(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049637
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸マイクロカプセル、それを含む繊維、調製方法および用途
(51)【国際特許分類】
B01J 13/02 20060101AFI20220322BHJP
D01F 1/10 20060101ALI20220322BHJP
D01F 6/90 20060101ALI20220322BHJP
D01F 6/92 20060101ALI20220322BHJP
【FI】
B01J13/02
D01F1/10
D01F6/90 301
D01F6/92 301A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193749
(22)【出願日】2020-11-20
(31)【優先権主張番号】202010970914.6
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】513112603
【氏名又は名称】青島迦南美地家居用品有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】焦 安峰
(72)【発明者】
【氏名】殷 承祥
【テーマコード(参考)】
4G005
4L035
【Fターム(参考)】
4G005AA01
4G005BA01
4G005BB06
4G005BB13
4G005DB12Y
4G005DB12Z
4G005DC18Y
4G005DD08Z
4G005DD13Z
4G005DD24Y
4G005DD24Z
4G005EA03
4G005EA07
4L035AA05
4L035BB31
4L035KK04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ヒアルロン酸マイクロカプセル、およびそれを利用して調製されたヒアルロン酸を含む繊維を提供する。
【解決手段】ヒアルロン酸マイクロカプセルは、シェルとしてポリビニルブチラールを使用し、コアとしてヒアルロン酸を使用し、ヒアルロン酸がシェル材料によって被覆され、シェル材料が良好な安定性を有するため、ヒアルロン酸はシェル材料の内部に安定して保存できる。得られたヒアルロン酸マイクロカプセルの粒子径は0.2~1μmであり、紡糸工程中、ヒアルロン酸は、シェルの保護下でマトリックス材料に添加され、得られた繊維の強度に影響を及ぼさず、紡糸工程中、ヒアルロン酸マイクロカプセルのシェルが高温作用下で溶融し、紡糸後処理である酸洗い工程中、シェルが洗浄・除去され、得られたヒアルロン酸を含む繊維ではヒアルロン酸が均一に分散している。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ヒアルロン酸をエチレングリコールに加え、乳化剤を加えて、撹拌し、ヒアルロン酸溶液を取得するステップと、
(2)ポリビニルブチラールを溶媒に加え、ポリビニルブチラール溶液を取得するステップと、
(3)ステップ(1)で得られたヒアルロン酸溶液とステップ(2)で得られたポリビニルブチラール溶液を混合し、55~65℃で50~60min撹拌し、その後、45~50℃に冷却し50~60min撹拌し、その後、30~35℃に冷却して、前記ヒアルロン酸マイクロカプセルを取得するステップと、を含む方法によって調製されることを特徴とするヒアルロン酸マイクロカプセル。
【請求項2】
ステップ(1)において、前記ヒアルロン酸、エチレングリコールおよび乳化剤の重量比は1~4:6~10:0.3~0.6であることを特徴とする請求項1に記載のヒアルロン酸マイクロカプセル。
【請求項3】
ステップ(2)において、前記ポリビニルブチラールと溶媒の重量比は1:1~5であることを特徴とする請求項1に記載のヒアルロン酸マイクロカプセル。
【請求項4】
ステップ(3)において、前記ヒアルロン酸とポリビニルブチラールの重量比は1:1~4であることを特徴とする請求項1に記載のヒアルロン酸マイクロカプセル。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のヒアルロン酸マイクロカプセルおよびマトリックス材料によって調製される、ことを特徴とするヒアルロン酸を含む繊維。
【請求項6】
前記繊維中のヒアルロン酸の含有量は0.1~1wt%であり、前記マトリックス材料はナイロン、ポリエステル、ビスコースまたはアクリルを含む、ことを特徴とする請求項5に記載のヒアルロン酸を含む繊維。
【請求項7】
請求項6に記載のヒアルロン酸を含む繊維を調製する方法であって、
(1)ナイロンまたはポリエステルを基材として切り出し、凍結および粉砕して、基材粉末を取得するステップと、
(2)請求項1~4のいずれか1項に記載のヒアルロン酸マイクロカプセルをステップ(1)で得られた基材粉末に加え、均一に混合し、押し出して造粒し、マスターバッチを取得するステップと、
(3)ステップ(2)で得られたマスターバッチを基材ペレットに加え、押し出して造粒し、紡糸を溶融してヒアルロン酸を含む繊維を取得するステップと、を含む、ことを特徴とするヒアルロン酸を含む繊維の調製方法。
【請求項8】
ステップ(2)において、前記マスターバッチ中のヒアルロン酸の含有量は0.8~1.2wt%である、ことを特徴とする請求項7に記載のヒアルロン酸を含む繊維の調製方法。
【請求項9】
請求項6に記載のヒアルロン酸を含む繊維を調製する方法であって、
ビスコースまたはアクリルを溶媒に加え、紡糸溶液を取得し、紡糸溶液に請求項1~4のいずれか1項に記載のヒアルロン酸マイクロカプセルを加え、均一に混合し、湿式紡糸によって、前記ヒアルロン酸を含む繊維を取得するステップ、を含むことを特徴とする請求項6に記載のヒアルロン酸を含む繊維の調製方法。
【請求項10】
請求項5または6に記載のヒアルロン酸を含む繊維を原料として、織り、編み、縦糸編み、横糸編み、タオル織りおよび/または物理的結合の方法によって調製される、ことを特徴とする生地。
【請求項11】
衣類、家庭用繊維、装飾、顔面マスク、衛生用品またはペット用品における請求項10に記載の生地の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績製品の技術分野に属し、具体的には、ヒアルロン酸マイクロカプセル、それを含む繊維、調製方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
紡績衣類の快適性および機能性を向上させるために、従来技術では、保湿効果を有するヒアルロン酸を紡績材料に添加して、ヒアルロン酸を含む紡績品を得ることを試みている。従来技術では、ヒアルロン酸を生地の仕上げ助剤として生地に添加していたが、このような添加方法では、生地中のヒアルロン酸の含有量を効果的に増やすことができず、最大約500ppmに過ぎず、同時に、耐久性が悪く、水で10回洗浄した後の含有量は50%以上減少する。従来技術のヒアルロン酸を含む機能性紡績生地は仕上げ助剤によって実現されるため、生地のパディング・洗浄・乾燥工程でヒアルロン酸の活性成分が大量に失われる。このような技術では、ヒアルロン酸と紡績材料を効果的に融合できないので、使用中にヒアルロン酸が急激に失われるという技術的問題があり、従来のヒアルロン酸を含む繊維製品には、保水性、ヘルスケア、美容などの効果作用が顕著ではなく耐久性も悪いという技術的問題がある。
【発明の概要】
【0003】
上記の技術的問題を解決するために、本発明は、ヒアルロン酸をマイクロカプセル化して紡績繊維に添加し、ヒアルロン酸の含有量が高く、耐洗浄性および耐久性が良好なヒアルロン酸を含む機能性繊維を得る。
【0004】
本発明の目的は、ヒアルロン酸マイクロカプセルを提供することである。
【0005】
本発明の別の目的は、上記ヒアルロン酸マイクロカプセルによって調製される繊維を提供することである。
【0006】
本発明のさらに別の目的は、上記繊維を原料として得られた生地および生地の用途を提供することである。
【0007】
本発明によって提供されるヒアルロン酸マイクロカプセルは、以下のステップを含む方法によって調製される:
(1)ヒアルロン酸をエチレングリコールに添加し、乳化剤を加え、撹拌してヒアルロン酸溶液を取得する、
(2)ポリビニルブチラールを溶媒に加え、ポリビニルブチラール溶液を取得する、
【0008】
(3)ステップ(1)で得られたヒアルロン酸溶液とステップ(2)で得られたポリビニルブチラール溶液を混合した後、55~65℃で50~60min撹拌し、45~50℃に冷却して50~60min撹拌し、その後、30~35℃に冷却し、前記ヒアルロン酸マイクロカプセルを取得する。
【0009】
開発過程において、本発明者は、ヒアルロン酸マイクロカプセルの粒子径が紡糸繊維の強度に深刻な影響を及ぼし、ヒアルロン酸マイクロカプセルの粒子径が1μm以下であると、紡糸によってヒアルロン酸を繊維に導入できるとともに、繊維の強度に影響を与えないことを発見した。しかしながら、粒子径が1μm以下であるヒアルロン酸マイクロカプセルを入手することは非常に困難である。本発明によって提供されるヒアルロン酸マイクロカプセルは、ヒアルロン酸溶液とポリビニルブチラール溶液を混合して調製され、本発明によって提供されるヒアルロン酸マイクロカプセルの方法によって得られるヒアルロン酸マイクロカプセルのシェルはポリビニルブチラールであり、コアはヒアルロン酸であり、上記の方法によって得られるヒアルロン酸マイクロカプセルの粒子径は0.2~1μmである。本発明によって提供される調製方法は、操作が簡単で、得られるヒアルロン酸マイクロカプセルの粒子径は均一になり、安定した形状を有する。
【0010】
好ましくは、本発明で採用されるヒアルロン酸の分子量は3~5万である。ヒアルロン酸は二糖類の連続した長鎖分子構造であり、分子量は100万以上と大きく、その中間の分子量は20~40万であり、3~5万の分子量が小さいヒアルロン酸もある。分子量のサイズはヒアルロン酸の保水性および美容機能の一部に影響を与えない。分子量が大きいほど粘度が高く、化粧用顔面マスクに適しているが、配合液の濃度は高くない。本発明は、分子量3~5万のヒアルロン酸を採用することで、繊維中のヒアルロン酸の含有量を効果的に増加させることができる。
【0011】
好ましくは、ステップ(1)において、前記ヒアルロン酸、エチレングリコールおよび乳化剤の重量比は1~4:6~10:0.3~0.6である。好ましくは、前記乳化剤はスパン20およびトゥイーン20であり、前記スパン20とトゥイーン20の重量比は1:2~5である。
【0012】
好ましくは、ステップ(2)において、前記ポリビニルブチラールと溶媒の重量比は1:1~5である。好ましくは、ステップ(2)において、前記溶媒はジクロロメタンおよび/またはテトラクロロメタンである。
【0013】
好ましくは、ステップ(3)において、前記ヒアルロン酸とポリビニルブチラールの重量比は1:1~4である。
【0014】
本発明は、ヒアルロン酸を含む繊維を提供する。当該繊維は、上記のヒアルロン酸マイクロカプセルおよびマトリックス材料によって調製される。好ましくは、前記繊維中のヒアルロン酸の含有量は0.1~1wt%であり、前記マトリックス材料は、ナイロン、ポリエステル、ビスコースまたはアクリルを含む。
【0015】
ヒアルロン酸を紡糸原料に添加するには、以下の技術的問題がある。紡糸を溶融する方法では、ヒアルロン酸の融点が固定されないため、約100℃で軟化・接着し、供給口に溶けて付着して、供給や造粒ができなくなる。溶液紡糸を使用する場合、紡糸溶液はアルカリ性であり、紡糸溶液はヒアルロン酸を変性させ、ヒアルロン酸と紡糸溶液が直接接触するとヒアルロン酸がより硬くなり、紡糸ができなくなる。本発明は、ヒアルロン酸をマイクロカプセルで包み、紡糸原料と混合して紡糸する方法を採用することによって、上記の技術的問題を克服する。
【0016】
本発明によって提供される上記のヒアルロン酸を含む繊維の調製方法は、
(1)ナイロンまたはポリエステルを基材として切り出し、凍結・粉砕して基材粉末を取得するステップと、
(2)上記のヒアルロン酸マイクロカプセルをステップ(1)で得られた基材粉末に加え、均一に混合し、押し出して造粒し、マスターバッチを取得するステップと、
(3)ステップ(2)で得られたマスターバッチを基材ペレットに加え、押し出して造粒し、紡糸を溶融してヒアルロン酸を含む繊維を取得するステップ、を含む。
【0017】
好ましくは、ステップ(2)において、前記マスターバッチ中のヒアルロン酸の含有量は0.8~1.2wt%である。
【0018】
本発明は、ナイロンまたはポリエステルを紡糸原料として紡糸を溶融する方法を採用する。具体的には、ヒアルロン酸マイクロカプセルおよび紡糸マトリックス材料を原料としてマスターバッチを調製し、マスターバッチ法を使用して紡糸原料を得て、紡糸を溶融する。紡糸を溶融する工程では、ヒアルロン酸がシェル材料であるポリビニルブチラールによって保護されたままマトリックス材料と融合する。温度が170℃に達すると、ヒアルロン酸マイクロカプセルのシェル材料であるポリビニルブチラールが高温で溶融し、ヒアルロン酸が均一かつ安定して紡糸マトリックス材料に分散する。後続の酸性凝固浴工程でポリビニルブチラールが除去され、ヒアルロン酸を含む繊維材料が得られる。ここで、ヒアルロン酸は均一かつ安定して繊維に分散し、性能が安定で、耐洗浄性および持続効果があり、得られた繊維中のヒアルロン酸の含有量が高く、生産コストが低くなる。
【0019】
本発明は、上記ヒアルロン酸を含む繊維の別の調製方法を提供する。当該調製方法は、ビスコースまたはアクリルを溶媒に加え、紡糸溶液を取得するステップと、紡糸溶液中に上記のヒアルロン酸マイクロカプセルを加え、均一に混合し、湿式紡糸を使用して前記ヒアルロン酸を含む繊維を取得するステップを含む。
【0020】
本発明は、ビスコースまたはアクリルを紡糸原料として湿式紡糸の方法を採用する。具体的には、紡糸マトリックス材料を原料として紡糸溶液を調製し、その後、ヒアルロン酸マイクロカプセルを紡糸溶液に加える。ヒアルロン酸がポリビニルブチラールによって保護されるため、強アルカリ性の紡糸溶液の影響を受けず、均一に混合して紡糸する。紡糸工程では、温度が170℃に達すると、ヒアルロン酸マイクロカプセルのシェル材料であるポリビニルブチラールが高温で溶融し、ヒアルロン酸が均一かつ安定して紡糸マトリックス材料に分散する。後続の酸性凝固浴工程でポリビニルブチラールが除去され、ヒアルロン酸を含む繊維材料が得られる。ここで、ヒアルロン酸は均一かつ安定して繊維に分散し、性能が安定で、耐洗浄性および持続効果があり、得られた繊維中のヒアルロン酸の含有量が高く、生産コストが低くなる。
【0021】
本発明によって提供される上記のヒアルロン酸を含む繊維は、織り、編み、縦糸編み、横糸編み、タオル織りおよび/または物理的結合などの様々な方法によって生地として調製され、得られた生地は、衣類、家庭用繊維、装飾、顔面マスク、衛生用品またはペット用品に応用され、保湿性、美容効果を果たす。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0023】
1.本発明によって提供されるヒアルロン酸マイクロカプセルは、シェルとしてポリビニルブチラールを使用し、コアとしてヒアルロン酸を使用し、ヒアルロン酸がシェル材料によって被覆され、シェル材料が良好な安定性を有するため、ヒアルロン酸は安定してシェル材料の内部に保存でき、且つ本発明で得られたヒアルロン酸マイクロカプセルの粒子径は0.2~1μmであるため、粒子径が小さく紡糸繊維の強度に影響を及ぼさない。
【0024】
2.本発明は、マイクロカプセル化したヒアルロン酸を原料として紡糸マトリックス原料に添加し、紡糸溶融または溶液紡糸方法によってヒアルロン酸を含む紡績繊維を取得する。本発明は、ナイロンまたはポリエステルを紡糸原料として紡糸を溶融する方法を採用する。ヒアルロン酸マイクロカプセルおよび紡糸マトリックス材料を原料としてマスターバッチを調製し、マスターバッチ法によって紡糸原料を取得し、その後、紡糸を溶融する。紡糸を溶融する工程では、ヒアルロン酸がシェル材料であるポリビニルブチラールによって保護されたままマトリックス材料と融合する。温度が170℃に達すると、ヒアルロン酸マイクロカプセルのシェル材料であるポリビニルブチラールが高温で溶融し、ヒアルロン酸が均一かつ安定して紡糸マトリックス材料に分散する。後続の酸性凝固浴工程でポリビニルブチラールが除去され、ヒアルロン酸を含む繊維材料が得られる。ここで、ヒアルロン酸は均一かつ安定して繊維に分散し、性能が安定で、耐洗浄性および持続効果があり、得られた繊維中のヒアルロン酸の含有量が高く、生産コストが低くなる。ビスコースまたはアクリルを紡糸原料として湿式紡糸方法を採用する。具体的には、まず紡糸マトリックス材料を原料として紡糸溶液を調製し、その後、ヒアルロン酸マイクロカプセルを紡糸溶液に加える。ヒアルロン酸がポリビニルブチラールによって保護されるため、強アルカリ性の紡糸溶液の影響を受けず、その後、均一に混合して紡糸する。紡糸工程では、温度が170℃に達すると、ヒアルロン酸マイクロカプセルのシェル材料であるポリビニルブチラールが高温で溶融し、ヒアルロン酸が均一かつ安定して紡糸マトリックス材料に分散する。後続の酸性凝固浴工程でポリビニルブチラールが除去され、ヒアルロン酸を含む繊維材料が得られる。ここで、ヒアルロン酸は均一かつ安定して繊維に分散し、性能が安定で、耐洗浄性および持続効果があり、得られた繊維中のヒアルロン酸の含有量が高く、生産コストが低くなる。
【0025】
3.本発明によって提供されるヒアルロン酸を含む繊維では、ヒアルロン酸が均一かつ安定して繊維に分散しているため、使用中、繊維中のヒアルロン酸が皮膚との接触過程でゆっくりと放出され、持続した深部の保湿および美容効果を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の実施例または従来技術の技術的解決策をより明確に説明するために、以下、実施例または従来技術の説明に使用される必要な図面を簡単に説明するが、以下説明する図面は本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者が創造的な労働をせずにこれらの図面に基づいて他の図面を得ることができるのは言うまでもない。
【
図1】実施例3のヒアルロン酸マイクロカプセルの粒子径分布図である。
【
図2】実施例3のヒアルロン酸マイクロカプセルの走査型電子顕微鏡の概略図である。
【
図3】市販のビスコース繊維の縦方向電子顕微鏡の概略図である。
【
図4】実施例6のビスコース繊維の縦方向電子顕微鏡の概略図である。
【
図5】市販ビスコース繊維の断面電子顕微鏡の概略図である。
【
図6】実施例6のビスコース繊維の断面電子顕微鏡の概略図である。
【
図7】実施例6のビスコース繊維の断面の異なる倍数の走査型電子顕微鏡の概略図である。
【
図8】実施例6のビスコース繊維の断面の異なる倍数の走査型電子顕微鏡の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の目的、技術的解決策および利点をより明確に説明するために、以下、本発明の技術的解決策を詳細に説明する。明らかに、説明される実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例ではない。本発明中の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をせずに得られたすべての他の実施形態は、本発明の保護範囲に含まれる。
【0028】
本発明で使用されるヒアルロン酸は市販品であり、分子量は3~5万である。
【0029】
実施例1
ヒアルロン酸マイクロカプセルは、以下のステップを含む方法によって調製される:
(1)ヒアルロン酸10gを60gのエチレングリコールに添加し、1gのスパン20と2gのトゥイーン20を含む3gの乳化剤を加え、撹拌してヒアルロン酸溶液を取得する、
(2)ポリビニルブチラール10gを10gのジクロロメタンに加え、ポリビニルブチラール溶液を取得する、
(3)ステップ(1)で得られた10gのヒアルロン酸溶液とステップ(2)で得られた10gのポリビニルブチラール溶液を混合し、55℃で60min撹拌し、45℃に冷却して60min撹拌し、その後、35℃に冷却し、前記ヒアルロン酸マイクロカプセルを取得する。
【0030】
実施例2
ヒアルロン酸マイクロカプセルは、以下のステップを含む方法によって調製される:
(1)ヒアルロン酸40gを100gのエチレングリコールに添加し、1gのスパン20と5gのトゥイーン20を含む6gの乳化剤を加え、撹拌してヒアルロン酸溶液を取得する、
(2)ポリビニルブチラール20gを100gのテトラクロロメタンに加え、ポリビニルブチラール溶液を取得する、
(3)ステップ(1)で得られた20gのヒアルロン酸溶液とステップ(2)で得られた80gのポリビニルブチラール溶液を混合し、65℃で50min撹拌し、50℃に冷却して50min撹拌し、その後、30℃に冷却し、前記ヒアルロン酸マイクロカプセルを取得する。
【0031】
実施例3
ヒアルロン酸マイクロカプセルは、以下のステップを含む方法によって調製される:
(1)ヒアルロン酸20gを80gのエチレングリコールに添加し、1gのスパン20と3gのトゥイーン20を含む4gの乳化剤を加え、撹拌してヒアルロン酸溶液を取得する、
(2)ポリビニルブチラール20gを40gのテトラクロロメタンと40gのジクロロメタンの混合溶液に加え、ポリビニルブチラール溶液を取得する、
(3)ステップ(1)で得られた40gのヒアルロン酸溶液とステップ(2)で得られた80gのポリビニルブチラール溶液を混合し、60℃で60min撹拌し、50℃に冷却して60min撹拌し、その後、30℃に冷却し、前記ヒアルロン酸マイクロカプセルを取得する。
【0032】
実施例4
ヒアルロン酸を含むナイロン繊維は、上記ヒアルロン酸マイクロカプセルおよびナイロンによって調製され、得られた繊維中の前記ヒアルロン酸の含有量は0.1wt%であり、
その調製方法は以下のステップを含む:
(1)ナイロンを基材として切り出し、凍結および粉砕し、基材粉末を取得する、
(2)実施例1で得られた8gのヒアルロン酸マイクロカプセルをステップ(1)で得られた992gの基材粉末に加え、均一に混合し、押し出して造粒し、マスターバッチを取得する、
(3)ステップ(2)で得られた1kgのマスターバッチを7kgのナイロンペレットに加え、押し出して造粒し、紡糸を溶融してヒアルロン酸を含むナイロン繊維を取得する。
【0033】
実施例5
ヒアルロン酸を含むポリエステル繊維は、上記ヒアルロン酸マイクロカプセルおよびポリエステルによって調製され、得られた繊維中の前記ヒアルロン酸の含有量は0.5wt%であり、
その調製方法は以下のステップを含む:
(1)ポリエステルを基材として切り出し、凍結および粉砕して、基材粉末を取得する、
(2)実施例2で得られた12gのヒアルロン酸マイクロカプセルをステップ(1)で得られた988gの基材粉末に加え、均一に混合し、押し出して造粒し、マスターバッチを取得する、
(3)ステップ(2)で得られた1kgのマスターバッチを5kgのポリエステルペレットに加え、押し出して造粒し、紡糸を溶融してヒアルロン酸を含むポリエステル繊維を取得する。
【0034】
実施例6
ヒアルロン酸を含むビスコース繊維は、上記ヒアルロン酸マイクロカプセルおよびビスコースによって調製され、得られた繊維中の前記ヒアルロン酸の含有量は1wt%であり、
その調製方法は以下のステップを含む:
500gのビスコースを溶媒に加え、紡糸溶液を得、紡糸溶液に実施例3で得られた5gのヒアルロン酸マイクロカプセルを加え、均一に混合し、湿式紡糸によって前記ヒアルロン酸を含むビスコース繊維を取得する。
【0035】
実施例7
ヒアルロン酸を含むアクリル繊維は、上記ヒアルロン酸マイクロカプセルおよびアクリルによって調製され、得られた繊維中の前記ヒアルロン酸の含有量は0.3wt%であり、
その調製方法は以下のステップを含む:
500gのアクリルを溶媒に加え、紡糸溶液を取得し、紡糸溶液に実施例3で得られた1.5gのヒアルロン酸マイクロカプセルを加え、均一に混合し、湿式紡糸によって前記ヒアルロン酸を含むアクリル繊維を取得する。
【0036】
試験例
1. ヒアルロン酸マイクロカプセルの特性評価
1.1 実施例3で得られたヒアルロン酸マイクロカプセルの粒子径分布を測定し、結果を
図1に示す。
【0037】
図1の結果から分かるように、本発明の実施例3で得られたヒアルロン酸マイクロカプセルの粒子径は1μm以下である。これは、本発明の方法によって得られるヒアルロン酸マイクロカプセルが均一で小さい粒子径を有することを示している。
【0038】
1.2 SEMによって実施例3で得られたヒアルロン酸マイクロカプセルの特性を評価し、結果を
図2に示す。
【0039】
図2の結果から分かるように、本発明では、特定の形態のないヒアルロン酸がポリビニルブチラールシェルによって被覆される。また、
図2からもわかるように、得られたヒアルロン酸マイクロカプセルは均一な粒子径を有する。
【0040】
2. 実施例6で得られたヒアルロン酸を含むビスコース繊維を試験群とし、市販のビスコース繊維を対照群とし、様々な性能を測定する。
【0041】
2.1 回復率の測定
試験群および対照群の繊維をそれぞれ10本取り、試験群および対照群のビスコース繊維の回復率を測定し、各群の平均値を算出する。
【0042】
その結果、試験群の回復率は17.53%であり、対照群の回復率は12.07%であった。
【0043】
回復率とは紡績材料の吸湿度を示す。測定結果は、本発明の実施例6によって提供されるヒアルロン酸を含むビスコース繊維は、吸湿度が大きく、空気中の水分を吸収でき、使用中、快適性を確保するしながら皮膚の水分含有率を増加させることができることを示している。
【0044】
2.2 SEMを使用して試験群および対照群で得られたビスコース繊維の縦方向および断面の特性を評価し、結果を
図3~6に示す。
【0045】
図3~6の結果から分かるように、本発明の実施例6によって提供されるヒアルロン酸を含むビスコース繊維は市販の通常ビスコース繊維と形態が同じである。試験群および対照群の断面の電子顕微鏡図から分かるように、本発明の実施例6によって提供されるビスコース繊維は市販のビスコース繊維と断面が基本的に同じである。これは、本発明の実施例6によって提供されるビスコース繊維の形態が均一で、ヒアルロン酸が均一かつ安定してビスコースマトリックスに分散していることを示している。
【0046】
2.3 SEMを使用して試験群で得られたビスコース繊維の異なる拡大倍率のさまざまな断面走査図を測定し、結果を
図7および
図8に示す。
【0047】
図7および
図8から分かるように、本発明の実施例6によって提供されるヒアルロン酸マイクロカプセルおよびビスコースによって調製されるヒアルロン酸を含むビスコース繊維の断面は滑らかである。これは、ヒアルロン酸マイクロカプセルのシェル材料が調製過程で除去され、ヒアルロン酸が均一にビスコース繊維に分散していることを示している。
【0048】
3. ヒアルロン酸の溶出性
実施例6で得られたヒアルロン酸を含むビスコース繊維をそれぞれ1g、10本取り、2群に均等に分割する。10%エタノール溶液を5部(各10g)取り、水を5部(各10g)取り、一方の群のビスコース繊維をそれぞれ10%エタノール溶液に浸漬させ、他方の群のビスコース繊維をそれぞれ水に浸漬させ、2h、24h、48h経過後それぞれ繊維中のヒアルロン酸の溶出量を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
【0050】
表1の結果から分かるように、本発明によって提供されるヒアルロン酸を含むビスコース繊維は、ゆっくりと溶出し、ヒアルロン酸を含む繊維が皮膚と接触すると、ヒアルロン酸がゆっくりと溶出して皮膚に接触し、皮膚の水分含有量を増加させ、美容の効果を果たす。
【0051】
以上、本発明の具体的な実施形態を説明したが、本発明の保護範囲はこれらに限定されない。当業者は、本発明が開示した技術範囲内で容易に様々な変更や置換を想到でき、それらはすべて本発明の保護範囲に含まれる。したがって、本発明の保護範囲は特許請求の範囲によって示される。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ヒアルロン酸をエチレングリコールに加え、乳化剤を加えて、撹拌し、ヒアルロン酸溶液を取得するステップと、
(2)ポリビニルブチラールを溶媒に加え、ポリビニルブチラール溶液を取得するステップと、
(3)ステップ(1)で得られたヒアルロン酸溶液とステップ(2)で得られたポリビニルブチラール溶液を混合し、55~65℃で50~60min撹拌し、その後、45~50℃に冷却し50~60min撹拌し、その後、30~35℃に冷却して、ヒアルロン酸マイクロカプセルを取得するステップと、を含む方法によって調製されることを特徴とするヒアルロン酸マイクロカプセルの調製方法。
【請求項2】
ステップ(1)において、前記ヒアルロン酸、エチレングリコールおよび乳化剤の重量比は1~4:6~10:0.3~0.6であることを特徴とする請求項1に記載のヒアルロン酸マイクロカプセルの調製方法。
【請求項3】
ステップ(2)において、前記ポリビニルブチラールと溶媒の重量比は1:1~5であることを特徴とする請求項1に記載のヒアルロン酸マイクロカプセルの調製方法。
【請求項4】
ステップ(3)において、前記ヒアルロン酸とポリビニルブチラールの重量比は1:1~4であることを特徴とする請求項1に記載のヒアルロン酸マイクロカプセルの調製方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の調製方法によって調製されたヒアルロン酸マイクロカプセルおよびマトリックス材料によって調製される、ことを特徴とするヒアルロン酸を含む繊維の調製方法。
【請求項6】
前記繊維中のヒアルロン酸の含有量は0.1~1wt%であり、前記マトリックス材料はナイロン、ポリエステル、ビスコースまたはアクリルを含む、ことを特徴とする請求項5に記載のヒアルロン酸を含む繊維の調製方法。
【請求項7】
(1)ナイロンまたはポリエステルを基材として切り出し、凍結および粉砕して、基材粉末を取得するステップと、
(2)請求項1~4のいずれか1項に記載の調製方法によって調製されたヒアルロン酸マイクロカプセルをステップ(1)で得られた基材粉末に加え、均一に混合し、押し出して造粒し、マスターバッチを取得するステップと、
(3)ステップ(2)で得られたマスターバッチを基材ペレットに加え、押し出して造粒し、紡糸を溶融してヒアルロン酸を含む繊維を取得するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項6に記載のヒアルロン酸を含む繊維の調製方法。
【請求項8】
ステップ(2)において、前記マスターバッチ中のヒアルロン酸の含有量は0.8~1.2wt%である、ことを特徴とする請求項7に記載のヒアルロン酸を含む繊維の調製方法。
【請求項9】
ビスコースまたはアクリルを溶媒に加え、紡糸溶液を取得し、紡糸溶液に請求項1~4のいずれか1項に記載の調製方法によって調製されたヒアルロン酸マイクロカプセルを加え、均一に混合し、湿式紡糸によって、前記ヒアルロン酸を含む繊維を取得するステップ、を含むことを特徴とする請求項6に記載のヒアルロン酸を含む繊維の調製方法。
【請求項10】
請求項5または6に記載の調製方法によって調製されたヒアルロン酸を含む繊維を原料として、織り、編み、縦糸編み、横糸編み、タオル織りおよび/または物理的結合の方法によって調製される、ことを特徴とする生地の調製方法。
【請求項11】
衣類、家庭用繊維、装飾、顔面マスク、衛生用品またはペット用品における請求項10に記載の調製方法によって調製された生地の使用方法。