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▶ イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

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  • 特開-CAMデータセットを作成する方法 図1
  • 特開-CAMデータセットを作成する方法 図2
  • 特開-CAMデータセットを作成する方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049672
(43)【公開日】2022-03-29
(54)【発明の名称】CAMデータセットを作成する方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/34 20060101AFI20220322BHJP
【FI】
A61C13/34 Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021136230
(22)【出願日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】20196430.1
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】596032878
【氏名又は名称】イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ガイアー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ミッターホーファー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】CAMデータセット(CAM)の作成方法を提供する。
【解決手段】第1の空間的な基準ジオメトリのための第1の基準データを有する歯科補綴物のデジタルCADデータセットを作成し(S201)、第2の空間的な基準ジオメトリのための第2の基準データを有するデジタルCAMデータセットを作成し(S202)、CADデータセットの第1の空間的な基準ジオメトリをCAMデータセットの第2の空間的な基準ジオメトリに対して整列させることによってCADデータセットをCAMデータセットに統合する(S203)、ステップを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の空間的な基準ジオメトリ(150-1)のための第1の基準データを有する歯科補綴物(103)のデジタルCADデータセット(CAD)を作成し(S201);
第2の空間的な基準ジオメトリ(150-2)のための第2の基準データを有するデジタルCAMデータセット(CAM)を作成し(S202);
前記CADデータセット(CAD)の第1の空間的な基準ジオメトリ(150-1)を前記CAMデータセット(CAM)の第2の空間的な基準ジオメトリ(150-2)に対して整列させることによって前記CADデータセット(CAD)を前記CAMデータセット(CAM)に統合する(S203)、
ステップを有するCAMデータセット(CAM)の作成方法。
【請求項2】
CAMデータセット(CAM)が歯科補綴物(103)を製造するためのブランク(101)のデータを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ブランク(101)のデータが円形のプレートを再現する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ブランク(101)のデータが歯肉感を形成するためのブランク(101)の不均一構造を再現する請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
不均一構造が波形によって形成される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第1および/または第2の空間的な基準ジオメトリ(105-1,105-2)が空間軸および/または基準交差部を定義する請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
空間軸がブランク(101)の一表面に対して直角に方向付けられる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
CAMデータセット(CAM)が複数の予め記憶されたCAMデータセットの中から選択可能である請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
CAMデータセット(CAM)に基づいて歯科補綴物(103)が自動的に製造される請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
CAMデータセット(CAM)が歯科補綴物をフライス加工するためのフライス加工データに変換される請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
フライス加工データに基づいてフライス装置(107)によって歯科補綴物(103)がフライス加工される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
コンピュータによってコンピュータプログラムを実行する際に請求項1ないし11のいずれかに係る方法を前記コンピュータに実行させる命令を含んでなるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、CAMデータセットを作成する方法とその方法を実行するためコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
CAD方法によって歯科補綴物を製造する際に、歯科補綴物のためのCADデータセットが不正確にCAMデータセットに組み込まれることに起因する不正確性が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って本発明の目的は、歯科補綴物のCAD製造を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記の課題は、独立請求項に係る技術的な対象によって解決される。技術的に好適な追加の構成形態が、従属請求項、明細書、および添付図面の対象である。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、第1の空間的な基準ジオメトリのための第1の基準データを有する歯科補綴物のデジタルCADデータセットを作成し;第2の空間的な基準ジオメトリのための第2の基準データを有するデジタルCAMデータセットを作成し;前記CADデータセットの第1の空間的な基準ジオメトリを前記CAMデータセットの第2の空間的な基準ジオメトリに対して整列させることによって前記CADデータセットを前記CAMデータセットに統合するステップを有するCAMデータセットの作成方法によって前記の技術的な課題が解決される。前記の基準ジオメトリは、例えば基準交差部等の基準ジオメトリによって定義することができる。この方法によって、CADデータセットを最適にCAMデータセットに統合することができ、後のフライス加工方法における歯科補綴物の製造が改善されるという技術的な利点が達成される。
【0006】
この方法の技術的に好適な実施形態によれば、CAMデータセットが歯科補綴物を製造するためのブランクのデータを含む。それによって例えば、歯科補綴物の構成を最良にブランクに適合させることが可能になるという技術的な利点が達成される。
【0007】
この方法の別の技術的に好適な実施形態によれば、ブランクのデータが円形のプレートを再現する。それによって例えば、歯科補綴物を製造するための材料消費が削減されるという技術的な利点が達成される。
【0008】
この方法の別の技術的に好適な実施形態によれば、ブランクのデータが歯肉感を形成するためのブランクの不均一構造を再現する。それによって例えば、簡便な方式で現実的な歯肉縁を有する歯科補綴物を製造することができるという技術的な利点が達成される。
【0009】
この方法の別の技術的に好適な実施形態によれば、不均一構造が波形によって形成される。それによって例えば、波形によって現実的な歯肉縁が形成されるという技術的な利点が達成される。
【0010】
この方法の別の技術的に好適な実施形態によれば、第1および/または第2の空間的な基準ジオメトリが空間軸および/または基準交差部を定義する。それによって例えば、両方のデータセットを相互に適正に整列させ得るという技術的な利点が達成される。
【0011】
この方法の別の技術的に好適な実施形態によれば、空間軸がブランクの一表面に対して直角に方向付けられる。それによって例えば、歯科補綴物をより良好に可視化できるという技術的な利点が達成される。
【0012】
この方法の別の技術的に好適な実施形態によれば、CAMデータセットが複数の予め記憶されたCAMデータセットの中から選択可能である。それによって例えば、歯科補綴物に適合させられる多様なCAMデータセットが使用可能になるという技術的な利点が達成される。
【0013】
この方法の別の技術的に好適な実施形態によれば、CAMデータセットに基づいて歯科補綴物が自動的に製造される。それによって例えば、歯科補綴物が高速に製造可能になるという技術的な利点が達成される。
【0014】
この方法の別の技術的に好適な実施形態によれば、CAMデータセットが歯科補綴物をフライス加工するためのフライス加工データに変換される。それによって例えば、簡便な方式で歯科補綴物を製造できるという技術的な利点が達成される。
【0015】
この方法の別の技術的に好適な実施形態によれば、フライス加工データに基づいてフライス装置によって歯科補綴物がフライス加工される。それによっても例えば、簡便な方式で歯科補綴物を製造できるという技術的な利点が達成される。
【0016】
第2の態様によれば、コンピュータによってコンピュータプログラムを実行する際に請求項1ないし11のいずれかに係る方法をコンピュータに実行させるような命令を含んでなるコンピュータプログラムによって技術的な課題が解決される。そのコンピュータプログラムによって、前記第1の態様に係る方法と同様な技術的利点が達成される。
【0017】
本発明の実施例が添付図面によって示されており、後述する説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】歯科補綴物の製造方法を示したブロック線図である。
図2】CADおよびCAMデータセットを示した概略説明図である。
図3】CAMデータセットを作成する方法を示したブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1には、歯科補綴物の製造方法のブロック線図が示されている。ステップS101において、歯科補綴物の空間的な形状を定義する歯科CADデータセット内に、ブランクの基準ジオメトリがCAMデータセットとして取り込まれる。そのCAMデータセットは、例えばブランクのプレートの周囲長および高さを示す。歯肉縁を形成するための波形も同様に可視化することができる。ブランクのためのCAMデータセットは、形状に加えて、例えば外観的な歯肉感を形成するためのブランクの不均一構造等のブランクの特徴を定義することができる。その構造は、不均一な色配分(赤/白)を波形内に有する多色のブランクによって形成することができる。しかしながら、同様にブランクのためのCAMデータセットによって再現される、複数の材料からなる不均一な材料配分がブランク内に存在することも可能である。
【0020】
ステップS102において、例えばプレート中、すなわちCAMデータセット中において補綴物を整列させるよう作用する基準交差部等の基準ジオメトリが定義される。その際基準ジオメトリは、歯科補綴物の空間的な領域の外側に存在することができる。基準ジオメトリは、同様にCADデータセット内に取り込まれる独立したデータセット内に予め定義することができる。一般的に、基準ジオメトリとしてその他の幾何学的形態あるいは構造を使用することもできる。すなわちステップS103においては、基準ジオメトリを補綴物の設計に最良に適応させる。
【0021】
ステップS104において、歯あるいは歯肉の軌道が所与のジオメトリを有する配置に一致するかどうかが検査される。否定された場合、ステップS105においてCADソフトウェアのツールを使用して、歯あるいは歯肉の接続部が所与のジオメトリに沿って延在するように設計が調整される。
【0022】
前記の検査が成功であった場合、ステップS106において、取り込まれたジオメトリ上の交差に沿って基準交差が整列させられ、義歯床に算入される。
【0023】
ステップS107において、歯科補綴物のデータがSTL形式で作成される。その際データセットの変換が実行される。しかしながら、一般的に後のフライス加工プロセスに適するものであれば、その他のデータ形式を使用することもできる。その際にデータセット内にメタデータを統合することもできる。ステップS108において、歯科補綴物のためのCADデータセットがブランクのためのCAMデータセット内に統合される。
【0024】
ステップS109においてZ軸方向における歯科補綴物の整列が基準交差を使用して実行され、ステップS110においては基準交差を使用して歯科補綴物がX軸およびY軸方向において整列させられる。前記の整列は歯科補綴物のCADデータセットの回転および移動によって達成される。その後、ブランクの波形内の不均一な色配分の歯科補綴物の歯の配置が実行される。それによってフライス加工に際しての最適な美容効果が達成される。整列は、CADデータセットの空間的な基準ジオメトリをCAMデータセットの第2の基準ジオメトリに対して移動および/または回転させるような方式で実行することができる。
【0025】
ステップS111において、フライス加工のためのデータが放出され、制御されたフライス装置によってブランクから歯科補綴物が全自動で製造される。
【0026】
図2は、CADデータセットとCAMデータセットを概略的に示したものである。CADデータセットは、CADソフトウェアを使用した歯科補綴物103の空間的な企画および設計の結果である。この企画および設計に際して、歯科補綴物103の形状および色設計が決定される。
【0027】
CAMデータセットはブランク101の形状と特徴を再現し、切削機械あるいは三次元プリンタを制御するよう機能する。その目的のため、例えばフライス工具を使用してブランク101から歯科補綴物103を切り出すフライス装置107にCAMデータセットが伝送される。
【0028】
CADデータセットCADは、例えば基準交差部あるいは基準点等の基準ジオメトリ105-1に関するデータを含む。同様にCAMデータセットCAMも、例えば基準交差部あるいは基準点等の基準ジオメトリ105-2に関する所与のデータを含む。両方の基準ジオメトリ105-1と105-2は、CADデータセットCADをCAMデータセット内において整列させ、従って歯科補綴物の設計を最適に整列させることができように作用する。そのことは、例えばCADデータセットを基準ジオメトリ105-1および105-2の周りあるいはそれらに沿って回転あるいは移動させることによって実行される。加えて、歯科補綴物103をCADソフトウェアからCAMソフトウェアへ適正位置で移転することができる。
【0029】
それによって、例えばいわゆるシェルディスク型補綴物等の設計の、CADソフトウェアからCAMソフトウェアへの適正位置における移転が保証される。使用されるシェルディスクジオメトリ内に統合される基準ジオメトリ105-1を使用して、最後のステップとしてCADソフトウェア内で歯科補綴物103が統合される。基準ジオメトリ105-1は、設計される歯科補綴物103のデータセットの一部である。
【0030】
CAMソフトウェア内において、同じ基準ジオメトリ105-2を有するシェルディスクに対するデータセットが記録される。設計された基準ジオメトリ105-1を有する歯科補綴物103を取り込むことができ、ネスティング中に基準ジオメトリ105-1の支援によってシェルディスクの基準ジオメトリ105-2に対して整列させることができる。それによって、シェルディスク内における歯科補綴物103の空間的座標(X,Y,Z)が決定される。
【0031】
図3には、CAMデータセットを作成する方法のブロック線図が示されている。第1のステップS201において歯科補綴物のためのデジタルCADデータセットが作成され、それが第1の空間的な基準ジオメトリのための基準データを含む。基準データは、例えばCADデータセット内の特定の空間位置を定義するデータである。空間位置は、例えば基準交差部等の基準ジオメトリによって定義することができる。
【0032】
ステップS202において、第2の空間的な基準ジオメトリのための第2の基準データを有するデジタルCAMデータセットが作成される。ステップS203において、CADデータセットの第1の空間的な基準ジオメトリをCAMデータセットの第2の空間的な基準ジオメトリに対して整列させることによって、CADデータセットがCAMデータセットに統合される。
【0033】
このCAMデータセットを作成する方法によって、歯科補綴物103を自動的、高速、かつ適正位置で、CADソフトウェアからCAMソフトウェアに移転することができる。
【0034】
本発明の個々の実施形態に関連して説明および図示した全ての特徴を、多様な組み合わせで本発明の対象とすることができ、それによって同時に有効な利点が達成される。
【0035】
全ての方法ステップは、各方法ステップを実行するために適した装置を使用して実行することができる。対象である特徴によって実行される全ての機能は、この方法における方法ステップとすることができる。
【0036】
本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ定義され、説明中に記述されたあるいは図示された特徴によって限定されるものではない。
図1
図2
図3
【外国語明細書】