補助機構の要部構成を斜め前方から示す部分説明図である。
図3は第1実施形態の農作穀物刈取補助機構における刈取部の刈刃近傍に配置される構成部材を側方からみたときの構成を示す部分説明図である。
図4は
図1の農作穀物刈取補助機構に備わる第1の空気噴出部材及び第2の空気噴出部材の夫々の構成を示す説明図で、(a)は第1の空気噴出部材及び第2の空気噴出部材の噴出孔の位置関係を示す、刈刃側斜め上方からみたときの図、(b)は第1の空気噴出部材の部分拡大図、(c)は一つの第2の空気噴出部材の拡大図である。
図5は
図1の農作穀物刈取補助機構において、第2の空気噴出部材に、一例に係る起立部材を備えた構成を示す説明図である。
図6は
図1の農作穀物刈取補助機構において、第2の空気噴出部材に、他の例に係る起立部材を備えた構成を示す説明図である。なお、便宜上、
図7~
図10に示すコンバインにおけるものと同様の構成部材については同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。
本実施形態の農作穀物刈取補助機構1は、
図1(a)に示すように、軸部材2と、遠心型送風装置3と、送風用配管4と、第1の空気噴出部材5と、第2の空気噴出部材6と、第1の空気噴出部材支持部材7と、第2の管状部材8を備えている。
軸部材2は、コンバインに備わるエンジンからの動力をバリカン状の刈刃を駆動させるための所定の動力伝達機構(不図示)に伝達する所定の回転駆動軸Xの端部に設けられたボスX1と接続されている。
遠心型送風装置3は、プーリ3a
1~3a
4、ベルト3b
1、3b
2を有してなる回転力伝達機構と、回転により軸方向からの空気を吸入して所定の遠心方向(ここでは、排出口3c
1の方向)に排出するように構成された羽根車(不図示)と、その羽根車を覆い遠心方向に排出口3c
1を有するケース3cと、外部からの空気を吸入する吸入部3dを備えている。そして、遠心型送風装置3は、刈取部20のプラットフォーム21の後側に設けられ、図示しない固定部材で固定されている。
なお、遠心型送風装置3の回転力伝達機構は、軸部材2の回転により、羽根車(不図示)を軸方向からの空気を吸入部3dから吸入して所定の遠心方向(ここでは、排出口3c
1の方向)に排出する方向に回転させることができれば、どのような構成であってもよい。
また、ケース3c内の羽根車(不図示)は、軸方向からの空気を吸入して所定の遠心方向(ここでは、排出口3c
1の方向)に排出するものであれば、どのような形態であってもよい。
【0051】
送風用配管4は、ホースとパイプとを接続してなる主配管4aと、主配管4aから夫々複数個分岐した第1の分岐管4b1及び第2の分岐管4b2を有している。
主配管4aの一端は、遠心型送風装置3の排出口3c1に接続している。
主配管4aの他端は、例えば、蓋4cによって閉じられている。蓋4cには、コンバインの刈取部20のプラットフォーム21の後側の所定位置に固定するための固定部4c1が形成されている。
複数個の第1の分岐管4b1は、第1の空気噴出部材5と連通している。
個々の第2の分岐管4b2は、個々の第2の空気噴出部材6と連通している。
【0052】
第1の空気噴出部材5は、第1の管状部材からなり、
図3、
図4(a)、
図4(b)に示すように、第1の噴出孔5aと、複数個の第1の分岐管接続部5bを有している。
第1の噴出孔5aは、第1の空気噴出部材5の刈刃22側に、プラットフォーム21の前側下端部における刈刃22が設けられている領域の幅方向に第1の分岐管4b1の個数に応じて分割された一部の分割領域をカバーする長さのスリット状に形成されている。
個々の第1の分岐管接続部5bは、第1の空気噴出部材5の上部又は刈刃22とは反対側の所定部位に、個々の第1の分岐管4b1の排出口と接続する。
そして、第1の空気噴出部材5は、
図2に示すように、第1の空気噴出部材支持部材7に支持されながら、刈刃22の前方且つ刈刃22の上方10~100cmの所定の高さ位置において、第1の噴出孔5aが、プラットフォーム21の前側下端部における刈刃22が設けられている領域の幅方向の辺に対して平行な向きとなって配設されている。
【0053】
個々の第2の空気噴出部材6は、
図3に示すように、噴出部6aと、第2の分岐管接続部6bと、連通部6cを有している。
噴出部6aは、第2の空気噴出部材6の刈刃22側に、
図4(a)に示すように、第2の噴出孔6a1を有している。第2の噴出孔6a1は、
図4(c)に示すように、刈刃22が設けられている領域の幅方向に第2の分岐管4b2の個数に応じて分割された一部の分割領域をカバーする長さのスリット状の孔部6a1aと、噴出部6aにおいて孔部6a1aが形成されている領域の両端に開口6a1bを有している。
また、噴出部6aは、管幅が第2の噴出孔6a1側に向けて広がるように、側面にテーパのついた略四角錐台形状の外形を有し、且つ、第2の噴出孔6a1における孔部6a1aが形成されている領域の両端の開口6a1bが狭く形成されている。
第2の分岐管接続部6bは、
図1(b)、
図3に示すように、噴出部6aの下方位置で、第2の管状部材8を間に挟んで個々の第2の分岐管4b2の排出口と接続する。
連通部6cは、
図3に示すように、第2の空気噴出部材6の刈刃22とは反対側の所定部位において、第2の分岐管接続部6bと噴出部6aとに連通する。
そして、個々の第2の空気噴出部材6は、第2の管状部材8に支持されながら、第1の空気噴出部材5と刈刃22との間且つ刈刃22近傍の高さ位置において、スリット状の第2の噴出孔6a1が、刈刃22が設けられている領域の幅方向に対して平行な向きとなって配設されている。
また、個々の第2の空気噴出部材6における噴出部6aの両端の開口6a1b近傍には、刈刃22側に向かって傾斜した噴出空気ガイド板6dが設けられており、開口6a1bから噴出される空気を刈刃22側に導くようになっている。
また、噴出部6aは、隣り合う夫々の噴出部6aの第2の噴出孔6a1から噴出した空気が、刈刃22の先端位置において交差するように配設されている。
【0054】
第1の空気噴出部材支持部材7は、
図1(a)に示すように、刈取部の両側部に一対設けられていて、例えば、
図2に示すような形態で、第1の空気噴出部材5を支持する。本実施形態では、第1の空気噴出部材支持部材7は、
図9、
図10で示した掻き込みリール取付用の一対のリール支持アーム23aで構成されている。
図9、
図10で示した掻き込みリール23は、一対のリール支持アーム23aの夫々に従来公知の上下前後に位置を調節可能な位置調節手段(図示省略)を備えている。このため、第1の空気噴出部材支持部材7は、一対のリール支持アーム23aを介して刈刃22の上方10~100cmの所定範囲で傾き及び高さを調節自在に支持されている。
第2の管状部材8は、
図1(b)に示すように、第2の分岐管4b2に対応してプラットフォーム21の下側面に固定され、その一端で個々の第2の分岐管4b2の排出口と接続するとともに、
図3、
図4(a)、
図4(c)に示すように、他端で第2の分岐管接続部6bと接続する。
【0055】
そして、本実施形態の農作穀物刈取補助機構1は、第1の噴出孔5aから刈刃22の上方10~100cmの所定範囲で傾き及び高さ位置を自在に変えて空気を噴出させると同時に、複数個の第2の噴出孔6a1から刈刃22の上方0~数cmの所定範囲の高さ位置に向けて、刈刃22の先端位置において交差するように空気を噴出させるようになっている。
【0056】
なお、
図1の例では、複数個の第1の分岐管4b1を、刈取部のプラットフォーム21の上方を通って、第1の空気噴出部材5における個々の第1の分岐管接続部5bと接続させたが、プラットフォーム21の下側面を通って、第1の空気噴出部材5における個々の第1の分岐管接続部5bと接続させるように構成してもよい。
【0057】
また、本実施形態の農作穀物刈取補助機構1においては、更に、
図5、
図6に示すような、個々の第2の空気噴出部材6には、第2の空気噴出部材6の前方且つ刈刃よりも下方の位置から刈刃22側に向かって上向きに傾斜した部位を有し、且つ、刈刃22側の一部の部位が第2の空気噴出部材6の噴出部6aの上方に位置する起立部材9、9’を備えるのが好ましい。
【0058】
図5の例の起立部材9は、板状の支持部9aと、板状の起立部9bを有している。
板状の支持部9aは、一端が第2の分岐管接続部6bの下部に固定され、第2の空気噴出部材6の前方に延びている。
板状の起立部9bは、板状の支持部9aの他端9a1と接続し、刈刃22よりも下方の位置から刈刃22側に向かって上向きに傾斜し、断面が湾曲した板状部材で構成されている。そして、板状の起立部9bは、板状の起立部9bにおける刈刃22側の端部9b1が、第2の空気噴出部材6の噴出部6aの上方に位置するように設けられている。
【0059】
図6の例の起立部材9’は、板状の支持部9’a1と、半円錐状の起立部9’bを有している。
図6中、9’a2は、板状の支持部9’a1への半円錐状の起立部9’bの取り付けを補強する補強支持部材である。
板状の支持部9’a1は、一端が第2の分岐管接続部6bの下部に固定され、第2の空気噴出部材6の前方に延びている。
半円錐状の起立部9’bは、その先端9’b1が板状の支持部9’a1と接続し、補強支持部材9’a2により、板状の支持部9’a1への半円錐状の起立部9’bの取り付け状態が補強されている。また、半円錐状の起立部9’bは、刈刃22よりも下方の位置から刈刃22側に向かって上向きに傾斜した部位(
図6において板状の支持部9’a1の上方、且つ半円錐状を形成する弧における中央領域に位置する部位)を有し、断面がU字状に湾曲し、刈刃22側の端部が噴出部6bを覆う大きさを有して広がった半円錐形状に形成されている。
そして、半円錐状の起立部9’bは、刈刃22側の端部の一部(
図6においては側方を除く大部分の領域)が、第2の空気噴出部材6の噴出部6aの上方に位置するように設けられている。
【0060】
このように構成された本実施形態の農作穀物刈取補助機構1を、
図7~
図10に示したようなコンバインの刈取部に備えた状態で、エンジンを駆動すると、バリカン状の刈刃22を駆動させるための所定の動力伝達機構(不図示)に伝達する所定の回転駆動軸Xの端部に設けられたボスX1と接続した軸部材2が回転駆動軸Xと同期して回転する。そして、軸部材2の回転により、プーリとベルトを有してなる回転力伝達機構を経て、遠心型送風装置3が駆動し、羽根車(不図示)を、吸入部3dを経た軸方向からの空気を吸入して所定の遠心方向に排出する方向に回転させて排出口3c
1から空気を排出する。
遠心型送風装置3から排出された空気は、送風用配管4内を通り、主配管4aから夫々複数個の第1の分岐管4b1、第2の分岐管4b2に分岐される。個々の第1の分岐管4bを通る空気は、第1の空気噴出部材5の内部に入り込み、第1の噴出孔5aから、風圧が高められた状態で、刈刃22の上方10~100cmの所定範囲で、第1の空気噴出部材支持部材7を介して傾き及び高さを自在に調節されて、噴出する。また、同時に、個々の第2の分岐管4bを通る空気は、第2の管状部材8の内部を通って、個々の第2の空気噴出部材6の内部に入り込み、第2の噴出孔6a1から、風圧が高められた状態で、刈刃22の上方0~数cmの所定範囲の高さ位置に向けて、刈刃22の先端位置において交差するように噴出する。
【0061】
この状態の農作穀物刈取補助機構1を備えたコンバインを用いて、倒伏した大豆や小豆等の豆類及び倒伏していなくても地面に近い高さ位置で結実している大豆や小豆等の豆類を収穫する場合について説明する。なお、大豆や小豆等の豆類は、衝撃により莢から豆が飛び出し易いため、収穫に際しては、掻き込みリールを取り外しておくのが望まれる。ここでは、掻き込みリールを取り外した状態で収穫する場合について説明する。
刈取部を大豆や小豆等の豆類の方向に向けて走行させると、豆類は、根元近傍が略四角錐台形状の噴出部6aの側面に押圧されて(また、
図5、
図6に示す起立部材9、9’を更に備えた構成では、起立部9b、9’bにより上方に押し上げられるとともに噴出部6aの側面に押圧されて)、第2の空気噴出部材6の間に押し曲げられる。
刈取部の走行を続けると、噴出部6aの側面が豆類を通過する。大豆や小豆等の豆類は、根元近傍が押し曲げられた状態から復帰し、噴出部6aの前方に位置するようになる。この状態で、第2の噴出孔6a1から噴出する空気の強力な風圧が、莢、莢に続く部位の茎(及び葉)を上向きに押し上げる。これにより、豆類は莢が刈刃22よりも高い位置に位置するように、徐々に引き起こされ(また、
図5、
図6に示す起立部材9、9’を更に備えた構成では、起立部9b、9’bにより、より一層引き起こされ)、莢から茎の一部が刈刃22の上方に位置した状態となる。このとき、豆類は、茎の根元側を第2の噴出孔6a1から噴出する空気の強力な風圧、莢(及び茎の上部)を第1の噴出孔5aから刈刃22の上方10~100cmの所定範囲で傾き及び高さ位置を自在に変えて噴出する空気の強力な風圧により、夫々保持された状態となるため、倒伏しない。
さらに、刈取部の走行を続けることで、刈刃22が豆類の莢及び莢を含む茎部分を刈り取る。
【0062】
ところで、大豆や小豆等の豆類は、大麦や小麦等とは異なり、莢高が低く倒伏し易い、倒伏していなくても地面に近い高さ位置で結実し易い、また、一つ一つの実が大きくて重い、さらには、収穫のために乾燥させる必要がある、といった特性を有している。
このため、本実施形態の農作穀物刈取補助機構1を備えていない従来一般のコンバインを用いて大豆や小豆等の豆類を収穫した場合、刈刃22で刈り取られたときの豆及び莢の自重や、刈刃や掻き込みリールのタインに接触したときの衝撃で莢から豆が弾け出て、落下し易い。
また、大豆や小豆等の豆類を栽培する圃場には雑草が発生し易い。そして、従来一般のコンバインを用いて圃場に雑草が発生したままの状態で大豆や小豆等の豆類の刈り取りを行った場合、刈刃22で刈り取られた豆及び莢が、刈り取られた雑草により、刈刃22の位置からプラットフォーム内後方の横送りオーガ方向への進路を妨げられて、プラットフォームの下方に落下し易くなり、収穫量のロスがより一層大きく生じる虞がある。
しかるに、本実施形態の農作穀物刈取補助機構1を備えたコンバインでは、第2の空気噴出部材6における噴出部6aの第2の噴出孔6a1からの、刈刃22の上方0~数cmの所定範囲の高さ位置に向けて噴出する空気の強力な風圧に同時に加わる、第1の空気噴出部材5における第1の噴出孔5aからの、刈刃22の上方10~100cmの所定範囲で傾き及び高さ位置を自在に変えて噴出する空気の強力な風圧により落下しようとする豆及び莢を刈り取った雑草とともにプラットフォーム内後方の横送りオーガに送り込む。
刈り取られた大豆や小豆等の豆類は、
図7~
図10に示したコンバインと同様、回転する一対の横送りオーガ24により搬送部30の設けられている部位に横送りされる。横送りされた豆類は、搬送部30のコンベア31により脱穀部40に搬送される。脱穀された穀粒は、選別部50により選別される。脱穀部40により排出された排藁と雑草は、排藁処理部60により細断されて外部に排出される。
【0063】
本実施形態の農作穀物刈取補助機構1によれば、大豆や小豆等の豆類が刈刃22で刈り取られたときの衝撃で莢から弾け出た豆及び自重で落下し易い豆及び莢が、第2の空気噴出部材6における噴出部6aの第2の噴出孔6a1から刈刃22の上方0~数cmの所定範囲の高さ位置に向けて、噴出領域の面積が狭められて噴出、噴出領域の面積が狭められて噴出される空気の強力な風圧により、プラットフォームの下方に落下することなく、プラットフォーム内後方の横送りオーガに送り込まれ易くなる。
しかも、第2の空気噴出部材6における噴出部6aの第2の噴出孔6a1の、スリット状の孔部6a1aが形成されている領域の両端が開口し、第2の噴出孔6a1における孔部6a1aが形成されている領域の両端の開口6a1bが狭く形成されていることにより、第2の分岐管4b2の個数に応じて分割された個々の第2の空気噴出部材6の間の刈刃22側へ向けた位置に対しても、第2の空気噴出部材6の第2の噴出孔6a1から強力な風圧の空気を噴出させ易くなる。
このため、倒伏した大豆や小豆等の豆類の持ち上げ漏れに起因する刈り残しによる刈取ロスや、大豆や小豆等の豆類を刈り取る際の豆や莢の落下による収穫量のロスが大幅に改善され、その分、収穫量が大幅に増加する。
そして、圃場に雑草が発生したままの状態で大豆や小豆等の豆類の刈り取りを行ったときに、刈刃22で刈り取られた豆及び莢が、刈り取られた雑草により、刈刃22の位置からプラットフォーム内後方の横送りオーガ方向への進路を妨げられても、刈り取られた豆及び莢は、第2の空気噴出部材6における噴出部6aの第2の噴出孔6a1からの、刈刃22の上方0~数cmの所定範囲の高さ位置に向けて噴出する空気の強力な風圧に加わる、第1の空気噴出部材5における第1の噴出孔5aからの、刈刃22の上方10~100cmの所定範囲で傾き及び高さ位置を自在に変えて噴出する空気の強力な風圧により、プラットフォームの下方に落下することなく、プラットフォーム内後方の横送りオーガに送り込まれ易くなる。
このため、本実施形態の農作穀物刈取補助ユニット1によれば、掻き込みリールを装備することなく、掻き込みリールを装備した構成に比べて、豆や莢の落下による収穫量のロスを大幅に改善しながら、圃場に雑草が発生したままの状態で大豆や小豆等の豆類の刈り取りを行うことができる。
【0064】
また、本実施形態の農作穀物刈取補助機構1によれば、プラットフォームの前側下端部における刈刃22が設けられている領域の幅方向に第1の分岐管4b1の個数に応じて分割された一部の分割領域をカバーする長さのスリット状の第1の噴出孔5aからの、刈刃22の上方10~100cmの所定範囲で傾き及び高さ位置を自在に変えて噴出する空気の強力な風圧により、倒伏した農作穀物を起立させて刈刃で刈り取った後や、起立状態の農作穀物を刈刃で刈り取った後においても、刈り取った農作穀物をより確実にプラットフォーム内後方の横送りオーガに送り込み易くなり、しかも送り込み漏れを極めて少なくすることができる。
【0065】
また、本実施形態の農作穀物刈取補助機構1によれば、噴出部6aを、隣り合う夫々の噴出部6aの第2の噴出孔6a1から噴出した空気が刈刃22の先端位置において交差するように配設したので、噴出部6aの第2の噴出孔6a1から噴出した空気の強力な風圧が、刈刃22が備えられている領域の幅方向全体に及び、落下しようとする豆及び莢をプラットフォーム内後方の横送りオーガに送り込むため、倒伏した大豆や小豆等の豆類の持ち上げ漏れに起因する刈り残しによる刈取ロスや大豆や小豆等の豆類を刈り取る際の豆や莢の落下による収穫量のロスがより一層改善され、収穫量がより一層増加する。
【0066】
また、本実施形態の農作穀物刈取補助機構1によれば、第1の空気噴出部材5が、刈取部の両側部に設けられた第1の空気噴出部材支持部材7に、刈刃の上方10~100cmの所定範囲で傾き及び高さを調節自在に支持され、第2の管状部材8が、第2の分岐管4b2に対応してプラットフォームの下側面に固定され、その一端で個々の第2の分岐管4b2の排出口と接続するとともに、他端で第2の分岐管接続部6bと接続し、個々の第2の空気噴出部材6が、第2の管状部材8に支持されている構成としたので、第1の空気噴出部材5、個々の第2の空気噴出部材6を刈取部のプラットフォーム21に対して固定した状態で配置することができ、刈り取りの際の走行時の揺れの影響を受けることなく、送風用配管4を経由した遠心型送風装置3からの空気を刈取対象となる農作穀物に対し安定した状態で噴出させることができる。
【0067】
また、
図5、
図6に示す、個々の第2の空気噴出部6に、第2の空気噴出部材6の前方且つ刈刃よりも下方の位置から刈刃22側に向かって上向きに傾斜した部位を有し、且つ、刈刃22側の一部の部位が第2の空気噴出部材6の噴出部6aの上方に位置する起立部材9、9’を更に備えた、本実施形態の農作穀物刈取補助機構1によれば、倒伏した農作穀物等を起立させることができ刈刃22の下側に結実している農作穀物等の収穫ロスをより一層改善することができる。
また、
図6に示す、本実施形態の農作穀物刈取補助機構1によれば、半円錐形状の起立部9’bにより、倒伏した農作穀物等を起立させるとともに農作穀物を分草して、分草により押し曲げられた状態から復帰した農作穀物等を第2の空気噴出部材6による空気の噴出位置へ導き易くなり、刈刃22の下側に結実している農作穀物等の収穫ロスを更により一層改善することができる。
【0068】
このため、本実施形態によれば、農作穀物を刈り取る刈取部を装備し、刈取部が、プラットフォームの前側下縁部に刈刃を備えた大型コンバインにおいて、コストを格段に抑え、倒伏した農作穀物を起立させて収穫可能にするとともに、掻き込みリールを装備することなく、掻き込みリールを装備した構成に比べて、大豆や小豆等の豆類を刈り取る際の豆や莢の落下による収穫量のロスを改善することに加えて、更に、農作穀物を刈刃で刈り取った後に、刈り取った農作穀物をより確実にプラットフォーム内後方の横送りオーガに送り込み、収穫量のロスを極めて低減することの可能な農作穀物刈取補助機構及び農作穀物刈取補助機構を備えたコンバインが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の農作穀物刈取補助機構及び農作穀物刈取補助機構を備えたコンバインは、倒伏した農作穀物や、倒伏していなくても地面に近い高さ位置で結実している大豆や小豆等の豆類を収穫することが必要とされる分野に有用である。
【符号の説明】
【0070】
1 農作穀物刈取補助機構
1’ 倒伏農作穀物起立ユニット
1a 起立部材
1a-1 細長形状の板状鋼材
1a-2 V字又はU字形状の棒状鋼材
1a-3 雄螺子部
1b 第1の支持部材
1b-1 取付部
1b-2 縁部
1c 第2の支持部材
1c-1 取付部
2 軸部材
3 遠心型送風装置
3a1、3a2、3a3、3a4 プーリ
3b1、3b2 ベルト
3c ケース
3c1 排出口
3d 吸入部
4 送風用配管
4a 主配管
4b1 第1の分岐管
4b2 第2の分岐管
4c 蓋
4c1 固定部
5 第1の空気噴出部材(第1の管状部材)
5a 第1の噴出孔
5b 第1の分岐管接続部
6 第2の空気噴出部材
6a 噴出部
6a1 第2の噴出孔
6a1a 孔部
6a1b 開口
6b 第2の分岐管接続部
6c 連通部
6d 噴出空気ガイド板
7 第1の空気噴出部材支持部材
8 第2の管状部材
9、9’ 起立部材
9a、9’a1 板状の支持部
9a1 他端
9b 板状の起立部
9b1 刈刃側の端部
9’b 半円錐状の起立部
9’b1 先端
9’a2 補強支持部材
10 走行部
20 刈取部
21 プラットフォーム
22 刈刃
23 掻き込みリール
23a リール支持アーム
23b リール支軸
23c リール形成アーム
23d 連結片
23e タインバー
23f タイン
24 横送りオーガ
24a 円筒状部材
24b 螺旋状部材
24c 掻き込みフィンガ
25 分草部材
30 搬送部
31 コンベア
40 脱穀部
50 選別部
60 排藁処理部
71 走行部
72 刈取部
72a フレーム
72b 刈刃
72c 引き起し装置
72c1 引き起しケース
72c2 スプロケット
72c3 チェーン
72c4 タイン爪
72d 分草部材
80 ピックアップ装置
81 リフター部
82 リフター支持部
82a 固定部
82b 取付部
82b1 取付孔
82c 固定刃案内部
90 刈刃
90a 固定刃
90b 可動刃
91 刈刃支持フレーム
100 ボルト及びナット
101 エアー反射部材
102 起立部
103 パイプ
104 ターボブロワー