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特開2022-49753給餌システム、給餌方法及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022049753
(43)【公開日】2022-03-30
(54)【発明の名称】給餌システム、給餌方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/95 20170101AFI20220323BHJP
【FI】
A01K61/95
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020155954
(22)【出願日】2020-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】520361298
【氏名又は名称】ユニマック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 賢司
(74)【代理人】
【識別番号】100170748
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】北村 照幸
(72)【発明者】
【氏名】松尾 斉
(72)【発明者】
【氏名】小池 章太
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104CF16
2B104CF18
(57)【要約】
【課題】より適切な量の餌を水中に供給することが可能な給餌システム等を提供する。
【解決手段】本発明のある局面に従う給餌システムは、養殖魚に餌を供給するように構成されている。給餌システムは、マイクと、ソナーと、給餌部と、制御部とを備えている。マイクは、水面よりも上方に位置する。ソナーは、水中に位置する。給餌部は、養殖魚に餌を供給するように構成されている。制御部は、マイクの出力及びソナーの出力に基づいて給餌部を制御するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
養殖魚に餌を供給するように構成された給餌システムであって、
水面よりも上方に位置するマイクと、
水中に位置するソナーと、
前記餌を前記養殖魚に供給するように構成された給餌部と、
前記マイクの出力及び前記ソナーの出力に基づいて前記給餌部を制御するように構成された制御部とを備える、給餌システム。
【請求項2】
タイマーをさらに備え、
前記制御部は、前記タイマーによる計測結果に基づいて前記餌の供給を開始するように前記給餌部を制御する一方、前記マイクの出力及び前記ソナーの出力に基づいて前記餌の供給を停止するように前記給餌部を制御する、請求項1に記載の給餌システム。
【請求項3】
前記給餌システムによる前記餌の供給は、第1給餌と、前記第1給餌の後に行なわれる第2給餌とを含み、
前記制御部は、前記タイマーによる計測結果に基づいて前記第1給餌を開始するように前記給餌部を制御する一方、前記マイクの出力及び前記ソナーの出力に基づいて前記第2給餌を開始するように前記給餌部を制御する、請求項2に記載の給餌システム。
【請求項4】
ユーザの携帯端末にアラートを送信するように構成された通信部をさらに備え、
前記制御部は、前記第2給餌が開始されなかった場合に、前記アラートを前記携帯端末に送信するように前記通信部を制御する、請求項3に記載の給餌システム。
【請求項5】
前記給餌システムによる前記餌の供給は、第1給餌と、前記第1給餌の後に行なわれる第2給餌とを含み、
前記制御部は、前記タイマーによる計測結果に基づいて前記第1給餌を停止するように前記給餌部を制御する一方、前記マイクの出力及び前記ソナーの出力に基づいて前記第2給餌を停止するように前記給餌部を制御する、請求項2に記載の給餌システム。
【請求項6】
前記餌の供給量の上限値を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記給餌部による前記餌の供給量が前記上限値に達すると、前記マイクの出力及び前記ソナーの出力に関係なく、前記餌の供給を停止するように前記給餌部を制御する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の給餌システム。
【請求項7】
養殖魚に餌を供給する給餌方法であって、
水面よりも上方において集音し、第1データを生成するステップと、
水中において前記養殖魚の分布を検出し、第2データを生成するステップと、
前記第1データ及び前記第2データに基づいて前記養殖魚に前記餌を供給するステップとを含む、給餌方法。
【請求項8】
養殖魚に餌を供給するように構成された給餌システムの制御プログラムであって、
前記給餌システムは、
水面よりも上方に位置するマイクと、
水中に位置するソナーと、
前記養殖魚に前記餌を供給するように構成された給餌部とを備え、
前記制御プログラムは、前記マイクの出力及び前記ソナーの出力に基づいて前記給餌部を制御する処理をコンピュータに実行させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給餌システム、給餌方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開平4-304830号公報(特許文献1)は、養殖魚に給餌する自動給餌装置を開示する。この自動給餌装置は、魚群センサと、給餌手段と、給餌制御手段とを備えている。給餌制御手段は、魚群センサによって検知された所定深度域の魚群分布密度に基づいて養殖魚の摂餌状況を推定し給餌手段を制御する。この自動給餌装置によれば、養殖魚の所定深度域の魚群分布密度基づく摂餌状況に応じて給餌制御が行なわれるため、飼料効率を向上させることができる(特許文献1参照)。
【0003】
特開平10-313730号公報(特許文献2)は、水棲生物に給餌する自動給餌装置を開示する。この自動給餌装置は、水中音を計測する集音計測手段と、給餌量制御手段とを備えている。この自動給餌装置においては、集音計測手段による計測結果に基づいて水棲生物の摂餌行動の強さの度合いが計算され、摂餌行動の強さの度合いに基づいて給餌が制御される。この自動給餌装置によれば、摂餌行動の強さの度合いに基づいて給餌が制御されるため、摂餌率を向上させることができる(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-304830号公報
【特許文献2】特開平10-313730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2の各々に開示されている技術においては、水中における養殖魚の状況に基づいて給餌が制御されている。しかしながら、このような方法では、必ずしも適切な量の餌が水中に供給されない。すなわち、特許文献1及び特許文献2の各々に開示されている技術においては、飼料効率が十分に高いとはいえない。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、より適切な量の餌を水中に供給することが可能な給餌システム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある局面に従う給餌システムは、養殖魚に餌を供給するように構成されている。給餌システムは、マイクと、ソナーと、給餌部と、制御部とを備えている。マイクは、水面よりも上方に位置する。ソナーは、水中に位置する。給餌部は、養殖魚に餌を供給するように構成されている。制御部は、マイクの出力及びソナーの出力に基づいて給餌部を制御するように構成されている。
【0008】
養殖魚による摂餌中には、養殖魚が水面を叩く音が発生する。本発明者(ら)は、この事実に気付き、水面付近の音及び水中における養殖魚の分布の両方を参照することによって、餌が供給された場合に養殖魚が摂餌するか否かをより高精度に推測できることを見出した。本発明に従う給餌システムにおいては、マイクの出力及びソナーの出力に基づいて給餌部が制御される。したがって、この給餌システムによれば、水面付近の音及び水中における養殖魚の分布に基づいて給餌部が制御されるため、より適切な量の餌を水中に供給することができる。
【0009】
上記給餌システムは、タイマーをさらに備え、制御部は、タイマーによる計測結果に基づいて餌の供給を開始するように給餌部を制御する一方、マイクの出力及びソナーの出力に基づいて餌の供給を停止するように給餌部を制御してもよい。
【0010】
この給餌システムにおいては、タイマーによる計測結果に基づいて餌の供給が開始され、マイクの出力及びソナーの出力に基づいて餌の供給が停止される。したがって、この給餌システムによれば、経験的に養殖魚が餌を欲するタイミングで餌の供給を開始することができると共に、養殖魚が餌を欲しなくなったタイミングで餌の供給を停止することができる。
【0011】
上記給餌システムにおいて、餌の供給は、第1給餌と、第1給餌の後に行なわれる第2給餌とを含み、制御部は、タイマーによる計測結果に基づいて第1給餌を開始するように給餌部を制御する一方、マイクの出力及びソナーの出力に基づいて第2給餌を開始するように給餌部を制御してもよい。
【0012】
この給餌システムにおいては、タイマーによる計測結果に基づいて第1給餌が開始され、マイクの出力及びソナーの出力に基づいて第2給餌が開始される。したがって、この給餌システムによれば、経験的に養殖魚が餌を欲するタイミングで第1給餌を開始することができると共に、養殖魚が餌を欲している場合に限り第2給餌を開始することができる。
【0013】
上記給餌システムは、ユーザの携帯端末にアラートを送信するように構成された通信部をさらに備え、制御部は、第2給餌が開始されなかった場合に、アラートを携帯端末に送信するように通信部を制御してもよい。
【0014】
この給餌システムにおいては、第2給餌が開始されなかった場合に、アラートが携帯端末に送信される。したがって、この給餌システムによれば、養殖魚の摂餌状況が芳しくなく第2給餌が開始されなかった場合に、その旨をユーザに知らせることができる。
【0015】
上記給餌システムにおいて、餌の供給は、第1給餌と、第1給餌の後に行なわれる第2給餌とを含み、制御部は、タイマーによる計測結果に基づいて第1給餌を停止するように給餌部を制御する一方、マイクの出力及びソナーの出力に基づいて第2給餌を停止するように給餌部を制御してもよい。
【0016】
この給餌システムにおいては、タイマーによる計測結果に基づいて第1給餌が停止され、マイクの出力及びソナーの出力に基づいて第2給餌が停止される。したがって、この給餌システムによれば、第1給餌において養殖魚の状況を確認するために十分な量の餌を確実に供給することができると共に、第2給餌において養殖魚が餌を欲しなくなったタイミングで餌の供給を停止することができる。
【0017】
上記給餌システムは、餌の供給量の上限値を記憶する記憶部をさらに備え、制御部は、給餌部による餌の供給量が上限値に達すると、マイクの出力及びソナーの出力に関係なく、餌の供給を停止するように給餌部を制御してもよい。
【0018】
この給餌システムにおいては、給餌部による餌の供給量が上限値に達すると、マイクの出力及びソナーの出力に関係なく、餌の供給が停止される。したがって、この給餌システムによれば、想定外に多量の餌が水中に供給される事態を抑制することができる。
【0019】
本発明の他の局面に従う給餌方法は、養殖魚に餌を供給する方法である。この給餌方法は、水面よりも上方において集音し、第1データを生成するステップと、水中において養殖魚の分布を検出し、第2データを生成するステップと、第1データ及び第2データに基づいて養殖魚に餌を供給するステップとを含む。
【0020】
この給餌方法によれば、水面付近の音及び水中における養殖魚の分布に基づいて水中に餌が供給されるため、より適切な量の餌を水中に供給することができる。
【0021】
本発明の他の局面に従う制御プログラムは、養殖魚に餌を供給するように構成された給餌システムの制御プログラムである。給餌システムは、水面よりも上方に位置するマイクと、水中に位置するソナーと、養殖魚に餌を供給するように構成された給餌部とを備えている。この制御プログラムは、マイクの出力及びソナーの出力に基づいて給餌部を制御する処理をコンピュータに実行させる。
【0022】
この制御プログラムによれば、水面付近の音及び水中における養殖魚の分布に基づいて水中に餌が供給されるため、より適切な量の餌を水中に供給させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、より適切な量の餌を水中に供給することが可能な給餌システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】給餌システムの構成を模式的に示す図である。
図2】給餌システムにおける給餌の流れの一例を説明するための図である。
図3】第1条件を説明するための図である。
図4】第2条件を説明するための図である。
図5】給餌動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0026】
[1.給餌システムの構成]
図1は、給餌システム10の構成を模式的に示す図である。給餌システム10は、例えば、海中に設けられた生け簀内の養殖魚に餌を供給するように構成されている。給餌システム10においては、不図示の太陽電池によって生成された電力が不図示のバッテリに蓄えられる。給餌システム10は、バッテリに蓄えられた電力を用いることによって動作する。
【0027】
図1に示されるように、給餌システム10は、タンク100と、スクリューコンベア105と、モータ110と、通信部115と、記憶部120と、タイマー125と、マイク130と、ソナー(Sound navigation and ranging)135と、制御部140とを備えている。
【0028】
タンク100は、例えば金属製であり、養殖魚の餌(飼料)を収容するように構成されている。タンク100の形状は円筒状であり、タンク100の下部は先細りになっている。タンク100の下端には孔H1が形成されており、タンク100とスクリューコンベア105とは孔H1を介して連通している。タンク100に収容されている餌は、重力に従ってスクリューコンベア105内に落下する。
【0029】
スクリューコンベア105は、例えば金属製であり、内部の餌を外部に放出し、水中に餌を供給するように構成されている。スクリューコンベア105は、餌の通路を形成する円筒状の部材と、複数の羽を有する回転軸とを含んでいる。スクリューコンベア105の一方の端部にはモータ110が取り付けられており、スクリューコンベア105の他方の端部には孔H2が形成されている。タンク100からスクリューコンベア105内に落下した餌は、スクリューコンベア105の回転軸が回転すると、孔H2に向かって移動し、水中に供給される。
【0030】
モータ110は、スクリューコンベア105の回転軸を回転させるように構成されている。モータ110における回転の開始及び回転の停止は、制御部140によって制御される。モータ110の回転が開始することによって水中への餌の供給が開始され、モータ110の回転が停止することによって水中への餌の供給が停止される。
【0031】
通信部115は、給餌システム10の外部の携帯端末20と通信するように構成されている。すなわち、通信部115は、携帯端末20への情報の送信、及び、携帯端末20からの情報の受信を行なう。通信部115は、例えば無線LAN(Local Area Network)モジュールで構成されている。携帯端末20は、例えば、スマートフォン又はノートPC(Personal Computer)である。
【0032】
記憶部120は、ハードディスクドライブ又はソリッドステートドライブ等の補助記憶装置で構成されている。記憶部120は、例えば、餌の供給開始時刻に関する情報、餌の供給時間に関する情報、及び、餌の供給量の上限値に関する情報を記憶している。また、記憶部120は、給餌システム10の制御プログラムを記憶している。
【0033】
タイマー125は、時間を計測するように構成されている。また、タイマー125は、時計機能を有し、計測された経過時間に基づいて現在時刻を計算するように構成されている。タイマー125は、例えば、餌の供給開始時刻の到来、及び、餌の供給時間の終了を制御部140に通知する。
【0034】
マイク130は、集音し音声データを生成するように構成されている。マイク130は、給餌システム10の動作時に、水面よりも上方、かつ、孔H2の近傍に位置している。マイク130は、主に水面付近での養殖魚による摂餌音を集めるために設けられている。すなわち、マイク130は、水面付近での養殖魚による摂餌音を検出する摂餌音検出部として機能する。
【0035】
ソナー135は、給餌システム10の動作時に、水中に位置している。ソナー135は、水中に超音波を発射し、その反射波を捉えることによって水中の物体を検出するように構成されている。ソナー135は、例えば、孔H2の近傍の下方において、水中の深い位置及び水中の浅い位置の各々にどの程度の数の養殖魚が存在するかを検出する。すなわち、ソナー135は、水深方向における養殖魚の分布を検出する分布検出部として機能する。
【0036】
制御部140は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等を含み、情報処理に応じて各構成要素の制御を行なうように構成されている。
【0037】
養殖魚に餌を供給する給餌システムにおいては、経済的な観点から、養殖魚が餌を消費する確率を上げることが重要である。したがって、養殖魚が餌を欲していない状況において餌を水中に供給しないようにする必要がある。本明細書においては、餌を欲している養殖魚が多いことを養殖魚が活性状態であるといい、餌を欲している養殖魚が少ないことを養殖魚が活性状態でないという。本実施の形態に従う給餌システム10においては、養殖魚が活性状態であるか否かが高精度に検出され、該検出結果に基づいて給餌が制御される。これにより、適切な量の餌が水中に供給される。以下、給餌システム10における給餌について詳細に説明する。
【0038】
[2.給餌について]
図2は、給餌システム10における給餌の流れの一例を説明するための図である。図2において、横軸は時間を示す。図2に示されるように、給餌システム10においては、例えば、第1給餌、第2給餌及び第3給餌が順に行なわれる。第1給餌は、養殖魚を水面付近に呼び寄せるための給餌であり、「呼び給餌」とも称される。第2給餌は、養殖魚に本格的に餌を与える給餌であり、「本給餌」とも称される。第3給餌以降の給餌は、本給餌を経ても満腹にならない一部の養殖魚のために補助的に行なう給餌であり、「補給餌」とも称される。第2給餌においては、第1給餌及び第3給餌のいずれよりも多量の餌が水中に供給される。
【0039】
<2-1.第1給餌>
第1給餌は、予め定められた時刻に開始される。時刻はタイマー125によって計算される。この時刻としては、例えば、経験的に養殖魚が餌を欲する時刻が用いられる。基本的に、第1給餌は、予め定められた時間(第1時間)が経過するまで継続される。養殖魚の活性状態を検出するためには、ある程度の量の餌が水中に供給される必要があるためである。第1時間が経過すると、第1給餌は停止される。
【0040】
<2-2.第2給餌以降の給餌>
第2給餌以降の給餌は、直前の給餌を経て、養殖魚が活性状態である場合に限り開始される。例えば第2給餌は、第1給餌の後に養殖魚が活性状態である場合に開始される。養殖魚が活性状態であるか否かは、ソナー135の出力及びマイク130の出力に基づいて判定される。より詳細には、ソナー135の出力が第1条件を満たし、かつ、マイク130の出力が第2条件を満たす場合に、養殖魚が活性状態であると判定される。一方、ソナー135の出力が第1条件を満たさない、又は、マイク130の出力が第2条件を満たさない場合には、養殖魚が活性状態でないと判定される。
【0041】
図3は、第1条件を説明するための図である。図3を参照して、ソナー135は、水中における養殖魚の分布を検出する。より詳細には、ソナー135は、深さ領域D0-D7の各々に存在する養殖魚を検出する。この例では、深さ領域D0-D3が上層であり、深さ領域D4-D7が下層である。第1条件は、例えば、ソナー135によって検出された養殖魚のうち、所定割合(例えば50%)以上の養殖魚が上層に存在する場合に満たされる。
【0042】
多数の養殖魚が上層に存在する場合には、多数の養殖魚が餌を欲している可能性が高い。一方、多くの養殖魚が水面付近での摂餌を終え満腹となり、これから下層に移動しようとしている状況においても、多数の養殖魚が上層に存在することを本発明者(ら)は見出した。このような状況において、餌が水中に供給されても、多数の養殖魚が満腹状態であるため、餌が無駄になってしまう。そこで、給餌システム10においては、第1条件に加えて第2条件が満たされた場合に、養殖魚が活性状態であると判定される。
【0043】
図4は、第2条件を説明するための図である。図4を参照して、マイク130は、水面付近において養殖魚が発する摂餌音を集める。なお、摂餌音には、養殖魚が餌を食べる時に生じる音の他、養殖魚が水面を叩くことによって生じる音も含まれる。第2条件は、例えば、摂餌音の大きさが所定音量以上である場合に満たされる。摂餌音の大きさが所定音量以上であれば、水面付近に存在する多数の養殖魚が満腹状態である可能性は低い。一方、水面付近における摂餌音の大きさが所定音量以上であっても、一部の養殖魚だけが摂餌を行なっており、多くの養殖魚が満腹状態で下層に存在することもある。この場合には、下層に存在する多数の養殖魚が満腹状態であるため、餌が供給されたとしてもその多くが無駄になってしまう。すなわち、第1条件及び第2条件の一方が満たされるだけでは足りず、第1条件及び第2条件の両方が満たされた場合に初めて多くの養殖魚が空腹状態である可能性が高いといえる。したがって、給餌システム10においては、第1条件及び第2条件の両方が満たされる場合に、養殖魚が活性状態であると判定される。
【0044】
第2給餌以降の給餌は、予め定められた時間(例えば第2給餌においては第2時間)が経過する、又は、養殖魚が活性状態でなくなるまで継続される。なお、給餌速度が一定である場合に、第2時間は第1時間よりも長い。また、給餌の途中において、餌の供給量が上限値に達した場合にも給餌は停止される。
【0045】
<2-3.給餌に関する特徴的な制御>
このように、給餌システム10においては、タイマー125による計測結果に基づいて餌の供給(第1給餌)が開始され、マイク130の出力及びソナー135の出力に基づいて餌の供給(第2給餌以降の給餌)が停止される。したがって、給餌システム10によれば、経験的に養殖魚が餌を欲するタイミングで餌の供給を開始することができると共に、養殖魚が餌を欲しなくなったタイミングで餌の供給を停止することができる。
【0046】
また、給餌システム10においては、タイマー125による計測結果に基づいて第1給餌が開始され、マイク130の出力及びソナー135の出力に基づいて第2給餌以降の給餌が開始される。したがって、給餌システム10によれば、経験的に養殖魚が餌を欲するタイミングで第1給餌を開始することができると共に、養殖魚が餌を欲している場合に限り第2給餌以降の給餌を開始することができる。
【0047】
また、給餌システム10においては、タイマー125による計測結果に基づいて第1給餌が停止され、マイク130の出力及びソナー135の出力に基づいて第2給餌以降の給餌が停止される。したがって、給餌システム10によれば、第1給餌において養殖魚の状況を確認するために十分な量の餌を確実に水中に供給することができると共に、第2給餌において養殖魚が餌を欲しなくなったタイミングで餌の供給を停止することができる。
【0048】
[3.給餌動作]
図5は、給餌動作を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、制御部140が記憶部120に記憶されている制御プログラムを実行することによって開始される。図5を参照して、制御部140は、第1給餌の開始時刻が到来した旨の通知がタイマー125からあったか否かを判定する(ステップS100)。タイマー125からの通知がないと判定されると(ステップS100においてNO)、制御部140は、タイマー125からの通知があるまで待機する。
【0049】
一方、タイマー125からの通知があったと判定されると(ステップS100においてYES)、制御部140は、第1給餌を開始する(ステップS105)。すなわち、制御部140は、モータ110の回転を通じてスクリューコンベア105を回転させる。これにより、水中への餌の供給が開始される。
【0050】
制御部140は、記憶部120に記憶されている餌の供給量の上限値に関する情報を参照し、餌の供給量が上限値に達したか否かを判定する(ステップS110)。餌の供給量が上限値に達したと判定されると(ステップS110においてYES)、制御部140は、第1給餌を停止し、処理を終了する。このように、給餌システム10によれば、餌の供給量が上限値に達すると餌の供給が停止されるため、想定外に多量の餌が水中に供給される事態を抑制することができる。
【0051】
一方、餌の供給量が上限値に達していないと判定されると(ステップS110においてNO)、制御部140は、第1時間が経過した旨の通知がタイマー125からあったか否かを判定する(ステップS115)。第1時間が経過していないと判定されると(ステップS115においてNO)、制御部140は、再びステップS110の処理を実行する。
【0052】
一方、第1時間が経過したと判定されると(ステップS115においてYES)、制御部140は、第1給餌を停止する(ステップS120)。すなわち、制御部140は、モータ110の回転を停止させることでスクリューコンベア105の回転を停止させる。これにより、水中への餌の供給が停止される。
【0053】
その後、制御部140は、第2給餌を開始するか否か決定するために、水中の養殖魚が活性状態であるか否かを判定する(ステップS125)。すなわち、制御部140は、ソナー135の出力が第1条件を満たし、かつ、マイク130の出力が第2条件を満たすか否かを判定する。養殖魚が活性状態でないと判定されると(ステップS125においてNO)、制御部140は、ユーザの携帯端末20にアラートを送信するように通信部115を制御する(ステップS130)。アラートは、例えば、予定していた給餌が最後まで行なわれなかった旨を示すメッセージを含む。そして、制御部140は、第2給餌を開始することなく、処理を終了する。給餌システム10によれば、このようなアラートがユーザに送信されるため、養殖魚の摂餌状況が芳しくなく第2給餌が開始されなかった場合に、その旨をユーザに知らせることができる。
【0054】
一方、養殖魚が活性状態であると判定されると(ステップS125においてYES)、制御部140は、第2給餌を開始する(ステップS135)。すなわち、制御部140は、モータ110の回転を通じてスクリューコンベア105を回転させる。
【0055】
制御部140は、記憶部120に記憶されている餌の供給量の上限値に関する情報を参照し、餌の供給量が上限値に達したか否かを判定する(ステップS140)。餌の供給量が上限値に達したと判定されると(ステップS140においてYES)、制御部140は、第2給餌を停止し、処理を終了する。給餌システム10によれば、餌の供給量が上限値に達すると、マイク130の出力及びソナー135の出力に関係なく、餌の供給が停止される。したがって、この給餌システム10によれば、例えば、マイク130若しくはソナー135が故障し、養殖魚が活性状態であると誤判定した場合であっても、想定外に多量の餌が水中に供給される事態を抑制することができる。
【0056】
一方、餌の供給量が上限値に達していないと判定されると(ステップS140においてNO)、制御部140は、第2時間が経過した旨の通知がタイマー125からあったか否かを判定する(ステップS145)。
【0057】
第2時間が経過していないと判定されると(ステップS145においてNO)、制御部140は、水中の養殖魚が活性状態であるか否かを判定する(ステップS150)。養殖魚が活性状態でないと判定されると(ステップS150においてNO)、制御部140は、第2給餌を停止し、処理を終了する。
【0058】
一方、ステップS150において、養殖魚が活性状態であると判定されると(ステップS150においてYES)、制御部140は、給餌を継続し、再びステップS140の処理を実行する。
【0059】
また、ステップS145において、第2時間が経過したと判定されると(ステップS145においてYES)、制御部140は、第2給餌を停止する(ステップS155)。
【0060】
その後、制御部140は、第3給餌を開始するか否か決定するために、水中の養殖魚が活性状態であるか否かを判定する(ステップS160)。養殖魚が活性状態でないと判定されると(ステップS160においてNO)、制御部140は、第3給餌を開始することなく、処理を終了する。一方、養殖魚が活性状態であると判定されると(ステップS160においてYES)、制御部140は、第3給餌以降の予定している動作を継続する。
【0061】
なお、給餌システム10においては、第1給餌から第2給餌に移行せずに給餌が終了したこと以外の理由で給餌が終了したとしてもアラートが携帯端末20に送信されない。したがって、給餌システム10によれば、必要以上にアラートが携帯端末20に送信されることを抑制することができる。
【0062】
[4.特徴]
以上のように、給餌システム10においては、マイク130の出力及びソナー135の出力に基づいてモータ110が制御される。したがって、給餌システム10によれば、水面付近の音及び水中における養殖魚の分布に基づいてモータ110が制御されるため、より適切な量の餌を水中に供給することができる。
【0063】
なお、給餌システム10は、本発明における「給餌システム」の一例である。マイク130は本発明における「マイク」の一例であり、「ソナー135」は本発明における「ソナー」の一例である。タンク100、スクリューコンベア105及びモータ110を含む構成は本発明における「給餌部」の一例であり、制御部140は本発明における「制御部」の一例である。タイマー125は本発明における「タイマー」の一例であり、記憶部120は本発明における「記憶部」の一例である。
【0064】
[5.変形例]
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。以下、変形例について説明する。
【0065】
<5-1>
上記実施の形態に従う給餌システム10においては、各パラメータ(例えば、第1時間、第2時間、所定割合、所定音量)が予め定められていた。しかしながら、各パラメータは、ユーザによって設定可能であってもよい。例えば、携帯端末20を介してユーザが各パラメータを設定可能であってもよい。これにより、ユーザが現場の状況に合わせて各パラメータの微調整をすることができる。
【0066】
<5-2>
上記実施の形態に従う給餌システム10においては、養殖魚が活性状態でないために第1給餌から第2給餌に移行しなかった場合に、常に携帯端末20にアラートが送信された。しかしながら、養殖魚が活性状態でないために第1給餌から第2給餌に移行しなかった場合に、常に携帯端末20にアラートが送信される必要はない。例えば、養殖魚が活性状態でないことを理由とて第1給餌から第2給餌に移行しないことが複数回続いた場合に、初めてアラートが携帯端末20に送信されるような構成であってもよい。これにより、頻繁にアラートが携帯端末20に送信される事態を抑制することができる。
【0067】
<5-3>
上記実施の形態に従う給餌システム10は、海中に設けられた生け簀だけでなく、水槽に適用されてもよい。
【0068】
<5-4>
上記実施の形態に従う給餌システム10においては、養殖魚が活性状態でないために第1給餌から第2給餌に移行しなかった場合に、携帯端末20にアラートが送信された。しかしながら、アラートが携帯端末20に送信されるタイミングはこれに限定されない。例えば、餌の供給量が上限値に達したことで給餌が停止された場合にも携帯端末20にアラートが送信されてもよい。
【0069】
<5-5>
上記実施の形態に従う給餌システム10は、不図示の太陽電池によって生成された電力を用いて動作した。しかしながら、給餌システム10の動力源はこれに限定されない。例えば、給餌システム10は、別途準備された発電機によって生成された電力を用いて動作してもよい。
【0070】
<5-6>
上記実施の形態に従う給餌システム10において、第1給餌及び第2給餌等の各給餌は、予め定められた時間(第1時間、第2時間等)が経過すると停止された。しかしながら、第1給餌及び第2給餌等の各給餌は、例えば、各給餌で予め定められた量の餌が水中に供給されるのに応じて停止されてもよい。
【0071】
<5-7>
上記実施の形態に従う給餌システム10において、制御部140は、各給餌(第1給餌、第2給餌等)の停止後に、各給餌の停止後に得られたソナー135の出力が第1条件を満たし、かつ、各給餌の停止後に得られたマイク130の出力が第2条件を満たすか否かを判定した。しかしながら、次の給餌を開始するか否かを判定するために用いられるマイク130の出力及びソナー135の出力の各々は、各給餌の停止後に得られたものに限定されない。例えば、各給餌中に得られたマイク130の出力及びソナー135の出力が用いられてもよい。例えば、各給餌中に一度でも第1条件を満たすソナー135の出力が得られ、かつ、各給餌中に一度でも第2条件を満たすマイク130の出力が得られた場合に、養殖魚が活性状態であると判定され、次の給餌が開始されてもよい。また、例えば、各給餌の後半の時間帯において一度でも第1条件を満たすソナー135の出力が得られ、かつ、各給餌の後半の時間帯において一度でも第2条件を満たすマイク130の出力が得られた場合に、養殖魚が活性状態であると判定され、次の給餌が開始されてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10 給餌システム、20 携帯端末、100 タンク、105 スクリューコンベア、110 モータ、115 通信部、120 記憶部、125 タイマー、130 マイク、135 ソナー、140 制御部、D0-D7 深さ領域、H1,H2 孔。
図1
図2
図3
図4
図5